説明

熱伝導性樹脂組成物及び熱伝導性シート

【課題】成形性や生産性が高く、高価な熱伝導性無機フィラーの割合が少量であっても高い熱伝導性を有する熱伝導性樹脂組成物を及び熱伝導性シートの提供。
【解決手段】異方形状を有する熱伝導性無機フィラー、耐熱性粒子及び熱可塑性樹脂を含む熱伝導性樹脂組成物であって、前記耐熱性粒子が、前記熱可塑性樹脂の溶融温度で粒子形状を保持可能である熱伝導性樹脂組成物。耐熱性粒子の平均粒径が1〜50μmであり、かつ熱伝導率が30W/m・K以下が好ましく、タルク又は架橋ポリアクリル酸エステル粒子が好ましい。熱伝導性無機フィラーは板状又は繊維状の導電性又は絶縁性無機フィラーが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性を有し、電気・電子機器などに利用される熱伝導性樹脂組成物及び熱伝導性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は可撓性に富み、加熱することにより容易に加工できるため、電気・電子機器の部品などに広く利用されているが、汎用の熱可塑性樹脂は、絶縁性であり、熱伝導性も低い。そのため、熱伝導性や導電性が要求される用途では、無機フィラーと組み合わせて複合材料とすることにより熱伝導性や導電性を付与するのが一般的である。しかし、このような複合材料では、熱伝導性や導電性を向上させるために、無機フィラーの割合を増加させると、熱可塑性樹脂の機械的特性や成形性が低下する。そこで、両特性を両立するための複合材料として、各種の複合材料が提案されている。特に、窒化ホウ素などの板状無機フィラーは、板状の粒子形態であるため、熱成形すると成形における樹脂の流動方向に板面が平行になるように配列する。さらに、窒化ホウ素自身も、面方向に比べて厚み方向の熱伝導性が極めて低いことが知られている。
【0003】
このような板状無機フィラーに対して、樹脂中での配向性を制御する方法が提案されている。例えば、特開2008−280496号公報(特許文献1)には、熱伝導性の非球状粒子と有機高分子化合物とを用いて形成した複数のシートを互いに積層して多層構造を有する成形体を形成した後、前記成形体をその主面から出る法線に対して0〜30度の角度でスライスすることにより得られる熱伝導シートが開示されている。また、特開2010−114421号公報(特許文献2)には、鱗片状、楕球状、板状又は棒状である熱伝導性の無機材料と、有機高分子化合物とを含有する組成物を含む熱伝導シートであって、前記無機材料の鱗片の面方向、楕球の長軸方向、板の長軸方向又は棒の長軸方向が、熱伝導シートの厚み方向に対して傾いて配向している熱伝導シートが開示されている。
【0004】
しかし、これらの熱伝導シートでは、無機材料の配向方向を制御するための工程が複雑であり、生産性が低い。
【0005】
特許第3568401号公報(特許文献3)には、窒化ホウ素を含む樹脂シートからなる熱伝導性シートにおいて、シートの厚み方向にX線を照射して得られたX線回折図の<100>面に対する<002>面のピーク比(<002>/<100>)が10以下である高熱伝導性シートが開示されている。この文献では、窒化ホウ素を含む樹脂をダイス内の途中路に設けられた複数の小さい穴に通過させて複数の棒状物を押出成形した後、前記棒状物を収集平型に通過させることにより、シートの厚み方向に直立に近い状態で窒化ホウ素を分布させることにより、熱伝導性を向上させている。さらに、樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、オレフィン系樹脂が記載され、実施例ではシリコーン樹脂が使用されている。
【0006】
しかし、この高熱伝導性シートでも、成形方法が煩雑で生産性が低い。さらに、バインダー樹脂として硬化性樹脂を使用した場合は、硬化工程を必要とするため、成形性が低下する。
【0007】
さらに、熱伝導性を向上させるために、他の無機粒子を配合する方法も提案されており、例えば、特開2006−342192号公報(特許文献4)には、マトリックス樹脂としてナノコンポジットポリアミド樹脂に熱伝導性無機粒状フィラーを高配合してなる電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂が開示されている。この文献には、ナノコンポジットポリアミド樹脂として、層状ケイ酸塩がポリアミド樹脂マトリックスに分子レベルで分散した樹脂が開示されている。また、熱伝導性無機粒状フィラーとしては、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素が例示され、実施例では、球状アルミナが使用されている。さらに、アルミナの添加量は、85〜95重量%が好ましいと記載されている。
【0008】
しかし、この成形用樹脂では、熱伝導性無機粒状フィラーの割合が多いため、成形性や機械的特性が低い。特に、球状アルミナを使用する場合には、熱伝導性を向上させるためには、高い割合で含有させる必要がある。
【0009】
特開平3−200397号公報(特許文献5)には、マトリックス樹脂中に、板状熱伝導性フィラーと粒状熱伝導性フィラーの2種類の熱伝導性フィラーが分布した放熱シートであって、板状熱伝導性フィラーが、それ自体の板面を放熱シートの長手方向に沿わせた状態でかつ厚み方向に多段状に分布し、前記粒状熱伝導性フィラーが、多段状に分布した前記板状熱伝導性フィラーの層間を中心に分配している放熱シートが開示されている。この文献には、板状熱伝導性フィラーとして窒化ホウ素が記載され、粒状熱伝導性フィラーとして窒化アルミニウムが記載されている。また、マトリックス樹脂と2種類の熱伝導性フィラーとの配合割合は、マトリックス樹脂100重量部に対して、2種類の熱伝導性フィラーは150〜500重量部と記載されている。さらに、マトリックス樹脂としては、合成ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が例示され、実施例では、シリコーンゴムが使用されている。
【0010】
しかし、この放熱シートでは、熱伝導性フィラーの割合が多いため、成形性及び機械的特性が低下するとともに、経済性も低い。さらに、マトリックス樹脂として、ゴム又は熱硬化性樹脂を使用すると、成形性も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−280496号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2010−114421号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特許第3568401号公報(特許請求の範囲、段落[0011][0018][0021]、実施例)
【特許文献4】特開2006−342192号公報(特許請求の範囲、段落[0018]〜[0022]、実施例)
【特許文献5】特開平3−200397号公報(特許請求の範囲、第2頁右下欄6〜11行、第3頁左上欄、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、成形性や生産性が高く、高価な熱伝導性無機フィラーの割合が少量であっても高い熱伝導性を有する熱伝導性樹脂組成物及び熱伝導性シートを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、高い熱伝導性を有するとともに、機械的特性にも優れる熱伝導性樹脂組成物及び熱伝導性シートを提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、絶縁性を有するとともに、熱伝導性も高い熱伝導性樹脂組成物及び熱伝導性シートを提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、耐熱性及び柔軟性に優れる熱伝導性樹脂組成物及び熱伝導性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、異方形状を有する熱伝導性無機フィラー、耐熱性粒子及び熱可塑性樹脂を組み合わせることにより、樹脂組成物の成形性や生産性を向上できるともに、高価な熱伝導性無機フィラーの割合が少量であっても熱伝導性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明の熱伝導性樹脂組成物は、異方形状を有する熱伝導性無機フィラー、耐熱性粒子及び熱可塑性樹脂を含む熱伝導性樹脂組成物であって、前記耐熱性粒子が、前記熱可塑性樹脂の溶融温度で粒子形状を保持可能である。前記耐熱性粒子は、平均粒径が1〜50μmであり、かつ熱伝導率が30W/m・K以下であってもよい。前記耐熱性粒子はタルク又は架橋ポリアクリル酸エステル粒子であってもよい。前記熱伝導性無機フィラーは、板状又は繊維状の導電性又は絶縁性無機フィラー(例えば、窒化ホウ素)であってもよい。前記熱伝導性無機フィラーと耐熱性粒子との割合(体積比)は、前者/後者=2/1〜1/4程度であってもよい。前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド系樹脂、ポリアミド系エラストマー及び環状オレフィン系エラストマーからなる群から選択された少なくとも一種であってもよい。本発明の熱伝導性樹脂組成物は、前記熱伝導性無機フィラーの割合が、組成物全体に対して5〜40体積%であり、かつ熱伝導率が1W/m・K以上であってもよい。
