説明

熱交換器用の連続気泡多孔性成型物

例えば以下の化合物から選ばれる熱磁気材料を含む、熱交換器用の連続気泡多孔性成型物。
(1)一般式(I)の化合物
(Ayy-12+δwxz (I)
式中、
Aは、Mn又はCoであり、
Bは、Fe、Cr、又はNiであり、
CとDとEは、CとDとEのうち少なくとも2つ異なり、濃度がゼロでなく、P、B、Se、Ge、Ga、Si、Sn、N、As、およびSbから選ばれ、CとDとEの少なくとも一つがGe又はSiであり、
δは、−0.1〜0.1の範囲の数字であり、
w、x、y、zは、0〜1の範囲の数字である(ただし、w+x+z=1);

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
磁気熱量材料とも呼ばれる熱磁気材料は、例えば冷蔵庫や空調装置、ヒートポンプ中で冷却のために、また中間的に機械的エネルギーに変換することなく熱から直接発電するために使用可能である。
【0002】
この種の材料は基本的には公知であり、例えば、WO2004/068512に記載されている。磁気冷却技術は、磁気熱量効果(MCE)によるもので、既知の蒸気循環冷却方式を置き換えるものである。磁気熱量効果を示す材料中では、ランダムに配列した磁気モーメントが外部磁界で配列する結果、材料が加熱される。この熱は、伝熱によりMCE材料から周囲の雰囲気に除かれる。磁場が消されるかなくなると、この磁気モーメントがランダムな配列に戻り、この結果として材料が周囲温度未満にまで冷却される。この効果は冷却に利用できる;Nature、vol. 415、January 10、2002、pages 150 to 152を参照。通常、磁気熱量材料から熱を除くのに水などの伝熱媒体が用いられる。
【0003】
熱磁気発生機中に使用される材料も、同様に磁気熱量効果によるものである。磁気熱量効果を示す材料中では、ランダムに配列した磁気モーメントの外部磁界による配列の結果、材料が加熱される。この熱は、伝熱によりMCE材料から周囲の雰囲気に除かれる。磁場が消されるかなくなると、この磁気モーメントがランダムな配列に戻り、この結果として材料が周囲温度未満にまで冷却される。この効果は、まず冷却に利用できる、次いで熱の電気エネルギーへの変換に利用できる。
【0004】
磁気熱量的な電気エネルギーの発生は、磁気的加熱や冷却と関係している。最初は概念的に、このエネルギー創出プロセスが熱磁気的なエネルギー創出ととらえられる。ペルチェ型装置またはゼーベック型装置に比べると、これらの磁気熱量的な装置はエネルギー効率がかなり高い。
【0005】
この物理現象の研究は19世紀後半に始まり、この頃に、二人の科学者、テスラとエジソンが熱磁気発生機の特許を申請している。1984年には、キロールがいろいろな利用可能性について述べ、またその熱力学的な分析を行っている。その頃、ガドリニウムは室温近くでの利用に可能性を持つ材料と考えられていた。
【0006】
一つの熱磁気電気発生機が、例えば、N.テスラのUS428,057に記載されている。鉄などの磁性体の磁気特性は、ある特定の温度にまで加熱されると、部分的または完全に破壊されて消失すると述べられている。冷却中に磁気特性が再形成されて最初の状態に戻る。この効果を発電に用いることができる。ある導電体を変動する磁場に曝すと、磁場変化によりその導電体中に電流が誘導される。例えば、この磁性材料をコイルで巻いて永久磁場中で加熱すると、加熱中また冷却中のいずれの場合もコイル中に電流が誘起される。このようにして、中間的に機械仕事に変換することなく、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。テスラの記載する方法では、磁性体としての鉄が、加熱炉または密閉された暖炉中で加熱され、次いで再冷却される。
【0007】
熱磁気的な用途や磁気熱量的な用途には、その材料は、高効率を達成するために効率的な熱交換をさせることが必要である。冷却過程と発電過程の両方で熱磁気材料が熱交換器中で使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、熱交換器の用途に、特に冷却用または発電用の熱交換器用途に好適な熱磁気成型物を提供することである。これらの成型物は、高伝熱で、熱交換媒体の流動に対する抵抗が小さく、磁気熱量密度が大きくなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、本目的は、以下の化合物から選ばれる熱磁気材料を含む、熱交換器、磁気冷却またはヒートポンプまたは熱磁気発生機用の連続気泡多孔性成型物により達成される。
【0010】
(1)一般式(I)の化合物
(Ayy-12+δwxz (I)
式中、
Aは、Mn又はCoであり、
Bは、Fe、Cr、又はNiであり、
CとDとEは、CとDとEのうち少なくとも2つ異なり、濃度がゼロでなく、P、B、Se、Ge、Ga、Si、Sn、N、As、およびSbから選ばれ、CとDとEの少なくとも一つがGe又はSiであり、
δは、−0.1〜0.1の範囲の数字であり、
w、x、y、zは、0〜1の範囲の数字である(ただし、w+x+z=1);
(2)一般式(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)のLa及びFe系化合物
La(FexAl1-x13yまたはLa/FexSi1-x13y (II)
式中、
xは0.7〜0.95の数字であり;
yは、0〜3の数字である;
