説明

熱伝導性材料、熱伝導シート、層間絶縁膜及びその製造方法

【課題】 特別な工程を必要とすることなく、製膜後に加熱を行うことで、熱伝導性微粒子を、高分子(ポリマー)ブレンド中の相分離構造により制御された伝熱経路中に,自発的かつ選択的に含有させることにより、伝熱経路が精密に制御された、高熱伝導性と柔軟性及び加工性を併せ持つ熱伝導性材料を提供すること。
【解決手段】 本発明の熱伝導性材料は、高分子マトリクス中に熱伝導性微粒子が分散されている構造の熱伝導性材料であって、上記高分子マトリクスを形成する高分子が、2種以上の高分子成分を含むポリマーブレンドであり、該ポリマーブレンドがシリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成し、該微粒子を一方の相に偏在させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性材料及びその製造方法に関し、特に放熱性、耐熱性及び加工性の面で優れた熱伝導性材料に関する。詳しくは2種類以上の高分子相が分散してシリンダー型又は共連続型の相分離構造を取り、一方の相に熱伝導性微粒子を偏在させた放熱性に優れる熱伝導性材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器等に使用されているCPUやIC等の電子部品は、その集積度の向上及び動作の高速化により消費電力が増大すると共に発熱量も増大し、電子機器の誤動作や電子部品自体の故障の一因となっているため、その放熱対策が大きな問題となっている。また、パワーデバイス等通常のICに比べて大電力化、高速・高周波化が必要な大規模LSIにおいては、多層銅配線間の層間絶縁膜の熱伝導性向上が求められている。
【0003】
従来から、電子機器等においては、その使用中に電子部品の温度上昇を抑えるために、
銅やアルミニウム等、熱伝導率の高い金属板を用いたヒートシンクが使用されている。このヒートシンクは、その電子部品が発生する熱を伝導し、その熱を外気との温度差によって表面から放出する。電子部品から発生する熱をヒートシンクに効率よく伝えるために、ヒートシンクを電子部品に密着させる必要があり、熱伝導シートなどを電子部品とヒートシンクとの間にインターフェイスとして用い、電子部品の効率的な熱伝導を行っている。また、電子部品から発生する熱をヒートシンクに効率よく伝えるためには、シートの厚み方向への熱伝導性が高いことが重要である。
【0004】
このような熱伝導シートとしては、従来、高分子物質中に、酸化アルミニウム等の金属酸化物、窒化アルミニウム等の金属窒化物、炭化珪素、カーボンブラックなどの熱伝導性微粒子を含有してなるもの、弾性高分子物質中に、金属繊維、カーボン繊維などの熱伝導性繊維を含有してなるものが知られている。
【0005】
しかし、従来の熱伝導性微粒子を含有してなる熱伝導性シートにおいては、熱伝導性微粒子間に高分子物質が介在する、すなわち熱伝導が熱伝導性微粒子の他に熱伝導性の低い高分子物質を介して行われ、しかも伝熱経路の構造が,直線的でなく複雑なものとなるので、熱伝導性微粒子自体の有する高い熱伝導性を十分に発揮させることができず、従って、熱伝導シート自体が必ずしも高い熱伝導性を有するものではない。また、熱伝導性シートの熱伝導性を高めるためには、高分子物質中に含有される熱伝導性微粒子の割合を高くすることが考えられるが、このような熱伝導シートは、その硬度が高く柔軟性に乏しいものとなるため,加工の難易度が高く,被処理体を十分に密着させることが困難となる。
【0006】
更に、熱伝導性シートは絶縁性であることが望ましいため、カーボンブラックなど電気伝導性(導電性)の熱伝導性微粒子を用いた場合には,粒子の割合を高くすることができない。
【0007】
高熱伝導性と柔軟性の両立を目指して特許文献1には、少なくとも2種類の高分子相が分散して海−島の相分離構造をとる高分子ブレンド物を用いて、海となる高分子相に熱伝導性充填材を偏在させることで、その他の島となる高分子相に柔軟性を付与させる方法が開示されている。
【0008】
また、厚み方向への熱伝導性を向上させるために、特許文献2では、柔軟性を有する高分子材料よりなるシート基材中に、磁性を示す熱伝導性微粒子及び熱伝導性繊維が厚み方向に伸びるよう配列された状態で含有させる方法が開示されており、熱伝導性微粒子の連鎖及び熱伝導性繊維による厚み方向に伸びる伝熱経路の形成により、熱伝導性微粒子および熱伝導性繊維の含有割合が小さくても、厚み方向の熱伝導性が向上することが挙げられている。
【0009】
また、特許文献3では、熱液晶性高分子の剛直な分子鎖を一定方向に配向制御させることで厚み方向の熱伝導性を高める方法が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開2005−255867号公報
【特許文献2】特開2003−26828号公報
【特許文献3】特開2004−43629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1では、海−島の相分離構造をとる高分子ブレンド物の、島となる相に柔軟性を付与させたものの、熱伝導性微粒子が海となる相に均一に分散してしまうために、伝熱経路を精密に制御することができず,また特許文献2及び3では、厚み方向へ熱伝導性粒子または熱伝導性繊維を配列させるために、成形前の加熱溶融状態において特定の方向に磁場を印加させる特別な工程が必要であり、この工程が該製品の加工性及び生産性を低下させるという問題がある。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、特別な工程を必要とすることなく、製膜後に加熱を行うことで、熱伝導性微粒子を、高分子(ポリマー)ブレンド中の相分離構造により制御された伝熱経路中に,自発的かつ選択的に含有させることにより、伝熱経路が精密に制御された、高熱伝導性と柔軟性及び加工性を併せ持つ熱伝導性材料を提供することにある。また、本発明の目的は、上記熱伝導性材料を容易に製造することのできる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、特定のポリマーブレンド系を用いた高分子マトリクス中に熱伝導性微粒子を偏在分散させることにより、上記目的を達成し得るという知見を得、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、高分子マトリクス中に熱伝導性微粒子が分散されている構造の熱伝導性材料であって、上記高分子マトリクスを形成する高分子が、2種以上の高分子成分を含むポリマーブレンドであり、該ポリマーブレンドがシリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成し、該微粒子を一方の高分子相に偏在させたことを特徴とする熱伝導性材料を提供するものである。なお、ここでいう偏在とは、熱伝導性微粒子が、一方の高分子相により多く析出していることを意味し、一方の高分子相のみに析出している必要はない。
上記熱伝導性微粒子としては金属性微粒子が挙げられる。
上記ポリマーブレンドは、例えば上記熱伝導性微粒子の前駆体又は熱伝導性微粒子との親和性の異なる2種以上の高分子成分を含有する。
上記ポリマーブレンドとしては、200℃ 以上の耐熱性を有する高分子成分又はその前駆体高分子成分を含有するものが挙げられる。
【0015】
上記ポリマーブレンドとしては、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の熱伝導性微粒子が偏在する相の主成分として、分子構造内に硫黄原子を含有する高分子成分を含むものが挙げられる。
