説明

熱伝導性シート

【課題】高分子化合物マトリクス中における熱伝導性充填剤の比率を大幅に増加しなくても、従って高分子化合物マトリクス中における熱伝導性充填剤の比率を大幅に増加することによる粘着力が低下するの防止でき、粘着力を維持しながら高熱伝導性を有する電気絶縁性の熱伝導性シートを提供する。
【解決手段】少なくとも熱伝導性充填剤と粘着性を有する高分子化合物を含む熱伝導性シートにおいて、前記熱伝導性充填剤が、熱伝導性金属粒子を窒化ホウ素に対して5重量%〜20重量%担持させた金属粒子担持窒化ホウ素であり、前記熱伝導性充填剤と前記高分子化合物の重量比率が15部/85部〜40部/60部である熱伝導性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気絶縁性を有する熱伝導性シートに係わり、さらに詳しくは粘着力を維持しつつ高い熱伝導率を有する熱伝導性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータといった電子機器の小型化、高性能化が進んでおり、それに伴い機器から発生する熱の放熱対策が重要となってきており、その対策として発熱する部材とヒートシンクや放熱フィンといった放熱部材間を熱伝導率に優れた電気絶縁性を有する熱伝導性シートで貼り合せたり、電気絶縁性を有する熱伝導性シート自体をこれらの機器の発熱する部材に貼って放熱材として用いることが行われている。
【0003】
貼り合せの際には、貼り合せ対象部材との間に空気が入ってしまうと放熱の効率が下がってしまうので、貼り合せ対象部材と熱伝導性シートの追従性が重要となり、熱伝導性シートには柔軟性が求められる。また、部材間の接着性についても求められるので、熱伝導性シートには粘着性も必要となる。
【0004】
通常、熱伝導性シートはシリコーン樹脂、アクリル樹脂といったマトリックスに熱伝導率の高いフィラーを混合させ、シート化することで作製される。例えば下記特許文献1では、高い熱伝導率を有する窒化ホウ素粒子をシリコーンゴムと混ぜ合わせてなる絶縁放熱シートが提案されている。しかしながら、窒化ホウ素の形状は、鱗片状粒子からなり、熱伝導性は鱗片状の面内方向では約110W/mKであるのに対し、面に対する垂直な方向では約2W/mK程度しかなく、窒化ホウ素粒子の面方向を放熱シートの厚み方向と同じにする(窒化ホウ素粒子をシート厚み方向に立てる)ことによってシート厚み方向の熱伝導性が飛躍的に向上すると予想されるが、熱伝導性塗料を基材上に塗布する製造方法では、塗布時に窒化ホウ素粒子の配向が起こり、鱗片状粒子の面方向がシート面の方向と同一となってしまい窒化ホウ素粒子の優れた熱伝導性が生かされないため、窒化ホウ素が充填された高分子組成物からなる熱伝導シートを磁場中で配向した熱伝導性シートや(下記特許文献2参照)、熱可塑性の樹脂からなるバインダ粒子と熱伝導充填剤の粒子との混連物から成形した複数枚のシートを積層し、積層体を積層面に対して垂直方向にスライスして得た熱伝導性シートが提案されている。(下記特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3209839号
【特許文献2】特開2002−080617号
【特許文献3】特開2002−026202号 しかし、特許文献2の方法では、窒化ホウ素そのものが非磁性であるため磁場中で配向させたとしても窒化ホウ素粒子が均一に配向できず、高熱電性シートが得られないと言う問題があり、特許文献3の方法では製造方法が煩雑のため、連続的に製造していくことが難しいといった欠点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、連続的に製造可能でかつ、粘着力を維持しながら高熱伝導化した熱伝導性シートを得る点で不十分であった。
【0007】
本発明は、粘着性を有する高分子化合物マトリクス中における熱伝導性充填剤の比率を大幅に増加しなくても、従って高分子化合物マトリクス中における熱伝導性充填剤の比率を大幅に増加することによる粘着力が低下するの防止でき、粘着力を維持しながら高熱伝導性を有する電気絶縁性の熱伝導性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前記課題を達成するため、本発明の熱伝導性シートは、少なくとも熱伝導性充填剤と粘着性を有する高分子化合物を含む熱伝導性シートにおいて、前記熱伝導性充填剤が、熱伝導性金属粒子を窒化ホウ素に対して5重量%〜20重量%担持させた金属粒子担持窒化ホウ素であり、前記熱伝導性充填剤と前記高分子化合物の重量比率が15部/85部〜40部/60部であることを特徴とする。
【0009】
(2)前記(1)項記載の熱伝導性シートにおいては、窒化ホウ素に担持させる熱伝導性金属粒子が、金、銀、銅、アルミニウム、白金、パラジウムから選ばれた少なくとも1種類を含むものであることが好ましい。
【0010】
