説明

熱交換器の管束を内蔵した触媒燃焼反応器及び触媒構造体

【課題】触媒燃焼反応を実施し、この際発生する燃焼熱エネルギーを回収する際、外部への放熱ロスを最小限にし、且つ、燃焼反応後の被燃焼反応流体が反応器外表面に接する箇所を最小限にし、これによる耐熱性や耐熱且つ耐食性の高級材使用量が最小限にとなる構造の触媒燃焼反応器と触媒構造体を提供する。
【解決の手段】伝熱管の両端に管板を有する管束を内蔵する熱交換器部及び被燃焼反応流体の流入面及び燃焼反応後の流体の流出面となる開口部を有する触媒構造体を内蔵する触媒構造体部が外套で一体構造となった触媒燃焼反応器であって、管束と触媒構造体が、反応器内部の接合部で、管束の一方の管板と触媒構造体の一方の開口部で連結した構造であって、更に、外套が管束と触媒構造体の周囲を取り囲む形状で、熱交換器部と触媒構造体部のもう一方の開口部への連絡流路を確保した構造である触媒燃焼反応器を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体の触媒燃焼反応を実施するにあたり、燃焼反応での高温或いは高温且つ腐食雰囲気下で、該燃焼反応で発生する熱エネルギーを効率的に回収する触媒燃焼反応器、及び触媒構造体であって、殊に炭化水素及び/又はハロゲン化炭化水素の酸化反応に適した触媒燃焼反応器、触媒構造体及びこれらを用いた触媒燃焼反応方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
触媒燃焼反応器は固定層、流動層ならびに移動層に形状から大別され、中でも固定層触媒反応器は化学工業で広く採用されている。固定層触媒燃焼反応器は伝熱方式により、更に(a)断熱式、(b)中間熱交換・多段断熱式、(c)原料中間供給・多段断熱式、(d)自己熱交換式、(e)多管熱交換式、(f)直火加熱式に分類され、反応熱の大小によりこれらの伝熱方式が選定される(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
一般に固定床触媒反応器で酸化反応を行う場合、触媒層通過後の流体は反応熱により高温になるため、反応熱の回収方式としては、これら分類中の自己熱交換方式の他に、断熱式反応器の流入及び流出流体を熱交換器で熱交換する方式が採用される。
【0004】
反応により腐食性ガスの生成を伴うような、例えばハロゲン化炭化水素を酸化反応する場合は、高温且つ腐食性の流体が生成し、該流体と接触する装置材質は、金属材料を使用する場合には、その金属材料として高Ni高Cr含有Fe基合金、Cr含有Ni基耐熱耐食合金等の耐食性の優れた、いわゆる高級材質を使用する必要がある。
【0005】
また、固定床触媒装置内の触媒構造体の配置は、単位触媒量当たりの流体処理量、いわゆる空間速度を均一に高める配置とすることで、触媒効率の向上、且つ触媒の均一寿命化を図る必要があり、更に、被燃焼反応流体の流通を円滑に行うために、触媒自身の圧力損失を最小とする配置とする必要がある。
【0006】
悪臭ガス及び/または揮発性有機化合物を含有する被浄化空気中に含まれる有害ガスを、触媒燃焼反応器を用いて燃焼・浄化して高温の浄化空気とする触媒浄化装置であって、少なくとも、被浄化空気を高温浄化空気で予熱するための熱交換器、スタートアップ時に使用する予熱器、可燃物供給手段、及び触媒燃焼反応器を前記被浄化空気が、この順序で流れるが如く配された触媒浄化装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の反応器本体及び高温浄化ガスを熱交換器へ導入するための外部連絡配管は、燃焼反応後の高温浄化ガスと接触する構造となっている。
【0007】
円筒形の反応器ケーシング、熱交換器、熱交換器へ被処理ガスを導入するための配管、処理された排ガスがケーシングから排出されるための配管からなり、熱交換器が第一の分岐管と熱接触を制限された第二の配管を持つ排ガス浄化装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2のFIG.2に示されているように、高温浄化ガスは触媒層出口部と内蔵された管束の間が、反応器本体外表面と接触した構造となっている。
【0008】
これらの従来技術に記載されている触媒反応器は、付属する熱交換器内で燃焼反応後の高温浄化ガスにより被処理流体の予熱を行うものであるが、反応器本体及び高温浄化ガスが流通する配管が外表面と接触することによる放熱について考慮されておらず、また、高温或いは高温且つ腐食性流体との接触部位を減少することは考慮されていない。
