説明

熱伝導性EMIシールド

電磁エネルギー吸収材料が熱伝導性材料、たとえば電子装置に関連した熱管理に使用されるものと一緒にされ、それによってそれを通る電磁妨害(EMI)の伝達を抑制する。
EMI吸収材料と熱伝導性材料を一緒にする材料および方法が開示され、それによってEMI遮蔽の有効性を経済的に効率のよい方法で改善する。1の実施態様では、熱伝導性EMI吸収体が、EMI吸収材料(たとえば、フェライト粒子)と熱伝導性材料(たとえば、セラミック粒子)を一緒にし、それぞれがエラストマーマトリックス(たとえば、シリコーン)中に懸濁されることによって調製される。用途においては、1層の熱伝導性EMI吸収材料が電子機器または部品とヒートシンクとの間に付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に電子用途品の熱管理に、および、もっと特定すると、電磁エネルギー減衰特性を有する熱伝導体に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における使用では、EMIの用語は一般に電磁妨害および無線周波妨害(RFI)の放出の両方を言っていると考えられるべきであり、そして「電磁」の用語は一般に電磁および無線周波を言っていると考えられるべきである。
【0003】
電子機器は避けられない副産物として熱放出を典型的には生じる。生成される熱放出の量はスイッチング速度および発生源の電子部品または機器の複雑さに関連付けられることができる。より新しい電子機器はますます大きいスイッチング速度で作動する傾向があるので、それは、より大きい熱放出も生じることになるであろう。この増加した熱放出は、あるレベルで、発生源の電子部品の機能を、そして他の近くの機器または部品の機能を妨害する危険を引き起こす。
【0004】
したがって、求められていない熱放出は、在りうる望ましくない効果を排除し、または最小化するために、温和に散逸されるべきである。求められていない熱放出の除去に対処する従来技術による解決法は、電子部品の上にサーマルパッドを施し、そしてサーマルパッドにヒートシンクを付けることを含む。ヒートシンクは高い熱伝導性を持つ材料を一般に含む。熱を発生する電子部品と密に接触して置かれたとき、ヒートシンクは部品から熱エネルギーを伝導して逃がす。ヒートシンクはヒートシンクから周囲の環境への熱移動を、たとえば対流によって促進する属性も含む。たとえばヒートシンクは、所定の容積の割りに比較的大きい表面積を与えることになる「フィン」をしばしば含む。
【0005】
さらに、通常の作動下では、電子装置は、放射および伝導によるEMI伝達の故に、近傍に置かれた電子装置の作動を妨害することがありうる、望ましくない電磁エネルギーを典型的には発生する。電磁エネルギーは広い範囲の波長および周波数にわたって存在することができる。EMIに関連した問題を最小化するために、望ましくない電磁エネルギーの発生源は、周囲の環境への放出を減少するために、遮蔽され、そして電気的に接地されることができる。その代わりに、または追加して、EMIを受ける機器も周囲の環境の中でそれをEMIから保護するために同様に遮蔽され、そして電気的に接地されることができる。したがって、遮蔽は、その中に電子機器が配置される障壁、筐体、または他の囲いに対して、電磁エネルギーの侵入および排出の両方を防ぐように設計される。
【0006】
信頼できるEMI設計原理は、望ましくないEMIがその場の環境へ入ることを排除し、それによって妨害の危険を最小化するために、EMIは発生源にできるだけ近くで処理されるべきことを推奨する。残念ながら、ヒートシンクの使用を必要とする部品または機器は発生源でのEMIに対する予防的処理に十分には適していない。何故ならば、そのような処理はヒートシンクの作用を妨げるであろうからである。ヒートシンクは熱伝導経路を与えるために電子部品と蜜に接触しているべきであり、そして、またヒートシンクが対流熱移動を通して機能する余地があるように周囲の環境に開放されているべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、本発明は電磁妨害吸収性で熱伝導性の隙間充填剤、たとえば電磁妨害吸収材料で処理されたエラストマー(たとえば、シリコーン)のパッドに関する。EMI吸収材料は、処理されたサーマルパッドに入射されたEMIの一部を吸収し、それによって作動周波数の全域にわたって、それを通るEMIの伝達を減少させる。吸収材料は損失機構から生じるエネルギーの散逸によって環境からEMIの一部を除くことができる。この損失機構は、誘電性材料中の分極損失および有限の伝導度を持つ伝導性材料中の伝導損失、すなわちオーム損失を含む。
【発明の効果】
【0008】