La(FexAlyCoz13またはLa(FexSiyCoz13 (III)
式中、
xは0.7〜0.95の数字であり;
yは、0〜3の数字である;
zは0.005〜0.5の数字である;
LaMnxFe2-XGe (IV)
式中
xは1.7〜1.95の数字である;
(3)MnTP型のホイスラー合金(式中、Tは遷移金属で、Pはは原子中の電子数e/aが7〜8.5の範囲にあるp−ドープ金属である)。
(4)一般式(V)のGdとSi系化合物
Gd5(SixGe1-x4 (V)
式中、xは、0.2〜1の番号である;
(5)Fe2P系化合物類、
(6)ペロブスカイト型の亜マンガン酸塩、
(7)一般式(VI)と(VII)の希土類元素含有化合物
Tb5(Si4-xGex) (VI)
式中、x=0、1、2、3、4、
XTiGe (VII)
式中、X=Dy、Ho、Tm、
(8)一般式(VIII)と(IX)のMnとSbあるいはAs系の化合物、
Mn2-xxSb (VIII)
Mn2xSb1-x (IX)
式中、
Zは、Cr、Cu、Zn、Co、V、As、Geであり、
xは、0.01〜0.5である、
なお、ZがAsでない場合は、Sbは、Asで置き換えられてもよい。
【0011】
本発明によれば、上記の熱磁気材料が、連続気泡多孔性の構造をとるとき、熱交換器、磁気冷却、ヒートポンプまたは熱磁気発生機または冷蔵庫中で有利に使用できることがわかった。
【0012】
本発明によれば、気孔率は、好ましくは5〜95%であり、より好ましくは30〜95%である。
【0013】
「連続気泡」とは、これらの成型物が相互に連結した気孔により形成された連続的な流路を有していることを意味する。この結果、水、水/アルコール混合物、水/塩混合物などの液状熱輸送媒体や空気や希ガス等のガスの流動が可能となる。水または水/アルコール混合物の使用が好ましく、その場合、このアルコールは一価アルコールであっても多価アルコールであってもよい。例えばグリコールであってもよい。
【0014】
気孔率や、孔径分布、連続流路の比率は、実用的な要件をもとに調整可能である。流体伝熱媒体を経由して速やかに熱が除去できるように、気孔率を十分に高くする必要がある。速やかに熱を除去する場合は、この材料を高頻度で何度も磁場中に出し入れしてもよい。この場合、気孔率は高い。多量の熱交換を可能とするには、多量の材料と低い気孔率が必要である。低気孔率の場合、多量の材料を磁場に導入可能であり、多量の熱が移動可能である。しかしながら、これにより熱輸送媒体を経由する熱交換が低下する。したがって、この気孔率は、これらの特定の要件に応じ、また使用する熱磁気材料に応じて自由に選択できる。
【0015】
したがって本発明の一つの実施様態においては、この成型物が、好ましくは30〜60%、好ましくは30〜50%の低〜中間の気孔率をもつ。他の実施様態においては、高気孔率成型物が、好ましくは60〜95%、特に80〜95%の空隙率をもつ。
【0016】
この気孔率は、いずれの場合も体積率である。
【0017】
平均気孔径は、好ましくは0.1〜300μmであり、より好ましくは0.3〜200μmである。平均気孔径も上記の要件に応じて決定できる。
【0018】
成型物が、顆粒、粉末または圧縮物の焼結で製造される場合、この気孔径は、成型物製造の際の粒度分布により決まる。通常、この平均気孔径は、平均粒子径の1/15〜1/40倍、特に1/20〜1/30倍である。
【0019】
本発明によれば、開放気孔の比率は、気孔体積の好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも60%、特に少なくとも80%である。
【0020】
流路が存在する時は、流路の体積は、多孔性成型物の全量に対して、好ましくは10〜80%の範囲、特に30〜60%の範囲である。
【0021】
ある実施様態においては、これらの成型物の比表面積が、少なくとも250m2/m3である。ある特定の実施様態においては、この比表面積が少なくとも500m2/m3であってもよい。この表面積はBET法で求め、気孔体積は水銀ポロシメーターで測定する。光学的な分析方法を用いることもできる。
【0022】
もう一つの本発明の実施様態においては、この平均気孔径が250〜5100μmであり、より好ましくは635〜5100μmである。平均気孔径の250μm〜5100μnは、約100〜5ppi(気孔数/インチ)に相当する。1ppiは、約0.0254気孔/mに相当する。
【0023】
好適な気孔率についての記述は、US2003/0116503とDE−A−10208711を参照されたい。
【0024】
本発明で用いられる材料は、原理的には公知であり、その一部は、例えば、WO2004/068512中に記載されている。
【0025】
この金属系材料は、上記の材料(1)〜(8)から選ばれる。
【0026】
本発明によれば、化合物(1)と(2)と(3)と(5)から選ばれる金属系材料が特に好ましい。
【0027】
本発明により特に適当な材料は、例えば、WO 2004/068512、Rare Metals、Vol. 25、2006、pages 544 to 549、J. Appl.Phys. 99.08Q107 (2006)、Nature、Vol. 415、January 10、2002、pages 150 to 152、およびPhysica B 327 (2003)、pages 431 to 437に記載されている。
【0028】
上記の一般式(I)の化合物において、CとDとEは、好ましくは同一であり、異なっていてもよく、P、Ge、Si、Sn、およびGaの少なくとも一種のから選ばれる。