【0009】
また、触媒を触媒式浄化装置内部に接触表面を多くすることで触媒効率を高めるために斜めに設ける装置が開示されているが、反応熱を被処理流体の予熱源として回収すること、及び高温或いは高温且つ腐食性流体との接触部位を減少することは考慮されていない(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
マンガンおよび銅の酸化物を有する第一の触媒層と少なくとも一種の貴金属を有する第二の触媒層とを有するガス透過性触媒床を含む処理室を有することを特徴とする廃ガス中の汚染物質の接触酸化装置が開示されているが、触媒効率を高める配置については考慮されていない(例えば、特許文献4参照)。また、反応熱を被処理流体の予熱源として回収すること、及び高温或いは高温且つ腐食性流体との接触部位を減少することは考慮されていない。
【0011】
また、悪臭成分、塵埃等の有害成分を含む被処理流体を燃焼させると共に、被処理流体中のばい菌を死滅させるための脱臭装置であって、被処理流体を高温浄化空気で予熱する熱交換器、燃焼室へ火炎を放射するバーナ、及び未処理ガスを燃焼室内の高温雰囲気内を蛇行状に進ませ、それ自身からの輻射熱を十分に受けさせるためのセラミックス多孔版からなる脱臭装置が開示されている(例えば、特許文献5参照)。該反応器では、燃焼室と管束とを独立とすることでメンテナンス性を向上させることは考慮されていない。
【0012】
ディーゼルエンジン排気ガスの浄化用触媒装置であって、円筒形或いは2個の矩形触媒の内部から外部或いは外部から内部へ被処理流体を流通させることにより、触媒への煤の付着を軽減する装置が開示されているが、触媒効率を高めるための配置については考慮されていない(例えば、特許文献6参照)。また、反応熱を被処理流体の予熱源として回収すること、高温或いは高温且つ腐食性流体との接触部位を減少することは考慮されていない。
【0013】
【特許文献1】特開平10−156142号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】米国特許第5466421号明細書(クレーム)
【特許文献3】特公昭51−7245号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開昭56−97525号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開平5−39912号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】実開平6−30415号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】「化学工学便覧」,改定五版,丸善株式会社,1988年3月,p1118
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
触媒効率が均一に且つ最も高くなる様に触媒を内装した反応器内で触媒燃焼反応を実施し、この際発生する反応熱エネルギーを、外部への放熱が最小限となる様に回収し、且つ、燃焼反応後の高温或いは高温且つ腐食性流体と触媒反応装置との接触部位を最小限にすることで耐熱性或いは耐熱且つ耐食性の高級材質使用量が最小限となる様な、触媒燃焼反応器、及び触媒構造体とこれらを用いた触媒燃焼反応方法の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成したものである。
【0016】
即ち、伝熱管(4a)の両端に管板(4b、4c)を有する管束(4)を内蔵する熱交換器部(2)と被燃焼反応流体の流入面及び燃焼反応後の流体の流出面となる開口部を有する触媒構造体(7)を内蔵する触媒構造体部(3)が外套で一体構造となった触媒燃焼反応器(1)であって、管束(4)と触媒構造体部(3)が、反応器内部の接合部(12)で、管束(4)の一方の管板(4b)と触媒構造体の一方の開口部(7b)で連結した構造であって、更に、外套が管束と触媒構造体の周囲を取り囲む形状で、熱交換器部(2)と触媒構造体部(3)のもう一方の開口部への連絡流路(13)を確保した構造である触媒燃焼反応器、並びに被燃焼反応流体の流入面及び燃焼反応後の流体の流出面(7a及び7b)となる2つの開口部を有する触媒体4個(8)から成り、かつ該触媒体の開口部の何れか一方(7b)が、直方体の側面を構成する様に配置された触媒構造体(7)を発明した。