説明

熱交換器の表面処理方法、表面処理剤、及びアルミニウム製熱交換器

【課題】フラックスが残留しやすい非腐食性フラックスブレージング製熱交換器において、親水皮膜や化成皮膜の劣化に伴い発生するフラックスに特有の臭気を効率的抑制することができる熱交換器の表面処理方法、及び、この方法によって得られるアルミニウム製熱交換器を提供すること。
【解決手段】アルミニウム材からなる非腐食性フラックスブレージング製熱交換器に対し、酸洗処理工程、化成処理工程、防臭処理工程を施す熱交換器の表面処理方法であって、前記酸性洗浄剤は、硝酸及び硫酸を含有し、且つ鉄塩を所定量含有するものであり、前記表面処理剤は、ビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子、及びポリアリルアミン樹脂を前記シリカ粒子と前記ビニルアルコール系重合体との合計含有量が所定量となるように含有し、前記シリカ粒子と、前記ビニルアルコール系重合体との質量比が所定の比率であることを特徴とする熱交換器の表面処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の表面処理方法、表面処理剤、及びアルミニウム製熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
空調装置の熱交換器部分や空気清浄機の熱交換器部分は、熱交換効率を向上させるためにアルミニウムフィンが狭い間隔でアルミニウム製チューブ間に保持された複雑な構造となっている。このため、アルミニウムフィンの表面を、必要に応じて化成処理した後で、親水化することにより、冷房時に凝縮された水の排出を容易にしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
熱交換器のフィン等は、アルミニウム合金をろう付けによって組み立てられたものであることが多い。ろう付けの方法としては、フラックスを用いる方法と用いない方法に分けることができる。フラックスを用いない方法としては真空ろう付け法(VB法)、フラックスを用いる方法としては、フッ化物系フラックスを使用する非腐食性フラックスブレージング法(NB法)を挙げることができるが、耐食性に優れ、設備コストが安いことからNB法に移行しつつある。しかしながら、NB法は、水に溶かし、スラリー状にしたフラックスを熱交換器に付着させるものであるために、ろう付け後にフラックスが残留し、これがもとで悪臭が発生するという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、残留フラックスを除去する必要があるが、化成処理の前工程として従来行われている酸洗では、残留フラックスを完全に除去することは難しい。例えば、特許文献2には、親水化処理の前に、硫酸、フッ化水素酸、硝酸、及びリン酸から選ばれた少なくとも1種を含む酸性水溶液によって化学エッチング処理を施し、その上にリン酸Zr、リン酸Tiの水溶液による化成処理を行うアルミニウム含有金属材料の表面処理方法が開示されているが、このような表面処理方法においても、残留フラックス等の偏析物の除去効果が充分ではなかった。また、酸洗後の化成処理でも残留フラックスを隠蔽することは困難であった。
【0005】
その他の熱交換器の表面処理方法としては、化成皮膜を形成し、その上に、第1級、第2級、又は第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、アミド基、カルボキシル基、スルホン基、エチレンオキシド基、ホスホン基、及びヒドロキシル基から選ばれた1種以上の親水性基と、アミド基、カルボキシル基及びヒドロキシル基から選ばれ、上記選ばれた親水性基とは異種の架橋反応性基とを有する水溶性重合体を含む樹脂成分(a)と、樹脂成分の架橋当量を超える合計量の、(i)3価クロム化合物及び(ii)フルオロ錯塩化合物を含む架橋剤成分(b)との反応生成物を含む親水性・水難溶性樹脂皮膜からなる第2保護層を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この方法は、非腐食性フラックスブレージング法による熱交換器を対象にしたものではなかった。
【0006】
また、特許文献4には、鉄塩を使用して酸洗を行い、ろう材の偏析物を効果的に除去した後化成処理を行い、次に親水化処理を行う方法が開示されている。しかしながら、このような方法で用いられている化成処理剤は、主に、環境に対する負荷の観点から使用しないことが望まれているクロメート系化成処理剤である。
【0007】
ノンクロム化成処理剤としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等の重金属を皮膜形成成分とする処理剤を挙げることができる。しかし、特にジルコニウム系の化成処理剤等、上述したようなノンクロム化成処理剤により得られる化成皮膜においては、ろう付けされた熱交換器において、均一な化成皮膜を形成できないという問題があり、従来の親水化処理剤により得られる親水皮膜との密着性は充分ではない。このため、長期間の冷却、加熱の繰り返しによって親水皮膜の劣化が進行するとともに、親水皮膜の劣化に伴い、化成皮膜も劣化する。このように、親水皮膜や化成皮膜が劣化して、熱交換器の表面が露出することによって、熱交換器の表面に残留したフラックス特有の臭気が問題となる。
【0008】