【0029】
一般式(I)の金属系材料は、好ましくは、MnとFeとPと適当ならSbと以外に、Ge、Si、As、GeとSi、GeとAs、SiとAs、あるいはGeとSiとAsを含む少なくとも4元化合物から選ばれる。
【0030】
好ましくは成分Aの少なくとも90質量%が、より好ましくは少なくとも95質量%がMnである。好ましくはBの少なくとも90質量%が、より好ましくは少なくとも95質量%がFeである。好ましくはCの少なくとも90質量%が、より好ましくは少なくとも95質量%が、Pである。好ましくはDの少なくとも90質量%が、より好ましくは少なくとも95質量%が、Geである。好ましくはEの少なくとも90質量%が、より好ましくは少なくとも95質量%が、Siである。
【0031】
この材料は、好ましくは一般式MnFe(PwGexSiz)をもつ。xは、好ましくは0.3〜0.7の範囲の数字であり、wは1−x以下であり、zは1−x−wである。
【0032】
この材料は、好ましくは結晶性の六方晶Fe2P構造をとる。好適な材料の例は、MnFeP0.45-0.7Ge0.55-0.30と、MnFeP0.5-0.70、(Si/Ge)0.5-0.30である。
【0033】
適当な化合物は、さらにMni+xFei-xi-yGeyであり、xは−0.3〜0.5の範囲であり、yは0.1〜0.6の範囲である。同様に好適なのは、一般式Mni+xFei-xi-yGey-zSbzの化合物であり、xは−0.3〜0.5の範囲であり、yは0.1〜0.6の範囲、zはyより小さく、また0.2より小さい。同様に適当なのは、式Mn1+xFei-x1-yGey-zSizの化合物であり、xは0.3〜0.5の範囲であり、yは0.1〜0.66の範囲であり、zはy以下で、0.6未満である。
【0034】
同様に好適なのは、Fe2PとFeAs2由来で、必要に応じてMnとPを含む他のFe2P系化合物である。これらは、例えば、以下の一般式に相当する。MnFe1-xCoxGe、式中x=0.7−0.9、Mn5-xFexSi3、式中x=0−5、Mn5Ge3-xSix、式中x=0.1−2、Mn5Ge3-xSbx、式中x=0−0.3、Mn2-xFexGe2、式中x=0.1−0.2(Fe1-xMnx3C、式中x=...−...、Mn3-xCoxGaC、式中x=0−0.05。
【0035】
好ましい一般式(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)のLaとFe系化合物は、La(Fe0.90Si0.1013、La(Fe0.89Si0.1113、La(Fe0.880Si0.12013、La(Fe0.877Si0.12313、LaFe11.8Si1.2、La(Fe0.88Si0.12130.5、La(Fe0.88Si0.12131.0、LaFe11.7Si1.31.1、LaFe11.57Si1.431.3、La(Fe0.88Si0.12)H1.5、LaFe11.2Co0.7Si1.1、LaFe11.5Al1.5Co0.1、LaFe11.5Al1.50.2、LaFe11.5Al1.50.4、LaFe11.5Al1.5Co0.5、La(Fe0.94Co0.0611.83Al1.17、La(Fe0.92Co0.0811.83Al1.17である。
【0036】
好適なマンガン含有化合物は、MnFeGe、MnFe0.9Co0.1Ge、MnFe0.8Co0.2,Ge、MnFe0.7Co0.3Ge、MnFe0.6Co0.4Ge、MnFe0.5Co0.5Ge、MnFe0.4Co0.6Ge、MnFe0.3Co0.7Ge、MnFe0.2Co0.8Ge、MnFe0.15Co0.85Ge、MnFe0.1Co0.9Ge、MnCoGe、Mn5Ge2.5Si0.5、Mn5Ge2Si、Mn5Ge1.5Si1.5、Mn5GeSi2、Mn5Ge3、Mn5Ge2.9Sb0.1、Mn5Ge2.8Sb0.2、Mn5Ge2.7Sb0.3、LaMn1.9Fe0.1Ge、LaMn1.85Fe0.15Ge、LaMn1.8Fe0.2Ge、(Fe0.9Mn0.13C、(Fe0.8Mn0.23C、(Fe0.7Mn0.33C、Mn3GaC、MnAs、(Mn、Fe)As、Mn1+δAs0.8Sb0.2、MnAs0.75Sb0.25、Mn1.1As0.75Sb0.25、Mn1.5As0.75Sb0.25である。
【0037】
本発明において好適なホイスラー合金としては、例えばNi2MnGaやFe2MnSi1-xGex(ただし、x=0−1)があげられ、具体例としては、Fe2MnSi0.5Ge0.5、Ni52.9Mn22.4Ga24.7、Ni5.9Mn24.7Ga24.4、Ni55.2Mn18.6Ga26.2、Ni51.6Mn24.7Ga23.8、Ni52.7Mn23.9Ga23.4、CoMnSb、CoNb0.2Mn0.8Sb、CoNb0.4Mn0.6Sb、CoNb0.6Mn0.4Sb、Ni50Mn35Sn15、Ni50Mn37Sn13、MnFeP0.45As0.55、MnFeP0.47As0.53、Mn1.1Fe0.90.47As0.53、MnFeP0.89-xSixGe0.11、x=0.22、X=0.26、X=0.30、x=0.33があげられる。
【0038】
他の好適な合金は、Fe90Zr10、Fe82Mn8Zr10、Co66Nb9Cu1Si1212、Pd40Ni22.5Fe17.520、FeMoSiBCuNb、Gd70Fe30、GdNiAl、NdFe126GdMn2である。
【0039】
