説明

熱伝導性シリコーン組成物

【課題】接触熱抵抗が低減されていると同時に、全体として高い熱伝導率を保持する熱伝導性シリコーン組成物を提供する。
【解決手段】260℃以下において発熱反応を示す銀粒子を含有する熱伝導性シリコーン組成物。一実施形態において該組成物は、(A) 1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する、25℃における動粘度が10〜100,000mm2/sのオルガノポリシロキサン、(B) 1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C) 白金系ヒドロシリル化反応触媒、(D) 反応制御剤、(E) 260℃以下において発熱反応を示す銀粒子、及び(F) 成分(E)以外の、10W/m℃以上の熱伝導率を有する熱伝導性充填材、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて低い熱抵抗を持つ熱伝導性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子は動作時に発熱することが広く知られている。半導体素子の温度上昇は性能の低下を招くため素子の冷却が必要である。一般的には、発熱部材の近くに冷却部材(ヒートシンクなど)を設置することで冷却を行っている。このとき発熱部材と冷却部材の接触が悪いと空気が介在し、冷却効率が低下するため、発熱部材と冷却部材の密着を向上させる目的で放熱グリースや放熱シートなどが用いられている(特許文献1〜3)。近年、サーバー向けなど高品位機種の半導体では、ますます動作時の発熱量が増大している。発熱量の増大に伴って放熱グリース及び放熱シート等の放熱材料に要求される放熱性能も向上している。放熱性能の向上とは放熱材料の熱抵抗を下げることである。熱抵抗の低減方法としては、大きく分けて、放熱材料そのものの熱伝導率を上げる方法と接触熱抵抗を低減する方法という二つの方法が挙げられる。これまで、低融点の金属を配合して放熱グリースを作製し、該グリースを硬化させるための加熱工程において低融点金属を溶融し、基材との密着を向上させることで接触熱抵抗を下げるという方法が報告されている(特許文献4及び5)。しかしながら低融点金属自体の熱伝導率が低いため接触熱抵抗を低減することはできても放熱材料全体の熱抵抗がそれほど低くないという点に課題があった。また、同様の考え方に基づき、熱伝導率が高い金属を含む半田を用いる方法も考えられるが、半田自体の熱伝導率が低いため、やはり同様に放熱材料全体の熱伝導率が低くなってしまう(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2938428号
【特許文献2】特許第2938429号
【特許文献3】特許第3952184号
【特許文献4】特許第3928943号
【特許文献5】特許第4551074号
【特許文献6】特開平07-207160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、接触熱抵抗が低減されていると同時に、全体として高い熱伝導率を保持する熱伝導性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するための手段として熱伝導率の高い銀を選択した。特に、260℃以下で融着する銀フィラーを用いることで、加熱硬化時にフィラー同士の融着もしくはフィラーと基材との融着又はこれら両方を実現して接触熱抵抗を低減させ、かつ、放熱材料全体の熱抵抗を低減させた。これにより本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、260℃以下において発熱反応を示す銀粒子を含有する熱伝導性シリコーン組成物を提供する。
本発明の一実施形態において、該熱伝導性シリコーン組成物は、
(A) 1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する、25℃における動粘度が10〜100,000mm2/sのオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B) 1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン {成分(B)中のケイ素原子に結合した水素原子の個数}/{成分(A)中のアルケニル基の個数}の値が0.5〜2.0になる量、
(C) 白金系ヒドロシリル化反応触媒 有効量、
(D) 反応制御剤 0.01〜0.5質量部、
(E) 260℃以下において発熱反応を示す銀粒子 200〜1000質量部、及び
(F) 成分(E)以外の、10W/m℃以上の熱伝導率を有する熱伝導性充填材 800〜2000質量部
を含有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、接触熱抵抗が低減されていると同時に、全体として高い熱伝導率を保持する。本発明の熱伝導性シリコーン組成物を発熱部材と冷却部材との間に介在させ260℃以下で加熱硬化させることにより、発熱部材から発生する熱を効率よく冷却部材へ放散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例で用いた銀粒子であるE-1成分の示差走査熱量測定(DSC)チャートを示す図である。
【図2】実施例で用いた銀粒子であるE-2成分のDSCチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を詳述する。
【0010】
[260℃以下において発熱反応を示す銀粒子]
本発明で用いる、260℃以下において発熱反応を示す銀粒子に関して下記に詳述する。このような銀粒子は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これまで、銀を含有したはんだであって260℃以下の融点を持つものは種々報告されてきた。しかしながらこのような材料は、熱伝導率が低く、本発明の目的には合致しない。例えば、Sn-Ag-Cu系では融点が218℃、熱伝導率が55(W/mK)であり、Sn-Bi-Ag系では融点が138℃、熱伝導率が21(W/mK)であることから分かるように、いずれも融点は低いものの熱伝導率は高くない。一方で、銀単体では427(W/mK)という非常に高い熱伝導率を持つことが知られている。これまで通常の銀粉末は500℃以上に加熱しないと融着が起こらなかった。
