説明

熱交換器及び熱交換器の製造方法並びに洗浄装置

【課題】熱交換を効率良く行うことができるようにする熱交換器及びその製造方法及びそれを備えた洗浄装置の提供。
【解決手段】熱源の外周に直接的または間接的に螺旋状に巻き付けられるとともに、その内部に流体を流通可能な熱伝導性の流通部7を備え、流通部7と熱源との間に形成される空間に熱伝導材が設けられる。これによって効率の良い熱交換によって液体が迅速に加熱できるとともに、スケールの発生を抑制し、流量低下と熱伝導率の低下を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及び熱交換器の製造方法並びにこの熱交換器を用いた洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、歯科技工用の洗浄装置には、所定温度に加熱された液体を噴出するノズルと、ノズルに液体を供給する流路と、流路を通過する液体を加熱する電気ヒータと、流路に液体を圧送するポンプと、液体を貯留する貯水タンクを備え、貯水タンクの液体をポンプによって流路中に圧送するとともに、電気ヒータによって液体を所定の温度に加熱してノズルから噴出させるようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この洗浄装置の流路は、電気ヒータに螺旋状に巻き付けられており、この流路と電気ヒータとによって熱交換器を構成している。
【特許文献1】特開平9−192147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱交換器では、電気ヒータに螺旋状に巻き付けられた流路は、電気ヒータとの接触面積が小さく、このため効率の良い熱交換がなされていなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、熱交換を効率良く行うことができる熱交換器を提供することを課題とする。
【0006】
また、本発明は、熱交換を効率良く行うことができる熱交換器の製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
また、本発明は、熱交換を効率良く行うことができる熱交換器を備えた洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱源の外周に直接的または間接的に螺旋状に巻き付けられるとともに、その内部に流体を流通可能な熱伝導性の流通部を備える熱交換器において、流通部と熱源との間に形成される空間に熱伝導材が設けられることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、流通部と熱源との間に形成される空間を、熱伝導材で埋めることによって、熱交換器は、熱源からの流通部への直接的な熱伝達に加えて、熱源の熱を熱伝導材を介して流通部に伝達することができるようになり、これによって、効率の良い熱交換を実現できる。
【0010】
また、本発明は、前記流通部と熱源との間に形成される空間に設けられる熱伝導材を複数の銅材とする構成を採用できる。
【0011】
かかる構成によれば、熱伝導材を熱伝導率の高い銅材で構成することによって、より効率のよい熱交換ができるようになる。
【0012】
また、本発明は、熱源の外周に直接的または間接的に螺旋状に巻き付けられるとともに、その内部に流体を流通可能な熱伝導性の流通部を備える熱交換器の製造方法において、熱源の外周に螺旋状の流通部を形成すべく、所定長さの配管部材を熱源に直接的または間接的に螺旋状に巻き付けるとともに、流通部と熱源との間に形成される空間に熱伝導材を設けることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、流通部と熱源との間に形成される空間を、熱伝導材で埋めることによって、熱源から流通部への熱伝達に加えて、熱源の熱を熱伝導材を介して流通部に伝達することができるようになり、これによって、この製造方法で製造された熱交換器は、効率の良い熱交換を実現できる。
【0014】
また、本発明に係る洗浄装置は、気体と所定の温度に加熱される液体とを混合して洗浄対象物に噴出するための噴出部と、中途部に液体を加熱する加熱部を有するとともに加熱部で加熱された液体を噴出部に供給する第1供給経路と、噴出部に気体を供給する第2供給経路とを備え、第2供給経路は、加熱部よりも下流側で第1供給経路と合流され、加熱部には、前記熱交換器が設けられ、第1供給経路を流通する液体を加熱部で加熱するとともに、この加熱された液体と第2供給経路を流通する気体とを混合して噴出部に供給するように構成されてなることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、加熱部に上記のような熱交換器を採用することで、効率の良い熱交換によって液体を所定の温度に迅速に加熱することができるようになり、この点で特に有用なものになる。
