説明

熱伝導性シート

【課題】 高い熱伝導性及び耐加熱変形性を兼ね備えた熱伝導性シートを提供することを目的とする。
【解決手段】 エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体と熱伝導性フィラーとを含有してなる熱伝導性樹脂組成物をシート状に成形し、得られたシート成形体に電子線を照射することにより、該エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体を架橋することを特徴とする熱伝導性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シートに関し、さらに詳しくは、各種の電気及び電子機器中の部品が発する熱をヒートシンク(放熱器)に効率よく伝導するための熱伝導性シートとして、又は熱を外部に効率よく放散するための放熱シートとして用いられるシートであって、優れた熱伝導性に加えてさらに耐加熱収縮性を兼ね備えた熱伝導性シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の電気及び電子機器において、部品が発する熱を効率よく放散することが、誤作動を防止したり、製品寿命を延ばしたりするうえで重要である。従って、発熱を伴う電気及び電子機器においては、発熱性部品上に、熱伝導性シートを介してヒートシンクを取り付けることが行われている。熱伝導性シートを介することにより、発熱性部品とヒートシンクとが隙間なく接合されるため、接触熱抵抗が低減されて、放熱効率が高まる。
【0003】
このように使用される熱伝導性シートとしては、バインダー中に多量の熱伝導性フィラーを充填し、シート状に成形したものが知られている。ここで、バインダーとしては、膜厚方向に良好な熱伝導性を示し、且つ、多量の熱伝導性フィラーを充填しても高い柔軟性を示し、発熱性部品やヒートシンクの表面凹凸に追従して接合面に空隙を生じさせないポリマーを使用することが好ましい。
【0004】
この条件を満たすポリマーとして、例えば、シリコーンが使用されている(特許文献1)。シリコーンは、柔軟性を保持しながら多量の熱伝導性フィラーを保持することができるため、良好な熱伝導性を達成することができるが、極めて高価であり、また、シロキサンによる電子機器の接点不良を生じ得るという問題がある。
【0005】
また、シリコーンの代替材料として、ポリオレフィン系樹脂が使用されるが、この樹脂をバインダーとする熱伝導性シートは、熱により収縮し易く、発熱性部品上で徐々に変形する。これにより、接合面に空隙が生じ、放熱効率が低下するため、十分な熱伝導性が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−60134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、高い熱伝導性及び耐加熱変形性を兼ね備えた熱伝導性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々研究の結果、エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体と熱伝導性フィラーとを含有してなる熱伝導性樹脂組成物をシート状に成形し、得られたシート成形体に電子線を照射することにより、該エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体を架橋することを特徴とする熱伝導性シートが、上記の目的を達成することを見出した。
【0009】
そして、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体と熱伝導性フィラーとを含有してなる熱伝導性樹脂組成物をシート状に成形し、得られたシート成形体に電子線を照射することにより、該エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体を架橋することを特徴とする熱伝導性シート。
2.熱伝導性樹脂組成物が、エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体を7〜90体積%の範囲内で、且つ熱伝導性フィラーを5〜90体積%の範囲内で含有し、さらに、難燃剤を0〜70体積%の範囲内で含有してなることを特徴とする、上記1に記載の熱伝導性シート。
3.エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体が、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体であることを特徴とする、上記1又は2に記載の熱伝導性シート。
4.成形したシートの厚みが10〜800μmであることを特徴とする、上記1〜3のいずれかに記載の熱伝導性シート。
5.上記1〜4のいずれかに記載の熱伝導性シートからなる層と、粘着層とを有する熱伝導性積層体。
【発明の効果】
【0010】
ポリマーに、電子線や紫外線等の電子線を照射すると、分子鎖間の架橋及び分子鎖の切断が起こり、ポリマーの持つ機械的性質や熱的性質が変化する。照射により起こる架橋と切断の程度や性質変化は、ポリマーの物理的及び化学的性質に応じて、また照射条件に応じて異なる。
【0011】
本発明によれば、エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体に電子線を照射すると、少ない照射線量で効率的に、分子鎖間の架橋が好適に進行し、三次元網状構造が形成される。架橋したエチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体は、フィラーの保持力が高まり、熱伝導性シートとして使用するのに十分な柔軟性を保持したまま、熱伝導性フィラーを高充填することができる。
【0012】