特に、引用文献4には、アミド基及び/又はフェノール基を有する有機物からなる臭気抑制剤についての記載があるが、このような臭気抑制剤は、クロメート系化成処理剤に含まれるクロメートに特有な臭気を抑制するために用いられるものであって、ノンクロム化成処理剤を用いて化成処理を行った場合に特有な、親水皮膜や化成皮膜の劣化による臭気の抑制に対して何ら解決手段を提供するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平05−302042号公報
【特許文献2】特開平11−131254号公報
【特許文献3】特開2001−174192号公報
【特許文献4】特開2002−30462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記に鑑み、フラックスが残留しやすい非腐食性フラックスブレージング製熱交換器において、親水皮膜や化成皮膜の劣化に伴い発生するフラックスに特有の臭気を効率的に抑制することができる熱交換器の表面処理方法、及び、この方法によって得られるアルミニウム製熱交換器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アルミニウム材からなる非腐食性フラックスブレージング製熱交換器に、酸性洗浄剤を接触させる酸洗処理工程(1)、酸洗処理工程後の上記アルミニウム材にジルコニウム系化成処理剤を接触させる化成処理工程(2)、及び化成処理工程後の上記アルミニウム材に、表面処理剤を接触させる防臭処理工程(3)を有する熱交換器の表面処理方法であって、上記酸性洗浄剤は、硝酸及び硫酸を含有し、且つ鉄塩を0.01〜5質量%含有するものであり、上記表面処理剤は、ビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子、及びポリアリルアミン樹脂を含有し、上記表面処理剤に含有される上記シリカ粒子と上記ビニルアルコール系重合体との合計含有量が0.2〜25質量%であり、上記シリカ粒子と、上記ビニルアルコール系重合体との質量比が30:70〜70:30であることを特徴とする熱交換器の表面処理方法である。
【0012】
上記鉄塩は、硫酸鉄、硝酸鉄、酢酸鉄及び塩化鉄からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
上記非腐食性フラックスブレージング製熱交換器は、カーエアコン用エバポレーターであることが好ましい。
【0014】
本発明は、上記熱交換器の表面処理方法に用いる前記表面処理剤でもある。
【0015】
本発明は、上記熱交換器の表面処理方法により得られることを特徴とするアルミニウム製熱交換器でもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱交換器の表面処理方法は、アルミニウム材からなる非腐食性フラックスブレージング製熱交換器に、硝酸及び硫酸と、所定量の鉄塩とを含有する酸性洗浄剤を接触させ、これにジルコニウム系化成処理剤を接触させ、更に、ビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子、及びポリアリルアミン樹脂を含有する表面処理剤であって、ビニルアルコール系重合体とシリカ粒子との合計含有量、及び質量比が所定の範囲内のものである表面処理剤を接触させることにより、熱交換器表面において、親水性を発揮する皮膜の密着性を長期に亘り維持可能にするものである。本発明により、悪臭の原因となるフラックスが付着した非腐食性フラックスブレージング製熱交換器に対して、皮膜を効率的に形成するとともに、長期間に亘ってこれが劣化することがなく、熱交換器の素地が露出しないので、熱交換器の表面に残留したフラックスに特有の悪臭の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明は、非腐食性フラックスブレージング製熱交換器に対しても良好な防臭性及び親水性を付与する表面処理方法である。本発明の防臭工程で用いる表面処理剤は、ビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子、及び、ポリアリルアミン樹脂を含有する。上記ビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子、及び、ポリアリルアミン樹脂を含む表面処理剤を用いることにより、非腐食性フラックスブレージング製熱交換器に残留したフラックスを長期に亘って隠蔽し、臭気抑制性及び親水性に優れた皮膜を形成・維持することができるものである。
【0019】
上記ポリアリルアミン樹脂は、下記式(1)で表される構成単位を有するものであれば特に限定されない。上記ポリアリルアミン樹脂の密着性によって、親水性を有する皮膜が長期に亘って劣化することがなく、熱交換器上の残留フラックスを隠蔽し、フラックスに特有の悪臭の発生を抑制することができる。
【0020】
ポリアリルアミン樹脂は水溶性やビニルアルコール系重合体との相溶性に優れる等の特性を有するため、表面処理剤にポリアリルアミン樹脂を添加することによって、アミノ基等を有する類似の構造や特性を有する他の重合体や化合物を添加する場合と比べても、親水性を有する皮膜の密着性を長期に亘って維持させることができ、フラックスに特有の臭気の発生を効率的に抑制することができる。
【0021】