当該触媒燃焼反応器と触媒構造体にて、気体である被燃焼反応流体(14)を、熱交換器部(2)の伝熱管(4a)外部に流通し、連絡流路(13)を経由し触媒構造体(7)に導入し、燃焼反応を行う。その後、当該触媒構造体の一方の開口部(7b)より燃焼反応後の流体(15a)を、反応器内部の接合部(12)を経て、伝熱管(4a)内部に導き、ここで被燃焼反応流体(14)と熱交換し反応器(1)外部に排出する燃焼反応方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
本発明により、触媒燃焼反応で、400℃以上の高温或いは高温且つ腐食性雰囲気となるにも拘らず、燃焼反応後の流体が、触媒反応装置と接触する部位を低減し、耐熱性及び耐食性を有する高価な材料の使用量が大幅に軽減でき、触媒反応器の本体、特に外表面の大部分は、一般に用いられる炭素鋼あるいはステンレス鋼とすることができた。
【0018】
しかも、触媒燃焼後の高温の反応流体が、直接反応器本体の外表面に接する面積が、極めて少なく、所謂、放熱による熱エネルギーロスが大幅に抑制された。
【0019】
更に、管束と触媒構造体が各々独立支持体で固定され、その接合部が脱着可能な構造であることから、触媒とその触媒構造体と、伝熱管と該伝熱管両端の管板(4b)を各々個別に解体点検が出来、触媒燃焼反応器の性能維持に必要な点検、清掃等の設備保守が極めて容易に出来た。
【0020】
以下に本発明の実施の形態を、図1〜6により、詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明の触媒燃焼反応器は、基本的には熱交換器部(2)及び触媒構造体部(3)からなる。
【0022】
熱交換器部(2)は伝熱管(4a)と該伝熱管の両端に管板(4b、4c)を有する管束(4)を内蔵する。管板(4b、4c)は伝熱管(4a)を流体が通過できるよう開口があり、その開口部分に伝熱管が連結されている。伝熱管(4a)はその管内を流体が通過できるものであればその形状は制限されないが、通常直線状の円形管が用いられる。また、伝熱管は1又は2本以上からなる。
【0023】
一方、触媒構造体部(3)は触媒構造体(7)を内蔵し、被燃焼反応流体(14)の流入面及び燃焼反応後の流体(15a)の流出面となる開口部(7a及び7b)を有する。触媒構造体の一方の開口部(7b)は管束の一方の管板(4b)と連結した構造である。
【0024】
触媒燃焼反応器(1)は、外套が熱交換器の管束(4)及び触媒構造体(7)の周囲を取り囲む形状で、熱交換器部(2)から触媒構造体部(3)のもう一方の開口部(7a)への被燃焼流体の連絡流路(13)を確保した構造である。
【0025】
触媒燃焼反応器の熱交換器部の外套には被燃焼反応流体(14)の流入口(5)が、熱交換器の管板(4c)には燃焼反応後の流体(15)の流出口(6)が設けられている。
【0026】
被触媒燃焼反応流体(14)は、流入口(5)から最初に管束(4)の伝熱管(4a)の外周部に導入され、熱交換器部(2)を通過する間に、伝熱管(4a)内部を通過する高温の燃焼反応後の流体(15a)により予熱された後、連絡流路(13)に従って、触媒構造体部(3)に導かれる。
【0027】
触媒構造体部(3)では、予熱された被燃焼反応流体(14)が一方の開口部(7a)から触媒構造体(7)に導入され、ここを通過する間に、所謂、触媒燃焼反応する。
【0028】
この触媒燃焼後の流体(15a)は、触媒構造体のもう一方の開口部(7b)と触媒構造体側管板(4b)との接合部(12)を経由し、伝熱管(4a)の内側に導かれ、管壁を隔てて、被触媒燃焼反応流体(14)を予熱することで冷却、即ち、熱回収が実施された後、流出口(6)より触媒燃焼反応器(1)外部に排出される。
【0029】
ここで、触媒構造体(7)とは、いわゆる触媒層部分であり、触媒及び該触媒の保持体からなる。
【0030】
本発明の触媒体に用いる触媒は、触媒燃焼反応に用いられるものであれば種類に特に制限はなく、一般的ないわゆる公知な方法によって調製された活性成分及び担体からなる。例えば、活性成分としては、白金、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、銅酸化物、マンガン酸化物等を挙げることができ、担体としては、アルミナ、シリカ、ゼオライト、ベーマイト、シリカ−アルミナ等を挙げることができる。活性成分を含有させる方法としては、含浸法、浸漬法、スプレー含浸法またはイオン交換法等の公知の方法を用いることが出来る。