(3)また、前記(2)項記載の熱伝導性シートにおいては、前記高分子化合物が、粘着性を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物であることが好ましい。
【0011】
(4)また、前記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の熱伝導性シートにおいては、熱伝導率が1.0W/(m・K)以上であることが好ましい。
【0012】
(5)また、前記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の熱伝導性シートにおいては、前記熱伝導シートをSUS304鋼板に貼り付けし、JIS Z 0237:2000で測定したときの剥離力が2.5N/10mm以上であることが好ましい。
【0013】
(6)また、前記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載の熱伝導性シートにおいては、体積抵抗値が1×1013Ω・cm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、少なくとも熱伝導性充填剤と粘着性を有する高分子化合物を含む熱伝導性シートにおいて、前記熱伝導性充填剤が金属粒子を担持させた窒化ホウ素を用いることにより、高い熱伝導率を有する金属粒子が窒化ホウ素の接点となり、窒化ホウ素の鱗片状粒子の面方向がシート面の方向と同一であっても、金属粒子を担持されているので、シート厚み方向への熱伝導パスを容易に形成させることができ、しかも前記熱伝導性充填剤と前記高分子化合物の重量比率が15部/85部〜40部/60部の範囲なので、粘着性を有する高分子化合物マトリクス中における熱伝導性充填剤の比率が、熱伝導性シートの粘着力を維持発揮できる範囲であるので、粘着力を維持しながらシート厚み方向へも高熱伝導化させた熱伝導性シートを提供できる。しかも、金属粒子の担持割合が、窒化ホウ素に対して5重量%〜20重量%であるので、必要な電気絶縁性を有する熱伝導性シートを提供できる。しかも、金属粒子担持窒化ホウ素である熱伝導性充填剤と粘着性を有する高分子化合物を含む組成物をシート状に形成すればよいので連続的に製造する事が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明の熱伝導性シートは、少なくとも熱伝導性充填剤と粘着性を有する高分子化合物を含む熱伝導性シートにおいて、前記熱伝導性充填剤が、熱伝導性金属粒子を窒化ホウ素に対して5重量%〜20重量%担持させた金属粒子担持窒化ホウ素であり、前記熱伝導性充填剤と前記高分子化合物の重量比率が15部/85部〜40部/60部であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明における、窒化ホウ素に担持させる熱伝導性金属としては、熱伝導性の高い金属粒子、例えば0℃における熱伝導率が70W/m・K以上であれば特に限定されることがないが、担持方法の容易さから、金(熱伝導率:319W/m・K)、銀(熱伝導率:428W/m・K)、銅(熱伝導率:403W/m・K)、アルミニウム(熱伝導率:236W/m・K)、白金(熱伝導率:72W/m・K)、パラジウム(熱伝導率:72W/m・K)が好ましい。金属粒子の担持量は窒化ホウ素に対して5重量%以上20重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以上20重量%以下が好ましい。金属粒子の担持量が窒化ホウ素に対して、5重量%未満だと、金属を担持した窒化ホウ素鱗片状粒子の面方向がシート面の方向と同一の場合、シート厚さ方向の熱伝導パスを容易に形成させることができず、高熱伝導化することができない。金属粒子の担持量が窒化ホウ素に対して、20重量%を越えると、シート厚さ方向の熱伝導パスは容易にできるが、作製した熱伝導性シートが導電性を有してしまい、電子回路の熱対策に用いる場合にヒートシンクや放熱フィンといった放熱部材間に貼り合わせるとショートが生じる等の問題が生じる。なお、窒化ホウ素自体は電気絶縁性物質である。
【0018】
熱伝導性金属粒子の窒化ホウ素への担持方法は特に限定されないが、一例として、アルカリ水溶液中に窒化ホウ素粒子が存在すると窒化ホウ素の表面が−電荷を有するので、+電荷の金属コロイド液を添加することにより、電気的引力により窒化ホウ素の表面に金属粒子を担持することが可能となる。例えば、金属塩化物などの金属ハロゲン化物の水和物をpH11以上に調整したアルカリ性水溶液(例えばNaOH、KOH、NH4OHの水溶液など)に分散させ、陽イオン界面活性剤(例えば塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム等のアンモニウム塩等)を添加し、次いで、還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウムなどのヒドリド還元反応を生じる還元剤)を添加して、生じたハロゲン化アルカリの塩を除去するなどの方法で製造できる。