【0018】
本発明には、前記熱伝導性樹脂組成物で構成された熱伝導性シートも含まれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、異方形状を有する熱伝導性無機フィラー、耐熱性粒子及び熱可塑性樹脂を組み合わせることにより、樹脂組成物の成形性や生産性を向上できるともに、高価な熱伝導性無機フィラーの割合が少量であっても熱伝導性を向上できる。また、高い熱伝導性を有するとともに、機械的特性にも優れている。例えば、耐熱性粒子として有機フィラーを使用すると、柔軟性の低下や比重の上昇を抑制できる。また、熱伝導性無機フィラーとして、窒化ホウ素などの絶縁性無機フィラーを用いることにより、熱伝導性だけでなく、絶縁性も向上できる。さらに、熱可塑性樹脂として、環状オレフィン系エラストマーを用いると、耐熱性及び柔軟性も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、比較例1〜4及び実施例1で得られたシートの熱伝導率を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例2〜5で得られたシートの熱伝導率を示すグラフである。
【図3】図3は、比較例5及び実施例6〜10で得られたシートの熱伝導率を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例11〜13で得られたシートの熱伝導率を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例6及び実施例14〜15で得られたシートの熱伝導率を示すグラフである。
【図6】図6は、比較例7〜12及び実施例16〜19で得られたシートの熱伝導率を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例25及び26で得られたシートの熱伝導率を示すグラフである。
【図8】図8は、比較例15及び実施例27〜29で得られたシートの熱伝導率を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例16、27〜29及び比較例7〜10、12、15で得られたシートの硬度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[熱伝導性樹脂組成物]
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、異方形状を有する熱伝導性無機フィラー、耐熱性粒子及び熱可塑性樹脂を含む。本発明の熱伝導性樹脂組成物において、前記熱伝導性無機フィラーは、高い熱伝導性を有しており、樹脂組成物中で前記耐熱性粒子の存在により、熱伝導性無機フィラー同士が交差(又は交絡)して接触することにより、熱の導通路又は経路(チャンネル又はパス)を形成するためか、熱伝導性無機フィラーの割合が少量であっても、樹脂組成物の熱伝導性を向上できる。特に、熱伝導性無機フィラーが窒化ホウ素などの板状フィラーである場合、熱成形時の熱可塑性樹脂の流動方向にフィラーの板面が配向し、厚み方向の熱伝導性が低下するが、本発明では、耐熱性粒子の存在により板状フィラーの配向方向がランダム化するとともに、フィラー同士の接触面積も増加するため、厚み方向の熱伝導性を向上できる。
【0022】
(熱伝導性無機フィラー)
熱伝導性無機フィラーとしては、異方形状であり、かつ熱伝導性を有していればよく、電気特性については、用途に応じて選択でき、導電性であっても、絶縁性であってもよい。
【0023】
導電性無機フィラーとしては、例えば、炭素材(例えば、人造黒鉛、膨張黒鉛、天然黒鉛、コークス、カーボンナノチューブ、炭素繊維など)、金属単体又は合金(例えば、金属シリコン、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、金、白金、亜鉛、マンガン、ステンレスなど)、セラミックス類(例えば、フェライト、トルマリン、珪藻土など)などが挙げられる。これらの導電性無機フィラーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの導電性無機フィラーのうち、安価でかつ導電性を効果的に向上できる点から、カーボンナノチューブや炭素繊維などの炭素材や金属シリコンが好ましい。
【0024】
絶縁性無機フィラーとしては、例えば、窒素化合物(窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化炭素、窒化ケイ素など)、炭素化合物(炭化ケイ素、炭化フッ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、ダイヤモンドなど)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ベリリウムなど)などが挙げられる。これらの絶縁性無機フィラーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの絶縁性無機フィラーのうち、絶縁性及び熱伝導性に優れる点から、窒化ホウ素や窒化アルミニウムなどの窒素化合物が好ましく、窒化ホウ素が特に好ましい。窒化ホウ素は、グラファイトと類似の構造を有する六方晶形型であってもよく、ダイヤモンド構造を有する立方晶形型であってもよいが、六方晶形型が好ましい。
【0025】
熱伝導性無機フィラーの形状は、異方形状であればよく、例えば、板状(又は鱗片状)、棒状、繊維状、不定形状などが挙げられる。本発明では、異方形状の無機フィラーの配向方向を、後述する耐熱性粒子の存在によりランダム化して厚み方向における熱伝導性を向上できる。これらの形状のうち、耐熱性粒子の間隙で効率的に接触して熱伝導性を向上できる点から、板状又は鱗片状、棒状又は繊維状が好ましく、板状(又は鱗片状)が特に好ましい。
【0026】
熱伝導性無機フィラーの平均粒径は、0.1〜100μm程度の範囲から適宜選択でき、例えば、1〜50μm、好ましくは3〜40μm(例えば、5〜30μm)、さらに好ましくは10〜25μm(特に15〜20μm)程度である。この平均粒径は、無機フィラーが板状である場合、板面の平均径(板面における長軸と短軸との加算平均径)であってもよい。本発明では、無機フィラーの粒径は、均一に分散できる範囲で、大きい方が熱伝導性を向上できる。さらに、板状である場合、前記板面の平均径と厚みとのアスペクト比(板面の平均径/厚み)は、例えば、2以上、好ましくは2〜50、さらに好ましくは3〜30(特に5〜20)程度であってもよい。無機フィラーが繊維状である場合、繊維の平均繊維長が前記粒径の範囲であってもよいが、カーボンナノチューブの場合、平均繊維長は、例えば、0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは2〜10μm程度であってもよい。
【0027】
熱伝導性無機フィラーの重量割合は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、6〜70重量部、好ましくは10〜60重量部、さらに好ましくは20〜55重量部程度であってもよい。
【0028】
熱伝導性無機フィラーの体積割合は、樹脂組成物全体に対して1〜80体積%程度の範囲から選択でき、例えば、3〜50体積%、好ましくは5〜40体積%、さらに好ましくは10〜35体積%(特に20〜35体積%)程度である。特に、熱伝導性無機フィラーの割合を5〜40体積%程度に調整することにより、例えば、熱伝導率を1W/m・K以上に向上できる。