したがって、第1の面では、本発明は電子機器によって生成される電磁放出を減少するための複合材料に関し、本複合材料は熱伝導性材料および電磁エネルギー吸収材料を組み合わせて含む。熱伝導性材料は機器からの熱エネルギーの移動を促進し、かつ電磁エネルギー吸収材料は機器によって生成された電磁放出を減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1の実施態様では、熱伝導性材料および電磁エネルギー吸収材料の少なくとも1は顆粒である。顆粒は一般に球状、たとえば微小球、または他の形、たとえば粉体、繊維、フレーク、およびこれらの組み合わせであることができる。複合材はマトリックス材料をさらに含み、その中に熱伝導性材料および電磁エネルギー吸収材料が懸濁される。
【0010】
一般に、マトリックス材料は電磁エネルギーに対して実質的に透明であり、たとえば約4より小さい比誘電率および約0.1より小さい損失正接によって規定される。1の実施態様では、マトリックスは液体として調製される。他の実施態様では、マトリックスは固体として調製される。他の実施態様では、マトリックスは、環境温度では固相にあり、そして装置作動温度では液相に転移する相変化材料として調製される。他の実施態様では、マトリックスは熱硬化性材料として調製される。
【0011】
ある実施態様では、熱伝導性EMI吸収体は約0.010インチより厚く、そして約0.18インチより小さい厚さを持つシートに成形される。他の実施態様では、シートは熱伝導性接着層を含む。
【0012】
他の面では、本発明は機器によって生成された電磁放出を減少させる方法に関し、本方法は熱伝導性材料を用意すること、電磁吸収材料を用意すること、および熱伝導性材料を電磁吸収材料と一緒にすることの段階を含む。
【0013】
1の実施態様では、本方法は一緒にされた熱伝導性材料および電磁吸収材料をマトリックス材料中に懸濁する、追加の段階を含む。
【0014】
他の実施態様では、本方法は一緒にされた熱伝導性材料および電磁吸収材料を機器と近傍の構造体の間に、たとえば集積回路とヒートシンクの間に置く、追加の段階を含む。
【0015】
電磁エネルギー吸収特性を持つ材料が、周波数の広い範囲にわたってEMIの伝達を抑制するために使用されることができる。当該EMI吸収材料は実質的な電磁遮蔽の有効性、たとえば約2GHz〜約100GHzで生じるEMI周波数で約5dBまで、またはそれより大きい有効性を提供することができる。
【0016】
本発明に従って、熱伝導性EMI吸収材は、熱伝導性隙間充填剤またはパッドとして利用されることができる基体マトリックス(たとえば、エラストマー)中で、EMI吸収性充填剤と熱伝導性充填剤を一緒にすることによって形成されることができる。一般に、得られる熱伝導性EMI吸収体は任意の熱伝導性材料として、たとえば電子部品(たとえば、「チップ」)とヒートシンクの間に、付与されることができる。
【0017】
図1を引用すると、熱伝導性EMI吸収体(熱伝導性EMIシールド)100は長方形の塊りとして示されている。熱伝導性EMIシールド100の前面はシールド100の内部構成の断面図を表す。すなわち、熱伝導性EMIシールド100は数多くのEMI吸収体110および数多くの熱伝導体120を含み、両方ともマトリックス材料130中に懸濁されている。EMI吸収体粒子110および熱伝導体粒子120のどの粒子も近傍の粒子110、120と接触しているようには示されていないけれども、そのような接触が起きる立体配置は予想される。たとえば、熱伝導性EMIシールド100の熱伝導率は、熱伝導体粒子120がごく近接していて、互いに接触する立体配置では一般に高められるだろう。
【0018】
図1に示された、個々のEMI吸収体110、熱伝導体120の相対的な大きさ、およびマトリックス130の厚さは図示の目的のためだけである。一般に、懸濁された充填剤110、120は非常に小さい(すなわち、顕微鏡でしか見えない)。小さい充填剤粒子110、120は、熱伝導性EMIシールド100の全体の厚さが薄い実施態様、たとえば熱伝導性EMIシールド100の厚さが電子部品/機器またはヒートシンクの厚さよりも実質的に小さい実施態様の余地を与える。
【0019】
同様に、懸濁された粒子110、120の相対的な形はどのような任意の形でもあることができる。図1に示された、懸濁された粒子110、120の楕円形は図示の目的のためだけである。一般に、懸濁された粒子110、120の形は顆粒、たとえば回転楕円体、楕円体、または不規則な回転楕円体であることができる。あるいは、懸濁された粒子110、120の形はストランド、フレーク、粉体、またはこれらの形のどれかまたはすべての組み合わせであることができる。
【0020】