【0019】
本熱伝導性シートを構成する粘着性を有する高分子化合物として、粘着性を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーが使用可能である。粘着性を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーは、例えば、従来より粘着剤として用いられているポリ(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを用いることができる。粘着剤として用いられているポリ(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーは、よく知られているので、その詳細説明は省略するが、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、あるいはその誘導体から導かれる構成単位を共重合させたものを用いることが可能である。通常、主モノマーと必要に応じてコモノマーと、また、必要に応じて凝集性を上げるために官能基含有モノマーを含むモノマーの共重合体に、前記官能基含有モノマーの官能基と反応する官能基を2つ以上有する熱架橋剤を反応させることにより構成された共重合体を含むポリ(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーが好ましい。本発明で「(メタ)アクリル酸・・・・」とは「アクリル酸・・・・及び/又はメタクリル酸・・・・」を意味する。
【0020】
前記主モノマーとしては、主にタッキネスを付与するための成分で、通常のアクリル系粘着剤の主モノマーとして使用されている公知のモノマーが挙げられ、通常、当該モノマーの単独重合体のガラス転移点Tgが0℃以下となるモノマーであり、アルキル基の炭素数が2〜18のものが使用可能である。これらの中でも、特に好ましくは(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル等である。特に、アクリル酸ブチル(Tg:−55℃)、アクリル酸2エチルヘキシル(Tg:−70℃)が好ましい。これらは2種類以上併用してもよい。
【0021】
なお、ここでモノマーの単独重合体のガラス転移点Tgは、「Polymer Handbook」3rd edition edited by J. Brandrup, E. H. Immergut, A Wiley-Interscience publication include indexes ISBN 0-471-81244-7, Copy right 1989 by John Wiley & Sons. Inc.に記載されているガラス転移点が参照される。コモノマーとしては、主に凝集力を付与するための成分で、必要に応じて使用されるモノマー成分であり、使用しなくてもよいが、通常のアクリル系粘着剤のコモノマーとして使用されている公知のモノマーが挙げられ、通常、当該モノマーの単独重合体のガラス転移点Tgが0℃より高くなるモノマーであり、具体的には、アクリル酸(Tg:106℃)、スチレン(Tg:80℃)、アクリロニトリル(Tg:97℃)、酢酸ビニル(Tg:32℃)、メチルアクリレート(Tg:8℃)、メチルメタクリレート(Tg:105℃)などがあげられる。コモノマーは2種類以上併用してもよい。
【0022】
官能基含有モノマーは、モノマーであるから不飽和基を有しており、かつ、不飽和基含有化合物をアクリル系共重合体に結合させるためや、熱架橋剤との反応性の向上させるため、これらと反応する官能基を有するモノマーである。
【0023】
すなわち官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を分子内に有するモノマーであり、好ましくは、ヒドロキシル基含有化合物、カルボキシル基含有化合物等が用いられ、これらの官能基含有モノマーは、(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマーとして、5〜30重量%含まれていることが好ましい。
【0024】
上述したポリ(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーは、上述のようなモノマーを、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合など任意の適宜の重合法で重合することにより製造される。
【0025】