【化1】

【0022】
上記ポリアリルアミン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法によって製造することができる。上記ポリアリルアミン樹脂としては特に限定されず、例えば、「PAA−05」(ポリアリルアミン、重量平均分子量5000、商品名、日東紡株式会社製)、「PAA−15C」(ポリアリルアミン、重量平均分子量15000、商品名、日東紡株式会社製)、「PAA−D11−HCl」(アリルアミン塩酸塩−ジアリルアミン塩酸塩共重合体、重量平均分子量10000、商品名、日東紡株式会社製)等の市販のポリアリルアミン樹脂を使用することができる。上記ポリアリルアミン樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で、そのアミノ基の一部をアセチル化する等の方法によって修飾したもの、アミノ基の一部又は全部が酸により中和されたもの、溶解性に影響を与えない範囲で架橋剤によって架橋したもの等も使用することができる。
【0023】
上記ポリアリルアミン樹脂は、重量平均分子量が下限5000、上限70000の範囲内であることが好ましい。5000未満であると、ポリアリルアミン樹脂の親水性を有する皮膜への取り込みが十分ではなくなり、充分な防臭効果が得られないおそれがあり好ましくない。70000を超えると、表面処理剤の粘性を増大させ、皮膜形成を阻害するおそれがある。上記下限は、10000がより好ましく、上記上限は、25000がより好ましい。なお、上記重量平均分子量は、スチレンポリマーを標準とするGPC法により測定した値である。
【0024】
本発明で用いる表面処理剤中の上記ポリアリルアミン樹脂の含有量は、固形分で下限100ppm、上限5000ppmの範囲内であることが好ましい。100ppm未満であると、充分な防臭効果が得られない可能性があり好ましくない。5000ppmを超えると、表面処理剤の粘性を増大させ、皮膜形成を阻害するおそれがあるとともに、ポリアリルアミン樹脂特有の臭気が問題となるおそれがある。上記下限は、300ppmがより好ましく、上記上限は、1000ppmがより好ましい。
【0025】
本発明で用いる表面処理剤は、さらに、ビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子を含有する。シリカ粒子は、その凹凸の形状から得られる皮膜の親水性を高める作用を有するものであり、ビニルアルコール系重合体により被覆することで、シリカの露出による悪臭を抑え、長期間親水性を保持することができるものである。
【0026】
上記シリカ粒子としては特に限定されず、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等を挙げることができる。上記ヒュームドシリカは、例えば、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等のハロシランを気相中で高温加水分解して製造したものであり、表面積の大きな微粒子である。上記コロイダルシリカは、酸又はアルカリ安定型のシリカゾルを水分散させたものである。シリカ粒子の平均粒径は、下限5nm、上限100nmの範囲内であることが好ましい。上記下限は、7nmがより好ましく、上記上限は、60nmがより好ましい。上記平均粒径が5nm未満であると、処理皮膜の凹凸が不足して親水性が低下し、100nmを超えると、処理剤に大粒径の凝集物が発生し、塗装作業性が低下する。なお、ここでいう平均粒径とは、シリカ粒子の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒径を示し、当該平均粒径は動的光散乱法により測定される。
【0027】
上記シリカ粒子は、ビニルアルコール系重合体により被覆されたものである。上記ビニルアルコール系重合体としては特に限定されないが、なかでもケン化度90%以上のビニルアルコール系重合体が好ましい。上記ケン化度が90%未満であると、親水性に劣る場合がある。上記ケン化度は、95%以上であることがより好ましく、上記ビニルアルコール系重合体は、カルボン酸変性、ケイ素変性、アミン変性、チオール変性等の一部変性したものであってもよい。また、上記ビニルアルコール系重合体は、重合度が下限300、上限1500の範囲内のものであることが好ましく、下限500、上限1300の範囲内のものであることがより好ましい。
【0028】
上記ビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子において、シリカ粒子とビニルアルコール系重合体との質量比(シリカ粒子:シリカ粒子を被覆しているビニルアルコール系重合体)は、下限30:70、上限70:30の範囲内である。上記範囲内にすることによって、シリカ粒子が効果的に被覆され、シリカ粒子の露出を抑制することができる。また、上記ビニルアルコール系重合体によって被覆されたシリカ粒子の平均粒径は、下限5nm、上限1000nmの範囲内であることが好ましい。また、シリカ粒子とビニルアルコール系重合体との質量比や、ビニルアルコール系重合体によって被覆されたシリカ粒子の平均粒径が、上記範囲内のものであることにより、ビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子の被覆状態が良好なものとなり、シリカ粒子が露出することによる臭気の発生を効果的に抑制することができる。
