熱交換器の製造方法および使用方法
【課題】板材を重ね合わせて溶接後、所定領域に流体を圧入して膨出変形させて流路を形成する熱交換器の製造に際し、板材同士を容易で確実に溶接する。また、板材間からの真空引きや、膨出部への流体の圧入を、容易に行う。
【解決手段】周辺溶接工程では、複数の板材2,3を重ね合わせて外周端面において全周を溶接し、周辺溶接部17を形成する。その後の減圧工程では、板材の板面に予め設けておいた口部11,12から板材間の隙間に残る空気を外部へ吸引排出する。その後の内部溶接工程では、板材間の隙間を減圧保持した状態で、板材の板面において板材同士を溶接して内部溶接部6とし、膨出部とする部分4と非膨出部とする部分5とに分ける。その後の膨出工程では、膨出部とする部分4に流体を圧入して膨出変形させる。
【解決手段】周辺溶接工程では、複数の板材2,3を重ね合わせて外周端面において全周を溶接し、周辺溶接部17を形成する。その後の減圧工程では、板材の板面に予め設けておいた口部11,12から板材間の隙間に残る空気を外部へ吸引排出する。その後の内部溶接工程では、板材間の隙間を減圧保持した状態で、板材の板面において板材同士を溶接して内部溶接部6とし、膨出部とする部分4と非膨出部とする部分5とに分ける。その後の膨出工程では、膨出部とする部分4に流体を圧入して膨出変形させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を重ね合わせて溶接後、所定領域に流体を圧入して膨出変形させて流路を形成する熱交換器に関し、特にそのような熱交換器の製造方法と使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、中空容器(2,3)の開口部同士を向かい合わせると共に、両容器(2,3)のフランジ(2a,3a)間にシール部材(6)を介在させ、両容器(2,3)間の空間(A)から真空引きして両フランジ(2a,3a)同士を近接させつつ、両フランジ(2a,3a)を溶接することが開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、重ね合わせた金属板(12,12)の最外周端面(13)に複数の開口部(14)を残して最外周端面(13)を溶接すると共に、非膨出部(15)を溶接した後、前記開口部(14)より流体を圧入して非膨出部(15)以外の箇所を膨出成形することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−192287号公報
【特許文献2】特許第2506722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の発明では、容器(2,3)のフランジ(2a,3a)同士を溶接する際、容器(2,3)間で形成される空間(A)からの真空引きを行うものである。つまり、容器(2,3)の外周部同士を溶接するために真空引きを行うものであり、真空引きに先立って予め容器(2,3)間の外周部の隙間を溶接で閉塞しておくものではない。容器(2,3)の外周部同士が溶接されてしまえば、さらに真空引きを必要とするものではない。
【0006】
このような構成の場合、容器(2,3)のフランジ(2a,3a)間にシール部材(6)が必要であるし、シール部材(6)を配置しても、減圧中、シールが破られて外部から空間(A)内へ空気の流入が生じるおそれがある。さらに、そもそも、容器(2,3)に予め空間(A)のための凹所を形成しておくことが前提であり、重ね合わせた板材間の隙間からさらに空気を排除しようとするものではない。
【0007】
一方、前記特許文献2に記載の発明では、金属板(12)の最外周端面(13)に開口部(14)を残して最外周端面(13)を溶接するものである。前述したように、特許文献1に記載の発明は、外周部同士を溶接するために真空引きを行うものであるから、特許文献2に記載の発明のように、金属板(12)同士を重ね合わせて最外周端面(13)を溶接後には、さらに金属板(12)間、しかも何らの凹所もない平板からなる金属板(12)間の隙間からさらに空気を排除しつつ金属板(12)同士を溶接しようとする思想は起こり得ない。
【0008】
また、特許文献2に記載の発明では、開口部(14)が端面に配置されるので、その開口部(14)から金属板(12)間の隙間への流体の圧入が困難である。さらに、金属板(12)の最外周端面(13)の溶接が使用時の冷媒を止める役目を果たすので、この最外周端面(13)の溶接が破られると直ちに冷媒が外部へ漏れ出ることになる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、板材を重ね合わせて溶接後、膨出部を成形する熱交換器において、板材同士を容易で確実に溶接することにある。また、板材間からの真空引きや、膨出部への流体の圧入を、容易に行うことを課題とする。さらに、熱交換器の使用時に、万一、膨出部の溶接が破損した場合でも、外部への漏れを防止できると共に、漏れの検知が可能な熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、複数の板材を重ね合わせて外周端面において全周を溶接する周辺溶接工程と、前記板材の板面に予め設けておいた口部から前記板材間の隙間に残る空気を外部へ吸引排出する減圧工程と、前記板材間の隙間を減圧保持した状態で、前記板材の板面において前記板材同士を溶接して、膨出部と非膨出部とに分ける内部溶接工程と、前記膨出部に流体を圧入して膨出変形させる膨出工程とを順に含むことを特徴とする熱交換器の製造方法である。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、板材を重ね合わせて外周端面において全周を溶接した後、板材間の隙間を減圧した状態で板面に溶接して膨出部を形成する。予め板材間の隙間が外周端面全周で塞がれるので、板材間の隙間を確実に減圧して溶接することができ、板材同士の溶接の信頼性が増す。また、板材間からの真空引きや、膨出部への流体の圧入は、板面に設けた口部から行うので、容易に実施することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、二枚の板材を用い、予め、一方または双方の板材の板面に、合計二以上の前記口部を形成しておき、前記各口部は、前記板材の板面に穴を形成した後、その穴に筒状のノズルの端部を固定して構成し、重ね合わせ面と反対側の面から前記ノズルが突出するように、前記板材同士を重ね合わせて前記周辺溶接工程を行い、前記内部溶接工程では、前記膨出部を蛇行して形成すると共に、この膨出部内の両端部に前記ノズルを配置するように、前記板材同士を溶接し、前記膨出工程では、前記板材の外周部よりも内側において、前記板材の板面に施される溶接により囲まれた領域からなる前記膨出部を膨出変形させることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の製造方法である。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、板面から突出して筒状のノズルを設けるので、板材間からの真空引きや、膨出部への流体の圧入、あるいは使用時における膨出部への流体の出し入れを、ノズルを用いて容易に行うことができる。また、膨出部を蛇行して配置すると共に、その両端部にノズルを配置するので、熱交換性能もよい。さらに、板材の外周部よりも内側において、板材の板面に施される溶接により囲まれた領域から膨出部を形成するので、熱交換器の使用時、膨出部の溶接が破損しても、最外周部の溶接で、外部への流体の漏れを防止することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記膨出部の両端部に前記ノズルとしての第一ノズルと第二ノズルとを設ける一方、前記非膨出部に第三ノズルを設け、前記減圧工程では、前記各ノズルの内、少なくとも一のノズルに真空ポンプを接続すると共に、残りのノズルの内、少なくとも一のノズルに圧力計を設け、さらに残りのノズルがあればその開口部を閉じた状態で、前記真空ポンプを作動させて前記板材間の隙間を減圧した後、前記真空ポンプを停止した状態で前記圧力計の圧力変化により、前記板材間からの真空漏れひいては溶接不良の確認を行うことを特徴とする請求項2に記載の熱交換器の製造方法である。