【0016】
また、本発明に係る洗浄装置は、前記第1供給経路と第2供給経路の間に、その使用を終了したときに第1供給経路に残留する液体を第1供給経路外に排出させるべく、気体を第2供給経路から第1供給経路に供給する第3供給経路が設けられる構成を採用できる。
【0017】
かかる構成によれば、洗浄装置の使用を終了したときに第1供給経路に残留する液体を第1供給経路外に排出することによって、第1供給経路内、特に熱交換器の流通部の内壁面に付着する炭酸カルシウム等の被膜(いわゆるスケール)の発生を抑制し、流通部内の液体の流量の低下、流通部の熱伝導率の低下等を防止できるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱交換を効率良く行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【0020】
図1、図2は、熱交換器の第1実施形態を示している。この熱交換器1は、熱源を収容する熱伝導性の収容ケース2と、この収容ケース2に巻き付けられる熱伝導性の配管部材3と、この収容ケース2と配管部材3との間の空間に設けられる熱伝導材4とを備える。この熱交換器1は、配管部材3に流体を通過させ、この流体と収容ケース2内の熱源とで熱交換を行うようになっている。
【0021】
この収容ケース2に収容される熱源には、例えば、図1に示すように円柱状に構成された発熱部5aと、この発熱部5aの一端部に設けられた2本のリード線5b,5bとを備えた電気ヒータ5が採用されている。
【0022】
収容ケース2は、電気ヒータ5の発熱部5aを内部に収容可能とすべく、銅板を円筒状に構成したものが用いられる。具体的には、この収容ケース2は、タフピッチ銅で構成されている。また、この収容ケース2は、開口部分から内部に電気ヒータ5を挿入できるようになっている。この収容ケース2の厚さ(板厚)は、好ましくは、0.1mm〜0.5mm程度とされるのがよく、より好ましくは0.1mm〜0.3mm程度とされるのがよい。本実施形態では、収容ケース2の厚さは、約0.1mm程度とされている。
【0023】
本実施形態では、配管部材3は、外径が約4mm、厚さが約0.5mmの円管状の銅管が用いられる。より具体的には、この配管部材3は、りん脱酸銅によって構成されている。また、配管部材3は、内部に気体、液体等の流体を通過可能とされており、その一部(以下「流通部」という)7が収容ケース2に螺旋状に巻き付けられている。
【0024】
また、配管部材3は、流通部7の一端部側に、流体を流通部7に流入させる流入通路9を備え、流通部7の他端部側に、流通部7を通過する流体を流出させる流出通路10を備える。流入通路9の先端部には、流体の流入口11が形成され、流出通路10の先端部には、流体の流出口12が形成されている。なお、以下、螺旋状の流通部7の一巻き分に相当する部分を「環状部分」8という。流通部7は複数の環状部分8が収容ケース2の長手方向(螺旋の中心軸方向)にて接触し合って連続して繋がることで螺旋状に構成されている。
【0025】
図2は、流通部7の一部分の断面図を示している。この図2に示すように、配管部材3の流通部7は、収容ケース2に巻き付けられたときの力によって、螺旋を構成する環状部分8の断面が楕円状に変形している。このように流通部7の断面が楕円形に変形することにより、流通部7の螺旋形状を構成する複数の環状部分8は、それぞれ隣り合う環状部分8の外面同士が接触した状態になっている。
【0026】
図2に示すように、環状部分8は、断面視で楕円状とされていることから、隣り合う2つの環状部分8同士が接触した状態において、この2つの環状部分8と熱源との間、より具体的には、2つの環状部分8と収容ケース2の外周面2cとの間に空間(隙間)ができる。以下、この空間を「流通部と熱源との間の空間」15という。
【0027】
前記熱伝導材4は、熱交換器1の熱交換を効率良く行えるように、熱伝導率の高い材料を用いるのが望ましい。この熱伝導材4の熱伝導率は、100W/m・K以上とされるのが好ましく、より好ましくは、150W/m・K以上とされ、200W/m・K以上とされるのが更に好ましい。さらに、熱伝導率が300W/m・K以上の良熱伝導体を熱伝導体4に用いるのが最も望ましい。
【0028】
この熱伝導材4は、この流通部7と熱源との間の空間15を埋めるように設けられている。具体的には、熱伝導材4は、線状に構成され、隣り合う2つの環状部分8と熱源との間にできる空間15を埋めるべく、2つの環状部分8の間に位置するように、流通部7の螺旋の方向に沿って、収容ケース2の外周面2cに螺旋状に巻き付けられている。