【0031】
又、触媒の保持体とは、触媒を充填或いは保持できる形状であれば良く、触媒構造体の形状が反応中に大きく変化しない構造であれば特に制限はなく、例えば被燃焼反応流体の流入部及び燃焼反応後の流体の流出部を有する金属製円筒或いは金属製箱及び金網枠等であり、触媒の形状に合わせて使用することが出来る。これらの保持体にグラニュール、ペレット、ボール、タブレット、押出品等の触媒を充填することによって触媒構造体が構成される。被燃焼反応流体が触媒構造体を通過する際の圧力損失を低減したい場合には、特に触媒としてセラミックス等で形成したハニカム体に触媒を担持したハニカム型触媒を使用するのが有効である。また保持体は触媒自体が自立に必要な十分な強度を有する場合には触媒の転倒防止等の考慮のみで良く、比較的簡単な構造とすることができる。
【0032】
熱交換器の管束(4)と触媒構造体(7)は、反応器内部の接合部(12)で、管束の一方の管板(4b)と触媒構造体部の燃焼反応後の流体の流出面となる開口部に該当する触媒構造体の一方の開口部(7b)で連結し、もう一方の管板(4c)は燃焼反応後の流体(15b)の流出口(6)に接合されている。
【0033】
ここで、着目すべきことは、熱交換器の伝熱管(4a)管内側と触媒構造体(7)の一方の開口部(7b)を繋ぐ接合部(12)が、触媒反応器(1)の内部の極めて限られた場所に限定され、触媒反応器(1)の本体外表面部と直接接しないという特徴を有していることである。
【0034】
即ち、触媒燃焼反応を実施した場合、発熱反応であるため、燃焼反応後の流体は一般に400℃以上の高温となる。更に、被触媒燃焼流体にハロゲン化炭化水素を含有している場合は、燃焼反応後の流体にハロゲン化水素と燃焼により生成した水分が混入することとなるため、装置上で深刻な問題である腐食を考慮する必要がある。この対策として、耐高温で、場合によっては耐腐食性も兼ね備えた、高Ni高Cr含有Fe基合金、Cr含有Ni基耐熱耐食合金等の高価な材料を採用することとなる。
【0035】
一方、図2に示すように、本発明の触媒燃焼反応器(1)を用い被燃焼反応流体(14)の触媒燃焼反応を実施した場合は、触媒構造体の一方の開口部(7b)より流出した燃焼反応後の流体(15a)が、反応器内部の接合部(12)から、直ちに熱交換器部(2)に導かれ、冷却される為、高温或いは高温且つ腐食性の流体と接触する箇所が、極めて少ない面積に限定され、これによって、高価となる材料を採用する部分を最小化できることとなった。尚、この際の高価な材料は、触媒燃焼後の流体の性状や組成に対し、その耐熱性、耐食性により決定されるものであるが、腐食性が無い場合400℃以上では、ステンレス鋼が用いられる。更に、高温で且つ腐食性を有する場合には、高Ni高Cr含有Fe基合金、Cr含有Ni基耐熱耐食合金等の、更に高価な材料を用いることとなる。
【0036】
何れの材料も、高温下での強度が期待できる700℃以下迄で、金属材料で触媒反応器を製作する場合に、本発明の効果が最も期待できるが、耐熱性並びに耐食性が許容できる材料を使用できるのであれば、特に限定するものではない。
【0037】
更に、良好なことに、高温の燃焼反応後の流体(15a)が内部であって、且つ、触媒燃焼前の比較的低温の被触媒燃焼反応流体(14)が、その外周部を取り囲む構造であることより、触媒反応器(1)の本体は、炭素鋼やステンレス鋼等の一般的な金属材料が用いられるだけでなく、触媒反応器の外表面からの放熱を抑制する為の、所謂、保温材が軽減でき、しかも、放熱ロスが大幅に軽減できた。
【0038】
当該接合部(12)の構造には特に制限されないが、フランジ構造、或いは熱交換器の差込構造等の手段にて脱着可能な構造であることが好ましい。この際、接合部(12)における正規流路を流体の一部が通過しない所謂ショートパスが懸念される場合は、これを防止する必要があるが、グランドパッキン等を用いた公知のシール構造を用いることにより対応することが可能である。
【0039】
また、触媒構造体(7)及び管束(4)は反応器(1)内部で、個々に触媒構造体の支持体(17)と管束の支持体(16)に独立し固定される構造である場合、熱交換器伝熱管(4a)の交換またはクリーニング等の熱交換器部(2)に関わる作業や、触媒の活性が低下した場合などに、触媒を取り替えることになるが、その触媒取替え作業などが、極めて容易で且つ、効率的に実施できる為、好都合となる。