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、外周部の溶接不良を容易に見つけることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記膨出工程後、前記板材間の隙間の加圧状態を維持したまま、前記膨出部からの流体漏れの有無により、溶接不良の確認を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、膨出部の溶接不良を容易に見つけることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記内部溶接工程では、前記板材の板厚よりも小さい幅で溶接を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法である。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、膨出部の溶接が破損しても、板材同士が離れる方向に破損させることができる。よって、膨出部の溶接が破損しても、最外周部の溶接で、膨出部内の流体の外部への漏れを確実に防止することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、二枚の前記板材の内、一方または双方の板材には、少なくとも重ね合わせ面となる側の板面に表面粗さを増す処理を施していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法である。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、少なくとも一方の板材の重ね合わせ面に表面粗さを増す処理を施しておくことで、板材間の隙間からの真空引きを容易に実施することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、前記表面粗さを増す処理は、ヘアライン仕上げであることを特徴とする請求項6に記載の熱交換器の製造方法である。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、ヘアライン仕上げが施された板材を用いて、板材間の隙間からの真空引きを容易に実施することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により製造された熱交換器の使用方法であって、前記熱交換器の使用中、前記非膨出部の前記板材間の隙間の圧力を監視し、その圧力上昇により前記内部溶接の破壊を検知することを特徴とする熱交換器の使用方法である。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、熱交換器の使用中、膨出部の溶接の破損を容易に且つ迅速に検知することができる。
【0026】
さらに、請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により製造された熱交換器の使用方法であって、貯水槽の中に前記熱交換器を水没させ、前記膨出部に冷媒を通して前記貯水槽内の一部の水を凍結させる工程と、前記貯水槽内の冷水を使用する工程とを含むことを特徴とする熱交換器の使用方法である。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、氷蓄熱槽の熱交換器として利用することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、板材を重ね合わせて溶接後、膨出部を成形する熱交換器において、板材同士を容易で確実に溶接することができる。また、板材間からの真空引きや、膨出部への流体の圧入を、容易に行うことができる。さらに、熱交換器の使用時に、万一、膨出部の溶接が破損した場合でも、外部への漏れを防止できると共に、漏れの検知も容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の熱交換器の一実施例を示す概略図である。
【図2】図1の熱交換器の製造方法の初期を示す図であり、二枚の板材とそれらに設けられるノズルとを示している。
【図3】図2の続きを示す図であり、周辺溶接工程を示している。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】図3の続きを示す図であり、減圧工程を示している。
【図6】図5の続きを示す図であり、内部溶接工程を示している。
【図7】図6の続きを示す図であり、膨出工程を示している。
【図8】図7の膨出工程を実施後の熱交換器の断面の一部を示す図である。
【図9】図7の続きを示す図であり、水没による漏れ確認工程を示している。
【図10】図1の熱交換器の使用方法の一例を示す図であり、氷蓄熱槽の熱交換器として利用した例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の熱交換器1の一実施例を示す概略図である。本実施例の熱交換器1は、二枚の板材2,3を重ね合わせて適宜の溶接を施すことで、膨出部4と非膨出部5とに分けた後、膨出部4に流体を圧入して、膨出部4を膨出変形して構成される。これにより、図8に示すように、膨出部4において、板材2,3間に隙間が開けられ、流体の流路が形成される。
【0031】
膨出部4は、板面に適宜の形状で環状の溶接6を施すことで形成される。つまり、その環状の溶接6で囲まれた内側の領域が膨出部4となる。但し、膨出部4内の領域の一部を、さらに溶接6´により適宜の領域に仕切ってもよい。また、板面には、複数の膨出部4を形成してもよい。
【0032】
熱交換器1の使用時、膨出部4には熱交換用の流体が通されるが、そのための口部7,8が膨出部4に形成されている。口部7,8は、その形成位置を特に問わないが、本実施例では膨出部4の両端部に形成されている。
【0033】
膨出部4は、その形状を特に問わないが、本実施例では、図1において板面の上部から下部にかけて、左右に蛇行して形成されている。より具体的には、図1において、左右方向に沿う直線状部が上下に等間隔に配置されると共に、上下に隣接する直線状部同士が左右互い違いに半円形状部で接続された形状に形成されている。そして、このようにして蛇行して形成される膨出部4の長手方向両端部(図1の右上部と右下部)には、熱交換器1の使用時に膨出部4に流体を出し入れするための口部7,8が設けられている。なお、膨出部4は、長手方向両端部を除いて、幅方向を溶接6´により適宜、複数(図示例では三つ)に仕切ってもよい。なお、このための溶接6´の端部6´´は、ループ状に折り返しておくことで、溶接強度が確保されている。
【0034】
以下、本実施例の熱交換器1の製造方法について説明する。
図2から図9は、本実施例の熱交換器1の製造方法を順に示す概略図である。
【0035】
図2に示すように、同一の形状および大きさの二枚の板材(たとえば板厚1〜1.5mm程度の薄い平板)2,3を用意する。各板材2,3は、本実施例では正方形であるが、長方形またはその他の形状であってもよい。各板材2,3は、その材質を特に問わないが、本実施例ではステンレスから形成されている。
【0036】
各板材2,3は、表面および裏面が平滑な板材から構成されてもよいが、後述するとおり、二枚の板材2,3の内、一方または双方の板材には、少なくとも重ね合わせ面となる側の板面に表面粗さを増す処理を施しておいてもよい。この表面粗さを増す処理として、髪の毛のような細長い研磨目を所定の方向に沿って形成したヘアライン仕上げがある。本実施例の各板材2,3は、互いに同一の構成であり、それぞれ表裏面に同一のヘアライン仕上げが施されている。