【0029】
本実施形態では、この熱伝導材4として複数の銅材(熱伝導率:約390〜420W/m・K)4a,…が用いられている。より具体的には、本実施形態では、流通部7と熱源との間の空間15には、直径0.16mm、42本、断面がほぼ円形の銅材(銅線)4a,…が設けられている。この流通部7の収容ケース2の隙間に複数の銅線4a,…を設ける場合には、これらの複数の銅線4a,…を捩って束状にするのが望ましい。
【0030】
以下、この熱交換器1の製造方法について説明する。
【0031】
この熱交換器1を製造するには、まず、銅板を円柱状(又は円筒状)の芯体に巻き付けて筒状に形成し、これを熱源の収容ケース2とする。これにより、収容ケース2は、その内面が、芯体の外面に密着した状態で形成される。そして、この収容ケース2内に芯体を残したままで、芯体をその軸心が回転中心となるように、旋盤等の工作機械に装着する。
【0032】
次に、工作機械によって、芯体をその軸心(回転軸)まわりに回転させ、収容ケース2の外周面2cに所定長さ(例えば約1.7m)の配管部材3を巻き付け、螺旋状の流通部7を形成する。このとき、流通部7の螺旋形状を構成する環状部分8が互いに接触し、さらに、これらの環状部分8が収容ケース2の外周面2cにも接触するように、収容ケース2の外周面2cに強く巻き付ける。
【0033】
配管部材3は、このように、収容ケース2に強く巻き付けられることにより、その断面が円形から、図2に示すような楕円形に変形する。これによって、流通部7の螺旋形状を構成する複数の環状部分8は、隣り合う環状部分8同士が接触した状態となる。
【0034】
配管部材3の収容ケース2への巻き付けと同時に、収容ケース2の外周面2cに熱伝導材4を巻き付ける。このとき、熱伝導材4は、配管部材3が、複数の環状部分8が接触し合って形成されていく中で、隣り合う2つの環状部分8の間で、環状部分8と収容ケース2の外周面2cとの間に形成される隙間に入るように、この流通部7の螺旋の方向に沿って、収容ケース2の外周面2cに螺旋状に巻き付けられる。
【0035】
このように配管部材3を熱伝導材4とともに収容ケース2の外周面2cに複数回巻き付けることによって、所定巻き数の螺旋状の流通部7が形成される。流通部7が形成されると、この流通部7の端部を曲げ、この流通部7の一端部側に流入通路9を形成し、流通部7の他端部側に流出通路10を形成する。
【0036】
上述のように流通部7が形成されると、収容ケース2内の芯体を取り除き、この収容ケース2内に電気ヒータ5の発熱部5aを収容し、以上によって熱交換器1が完成する。
【0037】
このような製造方法によって製造された熱交換器1は、流通部7と熱源との間の空間15に線状の熱伝導材4が埋められることになり、収容ケース2に収容された熱源(電気ヒータ5)の熱は、収容ケース2を介して流通部7(環状部分8)に伝わるとともに、この収容ケース2から熱伝導材4に伝達され、この熱伝導材4から流通部7の環状部分8に伝達されることになる。
【0038】
流通部7と熱源との間の空間15に熱伝導材4が設けられていない場合には、この空間15を区画する流通部7の外面部分は、収容ケース2の外周面2cに接触していないため、この部分に収容ケース2の外周面2cから熱が直接伝達されることがないが、流通部7と熱源との間の空間15に、熱伝導材4が設けられ、この熱伝導材4が収容ケース2の外周面2cと、前記空間15を区画する流通部7の外面部分とに接触しているので、熱源からの熱を、この熱伝導材4を介して流通部7に伝達できる。これによって、この熱交換器1は、流通部7内を流通する流体と熱源との熱交換を効率良く行うことができる。
【0039】
また、流通部7と熱源との間の空間15に、熱伝導材4が設けられていない場合には、電気ヒータ5の電源を切った場合、放熱に時間がかかり、電気ヒータ5の空焚きとなってしまうおそれがあるが、この空間15に熱伝導材4が設けられることにより、電気ヒータ5の電源を切った場合でも、熱伝導材4から流通部7への熱伝達(放熱)が迅速に行われることになり、これによって、電気ヒータ5の空焚きを防止する効果もある。
【0040】
同様に、流通部7と熱源との間の空間15に、熱伝導材4が設けられていない場合には、熱源である電気ヒータ5の通電中に、この電気ヒータ5の発熱部5aの表面温度が上昇して、電気ヒータ5aの酸化が進行し、焼き付きの発生原因となるおそれがあるが、この空間15に熱伝導材4が設けられて熱交換効率が良くなることで、熱源の焼き付きを防止する効果もある。
【0041】
また、流通部7を構成する複数の環状部分8は、隣り合う環状部分8同士が接触していることから、熱伝導材4に伝達された熱は、確実に環状部分8の外面へと伝達される。