ペロブスカイトタイプ型の亜マンガン酸塩としては、冷えば、La0.6Ca0.4MnO3、La0.67Ca0.33MnO3、La0.8Ca0.2MnO3、La0.7Ca0.3MnO3、La0.958Li0.025Ti0.1Mn0.93、La0.65Ca0.35Ti0.1Mn0.93、La0.799Na0.199MnO2.97、La0.88Na0.099Mn0.9773、La0.8770.096Mn0.9743、La0.65Sr0.35Mn0.95Cn0.053、La0.7Nd0.1Na0.2MnO3、La0.5Ca0.3Sr0.2MnO3があげられる。
【0040】
一般式(V)のGd系及びSi系化合物
Gd5(SixGe1-x4
式中、xは0.2〜1の数字である、
例えば、Gd5(Si0.5Ge0.54、Gd5(Si0.425Ge0.5754、Gd5(Si0.45Ge0.554、Gd5(Si0.365Ge0.6354、Gd5(Si0.3Ge0.74、Gd5(Si0.25Ge0.754である。
【0041】
希土類元素を含む化合物は、Tb5(Si4-xGex)(ただし、x=0、1、2、3、4)またはXTiGe(ただし、X=Dy、Ho、Tm)であり、例えばTb5Si4、Tb5(Si3Ge)、Tb(Si2Ge2)、Tb5Ge4、DyTiGe、HoTiGe、TmTiGeである。
【0042】
一般式(VIII)と(IX)のMnとSbまたはAs系化合物は、好ましくは、上記の定義で、z=0.05〜0.3であり、Z=Cr、Cn、Ge、As、Coである。
【0043】
本発明で使用される熱磁気材料は、いずれかの適当な方法で生産される。
【0044】
これらの熱磁気材料は、例えば、この材料用の出発元素または出発合金のボールミル中での固相反応と、続くプレス、焼結と不活性ガス雰囲気下での熱処理、また続くゆっくりとした室温への冷却により製造される。このようなプロセスは、例えば、J. Appl. Phys. 99、2006、08Q107に記載されている。
【0045】
溶融紡糸による加工も可能である。これにより、より均一な元素の分布が可能となり、この結果、磁気熱量効果が改善される;Rare Metals、vol. 25、October 2006、pages 544 to 549を参照。ここに記載のプロセスでは、出発元素は、まずアルゴンガス雰囲気下で誘導過熱により溶融され、溶融状態でノズルから回転銅ローラー上に吹付けられる。その後、1000℃で焼結し、徐々に室温まで冷却する。
【0046】
また、製造についてはWO2004/068512を参照されたい。
【0047】
これらの方法で得られる材料は、しばしば大きな熱ヒステリシスを示す。例えば、ゲルマニウムまたはケイ素で置換されたFe2P型化合物では、10K以上と大きな範囲の中で大きな熱ヒステリシス値が観察される。
【0048】
以下の工程からなる熱磁気材料の製造方法が好ましい。
a)所望の金属系材料に相当する量の化学元素及び/又は合金を、固相及び/又は液相で反応させる工程と、
b)適当なら工程a)の反応生成物を固体に変換する工程と、
c)工程a)またはb)の固体を焼結及び/又は熱処理する工程と、
d)工程c)からの焼結及び/又は熱処理後の固体を少なくとも100K/sの冷却速度で急冷する工程。
【0049】
これらの金属系材料を、焼結及び/又は熱処理後周囲温度にゆっくりと冷やすのでなく、高冷却速度で急冷すると、熱ヒステリシスを大幅に減少させ、大きな磁気熱量効果を得ることができる。この冷却速度は少なくとも、100K/sである。この冷却速度は、好ましくは100〜10000K/sであり、より好ましくは200〜1300K/sである。特に好ましい冷却速度は、300〜1000K/sである。
【0050】
この急冷は、いずれか適当な冷却方法で、例えば固体を水または水系の液体で、例えば冷却水または氷/水混合物で冷却することにより達成できる。例えばこの固体を氷水中に落下させてもよい。液体窒素などの超冷却ガスで固体を急冷することもできる。他の急冷方法は、当業界の熟練者には公知である。最も重要なのは、コントロールされた急冷である。
【0051】
最終工程が焼結及び/又は熱処理後の固体の本発明の冷却速度での急冷が含んでさえいれば、熱磁気材料の製造の他の部分はそれほど重要ではない。上述のように、このプロセスは、いずれかの好適な磁気冷却用の熱磁気材料の製造にも応用可能であろう。
【0052】
本発明の方法の工程(a)では、最後に金属系材料中に存在する元素及び/又は合金が、この熱磁気材料に相当する量で、固相または液相で処理される。
【0053】
密閉容器または押出機中で元素及び/又は合金を加熱して、あるいはボールミル中で固相反応により、工程a)の反応を行うことが好ましい。固相反応を行うことが、特にボールミル中で固相反応を行うことが特に好ましい。このような反応は、原理的には既知である;序に述べた文書を参照。通常、所望の熱磁気材料中に存在する個々の元素の粉末または2種以上の元素からなる合金の粉末を、適当な質量比で、粉末状態で混合する。必要なら微結晶混合粉末を得るために、この混合物をさらに粉砕してもよい。この混合粉末をボールミル中で加熱することが好ましく、これにより、粉砕と混合が進行し、混合粉末中で固相反応が起こる。あるいは、個々の元素を所要量混合して溶融する。
【0054】
密閉容器中での加熱を併用すると、揮発性の元素の固定と量のコントロールが可能となる。例えばリンを使用する場合は、開放系ではリンが簡単に気化してしまう。
【0055】
