説明

熱伝導性組成物

【課題】高い熱伝導性を有するとともに、集積回路(IC)等に配設した場合においても回路に短絡等の不具合を生じさせる恐れがなく、信頼性に優れた熱伝導性シートを得ることが可能な熱伝導性組成物を提供する。
【解決手段】熱伝導性フィラーと、バインダー成分とを含む熱伝導性組成物である。熱伝導性フィラーが、金属アルミニウムからなる粒子状の中心部と、中心部の表面上に形成された、その平均厚みが500nm以上である電気絶縁性の酸化層とからなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱伝導性組成物に関し、更に詳しくは、高い熱伝導性を有するとともに信頼性に優れた熱伝導性シートを得ることが可能な熱伝導性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC)をはじめとする電子機器・電子部品等の発熱部品と、ヒートシンク等の放熱体との間には、発熱部品から発せられる熱を効率的に放熱体の側へと伝達すべく、熱伝導性シートが配設されるのが一般的である。近年、電子機器等からの放熱量が増大する傾向にあるため、熱伝導性シート、及びこれを構成する材料である熱伝導性組成物自体の熱伝導性を更に向上させる必要性がある。
【0003】
熱伝導性組成物の熱伝導性をより一層高めるためには、より高い熱伝導性を有するフィラーを組成物中に混入することが必要である。高熱伝導性フィラーとしては、アルミナ、炭化珪素、窒化ホウ素、及び窒化アルミニウム等のセラミックスフィラーを挙げることができる。関連する従来技術として、その熱伝導率が5.0W/(m・K)以上である高熱伝導性フィラーを用いたフィルム状接着剤が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1においては、アルミナをはじめとするセラミックスやダイヤモンド等が高熱伝導性フィラーの具体例として挙げられている。
【0004】
一方、上述のセラミックスフィラーよりも更に高い熱伝導性を示すものとして銅、銀、鉄、アルミニウム、及びニッケル等の金属フィラーを挙げることができる。関連する従来技術として、熱伝導性充填剤を含む熱伝導性樹脂シート(例えば、特許文献2参照)や、金属又は無機フィラーを含有する放熱フィルム(例えば、特許文献3参照)、及び、金属粉末を用いた、所定の熱伝導率を有するシート層を備えた熱伝導性部材(例えば、特許文献4参照)が開示されている。なお、特許文献2においては、無機充填剤、金属充填剤等が熱伝導性充填剤の具体例として挙げられている。
【0005】
しかし、電気・電子用途に用いられる熱伝導性シートでは、電気伝導性のある金属フィラーは一般に用いることができない。これは、電気伝導性のある金属フィラーを用いた場合、シートの端面から金属フィラーの脱落が起こることが十分にあり得るため、電気回路の短絡等の不具合を生ずる恐れがあるからである。
【0006】
但し、金属フィラーの熱伝導率の値は、セラミックスフィラーの熱伝導率の値より一桁も高いことが知られている。従って、熱伝導性組成物に高い熱伝導性を付与することのみを考えれば、熱伝導性フィラーとしてはセラミックスフィラーよりも金属フィラーを用いることが有効である。しかし、上述のように、金属フィラーを用いた熱伝導性組成物を用いた熱伝導性シートは、電気・電子用途に用いられる熱伝導性シートとしては不向きであるといった問題がある。
【特許文献1】特開平5−117621号公報
【特許文献2】特開2002−128931号公報
【特許文献3】特開2002−371192号公報
【特許文献4】特開2003−243587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高い熱伝導性を有するとともに、集積回路(IC)等に配設した場合においても回路に短絡等の不具合を生じさせる恐れがなく、信頼性に優れた熱伝導性シートを得ることが可能な熱伝導性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、適当なバインダー成分に、電気絶縁性を示す酸化層が金属アルミニウムの表面に形成された熱伝導性フィラーを含有させることによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下に示す熱伝導性組成物が提供される。
【0010】
[1]熱伝導性フィラーと、バインダー成分とを含む熱伝導性組成物であって、前記熱伝導性フィラーが、金属アルミニウムからなる粒子状の中心部と、前記中心部の表面上に形成された、その平均厚みが500nm以上である電気絶縁性の酸化層とからなるものである熱伝導性組成物。