また、エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体に電子線を照射して得られる本発明の熱伝導性シートは、優れた耐加熱変形性を示し、200℃超の高温下でも収縮等の変形を起こしにくい。したがって、発熱性電子部品とヒートシンクとの間に設置した場合、これらの表面の凹凸に追従したまま、接合面に空隙を生じることなく、熱を効率よく伝導し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の熱伝導性シートについてその一例を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる熱伝導性シートを構成する材料、製造法等についてさらに詳しく説明する。
1.熱伝導性シート
熱伝導性シートは、実際に発熱性部品上に適用して効果を得るためには、0.5W/(m・K)以上、好ましくは1.0W/(m・K)以上の熱伝導率を示す必要がある。
これに対し、本発明の熱伝導性シートは、高い熱伝導性を達成することができ、例えば、1.0W/(m・K)以上、より好ましくは1.5W/(m・K)以上の熱伝導率を達成することができる。
なお、本発明における熱伝導率は、実施例に記載される熱伝導率の測定方法に基づいて測定された値である。
【0015】
2.エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体
本発明において、エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体は、エチレン−α-オレフィンと、非共役ジエンとの三元共重合体である。
α-オレフィンとしては、炭素数3〜20のα-オレフィンが好ましく、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等が挙げられ、これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。プロピレンを特に好ましく使用することができる。
【0016】
非共役ジエンとしては、種々の鎖状非共役ジエン及び環状非共役を用いることができ、具体的には、ジエンジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−オクタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等が挙げられ、これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。電子線に対する反応性が特に高いため、5−エチリデン−2−ノルボルネンが特に好ましい。
【0017】
三元共重合体を構成する各モノマーに基づくモノマー単位の割合は、エチレン単位を増加させると高強度となるが柔軟性が低下する傾向があり、また、非共役ジエン単位を増加させると電子線に対する反応性が高くなるが柔軟性が低下する傾向があり、意図する熱伝導性シートの用途、配合する熱伝導性フィラーの量及び選択する成形方法等の種々の条件に応じて適宜に定めることができる。
【0018】
エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体は、原料となるモノマーを用いて、種々の慣用の方法により製造することができる。また、この樹脂の粘度を低減して、加工性を向上させるために、パラフィン油等の油成分を添加して油展されたエチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体を用いてもよい。同様の目的のために、油展されていないエチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体を、油成分と混合してから、熱伝導性フィラーと混練することもできる。
【0019】
本発明において好適に使用されるエチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体の具体例としては、三井化学株式会社の三井EPT等が挙げられる。
【0020】
熱伝導性樹脂組成物におけるエチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体の好適な配合量は、使用する熱伝導性フィラーの種類や膜厚等種々の条件に応じて異なるが、好ましくは7〜90体積%の範囲内であり、特に好ましくは25〜60体積%の範囲内である。エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体の配合量が少なすぎると、熱伝導性フィラーを保持することができないため、平滑な表面を持つシートとして成形することが難しく、また、熱伝導性シートの柔軟性が低下する。一方、エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体の配合量が多すぎると、熱伝導性フィラーの充填率が低下し、熱伝導性が不十分となる場合がある。
【0021】
3.熱伝導性フィラー
本発明において使用される熱伝導性フィラーとしては、特に限定されず、熱伝導性を示す種々のフィラーを用いることができる。例えば、導電性フィラー、具体的には銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属又はこれらの合金からなる金属系フィラー;カーボン、グラファイト等の炭素系フィラー;ガラス繊維や樹脂粒子等の無機フィラーに銀や銅等の金属材料を表面被覆したフィラー;金属系フィラーに無機材料や炭素材料を表面被服したフィラーが挙げられる。また、絶縁性フィラー、具体的には、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物からなるフィラー;窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物からなるフィラー;炭化ケイ素等の炭化物からなるフィラー;ダイヤモンド等の絶縁性炭素系フィラー;石英、石英ガラス等のシリカ粉からなるフィラーを用いることもできる。これらの熱伝導性フィラーは