上記ポリマーブレンドとしては、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の熱伝導性微粒子が偏在する相の主成分として、分子構造内にジスルフィド結合を含有する高分子成分を含むものが挙げられる。
上記ポリマーブレンドとしては、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の熱伝導性微粒子が偏在する相の主成分として、分子構造内にスルフィド結合を含有する高分子成分を含むものが挙げられる。
【0016】
また、本発明は、2種以上の高分子成分を含有し、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成し得るポリマーブレンドの溶液に、有機溶媒に可溶な熱伝導性微粒子の前駆体を溶解する工程、及び上記ポリマーブレンドの溶液を製膜してフィルムとした後、加熱により熱伝導性微粒子又は微粒子凝集体を一方の高分子相に偏在させ、自発的に析出させる工程を有することを特徴とする、上記熱伝導性材料の製造方法を提供する。 上記熱伝導性微粒子の前駆体としては、無機金属化合物、有機金属化合物、無機金属化合物と有機金属化合物との錯体、及び有機金属化合物と有機金属化合物との錯体からなる群から選択されるものが挙げられる。
上記ポリマーブレンドとしては、上記熱伝導性微粒子の前駆体又は熱伝導性微粒子との親和性の異なる2種以上の高分子成分を含有するものが挙げられる。
上記ポリマーブレンドとしては、200℃ 以上の耐熱性を有する高分子成分又はその前駆体高分子成分を含有するものが挙げられる。
【0017】
上記ポリマーブレンドとしては、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の微粒子が偏在する相の主成分として、分子構造内に硫黄原子を含有する高分子成分を含むものが挙げられる。
上記ポリマーブレンドとしては、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の微粒子が偏在する相の主成分として、分子構造内にジスルフィド結合を含有する高分子成分を含むものが挙げられる。
上記ポリマーブレンドとしては、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の微粒子が偏在する相の主成分として、分子構造内にスルフィド結合を含有する高分子成分を含むものが挙げられる。
【0018】
また、本発明は、上記熱伝導性材料を用いて作製された熱伝導シートを提供する。
また、本発明は、上記熱伝導性材料の製造方法によって得られた熱伝導性材料を用いて作製された熱伝導シートを提供する。
また、本発明は、上記熱伝導性材料を用いて作製された層間絶縁膜を提供する。
また、本発明は、上記熱伝導性材料の製造方法によって得られた熱伝導性材料を用いて作製された層間絶縁膜を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の熱伝導性材料は、熱伝導性微粒子の前駆体又は熱伝導性微粒子との親和性の異なる2種以上の高分子成分からなり、一方の高分子相に熱伝導性微粒子を偏在させ、またシリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成することで、熱伝導性微粒子を一定方向に配向させる効果を有するため、熱伝導性微粒子の含有割合が低くても、高い熱伝導特性を得ることができる。また、本発明の熱伝導性材料は、加工及び取扱いが容易であり、耐熱性、耐湿性、柔軟性、機械的強度に優れ、主に熱伝導シート及び高熱伝導性層間絶縁膜の低価格化及び作成プロセスの効率化に寄与し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱伝導性材料は、高分子マトリクス中に熱伝導性微粒子が分散されている構造を含む熱伝導性材料であり、上記高分子マトリクスを形成する高分子が、2種以上の高分子成分を含むポリマーブレンドであり、該ポリマーブレンドがシリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成し得るものである。
【0021】
本発明の熱伝導性材料を構成する高分子マトリクスを構成する高分子は、2種以上の高分子成分を含むポリマーブレンドであり、該ポリマーブレンドがシリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成し得るものである。ポリマーブレンドがシリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成し得るものであるので、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の一方の相に熱伝導性微粒子が効率的に取り込まれ、熱伝導性材料としての性能を十分に発揮することが可能となる。
【0022】
従って、ポリマーブレンドは、熱伝導性材料を構成する熱伝導性微粒子の前駆体又は熱伝導性微粒子との親和性の異なる2種以上の高分子成分を含有することが好ましい。なお,これ以後,高分子成分と熱伝導性微粒子前駆体との親和性について記述する場合は,高分子成分と熱伝導性微粒子との親和性についても同義として含むものとする.また、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の一方の相に熱伝導性微粒子を効率よく取り込ませるためには、熱伝導性微粒子前駆体との親和性が大きく異なる2種の高分子を用いることが好ましい。すなわち、熱伝導性微粒子の前駆体と親和性の高い高分子成分と、熱伝導性微粒子の前駆体と親和性の低い高分子成分とを含有することが好ましい。このように、熱伝導性微粒子の前駆体と親和性の高い高分子成分と、熱伝導性微粒子の前駆体と親和性の低い高分子成分とを含有することにより、本発明の熱伝導性材料は、ポリマーブレンドがシリンダー方又は共連続方の相分離構造を形成する。本発明においては、熱伝導性微粒子の前駆体と親和性の高い高分子成分、及び熱伝導性微粒子の前駆体と親和性の低い高分子成分は、それぞれ2種以上を含むものであってもよい。熱伝導性微粒子の前駆体、特に金属性微粒子の前駆体との親和性の高い高分子としては、例えば、分子構造内にジスルフィド結合又はスルフィド結合を含む高分子、すなわち、分子構造内に硫黄原子を含有する高分子が挙げられる。また、熱伝導性微粒子前駆体、特に金属性微粒子前駆体との親和性の低い高分子としては、分子構造内に多数のフッ素を含有する高分子が挙げられる。このような2種の高分子のブレンド物は、後述する金属性微粒子前駆体との親和性の差が大きいため、適当な溶媒に溶解して混合したブレンド物を製膜・乾燥した際に、ポリマーブレンドがシリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成する。また、たとえ製膜・乾燥時に顕著な共連続型相分離構造が観測されない場合であっても,その後の熱硬化(熱イミド化)過程において共連続型の相分離構造を発現する場合は,使用することができる.この過程において,シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際に、金属性微粒子前駆体との親和性が大きい高分子相に効率よく金属性微粒子の前駆体が取り込まれ,結果として金属性微粒子が高い濃度で析出する。分子構造内に硫黄原子を含む高分子及び分子構造内にフッ素原子を含む高分子成分については後述する。
【0023】