EMI吸収体110は電磁エネルギー(すなわち、EMI)を吸収する機能を果たす。具体的には、EMI吸収体110は電磁エネルギーを、一般に損失と呼ばれる過程を通して、他の形のエネルギーに変換する。電気損失機構は伝導損失、誘電損失、および磁化損失を含む。伝導損失は電磁エネルギーの熱エネルギーへの変換から生じる、EMIの減少のことを言う。電磁エネルギーは有限の伝導率を持つEMI吸収体110の中を流れる電流を誘導する。有限の伝導率は誘導電流の一部が抵抗を通って熱を発生する結果を生じる。誘電損失は、電磁エネルギーが、非一元的な比誘電率を持つ吸収体110内の分子の力学的変位へ変換されることから生じる、EMIの減少のことを言う。磁化損失は、電磁エネルギーが、EMI吸収体110内の磁気モーメントの再配置へ変換されることから生じる、EMIの減少のことを言う。
【0021】
ある実施態様では、EMI吸収体110は空気より良い熱伝導率を示す。たとえば、そのEMI吸収特性の故に、EMI吸収体110として選ばれた球形の鉄粒子は、あるレベルの熱伝導性もまた提供する。しかし一般には、同程度の厚さのEMI吸収材110の熱伝導率は、実質的に非EMI吸収性の熱伝導体120、たとえばセラミック粒子によってもたらされる熱伝導率の値よりも実質的に小さい。
【0022】
一般に、EMI吸収体110は、電導性材料、メタリックシルバー、鉄カルボニル粉体、SENDUST(鉄85%、ケイ素9.5%およびアルミニウム5.55を含む合金)、フェライト、ケイ化鉄、磁性合金、磁性フレーク、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。ある実施態様では、EMI吸収体110は磁性材料である。1の特定の実施態様では、EMI吸収体110は約1.0GHzで約3.0より大きい、そして10GHzで約1.5より大きい比透磁率を持つ。
【0023】
熱伝導体120は空気の熱インピーダンス値より実質的に小さい熱インピーダンス値を含む。低い値の熱インピーダンスは熱伝導体120が熱エネルギーを効率的に伝導することを可能にする。一般に、熱伝導体120は窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素、鉄(Fe)、金属酸化物およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。ある実施態様では、熱伝導体はセラミック材料を含む。1の特定の実施態様では、熱伝導体120は約1.5ワット/m−℃より大きい熱伝導率の値を持つFe−AlN(それぞれ40容積%および20容積%)を含む。試験サンプルの熱伝導率を測定するための試験手順、ならびに測定された熱伝導率の試験結果を含む、具体例としての試験報告書が付録Aとして本明細書に付けられ、そしてその全体が本明細書に取り込まれる。
【0024】
一般に、マトリックス材料130は、それが多くのヒートシンクの用途品に見られる表面欠陥(たとえば、電子部品または機器とヒートシンクとの向かい合う表面の表面欠陥)に適合することができるような特性を持つように選ばれる。マトリックス材料130の他の望ましい特性はマトリックス130が、マトリックス130の他の有利な特性、たとえば適合性、追従性、および弾力性を損なうことなく、実質的な容積の粒子110、120(たとえば、約60容積%まで)を受け入れ、そして懸濁することができる能力を含む。一般に、マトリックス材料130はEMI吸収体110の吸収作用を妨げないように、電磁エネルギーに対して実質的に透明でもある。たとえば、約4より小さい比誘電率および約0.1より小さい損失正接を示すマトリックス材料130はEMIに対して実質的に透明である。しかし、この範囲外の値も意図される。
【0025】
一般に、マトリックス材料130は固体、液体、または相変化材料として選ばれることができる。マトリックス材料130が固体である実施態様はさらに熱可塑性材料および熱硬化性材料を含む。熱可塑性材料は加熱され、そして成形され、さらに繰り返して再加熱され、そして再成形されることができる。熱可塑性重合体分子の形は一般に線状、またはわずかに分岐していて、分子が有効な融点より上に加熱されると圧力下に流動することを可能とする。熱硬化性材料も加熱され、そして成形されることができるが、しかし再処理される(すなわち、再加熱されたときに圧力下に流動するようにされる)ことはできない。熱硬化性材料は加熱されたときに、化学的変化ならびに相変化をする。その分子は3次元の架橋網を形成する。
【0026】