、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。特に、絶縁性フィラーを用いると、パワー半導体やLED照明等の放熱性及び電気絶縁性の両方が求められる電子部材において、好適に使用することができる。
【0022】
熱伝導性フィラーの形状は特に限定されず、球状(例えば真球状、擬球状、楕円球状、扁平球状等)、繊維状、鱗片状、平面状、破砕状、不定形状等の任意の形状であってよい。また、その大きさも特に限定されず、製造する熱伝導性シートの厚み及び熱伝導性フィラーの含有量に応じて異なるが、シート状に成形したときに、平滑な表面が得られる大きさであればよい。
【0023】
熱伝導性樹脂組成物における熱伝導性フィラーの好適な配合量は、達成すべき熱伝導率や使用するフィラーの種類等の種々の条件に応じて異なるが、好ましくは5〜90体積%の範囲内であり、特に好ましくは30〜60体積%の範囲内である。熱伝導性フィラーが熱伝導性を発揮するためには、シート中で、膜厚方向に連なって、フィラー同士が接触しているか又は近接した状態で存在する必要があるが、熱伝導性フィラーの配合量が5体積%より少ないと、フィラー間の距離が離れすぎており、熱伝導性シートとして使用するのに十分な熱伝導性が得られない。一方、90体積%より多いと、シートの柔軟性が低下して、発熱性部品やヒートシンクの表面の凹凸に対する追従性が失われ、効率的な熱伝導が得られなくなる場合がある。
【0024】
4.難燃剤
本発明の熱伝導性樹脂組成物中に、さらに難燃剤を含有させることにより、難燃性を向上させてもよい。
上記難燃剤としては、公知の難燃剤及び難燃助剤を使用することができるが、本発明においては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物、ホウ酸亜鉛、トリアリルホスフェート、アルキルアリルホスフェート、アルキルホスフェート、ジメチルホスフォネート、ホスホリネート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル又はリン化合物、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA等の臭素化合物、塩素化パラフィン等の塩素化合物、メラミンシアヌレート、ハイドロタルサイト等を使用することができる。これらは単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
難燃剤は、熱伝導性樹脂組成物中に0〜70体積%の範囲内で含有させることが好ましく、特に好ましくは20〜50体積%の範囲内である。難燃剤の配合量が1体積%より少ないと、十分な難燃効果が得られにくい。また、70体積%より多いと、熱伝導性フィラーの充填が困難になるため好ましくない。
【0025】
5.その他の添加剤
また、本発明の熱伝導性樹脂組成物中に、さらに架橋助剤を含有させることにより、電子線照射時の架橋効率を高めてもよい。
上記架橋助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ポリブタジエン等があげられる。これらの架橋助剤は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
架橋助剤は、熱伝導性樹脂組成物中に0〜5体積%の範囲内で含有させることが好ましい。架橋助剤の配合量が5体積%より多いと、ブリードアウトが懸念されるため好ましくない。
さらに、熱伝導性樹脂組成物中に、本発明の効果に影響のない範囲で、さらに種々の添加剤、例えば、分散剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、染料等を適宜添加してもよい。
【0027】
6.熱伝導性樹脂組成物の調製及び成形
上記のエチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体のペレット、熱伝導性フィラー及び必要に応じて添加されるその他の添加剤を、例えば混練機、押出機、ミキサー、ロール、ニーダー、撹拌機等の慣用の装置を用いて均一になるまで溶融混練し、本発明の熱伝導性樹脂組成物を調製することができる。混練する際に、揮発成分などを除去するために、装置内を減圧、脱気してもよい。
得られた熱伝導性樹脂組成物を、カレンダー成形機、Tダイ押出機、インフレーション押出機、インジェクション成形機、コンプレッション成形機等の慣用の装置を用いてシート状に成形し、シート成形体が得られる。
【0028】
本発明において、シート成形体の厚みは、好ましくは、10〜800μmとなるように、より好ましくは50〜600μmとなるように成形される。厚みが10μm未満では、成形安定性が低くなり、厚み精度が低下する。また、厚みが800μmを超えると、柔軟性が不十分となる場合がある。
【0029】
7.電子線照射
上記で得られたシート成形体に、電子線を照射することにより、エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体の分子鎖間で架橋反応が起こり、エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体の密な網状構造を基にする本発明の熱伝導性シートが得られる。
【0030】
電子線の加速電圧については、シート成形体の厚みや熱伝導性フィラーの配合量等に応じて適宜選定し得るが、加速電圧が高いほど透過能力が増加するので、過剰電子線によるシートの劣化を最小限に抑えるために、電子線の透過深さとシート成形体の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することが好ましい。