【0029】
熱伝導性無機フィラーは、本発明の効果を損なわない範囲で、等方形状の熱伝導性無機フィラー(例えば、球状アルミナ粒子、カーボンブラックなど)と組み合わせてもよい。等方形状の熱伝導性無機フィラーの割合は、異方形状の熱伝導性無機フィラー100重量部に対して200重量部以下、好ましくは100重量部以下程度である。
【0030】
(耐熱性粒子)
耐熱性粒子としては、前記熱可塑性樹脂の溶融温度で粒子形状を保持可能であればよい。さらに、本発明では、耐熱性粒子は、高い熱伝導性を有していなくても、前記熱伝導性無機フィラーとの組み合わせにより、高い熱伝導性を発現できる。
【0031】
耐熱性粒子の熱伝導率は30W/m・K以下であってもよく、例えば、0.1〜25W/m・K、好ましくは1〜20W/m・K、さらに好ましくは2〜15W/m・K(特に3〜12W/m・K)程度であってもよい。
【0032】
このような熱伝導率を有する耐熱性粒子は、無機粒子、有機粒子のいずれでもよい。無機粒子を構成する無機化合物としては、例えば、鉱物又はセラミック類(タルク、マイカ、ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレー、シリカ、アルミナ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイトなど)、窒素化合物(窒化チタンなど)、炭素化合物(炭化チタンなど)、金属酸化物(シリカ、アルミナ、ジルコニアなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)、炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)などが挙げられる。有機粒子を構成する有機化合物としては、例えば、架橋熱可塑性樹脂(架橋ポリメタクリル酸メチルや架橋アクリル酸エステルなどの架橋アクリル系樹脂、架橋ポリスチレンなどの架橋スチレン系樹脂など)、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂など)、ゴム(ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンゴムなどのジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム状共重合体、ブチルゴム、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなど)などが挙げられる。これらの耐熱性粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
これらの耐熱性粒子のうち、タルクやマイカなどの鉱物又はセラミック類、架橋ポリスチレンや架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリアクリル酸エステルなどの架橋熱可塑性樹脂などで構成された粒子が汎用され、タルクやマイカなどのケイ酸塩で構成された粒子(特にタルク)、架橋アクリル系樹脂粒子(特に架橋ポリアクリル酸エステル粒子)が好ましい。
【0034】
架橋ポリアクリル酸エステル粒子を構成するポリアクリル酸エステルとしては、ポリアクリル酸エチルやポリアクリル酸ブチルなどのポリアクリル酸C1−8アルキル(特にC2−6アルキル)を主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%程度)とするポリアクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。架橋剤としては、慣用の架橋剤を利用でき、例えば、2以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)C2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなど)などが利用できる。架橋剤の割合は、全単量体のうち0.1〜10モル%(特に1〜10モル%)程度であってもよい。架橋ポリアクリル酸エステル粒子を用いると、柔軟性が高く、比重が小さい樹脂組成物を調製できる。柔軟性の向上効果は、熱伝導性無機フィラーの割合が小さい場合(例えば、樹脂組成物全体に対して20体積%以下)に大きいが、高温下での使用(80℃以上、例えば、100〜140℃程度)などでは、熱伝導性無機フィラーの割合が大きくても、架橋ポリアクリル酸エステル粒子により柔軟性を向上できる。
【0035】
耐熱性粒子の形状は、例えば、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状(又は鱗片状)、棒状、繊維状、不定形状などが挙げられる。これらの形状のうち、異方形状を有する熱伝導性無機フィラーの配向方向をランダム化し易い点から、略球状、楕円体状、多角体形、板状などが好ましい。
【0036】
耐熱性粒子の平均粒径(板状粒子の場合は板面の平均径)は、0.1〜100μm程度の範囲から選択でき、例えば、1〜50μm程度であれば、径の大小に関係なく、熱伝導性を向上できるが、扱い易さや分散性などの点から、例えば、3〜45μm、好ましくは5〜40μm、さらに好ましくは10〜35μm(特に20〜30μm)程度であってもよい。
【0037】
熱伝導性無機フィラーと耐熱性粒子との平均粒径の比率も、特に限定されないが、例えば、前者/後者=10/1〜1/10程度の範囲から選択でき、好ましくは2/1〜1/5、さらに好ましくは1/1〜1/3(特に1/1.2〜1/2)程度である。
【0038】
熱伝導性無機フィラーと耐熱性粒子との割合(体積比)は、前者/後者=10/1〜1/10程度の範囲から選択でき、例えば、3/1〜1/5、好ましくは2/1〜1/4、さらに好ましくは1/1〜1/3(特に1/1.5〜1/2.5)程度である。本発明では、耐熱性粒子と熱伝導性無機フィラーとを組み合わせることにより、耐熱性粒子自体の熱伝導率が低いにも拘わらず効果的に樹脂組成物の熱伝導性を向上でき、例えば、熱伝導性無機フィラーに対して1.5〜2.5倍程度のタルクを用いると、3W/m・K程度の熱伝導率が得られる。そのため、本発明では、少量の熱伝導性無機フィラーの配合であっても、熱伝導性を向上できる。
【0039】
耐熱性粒子の重量割合は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、50〜350重量部、好ましくは80〜300重量部、さらに好ましくは100〜280重量部程度であってもよい。
【0040】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、脂肪酸ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、熱可塑性エラストマー(ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなど)、セルロース誘導体などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0041】
これらの熱可塑性樹脂は、用途に応じて選択できるが、例えば、電気・電子部品の用途では、耐熱性及び柔軟性に優れる点から、ポリアミド樹脂、ポリアミド系エラストマー、環状オレフィン系エラストマーであってもよい。
【0042】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド、ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸など)とジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン)とから得られるポリアミドなどが挙げられる。これらのポリアミドは、ホモポリアミドに限らずコポリアミドであってもよい。これらのポリアミド系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリアミド系樹脂のうち、C8−16アルキレン鎖を有する脂肪族ポリアミド(特に、ポリアミド11やポリアミド12などのC10−14アルキレン鎖を有する脂肪族ポリアミド)が特に好ましい。
【0043】