この反応の後に、この固体の焼結及び/又は熱処理が続くが、この前に一つ以上の中間工程を設けてもよい。例えば、工程a)で得られる固体を、焼結及び/又は熱処理の前に成型にかけることもできる。
【0056】
あるいは、ボールミルで得られる固体を溶融防止プロセスに送ることもできる。溶融紡糸プロセスは公知であり、例えば、Rare Metals、Vol. 25、October 2006、pages 544 to 549やWO2004/068512に記載されている。
【0057】
これらのプロセスでは、工程a)で得られる組成物を溶融して、回転している冷金属ローラー上に吹き付ける。この吹付けは、噴射ノズルの上流を加圧するか、噴射ノズルの下流を減圧することにより行われる。通常、回転銅ドラムまたはローラーが使用され、これは、適当ならさらに冷却される。この銅ドラムの表面速度は、好ましくは40m/sであり、特に20〜30m/sである。この銅ドラム上では、この液体組成物が、好ましくは102〜107K/sの速度で、より好ましくは少なくとも104K/s、特に0.5〜2×106K/sの速度で冷却される。
【0058】
工程a)の反応と同様に、溶融紡糸も減圧下または不活性ガス雰囲気下で実施できる。 溶融紡糸では、続く焼結と熱処理を短縮することができるため、加工速度を上げることができる。具体的には工業スケールで、金属系材料の製造がさらに経済的に実施可能となる。吹付けでも、高い加工速度が可能となる。特に好ましいのは、溶融紡糸を行うことである。
【0059】
あるいは、工程b)で、噴霧冷却を行い、工程a)からの組成物の溶融物を噴霧塔内に噴霧することができる。例えば、この噴霧塔をさらに冷却してもよい。噴霧塔においては、103〜105K/sの範囲の、特に約104K/sの冷却速度が、しばしば達成される。
【0060】
固体の焼結及び/又は熱処理は、工程c)で行われ、好ましくはまず800〜1400℃の範囲の温度で焼結し、次いで500〜750℃の範囲の温度で熱処理する。例えば、焼結を500〜800℃の範囲の温度で行ってもよい。成型物/固体には、焼結は、より好ましくは1000〜1300℃の範囲の温度、特に1100〜1300℃の範囲の温度で行われる。熱処理を、例えば、600〜700℃で行ってもよい。
【0061】
焼結は、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に5〜15時間行う。熱処理は、好ましくは10〜100時間の範囲、より好ましくは10〜60時間、特に30〜50時間の範囲で行う。実際の処理時間は、材料の実際的な必要条件に合わせて決めることができる。
【0062】
溶融紡糸プロセスを使用する場合は、しばしば焼結を省くことができ、また熱処理を大幅に短縮、例えば5分〜5時間に、好ましくは10分〜1時間に短縮することができる。従来の10時間の焼結と50時間の熱処理と比べると、これは大きな時間的利点となる。
【0063】
焼結/熱処理の結果、粒子境界の部分的な溶融が起こり材料がさらに緻密となる。
【0064】
したがって、工程b)での溶融と急冷で工程c)の所要時間が大幅に短縮される。これにより、これらの熱磁気材料の連続生産が可能となる。
【0065】
本発明の連続気泡多孔性成型物は、例えば、連続気泡発泡体の形で存在していてもよい。例えば、スラブ状、ハニカム状、モノリス状であっても、支持体上の塗膜の形であってもよい。
【0066】
この連続気泡多孔性構造は、いろいろな方法で製造される。
【0067】
ある成型物製造方法は、連続気泡多孔性構造ができるように粉末粒子を結合させて、熱磁気材料の粉末を成型することからなる。この粉末は、例えばプレスで、適当なら熱処理と合わせて処理され、あるいは焼結プロセスや発泡体成形プロセスで処理される。
【0068】
プレス加工の場合、熱磁気材料の粉末はある特異な粒度分布で存在し、所望の気孔率が得られるようになっている。この用途での平均粒子径は、好ましくは所望の平均気孔径の20〜30倍である。同時に、この粉末は、熱伝導に好適な形状にプレスされる。この孔径分布は、粒度分布と印加する圧力により決まる。プレスの性能またプレス生成物の性質を改善するために、添加物を用いてもよい。例えば、潤滑剤あるいはまたはタブレット製造助剤を用いることができる。最適の孔径分布は、圧力損失に対する要件により決まるが、エネルギー損失を最小限に抑えるためにこれを最適化する必要がある。
【0069】
プレスは、例えば常温プレスまたは高温プレスで行ってよい。プレスの後に、上述の焼結プロセスが続いてもよい。
【0070】
焼結プロセスまたは焼結金属プロセスにおいては、熱磁気材料の粉末が、まず所望の成型物の形状に変換され、次いで焼結により相互に結合されて所望の成型物を与える。上述のように、焼結も同様に実施可能である。
【0071】
発泡体成形プロセスを、いずれの適当な方法で実施してもよい。例えば、連続気孔多孔性構造ができるように、熱磁気材料の溶融物中に不活性ガスを吹き込んでもよい。他の発泡剤の使用も可能である。
【0072】
熱磁気材料溶融物を、激しく叩解、振盪、吹付けまたは攪拌して発泡体を作ることもできる。
【0073】
本発明によれば、熱磁気材料の粉末をポリマーバインダーに加え、得られる熱可塑性成形材料を成型し、このバインダーを除去し、得られる緑色成型物を焼結することもできる。熱磁気材料の粉末をポリマーバインダーで被い、それを適当なら熱処理しながらプレスしてもよい。
【0074】
本発明によれば、熱磁気材料用のバインダーとして使用可能ないずれか適当な有機バインダーを使用することができる。これらは、特にオリゴマーまたはポリマーであるが、低分子量有機化合物、例えば糖類を使用することもできる。