後述するように、本発明の熱伝導性材料は、熱伝導性微粒子(金属性微粒子)を加熱処理により析出させて製造されるので、上記高分子は、好ましくは200℃以上の耐熱性を有する高分子が好ましく、更に好ましくは、ハンダ耐熱性の目安となる270℃以上の耐熱性を有する有機系高分子又はその前駆体高分子であることが好ましい。このような高分子としては、例えば、芳香族系ポリイミド、芳香族系ポリアミド、芳香族系ポリベンゾオキサゾール、芳香族系ポリベンゾイミダゾール、芳香族系ポリベンゾチアゾール、芳香族系ポリカーボネート、及びこれらの前駆体高分子等が挙げられる。
【0024】
本発明において用いられる高分子としては、例えば、ポリイミドやその前駆体高分子であるポリアミド酸やポリアミド酸エステル等が挙げられ、基本的に全てのポリアミド酸が使用可能であるが、上述した特性を有するものが好ましく用いられる。用いられる高分子としては、例えば、以下に示すテトラカルボン酸又はその誘導体とジアミンとから製造されるポリアミド酸、ポリアミド酸塩、ポリアミド酸エステル化物、ポリイミド等が挙げられる。テトラカルボン酸並びにその誘導体としての酸二無水物、酸塩化物、エステル化物等としては、以下のものが挙げられる。本発明の熱伝導性材料においては、上述したように、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の金属性微粒子との親和性の高い高分子としては含硫黄ポリイミドが好ましく、金属性微粒子との親和性の低い高分子としては、分子構造内にフッ素を含有する含フッ素ポリイミドが好ましい。以下、それぞれについて説明する。
【0025】
分子構造内にフッ素を含有する含フッ素ポリイミドを得るためのテトラカルボン酸としては、例えば、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジ(トリフルオロメチル) ピロメリット酸、ジ(ヘプタフルオロプロピル) ピロメリット酸、ペンタフルオロエチルピロメリット酸、ビス{3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸、2, 2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシビフェニル、2,2’,5, 5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシビフェニル、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシベンゾフェノン、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ベンゼン、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(ジカルボキシフェノキシ)(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2,2−ビス{4−(3, 4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、ジフルオロピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3, 4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、ピロメリット酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2 ,3 ,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、2,3’,3,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6, 7−テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,7−テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,6−テトラカルボキシナフタレン、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルメタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン、2 ,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、1、3−ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0026】
ジアミンとしては、例えば、4−(1H,1H,11H−エイコサフルオロウンデカノ
キシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H−パーフルオロ−1−ブタノキシ
)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H−パーフルオロ−1−ヘプタノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H−パーフルオロ−1−オクタノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−ペンタフルオロフェノキシ−1,3−ジアミノベンゼン
、4−(2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4− (4−フルオロフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H,2H,
2H,−パーフルオロ−1−ヘキサノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,
1H,2H,2H−パーフルオロ−1−ドデカノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、2,5−ジアミノベンゾトリフルオライド、ビス(トリフルオロメチル)フェニレンジアミ
ン、ジアミノテトラ(トリフルオロメチル)ベンゼン、ジアミノ(ペンタフルオロエチル
)ベンゼン、2,5−ジアミノ(パーフルオロヘキシル ベンゼン、2,5−ジアミノ(パーフルオロブチル)ベンゼン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、オクタフルオロベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(p−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(アニリノ)オクタフルオロブタン、1,5−ビス(アニリノ)デカフルオロペンタン、1,7−ビス(アニリノ)テトラデカフルオロヘプタン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4, 4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4, 4’−ジアミノベンゾフェノン、p−ビス(4−アミノ− 2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ) ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ) テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(2−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2− ビス{4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジトリフルオロメチルフェニル}ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、2, 