【0042】
また、配管部材3、収容ケース2、熱伝導材4の材質として熱伝導率の高い銅を用いており、これによっても効率の良い熱交換を実現できる。また、配管部材3、収容ケース2、熱伝導材4を同質の材料(銅)で形成することによって、熱交換を効率良く行うことができるとともに、一体もので製作する場合に比べ製造コストを軽減できるようになる。
【0043】
また、熱伝導材4を銅線4a,…で構成し、流通部7と熱源との間の空間15に設けていることから、この熱伝導材4は、熱源からの熱が伝達されることで膨張し、これによって、熱伝導材4同士、熱伝導材4と流通部7、熱伝導材4と収容ケース2の外周面2cとが密接することになり、これによって、より効率の良い熱交換を実現できる。なお、この熱伝導材4は、その断面が網状、または繊維状とされている線状のものを単数または複数用いることができる。
【0044】
また、熱伝導材4として複数の銅線4a,…を用いた場合には、これらの銅線4a,…を捩って束状にすることよって、この熱伝導材4を外周面2cに巻き付ける際に、各銅線4a,…が解れることがなく、1つの纏まりとなって、流通部7と熱源の間の空間15に設けられることになり、この点で熱交換器1の製造が容易になる。
【0045】
なお、流通部7と熱源の間の空間15に熱伝導材4として伝熱セメントを充填することも考えられるが、伝熱セメントは、銅材に比べて熱伝導率が低く、また、時間の経過とともに自然収縮することが考えられ、伝熱セメントと環状部分8の外面との間、または、伝熱セメントと収容ケース2の外周面2cとの間に、隙間が生じ、効率の良い熱交換がなされなくなるおそれがある。
【0046】
これに対して、本実施形態の熱交換器1は、流通部7と熱源との間の空間15に設けられた複数の銅線4a,…自体が経年変化し難く、熱伝導率も高い上に、使用時には、熱源から伝達された熱によって膨張して熱伝導材4間の隙間が小さくなるものであることから、長期間にわたって効率の良い熱交換を行うことができる。
【0047】
図3〜図5は、熱交換器1の第2実施形態を示している。上述した第1実施形態では、熱交換器1には1つの流通部7が設けられていたが、この第2実施形態では、熱交換器1には、2つの熱源(電気ヒータ5)、2つの収容ケース2a,2b、2つの流通部7a,7bが設けられている。第2実施形態に係る熱交換器1の2つの流通部7a,7bは、1本の配管部材3によって形成されている。
【0048】
なお、図3〜図5には図示していないが、第2実施形態に係る熱交換器1は、第1実施形態に係る熱交換器1と同様に、熱源である電気ヒータ5を収容する収容ケース2(2a、2b)の外周面2cに螺旋状に巻き付けられて形成された流通部7(7a、7b)と熱源との間の空間15に熱伝導材4が設けられたものである。また、第1実施形態の熱交換器1と第2実施形態の熱交換器1とで共通する部分には、共通符号を付して、その説明を割愛する。
【0049】
以下、第2実施形態に係る熱交換器1の製造方法を説明する。
【0050】
第2実施形態に係る熱交換器1を製造するには、まず、第1実施形態と同様に、芯体に所定の大きさの銅板を巻き付けて筒状の収容ケース(以下「第1収容ケース」という)2aを形成し、第1収容ケース2aを芯体とともに、所定の回転軸まわりに回転させ、この第1収容ケース2aの外周面2cに所定の長さ(例えば3.4m)の配管部材3を螺旋状に巻き付けて1つめの流通部(以下「第1流通部」という)7aを形成する。このとき、配管部材3の長さは、第1実施形態で用いた配管部材3の2倍以下程度の長さのものが用いられる。
【0051】
このように第1収容ケース2aに配管部材3を巻き付けて第1流通部7aを形成するとともに、熱伝導材4を第1流通部7aと第1収容ケース2a内に収容される熱源との間に形成される空間15に熱伝導材4が入るように、この熱伝導材4を第1収容ケース2aの外周面2cに螺旋状に巻き付ける。
【0052】
このようにして、第1流通部7aが形成されると、配管部材3の余長部分を用いてもう1つの流通部(以下「第2流通部」という)7bを形成する。このとき、配管部材3は、先に形成された第1流通部7aから所定間隔離れた位置を、第1収容ケース2aへの巻き付けの巻始端として第1収容ケース2aの外周面2cに巻き付ける。
【0053】
このようにすることで、第1流通部7aと第2流通部7bとの間には、この2つの流通部7a,7bを所定間隔離して連結する連結部17が形成される。なお、第1流通部7aを形成する際には、連結部17は、回転の方向にほぼ直線となっている。
【0054】
