説明

熱交換器の支持構造及び車両前部構造

【課題】 エンジンルーム内の通気性を良好にできると同時に、車両前方側からの外力作動時における熱交換器の損傷を防止できる熱交換器の支持構造及び車両前部構造の提供。
【解決手段】 車両前方側に配置される熱交換器(ラジエータ2)の車体への支持構造で、熱交換器(ラジエータ2)は車両前方側からの外力作動時に、車体に対し支持状態を維持しつつ、該熱交換器(ラジエータ2)が車両後方側へ所定距離移動可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の支持構造及び車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器が搭載されたラジエータコアサポートをバンパアーマチュアに固定して、車両衝突時に該バンパアーマチュアと共に車両後方へ移動させる熱交換器の支持構造及び車両前部構造の技術が公知になっている(特許文献1参照)。
このような熱交換器の支持構造及び車両前部構造では、車両衝突時に後方変位するバンパアーマチュアと共に熱交換器が破損し易いという問題があるため、通常は熱交換器を出来るだけ車両後方へ配置した状態でラジエータコアサポートに搭載している。
【特許文献1】特開2004−322837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年、車室内の拡大化に伴ってエンジンルームは狭小化する傾向にあるため、熱交換器を出来るだけ車両後方へ配置すると、熱交換器とエンジンが近接して配置されることとなり、この結果、熱交換器を通過した熱気がエンジンで塞がれて通気性が悪化するという問題点があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、エンジンルーム内の通気性を良好にできると同時に、車両前方側からの外力作動時における熱交換器の損傷を防止できる熱交換器の支持構造及び車両前部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明では、車両前方側に配置される熱交換器の車体への支持構造であって、前記熱交換器は車両前方側からの外力作動時に、車体に対し支持状態を維持しつつ、車両後方側へ所定距離移動可能としたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の請求項10記載の発明では、車両前方のバンパアーマチュアと、その車両後方側に配置される熱交換器と、前記バンパアーマチュアと熱交換器との間に介装された押圧部材と、前記熱交換器を車体に対し固定する固定部と、前記熱交換器が固定部から離脱したときに支持状態を維持しつつ、車両後方側へ所定距離移動可能に支持される支持部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1記載の発明にあっては、車両前方側に配置される熱交換器の車体への支持構造であって、前記熱交換器は車両前方側からの外力作動時に、車体に対し支持状態を維持しつつ、車両後方側へ所定距離移動可能としたため、エンジンルーム内の通気性を良好にできると同時に、車両前方側からの外力作動時における熱交換器の損傷を防止できる。
【0008】
本発明の請求項10記載の発明にあっては、車両前方のバンパアーマチュアと、その車両後方側に配置される熱交換器と、前記バンパアーマチュアと熱交換器との間に介装された押圧部材と、前記熱交換器を車体に対し固定する固定部と、前記熱交換器が固定部から離脱したときに支持状態を維持しつつ、車両後方側へ所定距離移動可能に支持される支持部を有することとしたため、エンジンルーム内の通気性を良好にできると同時に、熱交換器の損傷を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
以下、実施例1を説明する。
なお、本実施例1では熱交換器をラジエータに適用した場合について説明する。
また、車両前後方向及び車幅方向を前後方向及び左右方向と称して説明する。
【0011】
図1は本発明の実施例1のラジエータコアサポートと熱交換器の分解斜視図、図2は同斜視図、図3は本実施例1のラジエータコアサポートアッパのブラケットを示す斜視図、図4は本実施例1のラジエータコアサポートロアのブラケットを示す斜視図である。
【0012】
図5は本実施例1の熱交換器とラジエータコアサポートの固定を説明する図、図6は本実施例1の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を示す図(一部省略)、図7、8は本実施例1の作用を説明する図である。
【0013】
先ず、全体構成を説明する。
図1、2に示すように、本実施例1では、ラジエータコアサポート1(請求項の車体に相当)とラジエータ2(請求項の熱交換器に相当)が備えられている。
【0014】