2−ビス{4−(4−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、ビス{(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ}ビフェニル、ビス[{(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ}フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[{2−(アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロイソプロピル]ベンゼン、ビス(2,3,5,6 )−テトラフルオロ−4−アミノフェニル)エーテル、1,3−ジアミノテトラフルオロベンゼン、1,4−ジアミノテトラフルオロベンゼン、4,4’−ビス(テトラフルオロアミノフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、2,5−ジアミノトルエン、2,3,5,6−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、ベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、3,3’−ジアセチルベンジジン、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ビス(アニリノ)エタン、4,4’−ジアミノ−p−テルフェニル、1,4−ビス(p−アミノフェニル)ベンゼン、4,4’−ジアミノ−p−クオーターフェニル、4, 4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス{4−(p−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)ジフェニルスルホン、ジアミノアントラキノン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、ビス(4−アミノフェニル) ジエチルシラン等が挙げられる。
【0027】
上述したように、本発明の熱伝導性材料においては、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の金属性微粒子との親和性の低い高分子としては、分子構造内にフッ素を含有する含フッ素ポリイミドが好ましいので、上述したテトラカルボン酸及びジアミンのうち、フッ素を含有するテトラカルボン酸又はフッ素を含有するジアミンを用いて得られる含フッ素ポリイミドが好ましい。テトラカルボン酸及びジアミンのいずれもがフッ素を含有するものであってもよく、いずれか一方がフッ素を含有するものであってもよい。
【0028】
分子構造内に硫黄原子を含有する、含硫黄ポリイミドを得るためのテトラカルボン酸と
しては、例えば、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルスルホン、チアスレ
ン−2,3,7,8−テトラカルボン酸−5,5,10,10−テトラオキシド、2,2’, 3,3’−テトラカルボキシジフェニルチオエーテル、2,3,3’,4’−テトラカルボキシジフェニルチオエーテル、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルチオエーテル、ピロメリット酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3, 3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、2,3’,3,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,7−テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,6−テトラカルボキシナフタレン、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルメタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン、2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、1、3−ビス(3、4−ジカルボキシフェニル)テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0029】
ジアミンとしては、例えば、2,2’−ベンジジンジスルホン酸、2,2’−ジチオジ
アニリン、4,4’−ジチオジアニリン、4,4’−チオジアニリン、2,2’−ジアミ
ノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ
ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ
)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキ
シ)ジフェニルスルホン、ビス(2 ,3 ,5 ,6 )−テトラフルオロ−4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ) ジフェニルスルホン、4, 4’−ビス(4−アミノフェノキシ) ジフェニルスルホン、2,2−ビス[4−{2−(4
−アミノフェノキシ)エトキシ}フェニル]スルホン、3,3’−ジスルホン酸−ビス{
4−(3−アミノフェノキシ)−フェニル}スルホン、3,3’,5,5’−テトラメチ
ル−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、3,7−ジアミノ−2,
8(6)−ジメチルジベンゾチオフェンスルホン、4,4’−ビス(6−アミノナフトキ
シ)ジフェニルスルホン、5,5’−ジメチルベンジジン−2,2’−ジスルホン酸、4
,4’−ジアミノジフェニルエーテル−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ビス(4−
イソシアナートフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(3−イソシアナート
フェノキシ)ジフェニルスルホン、3−(2’,4’−ジアミノフェノキシ)プロパンス
ルホン酸、2,2’−ビス(スルホプロポキシ)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,
3’−ビス(スルホプロポキシ)−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−
アミノフェニル)フルオレン−2,7−ジスルホン酸、2,5−ジアミノベンゼンスルホ
ン酸、4,5−ジアミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2,2’−ビス
(4−アミノフェノキシ)ビフェニル−5,5’−ジスルホン酸、4,4’−ビス(4−
アミノフェノキシ)ビフェニル−3,3’−ジスルホン酸、2−メチル−3,5−ジアミ
ノジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−ベンジジンテトラチオール、3,3’−
ベンジジンジチオール、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル
スルフィド、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトル
エン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、2,5−ジアミノトルエ