【0029】
上記ビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子の製造方法としては特に限定されず、例えば、シリカ粒子をビニルアルコール系重合体水溶液中で分散する方法等を挙げることができる。ここで、ビニルアルコール系重合体とシリカ粒子とを混合した場合、両者は相互作用により凝集する。このように凝集した凝集物を超音波分散機、微小媒体分散機等により強制的に分散させることにより、上記ビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子を調製することができる。なお、分散機については、単なる撹拌作用のみを有するミキサー等では、凝集物を十分に分散させることができず、ミルのようなすり潰し機能、又は超音波のような微小部分において激しい撹拌効果を有するものを使用する必要がある。このような分散機の具体例としては、例えば、日本精機製作所製の超音波ホモジナイザー(USシリーズ)や、井上製作所製のスーパーミル(HM−15)を挙げることができる。このようにして強制的に分散されることにより、ビニルアルコール系重合体とシリカ粒子との凝集状態が解消され、個々のシリカ粒子の表面がビニルアルコール系重合体で被覆された、被覆状態の良好な粒子が得られ、水媒体中で分散体として安定して存在することになる。
【0030】
上記表面処理剤は、上記ポリアリルアミン樹脂及びビニルアルコール系重合体以外の親水性樹脂を含むものであってもよい。上記親水性樹脂としては特に限定されず、従来公知の親水性樹脂を使用することができるが、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、スルホン酸基及び/又はエーテル基を有する水溶性又は水分散性の親水性樹脂等を挙げることができる。なかでも、上記親水性樹脂としては、得られる皮膜が良好な親水性を示すため、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、水溶性ナイロン、これらの重合体を形成するモノマーの共重合体、2−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート/アクリル酸2−ヒドロキシルエチル共重合体等のポリオキシエチレン鎖を有するアクリル系重合体等が好ましい。
【0031】
これらの親水性樹脂は、優れた親水性及び耐水性を有するとともに、自身の臭気がなく、臭気物質が吸着しにくいので、得られる皮膜は水滴や流水に曝されても劣化しにくい。このため、所望により含有され、自身の埃臭や吸着物質の不快臭を発するシリカ等の無機物や他の残存モノマー成分が露出しにくくなり、被処理剤自体が飛散して埃臭を発したり、腐食することが妨げられる。
【0032】
上記表面処理剤中におけるシリカ粒子とビニルアルコール系重合体の合計含有量は、下限0.2質量%、上限25質量%の範囲内である。0.2質量%未満であると、充分な造膜性及び親水性が得られない。25質量%を超えると、得られる表面処理剤において凝集しやすくなり、作業性や皮膜物性に劣る。上記下限は、1質量%が好ましく、上記上限は、20質量%が好ましい。
【0033】
本発明の表面処理剤の溶媒は特に限定されないが、廃液処理等の観点から水を主体とするものが好ましい。また、造膜性を向上させ、より均一で平滑な皮膜を形成するために溶剤を併用してもよい。溶剤としては、塗料に一般的に用いられ、水と均一に混合することができるものであれば特に限定されず、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系の有機溶剤等を挙げることができる。上記溶剤の使用量は、本発明の表面処理剤に対して、下限0.01質量%、上限5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0034】
本発明の表面処理剤は、さらに、他の添加剤を含有するものであってもよい。上記他の添加剤としては特に限定されず、例えば、硬化剤、分散剤、防錆添加剤、抗菌剤、臭気抑制剤、顔料、界面活性剤、潤滑剤、消臭剤等を挙げることができる。
【0035】
上記硬化剤としては、特に限定されず、例えば、エポキシ化合物、ジアルデヒド化合物、フェノール化合物、ウレタン化合物等を挙げることができる。
【0036】
上記分散剤としては特に限定されず、界面活性剤、分散樹脂等を挙げることができる。
【0037】
上記防錆添加剤としては特に限定されず、例えば、タンニン酸、イミダゾール化合物、トリアジン化合物、トリアゾール化合物、グアニン化合物、ヒドラジン化合物、ジルコニウム化合物等を挙げることができる。なかでも、防錆性を効果的に付与することができることから、ジルコニウム化合物が好ましい。上記ジルコニウム化合物としては特に限定されず、例えば、KZrF等のアルカリ金属フルオロジルコネート;(NHZrF等のフルオロジルコネート;HZrF等のフルオロジルコネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化ジルコニウム;酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0038】