ラジエータコアサポート1は、左右方向に延びるラジエータコアサポートアッパ1aと、このラジエータコアサポートアッパ1aと並行するラジエータコアサポートロア1bと、ラジエータコアサポートアッパ1aとラジエータコアサポートロア1bの左右両端部同士を結合するラジエータコアサポートサイド1c,1dが備えられている。
【0015】
ラジエータコアサポートアッパ1aは、略角パイプ状の矩形断面を成して左右方向に延設された金属製のアッパセンタ部1eと、このアッパセンタ部1eの左右両端部に結合され、且つ、下方に開口した略コ字状断面を成して斜め後方へ延設された金属製のアッパサイド部1f,1gで構成されている。
【0016】
また、各アッパサイド部2aの基端側にはそれぞれ対応する金属製のサイドメンバ取付部1h,1iの上部がブラケットB1を介して結合されている。
【0017】
ラジエータコアサポートロア1bは、金属製で略角パイプ状の矩形断面を成して左右方向に延設されると共に、その左右両端部にはそれぞれ対応するサイドメンバ取付部1h,1iの下部が結合されている。
【0018】
ラジエータコアサポートサイド1c,1dは、樹脂製で後方へ開口した略コ字状断面に形成され、その上下両端部をラジエータコアサポートアッパ1aの左右両端部とラジエータコアサポートロア1bの左右両端部に樹脂モールドした状態で結合されている。
【0019】
また、ラジエータコアサポートアッパ1a、ラジエータコアサポートロア1b、ラジエータコアサポートサイド1c,1dの内側には、後述するラジエータ2に風を導入するための開口部Rが形成されている。
【0020】
そして、本実施例1では、ラジエータコアサポートアッパ1aの下面における左右両端部にブラケット3がそれぞれ設けられる一方、ラジエータコアサポートロア1bの上面における左右両端部にブラケット4がそれぞれ設けられている。
【0021】
図3に示すように、ブラケット3は、金属製の板状に形成される他、その先端部には前後方向に長い長孔状の摺動孔3aが上下方向に開口された状態で設けられ、その基端部は左右一対のボルトB1によってラジエータコアサポートアッパ1aの下面に脱着可能に固定されている。
また、摺動孔3aの車両前方には該摺動孔3aの内側へ突出する一対のストッパ部3b(請求項の固定解除部に相当)が設けられている。
【0022】
図4に示すように、ブラケット4は、金属製の板状に形成される他、その先端部には前後方向に長い長孔状の摺動孔4aが上下方向に開口された状態で設けられ、その基端部には左右方向に貫通した貫通孔4bが設けられると共に、ここに貫通孔4bよりも僅かに小径の回転軸4cが貫通した状態で設けられている。
また、回転軸4cの両端部はラジエータコアサポートロア1bの上面に設けられた左右一対の板状の座部4dを貫通した状態で図外の溶接により固定され、これによって、ブラケット3を垂直面内で回転させてコンパクトに収納できるようになっている。
さらに、摺動孔4aの前方には該摺動孔4aの内側へ突出する一対のストッパ部4e(請求項の固定解除部に相当)が設けられている。
【0023】
図1に示すように、ラジエータ2は、一対のタンク2a,2bと、これら両タンク2a,2bの間に配置されたコア部2cが備えられている。
各タンク2a,2bは、樹脂製で一体的に形成される他、左右上端には上方へ突出した円柱状の車両搭載ピンP1がそれぞれ設けられる一方、その左右下端には下方へ突出した円柱状の車両搭載ピンP2がそれぞれ設けられている。
また、タンク2aには、その内部に連通した状態で後方へ円筒状に突出した入出力ポート2dが設けられる一方、タンク2bには、その内部に連通した状態で後方へ円筒状に突出した入出力ポート2eが設けられている。
【0024】
コア部2cは、タンク2a,2bに装着される一対のチューブプレート2f,2gと、両端部がそれぞれ対応するチューブプレート2f,2gに挿通し固定された複数のチューブ2hと、隣り合うチューブ2h同士間に配置された複数の波板状のフィン2iで構成されている。
また、チューブプレート2f,2gの両端部同士は、一対のレインフォース2j,2kで連結補強されている。
さらに、本実施例1のコア部2cは、全ての構成部材がアルミ製であり、各構成部材の接合部のうち、少なくとも一方側にはろう材から成るクラッド層(ブレージングシート)が設けられ、これらは予め仮組みされた状態で加熱炉で熱処理されることにより接合部同士が一体的にろう付け固定されている。
【0025】
その他、ラジエータ2のコア部2cの後面には一対のファン5(図6参照)が収容された樹脂製のモータファンシュラウド6が装着されている。
【0026】
このように構成されたラジエータコアサポート1の前方にラジエータ2を搭載する際には、図1、図5に示すように、ラジエータコアサポートロア1bの左右両端部において、各ブラケット4の摺動孔4aの車両前方の所定位置に、ゴム等の弾性素材から成る略円筒状のマウント部材7(請求項の弾性部材に相当)をそれぞれ装着した後、各マウント部材7の中心孔にラジエータ2のそれぞれ対応する車両搭載ピンP2を挿入して載置した状態で固定する。