【0037】
各板材2,3には、適宜の位置に、前記口部7,8が設けられる。この口部7,8は、本実施例では、下板2に穴9,10を開けると共に、その穴9,10に筒状のノズル11,12を設けて構成される。つまり、図4に示すように、穴9(10)にノズル11(12)の端部をはめ込んで両者を溶接(たとえばTIG溶接)13して構成される。この際、板材2,3の重ね合わせ面の側へは、ノズル11(12)や溶接部13が突出しないようにするのがよい。
【0038】
膨出部4に設けられる口部7,8として、本実施例では、図2において、下板2の右側の前後の角部に、第一ノズル11と第二ノズル12とが設けられる。さらに、本実施例では、非膨出部5にも口部14が設けられる。非膨出部5に設けられる口部14として、本実施例では、図2において、上板3の左側の前後一方の角部に設けた穴15に、第三ノズル16が設けられる。第三ノズル16の位置は、前後方向中央部でもよいのであるが、後述の内部溶接工程での溶接位置との関係で、本実施例では前後方向一方へ寄せた位置に配置される。
【0039】
その後、図3および図4に示すように、二枚の板材2,3を重ね合わせて外周端面において全周を溶接17(たとえばレーザー溶接)する(周辺溶接工程)。板材を重ね合わせる際、各ノズル11,12,16は、重ね合わせ面と反対側の面から突出するように配置される。また、本実施例では、図2に示すように、各板材2,3のヘアラインの向きが交差するように、二枚の板材2,3を重ね合わせる。
【0040】
その後、図5に示すように、第一ノズル11と第二ノズル12とに、真空ポンプ18を接続する。各ノズル11,12と真空ポンプ18との配管には、圧力計19とバルブ20とが設けられている。一方、第三ノズル16には、圧力計21が設けられる。
【0041】
なお、図示例では、第一ノズル11と第二ノズル12とに、それぞれ個別に真空ポンプ18を設けているが、各ノズル11,12からの配管を合流させて共通の真空ポンプ18に接続してもよい。あるいは、図示例では、第一ノズル11と第二ノズル12とに、それぞれ個別に真空ポンプ18を設けているが、いずれか一方の真空ポンプ18の設置を省略して、真空ポンプ18が設置されない側のノズルを閉塞(つまりバルブ20を閉鎖)しておいてもよい。
【0042】
いずれにしても、第一ノズル11および/または第二ノズル12に接続した真空ポンプ18を作動させて、板材2,3間の隙間に残る空気を外部へ吸引排出して、板材2,3間の隙間を減圧する(減圧工程)。予め周辺溶接工程により板材2,3間の外周端面は全周において閉塞されているので、減圧工程により板材2,3間の隙間からの真空引きを確実に図ることができる。
【0043】
設定時間または設定圧力まで真空引きを行った後、真空ポンプ18を停止すると共に、前記各バルブ20を閉じる。この状態で所定時間保持して、板材2,3間からの真空漏れひいては溶接不良の確認を行うことができる。仮に周辺溶接工程に万一不良があり、板材2,3間の隙間と外部とが連通していると、真空ポンプ18を停止後、第三ノズル16の圧力計21の圧力が上昇するので、それにより周辺溶接工程の不良を検知することができる。なお、圧力計21の圧力は、所定の記録計(図示省略)により記録される。
【0044】
その後、板材2,3間の隙間を減圧保持した状態のまま、図6に示すように、板材2,3の板面において板材2,3同士を溶接6(,6´)(たとえばレーザー溶接)して、膨出部4と非膨出部5とに分ける(内部溶接工程)。なお、この溶接中、板材2,3間の隙間は減圧保持されるが、そのために、減圧工程後に各ノズル11,12,16を閉塞しておく以外に、内部溶接工程でも真空ポンプ18により板材2,3間からの隙間からの真空引きを継続させてもよい。いずれにしても、板材2,3間の隙間を減圧しておくことで、板材2,3同士を密着させた状態で板材2,3同士を溶接することができ、容易で確実な溶接を行うことができる。溶接による熱歪みで二枚の板が離れようとしても、板材2,3間の減圧状態がそれを阻止して、信頼性の高い溶接を実施することができる。
【0045】
その後、図7に示すように、第二ノズル12をバルブ20により閉塞した状態で、第一ノズル11から適宜の流体を膨出部4へ圧入する(膨出工程)。これにより、図8に示すように、膨出部4において板材2,3同士の隙間を開けるように、膨出部4が膨出変形される。ここでは、高圧の窒素ガスをボンベ22から吹き込んで、膨出部4を膨出変形させる。第一ノズル11から流体を圧入する場合、第二ノズル12に設けた圧力計19により、膨出部4全域へのガスの圧入を確認することができる。なお、その圧力計19の圧力は、所定の記録計(図示省略)により記録される。
【0046】
その後、板材2,3間の隙間の加圧状態(膨出工程よりも加圧状態を軽減してもよいが大気圧よりは高圧)を維持したまま、膨出部4からの流体漏れの有無により、溶接不良の確認を行うのが好ましい(漏れ確認工程)。流体漏れの確認方法は、特に問わないが、たとえば図9に示すように、全てのノズル11,12,16を閉塞した状態で、熱交換器1を水没させて、熱交換器1からの気泡の流出の有無を目視で確認して行うことができる。
【0047】
ところで、減圧工程において、板材2,3間からの真空引きを容易で迅速に行うために、二枚の板材2,3の内、一方または双方の板材には、少なくとも重ね合わせ面となる側の板面に、表面粗さを増す処理を施しておくのが好ましい。そのために、本実施例では、前述したように、ヘアライン仕上げ(たとえば50〜200番、好ましくは80〜150番の仕上げ)が施された板材を用い、さらにそのヘアライン線の向きが交差するように配置して、板材2,3同士を重ね合わせている。
【0048】
但し、ヘアライン仕上げなどの処理は、一方の板材では省略したり、重ね合わせ面と反対側の面では省略したりしてもよいし、両方の板材に設ける場合でも、その向きの方向は交差させずに揃えたり、直角以外の方向で交差させたりしてもよい。さらに、ヘアライン仕上げ以外の方法で、板材2,3の重ね合わせ面の表面粗さを増してもよい。
【0049】
以下、本実施例の熱交換器1の使用方法について説明する。
本実施例の熱交換器1は、膨出部4に設けたノズル11,12を用いて、膨出部4に流体を通して利用される。たとえば、熱交換器1の膨出部4には、第一ノズル11から流体が導入され、第二ノズル12から流体が導出される。これにより、膨出部4を通る流体と、熱交換器1の外側にある周囲の流体との熱交換を図ることができる。なお、非膨出部5のノズル16は閉塞されるが、後述するように圧力計を設置してもよい。熱交換器1の用途は、特に問わないが、たとえば図10に示すように、氷蓄熱槽の熱交換器として用いることができる。
【0050】
具体的には、貯水槽23の中に熱交換器1を水没させ、膨出部4には冷凍装置(コンデンシングユニット)24からの冷媒が膨張弁(図示省略)を介して通される一方、貯水槽23の水は冷水使用設備25で使用可能とされる。図示例では、四つの熱交換器1を並列に設置しているが、熱交換器1の数や配置は適宜に変更可能なことは言うまでもない。
【0051】
このような構成の場合、典型的には、電気料金の安い夜間電力を用いて、冷凍装置24を作動させ、熱交換器1に低温の冷媒を通して、貯水槽23内の水の冷却や一部凍結を図る。そして、昼間には、貯水槽23内の冷水を冷水使用設備25において利用する。冷水使用設備25は、特に問わないが、たとえば空調設備または食品機械である。つまり、貯水槽23内の冷水を、冷房や食品冷却などに利用することができる。
【0052】
なお、熱交換器1を構成する二枚の板材2,3は、外周端面において全周を溶接されているので、貯水槽23内に熱交換器1を水没させても、板材2,3間の隙間に水が入り込むおそれがない。仮に板材2,3間の外周端面に溶接がない場合、板材2,3間の隙間に水が入り込んで、その水が凍結して膨張すると板材2,3間の溶接を剥離させるおそれがあるが、本実施例の熱交換器1によれば外周部全域を溶接しているのでそのような不都合はない。