ン、2,3,5,6−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、ベンジジン、2,2’−
ジメチルベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン
、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、3, 3’−ジアセチルベンジジン、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ビス(アニリノ)エタン、4,4’−ジアミノ−p−テルフェニル、1,4−ビス(p−アミノフェニル)ベンゼン、4,4’−ジアミノ−p−クオーターフェニル、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス{4−(p−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)ジフェニルスルホン、ジアミノアントラキノン、1, 5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)ジエチルシラン等が挙げられる。
【0030】
上述したように、本発明の熱伝導性材料においては、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の金属性微粒子との親和性の高い高分子としては、硫黄原子を含む、含硫黄ポリイミドを用いることが好ましいので、上述したテトラカルボン酸及びジアミンのうち、硫黄原子を含有するテトラカルボン酸又は硫黄原子を含有するジアミンを用いて得られるポリイミドが好ましい。テトラカルボン酸及びジアミンのいずれもが硫黄原子を含有するものであってもよく、いずれか一方が硫黄原子を含有するものであってもよい。本発明の熱伝導性材料においては、ポリマーブレンドが、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成する必要がある。従って、金属性微粒子との親和性の低い高分子と、金属性微粒子との親和性の高い高分子とは、分子レベルで相互に相溶しないものを選択する。すなわち,本発明に用いる2種以上の高分子が混合された系において,少なくとも一方の成分がナノメートル以上の大きさの相(ドメイン)を形成し,単一相とはならない組み合わせを選択する.このように、分子レベルで相互に相溶しない高分子の組み合わせとしては、例えば、下記一般式(I)で表されるポリイミドの組み合わせを用いることが好ましい。
【0031】
【化1】

【0032】
上記一般式(I)中、n、n’は任意の数である。また、R(下記式(1)〜(9))、R(下記式(10)〜(17))は硫黄原子を含む下記のような構造が挙げられる。ただし、RまたはRのいずれかに硫黄原子を含む構造を用いればよく、必ずしもR、Rの両方に硫黄原子を含む構造を用いる必要はない。
【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【化4】

【0035】
上記一般式(I)中、R(下記式(18)〜(25))、R(下記式(26)〜(36))はフッ素を含む下記のような構造が挙げられる。ただし、RまたはRのいずれかにフッ素を含む構造を用いればよく、必ずしもR、Rの両方にフッ素を含む構造を用いる必要はない。
【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【化7】

【0038】
テトラカルボン酸とジアミンとからポリイミドを製造する方法に特に制限はないが、例えば、上記テトラカルボン酸とジアミンとを重縮合して得られるポリアミド酸を、加熱閉環することによって製造することができる。加熱閉環する方法に特に制限はなく、従来公知の方法が用いられる。本発明の熱伝導性材料においては、後述するような方法で、テトラカルボン酸及びジアミンを用いてポリイミドとすることができる。
【0039】
次に、高分子マトリクス中に分散される熱伝導性微粒子について説明する。
本発明の熱伝導性材料の高分子マトリクス中に分散される熱伝導性微粒子としては、貴金属、卑金属、金属酸化物、金属窒化物、金属ハロゲン化物、炭化珪素等からなる一種以上の微粒子(以下、金属性微粒子ともいう)が挙げられる。このような金属性微粒子の前駆体となる金属性ドーパントとしては、上記高分子(ポリイミドあるいはその前駆体であるポリアミド酸およびその誘導体) を溶解することのできる有機溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒が一般に適しているが、高分子と金属性ドーパントの双方が溶解すれば特に制限はない。)に可溶であるものが挙げられ、例えば、金属のハロゲン化物、金属酸化物、金属窒化物、金属の硝酸化合物、金属の酢酸化合物、金属のトリフルオロ酢酸化合物、金属のアセチルアセトン化合物、金属のトリフルオロアセチルアセトン化合物、金属のヘキサフルオロアセチルアセトン化合物等が挙げられる。上記金属としては、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、パラジウム、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、スズ、コバルト、チタン、マグネシウム、リチウム等が挙げられる。また、上記化合物に、アセチルアセトン、1,1,1−トリフルオロアセチルアセトン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンを混合することによって得られた有機金属錯体等も使用可能である。
【0040】
本発明の熱伝導性材料の高分子マトリクス中に分散される金属性微粒子のサイズ(直径)は、熱伝導性材料の表面形状や表面荒さに大きな影響を与えない範囲であれば特に制限はないが,通常は1nm〜1μm程度が好ましく,5nm〜100nm程度がさらに好ましい。
上記金属性微粒子は、個々の微粒子が一方向に引き延ばされた一次元的(異方的)形状を有するか、又は一次元的な形状を有しない微粒子が一次元的に配列した凝集体を形成していてもよい。なお,ここには一次元的(異方的)な形状を有する微粒子(群)が、さらに一次元的に配列している場合も含むものとする。
【0041】
本発明の熱伝導性材料の製造方法に特に制限はないが、後述する、熱伝導性材料の製造方法によって製造することができる。
本発明の熱伝導性材料の厚みに特に制限はないが、通常は10〜50μm程度である。
【0042】
次に、本発明の熱伝導性材料の製造方法について説明する。
本発明の熱伝導性材料の製造方法は、2種以上の高分子成分を含有し、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成し得るポリマーブレンドの溶液に、有機溶媒に可溶な熱伝導性微粒子の前駆体を溶解する工程、及び上記ポリマーブレンドの溶液を製膜してフィルムとした後、加熱により熱伝導性微粒子又は微粒子凝集体を一方の高分子相に偏在させ、自発的に析出させる工程を有することを特徴とする。
【0043】
本発明の熱伝導性材料の製造方法においては、2種以上の高分子成分を含有し、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成し得るポリマーブレンドの溶液を用いる。このようなポリマーブレンドとしては、上述した高分子成分を含有するものが用いられる。
【0044】