この際、各車両搭載ピンP2はそれぞれ対応する摺動孔4aのストッパ部4eに僅かに係止して後方への移動を規制されている。
【0027】
続いて、各ブラケット3の摺動孔3aの前方の所定位置に、ゴム等の弾性素材から成る略円筒状のマウント部材8(請求項の弾性部材に相当)をそれぞれ装着した後、各マウント部材8の中心孔にラジエータ2のそれぞれ対応する車両搭載ピンP1を挿入させた状態として、各ブラケット3をラジエータコアサポートアッパ1aの裏面にボルトB1で締結して固定する。
この際、各車両搭載ピンP1はそれぞれ対応する摺動孔3aのストッパ部3bに僅かに係止して後方への移動を規制されている。
【0028】
従って、図2に示すように、ラジエータ2は、各マウント部材7,8を介してラジエータコアサポートアッパ1の前方に搭載されることとなる。
【0029】
次に、作用を説明する。
このように構成されたラジエータコアサポート1は、図6に示すように、ラジエータコアサポート1のサイドメンバ取付部1h,1iの前方にそれぞれ対応するバンパステイ9の後端部が連結される一方、後方にそれぞれ対応するサイドメンバ10の前端部が連結された状態で車両のエンジンルーム内に搭載される。
また、両バンパステイ9,9の前端部には左右方向に延在する矩形断面のバンパアーマチュア11が固定される。
【0030】
さらに、本実施例1では、ラジエータ2のタンク2a,2bとバンパアーマチュア11との間にポリプロピレン等を素材とする発泡樹脂製の押圧部材12がそれぞれ介装されている。
また、各押圧部材12は、ラジエータ2のそれぞれ対応するタンク2a,2bに貼着される他、バンパアーマチュア11との間に僅かな隙間が形成されている。
【0031】
従って、ラジエータ2は、ラジエータコアサポート1の前方に配置されるため、エンジン13との距離L1を十分に確保でき、これによって、ラジエータ2を通過した車両走行風またはファン5の強制風(破線矢印で図示)をエンジン13の後方へスムーズに流すことができ、エンジンルーム内の通気性を良好にできる。
【0032】
そして、図7(a)、(b)に示すように、車両が低速で衝突した際(請求項の外力作動時に相当)には、バンパアーマチュア11が後方へ変位すると共に、このバンパアーマチュア11が押圧部材12を介してラジエータ2を後方へ押圧し、この結果、ラジエータ2の車両搭載ピンP1,P2がそれぞれ対応する摺動孔3a,4aのストッパ部3a,4eの係止が外れて後方へ摺動することにより、ラジエータ2が後方へ移動する。
【0033】
従って、車両の軽衝突時にバンパアーマチュア11とラジエータ2が接触してラジエータ2が破損するのを防止できる。
また、ラジエータ2は、車両搭載ピンP1,P2をそれぞれ対応する摺動孔3a,4aに摺動させて移動するため、ラジエータ2の移動によってラジエータコアサポート1が破損する虞もない。
【0034】
一方、車両が高速で衝突した際(請求項の外力作動時に相当)には、図8に示すように、前述した場合と同様にラジエータ2が後方へ移動するが、この際、押圧部材12が潰れて衝撃力を分散・吸収した後、最終的には破断して圧壊することにより、該押圧部材12が剛体として作用するのを防止できる。
【0035】
さらに、本実施例1ではラジエータ2の左右上端部がマウント部材7(8)を介して固定されているため、ラジエータ2の左右一方側から衝撃力が入力された場合でもスムーズに後方変位させることができ、多少の衝撃力は吸収できる。
【0036】
また、ラジエータ2は、前方への移動を規制された状態で固定されるため、ラジエータ2が前後方向に揺動するのを防止できる。
【0037】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、本実施例1の熱交換器の支持構造及び車両前部構造にあっては、車両前方側に配置される熱交換器(ラジエータ2)の車体への支持構造であって、熱交換器(ラジエータ2)は車両前方側からの外力作動時に、車体に対し支持状態を維持しつつ、該熱交換器(ラジエータ2)が車両後方側へ所定距離移動可能としたため、エンジンルーム内の通気性を良好にできると同時に、車両前方側からの外力作動時における熱交換器(ラジエータ2)の損傷を防止できる。
【0038】
また、押圧部材12を発泡樹脂製としたため、押圧部材12を車両衝突時における衝撃吸収材として機能させることができると同時に、押圧部材12が剛体として作用するのを防止できる。
【実施例2】
【0039】
以下、実施例2を説明する。
本実施例2において、前記実施例と同様の構成部材については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。
【0040】
図9は本発明の実施例2の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する図であり、作用を説明する図である。
【0041】
図9(a)に示すように、本実施例2では、ラジエータ2の左右両側に車両前方へ板状に張り出した状態でポリプロピレン等を素材とする樹脂製のエアガイド20が固定されると共に、このエアガイド20の車両前方へ開口した開口部20aとバンパアーマチュア11との間に僅かな隙間が形成されているという点が実施例1と異なる。