ある固体の実施態様では、マトリックス材料130はエラストマー、天然ゴム、合成ゴム、PDP、エチレン−プロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。他の実施態様では、マトリックス材料130は重合体を含む。マトリックス材料130は、シリコーン、フルオロシリコーン、イソプレン、ニトリル、クロルスルホン化ポリエチレン(たとえば、HYPALON(商品名))、ネオプレン、フルオロエラストマー、ウレタン、熱可塑性物、たとえば熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリアミドTPEおよび熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ならびにこれらの組み合わせからなる群からも選ばれる。
【0027】
図2を引用すると、電子部品200が回路基板210の上に搭載されて示され、ヒートシンク220と合わされている、典型的な用途品が示されている。電子部品200は電子回路(たとえば、超小型回路、すなわち、「チップ」)であることができる。あるいは、電子部品200は電子機器、たとえば1以上の電子部品を含む(たとえば、金属製筐体、すなわち「缶」内に搭載された)パッケージ化されたモジュールであることができる。どちらの例でも、電子部品200は、その電子的機能の副産物として、電子部品200がその設計限界内で作動し、そして過熱による物理的損傷から保護されることを確保するために、散逸されるべきである熱エネルギーを生み出す。
【0028】
一般に、ヒートシンク220は主体部品200から熱を散逸させるための装置である。ヒートシンク220はまず、主体部品200から熱を伝導によって吸収する。ヒートシンク220は次いで吸収された熱を対流によって周囲の空気に散逸する。選ばれたヒートシンク220の特定の種類または形態は重大ではない。むしろ、ヒートシンク220は数多くの多様な、商業的に手に入るヒートシンクの任意の1つ、または注文設計されたヒートシンクでさえもあってよい。
【0029】
熱伝導性EMIシールド230は部品200からヒートシンク220への熱伝導を促進する。一般に、熱伝導性EMIシールド230の厚さ(保護される部品200とヒートシンク220の間の広がり)は予め決められた最大値よりも小さい。たとえば、1の実施態様では、熱伝導性EMIシールド230は約0.18インチより小さい最大厚さを持つ。さらに、熱伝導性EMIシールド230の厚さは予め決められた最小値よりも一般に大きい。熱伝導性EMIシールドが薄過ぎると、部品200からEMIを十分に吸収するには不十分な容積のEMI吸収材料が供給されることになろう。たとえば、1の実施態様では、熱伝導性EMIシールド230は約0.01インチより大きい最小厚さを持つ。
【0030】
1の典型的な立体配置では、0.125インチの厚さを持つ熱伝導性EMIシールド230は、約5GHzから少なくとも約18GHzまでの周波数範囲で、少なくとも約5dBの減衰を示す。他の典型的な立体配置では、0.02インチの厚さを持つ熱伝導性EMIシールド230は、約10GHzから上に広がる周波数範囲に、少なくとも約3dBの減衰を示す。他の典型的な立体配置では、0.04インチの厚さを持つ熱伝導性EMIシールド230は、約9GHzから少なくとも約15GHzまでの周波数範囲で、少なくとも約10dBの減衰を、そして約15GHzから上に広がる周波数範囲で、少なくとも約6dBの減衰を示す。さらに他の典型的な立体配置では、0.060インチ±0.005インチの厚さを持つ熱伝導性EMIシールド230は、約4GHzから上に広がる周波数範囲で、少なくとも約5dBの減衰を示し、約6GHzから少なくとも約10GHzまでの周波数範囲で、少なくとも約10dBの、もっと大きい減衰を持つ。ニトリルゴム化合物の複素(実数部および虚数部)比誘電率(ε)および複素(実数部および虚数部)比透磁率(μ)の典型的な値は表にされ、そして本明細書に付録Bとして提示され、その全体が本明細書に取り込まれる。
【0031】
図3Aを引用すると、熱伝導性EMIシールドはシートの外形で示される。一般に、熱伝導性EMIシールドはシート300として成形されることができる。シート300は長さ(L’)、幅(W’)、および厚さ(T’)を含む。1の実施態様では、長さおよび幅は特定の用途品の大きさ、たとえばヒートシンク220があてがわれるであろう電子部品200の長さおよび幅に従って選択されることができる。他の実施態様では、シート300は予め決められた大きさ、たとえば26インチの長さ、6インチの幅、および0.030インチまたは0.060インチのどちらかの厚さに製作されることができる。しかし、任意の大きさも意図される。
【0032】
熱伝導性EMIシールド100のさらに他の実施態様は、今、説明されたシート300を含み、さらに接着層310を含むことができる。接着層310は熱伝導性接着剤であることができ、全体の熱伝導性を保つ。接着層310はヒートシンク220を電子部品200へ付着するのに使用されることができる。ある実施態様では、シート300は第2の接着層を含み、この2層はヒートシンク220の電子部品200への接着を促進する。ある実施態様では、接着層310は感圧性、熱伝導性接着剤を用いて処方される。感圧接着剤(PSA)はアクリル、シリコーン、ゴム、およびこれらの混合物を含む化合物に、一般に基づくことができる。熱伝導性は、たとえばセラミック粉体を含めることによって高められる。