上記抗菌剤としては特に限定されず、例えば、ジンクピリチオン、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、1,2−ベンズイソチアゾリン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン3−オン、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N−ジメチル−N’−フェノール−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジサルファイド、N−(トリクロロメチルチオ)−4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、メタホウ酸バリウム等を挙げることができる。上記抗菌剤は、表面処理剤に対して10ppm以上の濃度となるように添加することによって効果を発揮することができる。
【0039】
上記臭気抑制剤としては特に限定されず、例えば、アミド基及び/又はフェノール基を有する有機物等を挙げることができる。これらの臭気抑制剤は、特にクロメート系の化成処理剤を用いたときに、クロメート特有の臭気を抑制することができる。このため、ジルコニウム系化成処理剤等、ノンクロム化成処理剤を用いて化成処理を行う限りにおいては、これらの臭気抑制剤を含有させる必要は無い。
【0040】
上記アミド基及び/又はフェノール基を有する有機物としては、例えば、水溶性ポリアミド、フラボノイド、水性フェノール、ヒドラジン誘導体(例えば、カーボジヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド、セバチン酸ヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N’−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1‘,1’−テトラメチル−4,4’(メチレン−ジ−p−フェニレン)ジセミカルバジド等)等を挙げることができる。
【0041】
上記顔料としては、例えば酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭酸カルシウム(CaCO)、硫酸バリウム(BaSO)、アルミナ(Al)、カオリンクレー、カーボンブラック、酸化鉄(Fe、Fe)、酸化アルミニウム(Al)等の無機顔料や、有機顔料等の各種着色顔料等を挙げることができる。
【0042】
上記表面処理剤の調製方法としては、あらかじめビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子を調製し、その後に親水性樹脂水溶液を加えて濃度調整を行い、さらにポリアリルアミン樹脂を添加する方法等を挙げることができる。
【0043】
上記表面処理剤の塗装方法としては、浸漬法、スプレー法等が挙げられる。
【0044】
皮膜の膜厚は、皮膜量が下限0.1g/m、上限3g/mの範囲内であることが好ましい。上記上限は、1g/mがより好ましい。皮膜の膜厚が0.1g/m未満の場合は、得られる皮膜の臭気抑制性が不充分となるおそれがあるため好ましくない。
【0045】
本発明の熱交換器の表面処理方法は、アルミニウム材からなり、悪臭の原因となるフラックスが付着しやすい非腐食性フラックスブレージング製熱交換器に用いるものである。上記非腐食性フラックスブレージング製熱交換器は、アルミニウムフィンやアルミニウムチューブ等のアルミニウム基材が非腐食性フラックスブレージング法によってろう付けされたものである。上記非腐食性フラックスブレージング製熱交換器の用途としては、例えば、カーエアコン用エバポレーターを挙げることができる。
【0046】
ここで、アルミニウム基材としては、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金からなるものである限りにおいて限定されるものではなく、例えば、3000番系アルミニウム合金、4000番系アルミニウム合金等を挙げることができる。上記熱交換器の表面処理方法により得られるアルミニウム製熱交換器も本発明の一つである。
【0047】
本発明の熱交換器の表面処理方法は、上記防臭処理工程の前に、化成処理工程を有する。上記化成処理工程は、非腐食性フラックスブレージング製熱交換器に防錆性を付与するために、化成処理剤により化成皮膜を形成する工程である。上記化成処理工程で使用する化成処理剤は、環境に対する負荷や優れた防錆性付与効果の観点から、ジルコニウムを皮膜形成成分としたジルコニウム系化成処理剤が好ましい。
【0048】
ここで、従来、クロメート系の化成処理剤を用いてろう付けされた熱交換器の化成処理を行う場合には、良好な化成皮膜が形成されるため、化成皮膜を介した熱交換器と親水性を有する皮膜との密着性は、長期に亘り良好に保たれるものであった。しかしながら、上述のように、環境に対する配慮から、ジルコニウム系化成処理剤を用いる場合には、ろう付けされた熱交換器に良好な化成皮膜を形成できない場合があり、親水性を有する皮膜の熱交換器への密着性が、長期に亘って維持されないこととなる。このため、親水性を有する皮膜や化成皮膜が劣化し、熱交換器の表面が露出して、熱交換器表面に残留するフラックス特有の臭気が発生することが問題となっていた。
【0049】
