説明

熱伝導性感圧接着剤組成物、熱伝導性感圧接着性シート状成形体、これらの製造方法、及び電子機器

【課題】貼付直後にはリワーク可能であり、貼付後、時間の経過とともに粘着力が強くなる熱伝導性感圧接着剤組成物及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体と、これらの製造方法と、該熱伝導性感圧接着剤組成物又は該熱伝導性感圧接着性シート状成形体を備えた電子機器とを提供するとを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、熱伝導性フィラー(B)を200質量部以上1200質量部以下と、可塑剤(D)を3質量部以上25質量部以下と、を含み、可塑剤(D)がエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である混合組成物中において、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とが行われてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性感圧接着剤組成物、熱伝導性感圧接着性シート状成形体、これらの製造方法、及び該熱伝導性感圧接着剤組成物又は該熱伝導性感圧接着性シート状成形体を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)、集積回路(IC)チップ等のような電子機器に備えられる電子部品は、その高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。一般的には、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を電子部品等に備えられる発熱体に取り付けることによって放熱させる方法が採られている。発熱体から放熱体への熱伝導を効率よく行うためには、熱伝導性が高いシート状の部材(熱伝導シート)が使用されている。一般的に、発熱体と放熱体とを固定する用途においては、熱伝導性に加えて感圧接着性も備えた組成物(以下、「熱伝導性感圧接着剤組成物」という。)やシート状の部材(以下、「熱伝導性感圧接着性シート状成形体」という。)が必要とされている。
【0003】
上記熱伝導性感圧接着剤組成物及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体は、発熱体から放熱体へと熱を伝えることを主目的として用いられるため、熱伝導性が高いことが好ましい。熱伝導性を向上させることができるフィラーとしては、例えば酸化亜鉛(特許文献1乃至3)や黒鉛等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−163145号公報
【特許文献2】特開2008−127482号公報
【特許文献3】特開2008−127481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱伝導性感圧接着剤組成物や熱伝導性感圧接着性シート状成形体によって発熱体と放熱体とを固定する際、両者を強固に固定可能であることが好ましい。一方で、生産性等の観点から、熱伝導性感圧接着剤組成物や熱伝導性感圧接着性シート状成形体を貼付した直後には貼り直し(以下、「リワーク」ということがある。)可能であることが好ましい。しかしながら、特許文献1乃至3に記載されたシートでは、このような粘着性についての検討がなされていなかった。特にリワークについては、従来は十分な検討がなされていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、貼付直後にはリワーク可能であり、貼付後、時間の経過とともに粘着力が強くなる熱伝導性感圧接着剤組成物及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体と、これらの製造方法と、該熱伝導性感圧接着剤組成物又は該熱伝導性感圧接着性シート状成形体を備えた電子機器とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、熱伝導性フィラー(B)を200質量部以上1200質量部以下と、可塑剤(D)を3質量部以上25質量部以下と、を含み、可塑剤(D)がエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である混合組成物中において、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とが行われてなる、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)である。
【0008】
本明細書中において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル、及び/又は、メタクリル」を意味する。「熱伝導性フィラー(B)」とは、添加することによって熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び後に説明する熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の熱伝導性を向上させることができ、熱伝導率が1W/m・K以上であるフィラーを意味する。「(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応」とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を生じる重合体を得る重合反応を意味する。「(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応」とは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)同士の架橋反応、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体同士の架橋反応、及び、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体との架橋反応のうち、一又は複数の架橋反応を意味する。
【0009】
本発明の第2の態様は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、熱伝導性フィラー(B)を200質量部以上1200質量部以下と、可塑剤(D)を3質量部以上25質量部以下と、を含み、可塑剤(D)がエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である混合組成物をシート状に成形した後、又は該混合組成物をシート状に成形しながら、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とが行われてなる、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)である。
【0010】
本発明の第3の態様は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、熱伝導性フィラー(B)を200質量部以上1200質量部以下と、可塑剤(D)を3質量部以上25質量部以下と、を含み、可塑剤(D)がエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である混合組成物を作製する工程、並びに、該混合組成物中において、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とを行う工程、を含む、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の製造方法である。
【0011】
本発明の第4の態様は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、熱伝導性フィラー(B)を200質量部以上1200質量部以下と、可塑剤(D)を3質量部以上25質量部以下と、を含み、可塑剤(D)がエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である混合組成物を作製する工程、並びに、該混合組成物をシート状に成形した後、又は、該混合組成物をシート状に成形しながら、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とを行う工程、を含む、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法である。
【0012】
本発明の第5の態様は、放熱体及び該放熱体に貼付された本発明の第1の態様の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)、又は、放熱体及び該放熱体に貼付された本発明の第2の態様の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)、を備えた電子機器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、貼付直後にはリワーク可能であり、貼付後、時間の経過とともに粘着力が強くなる熱伝導性感圧接着剤組成物及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体と、これらの製造方法と、該熱伝導性感圧接着剤組成物又は該熱伝導性感圧接着性シート状成形体を備えた電子機器とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.熱伝導性感圧接着剤組成物(F)、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)と、熱伝導性フィラー(B)と、可塑剤(D)と、を含む混合組成物中において、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を生じる重合体を得る重合反応、並びに、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)同士の架橋反応、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体同士の架橋反応、及び、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体との架橋反応のうちいずれかの架橋反応が少なくとも行われてなるものである。