【0033】
他の実施態様では、図3Bを今度は引用すると、熱伝導性EMIシールドはテープ320として成形されることができる。テープ320は、たとえば接着剤裏貼りテープの慣用のロールに形が似た、ロール330に保存されることができる。テープ320は図3Aのシート300に関連して既に説明されたものと同じような構造および組成の特徴を一般に示す。シート300と同じように、テープ320は第2の幅(W’’)および第2の厚さ(T’’)を含む。一般に、テープロールの実施態様の長さは任意である。何故ならばテープ320の長さは在りうる個々の用途品より実質的に長いからである。したがって、意図された用途品に適した長さのテープ320はロール330から分ける(たとえば、「切り出される」)ことができる。ここでも、既に説明されたシート300と同じように、テープ320は第1の接着層340を含むことができる。テープ320は、固定用両面テープに似た第2の接着層も含むことができる。
【0034】
図4を今度は引用すると、シート400として構成された熱伝導性EMIシールド100の他の実施態様が示される。この実施態様では、所望の用途品の形、たとえば長方形410’および楕円形410’’(一般に410)がシート400から打ち抜かれることができ、それによって任意の所望の2次元形の熱伝導性EMIシールド100を作り出す。したがって、シート400は打ち抜かれ、用途品の形410の所望の外形を製造することができる。あるいは、用途品の形410の所望の外形は図3Aに示された空のシート300から注文により切り出されることができる。
【0035】
さらに他の実施態様では、熱伝導性EMIシールド材料は任意の所望の形に予め成形されることができる。図5を今度は引用すると、非平面の用途品での予成形されたシールド500が示される。熱伝導性EMIシールドは任意の所望の形、たとえば図示された長方形のトラフ、円筒形のトラフ、または半円形のトラフに鋳造され、または押出されることができる。当該非平面の熱伝導性EMIシールド500は非平面の電気部品200、たとえば円筒形の機器または部品(たとえば、「缶」)に関連して使用されることができる。
【0036】
図6を引用すると、液体の熱伝導性EMIシールド600の実施態様が示される。一般に、容器610が液体の熱伝導性EMIシールド溶液620を収容しているのが示される。溶液620の一部「A」がもっと詳細に「詳細図A」と名付けられた挿入図に示される。詳細図は溶液620がEMI吸収体粒子630および熱伝導体粒子640を含み、そのそれぞれが液体マトリックス650中に懸濁されていることを示す。一般に、粒子630、640の属性は、図1に関連して説明された、対応する粒子110、120の属性に類似している。図1に関連して説明されたマトリックスと同様に、液体のマトリックス650は電磁放射に対して実質的に透明である。液体のマトリックス650は、処理されるべき、付与可能な表面上に塗布されることができる液体として作られることができる。あるいは、液体のマトリックス650はゲル、たとえばグリースとして、またはペーストまたはその場充填化合物として作られることができる。ある実施態様では、液体の熱伝導性EMIシールド600は意図された表面に、塗布、スプレー、または他の適当な方法で付与されることができる。マトリックス材料もシリコーン、エポキシ、ポリエステル樹脂およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれた液体であることができる。
【0037】
1の実施態様では、図1に示されたマトリックス130は、固体と液体の両方の特性を持つ、適当に選択された相変化材料である。環境温度では、相変化材料は固体として挙動し、取り扱いと貯蔵の容易さを提供する。しかし、相変化材料は装置作動温度で、またはそれより下で再流動温度を示し、それによって「濡れ作用」を可能にする。マトリックス130は再流動し、複合材料100のEMI吸収体粒子110および熱伝導性粒子120が、在りうる隙間、たとえば表面欠陥によって生じた隙間に流れ込むことを可能とする。
【0038】
