説明

熱交換器

【課題】バッテリーを収容するケースの開口部を閉塞する閉塞部材のチューブが貫通する部分を封止し、ケース内部への水蒸気や埃の侵入を防止し、熱交換器の生産工程の簡素化も可能な熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器1は、バッテリーを収容するケース3の内部空間を温調するもので、熱媒体を蛇行して流通させるように配されるチューブ17と、チューブ17間に設けられるフィンと、チューブ17と連通するヘッダ21とを有する熱交換器本体8と、ケース3に設けられた開口部9を閉塞する金属製の閉塞部材5とを有している。閉塞部材5は、チューブ17が貫通する挿通孔14が設けられ、ろう付け又は半田付けにより、チューブ17と、ヘッダ21と、閉塞部材5とが接合されるとともに、挿通孔14が封止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動用バッテリーの温調装置に用いられる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリット自動車に設けられる車両駆動用バッテリーは、充放電の性能を最適にするために熱交換器等により所定の温度に保たれるように管理されている。
【0003】
具体的には、車両駆動用バッテリーは、電気回線の短絡を防ぐため、液体状の水の浸水はもとより水蒸気や埃の浸入を防ぐための密閉度の高いケースの内部に設けられ、このケースの内部に冷却用熱交換器を有して構成されるモジュールとして車両に搭載される場合が多い。
【0004】
冷却用熱交換器は、冷媒が通過するチューブと放熱フィンとからなる熱交換器本体を有し、冷媒が通過するチューブは、主にアルミや銅などの金属で形成されている。また、多数のチューブをろう付け接合する構成にあっては、接合部分に適宜ろう付けを施して冷媒の漏れを防止するようにしている(特許文献1参照)。
【0005】
ところで、車両用空調装置においては、冷却用熱交換器に不具合が発生した場合に検査や交換を容易にするために、冷却用熱交換器をユニットケースに着脱可能に取り付けるとともに、ユニットケースの開口部を樹脂製の閉塞部材により閉塞してケース内部に空気流路を形成しているが(特許文献2参照)、車両駆動用バッテリーのモジュールにおいてもこのような構成を採用することが考えられる。
【0006】
また、上述した構成においては、冷却用熱交換器のケース内部への着脱作業に加えて閉塞部材の着脱作業も必要になる。生産工程の簡素化を図るために、閉塞部材とケース内部に配置するフィルタとを一体化した構造が知られている(特許文献3参照)。
【0007】
ここで、上述の冷却用熱交換器においては、冷媒が通過するチューブの内側に冷媒の圧力がかかるため、ろう付けに不良箇所が存在すると冷媒が漏れるおそれがある。また、熱交換器の稼動に伴って発生した凝縮水により、チューブが腐食して冷媒が漏れるおそれもある。さらに、製造時にチューブに意図しない残留応力が残り、冷凍サイクルの運転を繰り返すことで亀裂が生じて冷媒が漏れるおそれもある。そして冷媒漏れが発生すると、ケース内部の圧力が上昇して破裂に至る可能性があり、車両駆動用バッテリーの安全性の低下につながる。
このように、冷却用熱交換器においては冷媒漏れに至る不具合モードが複数存在し、不具合発生時の故障モードも深刻なため、冷媒漏れの点検や冷媒漏れ不良品発生時の熱交換器の交換を可能とすることが、強く求められる。
【0008】
そこで、特許文献3に示されるフィルタに替えて冷却用熱交換器を閉塞部材と一体化し、ユニットケースに対して冷却用熱交換器を着脱容易に配置すると共に、装着時は閉塞部材でケースの開口部を閉塞し、該ケース内部に空気流路を形成する構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開WO2004/074757号公報
【特許文献2】特開2002−59735号公報
【特許文献3】実開昭63−013320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、ユニットケース内部に配置される冷却用熱交換器は、少なくとも該ケースの外部にある放熱器と冷媒回路で接続される必要があるので、閉塞部材には金属配管等の冷媒回路が挿通する挿通孔が設けられる。このとき、挿通孔と冷媒回路との隙間を埋めて気密性を確保しようとしても、金属と樹脂とは機械的な接合が困難であるため、気密性を保つことができない。
すなわち、車両駆動用バッテリーにおいて水蒸気や埃の浸入を防止するために各々の部材の接合部分には車両用空調装置以上の高いレベルの気密性が求められるところ、金属と樹脂との接合性が弱いため気密性の確保が困難であり、ケース内部に浸入した水蒸気による結露水が電子回路を短絡する等して、車両駆動用バッテリーの安全性を確保できない問題がある。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、バッテリーを収容するケースの開口部を閉塞する閉塞部材の挿通孔の部分における気密性を確保して水蒸気や埃の浸入を確実に防止することで、バッテリーの安全性を向上することを主たる目的とする。