【0015】
また、本発明の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は、上記混合組成物をシート状に成形した後、又は上記混合組成物をシート状に成形しながら、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を生じる重合体を得る重合反応、並びに、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)同士の架橋反応、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体同士の架橋反応、及び、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体との架橋反応のうちいずれかの架橋反応が少なくとも行われてなるものである。
【0016】
このような熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を構成する物質について以下に説明する。
【0017】
<(メタ)アクリル樹脂組成物(A)>
本発明に用いる(メタ)アクリル樹脂組成物(A)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含んでいる。なお、上述したように、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を得る際には(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を生じる重合体を得る重合反応と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とが行われる。当該重合反応及び架橋反応を行うことによって(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の成分と混合及び/又は一部結合する。
【0018】
本発明において、アクリル酸エステル重合体(A1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の使用量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)100質量%に対して、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)5質量%以上40質量%以下、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)60質量%以上95質量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の含有比率を上記範囲とすることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を成形することが容易になる。
【0019】
((メタ)アクリル酸エステル重合体(A1))
本発明に用いることができる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は特に限定されないが、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)、及び、有機酸基を有する単量体単位(a2)を含有することが好ましい。
【0020】
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体の単位(a1)を与える(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は特に限定されないが、例えば、アクリル酸エチル(単独重合体のガラス転移温度は、−24℃)、アクリル酸n−プロピル(同−37℃)、アクリル酸n−ブチル(同−54℃)、アクリル酸sec−ブチル(同−22℃)、アクリル酸n−ヘプチル(同−60℃)、アクリル酸n−ヘキシル(同−61℃)、アクリル酸n−オクチル(同−65℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(同−50℃)、アクリル酸2−メトキシエチル(同−50℃)、アクリル酸3−メトキシプロピル(同−75℃)、アクリル酸3−メトキシブチル(同−56℃)、アクリル酸エトキシメチル(同−50℃)、メタクリル酸n−オクチル(同−25℃)、メタクリル酸n−デシル(同−49℃)などを挙げることができる。中でも、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシエチルが好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましく、アクリル酸2−エチルヘキシルがさらに好ましい。
【0021】
これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)は、それから導かれる単量体単位(a1)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、好ましくは80質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは85質量%以上99.5質量%以下となるような量で重合に供する。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)の使用量が上記範囲内であると、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になる。
【0023】
次に、有機酸基を有する単量体単位(a2)について説明する。有機酸基を有する単量体単位(a2)を与える単量体(a2m)は特に限定されないが、その代表的なものとして、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基などの有機酸基を有する単量体を挙げることができる。また、これらのほか、スルフェン酸基、スルフィン酸基、燐酸基などを含有する単量体も使用することができる。
【0024】
カルボキシル基を有する単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸や、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の他、イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノプロピルなどのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステルなどを挙げることができる。また、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの、加水分解などによりカルボキシル基に誘導することができる基を有するものも同様に使用することができる。
【0025】
スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのα,β−不飽和スルホン酸、及び、これらの塩を挙げることができる。
【0026】
単量体(a2m)としては、上に例示した有機酸基を有する単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体がより好ましく、中でも、アクリル酸又はメタクリル酸を有する単量体が特に好ましい。これらの単量体は工業的に安価で容易に入手することができ、他の単量体成分との共重合性も良く、生産性の点でも好ましい。なお、単量体(a2m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0027】
有機酸基を有する単量体(a2m)は、それから導かれる単量体単位(a2)が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下となるような量で重合に供する。有機酸基を有する単量体(a2m)の使用量が上記範囲内であると、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になる。
【0028】
なお、有機酸基を有する単量体単位(a2)は、前述のように、有機酸基を有する単量体(a2m)の重合によって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中に導入するのが簡便であり好ましいが、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)生成後に、公知の高分子反応により、有機酸基を導入してもよい。
【0029】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)から誘導される単量体単位(a3)を含有していてもよい。上記有機酸基以外の官能基としては、水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、メルカプト基などを挙げることができる。
【0030】
水酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどの、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0031】
アミノ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アミノスチレンなどを挙げることができる。
【0032】
アミド基を有する単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体などを挙げることができる。
【0033】
エポキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0034】
有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0035】
これらの有機酸基以外の官能基を有する単量体(a3m)は、それから導かれる単量体単位(a3)が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、10質量%以下となるような量で重合に使用することが好ましい。10質量%以下の単量体(a3m)を使用することにより、重合時の重合系の粘度を適正な範囲に保つことが容易になる。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、上述したガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1)、有機酸基を有する単量体単位(a2)、及び、有機酸基以外の官能基を有する単量体単位(a3)以外に、上述した単量体と共重合可能な単量体(a4m)から誘導される単量体単位(a4)を含有していてもよい。
【0037】
単量体(a4m)は、特に限定されないが、その具体例として、上記(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステル、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン系単量体、非共役ジエン系単量体、シアン化ビニル単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0038】
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル(単独重合体のガラス転移温度は、10℃)、メタクリル酸メチル(同105℃)、メタクリル酸エチル(同63℃)、メタクリル酸n−プロピル(同25℃)、メタクリル酸n−ブチル(同20℃)などを挙げることができる。
【0039】
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸完全エステルの具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどを挙げることができる。
【0040】
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエン、及び、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
【0041】
共役ジエン系単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレンと同義)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどを挙げることができる。
【0042】
非共役ジエン系単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどを挙げることができる。
【0043】
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0044】
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
【0045】
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどを挙げることができる。
【0046】
単量体(a4m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0047】
単量体(a4m)は、それから導かれる単量体単位(a4)の量が、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)中、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となるような量で重合に供する。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)は、上述した、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を成形する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)、有機酸基を有する単量体(a2m)、必要に応じて使用する、有機酸基以外の官能基を含有する単量体(a3m)、及び、必要に応じて使用するこれらの単量体と共重合可能な単量体(a4m)を共重合することによって特に好適に得ることができる。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を得る際の重合方法は特に限定されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などのいずれであってもよく、これら以外の方法でもよい。ただしこれらの重合方法の中で溶液重合が好ましく、中でも重合溶媒として、酢酸エチル、乳酸エチルなどのカルボン酸エステルやベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒を用いた溶液重合がより好ましい。重合に際して、単量体は、重合反応容器に分割添加してもよいが、全量を一括添加するのが好ましい。重合開始の方法は、特に限定されないが、重合開始剤として熱重合開始剤を用いるのが好ましい。当該熱重合開始剤は特に限定されず、例えば過酸化物重合開始剤やアゾ化合物重合開始剤を用いることができる。
【0050】
過酸化物重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドや、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドのようなペルオキシドの他、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などを挙げることができる。これらの過酸化物は、還元剤と適宜組み合わせて、レドックス系触媒として使用することもできる。
【0051】
アゾ化合物重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などを挙げることができる。
【0052】
重合開始剤の使用量は特に限定されないが、単量体100質量部に対して0.01質量部以上50質量部以下の範囲であることが好ましい。
【0053】
これらの単量体のその他の重合条件(重合温度、圧力、撹拌条件など)は、特に制限がない。
【0054】
重合反応終了後、必要により、得られた重合体を重合媒体から分離する。分離の方法は特に限定されない。例えば、溶液重合の場合、重合溶液を減圧下に置き、重合溶媒を留去することによって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)を得ることができる。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)で測定して、標準ポリスチレン換算で10万以上100万以下の範囲にあることが好ましく、20万以上50万以下の範囲にあることが、より好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の重量平均分子量は、重合の際に使用する重合開始剤の量や、連鎖移動剤の量を適宜調整することによって制御することができる。
【0056】
((メタ)アクリル酸エステル単量体混合物(α1))
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有するものであれば特に限定されないが、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を成形する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)を含有するものであることが好ましい。
【0057】
ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を成形する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の合成に用いる(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1m)と同様の(メタ)アクリル酸エステル単量体を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の比率は、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは75質量%以上100質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)の比率を上記範囲とすることによって、感圧接着性や柔軟性に優れた熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を得やすくなる。