【0011】
しかし、近年では260℃以下で融着する銀粉末について報告がなされている。これは、銀粉末の表面に生成した銀化合物と表面に残存した処理剤の還元効果によって粒子表面において還元反応により銀が生じ、粒子同士を融着するためと考えられる。このような銀粉末では融着時に発熱が観測される。この発熱は前記の反応が起こることによるものと考えられる。
【0012】
260℃以下において発熱反応を示す銀粒子は、銀そのものが持つ427(W/mK)という高い熱伝導率を有しているので、このような銀粒子を含有する本発明の組成物及びそれから得られる硬化物は全体として高い熱伝導率を有する。また、260℃以下において発熱反応を示す銀粒子は、融着温度が通常の銀と比較して低いため、半導体製造工程時の加熱工程において溶融するので、本発明の組成物から得られる硬化物と基材との密着性を向上させることができ、ひいては接触熱抵抗を低減させることができる。
【0013】
銀粒子において発熱反応の起こる温度が260℃超であると、半導体製造工程上、熱伝導性シリコーン組成物はそのような温度にさらされることがないため、融着が発生しない。よって、発熱反応の起こる温度は、通常、260℃以下であり、好ましくは250℃以下である。また、組成物の加熱硬化時になって初めて融着が生じるように、発熱反応の起こる温度は90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。
【0014】
なお、本発明において、いかなる銀粒子が260℃以下において発熱反応を示すかは、示差走査熱量測定(DSC)において260℃以下に発熱ピークを有するか否かを観測することで容易に確認することができる。発熱ピークは、METTLER TOLEDO DSC820を用いて10℃/minの昇温速度でDSCを行うことで観測することができる。
【0015】
[成分(A)]
成分(A)のオルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するものである。成分(A)は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。成分(A)は、直鎖状でも分岐状でもよく、また2種以上の異なる粘度の混合物でもよい。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基等が例示されるが、合成のし易さ、コストの面からビニル基が好ましい。ケイ素原子に結合する残余の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基が例示され、更にハロゲン置換1価炭化水素基(例えば、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基)等の置換1価炭化水素基も例として挙げられる。これらのうち、合成のし易さ、コストの面からメチル基が好ましい。ケイ素原子に結合するアルケニル基は、オルガノポリシロキサンの分子鎖の末端、途中の何れに存在してもよいが、少なくとも末端に存在することが好ましい。25℃における動粘度は、10 mm2/sより低いと組成物の保存安定性が悪くなる場合があり、100,000 mm2/sより大きくなると得られる組成物の進展性が悪くなる場合があるため、通常、10〜100,000 mm2/sの範囲、好ましくは100〜50,000 mm2/sである。
【0016】
[成分(B)]
成分(B)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、架橋により組成物を網状化するために、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、Si-H基)を1分子中にすくなくとも2個有することが必要である。成分(B)は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。ケイ素原子に結合せる残余の有機基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基などのアラルキル基、ハロゲン置換1価炭化水素基(例えば、クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基)などの置換1価炭化水素基、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基などのエポキシ環含有有機基が例として挙げられる。成分(B)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分岐状および環状のいずれであってもよく、またこれらの混合物であってもよい。成分(B)の配合量は、成分(A)中のアルケニル基の数に対する成分(B)中のSi-H基の数の比、即ち、{成分(B)中のSi-H基の個数}/{成分(A)中のアルケニル基の個数}の値が、通常、0.5〜2.0の範囲となる量であり、好ましくは0.5〜1.8の範囲となる量である。該値が0.5より小さくなる量であると、十分な網状構造が形成されにくく硬化が不充分となりやすいため材料の信頼性の観点から好ましくない。該値が2.0より大きくなる量であると、硬化後の材料が硬くなってしまいやすく、柔軟性を得にくくなる。
【0017】
[成分(C)]
成分(C)の白金系ヒドロシリル化反応触媒は成分(A)のアルケニル基と成分(B)のSi-H基との間の付加反応の促進成分である。成分(C)は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。成分(C)は白金及び白金化合物からなる群より選択される触媒であり、例えば、白金の単体、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、白金配位化合物などが挙げられる。成分(C)の配合量は、ヒドロシリル化反応触媒としての有効量でよいが、成分(A)に対し白金原子として質量基準で0.1〜500ppmの範囲が好ましい。該配合量がこの範囲内であると、配合量の増加に応じて触媒としての効果が増大しやすく、経済的でもある。
【0018】
[成分(D)]