【0053】
ところで、熱交換器1の使用中、非膨出部5において板材2,3間の隙間の圧力を監視すれば、その圧力上昇により内部溶接(内部溶接工程の溶接)6の破壊を検知することができる。具体的には、本実施例の場合、第三ノズル16に圧力計を設けておき、その圧力上昇により内部溶接の破壊を検知することができる。特に、内部溶接工程において、板材2,3の板厚Xよりも小さい幅Y(Y<X)で溶接を行っておけば、内部溶接が破損する場合、板材2,3同士を引き離す方向に破損させやすく、第三ノズル16の圧力計によりそれを検知することができる。しかも、熱交換器1の最外周部には溶接17が施されているので、熱交換器1の外側へ流体が漏れ出る前に検知することができる。
【0054】
本発明の熱交換器1の製造方法および使用方法は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。
【0055】
前記実施例では、板材2,3へのノズル11,12,16の設置にTIG溶接、周辺溶接工程および内部溶接工程にレーザー溶接を用いたが、溶接の種類は適宜に変更可能である。但し、レーザー溶接は狭い幅で深く溶接できるので、内部溶接工程に適する。
【0056】
前記実施例において、周辺溶接工程、内部溶接工程または膨出工程などでは、それぞれに適した治具にセットして作業できることは言うまでもない。たとえば、周辺溶接工程では、重ね合わせた板材2,3を上下から挟み込む治具を用いればよいし、内部溶接工程でも、板材2,3が熱で歪まないように上下から挟み込んでおくのが好ましいし、膨出工程では、膨出部4の変形を所定に整えるためのカバー状の治具を用いるのがよい。
【0057】
前記実施例では、口部7,8,14は、板材2,3に開けた穴9,10,15に筒材からなるノズル11,12,16を設けて構成したが、口部7,8,14やノズル11,12,16の構成は適宜に変更可能である。たとえば、筒状のノズルとして、単なるパイプ以外に、貫通穴を開けたブロック状部材を用いてもよい。また、口部7,8,14(ノズル11,12,16)には、適宜、配管への接続用のネジやヘルールなどの継手を設けておいてもよい。
【0058】
前記実施例において、口部7,8,14(ノズル11,12,16)の数や形成位置は、適宜に変更可能である。一方または双方の板材2,3の板面に、二枚の板材2,3の合計で二以上の口部(ノズル)を形成すればよい。そして、減圧工程では、各ノズルの内、少なくとも一のノズルに真空ポンプ18を接続すると共に、残りのノズルの内、少なくとも一のノズルに圧力計を設け、さらに残りのノズルがあればその開口部を閉じた状態で、真空ポンプ18を作動させて板材間の隙間を減圧すればよい。その後、真空ポンプ18を停止した状態で圧力計の圧力変化により、板材2,3間からの真空漏れひいては溶接不良の確認を行うことができる。その後、内部溶接工程では、各ノズルを閉じて、板材2,3間の隙間の減圧状態を維持したまま板面に溶接するか、真空ポンプ18を作動させつつ板面に溶接してもよい。その後、膨出工程では、膨出部4に設けられたノズルの内の少なくとも一のノズルから流体を膨出部へ圧入すればよい。
【0059】
前記実施例において、非膨出部5のノズル16の設置は、場合により省略可能である。また、前記実施例では、膨出工程で窒素ガスを用いたが、これ以外の加圧された気体ないし液体を用いてもよい。
【0060】
前記実施例では、同一の大きさの板材2,3を用いて、互いの端面が一致するよう重ね合わせた状態で端面同士を溶接したが、大きさの異なる板材を用いて、一方の板材の端面より内側に他方の板材の端面を配置した状態で重ね合わせ、一方の板材の板面と他方の板材の端面との隙間を溶接で塞ぐように、周辺溶接工程を実施してもよい。また、板材2,3の板厚は、互いに異なってもよい。
【0061】
前記実施例では、二枚の板材2,3から構成したが、場合により、三枚以上の板材から構成してもよい。その場合も、各板材間の外周部の隙間を溶接で閉塞した後、板面において溶接を施して膨出部を形成し、各板材間の膨出部を膨出形成すればよい。
【符号の説明】
【0062】
1 熱交換器
2 板材(下板)
3 板材(上板)
4 膨出部
5 非膨出部
6 溶接(内部溶接)
7 口部
8 口部
9 穴
10 穴
11 第一ノズル
12 第二ノズル
13 溶接部
14 口部
15 穴
16 第三ノズル
17 溶接(周辺溶接)
18 真空ポンプ
19 圧力計
20 バルブ
21 圧力計
22 ボンベ
23 貯水槽
24 冷凍装置
25 冷水使用設備
X 板厚
Y 内部溶接幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を重ね合わせて溶接後、所定領域に流体を圧入して膨出変形させて流路を形成する熱交換器に関し、特にそのような熱交換器の製造方法と使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、中空容器(2,3)の開口部同士を向かい合わせると共に、両容器(2,3)のフランジ(2a,3a)間にシール部材(6)を介在させ、両容器(2,3)間の空間(A)から真空引きして両フランジ(2a,3a)同士を近接させつつ、両フランジ(2a,3a)を溶接することが開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、重ね合わせた金属板(12,12)の最外周端面(13)に複数の開口部(14)を残して最外周端面(13)を溶接すると共に、非膨出部(15)を溶接した後、前記開口部(14)より流体を圧入して非膨出部(15)以外の箇所を膨出成形することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−192287号公報
【特許文献2】特許第2506722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の発明では、容器(2,3)のフランジ(2a,3a)同士を溶接する際、容器(2,3)間で形成される空間(A)からの真空引きを行うものである。つまり、容器(2,3)の外周部同士を溶接するために真空引きを行うものであり、真空引きに先立って予め容器(2,3)間の外周部の隙間を溶接で閉塞しておくものではない。容器(2,3)の外周部同士が溶接されてしまえば、さらに真空引きを必要とするものではない。
【0006】
このような構成の場合、容器(2,3)のフランジ(2a,3a)間にシール部材(6)が必要であるし、シール部材(6)を配置しても、減圧中、シールが破られて外部から空間(A)内へ空気の流入が生じるおそれがある。さらに、そもそも、容器(2,3)に予め空間(A)のための凹所を形成しておくことが前提であり、重ね合わせた板材間の隙間からさらに空気を排除しようとするものではない。
【0007】
一方、前記特許文献2に記載の発明では、金属板(12)の最外周端面(13)に開口部(14)を残して最外周端面(13)を溶接するものである。前述したように、特許文献1に記載の発明は、外周部同士を溶接するために真空引きを行うものであるから、特許文献2に記載の発明のように、金属板(12)同士を重ね合わせて最外周端面(13)を溶接後には、さらに金属板(12)間、しかも何らの凹所もない平板からなる金属板(12)間の隙間からさらに空気を排除しつつ金属板(12)同士を溶接しようとする思想は起こり得ない。
【0008】