なお、エアガイド20とラジエータ2の固定は一般的なエアガイドとラジエータコアサポートとの固定構造と同様に、クリップ等の締結部材を用いたり、エアガイド20とラジエータ2の一部同士を嵌合させる等の適宜の固定構造を採用できる。
【0042】
従って、エアガイド20は、車両走行時の車両走行風をラジエータ2へ導風したり、車両停車時のエンジン側の熱気がラジエータ2の前面へ吹き返すのを防止するエアガイドとして機能する一方、図9(a)、(b)に示すように、車両が低速で衝突した際には、バンパアーマチュア11が後方へ変位すると共に、このバンパアーマチュア11がエアガイド20を介してラジエータ2を後方へ押圧し、この結果、ラジエータ2の車両搭載ピンP1,P2がそれぞれ対応する摺動孔3a,4aのストッパ部3a,4eの係止が外れて後方へ摺動することにより、ラジエータ2が後方へ移動する。
【0043】
従って、エアガイド20を車両の軽衝突時の押圧部材として兼用でき、バンパアーマチュア11とラジエータ2が接触してラジエータ2が破損するのを防止できる。
【実施例3】
【0044】
以下、実施例3を説明する。
本実施例3において、前記実施例と同様の構成部材については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。
【0045】
図10は本発明の実施例3の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する分解斜視図、図11は同斜視図、図12は図11のS12−S12線における断面図(a)と作用を説明する図(b)である。
【0046】
なお、本実施例3において、ラジエータの上下端部における固定構造はそれぞれ同様であるため、ラジエータの一方側下端部のみを図示して説明する。
【0047】
図10に示すように、本実施例3では、ラジエータコアサポートロア1bに固定される台座プレート30と、この台座プレート30に固定される移動部材31が備えられている。
【0048】
台座プレート30には、上方へ突出した状態で左右方向へ延設された係止部30aと、上方へ略L字状に突出した状態で前後方向へ延設された係合部30b,30cがそれぞれ形成されると共に、係止部30aと対向した後方位置には上下方向に開口された貫通孔30dが形成されている。
一方、移動部材31には上下方向に開口された支持孔31aが形成される一方、下部両側には左右方向へ突出した状態で前後方向へ延設され、且つ、台座プレート30の係合部30b,30cに後方から嵌合可能な係合部31b,31cが形成されている。
【0049】
従って、図10、11に示すように、台座プレート30の係合部30b,30cに移動部材31の係合部31b,31cを後方から嵌合させて、該移動部材31の前端部31dを係合部30aに当接し、さらに、台座プレート30の貫通孔30dの下方から係止ピン32(請求項の固定解除部に相当)を挿入して該移動部材31の後端部31eに当接させた状態として該台座プレート30を図外の溶接等でラジエータコアサポートロア1bに固定することにより、これら三者を固定できるようになっている。
この際、移動部材31は前後左右の移動を規制された状態で台座プレート30に固定されている。
【0050】
そして、図12(a)に示すように、移動部材31の支持孔31aにはマウント部材7を介してラジエータ2の車両搭載ピンP2が挿入された状態で固定支持される。
【0051】
また、図12(b)に示すように、車両衝突時には、前記実施例と同様にラジエータ2が後方変位することにより、移動部材31の後端部31eに係止ピン32が押圧されて薄肉の脆弱部32aで分断することにより、移動部材31の固定状態が解除され、その後、移動部材31がラジエータ2の下端の支持状態を維持しつつ共に後方へスライド移動した後で離脱し、これによって、ラジエータ2の損傷を防止できる。
【実施例4】
【0052】
以下、実施例4を説明する。
本実施例4において、前記実施例と同様の構成部材については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。
【0053】
図13は本発明の実施例4の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する分解斜視図、図14は同斜視図、図15は図14のS15−S15線における断面図(a)と作用を説明する図(b)である。
【0054】
なお、本実施例4において、ラジエータの上下端部における固定構造はそれぞれ同様であるため、ラジエータの一方側下端部のみを図示して説明する。
【0055】
図13、14に示すように、本実施例4の熱交換器の支持構造及び車両前部構造では、前記実施例で説明した貫通孔30aの代わりに、台座プレート30の後端部に爪部40(請求項の固定解除部に相当)が一体的に形成されると共に、該爪部40の先端部41が移動部材31の後端部31eに係止することにより、移動部材31の後方への移動が抑止されている。