【0075】
例えば、パラフィンワックスまたはポリスチレンなどの合成有機樹脂を使用することができる。また、例えば分子量が4000〜8000の範囲、好ましくは5000〜7000の範囲にあるポリエチレングリコールを用いることもできる。このようなバインダー系は、例えばGB−A−2105312やEp−A−0127367に記載されている。このような系がまた、例えばUS5,573,055に記載されている。
【0076】
有用な有機のバインダーとしては、特に天然ポリマーと合成ポリマーがあげられる。天然ポリマーの例としては、セルロースや、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレートなどのセルロース誘導体、また他のセルロースエーテルやセルロースエーテルがあげられる。酸化反応または脱水反応により、他のセルロース誘導体も形成可能である。なお、ロンプ化学用語辞典、第9版の「セルロース」、「セルロース誘導体」、「セルロースエステル」「セルロースエーテル」を参照されたい。
【0077】
他の天然ポリマーは、カゼインまたはデンプンである。
【0078】
また、多糖類や低分子量糖類も使用できる。好適な合成バインダーは、例えば、ポリビニルピロリドンと、ビニルピロリドン−スチレンコポリマーやビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー、類似のポリマーなどのポリビニルピロリドン系のポリマーである。ポリアルキレングリコールやそのエーテル、特にポリエチレングリコールを使用することもできる。これらのポリマーは、粉末状、粒子状またはラテックス状で使用してもよい。
【0079】
これ以外に有用なのは、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート等の工業用ポリマーである。本発明によれば、ポリマー樹脂、例えばポリエステル系樹脂またはエポキシ樹脂を使用することができる。これらは、一成分系であっても、他成分系であってもよい。有機のバインダーは、通常、全体として塩混合物に対して0.5〜10質量%の量で使用される。
【0080】
例えば、アクリル酸エステル系またはスチレン/ブタジエン系のポリマーの分散物も使用可能である。
【0081】
好適なポリマーの例としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66があげられる。具体的なポリマーとしては、アセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフイド、ポリスルホンがあげられる。樹脂としては、特にフェノールホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂があげられる。ゴムとしては、特にスチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムがあげられる。
【0082】
これらのポリマーは、フリーラジカル的に、アニオン的に、カチオン的にまたは放射により重合したものであってもよい。本発明で使用される有機ポリマーは、特にビニル系ポリマーである。これらのコポリマーは、いずれか適当な方法で、塩類に塗布され、固体塩のコアを形成する。これらのポリマーは、例えば溶融状態あるいは溶解状態で塗布可能である。個々の場合に必要で好適な量は、当業界の熟練者により簡単な手分析で決定可能である。
【0083】
好適なポリマーの典型例は、ポリアセタール、特にポリオキシメチレンとそのコポリマーである。これらは、パラフィンまたはポリオレフィン分散物に代えて、よく使用される。ポリオキシメチレンホモポリマーまたはコポリマーとこれに非混和のポリマーの混合物をバインダーとして使用することもできる。ポリオキシメチレンホモポリマーまたはコポリマーの融点は、好ましくは少なくとも150℃であり、分子量(重量平均)は5000〜150000の範囲である。例えば、ポリオキシメチレンホモポリマーとコポリマーと、オレフィン系、ビニル芳香族モノマー、ビニルエステル、ビニルアルキルエーテルまたはメタクリル酸アルキル系のポリマーとの混合物を用いることもできる。好適なポリマーが、例えば、EP−B−05951460やEP−B−1276811に記載されている。ポリオキシメチレンに関しては、また、EP−A−0413231や、EP−A−0444475、EP−A−0465940、EP−A−0446708を参照されたい。バインダーを除くのに、ガス状の酸含有雰囲気で処理してもよい。対応するプロセスが、例えば、DE−A−3929869やDE−A−4000278に、またEP−B−1276811やEP−B−0951460に記載されている。
【0084】
本発明で好適な有機ポリマーバインダーは、例えば、特に射出成型用途に用いられるポリマーである。
【0085】
他の適当な有機バインダーは、例えば瀝青とタールである。他の好適なバインダーについては、ロンプ化学用語辞典、第9版の[バインダー]を参照されたい。
【0086】
熱磁気粉末を適当な有機のバインダーの一種と混合して金型に充填する。これは、例えば注型や射出成型で行われる。このポリマーを次いで、触媒的または熱的に除き、焼結して連続気泡構造を持つ多孔体を形成する。
【0087】