また、特許文献2に記載の発明では、開口部(14)が端面に配置されるので、その開口部(14)から金属板(12)間の隙間への流体の圧入が困難である。さらに、金属板(12)の最外周端面(13)の溶接が使用時の冷媒を止める役目を果たすので、この最外周端面(13)の溶接が破られると直ちに冷媒が外部へ漏れ出ることになる。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、板材を重ね合わせて溶接後、膨出部を成形する熱交換器において、板材同士を容易で確実に溶接することにある。また、板材間からの真空引きや、膨出部への流体の圧入を、容易に行うことを課題とする。さらに、熱交換器の使用時に、万一、膨出部の溶接が破損した場合でも、外部への漏れを防止できると共に、漏れの検知が可能な熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、複数の板材を重ね合わせて外周端面において全周を溶接する周辺溶接工程と、前記板材の板面に予め設けておいた口部から前記板材間の隙間に残る空気を外部へ吸引排出する減圧工程と、前記板材間の隙間を減圧保持した状態で、前記板材の板面において前記板材同士を溶接して、膨出部と非膨出部とに分ける内部溶接工程と、前記膨出部に流体を圧入して膨出変形させる膨出工程とを順に含むことを特徴とする熱交換器の製造方法である。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、板材を重ね合わせて外周端面において全周を溶接した後、板材間の隙間を減圧した状態で板面に溶接して膨出部を形成する。予め板材間の隙間が外周端面全周で塞がれるので、板材間の隙間を確実に減圧して溶接することができ、板材同士の溶接の信頼性が増す。また、板材間からの真空引きや、膨出部への流体の圧入は、板面に設けた口部から行うので、容易に実施することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、二枚の板材を用い、予め、一方または双方の板材の板面に、合計二以上の前記口部を形成しておき、前記各口部は、前記板材の板面に穴を形成した後、その穴に筒状のノズルの端部を固定して構成し、重ね合わせ面と反対側の面から前記ノズルが突出するように、前記板材同士を重ね合わせて前記周辺溶接工程を行い、前記内部溶接工程では、前記膨出部を蛇行して形成すると共に、この膨出部内の両端部に前記ノズルを配置するように、前記板材同士を溶接し、前記膨出工程では、前記板材の外周部よりも内側において、前記板材の板面に施される溶接により囲まれた領域からなる前記膨出部を膨出変形させることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の製造方法である。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、板面から突出して筒状のノズルを設けるので、板材間からの真空引きや、膨出部への流体の圧入、あるいは使用時における膨出部への流体の出し入れを、ノズルを用いて容易に行うことができる。また、膨出部を蛇行して配置すると共に、その両端部にノズルを配置するので、熱交換性能もよい。さらに、板材の外周部よりも内側において、板材の板面に施される溶接により囲まれた領域から膨出部を形成するので、熱交換器の使用時、膨出部の溶接が破損しても、最外周部の溶接で、外部への流体の漏れを防止することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記膨出部の両端部に前記ノズルとしての第一ノズルと第二ノズルとを設ける一方、前記非膨出部に第三ノズルを設け、前記減圧工程では、前記各ノズルの内、少なくとも一のノズルに真空ポンプを接続すると共に、残りのノズルの内、少なくとも一のノズルに圧力計を設け、さらに残りのノズルがあればその開口部を閉じた状態で、前記真空ポンプを作動させて前記板材間の隙間を減圧した後、前記真空ポンプを停止した状態で前記圧力計の圧力変化により、前記板材間からの真空漏れひいては溶接不良の確認を行うことを特徴とする請求項2に記載の熱交換器の製造方法である。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、外周部の溶接不良を容易に見つけることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記膨出工程後、前記板材間の隙間の加圧状態を維持したまま、前記膨出部からの流体漏れの有無により、溶接不良の確認を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、膨出部の溶接不良を容易に見つけることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記内部溶接工程では、前記板材の板厚よりも小さい幅で溶接を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法である。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、膨出部の溶接が破損しても、板材同士が離れる方向に破損させることができる。よって、膨出部の溶接が破損しても、最外周部の溶接で、膨出部内の流体の外部への漏れを確実に防止することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、二枚の前記板材の内、一方または双方の板材には、少なくとも重ね合わせ面となる側の板面に表面粗さを増す処理を施していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法である。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、少なくとも一方の板材の重ね合わせ面に表面粗さを増す処理を施しておくことで、板材間の隙間からの真空引きを容易に実施することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、前記表面粗さを増す処理は、ヘアライン仕上げであることを特徴とする請求項6に記載の熱交換器の製造方法である。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、ヘアライン仕上げが施された板材を用いて、板材間の隙間からの真空引きを容易に実施することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により製造された熱交換器の使用方法であって、前記熱交換器の使用中、前記非膨出部の前記板材間の隙間の圧力を監視し、その圧力上昇により前記内部溶接の破壊を検知することを特徴とする熱交換器の使用方法である。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、熱交換器の使用中、膨出部の溶接の破損を容易に且つ迅速に検知することができる。
【0026】
さらに、請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により製造された熱交換器の使用方法であって、貯水槽の中に前記熱交換器を水没させ、前記膨出部に冷媒を通して前記貯水槽内の一部の水を凍結させる工程と、前記貯水槽内の冷水を使用する工程とを含むことを特徴とする熱交換器の使用方法である。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、氷蓄熱槽の熱交換器として利用することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、板材を重ね合わせて溶接後、膨出部を成形する熱交換器において、板材同士を容易で確実に溶接することができる。また、板材間からの真空引きや、膨出部への流体の圧入を、容易に行うことができる。さらに、熱交換器の使用時に、万一、膨出部の溶接が破損した場合でも、外部への漏れを防止できると共に、漏れの検知も容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の熱交換器の一実施例を示す概略図である。