【0040】
本願のもう一つの発明である触媒構造体(7)は、被燃焼反応流体の流入面及び燃焼反応後の流体の流出面(7a及び7b)となる2つの開口部を有する触媒体(8)の4個からなり、該触媒体の開口部の何れか一方が、直方体の側面に位置する様に配置されている。各触媒体の流出面が内側に対向する触媒構造体を例に説明すると、4個の触媒体の流出面(7b)部分を、触媒体を上面から見たとき四角形の四辺上に配置し、各触媒体の燃焼反応後の流体の流出面(7b)をシール用部材(18)により連結する。この触媒構造体は前記触媒燃焼反応器に用いることができる。
【0041】
触媒体の形状としては、特に制限はなく、直方体(図3(a)乃至図4(c)並びに図6(a)及び図6(b)の符号(8)参照)、円筒状(図5(a)乃至図5(c)の符号(8)参照)等の各種形状のものが使用可能であるが、反応装置設計の容易性及び反応効率の点から特に直方体の形状が好ましい。
【0042】
何れか一方の開口部の連結方法としては、シール用部材により連結されるが、各触媒体の連結する開口部間の隙間を埋め、流体がショートパス等のリークを生じない方法であれば特に制限はなく、耐熱性の接着剤と耐熱性及び/又は耐食性のある金属材料、或いはレンガ等の耐火材により連結する方法を用いることができる。また、触媒構造体の上部又は下部は、シール用部材等で遮蔽するか、更に反応容積を大きくする必要がある場合には、触媒体(図4(11))を形成一体化もできる。
【0043】
該シール用部材としては、各触媒体の1つの開口部同士を連結できる部材で有れば特に制限はなく、例えば、高Ni高Cr含有Fe基合金、Cr含有Ni基耐熱耐食合金等の金属板あるいはレンガなどの耐火材及び、触媒体と金属板の隙間を埋める断熱材(ケイ酸カルシウム、石綿、シリカアルミナ系耐熱繊維など)及び耐熱性接着剤を用いることができる。該シール用部材の流体に対する遮蔽効果により高温或いは高温且つ腐食性の流体と反応器材との接触を避けることができる。
【0044】
通常、触媒体の被処理流体の流入面及び処理流体の流出面以外の外面部をシール用部材によりシールする。シール用部材は、触媒層の反応温度低下を防止するために断熱材で保温する。シール用部材により高温化した触媒と反応器材との接触を避けることができる。触媒体の2つの開口部(連結された開口部、連結されていない開口部)のどちらでも、被処理流体の流出面部あるいは処理流体の流入面部とすることができるが、高温或いは高温且つ腐食性の処理流体と反応器材との接触を低減させる観点から、特に連結された開口部を流出面部とする、即ち流出面が内側に内向することが好ましい。
【0045】
本発明の触媒体(8)は、触媒及び該触媒の保持体からなる。
【0046】
本発明の触媒体に用いる触媒の種類に特に制限はないが、前記触媒燃焼反応器と同様の触媒が用いられる。触媒の形状は特に制限が無く、ハニカム状、或いはグラニュール、ペレット、ボール、タブレット、押出品、ストランド圧縮体、中空ストランド、サドル体等の公知である形状のものが使用可能であり、最終的に後述する保持体に充填して使用しても良い。また、触媒体は、複数個のハニカム状触媒を組み合わせて1個の触媒体を形成することもできる。触媒の活性成分の含有は触媒の成形体を形成後に行うことも出来る。更に、触媒は乾燥や焼成などの前処理を行うことも出来る。
【0047】
触媒構造体の形状は該触媒体の開口部の何れか一方が、直方体の側面を構成する様に配置し得るように触媒が保持できる形状であり、且つ該触媒体による被燃焼反応流体の流入面及び燃焼反応後の流体の流出面を確保できる形状であれば良く、反応中に大きく変化しない構造であれば特に制限はなく、例えば被燃焼反応流体の流入部及び燃焼反応後の流体の流出部を有する金属製枠(図3(9)、図6(9))及び金網枠(図4(9))或いは金属性円筒(図5(9))等を使用することが出来る。被燃焼反応流体が触媒構造体を通過する際の圧力損失を低減したい場合には、特に触媒としてセラミックス等で形成したハニカム体に触媒を担持したハニカム型触媒を使用するのが有効である。また、触媒体は、複数個のハニカム状触媒を組み合わせて1個の触媒体を形成することもできる。触媒の活性成分の含有は触媒の成形体を形成後に行うことも出来る。更に、触媒は乾燥や焼成などの前処理を行うことも出来る。
【0048】