図7を引用すると、電子部品700、ヒートシンク710、および熱伝導性EMIシールド720の断面図の拡大された詳細が示される。子700およびヒートシンク710のそれぞれの、または両方の表面欠陥730も示される。表面欠陥730は例示の目的で誇張された方法で表現されている。表面欠陥730に流れ込む能力があるので、液体または相変化材料として処方されたマトリックス650は空気の隙間を取り除き、それによって機器700および結合されたヒートシンク710の間の熱インピーダンスを最小にする。空気の隙間を取り除く全般的な効果は、電子部品700とヒートシンク710の間の熱インピーダンスを減少させ、改善された熱移動効率を達成させる。マトリックス材料は、約51℃の融点を持つパラフィンワックスと約74℃の融点を持つ28%エチレン−酢酸ビニル共重合体の混合物であることができる。たとえば、パラフィンワックス95重量部とエチレン−酢酸ビニル共重合体5重量部の混合物が使用されることができる。代わりに、パラフィンワックス25重量部とエチレン−酢酸ビニル共重合体6重量部の混合物が使用されることができる。さらに代わりに、マトリックス材料は、約100℃の融点および約1000の分子量を持つ合成ワックスであることができる。当該ワックスはフィッシャー−トロプシュ法ワックスとして知られた種類のものである。
【0039】
図8を引用すると、流れ図が示され、熱伝導性EMI吸収体100、たとえば図1または図6に示された実施態様を調製する方法を描いている。EMI吸収体粒子110、630は段階800で供給される。熱伝導性粒子120、640も段階810で供給される。EMI吸収体粒子110、630および熱伝導性粒子120、640は一緒にされ、そして固体マトリックス材料130または液体マトリックス材料650中に懸濁される。調製され次第、複合熱伝導性EMIシールド100、600は段階830で電子部品200、700とヒートシンク220、710の間に付与される。
【0040】
典型的な、そして好ましい実施態様を示したので、当業者は多くの変形が、請求された本発明の範囲および精神内で可能であることを理解するだろう。したがって、すべての変形物および均等物を含めて、特許請求の範囲によってのみ本発明を限定することが趣旨である。
【0041】
付録A
試験報告書
【0042】
目的:
本報告書は、熱伝導性充填剤を含み、良好な熱伝導性をも提供する、複数の電磁エネルギー吸収材料の熱伝導率の試験をまとめる。
【0043】
部分の説明:
3つの試験サンプルが調製され、そして熱特性が試験された。サンプルのそれぞれは、電磁表面波を吸収するように処方された鉄(Fe)充填エラストマー材料から成っていた。試験サンプルのいくつかの具体的な詳細が下の表1に載せられている。
【0044】
【表1】

【0045】
試験手順:
熱抵抗試験が内部試験手順に従って、およびASTM規格D5470に従って実施された。試験サンプルは最初に熱インピーダンス試験具の大きさに合う1インチ直径の円に切り出された。熱抵抗測定のすべては50℃、および100psiでなされた。
【0046】
固定試験機900が図9に示される。試験サンプル910は、図9に示されたように試験機900内に積み重ねられた2の磨かれた金属板920、930の間に置かれる。熱が加熱板940から供給され、加熱板940は、加熱板940の上、およびまわりに置かれた保護ヒーター950に同じ温度を与えることによって、試験方向以外のあらゆる方向への熱損失から保護される。上部計量ブロック920は加熱板940の直下に置かれ、そして次に試験サンプル910、続いて下部計量ブロック930が置かれる。熱は試験架の底部から水冷の冷却板960を用いて抜き出される。計量ブロック920,930に埋め込まれた熱電対970が試験サンプル910の各面の表面温度を外挿するのに使用される。これは、試験サンプルの熱伝導率よりもずっと大きい熱伝導率を持つ基準物質、SRM 1462を使用してなされる。
【0047】
試験の間、サンプルは空気筒を用いて一定の圧力で圧縮される。試験架はその後、その時点でサンプルの熱抵抗が計算される定常状態に達するのが可能となる。いくつかの厚さの材料(名目上、5個)の熱抵抗が測定され、そしてプロットされれば、熱伝導率が、このデータを通る最小2乗法最適合直線の傾きの逆数として計算される。
【0048】
試験結果:
3つの吸収体試験サンプルの熱伝導率が表2に示される。2つの標準的な吸収体材料、サンプルNo.1およびサンプルNo.2は非常に似た熱伝導率(約1.0ワット/m−℃)を持ち、一方、第3の吸収体材料、サンプルNo.3は実質的に、これらより高い熱伝導率(約1.5ワット/m−℃)を持つ。
【0049】
【表2】

【0050】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は典型的な構成要素を明らかにする、熱伝導性EMI吸収体の実施例の透視図を示す概略図である。
【図2】図2は熱伝導性EMI吸収体、たとえば図1に例示された実施例の典型的な用途品の透視図を示す概略図である。
【図3A】図3Aはシートとして成形された、熱伝導性EMI吸収体の他の実施例の透視図を示す概略図である。