【0059】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)及びそれと共重合可能な単量体の混合物としてもよい。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、ガラス転移温度が−20℃以下となる単独重合体を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)、及び、これらと共重合可能な有機酸基を有する単量体(a6m)の混合物としてもよい。
【0061】
上記単量体(a6m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の合成に用いる単量体(a2m)として例示したものと同様の有機酸基を有する単量体を挙げることができる。単量体(a6m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0062】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における単量体(a6m)の比率は、30質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における単量体(a6m)の比率を上記範囲とすることによって、感圧接着性や柔軟性に優れた熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を得やすくなる。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a5m)及び所望により共重合させることができる有機酸基を有する単量体(a6m)の他に、これらと共重合可能な単量体(a7m)との混合物としてもよい。
【0064】
上記単量体(a7m)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)の合成に用いる単量体(a3m)、及び単量体(a4m)として例示したものと同様の単量体を挙げることができる。単量体(a7m)は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)における単量体(a7m)の比率は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0066】
<重合開始剤>
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を得る際に、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び後述する多官能性単量体は重合する。その重合を促進するため、重合開始剤を用いることが好ましい。当該重合開始剤としては、光重合開始剤、アゾ系熱重合開始剤、有機過酸化物熱重合開始剤などが挙げられる。得られる熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に優れた接着性を付与する等の観点からは、有機過酸化物熱重合開始剤を用いることが好ましい。
【0067】
光重合開始剤としては、公知の各種光重合開始剤を用いることができる。その中でも、アシルホスフィンオキサイド系化合物が好ましい。好ましい光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0068】
アゾ系熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などが挙げられる。
【0069】
有機過酸化物熱重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドや、ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンのようなペルオキシドなどを挙げることができる。ただし、熱分解時に臭気の原因となる揮発性物質を放出しないものが好ましい。また、有機過酸化物熱重合開始剤の中でも、1分間半減期温度が100℃以上かつ170℃以下のものが好ましい。
【0070】
上記重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上2質量部以下であることがさらに好ましい。重合開始剤の使用量を上記範囲とすることによって、(メタ)アクリル酸エステル単量体混合物(α1)の重合転化率を適正な範囲にし易くなり、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に単量体臭が残ることを防止し易くなる。なお、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合転化率は、95質量%以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合転化率が95質量%以上であれば、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に単量体臭が残ることを防止し易くなる。また、重合開始剤の使用量を上記範囲とすることによって、重合開始剤を添加することにより重合反応の進行を過度に誘発し、その結果、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)が平滑なシート状にならず、材料破壊を起こす事態を防止し易くなる。
【0071】
<多官能性単量体>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)には多官能性単量体も用いることが好ましい。多官能性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)に含まれる単量体と共重合可能なものを用いる。また、多官能性単量体は重合性不飽和結合を複数有しており、該不飽和結合を末端に有することが好ましい。このような多官能性単量体を用いることによって、共重合体に分子内及び/又は分子間架橋を導入して、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の感圧接着剤としての凝集力を高めることができる。
【0072】
通常、ラジカル熱重合などの重合時には、多官能性単量体を用いずともある程度の架橋反応は進行する。しかしながら、より確実にしかも所望の量の架橋構造を形成させるためには多官能性単量体を用いることが好ましい。
【0073】
多官能性単量体としては、例えば1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートや、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチレン−5−トリアジンなどの置換トリアジンの他、4−アクリルオキシベンゾフェノンのようなモノエチレン系不飽和芳香族ケトンなどを用いることができる。中でも、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。多官能性単量体は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0074】
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に用いる多官能性単量体の量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部として0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上8質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上2質量部以下であることがさらに好ましい。多官能性単量体の使用量を上記範囲とすることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に感圧接着剤としての適正な凝集力を付与し易くなる。
【0075】
<熱伝導性フィラー(B)>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)には、熱伝導性フィラー(B)を用いる。熱伝導性フィラー(B)は、添加することによって熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び後に説明する熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の熱伝導性を、添加しない場合よりも向上させることができ、熱伝導率が1W/m・K以上であるフィラーであれば特に限定されない。
【0076】
熱伝導性フィラー(B)には公知の熱伝導性フィラーを用いることができる。熱伝導性フィラー(B)の具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化ガリウム、水酸化インジウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、ホウ酸亜鉛水和物、カオリンクレー、アルミン酸カルシウム水和物、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウム、ドーソナイト、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、シリカ等を挙げることができる。この中でも、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム及び酸化アルミニウムが、入手が容易で、化学的にも安定であり、かつ、多量の配合が可能であることから好ましい。熱伝導性フィラー(B)一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0077】