更に該触媒構造体の良好な点としては、触媒体を4個に分割した結果、反応装置がコンパクトになったばかりか、被燃焼反応流体の触媒層流通に於ける不用意な偏流を極めて低減することができ、更に、触媒体全面に均一に被燃焼反応流体を流通させることで、低圧力損失で触媒効率を均一に高めることが出来た。
【0049】
本発明の触媒燃焼反応器及び触媒構造体を用いた触媒燃焼反応方法は、炭化水素やハロゲン化炭化水素の酸化反応、一酸化炭素の酸化触媒等の公知の各種触媒反応に利用することができるが、高温或いは高温且つ腐食性の処理流体と反応器材との接触を低減させる長所を有する点から、好ましくは発熱反応、特に好ましくは炭化水素及び/又はハロゲン化炭化水素の酸化反応に利用することが有益である。炭化水素としては、エチレン等の不飽和炭化水素、エタン等の飽和炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素の酸化反応に適用できる。ハロゲン化炭化水素としては、塩素化炭化水素、特に二塩化エタン、塩化エチル、塩化ビニルモノマー、クロロベンゼンなどの塩素化炭化水素の酸化反応に適用することが好ましい。
【0050】
反応は、所定の反応開始必要温度に調整された被燃焼反応流体を触媒構造体へ流通、即ち、各触媒体の流入面へ流通し、燃焼反応後の流体が各触媒体の流出面から排出することにより完了する。反応開始必要温度は特に限定されないが、100〜700℃であることが好ましい。またガスの空間速度は特に限定されないが、空間速度100〜500,000hr−1であることが好ましい。
【0051】
通常、運転管理上、触媒体入口、触媒層、触媒体出口の温度計測を熱電対により測定する。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、触媒を内装した反応器内で、触媒燃焼反応を実施し、この際発生する燃焼熱エネルギーを回収する際、外部への放熱ロスを最小限にし、且つ、燃焼反応後の流体が反応器外表面に接する箇所を最小限にし、これによる耐熱性や耐熱且つ耐食性の高級材使用量が最小限にとなる構造の触媒燃焼反応器及び当該触媒反応器を用いた触媒燃焼反応方法を提供することが出来る。
【実施例】
【0053】
以下に、本発明の実施例をもって、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
実施例1
図1に示す触媒構造体及び反応装置を用い、エチレン及び二塩化エタン(以下EDCと記す)の酸化反応を行った。触媒体(8)は巾1,000mm×奥行き500mm×高さ3,000mmの直方体のハニカム状触媒で、セル数:350cpsi、触媒成分・コート量:Pt(1%)担持アルミナ・180g/lであった。触媒構造体(7)は、触媒体(8)4個の流出面(7b)をシール材(材質:Cr含有Ni基合金)により連結した。反応は、エチレン:4400volppm、EDC:2750volppm、酸素11.3vol%、窒素:balanceを含む被燃焼反応流体25500Nm/Hを、熱交換器部の伝熱管外側に供給した。その時のガス温度は150℃であった。この際の被燃焼反応流体及び燃焼反応後の流体の流れは図2に示す通りである。
【0055】
反応器系外に排出された燃焼反応後の流体中のエチレン及びEDCをガスクロマトグラフィにより分析した結果、エチレン及びEDC共に1volppm未満であった。尚、EDC1molは燃焼反応により腐食性を有する2molの塩化水素を発生した。
【0056】
触媒構造体に流入する被燃焼反応流体の温度は350℃、触媒体流出直後の燃焼反応後の流体温度は650℃、熱交換器管内を経由し反応器系外に排出された燃焼反応後の流体の温度は470℃であった。尚、4個の触媒体は、各触媒体内部の温度分布が均一であった。即ち、被処理流体は、遍流を生じることなく、均一に触媒体へ流通していた。
【0057】
触媒反応器本体はステンレス鋼製で、650℃の塩化水素による腐食性雰囲気に曝され反応器内部の接合部(12)はCr含有Ni基耐熱耐食合金を使用し、その表面積は2mであった。
【0058】
更に、高温雰囲気下にさらされる部位は、反応装置(1)内部の極めて限られた領域に限定され、反応装置(1)外表面と被燃焼反応流体が接触する触媒燃焼反応器内壁の温度は350℃であるため、この面からの放熱防止上必要とされる175mmの珪酸カルシウムによる保温により、放熱量は燃焼反応熱量の0.3%に抑えることが出来た。
【0059】