本発明の熱伝導性材料の製造方法においては、上記高分子を原料として用いる。これらの高分子又はその前駆体高分子を溶解することのできる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ− ブチロラクトンなどの極性有機溶媒が一般に適しているが、高分子と熱伝導性微粒子の前駆体の双方が溶解すれば特に制限はない。本発明の熱伝導性材料の製造方法においては、上述した高分子成分を用いており、このため、この高分子成分を上記溶媒に溶解し混合した後、製膜・乾燥した際に、ポリマーブレンドが、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成するような組み合わせで、高分子の原料を選択する必要がある。
【0045】
本発明の熱伝導性材料の製造方法においては、分散してシリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の、金属性微粒子の前駆体との親和性の高い相(以下、本明細書において「高金属親和性相」ともいう)を構成する高分子の溶液と、金属性微粒子の前駆体との親和性の低い相(以下、本明細書において「低金属親和性相」ともいう)を構成する高分子を混合し、ポリマーブレンドの溶液とすることが好ましい。本発明においては、高金属親和性相を構成する高分子として2種以上の高分子成分を用いてもよく、また、低金属親和性相を構成する高分子として2種以上の高分子成分を用いてもよい。
高金属親和性相を構成する高分子の溶液に、低金属親和性相を構成する高分子の溶液を添加した後、撹拌してポリマーブレンドの溶液を調製する。この撹拌によって、一般にナノメートルレベル〜ミクロンレベルで分散した相分離構造が形成される。通常の撹拌子と撹拌機(スターラー)を用いる場合,撹拌操作は20分〜24時間の間で行うことが好ましい。一方,自転公転ミキサーを用いる場合は,20分以内の撹拌操作で十分であることが多い.この時、ポリアミド酸やポリアミドエステルのような重縮合系高分子を用いた場合には、この撹拌中に、一部がアミド交換反応やエステル交換反応に代表される主鎖の交換反応によりブロック共重合体となるため、攪拌時間を長くしすぎると,相分離の構造や形態(ドメインの大きさ)が変化する可能性がある。
【0046】
次いで、ポリマーブレンドの溶液に、有機溶媒に可溶な熱伝導性微粒子の前駆体を溶解させる。ここで,熱伝導性微粒子としては、例えば、貴金属、卑金属、金属酸化物、金属窒化物、金属ハロゲン化物、炭化珪素等からなる一種以上の微粒子(以下、金属性微粒子ともいう)が挙げられる。これら金属性微粒子の前駆体としては、例えば、無機金属化合物、有機金属化合物、無機金属化合物と有機金属化合物との錯体、及び有機金属化合物と有機金属化合物との錯体からなる群から選択される一種以上(以下、本明細書において「金属性ドーパント」という)が挙げられる。金属性ドーパントとしては、上述した金属性微粒子において説明したものが挙げられる。
【0047】
ポリマーブレンドの溶液に金属性ドーパントを添加した後、見かけ上、相溶するまで撹拌する。撹拌は1時間以上行うことが好ましい。撹拌を行うことによって、金属性ドーパントが高金属親和性相に優先的に取り込まれ、後に行う加熱時にポリマーブレンドのシリンダー型又は共連続型の相分離構造が熱伝導経路形成の役割を果たす。このため、上述したように、ポリマーブレンドは、熱伝導性材料を構成する金属性微粒子との親和性の異なる2種以上の高分子成分を含有することが好ましい。前駆体高分子を用いる場合、その前駆体高分子が、金属性微粒子の前駆体との親和性の異なるような組み合わせを選択すればよい。なお、シリンダー型又は共連続型の相分離構造が形成した際に、金属性微粒子を取り込んだ高金属親和性相が効率の良い熱伝導経路として機能するためには、高金属親和性相が厚み方向に連続かつ、低金属親和性相の割合ができるだけ大きな混合比率となるように用いることが好ましい。
一方,金属性ドーパントをまず,高金属親和性相を構成する高分子の溶液に添加し,撹拌して安定な溶液としたあと,これに低金属親和性相を構成する高分子の溶液を添加し、撹拌してポリマーブレンドの溶液を調製することも可能である。この混合操作によっても、ナノメートルレベル〜ミクロンレベルで分散した相分離構造が形成される。
【0048】
高金属親和性相を構成する高分子成分と、低金属親和性相を構成する高分子成分との混合比率は、モル比で20:80〜80:20(高金属親和性成分:低金属親和性成分)程度であることが好ましい。高金属親和性相の比率が上記範囲未満であると、高金属親和性相が厚み方向に不連続となる場合があり、一方、上記範囲を超えると、金属性微粒子が高金属親和性相内で均一に分散してしまうため、効率の良い熱伝導経路が形成されない場合がある。すなわち、高分子成分と、低金属親和性相を構成する高分子成分との混合比率が上記範囲内であるため、得られる熱伝導性材料が、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成する。
【0049】
ポリマーブレンドと、金属性ドーパントとの混合比率は、モル比で100:5〜100:100(ポリマーブレンド:金属性ドーパント)程度であることが好ましい。金属性ドーパントの量が上記範囲未満であると、金属性微粒子あるいは金属性微粒子凝集体の析出量が不十分となるため熱伝導性が十分でなくなる場合があり、一方、上記範囲を超えると、金属性微粒子が過度に凝集するため絶縁性及び柔軟性が低下する場合がある。
【0050】
また、上記混合溶液は、上述した有機溶媒を含有するが、有機溶媒の含有量は、混合溶液中、70〜95質量%であることが好ましい。有機溶媒の含有量が上記範囲未満であると、高分子、金属性微粒子又は金属性ドーパントの含有量が濃くなりすぎ、粘度が高くなりすぎるため撹拌が困難になる場合があり、一方、上記範囲を超えると、粘度が低くなりすぎるためフィルム成型が困難になる場合がある。
【0051】
次いで、上記ポリマーブレンドと、金属性ドーパントとの混合溶液(以下、混合溶液という)を製膜してフィルムとする。
製膜してフィルムを形成する方法に特に制限は無いが、例えば、上記混合溶液を用いて、スピンコート法又はキャスト法により行うことができる。スピンコート法又はキャスト法により、溶液から薄膜化して製膜することができる。スピンコート法及びキャスト法は、従来公知の方法によって実施可能である。製膜に際しては加熱を行ってもよく、加熱を行う場合、その温度は室温(25℃)〜70℃程度でよい。
上記混合溶液を基板上に塗布し製膜してフィルムとした後、加熱処理によって熱イミド化(ポリアミド酸の加熱による脱水閉環)を行うと同時に、熱により金属性ドーパントが還元され、金属性微粒子又は微粒子凝集体を高金属親和性相に選択的に析出させることが可能となる。この場合の加熱処理の温度は、閉環反応がほぼ終了する温度(約200℃)よりも十分に高い方が望ましい。
【0052】
本発明の熱伝導性材料の製造方法によれば、金属に対して親和性の異なる2種以上の高分子相を用いて、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成させ、金属性微粒子又は微粒子凝集体を高金属親和性相に選択的に析出させることで、伝熱経路が形成され、熱伝導性材料として優れたものを得ることができる。
また、本発明の熱伝導性材料の製造方法によれば、加工及び取扱いが容易であり、耐熱性、耐湿性、柔軟性及び機械的強度に優れる熱伝導性材料を得ることができる。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例を記載して、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0054】
実施例1