また、本発明に用いる熱伝導性フィラー(B)の平均粒径は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。なお、本発明において「平均粒径」とは、以下に説明する方法で測定したものを意味する。すなわち、レーザー式粒度測定機(株式会社セイシン企業製)を用い、マイクロソーティング制御方式(測定領域内にのみ測定対象粒子を通過させ、測定の信頼性を向上させる方式)により測定する。この測定方法によれば、セル中に測定対象粒子0.01g〜0.02gが流されることで、測定領域内に流れてくる測定対象粒子に波長670nmの半導体レーザー光が照射され、その際のレーザー光の散乱と回折が測定機にて測定されることにより、フランホーファの回折原理から、平均粒径及び粒径分布が算出される。
【0078】
また、熱伝導性フィラー(B)のBET比表面積は、1.0m/g以上10m/g以下であることが好ましく、1.0m/g以上5.0m/g以下であることがより好ましく、1.0m/g以上3.0m/g以下であることがさらに好ましい。熱伝導性フィラー(B)のBET比表面積を上記範囲とすることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の素となる混合組成物の粘度が過剰に増大することを抑制することができる。ただし、熱伝導性フィラー(B)としては、BET比表面積が上記範囲である熱伝導性フィラー(B1)と、BET比表面積が1.0m/g未満である熱伝導性フィラー(B2)とを併用してもよい。このようにBET比表面積が異なる熱伝導性フィラー(B)を併用することによって、上記混合組成物の過剰な粘度増大を抑制しつつ、該混合組成物中に熱伝導性フィラー(B)を多量に配合することが可能となる。なお、本発明において「BET比表面積」とは、以下の方法で計測したものを意味する。まず、窒素およびヘリウムの混合ガスをBET比表面積測定装置内に導入し、試料(BET比表面積の測定対象物)を入れた試料セルを液体窒素に浸して、窒素ガスを試料表面に吸着させる。吸着平衡に達した後、試料セルを水浴に入れ常温まで温め、試料に付着していた窒素を脱着させる。窒素ガスの吸着、脱着時に試料セルを通過する前後のガスの混合比は変化するので、この変化を窒素およびヘリウムの混合比が一定のガスを対照として熱伝導度検出器(TCD)で検知し、窒素ガスの吸着量および脱着量を求める。測定前に単位量の窒素ガスを装置内に導入してキャリブレーションを行い、TCDで検出した値に対応する表面績の値を求めておくことにより、その試料の表面積を求める。また、表面積をその試料の質量で除すことにより、BET比表面積を求めることができる。
【0079】
熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に使用する熱伝導性フィラー(B)の量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)100質量部に対して、200質量部以上1200質量部以下であり、300質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、400質量部以上900質量部以下であることがより好ましい。熱伝導性フィラー(B)の含有量が上記範囲を超えると、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の素となる混合組成物の粘度が過剰に増大し、熱伝導性感圧接着剤組成物(E)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(F)を成形し難くなったり、成形できたとしても熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の硬度が増大して形状追随性(被着体への密着性)が低下したりする虞がある。一方、熱伝導性フィラー(B)の含有量が上記範囲未満であると、熱伝導性フィラー(B)を用いることによって熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の熱伝導性を向上させる効果が不十分となる虞がある。
【0080】
<可塑剤(D)>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)には、可塑剤(D)を用いる。また、本発明において可塑剤(D)としては、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体を用いる。可塑剤(D)として用いる樹脂が(メタ)アクリル樹脂ではない、又は、エポキシ基を有していなければ、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を成形しに難かったり、成形できたとしても十分な粘着性をもたせることができなかったりする場合があるからである。
【0081】
また、可塑剤(D)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC法)で測定して、標準ポリスチレン換算で1000以上5000以下の範囲にあることが好ましい。分子量が低すぎる場合は架橋剤としてしか機能せず、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の粘着力を十分に向上させられなくなると考えられるからである。一方、本発明において可塑剤(D)は液体であることが好ましいが、分子量が高すぎると固体になる。
【0082】
このような可塑剤(D)を(メタ)アクリル樹脂組成物(A)等と併用することによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の貼付直後におけるリワークを容易とし、貼付後、時間の経過とともに粘着力を強くすることができる。この理由は定かではないが、以下のように考えられる。すなわち、可塑剤(D)が熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)内において移動可能であることによって、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の貼付後、時間の経過とともに可塑剤(D)が被着体と熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)との界面に移動し、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の粘着力が向上すると考えられる。すなわち、貼付直後は被着体との界面に位置する可塑剤(D)が少なく、十分な粘着力が発揮されていないためにリワーク可能であり、貼付後、時間の経過とともに被着体との界面に位置する可塑剤(D)が増えて十分な粘着力を発揮できるようになると考えられる。熱伝導性感圧接着剤組成物(F)についても同様のことが考えられる。
【0083】
本発明に用いる可塑剤(D)の具体例としては、東亜合成株式会社製、「ARUFON UG−4000」(「ARUFON」は登録商標。)などを挙げることができる。
【0084】
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)に使用する可塑剤(D)の量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部として、3質量部以上25質量部以下であり、4質量部以上22質量部以下であることが好ましく、4質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。可塑剤(D)の含有量を上記範囲とすることによって、上述したように、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の粘着力を調整することができる。一方、可塑剤(D)の含有量が少な過ぎれば熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の粘着力が不十分となり、可塑剤(D)の含有量が多過ぎれば熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を成形できなくなる虞がある。
【0085】
<リン酸エステル(C)>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)には、リン酸エステル(C)を用いることが好ましい。リン酸エステル(C)を用いることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の優れた難燃性を付与し易くなる。また、リン酸エステル(C)を多量に使用すると熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を成形することが困難になるが、リン酸エステル(C)及び上記熱伝導性フィラー(B1)を併用することによって、リン酸エステル(C)の使用量を抑えても熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の難燃性を向上させることができ、成形性も良好とし易くなる。
【0086】
リン酸エステル(C)は、25℃における粘度が3000mPa・s以上であることが好ましい。リン酸エステル(C)の粘度を上記範囲とすることで、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の成形性が悪くなることを防止し易くなる。なお、本発明においてリン酸エステルの「粘度」とは、以下に説明する方法によって測定した粘度を意味する。
【0087】
(リン酸エステルの粘度測定方法)
リン酸エステルの粘度測定には、B型粘度計(東京計器株式会社製)を用いて、以下に示す手順で行う。
(1)常温の環境でリン酸エステルを300ml計量し、500mlの容器に入れる。
(2)攪拌用ロータNo.1、2、3、4、5、6、7から、いずれかを選択し、粘度計に取り付ける。