第2流通部7bは、配管部材3の一端部側に第1流通部7aが形成された状態で、2つめの銅板を芯体に巻き付けて2つ目の収容ケース(以下「第2収容ケース」という)2bを形成し、第1流通部7aと同様に、芯体が内部に入った第2収容ケース2bを所定の回転軸まわりに回転させ、この第2収容ケース2bに配管部材3を螺旋状に巻き付けて第2流通部7bを形成するとともに、この第2流通部7bと第2収容ケース2b内に収容される熱源との間に形成される空間15に熱伝導材4を設ける。
【0055】
このとき、第2収容ケース2bの回転方向は、第1収容ケース2aと同じ回転方向とする。これにより、図3、図4に示すように第1流通部7aの螺旋の方向と第2流通部7bの螺旋の方向が同じになる。なお、第2収容ケース2bに巻き付けられる熱伝導材4は、第1流通部7aを形成する際に第1収容ケース2aの外周面2cに巻き付けたものとは別体のものを用いる。
【0056】
このようにして第2流通部7bが形成されると、第1流通部7aの螺旋の軸線と第2流通部7bの螺旋の軸線とがほぼ平行となるように、連結部17の一端部側と他端部側の部分を曲げる。
【0057】
なお、第1流通部7aは、連結部17側とは反対の端部に配管部材3の余長部分を残しておき、これを流入通路9(または流出通路10)とする。また、第2流通部7bの連結部17側とは反対の端部にも配管部材3の余長部分を残しておき、これを流出通路10(または流入通路9)とする。
【0058】
第1流通部7a、第2流通部7bが形成されると、第1収容ケース2a、第2収容ケース2b内の芯体を取り除き、第1流通部7a、第2流通部7bのそれぞれに、熱源である電気ヒータ5,5の発熱部5a,5aを収容する。
【0059】
上記の製造方法によって製造された熱交換器1は、第1流通部7aと第2流通部7bの2つの流通部7を備えることになり、第1流通部7aで加熱された流体を第2流通部7bでさらに加熱することができるようになり、流体を、より高温に加熱する場合に、特に有効なものとなる。
【0060】
第2実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、この第2実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0061】
図5は、第2実施形態に係る熱交換器1の変形例を示している。図3、図4の例では、第1流通部7aと第2流通部7bの螺旋に向きが同じに形成されていたが、この例では、第1流通部7aの螺旋の向きと、第2流通部7bの螺旋の向きが異なって形成されている。このように第1流通部7aと第2流通部7bを形成した場合であっても、図3、図4の例と同様の作用効果を奏する。
【0062】
図6、図7は、上記図1〜図5で示した熱交換器1を用いた洗浄装置21を示している。
【0063】
洗浄装置21は、例えば、歯科技工用に製作される石膏模型や義歯等の洗浄対象物を洗浄するものである。図6に示すように、気体(例えば空気)と所定の温度に加熱された液体(例えば水)とを混合して霧状に噴出する噴出口を有する噴出部(ノズル)22と、噴出部22に液体を供給する第1供給経路23と、第1供給経路23の中途部に設けられた加熱部24と、第1供給経路23に液体を圧送するポンプ25と、液体を貯留する貯留タンク26と、噴出部22に所定の気体を供給する第2供給経路27と、第2供給経路27に接続されて気体を圧送するコンプレッサ28と、第2供給経路27と第1供給経路23との間に設けられた第3供給経路29とを備える。
【0064】
図6に示すように、第1供給経路23、第2供給経路27、第3供給経路29、加熱部24、ポンプ25は、ケース30内に設けられ、コンプレッサ28、貯留タンク26はケース30外に設けられている。
【0065】
第1供給経路23は、貯留タンク26に接続されており、前記ポンプ25は、この第1供給経路23の中途部に設けられ、前記加熱部24は、このポンプ25の下流側に設けられている。また、第1供給経路23は、その下流側で、ケース30外に設けられたホース31を介して噴出部22に接続されている。
【0066】
加熱部24には、上述した第1実施形態または第2実施形態に係る熱交換器1が用いられている。この熱交換器1の流通部7は、第1供給経路23に接続され、この第1供給経路23の一部となっている。この第1供給経路23は、貯留タンク26の液体をポンプ25によって加熱部24に圧送し、加熱部24では、ポンプ25によって圧送される液体を流入通路9の流入口11から流通部7内に取り込んで、電気ヒータ5によって加熱し、所定温度(例えば約120℃)に加熱された液体を流出通路10の流出口12から噴出部22へと送るようになっている。
【0067】
第2供給経路27の中途部には、ON−OFF弁32が設けられており、このON−OFF弁32を操作することにより、コンプレッサ28によって圧送される気体を第2供給経路27を流通させるか否かを選択できるようになっている。
【0068】