3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFDB)とから合成されるポリアミド酸(ポリイミドの前駆体)のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(固形分濃度12%)と、BPDAとジスルフィド結合を有するジアミンである4,4’−ジチオジアニリン(DTDA)とから合成されるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(固形分濃度20%)を混合し、室温で8時間撹拌した。混合比率は、モル比でBPDA/TFDB:BPDA/DTDA=30:70とした。
【0055】
次いで、このポリマーブレンドに硝酸銀を加えて8時間撹拌した。混合比率は、モル比でポリマーブレンド:硝酸銀=100:20である。次いで、上記混合溶液を回転塗布(スピンコート)により、シリコンウェハ上に塗布し、窒素雰囲気下、70℃の温度で1時間熱処理をしてはく離できる程度に溶媒を蒸発させた。シリコンウェハからはく離したフィルムを、アルミ板上に貼付け、昇温速度4.6℃/分で300℃まで昇温させ、90分間保持した後、室温まで放冷することで、厚さ約20μmの熱伝導性フィルムを調整した。
【0056】
上述のようにして得られた熱伝導性フィルムについて、光学顕微鏡観察を行い、フィルムの厚み方向にシリンダー型の相分離構造が発現していることを確認した。図1にその像を示す。図1において、白く写っている部分が高金属親和性相1であり、黒く写っている部分が低金属親和性相2である。X線エネルギー分析において, 高金属親和性相1に価数ゼロの銀(金属銀)が選択的に析出していることを確認した。2種のポリマーが形成する相分離構造のサイズは約100μmであった。得られたフィルムは柔軟性や機械的強度にはやや乏しいものの,十分な絶縁性を有していた。
【0057】
実施例2
BPDAとDTDAとから合成されるポリアミド酸に代え、BPDAと4,4’−チオジアニリン(SDA)から合成されるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(固形分濃度12%)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ約15μmの熱伝導性フィルムを調整した。得られた熱伝導性フィルムについて、走査型電子顕微鏡による断面像観察を行い、フィルムの厚み方向に共連続型の相分離構造が発現していることを確認した。図2にその像を示す。図2において、白く写っている部分が高金属親和性相3であり、黒く写っている部分が低金属親和性相4である。X線エネルギー分析において, 高金属親和性相3に金属銀が選択的に析出していることを確認した。また,2種のポリマーが形成する相分離構造のサイズは約10μmであった。加えて,広角X線回折で観測された金属銀に帰属される回折ピークのスペクトル幅から推定した銀微結晶の粒径は,6.3nmであった.得られたフィルムは,熱伝導性シートや層間絶縁膜に必要な高い絶縁性と十分な柔軟性・機械特性を有していた。
【0058】
比較例1
BPDAとTFDBとから合成されるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(固形分濃度12%)と、BPDAとDTDAとから合成されるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(固形分濃度20%)を混合し、室温で8時間撹拌した。混合比率は、モル比でBPDA/TFDB:BPDA/DTDA=30:70とした。次いで、上記混合溶液を回転塗布(スピンコート)により、シリコンウェハ上に塗布し、窒素雰囲気下、70℃の温度で1時間熱処理をしてはく離できる程度に溶媒を蒸発させた。シリコンウェハからはく離したフィルムを、アルミ板上に貼付け、昇温速度4.6度/分で300度まで昇温させ、90分間保持した後、室温まで放冷することで、厚さ23μmの熱伝導性フィルムを調製した。
【0059】
比較例2
BPDAとDTDAとから合成されるポリアミド酸に代え、BPDAとSDAから合成されるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(固形分濃度12%)を用いた以外は、比較例1と同様の操作を行い、厚さ約16μmの熱伝導性フィルムを調製した。
【0060】
実施例3
BPDAとSDAから合成されるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(固形分濃度15%)に硝酸銀を加えて4時間撹拌した。次いで、BPDAとTFDBとから合成されるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(固形分濃度15%)を加えて4時間撹拌した。混合比率は、モル比でBPDA/TFDB:BPDA/SDA:硝酸銀=50:50:20とした。次いで、上記混合溶液を回転塗布(スピンコート)により、シリコンウェハ上に塗布し、窒素雰囲気下、70℃の温度で1時間熱処理をしてはく離できる程度に溶媒を蒸発させた。シリコンウェハからはく離したフィルムを、アルミ板上に貼付け、昇温速度4.6℃/分で300℃まで昇温させ、90分間保持した後、室温まで放冷することで、厚さ約25μmの熱伝導性フィルムを調整した。
【0061】
上述のようにして得られた熱伝導性フィルムについて、走査型電子顕微鏡による断面像観察を行い、フィルムの厚み方向に共連続型の相分離構造が発現していることを確認した。図3にその像を示す。図3において、白く写っている部分が高金属親和性相5であり、黒く写っている部分が低金属親和性相6である。2種のポリマーが形成する相分離構造のサイズは約15μmであった。得られたフィルムは,熱伝導性シートや層間絶縁膜に必要な高い絶縁性と十分な柔軟性・機械特性を有していた。
【0062】
比較例3
ポリマーブレンドと硝酸銀の混合比率を、モル比でBPDA/TFDB:BPDA/SDA:硝酸銀=70:30:20とした以外は、実施例3と同様の操作を行い、厚さ約30μmの熱伝導性フィルムを調整した。上述のようにして得られた熱伝導性フィルムは,熱伝導性シートや層間絶縁膜に必要な高い絶縁性と十分な柔軟性・機械特性を有していたものの、走査型電子顕微鏡による断面像観察を行ったところ、2種のポリマーは、BPDA/TFDB相中に、直径約5μmの球状のBPDA/SDA相がフィルム内に均一に分散した、海島構造を有する相分離構造を形成していた。図4にその像を示す。図4において、白く写っている部分が高金属親和性相7であり、黒く写っている部分が低金属親和性相8である。
【0063】
比較例4
BPDAとTFDBとから合成されるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(固形分濃度12%)を回転塗布(スピンコート)により、シリコンウェハ上に塗布し、窒素雰囲気下、70℃の温度で1時間熱処理をしてはく離できる程度に溶媒を蒸発させた。その後、昇温速度4.6度/分で300度まで昇温させ、90分間保持した後、室温まで放冷することで、厚さ13μmの熱伝導性フィルムを調製した。
【0064】
比較例5
BPDAとTFDBとから合成されるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(固形分濃度12%)とに硝酸銀を加えて8時間撹拌した。混合比率は、モル比でBPDA/TFDB:硝酸銀=100:20である。次いで、上記混合溶液を回転塗布(スピンコート)により、シリコンウェハ上に塗布し、窒素雰囲気下、70℃の温度で1時間熱処理をしてはく離できる程度に溶媒を蒸発させた。その後、昇温速度4.6度/分で300℃まで昇温させ、90分間保持した後、室温まで放冷することで、厚さ14μmの熱伝導性フィルムを調製した。加えて,広角X線回折で観測された金属銀に帰属される回折ピークのスペクトル幅から推定した銀微結晶の粒径は,4.4nmであった.