本発明の表面処理剤を用いた熱交換器の表面処理方法によれば、クロメート系の化成処理剤を用いた場合にあっても親水性を有する皮膜の密着性を長期間維持することができるが、ジルコニウム系化成処理剤等、ノンクロム化成処理剤を用いた場合に、特に従来の親水化処理剤と比べて、親水性を有する皮膜の長期間に亘る密着性維持の効果が向上し、熱交換器の表面の被覆状態を長期間維持できるので、非腐食性フラックスブレージング製熱交換器における、フラックスに特有な臭気の発生を効率的に抑制することができる。
【0050】
ここで、ジルコニウム系化成処理剤における上記ジルコニウムの供給源としては特に限定されず、例えば、KZrF等のアルカリ金属フルオロジルコネート;(NHZrF等のフルオロジルコネート;HZrF等のフルオロジルコネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化ジルコニウム;酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0051】
上記ジルコニウム系処理剤におけるジルコニウムの含有量は、金属イオン濃度として下限20ppm、上限10000ppmの範囲内であることが好ましい。上記下限未満であると得られる化成皮膜の性能が不充分であるおそれがあり、上記上限を超えると、それ以上の効果は望めずに経済的に不利になるおそれがある。上記下限は、50ppmがより好ましく、上記上限は2000ppmがより好ましい。上記ジルコニウム系処理剤は、リン酸、マンガン酸、過マンガン酸、バナジン酸、タングステン酸、モリブデン酸等の酸を添加してもよい。
【0052】
上記ジルコニウム系処理剤は、pHが下限2.0、上限6.5での範囲内であることが好ましい。2.0未満であると、エッチング過剰となり充分な皮膜形成ができなくなるおそれがある。6.5を超えると、エッチングが不充分となり良好な皮膜が得られないおそれがある。上記下限は、3.0がより好ましく、上記上限は、5.5がより好ましい。pHを調整するために、硝酸、硫酸等の酸性化合物、及び、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性化合物を使用することができる。
【0053】
上記ジルコニウム系処理剤による化成処理工程は、特に限定されるものではなく、通常の処理条件によって処理剤と被塗物表面とを接触させることによって行うことができる。上記化成処理工程における処理温度は、下限20℃、上限80℃の範囲内であることが好ましい。上記下限は30℃であることがより好ましく、上記上限は70℃であることがより好ましい。上記化成処理における化成処理時間は、下限5秒、上限1200秒の範囲内であることが好ましい。上記下限は30秒がより好ましく、上記上限は120秒がより好ましい。化成処理方法としては特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法等を挙げることができる。
【0054】
本発明の熱交換器の表面処理方法は、上記化成処理工程後に水洗処理工程を有するものであることが好ましい。上記化成後水洗処理工程は、その後の防臭処理工程によって得られる皮膜との密着性等に悪影響を及ぼさないようにするために、1回又はそれ以上の回数に亘って行われるものである。この場合、最終の水洗は、純水で行われることが適当である。この化成後水洗処理においては、スプレー水洗又は浸漬水洗のどちらでもよく、これらの方法を組み合わせて水洗することもできる。
【0055】
本発明の熱交換器の表面処理方法においては、上記化成後水洗処理工程の後の乾燥工程は必ずしも必要ではない。乾燥工程を行わず化成皮膜がウェットな状態のまま、防臭処理工程を行っても得られる性能に影響は与えない。また、乾燥工程を行う場合は、冷風乾燥、熱風乾燥等を行うことが好ましい。熱風乾燥を行う場合、熱エネルギー節約の観点から300℃以下が好ましい。
【0056】
本発明の熱交換器の表面処理方法は、上記化成処理工程の前に、酸洗処理工程を有する。上記酸洗処理工程は、酸性洗浄剤を用いて熱交換器に付着したフラックス等の汚れ、塩類等を除去する工程である。上記酸性洗浄剤は、硝酸及び硫酸、並びに鉄塩を含有するものである。なお、この場合において、硝酸と硫酸とは併用することが好ましい。これらの酸濃度としては、1〜10Nであることが好ましく、3〜6Nであることが更に好ましい。また、酸性洗浄剤が上記鉄塩を含有することにより、フラックス等の除去がより効果的に行えるという利点がある。
【0057】
上記鉄塩としては特に限定されず、例えば、硫酸鉄、硝酸鉄、酢酸鉄、塩化鉄、クエン酸鉄、フッ化鉄、臭化鉄、リン酸鉄、スルファミン酸鉄、シュウ酸鉄、乳酸鉄等を挙げることができるが、価格が安価なため、硫酸鉄、硝酸鉄、酢酸鉄、及び、塩化鉄からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記鉄塩は、上記酸性洗浄剤において、下限0.01質量%、上限5質量%の範囲内で含まれることが好ましい。上記鉄塩の含有量を上記範囲内にすることによって、フラックス等をより効果的に除去することができる。上記下限は、0.1質量%がより好ましく、上記上限は、1質量%がより好ましい。
【0058】
上記酸性洗浄剤のpHは、4以下であることが好ましい。上記pHを4以下にすることによって、良好な洗浄効果を得ることができる。
【0059】