また、この第2供給経路27は、加熱部24よりも下流側の位置で、第1供給経路23と合流している。第2供給経路27と第1供給経路23の合流点には、混合器33が設けられており、これによって、第2供給経路27からの気体と第1供給経路23の液体とが混合され、噴出部22に送られるようになっている。
【0069】
第3供給経路29は、その一端部が第2供給経路27の中途部(ON−OFF弁32よりも上流側の位置)から分岐され、その他端部がポンプ25と加熱部24の間の位置(ポンプ25の下流側でかつ加熱部24の上流側)で、第1供給経路23と合流している。この第3供給経路29は、加熱部24(熱交換器1)の流通部7内にスケールが発生するのを防止するために、洗浄装置21の使用を終了したときに、第2供給経路27の気体を第1供給経路23に供給して、この第1供給経路23内に残留している液体を排出するためのものである。この第3供給経路29の中途部には水抜き弁34が設けられている。
【0070】
図7に示すように、ケース30の外面には、操作スイッチ35が設けられており、この操作スイッチ35の操作により、ケース30内のポンプ25およびON−OFF弁32を始動・停止させて、液体と気体を混合させたものを噴出部22から噴出・停止できるようになっている。
【0071】
上記構成の洗浄装置21を始動させると、ポンプ25が作動し、貯留タンク26内の液体が第1供給経路23を通じて噴出部22に向けて圧送される。また、コンプレッサ28の圧力により、気体が第2供給経路27を通じて噴出部22に向けて圧送される。このとき、第2供給経路27のON−OFF弁32は開いた状態に、水抜き弁34は閉じた状態になるように制御される。このように、洗浄装置21が作動している間は、水抜き弁34が閉じた状態となることで、第3供給経路29に気体が流通しないようになっている。
【0072】
第1供給経路23を流通する液体は、加熱部24を通過することによって、所定の温度(例えば100〜120℃)に加熱される。一方、第2供給経路27を流通する気体は、混合器33を介して加熱部24で加熱された液体と混合され、ともにホース31を通じて噴出部22に圧送され、その噴出口から霧状に噴出される。
【0073】
操作スイッチ35の操作によって洗浄装置21の使用を終了すると、洗浄装置21は、ポンプ25が停止し、第2供給経路27のON−OFF弁32が閉じられるとともに、水抜き弁34が開いた状態となるように制御される。これにより、コンプレッサ28によって圧送される気体は、第3供給経路29を介して第1供給経路23に圧送される。
【0074】
このように、第3供給経路29を通じて気体を第1流通経路23に供給することにより、第1流通経路23(特に加熱部24)に残留している液体を噴出部22に圧送し、その噴出口から第1供給経路23外に排出することができる。
【0075】
上記構成の洗浄装置21によれば、加熱部24には、上述した熱交換効率を良くした熱交換器1が用いられているため、流通部7に送られた液体は、迅速に所定の温度に加熱されることになり、熱損失が少なく、使用コストを軽減しながら使用できるようになる。
【0076】
また、第2供給経路27と第1供給経路23との間に第3供給経路29を設けることによって、洗浄装置21の使用を終了したとき(使用しないとき)に、第2供給経路27の気体を第1供給経路23に供給することによって、この第1供給経路23内に残留している液体を第1供給経路23外に排出でき、これによって、第1供給経路23内のスケールの発生を防止できるようになる。
【0077】
また、この洗浄装置21は、第2供給経路27が第1供給経路23に合流し、噴出部22の噴出口の口径が第1供給経路23の内径よりも小さくなっていることから、コンプレッサ28によって第2供給経路27から第1供給経路23に圧力がかけられることにより、この第1供給経路23の内圧が高くなるように構成されている。このような構成により、洗浄装置21の使用時には、第1供給経路23を流通する液体の沸点が高くなり、加熱部24(熱交換器1)を流通する液体が沸騰し難くなって、スケールの発生を抑制できるようになる。
【0078】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変形・変更が可能である。
【0079】
例えば、上記の実施形態では、収容ケース2(2a、2b)を介して熱源に配管部材3を巻き付けることにより、熱伝導性の流通部7が形成された例を示したが、収容ケース2を介さずに、熱源(例えば、電気ヒータ5の発熱部5a)の外周に配管部材3を巻き付けて流通部7を形成してもよい。
【0080】