成分(D)の反応制御剤は、室温でのヒドロシリル化反応の進行を抑え、シェルフライフ、ポットライフを延長させるものである。成分(D)は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。反応制御剤としては公知のものを使用することができ、例えば、アセチレン化合物、各種窒素化合物、有機りん化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が利用できる。成分(D)の配合量は0.01質量部より小さいと充分なシェルフライフ、ポットライフが得られにくく、0.5質量部より大きいと硬化性が低下しやすいため0.01〜0.5質量部の範囲である。成分(D)はシリコーン樹脂への分散性を良くするためにトルエン等で希釈して使用してもよい。
【0019】
[成分(E)]
成分(E)は、上記で詳述した、260℃以下において発熱反応を示す銀粒子と同一である。成分(E)は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
成分(E)の平均粒径は0.1〜100μmの範囲が好ましい。該平均粒径がこの範囲であると、得られる組成物は、グリース状になりやすく、伸展性及び均一性に富んだものになりやすい。なお、本発明において、平均粒径は日機装(株)社製マイクロトラックMT330OEXにより測定することができる体積基準の値である。成分(E)の形状は、不定形でも球形でも如何なる形状でもよい。
【0020】
成分(E)の充填量は、成分(A)100質量部当たり200〜1000質量部の範囲である。200質量部より少ないと銀粒子同士が充分に融着しないため低熱抵抗が達成されにくく、1000質量部より多いと得られる組成物がグリース状になりにくく、伸展性の乏しいものとなりやすい。好ましくは200〜800質量部の範囲である。
【0021】
[成分(F)]
成分(F)の熱伝導性充填材としては、熱伝導率が10W/m℃以上のものが使用される。成分(F)の熱伝導率が10W/m℃より小さいと、得られる組成物の熱伝導率そのものが小さくなる場合がある。成分(F)は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。成分(F)の熱伝導性充填材としては、アルミニウム粉末、銅粉末、成分(E)以外の銀粉末、ニッケル粉末、金粉末、金属ケイ素粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ホウ素粉末、アルミナ粉末、ダイヤモンド粉末、カーボン粉末、インジウム粉末、ガリウム粉末など挙げられるが、10W/m℃以上を有する、成分(E)以外の充填材であれば如何なる充填材でもよく、1種類単独でも2種類以上混ぜ合わせたものでもよい。
成分(F)の平均粒径は0.1〜100μmの範囲が好ましい。該平均粒径がこの範囲であると、得られる組成物は、グリース状になりやすく、伸展性及び均一性に富んだものになりやすい。成分(F)の形状は、不定形でも球形でも如何なる形状でもよい。
【0022】
成分(F)の充填量は、成分(A)100質量部当たり、通常、800〜2000質量部、好ましくは800〜1800質量部、より好ましくは800〜1500質量部の範囲である。800質量部より少ないと所望する熱伝導率を有する組成物を得にくく、2000質量部より多いと得られる組成物がグリース状になりにくく、伸展性の乏しいものとなりやすい。
【0023】
[成分(G)]
成分(G)は、下記一般式(1):
R1aR2bSi(OR3)4-a-b (1)
(式中、R1は炭素原子数9〜15のアルキル基、R2は炭素原子数1〜8の1価炭化水素基、R3は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数、a+bは1〜3の整数である)
で表されるオルガノシランである。成分(G)はウェッターとして用いられる。成分(G)は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記一般式中のR1の具体例としては、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。炭素原子数が9より小さいと成分(G)と充填材との濡れ性が充分でなく、15より大きいとオルガノシランが常温で固化するので、取り扱いが不便な上、得られた組成物の低温特性が低下する。またaは1、2あるいは3であるが特に1であることが好ましい。また、上記式中のR2は炭素原子数1〜8の1価炭化水素基であり、飽和の1価炭化水素基でも、不飽和の1価炭化水素基でもよい。R2としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化1価炭化水素基等の1価炭化水素基を挙げることができる。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、2-フェニルエチル基、2-メチル-2-フェニルエチル基等のアラルキル基、3,3,3-トリフロロプロピル基、2-(パーフロロブチル)エチル基、2-(パーフロロオクチル)エチル基、p-クロロフェニル基等のハロゲン化1価炭化水素基が挙げられるが、特にメチル基、エチル基が好ましい。R3はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素原子数1〜6のアルキル基であり、特にメチル基、エチル基が好ましい。
【0025】
成分(G)の具体例としては、下記のものを挙げることができる。
C10H21Si(OCH3)3、 C12H25Si(OCH3)3、 C12H25Si(OC2H5)3
C10H21Si(CH3)(OCH3)2、 C10H21Si(C6H6)(OCH3)2、 C10H21Si(CH3)(OC2H5)2
C10H21Si(CH=CH2)(OCH3)2、 C10H21Si(CH2CH2CF3)(OCH3)2
【0026】
成分(G)を添加する場合には、その添加量を成分(A) 100質量部に対し10質量部より多くしても効果が増大することがなく、不経済である。よって、成分(G)の添加量は0.1〜10質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜8質量部である。
【0027】
[その他の成分]