照射線量は、照射後の熱伝導性シートの加熱収縮率が1%以下程度となるように、当業者が適宜に選定することができる。なお、本発明において、加熱収縮率は、実施例に記載される加熱収縮率の測定方法に基づいて測定された値である。
【0031】
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
【0032】
8.熱伝導性積層体
発熱性部品やヒートシンクとの接着性を高めるために、本発明の熱伝導性シートの片面又は両面に粘着層を積層し、熱伝導性積層体としてもよい。
粘着層の形成に用いる樹脂としては、慣用の塗工型粘着剤、例えば、有機溶剤希釈型のアクリル系粘着剤、ポリブチレン系粘着剤等を好適に使用できる。
【0033】
粘着層の厚みは、使用する接着剤の種類や、適用される発熱部品やヒートシンクの形状等の様々な因子により異なるので一概には決められないが、通常、乾燥時の塗工量で5〜100g/m2の範囲である。粘着層の形成方法としては、前記粘着剤を、ブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアコーター等の塗布法、ホットメルトでの押出しラミネーション法等で塗工し、乾燥すればよい。また、粘着性フィルムを貼り合わせることにより形成することもできる。
また、本発明で作製した熱伝導性シートの発熱部材に対する密着性を向上させるために、その表面を火炎処理、薬品処理、粗面処理、グロー放電処理、赤外線ヒーター処理、加熱処理、プラズマ処理、コロナ処理などを行ってもよい。
【実施例】
【0034】
次に実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
[実施例1]
以下の物質を溶融混練し、本発明の熱伝導性樹脂組成物を調製した。
・エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体:三井EPT 3072EPM(三井化学(株)製)34.9体積%
・熱伝導性フィラー:酸化亜鉛LPZINC-11(堺化学工業(株)製)27.1体積%
・難燃剤:水酸化マグネシウムN−6(神島化学工業(株)製)38.0体積%
次いで、この熱伝導性樹脂組成物を、カレンダー成形により厚み200μmのシート状に成形し、得られたシート成形体に、加速電圧165kV、照射線量200kGyの電子線を照射し、本発明の熱伝導性シートを得た。
【0036】
[実施例2]
以下の物質を溶融混練し、本発明の熱伝導性樹脂組成物を調製した。
・エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体:三井EPT 3072EPM(三井化学(株)製)34.8体積%
・熱伝導性フィラー:酸化亜鉛LPZINC-11(堺化学工業(株)製)27.1体積%
・難燃剤:水酸化マグネシウムN−6(神島化学工業(株)製)37.9体積%
・架橋助剤:トリアリルイソシアヌレート(商品名TAIC(R)、日本化成(株)製)0.2体積%
次いで、この熱伝導性樹脂組成物を、カレンダー成形により厚み200μmのシート状に成形し、得られたシート成形体に、加速電圧165kV、照射線量200kGyの電子線を照射し、本発明の熱伝導性シートを得た。
【0037】
[実施例3]
以下の物質を溶融混練し、本発明の熱伝導性樹脂組成物を調製した。
・エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体:三井EPT 3072EPM(三井化学(株)製)31.4体積%
・熱伝導性フィラー:酸化亜鉛LPZINC-11(堺化学工業(株)製)22.0体積%
・難燃剤:水酸化マグネシウムN−6(神島化学工業(株)製)28.4体積%、及び、メラミンシアヌレート MC-4000(日産化学工業(株)製)18.0体積%
・架橋助剤:トリアリルイソシアヌレート(TAIC(R)、日本化成(株)製)0.2体積%
次いで、この熱伝導性樹脂組成物を、カレンダー成形により厚み250μmのシート状に成形し、得られたシート成形体に、加速電圧165kV、照射線量200kGyの電子線を照射し、本発明の熱伝導性シートを得た。
【0038】
[実施例4]
以下の物質を溶融混練し、本発明の熱伝導性樹脂組成物を調製した。
・エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体:三井EPT 3072EPM(三井化学(株)製)49.2体積%
・熱伝導性フィラー:窒化ホウ素 PTX−60(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製)18.6体積%
・難燃剤:水酸化マグネシウムN−6(神島化学工業(株)製)17.9体積%、及び、メラミンシアヌレート MC-4000(日産化学工業(株)製)14.1体積%
・架橋助剤:トリアリルイソシアヌレート(TAIC(R)、日本化成(株)製)0.2体積%
次いで、この熱伝導性樹脂組成物を、カレンダー成形により厚み250μmのシート状に成形し、得られたシート成形体に、加速電圧165kV、照射線量200kGyの電子線を照射し、本発明の熱伝導性シートを得た。
【0039】
[実施例5]
以下の物質を溶融混練し、本発明の熱伝導性樹脂組成物を調製した。
・エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体:三井EPT K−9720(三井化学(株)製)31.5体積%
・熱伝導性フィラー:酸化亜鉛 LPZINC-11(堺化学工業(株)製)22.0体積%
・難燃剤:水酸化マグネシウムN−6(神島化学工業(株)製)28.5体積%、及び、メラミンシアヌレート MC-4000(日産化学工業(株)製)18.0体積%
次いで、この熱伝導性樹脂組成物を、カレンダー成形により厚み420μmのシート状に成形し、得られたシート成形体に、加速電圧165kV、照射線量200kGyの電子線を照射し、本発明の熱伝導性シートを得た。
【0040】
[比較例1]
以下の物質を溶融混練し、熱伝導性樹脂組成物を調製した。
・エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体:三井EPT 3072EPM(三井化学(株)製)34.9体積%
・熱伝導性フィラー:酸化亜鉛 LPZINC-11(堺化学工業(株)製)27.1体積%
・難燃剤:水酸化マグネシウムN−6(神島化学工業(株)製)38.0体積%
次いで、この熱伝導性樹脂組成物を、カレンダー成形により厚み200μmのシート状に成形し、熱伝導性シートを得た。
【0041】
[比較例2]
以下の物質を溶融混練し、熱伝導性樹脂組成物を調製した。
・エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体:三井EPT 3072EPM(三井化学(株)製)34.8体積%
・熱伝導性フィラー:酸化亜鉛 LPZINC-11(堺化学工業(株)製)27.1体積%
・難燃剤:水酸化マグネシウムN−6(神島化学工業(株)製)37.9体積%
・架橋助剤:トリアリルイソシアヌレート(日本化成(株)製)0.2体積%
次いで、この熱伝導性樹脂組成物を、カレンダー成形により厚み200μmのシート状に成形し、熱伝導性シートを得た。
【0042】
[比較例3]
以下の物質を溶融混練し、熱伝導性樹脂組成物を調製した。
・エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体:三井EPT K−9720(三井化学(株)製)31.5体積%
・熱伝導性フィラー:酸化亜鉛 LPZINC-11(堺化学工業(株)製)22.0体積%
・難燃剤:水酸化マグネシウム N−6(神島化学工業(株)製)28.5体積%、及び、メラミンシアヌレート MC-4000(日産化学工業(株)製)18.0体積%
次いで、この熱伝導性樹脂組成物を、カレンダー成形により厚み420μmのシート状に成形し、熱伝導性シートを得た。
【0043】
[評価]
実施例1〜5及び比較例1〜3の熱伝導性シートについて、以下の方法により熱伝導率及び加熱収縮率を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
<熱伝導率の測定方法>
熱伝導率(λ)は、積層体の比重(ρ)、熱拡散率(α)及び比熱容量(C)を用いて、λ=αρCの式より算出した。比重、熱拡散率、比熱容量は以下に記す方法により求めた。
1)比重
電子比重計MD−300S(アルファーミラージュ株式会社製)を用いて測定した。
2)熱拡散率
熱拡散率測定装置LFA447Nanoflash(NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱拡散率を測定した。測定方向はシート平面に対して垂直方向とした。
3)比熱容量
JIS K 7123に準拠し、示差走査熱量計EXSTAR6000(セイコーインスツルメンツ株式会社製)により25℃における比熱容量を算出した。
【0045】
<加熱収縮率の測定方法>
最初に、アルミ容器中にタルク粉末を敷きつめ、250℃のオーブン中で十分に加熱した。次いで、熱伝導性シートからサンプル(5×5cm)を切り出し、これを上記アルミ容器中のタルク粉末上に載せ、250℃のオーブン中で3分間加熱した後にサンプルを取り出した。サンプルの最も収縮した一辺の長さL2(cm)を測定し、加熱前の長さL1(5cm)に対する加熱収縮率(%)を、下記式にしたがって算出した:
加熱収縮率(%)=〔(L1 −L2 )/L1 〕×100
【0046】
【表1】

【0047】
[結果]
実施例1〜5及び比較例1〜3の熱伝導性シートは、いずれも良好な熱伝導率を示したが、実施例1〜5の本発明の熱伝導性シートが、加熱収縮率僅か1%以下という優れた耐加熱収縮性を示したのに対し、比較例1〜3の熱伝導性シートは、加熱により変形し、4%以上もの加熱収縮率を示した。したがって、シート状に成形した後で電子線を照射することにより、良好な熱伝導性は損なわずに、耐熱収縮性を向上し得ることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
1.熱伝導性シート
2.熱伝導性フィラー
3.難燃剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体と熱伝導性フィラーとを含有してなる熱伝導性樹脂組成物をシート状に成形し、得られたシート成形体に電子線を照射することにより、該エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体を架橋することを特徴とする熱伝導性シート。
【請求項2】
熱伝導性樹脂組成物が、エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体を7〜90体積%の範囲内で、且つ熱伝導性フィラーを5〜90体積%の範囲内で含有し、さらに、難燃剤を0〜70体積%の範囲内で含有してなることを特徴とする、請求項1に記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
エチレン−α-オレフィン−非共役ジエン三元共重合体が、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
成形したシートの厚みが10〜800μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性シートからなる層と、粘着層とを有する熱伝導性積層体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−12424(P2012−12424A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147113(P2010−147113)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】