すなわち、流通部7は、熱源に間接的に巻き付けられて構成されてもよく、また、熱源に直接的に巻き付けられて構成されてもよい。熱源に配管部材3を直接的に巻き付けて螺旋状の流通部7を形成した場合であっても、熱源の外周面(例えば発熱部5aの外周面)と流通部7との間に形成される空間15に熱伝導材4を設けることによって、熱交換を効率良くした熱交換器1を実現できる。
【0081】
また、上記の実施形態では、熱源としての電気ヒータ5は発熱部5aが円柱状のものを例示したが、これに限らず、楕円柱状、四角柱状等の多角柱状その他の種々の形状が採用可能であり、この電気ヒータ5を収容する収容ケース2を電気ヒータ5を収容できるように、楕円筒状、多角筒状その他の種々の形状に構成してもよい。また、上記の実施形態では、熱源として電気ヒータ5を例示したが、これに限らず、ガスヒータ等その他の種々のヒータを熱源として用いても良い。
【0082】
また、上記の実施形態では、熱伝導材4に銅材を採用した例を示したが、これに限らず、これらの部材を、金、銀、真鍮、アルミニウム、銅合金、半田等の種々の金属や種々の合金を採用できる。また、熱伝導材4は、その材質が金属に限定されるものではなく、例えば熱伝導率の高い炭素繊維・フィルム材料、またはその複合材料、樹脂材料その他の非金属材料によって構成されていてもよい。
【0083】
上記の実施形態では、螺旋状に構成された流通部7の複数の環状部分8が接触し合って形成された例を示したが、これに限らず、熱伝導材4が環状部分8に接触する状態を維持できる限り、環状部分8同士が所定間隔離れて形成されていてもよい。また、螺旋状の流通部7は、その一部分で隣り合う環状部分8同士が接触し、他の部分で隣り合う環状部分8同士が離れている状態で構成されていてもよい。
【0084】
上記の実施形態では、熱伝導材4として、断面がほぼ円形の銅材を用いた例を示したが、これに限定されず、断面多角形状、断面楕円状、異形形状その他の種々のものを本発明に適用できる。また、上記の実施形態では、熱伝導材4として、線状の銅材を用いた例を示したが、これに限定されず、網状に構成されたもの、帯状、板状その他の種々の長尺状の形態のものを本発明に適用できる。
【0085】
また、熱伝導材4を弾性変形可能なC字形状、または環状に構成するとともに、これを複数用意し、収容ケース2の外周又は熱源の外周に取り付け可能にし、隣り合う環状部分8の間で流通部7と熱源との間に形成される空間15に、この熱伝導材4を順次設けるようにしてもよい。
【0086】
上記の実施形態では、収容ケース2に巻き付ける配管部材3として、外径が4mm、厚さが0.5mmのものを例示したが、配管部材3の長さ、外径、内径、厚さ等は、熱交換器1の大きさに応じて適宜変更可能である。
【0087】
また、上記の実施形態では、流通部7の螺旋形状を構成する環状部分8は、収容ケース2の外周面2cに巻き付けられたときに断面が楕円状に変形する例を示したが、これに限らず、円管状の配管部材3を変形しないように、収容ケース2の外周面2cまたは熱源に直接的に巻き付けて流通部7を構成してもよい。また、上記実施形態では、配管部材3(流通部7)が円管状に構成されたものを例示したが、これに限らず、断面視多角形状、異形形状の配管部材3を採用可能である。
【0088】
また、上記の第2実施形態では、熱交換器1に2つの流通部7を連結部17を介して連続的に形成した例を示したが、これに限らず、3つ以上の複数の流通部7を連続的に形成しても良いし、または、2つ以上の複数の流通部7をそれぞれ別個に製作し、これらの流通部7を連結するようにして複数の流通部7を有する熱交換器1を製造してもよい。なお、熱交換器1の流通部7や熱源の数は、1,2に限らず、3以上の複数であってもよい。
【0089】
また、上記の実施形態では、熱伝導材4として複数の銅線4a,…を捩って束状にした状態で、流通部7と熱源との間の空間15に設けていたが、これに限らず、複数の銅線4a,…を捩ることなく、流通部7と収容ケース2の外周面2cとの間の空間15に設けて良い。また、複数の銅線4a,…の中途部を結束部材で結束して束状にした状態で、流通部7と収容ケース2の外周面2cとの間の空間15に設けるようにしてもよい。
【0090】
また、上記の実施形態では、熱交換器1を用いた洗浄装置21を例示したが、熱交換器1の用途は、これに限定されず、例えば、電気ポット、給湯器、瞬間湯沸かし器、暖房機その他の種々の用途に適用可能である。例えば、この熱交換器1を電気ポットに用いた場合には、熱交換が効率良く行われるため、その貯水タンク内のお湯を再沸騰、保温することを要さずに、瞬時に加熱して給湯することが可能になる。また、この熱交換器1を水道に直結する給湯器に用いた場合には、貯水タンクすら必要なくなり、水道からの水を熱交換器1によって直接加熱して給湯できるようになる。
【0091】