また、熱交換器の生産工程を簡素化することが可能な熱交換器を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る熱交換器は、バッテリーを収容するケースの内部空間を温調する熱交換器であって、熱媒体が流通されるチューブと、このチューブに接合されるフィンと、前記チューブと連通するヘッダとを有する熱交換器本体、及び、前記ケースに形成された開口部を閉塞する閉塞部材を備え、前記閉塞部材は、金属性素材で形成されると共に前記チューブ又は前記ヘッダが挿通される挿通孔が形成され、前記閉塞部材と前記チューブ又は前記ヘッダとはろう付け又は半田付けにより接合されるとともに、前記挿入孔と前記チューブ又は前記ヘッダとの隙間は前記ろう付け又は半田付けにより封止されたことを特徴としている(請求項1)。このような、熱交換器によれば、閉塞部材を金属製にすることで、熱交換器本体との間でろう付け又は半田付けによる気密性の高い封止固定が可能となり、水蒸気や埃の浸入を確実に防止することができる。また、熱交換器本体と閉塞部材とを強固に接合することが可能となり、確実に一体化することができる。
【0013】
ここで、前記ろう付け又は半田付けは、前記チューブと前記ヘッダとの接合もするものであることが好ましい(請求項2)。このような構成によれば、チューブ又はヘッダと挿通孔との間の隙間を封止できるとともに、チューブとヘッダとを接合することも可能となるので、生産工程を簡素化できる。
【0014】
また、前記チューブと前記ヘッダとの接合は、前記閉塞部材に対し、前記フィンの反対側でされることが好ましい(請求項3)。熱交換器をケースに装着したとき、チューブとヘッダとの接合がケースの外側となるので、仮に接合部分に不良箇所があり熱媒体の漏れが発生しても、ケース内部への熱媒体流出による圧力上昇がなく、バッテリーの安全性を向上することができる。
【0015】
また、前記チューブは、途中に継ぎ目がないサーペンタイン型のチューブであることが望ましい(請求項4)。熱媒体がケース内部へ漏れる可能性を低くし、さらにバッテリーの安全性を向上することができる。
【0016】
さらに、前記熱交換器本体と前記閉塞部材とは、アルミニウム又はアルミニウム合金によりなることが望ましい(請求項5)。熱交換器の組み付け工程において、熱交換器本体と閉塞部材とを一体的にろう付けすることができ、生産工程の簡素化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上本発明によれば、閉塞部材を金属製にすることで、熱交換器本体との間でろう付け又は半田付けによる気密性の高い封止固定が可能となり、水蒸気や埃の浸入を確実に防止し、もってバッテリーの安全性を向上することができる。
また、請求項3、請求項4の発明によれば、バッテリーのケース内部に配置される熱交換器の接合部分や継ぎ目の数を減少することができるので、ケース内部で熱媒体が漏れる可能性を低くし、バッテリーの安全性をより向上することができる。
さらに、請求項5の発明によれば、熱交換器の組み付け工程において、熱交換器本体と閉塞部材とを一体的にろう付けすることができ、組み付け工程の簡素化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の熱交換器の全体を示した斜視図である。
【図2】図2は、本発明の熱交換器をモジュールに取り付けた場合のモジュールの断面図である。
【図3】図3は、本発明の熱交換器をモジュールに取り付ける場合のモジュール全体を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の熱交換器について、車両駆動用バッテリーと温調装置とを備えたモジュールとして車両に搭載された例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
図1ないし3に示すように、モジュール11は、車両駆動用バッテリー(以下、バッテリー)2と、内部の温度を調整する温調装置4と、が、ケース3に収容されて構成されている。
【0021】
温調装置4は、樹脂製の温調ケース6にブロワ7と熱交換器1とを有して構成されている。
温調ケース6には、ケース3内部の空気を吸入する吸入口10と、吸入した空気を温調して排気する排気口12と、熱交換器1を着脱する着脱口13が形成されている。また、着脱口13の周囲には熱交換器1を固定するためのボルト孔18が設けられている。
熱交換器1は、サーペンタイン型のもので、ケース3内部の温度を調整する熱交換器本体8と、ケース3に設けられた開口部9を閉塞する金属製の閉塞部材5と、を有して構成され、熱交換器本体8と閉塞部材5とはアルミ又はアルミ合金で形成されている。
【0022】
熱交換器本体8は、冷媒を蛇行して流通させるように配されるチューブ17と、チューブ17間に接合されるフィン20と、チューブ17の両端部のそれぞれに設けられてチューブ内部と連通するヘッダ21とを有して構成されている。また、チューブ17は、蛇行させながら継ぎ目がなく形成され、その両端部は、ヘッダ21を介し配管16に接合され、さらに図示しない圧縮機、膨張弁、放熱器、リキッドタンクなどと接続されて、冷凍サイクルを形成している。
【0023】