【0056】
また、ラジエータコアサポートロア1bには爪部40の下方への弾性変形を許容するための開口部42が形成されている。
【0057】
そして、図15(a)に示すように、移動部材31の支持孔31aにはマウント部材7を介してラジエータ2の車両搭載ピンP2が挿入された状態で固定支持される。
【0058】
また、図15(b)に示すように、車両衝突時には、前記実施例と同様にラジエータ2が後方変位することにより、移動部材31の後端部31eが爪部40の先端部41を後方へ押圧して該爪部40が開口部42内へ弾性変形することにより、移動部材31の固定状態が解除され、その後、移動部材31がラジエータ2の下端の支持状態を維持しつつ共に後方へスライド移動した後で離脱し、これによって、ラジエータ2の損傷を防止できる。
【実施例5】
【0059】
以下、実施例5を説明する。
本実施例5において、前記実施例と同様の構成部材については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。
【0060】
図16は本発明の実施例5の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する分解斜視図、図17は同斜視図、図18は図17のS18−S18線における断面図(a)と作用を説明する図(b)である。
【0061】
なお、本実施例5において、ラジエータの上下端部における固定構造はそれぞれ同様であるため、ラジエータの一方側下端部のみを図示して説明する。
【0062】
図16に示すように、本実施例5の熱交換器の支持構造及び車両前部構造では、前記実施例で説明した台座プレート30が省略される他、移動部材31の係合部30b,30cが上部両側に形成され、さらに、移動部材31の後端部には後方へ突出した突出部50が形成されている。
【0063】
一方、ラジエータコアサポートロア1bには前後方向に長い四角形状の開口部51が形成されると共に、この開口部51に近接した後方位置には上下方向に開口された貫通孔52が形成されている。
【0064】
従って、図16、17に示すように、ラジエータコアサポートロア1bの開口部50内の前方に移動部材31の係合部31b,31cを嵌合し、さらに、ラジエータコアサポートロア1bの貫通孔52の下方から係止ピン32(請求項の固定解除部に相当)を挿入固定して移動部材31の突出部50に当接させることにより、移動部材31をラジエータコアサポートロア1bに前後左右方向への移動を規制した状態で固定できるようになっている。
【0065】
そして、図18(a)に示すように、移動部材31の支持孔31aにはマウント部材7を介してラジエータ2の車両搭載ピンP2が挿入された状態で固定支持される。
【0066】
また、図18(b)に示すように、車両衝突時には、前記実施例と同様にラジエータ2が後方変位することにより、移動部材31の後端部31aに係止ピン32が後方へ押圧されて薄肉の脆弱部32aで分断することにより、移動部材31の固定状態が解除され、その後、移動部材31がラジエータ2の下端の支持状態を維持しつつ共に後方へ所定距離W1だけスライド移動し、これによって、ラジエータ2の損傷を防止できる。
【0067】
なお、係止ピン32の代わりに実施例4で説明したような爪部40の構造を採用しても良い。
【実施例6】
【0068】
以下、実施例6を説明する。
本実施例6において、前記実施例と同様の構成部材については同じ符号を付してその説明は省略し、相違点のみ詳述する。
【0069】
図19は本発明の実施例6の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する分解斜視図、図20は同斜視図である。
【0070】
なお、本実施例6において、ラジエータの上下端部における固定構造はそれぞれ同様であるため、ラジエータの一方側下端部のみを図示して説明する。
【0071】
図19に示すように、本実施例5の熱交換器の支持構造及び車両前部構造では、前記実施例で説明した移動部材がラジエータコアサポートサイド1c,1dまたはその周辺部位に固定される例である。
【0072】
移動部材60にはラジエータ2の下端の車両搭載ピンP2をマウント部材7を介して支持するための支持孔60aが上下方向に開口される一方、その裏面には前後方向に延びる上下一対の係合部60b,60cが形成されている。
【0073】
一方、ラジエータコアサポートサイド1c,1dまたはその周辺部位(例えばバンパステイ9等、請求項の車体に相当)には、移動部材60の係合部60b,60cを後方から嵌合可能な係合部61a,61bが形成されると共に、左右方向へ突出した状態で上下方向に延設された板状の係合部61cが形成されている。
【0074】
さらに、係合部61a,61bの間には左右方向に開口された貫通孔61dが形成されている一方、移動部材60の裏面の該貫通孔61dと合致する位置には貫通孔60dが形成されている。