凝集力を向上させるために熱架橋剤を用いる場合には、熱架橋剤は、上記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを製造し、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを熱伝導性充填剤と混合させる際に熱架橋剤も共に添加し、この混合物を離型性基材などの適宜の基材に塗布した後に塗膜を熱架橋させる。
【0026】
熱架橋剤は、前記官能基含有モノマー由来の官能基と結合するものであれば適宜選択可能である。例えば、前記官能基含有モノマーの官能基がヒドロキシル基、カルボキシル基またはアミノ基のように活性水素を有する官能基の場合は、有機多価イソシアナート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート化合物等を選択でき、具体的には、有機多価イソシアナート化合物として、芳香族有機多価イソシアナート化合物、脂肪族有機多価イソシアナート化合物、脂環族有機多価イソシアナート化合物およびこれらの多価イソシアナート化合物の三量体、ならびにこれら多価イソシアナート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマー等が挙げられる。有機多価イソシアナート化合物の具体的な例としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシレンジイソシアナート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアナート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアナート、リジンイソシアナート等が挙げられる。また、有機多価エポキシ化合物等も使用可能である。有機多価エポキシ化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、1,3−ビス(N,Nジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、1,3−ビス(N,Nジグリシジルアミノメチル)トルエン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4−ジアミジフェニルメタン等が挙げられる。また、有機多価イミン化合物としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等がある。なお、熱架橋剤の配合量は、上述のポリ(メタ)アクリル酸エステル系化合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部程度である。熱架橋剤を使用する場合には、上述のポリ(メタ)アクリル酸エステル系化合物に適宜の溶媒、例えば酢酸エチルに溶かした熱架橋剤を例えば、20℃〜60℃の範囲で、長時間、例えば、1日〜7日程度加熱して穏やかな架橋を行うことが好ましい。
【0027】
また、上述したポリ(メタ)アクリル酸エステル系化合物は、上述のようなモノマーを熱伝導性粒子を含有した状態で紫外線その他の電離放射線を照射することにより形成させてもよいし、上記モノマーを部分重合させたものにモノマーと熱伝導性粒子と含有させた状態で電離放射線を照射することにより形成させてもよい。
【0028】
電離放射線によってポリ(メタ)アクリル酸エステル系化合物を形成させる場合には光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、べンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2、3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、チウラム化合物、フルオロアミン化合物などが用いられる。これら開始剤の使用量は、特に限定するものではないが、通常、通常、用いる光硬化性化合物モノマーの重量に対し0.1〜10重量%程度である。また、上記組成に加え、架橋剤としてラジカル多官能モノマー種等を用いても良い。また、必要に応じて本発明の熱伝導性シートの粘着性を有する高分子化合物の凝集力を向上させるために、上述した熱架橋剤を用いてもよい。熱架橋剤の配合割合も上述した範囲で用いられる。
【0029】