【図2】図1の熱交換器の製造方法の初期を示す図であり、二枚の板材とそれらに設けられるノズルとを示している。
【図3】図2の続きを示す図であり、周辺溶接工程を示している。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】図3の続きを示す図であり、減圧工程を示している。
【図6】図5の続きを示す図であり、内部溶接工程を示している。
【図7】図6の続きを示す図であり、膨出工程を示している。
【図8】図7の膨出工程を実施後の熱交換器の断面の一部を示す図である。
【図9】図7の続きを示す図であり、水没による漏れ確認工程を示している。
【図10】図1の熱交換器の使用方法の一例を示す図であり、氷蓄熱槽の熱交換器として利用した例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の熱交換器1の一実施例を示す概略図である。本実施例の熱交換器1は、二枚の板材2,3を重ね合わせて適宜の溶接を施すことで、膨出部4と非膨出部5とに分けた後、膨出部4に流体を圧入して、膨出部4を膨出変形して構成される。これにより、図8に示すように、膨出部4において、板材2,3間に隙間が開けられ、流体の流路が形成される。
【0031】
膨出部4は、板面に適宜の形状で環状の溶接6を施すことで形成される。つまり、その環状の溶接6で囲まれた内側の領域が膨出部4となる。但し、膨出部4内の領域の一部を、さらに溶接6´により適宜の領域に仕切ってもよい。また、板面には、複数の膨出部4を形成してもよい。
【0032】
熱交換器1の使用時、膨出部4には熱交換用の流体が通されるが、そのための口部7,8が膨出部4に形成されている。口部7,8は、その形成位置を特に問わないが、本実施例では膨出部4の両端部に形成されている。
【0033】
膨出部4は、その形状を特に問わないが、本実施例では、図1において板面の上部から下部にかけて、左右に蛇行して形成されている。より具体的には、図1において、左右方向に沿う直線状部が上下に等間隔に配置されると共に、上下に隣接する直線状部同士が左右互い違いに半円形状部で接続された形状に形成されている。そして、このようにして蛇行して形成される膨出部4の長手方向両端部(図1の右上部と右下部)には、熱交換器1の使用時に膨出部4に流体を出し入れするための口部7,8が設けられている。なお、膨出部4は、長手方向両端部を除いて、幅方向を溶接6´により適宜、複数(図示例では三つ)に仕切ってもよい。なお、このための溶接6´の端部6´´は、ループ状に折り返しておくことで、溶接強度が確保されている。
【0034】
以下、本実施例の熱交換器1の製造方法について説明する。
図2から図9は、本実施例の熱交換器1の製造方法を順に示す概略図である。
【0035】
図2に示すように、同一の形状および大きさの二枚の板材(たとえば板厚1〜1.5mm程度の薄い平板)2,3を用意する。各板材2,3は、本実施例では正方形であるが、長方形またはその他の形状であってもよい。各板材2,3は、その材質を特に問わないが、本実施例ではステンレスから形成されている。
【0036】
各板材2,3は、表面および裏面が平滑な板材から構成されてもよいが、後述するとおり、二枚の板材2,3の内、一方または双方の板材には、少なくとも重ね合わせ面となる側の板面に表面粗さを増す処理を施しておいてもよい。この表面粗さを増す処理として、髪の毛のような細長い研磨目を所定の方向に沿って形成したヘアライン仕上げがある。本実施例の各板材2,3は、互いに同一の構成であり、それぞれ表裏面に同一のヘアライン仕上げが施されている。
【0037】
各板材2,3には、適宜の位置に、前記口部7,8が設けられる。この口部7,8は、本実施例では、下板2に穴9,10を開けると共に、その穴9,10に筒状のノズル11,12を設けて構成される。つまり、図4に示すように、穴9(10)にノズル11(12)の端部をはめ込んで両者を溶接(たとえばTIG溶接)13して構成される。この際、板材2,3の重ね合わせ面の側へは、ノズル11(12)や溶接部13が突出しないようにするのがよい。
【0038】
膨出部4に設けられる口部7,8として、本実施例では、図2において、下板2の右側の前後の角部に、第一ノズル11と第二ノズル12とが設けられる。さらに、本実施例では、非膨出部5にも口部14が設けられる。非膨出部5に設けられる口部14として、本実施例では、図2において、上板3の左側の前後一方の角部に設けた穴15に、第三ノズル16が設けられる。第三ノズル16の位置は、前後方向中央部でもよいのであるが、後述の内部溶接工程での溶接位置との関係で、本実施例では前後方向一方へ寄せた位置に配置される。
【0039】
その後、図3および図4に示すように、二枚の板材2,3を重ね合わせて外周端面において全周を溶接17(たとえばレーザー溶接)する(周辺溶接工程)。板材を重ね合わせる際、各ノズル11,12,16は、重ね合わせ面と反対側の面から突出するように配置される。また、本実施例では、図2に示すように、各板材2,3のヘアラインの向きが交差するように、二枚の板材2,3を重ね合わせる。
【0040】
その後、図5に示すように、第一ノズル11と第二ノズル12とに、真空ポンプ18を接続する。各ノズル11,12と真空ポンプ18との配管には、圧力計19とバルブ20とが設けられている。一方、第三ノズル16には、圧力計21が設けられる。
【0041】
なお、図示例では、第一ノズル11と第二ノズル12とに、それぞれ個別に真空ポンプ18を設けているが、各ノズル11,12からの配管を合流させて共通の真空ポンプ18に接続してもよい。あるいは、図示例では、第一ノズル11と第二ノズル12とに、それぞれ個別に真空ポンプ18を設けているが、いずれか一方の真空ポンプ18の設置を省略して、真空ポンプ18が設置されない側のノズルを閉塞(つまりバルブ20を閉鎖)しておいてもよい。
【0042】
いずれにしても、第一ノズル11および/または第二ノズル12に接続した真空ポンプ18を作動させて、板材2,3間の隙間に残る空気を外部へ吸引排出して、板材2,3間の隙間を減圧する(減圧工程)。予め周辺溶接工程により板材2,3間の外周端面は全周において閉塞されているので、減圧工程により板材2,3間の隙間からの真空引きを確実に図ることができる。
【0043】
設定時間または設定圧力まで真空引きを行った後、真空ポンプ18を停止すると共に、前記各バルブ20を閉じる。この状態で所定時間保持して、板材2,3間からの真空漏れひいては溶接不良の確認を行うことができる。仮に周辺溶接工程に万一不良があり、板材2,3間の隙間と外部とが連通していると、真空ポンプ18を停止後、第三ノズル16の圧力計21の圧力が上昇するので、それにより周辺溶接工程の不良を検知することができる。なお、圧力計21の圧力は、所定の記録計(図示省略)により記録される。
【0044】
その後、板材2,3間の隙間を減圧保持した状態のまま、図6に示すように、板材2,3の板面において板材2,3同士を溶接6(,6´)(たとえばレーザー溶接)して、膨出部4と非膨出部5とに分ける(内部溶接工程)。なお、この溶接中、板材2,3間の隙間は減圧保持されるが、そのために、減圧工程後に各ノズル11,12,16を閉塞しておく以外に、内部溶接工程でも真空ポンプ18により板材2,3間からの隙間からの真空引きを継続させてもよい。いずれにしても、板材2,3間の隙間を減圧しておくことで、板材2,3同士を密着させた状態で板材2,3同士を溶接することができ、容易で確実な溶接を行うことができる。溶接による熱歪みで二枚の板が離れようとしても、板材2,3間の減圧状態がそれを阻止して、信頼性の高い溶接を実施することができる。
【0045】
その後、図7に示すように、第二ノズル12をバルブ20により閉塞した状態で、第一ノズル11から適宜の流体を膨出部4へ圧入する(膨出工程)。これにより、図8に示すように、膨出部4において板材2,3同士の隙間を開けるように、膨出部4が膨出変形される。ここでは、高圧の窒素ガスをボンベ22から吹き込んで、膨出部4を膨出変形させる。第一ノズル11から流体を圧入する場合、第二ノズル12に設けた圧力計19により、膨出部4全域へのガスの圧入を確認することができる。なお、その圧力計19の圧力は、所定の記録計(図示省略)により記録される。