上記酸洗処理工程は、スプレー法、浸漬法等の従来公知の方法で行うことができる。上記酸洗処理工程は、上記酸性洗浄剤の液温を下限10℃、上限85℃の範囲で行うことが好ましい。また、処理時間は、下限30秒、上限5分の範囲内であることが好ましい。液温が10℃未満又は処理時間が30秒未満であると、偏析物等の除去が不充分となることがあり、85℃を超えたり5分を超えたりするとエッチング過多となるおそれがある。
【実施例】
【0060】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「%」は特に断りのない限り「質量%」、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0061】
実施例1
<表面処理剤の調製>
ビニルアルコール重合体(ケン化度98%以上)粉末25質量部を純水950質量部に溶解させた水溶液中へ、ヒュームドシリカ(平均粒径40nm)25質量部を添加して攪拌し、凝集物を形成させた。次に、この凝集物を、超音波分散機(日本精機製作所製の超音波ホモジナイザー)を使用して強制的に分散させ、平均粒径500nmのビニルアルコール重合体被覆シリカ粒子の分散液を得た。さらに抗菌剤としてジンクピリチオンを10ppmの濃度となるようにこの水媒体中に添加し、さらに、ポリアリルアミン樹脂として「PAA−15C」(ポリアリルアミン、重量平均分子量15000、商品名、日東紡株式会社製)を500ppm添加して表面処理剤を得た。なお、平均粒子径の測定は、得られた表面処理剤の一部を脱イオン水で希釈し、動的光散乱測定機(「ELS−800」、商品名、大塚電子社製)により測定した。
【0062】
硝酸10質量%、硫酸5質量%、鉄1質量%を含有する酸性洗浄剤を使用し、この酸性洗浄剤を65℃に温めた浴中に、「5000系アルミニウム」(商品名、日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)、及び昭和電工製非腐食性フラックスブレージング製カーエアコン用エバポレーター(NBエバポレーター)を4分間浸漬し、引き上げた後に水道水で十分に洗浄した。さらに、このテストピース及びカーエアコン用エバポレーターを、ノンクロム化成処理剤であるジルコニウム系化成処理剤(「アルサーフ90」、商品名、日本ペイント社製)を50℃に温めた浴中に90秒間浸漬し、その後水道水で十分に洗浄した。
【0063】
次に、このテストピース及びカーエアコン用エバポレーターを、上記表面処理剤の20℃の浴に1分間浸漬、引き上げた後、到達温度170℃で45分間加熱乾燥して、皮膜量1g/mの防臭処理テストピース及び防臭処理カーエアコン用エバポレーターを完成した。
【0064】
実施例2
ポリアリルアミンの配合量を1000ppmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして防臭処理テストピース及び防臭処理カーエアコン用エバポレーターを完成した。
【0065】
実施例3
ポリアリルアミンの配合量を5000ppmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして防臭処理テストピース及び防臭処理カーエアコン用エバポレーターを完成した。
【0066】
比較例1
ポリアリルアミンを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして防臭処理テストピース及び防臭処理カーエアコン用エバポレーターを完成した。
【0067】
比較例2
ポリアリルアミンに代えて、アミノ基を有する樹脂として「PVAM0595B」(ポリビニルアミン、重量平均分子量60000、商品名、三菱化学社製)を1000ppm配合したこと以外は、実施例1と同様にして防臭処理テストピース及び防臭処理カーエアコン用エバポレーターを完成した。
【0068】
比較例3
ポリアリルアミンに代えて、グリシンを1000ppm配合したこと以外は、実施例1と同様にして防臭処理テストピース及び防臭処理カーエアコン用エバポレーターを完成した。
【0069】
比較例4
ポリアリルアミンに代えて、クロメート系の化成処理剤を用いた場合に使用される臭気抑制剤であるフェノールを1000ppm配合したこと以外は、実施例1と同様にして防臭処理テストピース及び防臭処理カーエアコン用エバポレーターを完成した。
【0070】
比較例5
ポリアリルアミンに代えて、クロメート系の化成処理剤を用いた場合に使用される臭気抑制剤であるアジピン酸ヒドラジドを1000ppm配合したこと以外は、実施例1と同様にして防臭処理テストピース及び防臭処理カーエアコン用エバポレーターを完成した。
【0071】
参考例1
比較例1と同様にして防臭処理テストピースを作成し、昭和電工製非腐食性フラックスブレージング製カーエアコン用エバポレーター(NBエバポレーター)に代えて真空ろう付け法により製造された昭和電工製カーエアコン用エバポレーター(VBエバポレーター)を用いたこと以外は、比較例2と同様にして防臭処理カーエアコン用エバポレーターを完成した。
【0072】
<密着性>
得られた防臭処理テストピースの初期品、及び、室温で純水に1週間浸漬し、劣化させた防臭処理テストピースにセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付けて剥離した。残存した皮膜の面積を測定し、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:剥離0%