【0011】
[2]前記中心部の平均粒子径が、1〜200μmである前記[1]に記載の熱伝導性組成物。
【0012】
[3]前記バインダー成分が、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、又はエポキシ樹脂である前記[1]又は[2]に記載の熱伝導性組成物。
【0013】
[4]セラミックス、金属酸化物、及び水和金属化合物からなる群より選択される少なくとも一種を更に含む前記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱伝導性組成物は、これに含まれる熱伝導性フィラーが、金属アルミニウムからなる粒子状の中心部と、この中心部の表面上に形成された、その平均厚みが500nm以上である電気絶縁性の酸化層とからなるものである。従って、高い熱伝導性を有するとともに、集積回路(IC)等に配設した場合においても回路に短絡等の不具合を生じさせる恐れがなく、信頼性に優れた熱伝導性シートを得ることが可能であるといった効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜、設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0016】
本発明の熱伝導性組成物の一実施形態は、熱伝導性フィラーと、バインダー成分とを含む熱伝導性組成物であり、熱伝導性フィラーが、金属アルミニウムからなる粒子状の中心部と、この中心部の表面上に形成された、その平均厚みが500nm以上である電気絶縁性の酸化層とからなるものである。以下、その詳細について説明する。
【0017】
(1)熱伝導性フィラー
本実施形態の熱伝導性組成物に必須成分として含まれる熱伝導性フィラーは、金属アルミニウムからなる粒子状の中心部と、この中心部の表面上に形成された電気絶縁性の酸化層とからなる、いわゆる二層構造を有する充填物である。この熱伝導性フィラーの中心部は、セラミックス等に比して高い熱伝導性を有する金属アルミニウムによって構成されている。従って、本実施形態の熱伝導性組成物は、熱伝導性フィラーとしてセラミックスフィラーを用いた場合に比して高い熱伝導性を示すものである。
【0018】
また、本実施形態で用いられる熱伝導性フィラーの中心部の表面上には、、その平均厚みが500nm以上である電気絶縁性を有する酸化層が形成されている。例えば、本実施形態の熱伝導性組成物をシート状に成形加工して熱伝導性シートを作製し、これを電気回路の付近に配設する場合を想定する。この場合、この熱伝導性シートの端面から熱伝導性フィラーの一部が脱落した場合であっても電気回路の短絡等の不具合が生ずる恐れがない。従って、本実施形態の熱伝導性組成物は、集積回路(IC)等に配設するための熱伝導性シートを構成する材料として好適であり、極めて高い信頼性を有する材料である。
【0019】
本実施形態の熱伝導性組成物においては、これに含まれる熱伝導性フィラーの酸化層の平均厚みが700nm以上であることが好ましく、900nm以上であることが更に好ましい。酸化層の平均厚みが500nm未満であると、熱伝導性フィラー全体として十分な電気絶縁性を発揮し得なくなる場合がある。なお、酸化層の平均厚みの上限値については特に限定されないが、中心部の熱伝導性を阻害し過ぎないといった観点からは3000nm以下であることが好ましい。
【0020】
金属アルミニウムからなる中心部の平均粒子径は、1〜200μmであることが好ましく、1〜100μmであることが更に好ましく、1〜80μmであることが特に好ましい。中心部の平均粒子径が1μm未満であると、径が小さすぎであるために十分な熱伝導性が発揮されない場合がある。一方、中心部の平均粒子径が200μm超であると、熱伝導性組成物中に混入することが困難になる傾向にある。なお、本明細書にいう「平均粒子径」とは、粒子形状が真球状である場合にはその直径の平均をいい、粒子形状が楕円球状である場合にはその長径と短径との平均値の平均をいい、粒子形状又は不定形状である場合には最長距離と最短距離との平均値の平均をいう。
【0021】
熱伝導性フィラーは、その平均粒子径が10〜200μmである比較的大きな粒子径群と、その平均粒子径が10μm未満である比較的小さな粒子径群とを組み合わせて用いることが、熱伝導性フィラーの添加量(充填量)を高めることができるために好ましい。更に、シラン、チタネート、又は脂肪酸等で表面処理を施した熱伝導性フィラーを用いることが、熱伝導性組成物を成形加工して得られる熱伝導性シートの内部強度を向上させることができるために好ましい。