噴霧塗布により、例えば流動床噴霧塗布法により、この粉末をバインダーで被うことができる。このポリマー被覆材料を、次いで金型に入れ、熱及び/又は圧力で処理して、多孔性連続気泡構造を形成する。この場合、この有機バインダーが粒子上のシェルとして残ることがある。この方法の利点は、この合金粒子がポリマーでシールされており、熱交換流体と直接接触することがないことである。この結果、熱磁気材料の耐食性に関わる要求条件が小さくなる。
【0088】
このプロセスは、高伝熱、低流動抵抗、高磁気熱量的密度の適当な組み合わせを有する連続気泡多孔性成型物が得られるように制御される。効率的な熱除去と効率的な熱交換を確実にする最適の高磁気熱量的密度と十分な気孔率との比率が好ましい。言い換えれば、本発明の成型物は高い比表面積を有している。高表面積であるため、材料から熱を輸送して伝熱媒体に移動させることができる。流体冷媒による機械的なストレスに対応するため、この構造は機械力に安定である必要がある。また、流動抵抗が十分に低く、多孔質材料中での圧力損失が小さくなるようにする必要がある。好ましくは、磁場の大きさを最小とすべきである。
【0089】
本発明で得られる連続気泡多孔性成型物は、好ましくは、冷蔵庫、空調装置、ヒートポンプまたは熱交換器、または発電機中で熱の直接変換に使用される。これらの材料は、−100℃〜+150℃の温度範囲内で大きな磁気熱量効果を示す必要がある。
【0090】
伝熱速度は、サイクル速度を制限し、出力密度に大きな影響をもつ。
【0091】
発電の際には、導電性材料のコイルがこの熱磁気材料の周りに取り付けられる。このコイル中で、磁場または磁化の変化により電流が誘導され、電気的な仕事を行うのに使用される。最小の圧力損失で最大のエネルギー収率が得られるようにコイルの構造と熱磁気材料の構造を選択することが好ましい。コイルの巻き密度(巻数/長さ)やコイルの長さ、熱磁気材料の電荷抵抗と温度変化は、エネルギー収率に大きな影響を与える因子である。
【0092】
この熱磁気材料は外部磁界中におかれる。この磁場は、永久磁石または電磁石により発生できる。電磁石は、従来の電磁石であっても、超電導性磁石であってもよい。
【0093】
地熱源または工業プロセス廃熱または太陽エネルギーまたは太陽熱収集器からの熱エネルギーが変換できるように、例えば太陽電池中で変換できるように、この熱磁気発生機を設計することが好ましい。具体的には、地熱活動の活発な地域では、本発明の熱磁気発生機により地熱を利用した発電が可能となる。工業的なプロセス中では、プロセス熱や廃熱がしばしば発生し、これらは通常環境中に排出されてそれ以上利用されない。廃液は、多くの場合、流入時より流出時に高温となっている。冷却水も同様である。したがって、この熱磁気発生機により、これまで廃棄されてきた廃熱から電気エネルギーを回収することが可能となる。この熱磁気発生機は室温領域で運転可能であるため、この廃熱を利用して電気エネルギーに変換することが可能である。このエネルギー変換を、20〜150℃の温度範囲で、より好ましくは40〜120℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0094】
(高密度の)太陽光発電システム中は、しばしば高温となるため、冷却が必要となる。本発明によれば、この除去しようとする熱を動力に変換できる。
【0095】
発電のためには、この熱磁気材料を、交互に熱貯槽と冷貯槽に接触させて加熱・冷却サイクルにあてる。サイクル時間は、具体的な技術的要件をもとに決められる。
【0096】
以下の実施例は、本発明の用途に好適な熱磁気材料の製造に関するものである。
【実施例】
【0097】
実施例1
プレスしたMnFePGe試料を含む真空石英アンプルを1100℃で10時間維持して、この粉末を焼結させた。この焼結物を650℃で60時間熱処理して均質化させた。炉中でゆっくりと室温まで冷却するのでなく、試料を直ちに室温の水中で急冷した。この水中での急冷で、試料表面が一定程度酸化した。外側の酸化被膜を希酸で洗い流した。XRDパターンは、すべての試料が、Fe2P型の構造で結晶化していることを示した。
【0098】
以下の組成物が得られた:
Mn1.1Fe0.90.81Ge0.19、Mn1.1Fe0.90.78Ge0.22、Mn1.1Fe0.90.75Ge0.25、およびMn1.2Fe0.80.81Ge0.19.。これらの試料の熱ヒステリシスの観測値は、順に7K、5K、2K、3Kである。徐冷された試料では熱ヒステリシスが10Kより大きく、この試料と比べると、熱ヒステリシスは大幅に低下している。
【0099】
熱ヒステリシスは、0.5テスラの磁場で測定した。
【0100】
図1は、磁場を増強しながらキュリー温度付近でMn1.1Fe0.9B0.78Ge0.22を等温磁化させた結果を示す。最高で5テスラの磁場まで、MCEを増加させる磁場誘起性の遷移がみられる。
【0101】
キュリー温度は、熱ヒステリシスの値と同様に、Mn/Fe比とGe濃度を変えることで調整可能である。
【0102】
0〜2テスラの最大磁場変化に対する、マクスウェル式を用いて直流磁化から計算された磁気エントロピーの変化は、初めの三つの試料に対して、それぞれ14J/kgK、20J/kgK、12.7J/kgKである。
【0103】
Mn/Fe比の増加に伴い、キュリー温度と熱ヒステリシスは低下する。その結果、このMnFePGe化合物は、低磁場で比較的大きなMCE値を示す。これらの材料の熱ヒステリシスは非常に小さい。
【0104】
実施例2
MnFeP(GeSb)の溶融紡糸
