説明

熱伝導シート

【課題】 強度や耐屈曲性に優れ、また簡便に放熱部品に接続することができる熱伝導シートを実現すること。
【解決手段】 グラファイトシート10の両面にプラスチックテープ11を設け、放熱部品にプラスチックテープ11を熱融着することで接続される熱伝導シート1。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は各種電子・電気機器に搭載される冷却が必要な電気部品等の放熱機構に好適に用いられる熱伝導性シートに関する。
【0002】
【従来の技術】コンピューター等に代表される各種電子・電気機器に搭載されている半導体素子等の冷却の問題は、近年、重要課題として注目されてきている。このような冷却が必要な半導体素子等の冷却方法として、それが搭載される機器筐体にファンを取り付け、その機器筐体内の空気を冷却する方法や、その冷却すべき半導体素子等に熱伝導体を取り付け、その素子からの熱を外部に運ぶことで冷却する方法等が代表的である。
【0003】冷却すべき半導体素子等(以下、被冷却部品と呼ぶ)に取り付ける熱伝導体として、例えばアルミニウム板やフィン等が挙げられる。アルミニウム板の一部に被冷却部品に取り付け、更にそのアルミニウム板の他の部分を外気に晒したりすることで、被冷却部品の熱を放熱するのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで近年は、被冷却部品に取り付ける熱伝導体として、熱伝導性に優れるグラファイトシートが有力視されてきている。しかしながら、グラファイトシートは熱伝導性の観点では極めて優れるものの、材質的に脆く、特に曲率半径の小さな曲げに対して、その部分で割れが発生してしまうことが多かった。
【0005】そこでグラファイトテープの片面または両面に補強材を設けて、機械的強度を高める技術が提案されている。例えば特開平6−134917号公報には、膨張黒鉛シートの両面にプラスチックフィルムを重ね合わせ、これらの重合面においてプラスチックフィルムの少なくとも一部が膨張黒鉛シートに溶着接合されている膨張黒鉛ラミネートシートが開示されている。
【0006】また特開平8−267647号公報には、高分子シートを焼成して製造されたグラファイトシートと、そのグラファイトシートの少なくとも片面に広がる少なくとも1つの支持部材とを固着積層してなるグラファイトクラッド構造体が開示されている。その他、特開平2−22115号公報、特開平4−62042号公報等にも、グラファイトシートにプラスチック等を被覆した例が開示されている。
【0007】上述のように、グラファイトシートにプラスチックテープ等の支持部材が設けられたものは、グラファイトシートの強度不足が補われ、そのシートをある程度曲げ加工しても割れが発生しにくい等、使いやすいものになっている。従って今後とも、その応用が期待されている。
【0008】ところで近年は、半導体素子等の被冷却部品が搭載される各種機器が小型化される傾向にあり、それら被冷却部品を冷却するための放熱機構に許されるスペースも一層制限されてきている。また近年は、被冷却部品の高性能化と相まって、被冷却部品が搭載される各種機器の実装密度が進み、より効率的な放熱構造が求められていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、各種電子・電気機器に搭載される冷却が必要な電気部品等の放熱機構に好適に用いられる熱伝導性シートとして下記のものを発明した。即ち、グラファイトシートにプラスチックテープが少なくとも片面にラミネートされ、前記プラスチックテープが放熱部品に熱融着される、熱伝導シートである。またグラファイトシートにプラスチックテープが少なくとも片面にラミネートされ、かつ波形に成形された熱伝導シートも提案する。その他、グラファイトシートにプラスチックテープが一部、離型剤を介在させて少なくとも片面にラミネートされた熱伝導シートを提案する。
【0010】
【発明の実施の形態】図1を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。グラファイトシート10の両面には、PVC等のプラスチックテープ11を設けている。そしてこの熱伝導シート1は各種冷却部品に、プラスチックテープ11の部分が冷却部品に熱融着することで接続される。
【0011】図4は、この熱伝導シート1が、冷却部品の例としてヒートパイプ4の一部に巻かれて、更に熱融着された例を示している。この図に示されるように、熱伝導シート1は引張強度や、耐屈曲性が高まっているので、比較的細い径のヒートパイプ4に巻かれても割れが生じない。このように本発明の熱伝導シート1は、その外皮を利用して熱融着することで、簡便に放熱部品に接続することができる。また、単に接触させる場合に比べ、熱伝導シート1と放熱部品であるヒートパイプ4との熱抵抗も小さくなる。
【0012】ところで、熱伝導シート1の外皮は電気絶縁性であるため、図4に示されるような冷却機構(の一部)を各種電気機器内に配置しても、電気的な短絡は生じない。この点は、特に、熱伝導シート1を基板と基板の間の狭い空間に配置したような場合に有効である。
【0013】図2は、グラファイトシート20の両面だけでなく、その端部をも覆うようにプラスチックテープ21で覆った例を示しているが、このようにすることで上述の電気的な短絡の問題は一層生じにくくなる。
【0014】図3は、図1に示したような本発明の熱伝導シートを波形に成形したものである 。こうすることで、当該熱伝導シート3を可動部に設置した場合等において、その耐久性が高まる効果が期待できる。例えば、図4を例にすると、仮にヒートパイプ4がある程度可動するような場合、図3に示すような熱伝導シート3を図4の熱伝導シート1に替え適用すると効果的である。この図3の熱伝導シート3は、必ずしも放熱部品に熱融着できる必要がないので、プラスチックテープ31としては、例えばPVC等の他に、テフロンテープ等を用いることもできる。尚、図中符号30はグラファイトシートである。
【0015】ところで、本発明の熱伝導シートと冷却部品とを接続する際、より熱抵抗を小さく接続する意味で、その接続部位のプラスチックテープを一部除去する必要が生ずる場合がある。しかしグラファイトシートは脆く、接続部位のプラスチックテープを一部除去する作業の際、グラファイトシートの一部に損傷を生じさせてしまいやすい。そこで本発明者らは、グラファイトシートにプラスチックテープが一部、離型剤を介在させて少なくとも片面にラミネートした熱伝導シートを提案する。このような熱伝導シートであれば、その離型剤を介在させた箇所で容易にプラスチックテープが剥がせるので便利である。尚、この場合、その熱伝導シートが必ずしも放熱部品に熱融着できる必要がないので、用いるプラスチックテープとしてテフロンテープ等を適用しても良い。
【0016】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の熱伝導シートは、熱伝導性の優れるグラファイトシートの強度が補われ、優れた引張強度と耐屈曲性を実現したもので、しかも、その冷却機構への適用が極めて容易になった便利なものである。また波形に成形された熱伝導シートは、可動部へ接続する場合に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる熱伝導シートの断面を示す説明図である。
【図2】本発明に係わる熱伝導シートの断面を示す説明図である。
【図3】本発明に係わる熱伝導シートの断面を示す説明図である。
【図4】本発明に係わる熱伝導シートをヒートパイプに取り付けた例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 熱伝導シート
10 グラファイトシート
11 プラスチックテープ
2 熱伝導シート
20 グラファイトシート
21 プラスチックテープ
3 熱伝導シート
30 グラファイトシート
31 プラスチックテープ
4 ヒートパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 グラファイトシートにプラスチックテープが少なくとも片面にラミネートされ、前記プラスチックテープが放熱部品に熱融着される、熱伝導シート。
【請求項2】 グラファイトシートにプラスチックテープが少なくとも片面にラミネートされ、かつ波形に成形された熱伝導シート。
【請求項3】 グラファイトシートにプラスチックテープが一部、離型剤を介在させて少なくとも片面にラミネートされた熱伝導シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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