【0046】
その後、板材2,3間の隙間の加圧状態(膨出工程よりも加圧状態を軽減してもよいが大気圧よりは高圧)を維持したまま、膨出部4からの流体漏れの有無により、溶接不良の確認を行うのが好ましい(漏れ確認工程)。流体漏れの確認方法は、特に問わないが、たとえば図9に示すように、全てのノズル11,12,16を閉塞した状態で、熱交換器1を水没させて、熱交換器1からの気泡の流出の有無を目視で確認して行うことができる。
【0047】
ところで、減圧工程において、板材2,3間からの真空引きを容易で迅速に行うために、二枚の板材2,3の内、一方または双方の板材には、少なくとも重ね合わせ面となる側の板面に、表面粗さを増す処理を施しておくのが好ましい。そのために、本実施例では、前述したように、ヘアライン仕上げ(たとえば50〜200番、好ましくは80〜150番の仕上げ)が施された板材を用い、さらにそのヘアライン線の向きが交差するように配置して、板材2,3同士を重ね合わせている。
【0048】
但し、ヘアライン仕上げなどの処理は、一方の板材では省略したり、重ね合わせ面と反対側の面では省略したりしてもよいし、両方の板材に設ける場合でも、その向きの方向は交差させずに揃えたり、直角以外の方向で交差させたりしてもよい。さらに、ヘアライン仕上げ以外の方法で、板材2,3の重ね合わせ面の表面粗さを増してもよい。
【0049】
以下、本実施例の熱交換器1の使用方法について説明する。
本実施例の熱交換器1は、膨出部4に設けたノズル11,12を用いて、膨出部4に流体を通して利用される。たとえば、熱交換器1の膨出部4には、第一ノズル11から流体が導入され、第二ノズル12から流体が導出される。これにより、膨出部4を通る流体と、熱交換器1の外側にある周囲の流体との熱交換を図ることができる。なお、非膨出部5のノズル16は閉塞されるが、後述するように圧力計を設置してもよい。熱交換器1の用途は、特に問わないが、たとえば図10に示すように、氷蓄熱槽の熱交換器として用いることができる。
【0050】
具体的には、貯水槽23の中に熱交換器1を水没させ、膨出部4には冷凍装置(コンデンシングユニット)24からの冷媒が膨張弁(図示省略)を介して通される一方、貯水槽23の水は冷水使用設備25で使用可能とされる。図示例では、四つの熱交換器1を並列に設置しているが、熱交換器1の数や配置は適宜に変更可能なことは言うまでもない。
【0051】
このような構成の場合、典型的には、電気料金の安い夜間電力を用いて、冷凍装置24を作動させ、熱交換器1に低温の冷媒を通して、貯水槽23内の水の冷却や一部凍結を図る。そして、昼間には、貯水槽23内の冷水を冷水使用設備25において利用する。冷水使用設備25は、特に問わないが、たとえば空調設備または食品機械である。つまり、貯水槽23内の冷水を、冷房や食品冷却などに利用することができる。
【0052】
なお、熱交換器1を構成する二枚の板材2,3は、外周端面において全周を溶接されているので、貯水槽23内に熱交換器1を水没させても、板材2,3間の隙間に水が入り込むおそれがない。仮に板材2,3間の外周端面に溶接がない場合、板材2,3間の隙間に水が入り込んで、その水が凍結して膨張すると板材2,3間の溶接を剥離させるおそれがあるが、本実施例の熱交換器1によれば外周部全域を溶接しているのでそのような不都合はない。
【0053】
ところで、熱交換器1の使用中、非膨出部5において板材2,3間の隙間の圧力を監視すれば、その圧力上昇により内部溶接(内部溶接工程の溶接)6の破壊を検知することができる。具体的には、本実施例の場合、第三ノズル16に圧力計を設けておき、その圧力上昇により内部溶接の破壊を検知することができる。特に、内部溶接工程において、板材2,3の板厚Xよりも小さい幅Y(Y<X)で溶接を行っておけば、内部溶接が破損する場合、板材2,3同士を引き離す方向に破損させやすく、第三ノズル16の圧力計によりそれを検知することができる。しかも、熱交換器1の最外周部には溶接17が施されているので、熱交換器1の外側へ流体が漏れ出る前に検知することができる。
【0054】
本発明の熱交換器1の製造方法および使用方法は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。
【0055】
前記実施例では、板材2,3へのノズル11,12,16の設置にTIG溶接、周辺溶接工程および内部溶接工程にレーザー溶接を用いたが、溶接の種類は適宜に変更可能である。但し、レーザー溶接は狭い幅で深く溶接できるので、内部溶接工程に適する。
【0056】
前記実施例において、周辺溶接工程、内部溶接工程または膨出工程などでは、それぞれに適した治具にセットして作業できることは言うまでもない。たとえば、周辺溶接工程では、重ね合わせた板材2,3を上下から挟み込む治具を用いればよいし、内部溶接工程でも、板材2,3が熱で歪まないように上下から挟み込んでおくのが好ましいし、膨出工程では、膨出部4の変形を所定に整えるためのカバー状の治具を用いるのがよい。
【0057】
前記実施例では、口部7,8,14は、板材2,3に開けた穴9,10,15に筒材からなるノズル11,12,16を設けて構成したが、口部7,8,14やノズル11,12,16の構成は適宜に変更可能である。たとえば、筒状のノズルとして、単なるパイプ以外に、貫通穴を開けたブロック状部材を用いてもよい。また、口部7,8,14(ノズル11,12,16)には、適宜、配管への接続用のネジやヘルールなどの継手を設けておいてもよい。
【0058】
前記実施例において、口部7,8,14(ノズル11,12,16)の数や形成位置は、適宜に変更可能である。一方または双方の板材2,3の板面に、二枚の板材2,3の合計で二以上の口部(ノズル)を形成すればよい。そして、減圧工程では、各ノズルの内、少なくとも一のノズルに真空ポンプ18を接続すると共に、残りのノズルの内、少なくとも一のノズルに圧力計を設け、さらに残りのノズルがあればその開口部を閉じた状態で、真空ポンプ18を作動させて板材間の隙間を減圧すればよい。その後、真空ポンプ18を停止した状態で圧力計の圧力変化により、板材2,3間からの真空漏れひいては溶接不良の確認を行うことができる。その後、内部溶接工程では、各ノズルを閉じて、板材2,3間の隙間の減圧状態を維持したまま板面に溶接するか、真空ポンプ18を作動させつつ板面に溶接してもよい。その後、膨出工程では、膨出部4に設けられたノズルの内の少なくとも一のノズルから流体を膨出部へ圧入すればよい。
【0059】
前記実施例において、非膨出部5のノズル16の設置は、場合により省略可能である。また、前記実施例では、膨出工程で窒素ガスを用いたが、これ以外の加圧された気体ないし液体を用いてもよい。
【0060】
前記実施例では、同一の大きさの板材2,3を用いて、互いの端面が一致するよう重ね合わせた状態で端面同士を溶接したが、大きさの異なる板材を用いて、一方の板材の端面より内側に他方の板材の端面を配置した状態で重ね合わせ、一方の板材の板面と他方の板材の端面との隙間を溶接で塞ぐように、周辺溶接工程を実施してもよい。また、板材2,3の板厚は、互いに異なってもよい。
【0061】
前記実施例では、二枚の板材2,3から構成したが、場合により、三枚以上の板材から構成してもよい。その場合も、各板材間の外周部の隙間を溶接で閉塞した後、板面において溶接を施して膨出部を形成し、各板材間の膨出部を膨出形成すればよい。
【符号の説明】
【0062】
1 熱交換器
2 板材(下板)
3 板材(上板)
4 膨出部
5 非膨出部
6 溶接(内部溶接)
7 口部
8 口部
9 穴
10 穴
11 第一ノズル
12 第二ノズル
13 溶接部
14 口部
15 穴