ポリアミド系エラストマーとしては、前記ポリアミド系樹脂で例示されたポリアミド単位をハードセグメントとして有するとともに、ポリエーテル単位をソフトセグメントとして有するポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体などが挙げられる。このようなブロック共重合体において、ポリアミド単位としては、C8−16アルキレン鎖を有する脂肪族ポリアミド単位(特に、ポリアミド11やポリアミド12などのC10−14アルキレン鎖を有する脂肪族ポリアミド単位)が好ましい。ポリエーテル単位としては、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリC2−4アルキレンオキサイド単位が好ましい。ハードセグメントとソフトセグメントとの割合(重量比)は、特に限定されず、ハードセグメント/ソフトセグメント=99/1〜1/99程度の範囲から選択できるが、柔軟性を付与する点から、ソフトセグメントの割合が多い方が好ましく、例えば、ハードセグメント/ソフトセグメント=50/50〜1/99、好ましくは40/60〜5/95、さらに好ましくは30/70〜10/90程度であってもよい。
【0044】
環状オレフィン系エラストマーとしては、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体のうち、鎖状オレフィンと環状オレフィンとの割合(モル比)が、鎖状オレフィン/環状オレフィン=80/20〜99/1、好ましくは85/15〜97/3、さらに好ましくは90/10〜95/5程度の共重合体が挙げられる。前記鎖状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどの鎖状C2−10オレフィン類などが挙げられる。環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン(2−ノルボルネン)、置換基(アルキル基、アルケニル基、アリール基など)を有するノルボルネン、シクロペンタジエンの多量体、前記置換基を有するシクロペンタジエンの多量体などが挙げられる。鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体は、共重合体に対して5モル%以下(特に1モル%以下)の割合で、他の共重合性単量体、例えば、ジエン系単量体(ブタジエン、イソプレンなど)や芳香族ビニル系単量体(スチレンなど)などを含んでいてもよい。これらの環状オレフィン系エラストマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの環状オレフィン系エラストマーのうち、エチレンなどのα−鎖状C2−4オレフィンとノルボルネンなどの多環式オレフィンとの共重合体が好ましい。
【0045】
本発明の熱伝導性樹脂組成物には、熱可塑性樹脂の流動性を向上させるために、滑剤又は可塑剤が含まれていてもよい。滑剤又は可塑剤としては、例えば、ワックス類(ポリエチレンワックスなどのポリC2−4オレフィン系ワックス、パラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックスなどの植物性又は動物性ワックスなど)、脂質類(ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などのC8−35飽和脂肪酸、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウムなどのC8−35飽和脂肪酸金属塩、ペンタエリスリトールステアリン酸エステルなどのペンタエリスリトールC8−35飽和脂肪酸エステル、エチレンビスステアリン酸アミドなどのアルキレンビス脂肪酸アミドなど)、フタル酸エステル(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、リン酸エステル(リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチルなど)、脂肪族多価カルボン酸エステル(アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチルなど)、エポキシ系化合物(アルキルエポキシステアレート、エポキシ化大豆油など)などが挙げられる。これらの滑剤又は可塑剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0046】
滑剤又は可塑剤の割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜100重量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜30重量部、好ましく0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部程度であってもよい。
【0047】
本発明の熱伝導性樹脂組成物には、難燃性を向上させるために、慣用の難燃剤(例えば、赤リンや芳香族リン酸エステルなどのリン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤など)が含まれていてもよい。難燃剤の割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましく1〜50重量部、さらに好ましくは5〜30重量部程度であってもよい。
【0048】
本発明の熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率は1W/m・K以上であってもよく、例えば、1〜5W/m・K、好ましくは1.5〜4.8W/m・K、さらに好ましくは2〜4.5W/m・K(特に2.5〜4W/m・K)程度であってもよい。
【0049】
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、さらに、慣用の添加剤、例えば、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤など)、分散剤、帯電防止剤、着色剤、潤滑剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0050】
[熱伝導性シート及びその製造方法]
本発明の熱伝導性シートは前記熱伝導性樹脂組成物で構成されている。本発明の熱伝導性シートは、前記熱伝導性無機フィラー、耐熱性粒子、熱可塑性樹脂、必要により滑剤などの成分を、必要に応じて慣用の方法(例えば、溶融ブレンド法、タンブラー法など)でブレンドし、溶融混合し、Tダイやリングダイなどから押出してフィルム成形する方法の他、射出成形法、ブロー成形法、真空成形法、異型成形法、インジェクションプレス法、プレス成形法、ガス注入成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法などにより成形できる。さらに、基材上に、前記成分を含む液状組成物を塗布するコーティング法や、前記組成物をラミネートするラミネート法、キャスティング法などの慣用のフィルム成形法を利用して成形してもよい。
【0051】
熱伝導性シートの厚みは、用途に応じて選択でき、例えば、10〜3000μm程度の範囲から選択でき、例えば、20〜2000μm、好ましくは30〜1000μm、さらに好ましくは40〜500μm(特に50〜300μm)程度である。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で得られた熱伝導性シートの熱伝導性は、以下の方法で測定した。
【0053】
(熱伝導性)
レーザーフラッシュ熱伝導率測定装置(NETZSCH社製)を用いて、フィルムの厚み方向の熱拡散率を測定し、下記式に基づいて熱伝導率を求めた。
【0054】
熱伝導率(W/m・K)=密度(g/cm)×比熱(J/kg・K)×熱拡散率(mm/s)。
【0055】
(硬度)
JIS K6253に準拠して、タイプAデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した。
【0056】
比較例1
(エチレン−ノルボルネン共重合体の製造)
窒素雰囲気下、室温において30リットルのオートクレーブに、トルエン15リットル、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)15ミリモル、四塩化ジルコニウム0.75ミリモル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アニリニウム0.75ミリモルをこの順番に投入し、続いてノルボルネンを70重量%含有するトルエン溶液1.8リットルを加えた。50℃に昇温した後、エチレン分圧が5kgf/cmになるように、連続的にエチレンを導入しつつ、60分間の反応を行った。反応終了後ポリマー溶液を15リットルのメタノール中に投入し、ポリマーを析出させた。このポリマーを濾別、乾燥し、エチレン−ノルボルネン共重合体を得た。収量は3.12kg、重合活性は46kg/gZr(ジルコニウム1g当りの収量)であった。