【0075】
そして、図20に示すように、移動部材60の係合部60b,60cを後方から係合部61a,61bに嵌合させると共に、移動部材60の前端部60eを係合部61cに当接させた状態とし、さらに、貫通孔61dから貫通孔60dを介して係止ピン62(請求項の固定解除部に相当)を挿入固定することにより、移動部材31をラジエータコアサポートサイド1c,1dまたはその周辺部位に前後左右方向への移動を規制した状態で固定できるようになっている。
【0076】
従って、本実施例6では、ラジエータ2の後方変位の際に係止ピン62が薄肉の脆弱部62aで分断することにより、移動部材60の固定状態が解除され、その後、移動部材31がラジエータ2の下端の支持状態を維持しつつ共に後方へスライド移動した後で離脱し、これによって、ラジエータ2の損傷を防止できる。
【0077】
なお、係止ピン62の代わりに実施例4で説明したような爪部40の構造を採用しても良い。
【0078】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、本実施例で説明した各構成部材の材質や詳細な部位の構造については適宜設定でき、押圧部材をポリプロピレン等を素材とした樹脂製にすることもでき、この際、内部を中空としても良い。同様に、エアガイドを発泡樹脂製としても良い。
【0079】
また、熱交換器はラジエータに限らず、コンデンサ、ラジエータとコンデンサが一体的に形成された一体型熱交換器、インタークーラ、オイルクーラ等の一般的な全ての熱交換器に適用できる。
【0080】
さらに、ラジエータコアサポートロア1bが樹脂で形成される場合には、図21に示すように、実施例1で説明したブラケットの摺動孔4a及びストッパ部4eをラジエータコアサポートロア1bに一体的に形成しても良い。この際、ストッパ部4eを舌片状に形成して樹脂の弾性力を利用して熱交換器の固定を解除するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施例1のラジエータコアサポートと熱交換器の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例1のラジエータコアサポートと熱交換器の斜視図である。
【図3】本実施例1のラジエータコアサポートアッパのブラケットを示す斜視図である。
【図4】本実施例1のラジエータコアサポートロア1bのブラケットを示す斜視図である。
【図5】本実施例1の熱交換器とラジエータコアサポートの固定を説明する図である。
【図6】本実施例1の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を示す図(一部省略)である。
【図7】本実施例1の作用を説明する図である。
【図8】本実施例1の作用を説明する図である。
【図9】本発明の実施例2の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する図であり、作用を説明する図である。
【図10】本発明の実施例3の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する分解斜視図である。
【図11】本発明の実施例3の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する斜視図である。
【図12】図11のS12−S12線における断面図(a)と作用を説明する図(b)である。
【図13】本発明の実施例4の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する分解斜視図である。
【図14】本発明の実施例4の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する斜視図である。
【図15】図14のS15−S15線における断面図(a)と作用を説明する図(b)である。
【図16】本発明の実施例5の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する分解斜視図である。
【図17】本発明の実施例5の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する斜視図である。
【図18】図17のS18−S18線における断面図(a)と作用を説明する図(b)である。
【図19】本発明の実施例6の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する分解斜視図である。
【図20】本発明の実施例6の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する斜視図である。
【図21】その他の実施例の熱交換器の支持構造及び車両前部構造を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0082】