(3)リン酸エステルが入った容器を粘度計の上に置き、ロータを該容器内の縮合リン酸エステルに沈める。このとき、ロータの目印となる凹みが丁度、リン酸エステルの液状界面にくるように沈める。
(4)回転数を20、10、4、2の中から選択する。
(5)攪拌スイッチを入れ、1分後の数値を読み取る。
(6)読み取った数値に、係数Aを掛け算した値が粘度[mPa・s]となる。
なお、係数Aは、下記表1に示すように、選択したロータNo.と回転数とから決まる。
【0088】
【表1】

【0089】
また、リン酸エステル(C)は、大気圧下での15℃以上100℃以下の温度領域において常に液体であることが好ましい。リン酸エステル(C)は、混合する際に液体であれば、作業性が良く、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を成形することが容易になる。リン酸エステル(C)を含んだ熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を成形する際、15℃以上100℃以下の環境で、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を構成する各物質を混合することが好ましい。混合時の温度を上記範囲とすることによって、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)のガラス転移温度以上とし、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)に含まれる単量体等の揮発あるいは重合反応が始まってしまうことを防止し易くなるため、環境性及び作業性を良くすることができる。
【0090】
本発明には、リン酸エステル(C)として、縮合リン酸エステルも非縮合リン酸エステルも用いることができる。ここでいう「縮合リン酸エステル」とは、1分子内にリン酸エステル部位が複数存在するものを意味し、「非縮合リン酸エステル」とは、1分子内にリン酸エステル部位が1つだけ存在するものを意味する。これまでに説明した条件を満たすリン酸エステル(C)の具体例を以下に列記する。
【0091】
縮合リン酸エステルの具体例としては、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)などの芳香族縮合リン酸エステル;ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェートなどの含ハロゲン系縮合リン酸エステル;非芳香族非ハロゲン系縮合リン酸エステル;などが挙げられる。これらの中でも、比重が比較的小さく、有害物質(ハロゲンなど)の放出の危険がなく、入手も容易であることなどから、芳香族縮合リン酸エステルが好ましく、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)がより好ましい。
【0092】
非縮合リン酸エステルの具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどの芳香族リン酸エステル;トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;などが挙げられる。この中でも、有害物質(ハロゲンなど)が発生しないことなどから、芳香族リン酸エステルが好ましい。
【0093】
リン酸エステル(C)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0094】
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)にリン酸エステル(C)を使用する場合、その量は、(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部として、45質量部以上190質量部以下であることが好ましく、55質量部以上150質量部以下であることがより好ましく、70質量部以上120質量部以下であることがさらに好ましい。リン酸エステル(C)の含有量を上記範囲とすることによって、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)又は熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の難燃性を向上させやすくなる。
【0095】
<その他の添加剤>
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)には、上述した物質以外にも、上述した物質を配合することによる上記効果を妨げない範囲で、公知の各種添加剤を添加することもできる。公知の添加剤としては、発泡剤(発泡助剤を含む。);上述した熱伝導性フィラー(B)以外の金属の水酸化物や金属塩水和物などの難燃性熱伝導無機化合物;ガラス繊維;膨張化黒鉛粉やPITCH系炭素繊維などの上述した熱伝導性フィラー(B)以外の熱伝導性無機化合物;外部架橋剤;カーボンブラック、二酸化チタンなど顔料;クレーなどのその他の充填材;フラーレン、カーボンナノチューブなどのナノ粒子;ポリフェノール系、ハイドロキノン系、ヒンダードアミン系などの酸化防止剤;アクリル系ポリマー粒子、微粒シリカ、酸化マグネシウムなど増粘剤;などを挙げることができる。
【0096】
2.製造方法
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)は、これまでに説明した物質を混合した後、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とを行うことにより得ることができる。
【0097】
すなわち、本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)と、熱伝導性フィラー(B)と、リン酸エステル(C)と、可塑剤(D)と、を含み、可塑剤(D)がエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である混合組成物を作製する工程、並びに、該混合組成物中において、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とを行う工程、を含んでいる。なお、その他に使用できる物質や、各物質の好ましい含有比率などは上述した通りであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0098】
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の製造方法において、上記重合及び架橋反応を行う際には、加熱することが好ましい。当該加熱には、例えば、熱風、電気ヒーター、赤外線などを用いることができる。このときの加熱温度は、重合開始剤が効率良く分解し、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び多官能性単量体の重合が進行する温度が好ましい。温度範囲は、用いる重合開始剤の種類により異なるが、100℃以上200℃以下が好ましく、130℃以上180℃以下がより好ましい。
【0099】
本発明の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は、これまでに説明した物質を混合してシート状に成形した後、又はシート状に成形しながら、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とを行うことにより得ることができる。
【0100】
すなわち、本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)と、熱伝導性フィラー(B)と、リン酸エステル(C)と、可塑剤(D)と、を含み、可塑剤(D)がエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である混合組成物を作製する工程、並びに、該混合組成物をシート状に成形した後、又は、該混合組成物をシート状に成形しながら、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とを行う工程を含んでいる。なお、その他に使用できる物質や、各物質の好ましい含有比率などは上述した通りであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0101】
本発明の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法において、上記重合及び架橋反応を行う際には、加熱することが好ましい。当該加熱には、例えば、熱風、電気ヒーター、赤外線などを用いることができる。このときの加熱温度は、重合開始剤が効率良く分解し、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)及び多官能性単量体の重合が進行する温度が好ましい。温度範囲は、用いる重合開始剤の種類により異なるが、100℃以上200℃以下が好ましく、130℃以上180℃以下がより好ましい。
【0102】
上記混合組成物をシート状に成形する方法は、特に限定されない。好適な方法としては、例えば、剥離処理したポリエステルフィルムなどの工程紙の上に上記混合組成物を塗布してシートを成形する方法、必要ならば二枚の剥離処理した工程紙間に上記混合組成物を挟んでロールの間を通して押圧することでシートを成形する方法、及び、押出機を用いて上記混合組成物を押出し、その際にダイスを通して厚さを制御することでシートを成形する方法などが挙げられる。
【0103】
熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の厚さは0.05mm以上5mm以下にすることができる。熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の厚さを薄くすることによって、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の厚み方向の熱抵抗を低くすることができる。かかる観点から、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の厚さの上限は、好ましくは2mmである。一方、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の厚さの下限は、好ましくは0.1mmである。熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)にある程度の厚さをもたせることによって、当該熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を発熱体及び放熱体に貼付する際に空気を巻き込むことを防止し易く、結果として熱抵抗の増加を防止し、被着体への貼り付け工程における作業性を良好にし易くなる。
【0104】
また、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は、基材の片面又は両面に成形することもできる。当該基材を構成する材料は特に限定されない。当該基材の具体例としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ベリリウム銅などの熱伝導性に優れる金属、及び、合金の箔状物や、熱伝導性シリコーンなどのそれ自体熱伝導性に優れるポリマーからなるシート状物や、熱伝導性添加物を含有させた熱伝導性プラスチックフィルムや、各種不織布や、ガラスクロスや、ハニカム構造体などを挙げることができる。プラスチックフィルムとしては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、芳香族ポリアミドなどの耐熱性ポリマーのフィルムを使用することができる。
【0105】
3.使用例
本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は、電子機器に備えられる電子部品の一部として用いることができる。その際、放熱体のような基材上に直接的に成形して電子部品の一部として提供することもできる。当該電子機器及び電子部品の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)、発光ダイオード(LED)光源を有する機器における発熱部周囲の部品、自動車等のパワーデバイス周囲の部品、燃料電池、太陽電池、バッテリー、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、液晶、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、又は集積回路(IC)などの発熱部を有する機器や部品を挙げることができる。
【0106】
なお、本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の電子機器への使用方法の一例としては、LED光源を例にすると下記に記述するような使用方法を挙げることができる。すなわちLED光源に直接貼り付ける;LED光源と放熱材料(ヒートシンク、ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、グラファイトシート等)との間に挟みこむ;LED光源に接続された放熱材料(ヒートシンク、ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、グラファイトシート等)に貼り付ける;LED光源を取り囲む筐体として使用する;LED光源を取り囲む筐体に貼り付ける;LED光源と筐体との隙間を埋める;等の方法である。LED光源の用途例としては、透過型の液晶パネルを有する表示装置のバックライト装置(テレビ、携帯、PC、ノートPC、PDA等);車両用灯具;工業用照明;商業用照明;一般住宅用照明;等が挙げられる。
【0107】
また、LED光源以外の具体例としては、以下のものが挙げられる。すなわち、PDPパネル;IC発熱部;冷陰極管(CCFL);有機EL光源;無機EL光源;高輝度発光LED光源;高輝度発光有機EL光源;高輝度発光無機EL光源;CPU;MPU;半導体素子;等である。
【0108】
更に本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の使用方法としては、装置の筐体に貼り付けること等を挙げることができる。例えば、自動車等に備えられる装置に使用する場合、自動車に備えられる筐体の内部に貼り付ける;自動車に備えられる筐体の外側に貼り付ける;自動車に備えられる筐体の内部にある発熱部(カーナビ/燃料電池/熱交換器)と該筐体とを接続する;自動車に備えられる筐体の内部にある発熱部(カーナビ/燃料電池/熱交換器)に接続した放熱板に貼り付ける;こと等が挙げられる。
【0109】
なお、自動車以外にも、同様の方法で本発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)を使用することができる。その対象としては、例えばパソコン;住宅;テレビ;携帯電話機;自動販売機;冷蔵庫;太陽電池;表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED);有機ELディスプレイ;無機ELディスプレイ;有機EL照明;無機EL照明;有機ELディスプレイ;ノートパソコン;PDA;燃料電池;半導体装置;炊飯器;洗濯機;洗濯乾燥機;光半導体素子と蛍光体とを組み合わせた光半導体装置;各種パワーデバイス;ゲーム機;キャパシタ;等が挙げられる。
【0110】
更に、発明の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)及び熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)は上記の使用方法に留まらず、用途に応じて他の方法で使用することも可能である。例えば、カーペットや温暖マット等の熱の均一化のために使用する;LED光源/熱源の封止剤として使用する;太陽電池セルの封止剤として使用する;太陽電池のバックシ−トとして使用する;太陽電池のバックシ−トと屋根との間に使用する;自動販売機内部の断熱層の内側に使用する;有機EL照明の筐体内部に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層、放熱層、及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;有機EL照明の筐体内部の熱伝導層、エポキシ系の放熱層、及びその上に、乾燥剤や吸湿剤と共に使用する;人や動物を冷やすための装置、衣類、タオル、シート等の冷却部材に対し、身体と反対の面に使用する;電子写真複写機、電子写真プリンタ等の画像成形装置に搭載する定着装置の加圧部材に使用する;電子写真複写機、電子写真プリンタ等の画像成形装置に搭載する定着装置の加圧部材そのものとして使用する;制膜装置の処理対象体を載せる熱流制御用伝熱部として使用する;制膜装置の処理対象体を載せる熱流制御用伝熱部に使用する;放射性物質格納容器の外層と内装の間に使用する;太陽光線を吸収するソーラパネルを設置したボックス体の中に使用する;CCFLバックライトの反射シートとアルミシャーシの間に使用する;こと等を挙げることができる。
【実施例】
【0111】
以下に、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、ここで用いる「部」や「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0112】
<粘着力>
以下の手順で、アルミニウム板に貼付した直後の粘着力、貼付してから6時間経過した後の粘着力、及び粘着力の向上率を評価した。結果を表2に示した。まず、後述する方法で作製した熱伝導性感圧接着性シート状成形体を10mm×10mmの大きさに裁断した試験片を用意した。この試験片をアルミニウム板に貼り付けて、試験片の上で200gのローラーを1往復させて試験片をアルミニウム板側に押圧した。次に、引張試験機にて試験片を挟み、アルミニウム板から試験片を引きはがすときの応力の平均値を求め、これをアルミニウム板に貼付した直後の粘着力(表2の「初期」)とした。このとき、引張速度は100mm/分とした。また、上記と同様の試験片について上記と同様にローラーで押圧し、アルミニウム板に貼り付けてから23℃の環境下で6時間放置した後に上記と同様の方法で応力の平均値を求め、これをアルミニウム板に貼付してから6時間経過した後の粘着力(表2の「6時間後」)とした。さらに、アルミニウム板に貼付してから6時間経過した後の粘着力をアルミニウム板に貼付した直後の粘着力で除した値を向上率とした。測定は2回行い、その平均値をとった。
【0113】
<熱伝導性感圧接着性シート状成形体の作製>
(実施例1)
反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル94%とアクリル酸6%とからなる単量体混合物100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.03部及び酢酸エチル700部を入れて均一に溶解し、窒素置換後、80℃で6時間重合反応を行った。重合転化率は97%であった。得られた重合体を減圧乾燥して酢酸エチルを蒸発させ、粘性のある固体状の(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1−1)を得た。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1−1)の重量平均分子量(Mw)は270,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は3.1であった。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレン換算で求めた。