△:剥離50%以下
×:剥離50〜100%
【0073】
<親水性>
得られた防臭処理テストピースの初期品、及び、室温で純水に1週間浸漬し、劣化させた親水化テストピースに粘着テープを貼り付けて剥離した。このテープ剥離部に純水2μlをのせ、接触角を測定した。接触角の測定は、自動接触角計「CA−Z」(協和界面化学社製)を用いて行った。なお、親水性の評価については、30°以下を合格とした。
【0074】
<臭気>
カーエアコン用エバポレーターの初期品、及び、水に168時間浸漬し、劣化させたカーエアコン用エバポレーターの臭いを嗅いで5段階評価した。なお、臭気の評価については、2点以下を合格とした。
0点・・・・・無臭
1点・・・・・やっとかすかに臭いを感じる
2点・・・・・らくに臭いを感じる
3点・・・・・明らかに臭いを感じる
4点・・・・・強く臭いを感じる
5点・・・・・非常に強く臭いを感じる
【0075】
以上の結果を表2に示す。
【表1】

【表2】

【0076】
表1より、本発明の熱交換器の表面処理方法により処理されたカーエアコン用エバポレーターは熱交換器と、親水性を有する皮膜との密着性が長期に亘って維持され、親水性を有する皮膜や化成皮膜の劣化を抑制できるので、熱交換器の表面に残留したフラックスに特有の臭気に対する臭気抑制性に優れることが示された。
【0077】
また、比較例1と参考例1とを比較すれば、真空ろう付け法により製造された熱交換器においても、従来、臭気抑制性に劣る問題があったものの、非腐食性フラックスブレージング製熱交換器における臭気抑制性の問題よりも、程度が低いことが分かる。なお、非腐食性フラックスブレージング製カーエアコン用エバポレーターの表面に残存するフラックスは、親水性を有しているため、親水性を有する皮膜が剥離したとしても、真空ろう付け法により製造されたカーエアコン用エバポレーターに比べて、親水性が良好なものとなる。しかしながら、このような場合においても、比較例1では、フラックスが残存したアルミニウム材の素地が露出することとなるため、フラックス特有の臭気により、参考例1よりも臭気抑制性が劣ったものとなると考えられる。本発明の熱交換器の表面処理方法によれば、このような非腐食性フラックスブレージング製の熱交換器に処理する場合においても、臭気抑制性が長期間良好に保たれた熱交換器を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の熱交換器の表面処理方法は、アルミニウム材からなる非腐食性フラックスブレージング製熱交換器に、硝酸及び硫酸と、所定量の鉄塩と含有する酸性洗浄剤を接触させ、これに更にジルコニウム系化成処理剤を接触させるとともに、ビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子、及びポリアリルアミン樹脂を含有する表面処理剤であって、ビニルアルコール系重合体とシリカ粒子との合計含有量、及び質量比が所定の範囲内のものである表面処理剤を接触させることにより、熱交換器と、親水性を有する皮膜との密着性が長期に亘って維持され、熱交換器の表面に残留したフラックスに特有の臭気に対する良好な臭気抑制性及び親水性を発揮する皮膜を形成するものである。本発明により、残留フラックスのある非腐食性フラックスブレージング製熱交換器に対しても、皮膜を効率的に形成・維持し、フラックスに特有の悪臭の発生を抑制することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム材からなる非腐食性フラックスブレージング製熱交換器に、酸性洗浄剤を接触させる酸洗処理工程(1)、酸洗処理工程後の前記アルミニウム材にジルコニウム系化成処理剤を接触させる化成処理工程(2)、及び化成処理工程後の前記アルミニウム材に、表面処理剤を接触させる防臭処理工程(3)を有する熱交換器の表面処理方法であって、
前記酸性洗浄剤は、硝酸及び硫酸を含有し、且つ鉄塩を0.01〜5質量%含有するものであり、
前記表面処理剤は、ビニルアルコール系重合体により被覆されたシリカ粒子、及びポリアリルアミン樹脂を含有し、前記表面処理剤に含有される前記シリカ粒子と前記ビニルアルコール系重合体との合計含有量が0.2〜25質量%であり、前記シリカ粒子と、前記ビニルアルコール系重合体との質量比が30:70〜70:30であることを特徴とする熱交換器の表面処理方法。
【請求項2】
前記鉄塩は、硫酸鉄、硝酸鉄、酢酸鉄、及び塩化鉄からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の熱交換器の表面処理方法。
【請求項3】
前記非腐食性フラックスブレージング製熱交換器は、カーエアコン用エバポレーターである請求項1、又は2記載の熱交換器の表面処理方法。
【請求項4】
請求項1、2、又は3記載の熱交換器の表面処理方法に用いる表面処理剤。
【請求項5】
請求項1、2、又は3記載の熱交換器の表面処理方法により得られるアルミニウム製熱交換器。

【公開番号】特開2011−153745(P2011−153745A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14777(P2010−14777)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】