本発明の熱伝導性シートにおいて、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系化合物を上記モノマーを熱伝導性粒子と含有した状態で電離放射線を照射することにより形成させたり、上記モノマーを部分重合させたものにモノマーと熱伝導性粒子と含有させた状態で電離放射線を照射させることによりポリマーを形成させる場合には、上述した架橋剤であるラジカル多官能モノマー種を添加し、電離放射線を照射することにより凝集力を向上させてもいい。ラジカル多官能モノマー種としては、不飽和基を分子内に2個以上有してポリマーになったときのTgが10℃以上の不飽和含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが用いられ、不飽和基を分子内に2個以上有してポリマーになったときのTgが10℃以上の不飽和含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、不飽和基を分子内に2個以上有してポリマーになったときのTgが10℃以上の不飽和含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの配合量は、これ以外の前述した(メタ)アクリル酸エステル系化合物(不飽和基は通常1個の化合物)100重量部に対して、好ましくは0.1〜2重量部、より好ましくは0.2〜1重量部程度である。0.1重量部を下回ると電離放射線による凝集力の向上が十分できず、2重量部を越えると電離放射線による凝集力が大きくなりすぎ粘着力が低下する傾向になる。
【0030】
本発明の熱伝導シートの、熱伝導性金属粒子を担持させた窒化ホウ素とポリ(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーの重量比率は15/85〜40/60が好ましく、より好ましくは20/80から30/70が好ましい。重量比率15/85より小さいと、熱伝導率が1.5W/m・kより小さくなり、重量比率40/60を越えると、粘着シートをSUS304鋼板に貼り付けJISZ0237:2000で測定したときの粘着力が2.0N/10mmより小さくなり粘着性が不十分となる。
【0031】
本発明の熱伝導性シートの厚みは、50μm以上250μm以下とすることが好ましい。熱伝導性シートの厚みが50μmを下回ると回路面と熱伝導シートとの部材間に空気が入ってしまい熱伝導の効率が低下しやすく、厚みが250μmを超えると熱を伝達するのに時間を要してしまい放熱の効果が低下する。本熱伝導性シートは、上記材料を含む塗布液を基材に塗布することにより作製される。基材上に粘着剤層を形成する方法については特に制限はなく、塗布方法も特に制限されず、塗料の粘度に応じて、例えば、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ナイフコート等の塗工法、又はグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット等の印刷方法も使用も使用可能である。
【0032】
前記熱伝導性充填剤と前記高分子化合物など上記材料を含む塗布液が塗布される基材は、特に制限されることはないが、離形性のフィルムなどの基材が好ましく、必要に応じて、塗布液の両面に離形性のフィルムなどの基材を積層することもできる。また、用途によっては、離形性でない基材フィルムなどを用いて基材を残したまま使用する場合もある。通常、基材を残したまま使用する場合は、片面のみに基材フィルムが残されるので、他方の面は離形性のフィルムを積層することが好ましい。
【0033】
例えば、基材フィルム(離形性のフィルムであってもよい)上に上記材料を含む塗布液を塗布し、その上に紫外線などの電離性放射線が透過可能な基材フィルム(離形性のフィルムであってもよい)を積層してから、その上から紫外線などの電離性放射線を照射することにより塗布液を重合してポリマーを形成させる場合には、酸素による重合の阻害を防止できるメリットなどもある。
【0034】
離形性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムの片面にシリコーン樹脂等で離形層を施したもの等が使用する事が可能である。離形性としない場合には、離形層を施していないフィルムを用いればよい。
【0035】
(メタ)アクリル系モノマーおよび/または(メタ)アクリル系重合体を光開始剤の存在下で硬化させる場合、光源としては、特に限定はされることはないが、ブラックライトランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0036】
光開始剤で硬化させるため、上述したように酸素障害の影響を受けにくくするために、上述した塗布方法で基材フィルムに塗布された後に、塗布された塗布液の上側に更に基材を貼り合せてから硬化させてもよく、光照射時に窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で硬化させてもよい。
【0037】
尚、熱架橋をする場合には、前述したようにこの後に、熱架橋剤を添加して、加熱して熱架橋すればよい。
【実施例】
【0038】
以下本発明の理解を容易にするため、具体的な実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例に記載されたものに限定されるものではない。以下、「重量部」は「部」、「重量%」は「%」と明記する。
<金属微粒子担持窒化ホウ素の作製>
【製造例1】
【0039】