【図3B】図3Bはロール巻きできるテープとして成形された、熱伝導性EMI吸収体の他の実施例の透視図を示す概略図である。
【図4】図4は、所望の形が、たとえば図3Aのシートから切り出されている、図1に示された熱伝導性EMI吸収体の他の実施例を示す概略図である。
【図5】図5は、シールドが予め決められた形に従って予成形された、図1に示された熱伝導性EMI吸収体の他の実施例の透視図を示す概略図である。
【図6】図6は、流動できる形の、たとえば液体としての熱伝導性EMI吸収体の他の実施例の概略図である。
【図7】図7は、流動できる熱伝導性EMI吸収体、たとえば図6に示された実施例の典型的な用途品の透視図を示す概略図である。
【図8】図8は、熱伝導性EMI吸収体、たとえば図1に例示された実施例を調製する方法の実施例を示す流れ図である。
【図9】図9は、本発明の熱伝導性EMIシールドの熱伝導率を測定するのに使用される固定試験機の概略平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器によって生成される電磁放出を減少するための熱伝導性複合材料であって、当該熱伝導性複合材料が、
熱伝導性材料、および、
電磁エネルギー吸収材料、
を組み合わせて含み、当該熱伝導性材料が当該電子機器からの熱エネルギーの移動を促進し、かつ当該電磁エネルギー吸収材料が該機器によって生成される電磁放出を減少する、熱伝導性複合材料。
【請求項2】
当該熱伝導性材料および当該電磁エネルギー吸収材料の少なくとも1が、回転楕円体、楕円体および不規則な回転楕円体からなる群から選ばれた形を持つ顆粒の形態をした粒子を含む、請求項1に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項3】
当該熱伝導性材料および当該電磁エネルギー吸収材料の少なくとも1が、ストランド、フレーク、粉体およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれた形態を持つ粒子を含む、請求項1に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項4】
当該熱伝導性材料が窒化アルミニウム、窒化ホウ素、鉄、金属酸化物およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項5】
当該熱伝導性材料がセラミック材料である、請求項1に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項6】
当該電磁エネルギー吸収材料が電導性材料;メタリックシルバー;鉄カルボニル粉体;鉄、ケイ素およびアルミニウムの合金;フェライト;ケイ化鉄;磁性合金;磁性フレーク;磁性材料;およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項7】
当該熱伝導性材料および当該電磁エネルギー吸収材料がマトリックス材料中に懸濁されている、請求項1に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項8】
当該マトリックス材料が電磁エネルギーに対して実質的に透明である、請求項7に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項9】
当該マトリックス材料が約4より小さい比誘電率および約0.1より小さい損失正接を持つ、請求項8に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項10】
当該マトリックス材料がエラストマー、天然ゴム、合成ゴム、PDP、EPDMゴム、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項7に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項11】
当該マトリックス材料が重合体を含む、請求項7に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項12】
当該マトリックス材料がシリコーン、フルオロシリコーン、イソプレン、ニトリル、クロルスルホン化ポリエチレン、ネオプレン、フルオロエラストマー、ウレタン、熱可塑性プラスチック、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリアミドTPE、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項7に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項13】