【0022】
本実施形態の熱伝導性組成物の全体に占める、熱伝導性フィラーの量(充填量)は、5〜90体積%であることが好ましく、20〜80体積%であることが更に好ましい。充填量が5体積%未満であると、得られる熱伝導性組成物の熱伝導性が低く、十分な熱伝導性が発揮され難くなる傾向にある。一方、充填量が90体積%超であると、熱伝導性組成物を成形加工して得られる熱伝導性シートの内部強度及び柔軟性が低下する傾向にある。
【0023】
本実施形態の熱伝導性組成物に含まれる熱伝導性フィラーは、金属アルミニウム粒子を使用し、これに対して酸化層を形成するために所定の処理を施すことによって作製することができる。酸化層は、金属アルミニウム粒子に対して酸処理、エネルギー線照射処理、電気化学的処理、及び熱処理からなる群より選択される少なくとも一種の処理を施すことにより形成することができる。なお、金属アルミニウム粒子を空気中に単に放置しただけであっても、ある程度の厚みを有する酸化層は形成され得る。但し、上記のいずれかの処理によれば、酸化層の厚みを任意に調整することが可能であるために好ましい。また、上記のいずれかの処理によれば、金属アルミニウム粒子を空気中に単に放置した場合に比して、より電気絶縁性に優れた酸化層が形成されることが期待される。
【0024】
ここで、「酸処理」とは、例えば適当な濃度の有機又は無機酸の水溶液等に金属アルミニウム粒子を入れて混合撹拌する処理をいう。「エネルギー線照射処理」とは、例えば金属アルミニウム粒子表面に対して高圧水銀灯によって紫外線照射する処理をいう。また、「電気化学的処理」とは、例えば金属アルミニウム粒子を陽極酸化する処理をいう。更に、「熱処理」とは、例えば400〜600℃のオーブン中に金属アルミニウム粒子を入れて大気雰囲気下又は酸素雰囲気下で適当な時間放置する処理をいう。
【0025】
(2)バインダー成分
本実施形態の熱伝導性組成物に必須成分として含まれるバインダー成分は、一般的なポリマーであればよく、特に限定されないが、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、又はエポキシ樹脂であることが好ましい。バインダー成分としてこれらの樹脂を用いると、例えば熱伝導性シート、熱伝導性粘着テープ、熱伝導性接着剤等の部材・成形品に成形加工し易く、また、本実施形態の熱伝導性組成物の優れた熱伝導性を有効に利用することができる。
【0026】
(3)その他の添加剤等
本実施形態の熱伝導性組成物においては、セラミックス、金属酸化物、及び水和金属化合物からなる群より選択される少なくとも一種を、上述してきた熱伝導性フィラー以外の熱伝導性フィラー(第二の熱伝導性フィラー)として更に含むことが、得られる熱伝導性組成物や、これを用いた熱伝導性シート等の部材・成形品の熱伝導性を更に高めることができるために好ましい。
【0027】
なお、第二の熱伝導性フィラーは、その平均粒子径が10〜200μmである比較的大きな粒子径群と、その平均粒子径が10μm未満である比較的小さな粒子径群とを組み合わせて用いることが、第二の熱伝導性フィラーの添加量(充填量)を高めることができるために好ましい。更に、シラン、チタネート、又は脂肪酸等で表面処理を施した第二の熱伝導性フィラーを用いることが、熱伝導性組成物を成形加工して得られる熱伝導性シートの内部強度を向上させることができるために好ましい。
【0028】
本実施形態の熱伝導性組成物には、熱伝導性組成物の特性が損なわれない限りにおいて種々の添加剤を添加することができる。具体的には、架橋剤、粘着付与剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、沈降防止剤、増粘剤、超微粉シリカ等のチクソトロピー剤、界面活性剤、消泡剤、着色剤、導電性粒子、静電気防止剤、表面処理剤等を挙げることができる。なお、これらの添加剤を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0029】
難燃剤を添加する場合には、実質的にハロゲンを含有しない難燃剤(以下、「ハロゲン不含難燃剤」と記す)を用いることが好ましい。ハロゲン不含難燃剤としては、例えば有機リン化合物、膨張黒鉛、ポリフェニレンエーテル、又はトリアジン骨格含有化合物を挙げることができる。これらのうち、難燃性の効果を発現する上で最も好ましいものは、有機リン化合物である。なお、これらの難燃剤を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0030】