【0065】
比較例6
BPDAとTFDBとから合成されるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(固形分濃度12%)と硝酸銀との混合比率を、モル比でBPDA/TFDB:硝酸銀=100:40とした以外は、比較例4と同様の操作を行い、厚さ約16μmの熱伝導性フィルムを調製した。
【0066】
比較例7
BPDAとTFDBとから合成されるポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液(固形分濃度12%)と硝酸銀との混合比率を、モル比でBPDA/TFDB:硝酸銀=100:60とした以外は、比較例4と同様の操作を行い、厚さ約15μmの熱伝導性フィルムを調製した。
【0067】
以上の実施例及び比較例において得られた熱伝導性フィルムの熱拡散率の測定を行った。測定結果を表1に示す。熱拡散率とは、熱伝導率を比熱容量と密度で除した物性値であり、物質の熱伝導性の支配的な要因である。温度波熱分析法(アイフェイズ社、アイフェイズ・モバイル1u)により室温における膜厚方向の熱拡散率(m/s)を測定した。
【0068】
表1から、実施例1、実施例2、実施例3の熱伝導性フィルムは、銀を含有しないフィルム(比較例1、比較例2)に比較して、熱拡散率の顕著な増加が見られた。
【0069】
また、実施例1、実施例2の熱伝導性フィルムは、相分離構造を形成しない系(比較例4、5、6、7)に比較して、熱拡散率の増加率が大きい。これは、シリンダー型又は共連続型の相分離構造による伝熱経路の形成により、銀が高金属親和性相に選択的に濃縮された結果、少ない銀含有率であっても熱伝導性が効率的に向上したためである。
【0070】
また、実施例1、実施例2、実施例3の熱伝導性フィルムは、海島構造を有する相分離構造を形成する系(比較例3)に比較して、高い熱拡散率を有する。これは、海島構造の相分離構造を有する系においては、銀を選択的に含む高金属親和性相がフィルム内に均一に分散しているのに対し、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を有する系においては、高金属親和性相が伝熱経路を形成することにより、銀が高金属親和性相に選択的に濃縮された結果、同じ銀含有率であっても熱伝導性が効率的に向上したためである。
【0071】
なお,実施例1と2,比較例1〜6に示したすべての熱伝導性フィルムフィルムは,最高イミド化温度:300℃×90分間の熱処理により調製されたことから,300℃の耐熱性が保証されており,実際,ハンダ・リフロー工程で用いられる270℃×5分の加熱後においても,重量,膜厚,熱伝導性,色調などの特性にまったく変化が見られなかった.特に,実施例2と比較例4に示した熱伝導性フィルムの5%重量減少温度(熱分解開始温度)は、それぞれ418℃、391℃であり、ハンダ・リフロー工程に耐える高い耐熱性を有することは明らかである。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例1の熱伝導性フィルムの光学顕微鏡による断面斜視像である。
【図2】実施例2の熱伝導性フィルムの走査型電子顕微鏡による断面像である。
【図3】実施例3の熱伝導性フィルムの走査型電子顕微鏡による断面像である。
【図4】比較例3の熱伝導性フィルムの走査型電子顕微鏡による断面像である。
【符号の説明】
【0073】
1 実施例1の高金属親和性相
2 実施例1の低金属親和性相
3 実施例2の高金属親和性相
4 実施例2の低金属親和性相
5 実施例3の高金属親和性相
6 実施例3の低金属親和性相
7 比較例3の高金属親和性相
8 比較例3の低金属親和性相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリクス中に熱伝導性微粒子が分散されている構造の熱伝導性材料であって、上記高分子マトリクスを形成する高分子が、2種以上の高分子成分を含むポリマーブレンドであり、該ポリマーブレンドがシリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成し、該微粒子を一方の相に偏在させたことを特徴とする熱伝導性材料。
【請求項2】
上記熱伝導性微粒子が金属性微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性材料。
【請求項3】
上記ポリマーブレンドが、上記熱伝導性微粒子との親和性の異なる2種以上の高分子成分を含有する、請求項1又は2に記載の熱伝導性材料。
【請求項4】
上記ポリマーブレンドが、200℃ 以上の耐熱性を有する高分子成分又はその前駆体高分子成分を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性材料。
【請求項5】
上記ポリマーブレンドが、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の熱伝導性微粒子が偏在する相の主成分として、分子構造内に硫黄原子を含有する高分子成分を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性材料。
【請求項6】
上記ポリマーブレンドが、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の熱伝導性微粒子が偏在する相の主成分として、分子構造内にジスルフィド結合を含有する高分子成分を含む、請求項5に記載の熱伝導性材料。
【請求項7】
上記ポリマーブレンドが、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の熱伝導性微粒子が偏在する相の主成分として、分子構造内にスルフィド結合を含有する高分子成分を含む、請求項5に記載の熱伝導性材料。
【請求項8】
2種以上の高分子成分を含有し、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成し得るポリマーブレンドの溶液に、有機溶媒に可溶な熱伝導性微粒子の前駆体を溶解する工程、及び上記ポリマーブレンドの溶液を製膜してフィルムとした後、加熱により熱伝導性微粒子又は微粒子凝集体を一方の高分子相に偏在させ、自発的に析出させる工程を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱伝導性材料の製造方法。
【請求項9】
上記熱伝導性微粒子の前駆体が、無機金属化合物、有機金属化合物、無機金属化合物と有機金属化合物との錯体、及び有機金属化合物と有機金属化合物との錯体からなる群から選択される、請求項8に記載の熱伝導性材料の製造方法。
【請求項10】
上記ポリマーブレンドが、上記熱伝導性微粒子の前駆体又は熱伝導性微粒子との親和性の異なる2種以上の高分子成分を含有する、請求項8又は9に記載の熱伝導性材料の製造方法。
【請求項11】
上記ポリマーブレンドが、200℃ 以上の耐熱性を有する高分子成分又はその前駆体高分子成分を含有する、請求項8〜10のいずれか1項に記載の熱伝導性材料の製造方法。
【請求項12】
上記ポリマーブレンドが、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の微粒子が偏在する相の主成分として、分子構造内に硫黄原子を含有する高分子成分を含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載の熱伝導性材料の製造方法。
【請求項13】
上記ポリマーブレンドが、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の微粒子が偏在する相の主成分として、分子構造内にジスルフィド結合を含有する高分子成分を含む、請求項12に記載の熱伝導性材料の製造方法。
【請求項14】
上記ポリマーブレンドが、シリンダー型又は共連続型の相分離構造を形成した際の微粒子が偏在する相の主成分として、分子構造内にスルフィド結合を含有する高分子成分を含む、請求項12に記載の熱伝導性材料の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱伝導性材料を用いて作製された熱伝導シート。
【請求項16】
請求項8〜14のいずれか1項に記載の熱伝導性材料の製造方法によって得られた熱伝導性材料を用いて作製された熱伝導シート。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱伝導性材料を用いて作製された層間絶縁膜。
【請求項18】
請求項8〜14のいずれか1項に記載の熱伝導性材料の製造方法によって得られた熱伝導性材料を用いて作製された層間絶縁膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−65064(P2010−65064A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229641(P2008−229641)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「革新的部材産業創出プログラム/超ハイブリッド材料技術開発(ナノレベル構造制御による相反機能材料技術開発)」事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】