当該マトリックス材料が熱可塑性および熱硬化性材料からなる群から選ばれた固体材料である、請求項7に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項14】
当該マトリックス材料が液体である、請求項7に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項15】
当該液体がシリコーン、エポキシ、ポリエステル樹脂、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項14に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項16】
当該マトリックス材料が環境温度では固相で存在し、そして装置作動温度では液相に転移する相変化材料を含む、請求項7に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項17】
当該マトリックス材料がパラフィンワックスとエチレン−酢酸ビニル共重合体の混合物を含む、請求項7に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項18】
当該マトリックス材料が約100℃の融点および約1000の分子量を持つ合成ワックスを含む、請求項7に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項19】
当該電磁エネルギー吸収材料が約1.0GHzで約3.0より大きい、そして10GHzで約1.5より大きい比透磁率を持つ、請求項1に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項20】
当該複合材料が約0.01インチより大きい厚さを持つシートの形態をしている、請求項1に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項21】
当該複合材料が約0.18インチより小さい厚さを持つシートの形態をしている、請求項1に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項22】
当該複合材料がシートの形態をしていて、そしてさらに当該シートの少なくとも1面上に接着剤を含む、請求項1に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項23】
当該接着剤が熱伝導性接着剤である、請求項22に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項24】
当該接着剤が感圧性、熱伝導性接着剤である、請求項22に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項25】
当該接着剤がアクリル、シリコーン、ゴムおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれた化合物に基づいている、請求項22に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項26】
当該接着剤がさらにセラミック粉体を含む、請求項22に記載された熱伝導性複合材料。
【請求項27】
(a)熱伝導性材料を用意すること、
(b)電磁エネルギー吸収材料を用意すること、そして、
(c)熱伝導性材料を電磁エネルギー吸収材料と一緒にすること、
の段階を含む、機器によって生成される電磁放出を減少する方法。
【請求項28】
一緒にされた熱伝導性材料および電磁エネルギー吸収材料をマトリックス材料中に懸濁させる段階をさらに含む請求項27に記載された方法。
【請求項29】
一緒にされた熱伝導性材料および電磁エネルギー吸収材料を当該機器および近傍の構造体の間に置く段階をさらに含む請求項27に記載された方法。
【請求項30】
近傍の構造体がヒートシンクを含む、請求項29の方法。
【請求項31】
当該機器が集積回路を含む、請求項29の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−504272(P2006−504272A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546972(P2004−546972)
【出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2003/033353
【国際公開番号】WO2004/037447
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(502207183)レアード テクノロジーズ,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】