WO 2004/068512とJ. Appl.Phys. 99、08 Q107 (2006)に記載のように、ボールミル中で高エネルギーを注入して、固相反応法によりまず、多結晶MnFeP(Ge,Sb)合金を製造した。この材料をノズルを有する石英管に入れた。試験槽を10-2mbarにまで脱気し、高純度アルゴンガスで満たした。試料高周波で溶融し、回転銅ドラムを収めた試験槽ヘの差圧によりノズルから吹付けさせた。銅ホイールの表面速度は調整可能で、約105K/sの冷却速度が達成された。次いで、巻き取ったリボンを900℃で1時間熱処理した。
【0105】
X線回折の結果は、すべての試料が六方晶Fe2P構造パターンで結晶化していることを示す。溶融紡糸法以外で生産された試料とは異なり、MnOの汚染相が観測されなかった。
【0106】
溶融紡糸をいろいろ異なる周速度で行い、キュリー温度、ヒステリシス、エントロピーの値を測定した。結果を、以下の表1と表2にまとめて示す。いずれの場合も、低いヒステリシス温度が測定された。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器用の連続気泡多孔性成型物であって、次の化合物から選ばれる熱磁気材料を含む成型物。
(1)一般式(I)の化合物
(Ayy-12+δwxz (I)
式中、
Aは、Mn又はCoであり、
Bは、Fe、Cr、又はNiであり、
CとDとEは、CとDとEのうち少なくとも2つ異なり、濃度がゼロでなく、P、B、Se、Ge、Ga、Si、Sn、N、As、およびSbから選ばれ、CとDとEの少なくとも一つがGe又はSiであり、
δは、−0.1〜0.1の範囲の数字であり、
w、x、y、zは、0〜1の範囲の数字である(ただし、w+x+z=1);
(2)一般式(II)及び/又は(III)及び/又は(IV)のLa及びFe系化合物
La(FexAl1-x13yまたはLa/FexSi1-x13y (II)
式中、
xは0.7〜0.95の数字であり;
yは、0〜3の数字である;
La(FexAlyCoz13またはLa(FexSiyCoz13 (III)
式中
xは0.7〜0.95の数字であり;
yは0.05〜1−xの数字であり;
zは0.005〜0.5の数字である;
LaMnxFe2-xGe (IV)
式中
xは1.7〜1.95の数字である;
(3)MnTP型のホイスラー合金(式中、Tは遷移金属で、Pはは原子中の電子数e/aが7〜8.5の範囲にあるp−ドープ金属である)、
(4)一般式(V)のGdとSi系化合物
Gd5(SixGe1-x4 (V)
式中、xは、0.2〜1の番号である;
(5)Fe2P系化合物類、
(6)ペロブスカイト型の亜マンガン酸塩、
(7)一般式(VI)と(VII)の希土類元素含有化合物、
Tb5(Si4-xGex) (VI)
式中、x=0、1、2、3、4、
XTiGe (VII)
式中、X=Dy、Ho、Tm、
(8)一般式(VIII)と(IX)のMnとSbあるいはAs系の化合物、
Mn2-xxSb (VIII)
Mn2xSb1-x (IX)
式中、
Zは、Cr、Cu、Zn、Co、V、As、Geであり、
xは、0.01〜0.5である、
なお、ZがAsでない場合は、Sbは、Asで置き換えられてもよい。
【請求項2】
前記熱磁気材料が、少なくとも、MnとFeとPと、必要ならSbに加え、さらにGe、Si、As、FeとSi、GeとAs、SiとAs、あるいはGeとSiとAsを含む一般式(I)の4元化合物から選ばれる請求項1に記載の成型物。
【請求項3】
その気孔率が5〜95%である請求項1または2に記載の成型物。
【請求項4】
その気孔率が30〜95%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の成型物。
【請求項5】
連続気泡発泡体の形で存在する請求項1〜4のいずれか一項に記載の成型物。
【請求項6】
スラブ状、ハニカム状、モノリス状または持体上に被膜の状態で存在する請求項1〜5のいずれか一項に記載の成型物。
【請求項7】
熱磁気材料の粉末を成型することからなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の成型物の製造方法であって、その際に、粉末の粒子が結合して連続気泡多孔性構造を形成する方法。
【請求項8】
熱磁気材料の粉末が、プレスにより、適当なら熱処理と共にプレスにより、焼結プロセスにより、あるいは発泡体成形プロセスにより処理される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱磁気材料をポリマーバインダー中に導入し、得られる熱可塑性成形材料を成型し、該バインダーを除去し、得られる緑色成型物を焼結する、あるいは前記熱磁気材料の粉末をポリマーバインダーで被覆し、適当なら熱処理とともにプレスにより成型する請求項7に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の成型物の、冷蔵庫、空気調和単位、ヒートポンプまたは発電量中での熱の直接変換での利用。

【公表番号】特表2011−523771(P2011−523771A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505531(P2011−505531)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055023
【国際公開番号】WO2009/133048
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】