【0057】
13C−NMRにおいて、エチレン単位にもとづくピークとノルボルネン単位の5及び6位のメチレンにもとづくピークの和(30ppm付近)と、ノルボルネン単位の7位メチレン基にもとづくピーク(32.5ppm付近)との比から求めたノルボルネン含量は8.6モル%であった。ガラス転移温度は−1℃、融点は80℃、結晶化度は10%であった。
【0058】
(熱伝導性シートの製造)
得られたエチレン−ノルボルネン共重合体100重量部をラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)に仕込み、200℃の温度で3分間混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、圧縮成型用プレス機((株)東洋精機製作所製「ミニテストプレス−10」)を用いて、200℃、ゲージ圧30MPaの加圧を2分間行い、厚み約3mmの樹脂シートを成形した。得られたシートの熱伝導率は0.26W/m・Kであった。
【0059】
比較例2
エチレン−ノルボルネン共重合体100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「GP」、平均粒径8μm)66重量部を仕込む以外は比較例1と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は0.61W/m・Kであった。
【0060】
比較例3
エチレン−ノルボルネン共重合体100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「GP」、平均粒径8μm)117重量部を仕込む以外は比較例1と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は32体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.47W/m・Kであった。
【0061】
比較例4
エチレン−ノルボルネン共重合体100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「GP」、平均粒径8μm)188重量部を仕込む以外は比較例1と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は43体積%であった。得られたシートの熱伝導率は2.30W/m・Kであった。
【0062】
実施例1
得られたエチレン−ノルボルネン共重合体100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「GP」、平均粒径8μm)92重量部、タルク(日本タルク(株)製「P−4」、平均粒径4.5μm)104重量部を仕込む以外は比較例1と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は22体積%であり、タルクの体積割合は21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.95W/m・Kであった。
【0063】
比較例1〜4及び実施例1の評価結果を図1のグラフに示す。図1から明らかなように、実施例1では、比較例1〜4に比べて、熱伝導率が低く、安価なタルクの配合により、熱伝導率が効果的に向上していることがわかる。
【0064】
実施例2
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に、窒化ホウ素(電気化学(株)製「GP」、平均粒径8μm)88重量部、タルク(日本タルク(株)製「P−4」、平均粒径4.5μm)98重量部をラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)に仕込み、200℃の温度で3分間混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、圧縮成型用プレス機((株)東洋精機製作所製「ミニテストプレス−10」)を用いて、200℃、ゲージ圧30MPaの加圧を2分間行い、厚み約3mmの樹脂シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は21体積%であり、タルクの体積割合も21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.62W/m・Kであった。
【0065】
実施例3
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「GP」、平均粒径8μm)139重量部、タルク(日本タルク(株)製「P−4」、平均粒径4.5μm)114重量部を仕込む以外は実施例2と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は30体積%であり、タルクの体積割合も21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は2.39W/m・Kであった。
【0066】
実施例4
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「GP」、平均粒径8μm)234重量部、タルク(日本タルク(株)製「P−4」、平均粒径4.5μm)144重量部を仕込む以外は実施例2と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は40体積%であり、タルクの体積割合は21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は2.83W/m・Kであった。
【0067】
実施例5
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「GP」、平均粒径8μm)233重量部、タルク(日本タルク(株)製「MS−KY」、平均粒径27μm)144重量部を仕込む以外は実施例2と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は40体積%であり、タルクの体積割合は21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は3.30W/m・Kであった。
【0068】
実施例2〜5の評価結果を図2のグラフに示す。なお、図2には、比較のために、比較例1〜4の結果も記載した。図2から明らかなように、実施例のシートは、熱伝導率が高く、例えば、実施例3の熱伝導率は、窒化ホウ素の割合が30体積%であるにも係らず、窒化ホウ素を43体積%配合した比較例4と同等の熱伝導率を示す。
【0069】
比較例5
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に、窒化ホウ素(電気化学(株)製「GP」、平均粒径8μm)64重量部をラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)に仕込み、200℃の温度で3分間混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、圧縮成型用プレス機((株)東洋精機製作所製「ミニテストプレス−10」)を用いて、200℃、ゲージ圧30MPaの加圧を2分間行い、厚み約3mmの樹脂シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は0.54W/m・Kであった。
【0070】
実施例6
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらにタルク(日本タルク(株)製「FG−15」、平均粒径1.6μm)99重量部を仕込む以外は比較例5と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は21体積%であり、タルクの体積割合も21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.45W/m・Kであった。
【0071】