0.1mol/Lの塩化パラジウム水溶液500mLに18.5Lのイオン交換水を混合し十分撹拌した。この液に0.8wt%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム水溶液500mLと0.4mol/Lの水素化ホウ素ナトリウム水溶液500mlを同時に添加し30分以上室温にて混合することによって、正電荷を有する黒色の2.5mmol/Lのパラジウムコロイド液を得た。
平均粒子径10μm(電子顕微鏡写真による数平均粒子径)の窒化ホウ素(“HP−1”、水島合金鉄社製)33grを0.1mol/Lのアンモニア水に25℃で分散させ、この分散液に上記パラジウムコロイド溶液15Lを添加し窒化ホウ素にパラジウムを担持させた。その後、上記懸濁液を濾過、水洗した後、120℃にて8時間乾燥し、得られた乾燥物を粉砕して、金属パラジウム粒子が12wt%担持された乳白色の窒化ホウ素を得た。なお窒化ホウ素に担持された金属パラジウム粒子の平均粒子径は3nm(電子顕微鏡写真による数平均粒子径)であった。
【製造例2】
【0040】
製造例1の塩化パラジウム水溶液を塩化白金酸に変更した以外は製造例1と同様の方法で金属白金粒子が12wt%担持された乳白色の窒化ホウ素を得た。なお窒化ホウ素に担持された金属白金粒子の平均粒子径(電子顕微鏡写真による数平均粒子径)は5nmであった。
【製造例3】
【0041】
製造例1の塩化パラジウム水溶液を塩化銀に変更した以外は製造例1と同様の方法で金属銀粒子が12wt%担持された乳白色の窒化ホウ素を得た。なお窒化ホウ素に担持された金属銀粒子の平均粒子径(電子顕微鏡写真による数平均粒子径)は2nmであった。
【製造例4】
【0042】
製造例1の窒化ホウ素量を22grに変更した以外は製造例1と同様の方法で金属パラジウム粒子が8wt%担持された乳白色の窒化ホウ素を得た。
【製造例5】
【0043】
製造例1の窒化ホウ素量を50grに変更した以外は製造例1と同様の方法で金属パラジウム粒子が18wt%担持された乳白色の窒化ホウ素を得た。
【製造例6】
【0044】
製造例1の窒化ホウ素量を133grに変更した以外は製造例1と同様の方法で金属パラジウム粒子が3wt%担持された乳白色の窒化ホウ素を得た。
【製造例7】
【0045】
製造例1の窒化ホウ素量を18grに変更した以外は製造例1と同様の方法で金属パラジウム粒子が22wt%担持された乳白色の窒化ホウ素を得た。
<熱伝導シートの作製>
【実施例1】
【0046】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル系部分重合物を24%含む(メタ)アクリル系モノマー混合液シロップB(綜研化学社製)(アクリル酸2エチルヘキシル:90部、アクリル酸:9部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1から構成された部分重合物)を720部、熱伝導性充填剤として製造例1で作製したパラジウム担持窒化ホウ素を285部、光重合開始剤として“イルガキュア369”(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1.6部をディスパーにて攪拌し塗料を作製した。この塗料を表面離型加工された50μmnの離型性PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(“SP−PET-O1-BU”東セロ株式会社製)上にナイフコータ(廉井精機社製)でフィルム基材とナイフロール間のギャップ間隔を150μmにて塗布後、同じく表面離型加工された50μmnの離型性PETフィルム(“SP−PET-O1-BU”東セロ株式会社製)を貼り合せた後、波長365nmに照度ピークをもつブラックライトにて積算光量300mJ/cm2紫外線を照射させた後、高圧水銀灯にて積算光量1000mJ/cm2で紫外線照射を行いコアに巻き取り、100μm厚の熱伝導シートを作製した。
【実施例2】
【0047】
金属粒子担持窒化ホウ素を製造例2で作製した白金担持窒化ホウ素に代えた以外は実施例1と同様の方法で熱伝導シートを作製した。
【実施例3】
【0048】
金属粒子担持窒化ホウ素を製造例3で作製した銀担持窒化ホウ素に代えた以外は実施例1と同様の方法で熱伝導シートを作製した。
【実施例4】
【0049】
金属粒子担持窒化ホウ素を製造例4で作製したパラジウム担持窒化ホウ素に代えた以外は実施例1と同様の方法で熱伝導シートを作製した。
【実施例5】
【0050】
金属粒子担持窒化ホウ素を製造例5で作製したパラジウム担持窒化ホウ素に代えた以外は実施例1と同様の方法で熱伝導シートを作製した。
【実施例6】
【0051】
パラジウム担持窒化ホウ素を158部に代えた以外は実施例1と同様の方法で熱伝導シートを作製した。
【実施例7】
【0052】
パラジウム担持窒化ホウ素を388部に代えた以外は実施例1と同様の方法で熱伝導シートを作製した。