また、例えば、複数の熱交換器1を並列に設けると、多量の液体を急速に加熱できるようになるので、多量の給水を必要とする湯沸かし器に対して特に有用なものになる。また、熱交換器1を直列に接続すると、液体をより高温にかつ急速に加熱できるようになり、この点で特に有用である。
【0092】
上記の実施形態では、収容ケース2、配管部材3は、その材質が銅の場合を例示したが、これに限定されず、熱伝導率の高く、加工性の良い種々の金属または合金で構成することができる。
【0093】
また、収容ケース2、配管部材3、熱伝導材4のいずれか、またはこれら全てを銅製とする場合には、熱交換器1の使用環境に応じて、りん脱酸銅、タフピッチ銅、無酸素銅その他の種々の銅材を適宜選択して用いることができる。
【0094】
上記の実施形態では、洗浄装置21の使用を終了したときに、第3供給経路29を介して第2供給経路27から第1供給経路23に気体を圧送し、第1供給経路23に残留している液体を噴出部22の噴出口から排出する例を示したが、これに限らず、第1供給経路23の中途部に液体の排出口を別途設けて、洗浄装置21の使用を終了したときに、第1供給経路23に残留している液体を、この排出口から排出させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に係る熱交換器の第1実施形態を示す側面図である。
【図2】同じく要部断面図である。
【図3】本発明に係る熱交換器の第2実施形態を示す側面図である。
【図4】同熱交換器の平面図である。
【図5】第2実施形態に係る熱交換器の変形例を示す平面図である。
【図6】本発明に係る洗浄装置の概念図である。
【図7】洗浄装置の正面図である。
【符号の説明】
【0096】
1…熱交換器、2…収容ケース、2a…第1収容ケース、2b…第2収容ケース、2c…収容ケースの外周面、3…配管部材、4…熱伝導材、4a…銅線、5…熱源(電気ヒータ)、7…流通部、7a…第1流通部、7b…第2流通部、8…環状部分、15…流通部と熱源との間の空間、21…洗浄装置、22…噴出部、23…第1供給経路、24…加熱部、25…ポンプ、26…貯留タンク、27…第2供給経路、28…コンプレッサ、29…第3供給経路、30…ケース、31…ホース、32…ON−OFF弁、33…混合器、34…水抜き弁、35…操作スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源の外周に直接的または間接的に螺旋状に巻き付けられるとともに、その内部に流体を流通可能な熱伝導性の流通部を備える熱交換器において、流通部と熱源との間に形成される空間に熱伝導材が設けられることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記流通部と熱源との間に形成される空間に設けられる熱伝導材は、複数の銅材で構成される請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
熱源の外周に直接的または間接的に螺旋状に巻き付けられるとともに、その内部に流体を流通可能な熱伝導性の流通部を備える熱交換器の製造方法において、
熱源の外周に螺旋状の流通部を形成すべく、所定長さの配管部材を熱源に直接的または間接的に螺旋状に巻き付けるとともに、流通部と熱源との間に形成される空間に熱伝導材を設けることを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項4】
気体と所定の温度に加熱される液体とを混合して洗浄対象物に噴出するための噴出部と、中途部に液体を加熱する加熱部を有するとともに加熱部で加熱された液体を噴出部に供給する第1供給経路と、噴出部に気体を供給する第2供給経路とを備え、
第2供給経路は、加熱部よりも下流側で第1供給経路と合流され、
加熱部には、請求項1または2に記載の熱交換器が設けられ、
第1供給経路を流通する液体を加熱部で加熱するとともに、この加熱された液体と第2供給経路を流通する気体とを混合して噴出部に供給するように構成されてなることを特徴とする洗浄装置。
【請求項5】
前記第1供給経路と第2供給経路の間には、その使用を終了したときに第1供給経路に残留する液体を第1供給経路外に排出させるべく、気体を第2供給経路から第1供給経路に供給する第3供給経路が設けられる請求項4に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−34432(P2009−34432A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202994(P2007−202994)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000101204)株式会社oneA (8)
【Fターム(参考)】