有機リン化合物は、バインダー成分を構成する単量体と共重合可能なもの、又は実質的に共重合されないもののいずれであってもよい。バインダー成分が(メタ)アクリル樹脂である場合、この(メタ)アクリル樹脂を構成する(メタ)アクリル単量体と共重合可能な有機リン化合物としては、具体的にはリン酸エステル含有(メタ)アクリル単量体が好適である。
【0031】
より具体的には、リン酸ジメチル−(メタ)アクリロイルオキシメチル、リン酸ジエチル−(メタ)アクリロイルオキシメチル、リン酸ジフェニル−(メタ)アクリロイルオキシメチル、リン酸ジメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸ジエチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸ジメチル−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル、リン酸ジエチル−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル、リン酸ジフェニル−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル等を挙げることができる。これらのリン酸エステル含有(メタ)アクリル単量体を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0032】
また、本実施形態の熱伝導性組成物に配合されるリン酸エステル含有(メタ)アクリル単量体の量は、バインダー成分を構成する単量体100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましく、5〜20質量部であることが更に好ましい。1質量部未満であると難燃効果が低くなる場合があり、30質量部超であると得られる熱伝導性シートの柔軟性が低下する場合がある。
【0033】
バインダー成分を構成する単量体と実質的に共重合されない有機リン化合物としては、リン酸エステル類、芳香族縮合リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウム類等を挙げることができる。
【0034】
リン酸エステル類の具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等を挙げることができる。ポリリン酸アンモニウム類の具体例としては、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム、被覆ポリリン酸アンモニウム等を挙げることができる。なお、被覆ポリリン酸アンモニウムとは、ポリリン酸アンモニウムを樹脂で被覆し、又はマイクロカプセル化して耐水性を向上させたものである。
【0035】
本実施形態の熱伝導性組成物に配合される、バインダー成分を構成する単量体と実質的に共重合されない有機リン化合物の量は、バインダー成分を構成する単量体100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることが更に好ましい。5質量部未満であると難燃効果が低くなる場合があり、50質量部超であると、この熱伝導性組成物を用いて得られる熱伝導性シート等の凝集力が低下したり、ブリードが発生したりする場合がある。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
(熱伝導性フィラーの調製)
200gの金属アルミニウム粒子(商品名:VA−200(山石金属社製)、平均粒子径:50μm)と、200gの30質量%硝酸水溶液とを混合し、15分間撹拌した。撹拌完了後にイオン交換水で数回洗浄し、100℃のオーブン中で乾燥して酸処理物を得た。得られた酸処理物について、400℃のオーブン中で30分間の熱処理を行って、熱伝導性フィラーを得た。なお、得られた熱伝導性フィラーについての、後述する「熱伝導性フィラーの表面分析方法」に従って実施したESCAによるエッチング時間は250分であり、酸化層の厚みは約970nmであった。熱伝導性フィラーの表面分析方法(酸化層の厚みの測定方法)を以下に示す。
【0038】