【比較例1】
【0053】
実施例1のパラジウム担持窒化ホウ素を平均粒子径10μmの窒化ホウ素(HP−1、水島合金鉄社製)に代えた以外は実施1と同様の方法で熱伝導性シートを作製した。
【比較例2】
【0054】
金属粒子担持窒化ホウ素を製造例6で作製したパラジウム担持窒化ホウ素に代えた以外は実施例1と同様の方法で熱伝導シートを作製した。
【比較例3】
【0055】
金属粒子担持窒化ホウ素を製造例7で作製したパラジウム担持窒化ホウ素に代えた以外は実施例1と同様の方法で熱伝導シートを作製した。
【比較例4】
【0056】
製造例1で作製したパラジウム担持窒化ホウ素を90部に代えた以外は実施例1と同様の方法で熱伝導性シートを作製した。
【比較例5】
【0057】
製造例1で作製したパラジウム担持窒化ホウ素を196部に代えた以外は実施例1と同様の方法で熱伝導性シートを作製した。

続いて、実施例1〜5及び比較例1〜5の熱伝導性シートを下記のように評価した。
<熱伝導率>
離型性PETフィルムを剥離した熱伝導シートを迅速熱伝導率計(“QTM−500”、京都電子工業株式会社製)を用いて23℃50%RHの環境下で熱伝導率の測定を行った。その結果を表1及び表2に示す。
<粘着力>
離型性PETフィルムを剥離した熱伝導シートをSUS304鋼板に貼り合わせてJIS Z 0237:2000に準じて粘着力の測定を行った。その結果を表1及び表2に示す。
<体積抵抗率>
離型性PETフィルムを剥離した熱伝導シートをJIS K 6911:1995に準じて“ハイレスタUP MCP-450”(三菱化学製)を用いて測定を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
本発明によれば、窒化ホウ素に熱伝導性金属粒子を担持させることにより、鱗片状粒子の窒化ホウ素の面方向がシート面の方向と同一であっても、シート厚み方向への熱伝導パスを容易に形成させることができ、粘着性を有する高分子化合物マトリクス中における熱伝導性フィラーの比率を大きくしなくても、従って、粘着力を維持しながら高熱伝導化させた電気絶縁性の熱伝導性シートが得られることがわかる。
【0061】
また、離型性シートの上に熱伝導性充填剤と高分子化合物からなる塗料を塗布して重合させることで熱伝導性シートが得られ、磁場中で配向させたり、熱可塑性の樹脂からなるバインダ粒子と熱伝導充填剤の粒子との混練物から成形した複数枚のシートを積層し、積層体を積層面に対して垂直方向にスライスするなどの煩雑な工程を必要とせず、連続生産に適してる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の熱伝導性シートは、コンピュータその他の電子機器などの機器から発生する熱の放熱のため、前記機器の発熱する部材とヒートシンクや放熱フィンといった放熱部材間の熱伝導のための電気絶縁性の熱伝導性シートとして有用に用いられる。また、熱伝導性シート自体をこれらの機器の発熱する部材に貼って放熱材として有用に用いることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも熱伝導性充填剤と粘着性を有する高分子化合物を含む熱伝導性シートにおいて、前記熱伝導性充填剤が、熱伝導性金属粒子を窒化ホウ素に対して5重量%〜20重量%担持させた金属粒子担持窒化ホウ素であり、前記熱伝導性充填剤と前記高分子化合物の重量比率が15部/85部〜40部/60部であることを特徴とする熱伝導性シート。
【請求項2】
窒化ホウ素に担持させる熱伝導性金属粒子が、金、銀、銅、アルミニウム、白金、パラジウムから選ばれた少なくとも1種類を含む請求項1記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
前記高分子化合物が、粘着性を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
熱伝導率が1.0W/(m・K)以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項5】
前記熱伝導シートをSUS304鋼板に貼り付けし、JIS Z 0237:2000で測定したときの剥離力が2.5N/10mm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項6】
体積抵抗値が1×1013Ω・cm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱伝導性シート


【公開番号】特開2011−174016(P2011−174016A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40750(P2010−40750)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】