16 第三ノズル
17 溶接(周辺溶接)
18 真空ポンプ
19 圧力計
20 バルブ
21 圧力計
22 ボンベ
23 貯水槽
24 冷凍装置
25 冷水使用設備
X 板厚
Y 内部溶接幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板材を重ね合わせて外周端面において全周を溶接する周辺溶接工程と、
前記板材の板面に予め設けておいた口部から前記板材間の隙間に残る空気を外部へ吸引排出する減圧工程と、
前記板材間の隙間を減圧保持した状態で、前記板材の板面において前記板材同士を溶接して、膨出部と非膨出部とに分ける内部溶接工程と、
前記膨出部に流体を圧入して膨出変形させる膨出工程と
を順に含むことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項2】
二枚の板材を用い、予め、一方または双方の板材の板面に、合計二以上の前記口部を形成しておき、
前記各口部は、前記板材の板面に穴を形成した後、その穴に筒状のノズルの端部を固定して構成し、
重ね合わせ面と反対側の面から前記ノズルが突出するように、前記板材同士を重ね合わせて前記周辺溶接工程を行い、
前記内部溶接工程では、前記膨出部を蛇行して形成すると共に、この膨出部内の両端部に前記ノズルを配置するように、前記板材同士を溶接し、
前記膨出工程では、前記板材の外周部よりも内側において、前記板材の板面に施される溶接により囲まれた領域からなる前記膨出部を膨出変形させる
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項3】
前記膨出部の両端部に前記ノズルとしての第一ノズルと第二ノズルとを設ける一方、前記非膨出部に第三ノズルを設け、
前記減圧工程では、前記各ノズルの内、少なくとも一のノズルに真空ポンプを接続すると共に、残りのノズルの内、少なくとも一のノズルに圧力計を設け、さらに残りのノズルがあればその開口部を閉じた状態で、前記真空ポンプを作動させて前記板材間の隙間を減圧した後、前記真空ポンプを停止した状態で前記圧力計の圧力変化により、前記板材間からの真空漏れひいては溶接不良の確認を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項4】
前記膨出工程後、前記板材間の隙間の加圧状態を維持したまま、前記膨出部からの流体漏れの有無により、溶接不良の確認を行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項5】
前記内部溶接工程では、前記板材の板厚よりも小さい幅で溶接を行う
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項6】
二枚の前記板材の内、一方または双方の板材には、少なくとも重ね合わせ面となる側の板面に表面粗さを増す処理を施している
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項7】
前記表面粗さを増す処理は、ヘアライン仕上げである
ことを特徴とする請求項6に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により製造された熱交換器の使用方法であって、
前記熱交換器の使用中、前記非膨出部の前記板材間の隙間の圧力を監視し、その圧力上昇により前記内部溶接の破壊を検知する
ことを特徴とする熱交換器の使用方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により製造された熱交換器の使用方法であって、
貯水槽の中に前記熱交換器を水没させ、
前記膨出部に冷媒を通して前記貯水槽内の一部の水を凍結させる工程と、前記貯水槽内の冷水を使用する工程とを含む
ことを特徴とする熱交換器の使用方法。
【請求項1】
複数の板材を重ね合わせて外周端面において全周を溶接する周辺溶接工程と、
前記板材の板面に予め設けておいた口部から前記板材間の隙間に残る空気を外部へ吸引排出する減圧工程と、
前記板材間の隙間を減圧保持した状態で、前記板材の板面において前記板材同士を溶接して、膨出部と非膨出部とに分ける内部溶接工程と、
前記膨出部に流体を圧入して膨出変形させる膨出工程と
を順に含むことを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項2】
二枚の板材を用い、予め、一方または双方の板材の板面に、合計二以上の前記口部を形成しておき、
前記各口部は、前記板材の板面に穴を形成した後、その穴に筒状のノズルの端部を固定して構成し、
重ね合わせ面と反対側の面から前記ノズルが突出するように、前記板材同士を重ね合わせて前記周辺溶接工程を行い、
前記内部溶接工程では、前記膨出部を蛇行して形成すると共に、この膨出部内の両端部に前記ノズルを配置するように、前記板材同士を溶接し、
前記膨出工程では、前記板材の外周部よりも内側において、前記板材の板面に施される溶接により囲まれた領域からなる前記膨出部を膨出変形させる
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項3】
前記膨出部の両端部に前記ノズルとしての第一ノズルと第二ノズルとを設ける一方、前記非膨出部に第三ノズルを設け、
前記減圧工程では、前記各ノズルの内、少なくとも一のノズルに真空ポンプを接続すると共に、残りのノズルの内、少なくとも一のノズルに圧力計を設け、さらに残りのノズルがあればその開口部を閉じた状態で、前記真空ポンプを作動させて前記板材間の隙間を減圧した後、前記真空ポンプを停止した状態で前記圧力計の圧力変化により、前記板材間からの真空漏れひいては溶接不良の確認を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項4】
前記膨出工程後、前記板材間の隙間の加圧状態を維持したまま、前記膨出部からの流体漏れの有無により、溶接不良の確認を行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項5】
前記内部溶接工程では、前記板材の板厚よりも小さい幅で溶接を行う
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項6】
二枚の前記板材の内、一方または双方の板材には、少なくとも重ね合わせ面となる側の板面に表面粗さを増す処理を施している
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項7】
前記表面粗さを増す処理は、ヘアライン仕上げである
ことを特徴とする請求項6に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により製造された熱交換器の使用方法であって、
前記熱交換器の使用中、前記非膨出部の前記板材間の隙間の圧力を監視し、その圧力上昇により前記内部溶接の破壊を検知する
ことを特徴とする熱交換器の使用方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により製造された熱交換器の使用方法であって、
貯水槽の中に前記熱交換器を水没させ、
前記膨出部に冷媒を通して前記貯水槽内の一部の水を凍結させる工程と、前記貯水槽内の冷水を使用する工程とを含む
ことを特徴とする熱交換器の使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−111640(P2013−111640A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262606(P2011−262606)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】
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