更に、反応装置(1)の内部と外部の圧力差による破損を防止するための強度の確保や、高温雰囲気下における損傷等の防止など、反応装置(1)の外表面に高級材料を殆ど用いる必要が無かった。
【0060】
比較例1
実施例1と同じ触媒体4個を、図7に示すように被処理流体流路長が500mmとなる直方体の触媒構造体(19)に連結する。該触媒構造体を実施例1と同じ反応に供した場合、触媒体流入面(7a)、即ち反応器内壁の温度は300℃、触媒体流出面(7b)の温度は650℃、熱交換器部(2)出口の温度は470℃であった。
【0061】
この結果、高温雰囲気下にさらされる反応装置(20)部位(Cr含有Ni基耐熱耐食合金)の表面積は、12m以上であった。
【0062】
更に、反応器(20)の外表面はその大半を占める11mにもなり、放熱量の軽減や、反応器(20)外表面の損傷や強度に、特段の配慮が必要となった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の触媒燃焼反応器の一例を示す
【図2】本発明の触媒燃焼反応器を用いた反応方法における流体の流れを示す。
【図3】本発明の触媒構造体の一例を示す。
【図4】本発明の触媒構造体の一例を示す。
【図5】本発明の触媒構造体の一例を示す。
【図6】本発明の触媒構造体の一例を示す。
【図7】比較例を示す。
【符号の説明】
【0064】
1 触媒燃焼反応器
2 熱交換器部
3 触媒構造体部
4 管束
4a 伝熱管
4b 管板
4c 管板
5 被燃焼反応流体の流入口
6 燃焼反応後の流体の流出口
7 触媒構造体
7a 触媒構造体の一方の開口部
7b 触媒構造体の一方の開口部
8 触媒体
9 保持体
10a触媒体の一方の開口部
10b触媒体の一方の開口部
11 触媒構造体上部の触媒体(一例)
12 接合部
13 連絡流路
14 被燃焼反応流体
15a燃焼反応後の流体
15b燃焼反応後の流体
16 管束の支持体
17 触媒構造体の支持体
18 シール用部材
19 比較例1の触媒構造体
20 比較例1の反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管の両端に管板を有する管束を内蔵する熱交換器部及び被燃焼反応流体の流入面及び燃焼反応後の流体の流出面となる開口部を有する触媒構造体を内蔵する触媒構造体部が外套で一体構造となった触媒燃焼反応器であって、管束と触媒構造体が、反応器内部の接合部で、管束の一方の管板と触媒構造体の一方の開口部で連結した構造であって、更に、外套が管束と触媒構造体の周囲を取り囲む形状で、熱交換器部と触媒構造体部のもう一方の開口部への連絡流路を確保した構造である触媒燃焼反応器。
【請求項2】
管束の一方の管板と連結する触媒構造体の開口部が燃焼反応後の流体の流出面となる開口部であり、もう一方の開口部が被燃焼反応流体の流入面である請求項1に記載の触媒燃焼反応器。
【請求項3】
管束及び触媒構造体が支持体で、各々独立して固定され、且つ、その接合部が脱着可能な構造である請求項1乃至2のいずれかに記載の触媒燃焼反応器。
【請求項4】
被燃焼反応流体の流入面及び燃焼反応後の流体の流出面となる2つの開口部を有する触媒体4個からなり、且つ、該触媒体の開口部の何れか一方が、直方体の側面に位置する様に配置された触媒構造体。
【請求項5】
直方体の側面に位置する触媒体の開口部がシール用部材で連結された請求項4記載の触媒構造体。
【請求項6】
各触媒体が直方体である請求項4乃至5のいずれかに記載の触媒構造体。
【請求項7】
各触媒体がハニカム状触媒である請求項4乃至6のいずれかに記載の触媒構造体。
【請求項8】
各触媒体の被燃焼反応流体の流出面が内側に対向する請求項4乃至7のいずれかに記載の触媒構造体。
【請求項9】
触媒構造体として請求項4乃至8のいずれかに記載の触媒構造体を使用する請求項1乃至3のいずれかに記載の触媒燃焼反応器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−34682(P2009−34682A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274045(P2008−274045)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【分割の表示】特願2003−92127(P2003−92127)の分割
【原出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】