実施例7(実施例2と同じ実験)
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらにタルク(日本タルク(株)製「P−4」、平均粒径4.5μm)99重量部を仕込む以外は比較例5と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は21体積%であり、タルクの体積割合も21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.62W/m・Kであった。
【0072】
実施例8
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらにタルク(日本タルク(株)製「K−1」、平均粒径8μm)99重量部を仕込む以外は比較例5と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は21体積%であり、タルクの体積割合も21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.72W/m・Kであった。
【0073】
実施例9
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらにタルク(日本タルク(株)製「MSG」、平均粒径10.5μm)99重量部を仕込む以外は比較例5と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は21体積%であり、タルクの体積割合も21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.63W/m・Kであった。
【0074】
実施例10
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらにタルク(日本タルク(株)製「MS−KY」、平均粒径27μm)99重量部を仕込む以外は比較例5と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は21体積%であり、タルクの体積割合も21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.63W/m・Kであった。
【0075】
比較例5及び実施例6〜10の評価結果を図3のグラフに示す。図3から明らかなように、実施例のシートは、いずれも比較例のシートに比べて熱伝導率が高く、タルクの粒径の影響は小さいことがわかる。
【0076】
実施例11(実施例2と同じ実験)
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらにタルク(日本タルク(株)製「P−4」、平均粒径4.5μm)99重量部を仕込む以外は比較例5と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は21体積%であり、タルクの体積割合も21体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.62W/m・Kであった。
【0077】
実施例12
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらにタルク(日本タルク(株)製「P−4」、平均粒径4.5μm)167重量部を仕込む以外は比較例5と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は21体積%であり、タルクの体積割合は30体積%であった。得られたシートの熱伝導率は2.47W/m・Kであった。
【0078】
実施例13
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらにタルク(日本タルク(株)製「P−4」、平均粒径4.5μm)281重量部を仕込む以外は比較例5と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は21体積%であり、タルクの体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は2.24W/m・Kであった。
【0079】
実施例11〜13の評価結果を図4のグラフに示す。なお、図4には、比較のために、比較例5の結果も記載した。図4から明らかなように、タルクの割合が多くなるにつれて熱伝導率も上昇した。
【0080】
比較例6
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に、カーボンナノチューブ(昭和電工(株)製「VGCF−H」、、平均繊維径150nm、平均繊維長6μm)59重量部をラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)に仕込み、200℃の温度で3分間混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、圧縮成型用プレス機((株)東洋精機製作所製「ミニテストプレス−10」)を用いて、220℃、ゲージ圧30MPaの加圧を2分間行い、厚み約3mmの樹脂シートを成形した。なお、シート中において、カーボンナノチューブの体積割合は22体積%であった。得られたシートの熱伝導率は2.03W/m・Kであった。
【0081】
実施例14
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらにタルク(日本タルク(株)製「P−4」、平均粒径4.5μm)99重量部を仕込む以外は比較例6と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、カーボンナノチューブの体積割合は22体積%であり、タルクの体積割合も22体積%であった。得られたシートの熱伝導率は3.67W/m・Kであった。
【0082】
実施例15
ポリアミド12(ダイセルエボニック(株)製「ZZ3000P」)100重量部に対して、さらにタルク(日本タルク(株)製「MS−KY」、平均粒径27μm)99重量部を仕込む以外は比較例6と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、カーボンナノチューブの体積割合は22体積%であり、タルクの体積割合も22体積%であった。得られたシートの熱伝導率は3.50W/m・Kであった。
【0083】
比較例6及び実施例14〜15の評価結果を図5のグラフに示す。なお、図5には、比較のために、窒化ホウ素を添加した比較例5及び実施例11〜13の結果も記載した。図5から明らかなように、窒化ホウ素に代えてカーボンナノチューブを使用すると、熱伝導率が向上した。
【0084】
比較例7
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部をラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)に仕込み、200℃の温度で3分間混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、圧縮成型用プレス機((株)東洋精機製作所製「ミニテストプレス−10」)を用いて、200℃、ゲージ圧30MPaの加圧を2分間行い、厚み約3mmの樹脂シートを成形した。得られたシートの熱伝導率は0.24W/m・Kであった。
【0085】
比較例8
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)57重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は20体積%であった。得られたシートの熱伝導率は0.55W/m・Kであった。
【0086】
比較例9
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)112重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は33体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.97W/m・Kであった。
【0087】
比較例10
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)186重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は44体積%であった。得られたシートの熱伝導率は2.26W/m・Kであった。