また本発明には上記した成分(A)〜(G)以外に必要に応じて、その他の成分として、接着助剤を入れてもよいし、劣化を防ぐために酸化防止剤等を入れてもよい。その他の成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
[製造方法]
本発明の組成物は、成分(A)〜(F)並びに成分(G)及びその他の成分を、トリミックス、ツウィンミックス、プラネタリミキサー(何れも井上製作所(株)製混合機、登録商標)、ウルトラミキサー(みずほ工業(株)製混合機、登録商標)、ハイビスディスパーミックス(特殊機化工業(株)製混合機、登録商標)等の混合機にて混合することで製造することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに詳述する。
【0030】
本発明の効果に関する試験は次のように行った。
〔粘度測定〕
硬化前のグリース状の組成物の絶対粘度は、マルコム粘度計(タイプPC−1T)を用いて25℃で測定した。
〔熱伝導率測定〕
熱伝導率は迅速熱伝導計QTM-500(京都電子工業(株))により25℃において測定した。
〔熱抵抗測定〕
直径12.7mmの円形アルミニウム板2枚に、シリコーン組成物を挟み込み、熱抵抗測定用の試験片を作製し、熱抵抗を測定した。熱抵抗値は(A)(150℃、90分加熱後)と(B)(150℃、90分加熱後、260℃、5分加熱)の2条件にて測定を行った。尚、この熱抵抗測定はナノフラッシュ(ニッチェ社製、LFA447)によって行われた。
【0031】
組成物を形成する以下の各成分を用意した。
成分(A)
A-1:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における粘度が600 mm2/sのジメチルポリシロキサン
成分(B)下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
B-1:下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0032】
【化1】


B-2:下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0033】
【化2】


B-3:下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0034】
【化3】


成分(C)
C-1:白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のA-1溶液(白金原子として1質量%含有)
成分(D)
D-1:1-エチニル-1-シクロヘキサノールの50質量%トルエン溶液
成分(E)
E-1:平均粒径が7.5μmの210℃に発熱ピークを持つ銀粒子
E-2:平均粒径が2μmの180℃に発熱ピークを持つ銀粒子
なお、E-1及びE-2成分のDSCチャートをそれぞれ図1及び2に示す。
成分(F)
F-1:平均粒径が5μmの260℃以下にピークを持たない銀粒子(熱伝導率:427(W/mK))
F-2:平均粒径が10μmのアルミニウム粉末(熱伝導率:237(W/mK))
F-3:平均粒径が30μm のSn-Ag-Cu合金粉末(熱伝導率:55(W/mK))
F-4:平均粒径が30μm のSn-Bi-Ag合金粉末(熱伝導率:21(W/mK))
成分(G)
G-1:下記式で表されるオルガノシラン
C10H21Si(OCH3)3
【0035】
成分(A)〜(G)を以下のように混合して実施例1〜7および比較例1〜4の組成物を得た。即ち、5リットルプラネタリーミキサー(井上製作所(株)社製)に成分(A)、(E) 、(F) 、(G)を(表-1)または(表-2)に示す配合量で取り、70℃で1時間混合した。その後、常温になるまで冷却し、更に、成分(B)、(C)、(D)を(表-1)または(表-2)に示す配合量で加え混合した。なお、(表-1)または(表-2)中の各成分の数値は質量部を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
260℃以下において発熱反応を示す銀粒子を含有する熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項2】
(A) 1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する、25℃における動粘度が10〜100,000mm2/sのオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B) 1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン {成分(B)中のケイ素原子に結合した水素原子の個数}/{成分(A)中のアルケニル基の個数}の値が0.5〜2.0になる量、
(C) 白金系ヒドロシリル化反応触媒 有効量、
(D) 反応制御剤 0.01〜0.5質量部、
(E) 260℃以下において発熱反応を示す銀粒子 200〜1000質量部、及び
(F) 成分(E)以外の、10W/m℃以上の熱伝導率を有する熱伝導性充填材 800〜2000質量部
を含有する請求項1に係る熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項3】
(G) 下記一般式(1):
R1aR2bSi(OR3)4-a-b (1)
(式中、R1は炭素原子数9〜15のアルキル基、R2は炭素原子数1〜8の1価炭化水素基、R3は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、aは1〜3の整数、bは0〜2の整数、a+bは1〜3の整数である)
で表されるオルガノシラン 成分(A)100質量部に対して0.1〜10質量部
を更に含有する請求項2に係る熱伝導性シリコーン組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−91726(P2013−91726A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234846(P2011−234846)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】