[熱伝導性フィラーの表面分析方法]:得られた熱伝導性フィラーについてESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)によって、フィラーの深さ方向への組成分析を行った。具体的には、先ず、得られた熱伝導性フィラーを両面テープ上に密に敷き詰めて測定試料を作製した。作製した測定試料について、ESCA(商品名:AXISULTRA(Kratos社製))によって、分析面積100μm2に対してエッチング速度38.7Å/min(SiO2換算)で深さ方向への組成分析を行った。Al2pピークとO1sピークの強度から、アルミニウムの原子数と酸素の原子数との組成を算出し、アルミニウムの原子数の組成が90%以上になったエッチング時間を測定した。測定されたこのエッチング時間で酸化層の組成分析が終了したものとし、エッチングした深さを酸化層の厚みとして測定・算出した。
【0039】
(実施例1)
アクリル酸2−エチルヘキシル100質量部、及び紫外線重合開始剤(商品名:イルガキュア651(チバスペシャルティーケミカルズ社製))0.04質量部を混合し、紫外線を照射して、動粘度が約0.001m2/sの部分重合体を得た。
【0040】
得られた部分重合体と、表1に記載の各成分とを、それぞれ表1に記載の質量部でミキサーに投入し、投入した全量を17質量部として、熱伝導性組成物とアルミナを、表2に記載の質量部で投入した。ミキサーの内容物を脱気・混練して熱伝導性組成物(実施例1)を得た。得られた熱伝導性組成物を2枚のライナーで挟持し、カレンダー成形した。成形後、140℃のオーブンで15分間加熱することにより熱重合反応を行い、厚さ1mmの熱伝導性シートを作製した。
【0041】
(比較例1)
熱伝導性フィラー(酸処理及び熱処理し、酸化層を形成した金属アルミニウム粒子)に代えて、未処理の金属アルミニウム粒子(商品名:VA−200(山石金属社製))を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作により熱伝導性組成物(比較例1)を得た。また、実施例1と同様の操作により厚さ1mmの熱伝導性シートを作製した。なお、未処理の金属アルミニウム粒子についての、「熱伝導性フィラーの表面分析方法」に従って実施したESCAによるエッチング時間は30分であり、酸化層の厚みは約120nmであった。
【0042】
得られたそれぞれの熱伝導性シートの熱伝導率を測定した。結果を表2に示す。なお、熱伝導率の測定方法を以下に示す。
【0043】
[熱伝導率]:熱伝導率測定装置(商品名:QTM−D3(京都電子工業社製))を用いて測定した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表2に示すように、実施例1の熱伝導性組成物を用いて作製した熱伝導性シートは、比較例1の熱伝導性組成物を用いて作製した熱伝導性シートと比較して同等の高い熱伝導率を示すものであることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の熱伝導性組成物は、集積回路(IC)をはじめとする電子機器・電子部品等の発熱部品と、ヒートシンク等の放熱体との間に配設されて使用される熱伝導性シートを構成する材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性フィラーと、バインダー成分とを含む熱伝導性組成物であって、
前記熱伝導性フィラーが、金属アルミニウムからなる粒子状の中心部と、前記中心部の表面上に形成された、その平均厚みが500nm以上である電気絶縁性の酸化層とからなるものである熱伝導性組成物。
【請求項2】
前記中心部の平均粒子径が、1〜200μmである請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記バインダー成分が、シリコーン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、又はエポキシ樹脂である請求項1又は2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
セラミックス、金属酸化物、及び水和金属化合物からなる群より選択される少なくとも一種を更に含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。

【公開番号】特開2006−36931(P2006−36931A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219054(P2004−219054)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】