【0088】
比較例11
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)341重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は60体積%であった。得られたシートの熱伝導率は4.50W/m・Kであった。
【0089】
比較例12
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらにタルク(日本タルク(株)製「MS−KY」、平均粒径27μm)178重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、タルクの体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.13W/m・Kであった。
【0090】
実施例16
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)114重量部、タルク(日本タルク(株)製「MS−KY」、平均粒径27μm)267重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は20体積%、タルクの体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は2.83W/m・Kであった。
【0091】
実施例17
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)152重量部、タルク(日本タルク(株)製「MS−KY」、平均粒径27μm)447重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は20体積%、タルクの体積割合は50体積%であった。得られたシートの熱伝導率は3.07W/m・Kであった。
【0092】
実施例18
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)114重量部、架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子(積水化成品工業(株)製「テクポリマーMBX−50」、平均粒径50μm)119重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は20体積%、架橋PMMA粒子の体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.45W/m・Kであった。
【0093】
実施例19
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)594重量部、架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子(積水化成品工業(株)製「テクポリマーMBX−50」、平均粒径50μm)340重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は20体積%、架橋PMMA粒子の体積割合は67体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.56W/m・Kであった。
【0094】
比較例7〜12及び実施例16〜19の評価結果を図6のグラフに示す。図6から明らかなように、架橋PMMA粒子の添加により熱伝導率が向上したが、タルクに比べると向上率は小さかった。
【0095】
比較例13
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに球状アルミナ粒子(電気化学(株)製「DAW45」、平均粒径45μm)118重量部、球状アルミナ粒子(電気化学(株)製「DAW03」、平均粒径3μm)79重量部、タルク(日本タルク(株)製「MS−KY」、平均粒径27μm)263重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、球状アルミナ粒子の合計体積割合は20体積%、タルクの体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は2.07W/m・Kであった。同量の窒化ホウ素及びタルクを配合した実施例15に比べて、熱伝導率が低下した。
【0096】
実施例20
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)103重量部、窒化ホウ素(電気化学(株)製「SP−3」、平均粒径3μm)12重量部、タルク(日本タルク(株)製「MS−KY」、平均粒径27μm)267重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の合計体積割合は20体積%、タルクの体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は2.54W/m・Kであった。
【0097】
実施例21
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)114重量部、架橋ポリスチレン粒子(積水化成品工業(株)製「テクポリマーSBX−12」、平均粒径12μm)105重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は20体積%、架橋ポリスチレン粒子の体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.13W/m・Kであった。
【0098】
実施例22
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)114重量部、架橋PMMA粒子(積水化成品工業(株)製「テクポリマーMBX−12」、平均粒径12μm)119重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は20体積%、架橋PMMA粒子の体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.24W/m・Kであった。
【0099】
比較例14
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに球状アルミナ粒子(電気化学(株)製「DAW45」、平均粒径45μm)120重量部、球状アルミナ粒子(電気化学(株)製「DAW03」、平均粒径3μm)80重量部、架橋PMMA粒子(積水化成品工業(株)製「テクポリマーMBX−50」、平均粒径50μm)121重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、球状アルミナ粒子の合計体積割合は20体積%、架橋PMMA粒子の体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は0.37W/m・Kであった。同量の窒化ホウ素及び架橋PMMA粒子を配合した実施例17に比べて、熱伝導率が低下した。
【0100】
実施例23
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)103重量部、窒化ホウ素(電気化学(株)製「SP−3」、平均粒径3μm)12重量部、架橋PMMA粒子(積水化成品工業(株)製「テクポリマーMBX−50」、平均粒径50μm)121重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の合計体積割合は20体積%、架橋PMMA粒子の体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.47W/m・Kであった。
【0101】
実施例24
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)57重量部、球状アルミナ粒子(電気化学(株)製「DAW03」、平均粒径3μm)100重量部、タルク(日本タルク(株)製「MS−KY」、平均粒径27μm)121重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は10体積%、球状アルミナ粒子の体積割合は10体積%、架橋PMMA粒子の体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は0.99W/m・Kであった。