P1、P2 車両搭載ピン
B1 ボルト
H 隙間
R 開口部
1 ラジエータコアサポート
1a ラジエータコアサポートアッパ
1b ラジエータコアサポートロア1b
1c、1d ラジエータコアサポートサイド
1e アッパセンタ部
1f、1g アッパサイド部
1h、1i サイドメンバ取付部
2 ラジエータ(熱交換器)
2a、2b タンク
2c コア部
2d、2e 入出力ポート
2f、2g チューブプレート
2h チューブ
2i フィン
2j、2k レインフォース
2m ファン
2n モータファンシュラウド
3、4 ブラケット
3a、4a 摺動孔
3b、4e ストッパ部
4b 貫通孔
4c 回転軸
4d 座部
5 ファン
6 モータファンシュラウド
7 マウント部材
9 バンパステイ
10 サイドメンバ
11 バンパアーマチュア
12 押圧部材
13 エンジン
20 エアガイド(押圧部材)
20a 開口部
30 台座プレート
30a、30b、30c (台座プレートの)係合部
30d 貫通孔
31 移動部材
31a 支持孔
31b、31c (移動部材の)係合部
31d 前端部
31e 後端部
32 係止ピン
32a 脆弱部
40 爪部
41 先端部
42 開口部
50 突出部
51 開口部
52 貫通孔
60 移動部材
60a 支持孔
60b、60c (移動部材の)係合部
60d (移動部材の)貫通孔
60e 前端部
61a、61b、61c (ラジエータコアサポートサイドまたはその周辺部位の)係合部
61d (ラジエータコアサポートサイドまたはその周辺部位の)貫通孔
62 係止ピン
62a 脆弱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方側に配置される熱交換器の車体への支持構造であって、
前記熱交換器は車両前方側からの外力作動時に、車体に対し支持状態を維持しつつ、車両後方側へ所定距離移動可能としたことを特徴とする熱交換器の支持構造。
【請求項2】
請求項1記載の熱交換器の支持構造において、
前記熱交換器は所定距離移動後に離脱可能としたことを特徴とする熱交換器の支持構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の熱交換器の支持構造において、
バンパアーマチュアの車両後方側に熱交換器が配置され、
前記バンパアーマチュアと熱交換器との間に押圧部材を介装し、
前記バンパアーマチュアに外力が作動した時に該バンパアーマチュアが車両後方側へ変位しつつ押圧部材を介して熱交換器を車両後方側へ移動させることを特徴とする熱交換器の支持構造。
【請求項4】
請求項3記載の熱交換器の支持構造において、
前記バンパアーマチュアの車両後方側に配置される熱交換器を、ラジエータコアサポートのラジエータコアサポートロアの直上または車両前方側に配置した状態で、該ラジエータコアサポートに対して車両後方側へ移動可能に固定し、
前記バンパアーマチュアと熱交換器との間に押圧部材を介装し、
車両衝突時にバンパアーマチュアが車両後方側へ変位しつつ押圧部材を介して熱交換器を車両後方側へ移動させることを特徴とする熱交換器の支持構造。
【請求項5】
請求項3記載の熱交換器の支持構造において、
前記押圧部材を樹脂製としたことを特徴とする熱交換器の支持構造。
【請求項6】
請求項3記載の熱交換器の支持構造において、
前記押圧部材をエアガイドとしたことを特徴とする熱交換器の支持構造。
【請求項7】
請求項1〜3のうちのいずれかに記載の熱交換器の支持構造において、
前記車体の支持部にスライド自在の移動部材が嵌合し、
前記熱交換器は弾性部材を介して移動部材に支持されていることを特徴とする熱交換器の支持構造。
【請求項8】
請求項7記載の熱交換器の支持構造において、
前記移動部材は所定外力で支持状態を離脱する固定解除部で係止されていることを特徴とする熱交換器の支持構造。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれかに記載の熱交換器の支持構造において、
前記熱交換器は車両後方側へ所定距離移動可能な支持構造で、且つ、車両前方側への移動は規制されていることを特徴とする熱交換器の支持構造。
【請求項10】
車両前方のバンパアーマチュアと、その車両後方側に配置される熱交換器と、
前記バンパアーマチュアと熱交換器との間に介装された押圧部材と、
前記熱交換器を車体に対し固定する固定部と、
前記熱交換器が固定部から離脱したときに支持状態を維持しつつ、車両後方側へ所定距離移動可能に支持される支持部を有することを特徴とする車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−132960(P2008−132960A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124674(P2007−124674)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】