また、閉塞部材5は、開口部9を外側から覆うことができる程度の大きさに形成され(本実施例においては、開口部9よりも大きい矩形状に形成され)、チューブ17が挿通する挿通孔14が設けられている。挿通孔14の外周方向の上方と下方にはケース3に固定するためのボルト孔19が設けられている。さらに、閉塞部材5とケース3との間には外部からの水分の浸入を防ぐためにOリング等のシール材23が設けられている。
【0024】
そして、チューブ17とヘッダ21とは、閉塞部材5に対し、フィンの反対側で接合され、具体的には、チューブ17と閉塞部材5とが、チューブ17と挿通孔14の内壁との隙間を封止するように、ろう材15によって、ヘッダ21と閉塞部材5とがろう付けによって接合されている。さらに、ろう材15によって、ヘッダ21と配管16とがろう付けによって接合されている。
【0025】
以上で説明した熱交換器は、予めサーペンタイン状のチューブ17にフィン20を挿入し、チューブ17の両端部を閉塞部材5に形成した挿通孔14に挿通させ、閉塞部材5の挿通孔14から突出したチューブ17の端部にヘッダ21を組み付けると共にヘッダ21に配管16を組み付け、その状態で、フィン20をチューブ17にろう付けすると共に、ヘッダ21と閉塞部材5との間に供給されたろう材15により、チューブ17の端部をヘッダ21にろう付けし、また、チューブ17と挿通孔14の内壁との隙間を封止しつつチューブ17と閉塞部材5とを接合する。また、ヘッダ21と配管16との接続部位においても、その部分に供給されるろう材15によりろう付け固定する。そして、以上のようにして形成された閉塞部材5付きの熱交換器をケース3に取り付けるには、ケース3の開口部9から熱交換器本体8を挿入し、ケース3のボルト孔18と閉塞部材5のボルト孔19の位置を合わせた後、閉塞部材5をボルト25でケース3に固定すればよい。
【0026】
したがって以上の構成によれば、閉塞部材5を金属製としたので、ろう付けによって気密性の高い封止固定が可能となり、ケース3内部と外部との気密性を向上させて、水蒸気や埃の浸入を確実に防止し、バッテリー2の安全性を向上することができる。
また、ケース3の内部に配置される熱交換器本体8の接合部分や継ぎ目数を減少することができるので、ケース3の内部での冷媒漏れの可能性を低くし、バッテリー2の安全性をより向上することができる。
さらに、熱交換器1の組み付け工程においては、閉塞部材5と熱交換器本体8とをアルミ又はアルミ合金で構成することで一体的にろう付けすることができ、生産工程の簡素化を図ることが可能となる。
【実施例2】
【0027】
なお、実施例1においては、チューブ17と、閉塞部材5と、ヘッダ21とをろう付けによって固定し、チューブ17と挿通孔14の内壁との隙間を封止するように説明したが、この封止固定状態を半田付けによって行うようにしても良い。また、本熱交換器1を、内部を冷媒が通過する冷却用熱交換器として用いられる例として説明したが、これに限らず熱媒体を温水とした加熱用熱交換器(ヒータコア)とすることや、熱媒体を寒冷な液体とした冷却用熱交換器として実施するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 熱交換器
2 バッテリー
3 ケース
5 閉塞部材
8 熱交換器本体
14 挿通孔
17 チューブ
20 フィン
21 ヘッダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーを収容するケースの内部空間を温調する熱交換器であって、
熱媒体が流通されるチューブと、このチューブに接合されるフィンと、前記チューブと連通するヘッダとを有する熱交換器本体、及び、前記ケースに形成された開口部を閉塞する閉塞部材を備え、
前記閉塞部材は、金属性素材で形成されると共に前記チューブ又は前記ヘッダが挿通される挿通孔が形成され、
前記閉塞部材と前記チューブ又は前記ヘッダとはろう付け又は半田付けにより接合されるとともに、前記挿入孔と前記チューブ又は前記ヘッダとの隙間は前記ろう付け又は半田付けにより封止されたことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記ろう付け又は半田付けは、前記チューブと前記ヘッダとの接合もするものであることを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記チューブと前記ヘッダとの接合は、前記閉塞部材に対し、前記フィンの反対側でされることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記熱交換器本体の前記チューブは、途中に継ぎ目がないサーペンタイン型のチューブであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項5】
前記熱交換器本体と前記閉塞部材とは、アルミニウム又はアルミニウム合金によりなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−23143(P2013−23143A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162201(P2011−162201)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオジャパン (282)
【Fターム(参考)】