【0102】
実施例25
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)340重量部、架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子(積水化成品工業(株)製「テクポリマーMBX−50」、平均粒径50μm)593重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は20体積%、架橋PMMA粒子の体積割合は50体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.56W/m・Kであった。
【0103】
実施例26
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)226重量部、架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子(積水化成品工業(株)製「テクポリマーMBX−50」、平均粒径50μm)356重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は20体積%、架橋PMMA粒子の体積割合は60体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.53W/m・Kであった。
【0104】
実施例25及び26の評価結果を図7のグラフに示す。なお、図7には、比較例8及び実施例18〜19の結果も併せて記載した。図7から明らかなように、架橋PMMA粒子の配合により、熱伝導率は向上したが、タルクに比べると小さかった。
【0105】
比較例15
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、さらに架橋ポリアクリル酸エステル粒子(積水化成品工業(株)製「テクポリマーARX−30」、平均粒径30μm)73重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、架橋ポリアクリル酸エステル粒子の体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は0.24W/m・Kであった。
【0106】
実施例27
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)45重量部、架橋ポリアクリル酸エステル粒子(積水化成品工業(株)製「テクポリマーARX−30」、平均粒径30μm)87重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は10体積%、架橋ポリアクリル酸エステル粒子の体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は0.40W/m・Kであった。
【0107】
実施例28
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)114重量部、架橋ポリアクリル酸エステル粒子(積水化成品工業(株)製「テクポリマーARX−30」、平均粒径30μm)109重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は20体積%、架橋ポリアクリル酸エステル粒子の体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は1.46W/m・Kであった。
【0108】
実施例29
ポリアミドエラストマー(ダイセルエボニック(株)製「E−40−S1」)100重量部に対して、窒化ホウ素(電気化学(株)製「SGP」、平均粒径18μm)275重量部、架橋ポリアクリル酸エステル粒子(積水化成品工業(株)製「テクポリマーARX−30」、平均粒径30μm)158重量部を仕込む以外は比較例7と同様にして熱伝導性シートを成形した。なお、シート中において、窒化ホウ素の体積割合は33体積%、架橋ポリアクリル酸エステル粒子の体積割合は40体積%であった。得られたシートの熱伝導率は3.00W/m・Kであった。
【0109】
比較例15及び実施例27〜29の評価結果を図8のグラフに示す。なお、図8には、比較例7〜10の結果も併せて記載した。図8から明らかなように、実施例では、比較例7〜10に比べて、熱伝導率が高く、架橋ポリアクリル酸エステル粒子の配合により、熱伝導率が効果的に向上していることがわかる。
【0110】
さらに、架橋ポリアクリル酸エステル粒子を配合した実施例27〜29で得られた熱伝導性シートの硬度を評価するために、耐熱性粒子として架橋アクリル酸エステル粒子を配合した比較例15及び実施例27〜29で得られた熱伝導性シート、耐熱性粒子としてタルクを配合した比較例12及び実施例16で得られた熱伝導性シート、耐熱性粒子を配合しない比較例7〜10で得られた熱伝導性シートについて硬度を測定した結果を図9のグラフに示す。なお、各硬度は、比較例15:88.8、実施例27:95.6、実施例28:97.2、実施例29:97.4、比較例12:97.4、実施例16:97.6、比較例7:93.4、比較例8:97.4、比較例9:97.5、比較例10:97.6であった。図9から明らかなように、窒化ホウ素濃度が20体積%以下程度では、耐熱性粒子として、架橋ポリアクリル酸エステル粒子を用いることにより、柔軟性が向上していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、熱伝導性を要求される各種用途に利用でき、例えば、画像表示装置、コンピュータ、電池などの電気・電子部品(放熱板、熱電変換素子、光電変換素子、電磁波吸収放熱材、基盤、セパレータなど)に利用できる。特に、絶縁性を有する樹脂組成物は、コンピュータのCPU、パワーモジュール、LEDなどの放熱板としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方形状を有する熱伝導性無機フィラー、耐熱性粒子及び熱可塑性樹脂を含む熱伝導性樹脂組成物であって、前記耐熱性粒子が、前記熱可塑性樹脂の溶融温度で粒子形状を保持可能である熱伝導性樹脂組成物。
【請求項2】
耐熱性粒子の平均粒径が1〜50μmであり、かつ熱伝導率が30W/m・K以下である請求項1記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項3】
耐熱性粒子がタルク又は架橋ポリアクリル酸エステル粒子である請求項1又は2記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項4】
熱伝導性無機フィラーが、板状又は繊維状の導電性又は絶縁性無機フィラーである請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項5】
熱伝導性無機フィラーが窒化ホウ素である請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項6】
熱伝導性無機フィラーと耐熱性粒子との割合(体積比)が、前者/後者=2/1〜1/4である請求項1〜5のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項7】
熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリアミド系エラストマー及び環状オレフィン系エラストマーからなる群から選択された少なくとも一種である請求項1〜6のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項8】
熱伝導性無機フィラーの割合が、組成物全体に対して5〜40体積%であり、かつ熱伝導率が1W/m・K以上である請求項1〜7のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物で構成された熱伝導性シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−144626(P2012−144626A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3340(P2011−3340)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】