【0114】
次に、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びペンタエリスリトールジアクリレートを60:35:5の割合で混合した多官能性単量体1.0部と、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)88部と、有機過酸化物熱重合開始剤(1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン(1分間半減期温度は150℃である。))1.0部と、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体(東亜合成株式会社、ARUFON UG−4000(「ARUFON」は登録商標。))15部とを電子天秤で計量し、これらを上記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1−1)13部と混合した。混合には、恒温槽(東機産業株式会社製、商品名「ビスコメイト 150III」)及びホバートミキサー(株式会社小平製作所製、商品名「ACM−5LVT型」、容量:5L)を用いた。ホバート容器の温調は60℃に設定し、回転数目盛を3にして10分間攪拌した。この工程を第1混合工程という。
【0115】
次に、リン酸エステル(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名「レオフォス65」、化合物名「リン酸トリアリールイソプロピル化物」)70部と、水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、商品名「BF−083」、平均粒径:8μm、BET比表面積:0.8m/g)400部と、アルミナ(昭和電工株式会社製、商品名「AL−47−H」、平均粒径:2μm、BET比表面積:1.1m/g)300部と、を計量して上記ホバート容器に投入し、ホバート容器の温調を60℃に設定し、回転数目盛を5にして10分間攪拌した。この工程を第2混合工程という。
【0116】
次に、上記第1及び第2混合工程を経て得た混合組成物を、厚さ75μmの離型PETフィルム上に垂らし、当該混合組成物上にさらに、厚さ75μmの他の離型PETフィルムを被せた。混合組成物が離型PETフィルムに挟持されたこの積層体を、両者の間隔を0.45mmにしたロールの間を通し、シート状にした。その後、当該積層体をオーブンに投入し、150℃で15分間加熱した。この加熱工程によって、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合及び架橋反応させ、シート(G1)を得た。なお、シート(G1)中の残存単量体量から(メタ)アクリル酸エステル単量体の重合転化率を計算したところ、99.9%であった。
【0117】
(実施例2、3、及び比較例1乃至5)
各物質の配合を表2に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2、3に係るシート(G2、G3)及び比較例1〜5に係るシート(GC1〜GC5)を作製した。評価結果を表2に示す。なお、比較例3ではエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体15部にかえて無官能基(メタ)アクリル酸エステル重合体(東亜合成株式会社、ARUFON UP−1110(「ARUFON」は登録商標。))10部、比較例4ではエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体15部にかえてアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体(東亜合成株式会社、ARUFON US−6110(「ARUFON」は登録商標。))15部、比較例5ではエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体15部にかえて可塑剤として一般的によく用いられているアジピン酸系ポリエステル(株式会社ADEKA製、PN−350)15部をそれぞれ用いた。
【0118】
【表2】

【0119】
表2に示すように、実施例1乃至3に係るシート(G1乃至G3)は、いずれも貼付直後の粘着力が低くてリワーク可能であり、6時間経過後には強い粘着力を発揮していた。すなわち、本発明によれば、貼付直後にはリワーク可能であり、所定の時間を経過した後には強い粘着力を発揮することができる熱伝導性感圧接着性シート状成形体を提供できることがわかった。一方、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の配合量が多かった比較例2、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体にかえて無官能基(メタ)アクリル酸エステル重合体を用いた比較例3、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体にかえてアジピン酸系ポリエステルを用いた比較例4では、作製時に用いた離型PETフィルムから剥離することができなかった。また、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体の配合量が少なかった比較例1に係るシート(GC1)は、貼付直後の粘着力がやや弱く、貼り付けてから6時間経過した後でも粘着力も弱く、粘着力の向上率が低かった。エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体にかえてアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体を用いた比較例3に係るシート(GC3)は、貼付直後の粘着力がやや強く、6時間経過した後の粘着力はやや弱く、粘着力の向上率が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、
熱伝導性フィラー(B)を200質量部以上1200質量部以下と、
可塑剤(D)を3質量部以上25質量部以下と、を含み、
前記可塑剤(D)がエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である混合組成物中において、
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とが行われてなる、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、
熱伝導性フィラー(B)を200質量部以上1200質量部以下と、
可塑剤(D)を3質量部以上25質量部以下と、を含み、
前記可塑剤(D)がエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である混合組成物をシート状に成形した後、又は前記混合組成物をシート状に成形しながら、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とが行われてなる、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)。
【請求項3】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、
熱伝導性フィラー(B)を200質量部以上1200質量部以下と、
可塑剤(D)を3質量部以上25質量部以下と、を含み、
前記可塑剤(D)がエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である混合組成物を作製する工程、並びに、
前記混合組成物中において、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とを行う工程、
を含む、熱伝導性感圧接着剤組成物(F)の製造方法。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物(A)を100質量部と、
熱伝導性フィラー(B)を200質量部以上1200質量部以下と、
可塑剤(D)を3質量部以上25質量部以下と、を含み、
前記可塑剤(D)がエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル重合体である混合組成物を作製する工程、並びに、
前記混合組成物をシート状に成形した後、又は、前記混合組成物をシート状に成形しながら、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)の重合反応と、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A1)及び/又は前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(α1)由来の構造単位を含む重合体の架橋反応とを行う工程、
を含む、熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)の製造方法。
【請求項5】
放熱体及び該放熱体に貼付された請求項1に記載の熱伝導性感圧接着剤組成物(F)、又は、放熱体及び該放熱体に貼付された請求項2に記載の熱伝導性感圧接着性シート状成形体(G)、を備えた電子機器。

【公開番号】特開2013−95779(P2013−95779A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237378(P2011−237378)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】