説明

熱伝導材料及びそれを用いた熱伝導部材

【課題】従来品の熱伝導率と同等の熱伝導率を維持しつつ、シリコーンゴムを用いないで済むような熱伝導材料の開発、及び、それを用いた熱伝導部材の提供。
【解決手段】母材と当該母材に対して含有される植物焼成物とを備え、前記母材に対する植物焼成物の含有率と当該植物焼成物の焼成温度との少なくとも一方を制御することによって製造されている熱伝導部材。前記植物焼成物は、大豆皮、菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハル、大豆殻、カカオハスクのいずれかの焼成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導材料及びそれを用いた熱伝導部材に関し、特に、板状、ペースト状などの熱伝導部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリコーンゴムを含み、加硫後の成形体の熱伝導率が0.4W/m・K以上、体積固有抵抗値が109 Ω・cm以上である熱伝導性・電気絶縁性シリコーンゴム組成物が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−053864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、シリコーンゴムを含む熱伝導部材は、スイッチ、リレーなどの接点障害を引き起こすシロキサンガスの発生が懸念されるなどの問題がある。このため、シリコーンゴムを用いることなく、従来品と同等以上の熱伝導率が得られる代替品が要求されている。
【0005】
そこで、本発明は、従来品の熱伝導率と同等の熱伝導率を維持しつつ、シリコーンゴムを用いないで済むような熱伝導材料の開発、及び、それを用いた熱伝導部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の熱伝導部材は、
母材と当該母材に対して含有される植物焼成物とを備え、
前記母材に対する植物焼成物の含有率と当該植物焼成物の焼成温度との少なくとも一方を制御することによって製造されている。
【0007】
また、本発明の熱伝導材料は、上記植物焼成物を含む。
【0008】
植物焼成物は、大豆皮、菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハル、大豆殻、カカオハスクなどの焼成物を用いることができる。母材には、エチレン・プロピレンジエンゴム、塗料、セメントなどを用いることができる。
【0009】
本発明によれば、例えば、上記各植物の場合、母材に対して200phrの含有率とし、かつ、焼成温度を900℃以上とすれば、0.4[W/(m・K)]以上の熱伝導率を得ることができる。
【発明の実施の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、まず、大豆皮、菜種粕、コットンハル、胡麻粕、綿実粕、カカオハスクのいずれかを炭化焼成することによって植物焼成物を製造する。ここで、大豆等を原材料として食用油等を製造することによって、大量の大豆皮等が発生している。これらの大半は牧畜用の飼料や農業用の肥料に再利用されているが、更なる用途も模索されている。エコロジーの観点から日夜研究した結果、大豆皮等の更なる再利用として、大豆皮等の焼成物を熱伝導材料及び熱伝導部材として有益に用いられることを見出した。
【0011】
植物焼成物は、例えば約900[℃]の温度で、静置炉、ロータリーキルンなどの炭化装置を用いて、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下或いは真空中で大豆皮等を焼成することによって得る。そして、大豆皮等の焼成物を粉砕し、例えば106μm四方のメッシュを用いて篩分けする。こうすると、大豆皮等の焼成物全体のうち、その80%程度が85μm以下となるものが得られる。この場合のメディアン径は、例えば約30μm〜約60μmとなる。
【0012】
なお、メディアン径は、SHIMADZU社のレーザ回折式粒度分布測定装置SALD−7000などを用いて測定した。本実施形態では、メディアン径が例えば30μm〜約60μmの大豆皮等の焼成物、及び、それを選択的に更に微粉砕して、最小のメディアン径で約1μmとした。
【0013】
なお、本明細書でいう微粉砕とは、微粉砕前のもののメディアン径を約1桁オーダー程度下げるように粉砕することをいう。したがって、例えば、粉砕前のメディアン径が30μmであれば、3μmとなるように粉砕することをいう。もっとも、微粉砕は、微粉砕前のもののメディアン径を厳密に約1桁オーダー下げるという意味ではなく、微粉砕前のもののメディアン径が、例えば、1/5〜1/20となるように粉砕することも含む。なお、本実施形態では、微粉砕後のメディアン径が最小の場合で1μmとなるような態様で粉砕を行った。
【0014】
図1は、本実施形態の熱伝導部材の電磁波シールド特性の測定結果を示すグラフである。この熱伝導部材は、母材であるところのエチレン・プロピレンジエンゴムなどに、大豆皮等の焼成物であるところの熱伝導材料を配合したものとしている。図1(a)には、大豆皮の焼成物の測定結果を示す。図1(b)には、生大豆皮(=焼成前の大豆皮)に対して液体状のレゾール型フェノール樹脂を、75[wt.%]対25[wt.%]の割合で混合した焼成物の測定結果を示す。
【0015】
なお、生大豆皮に対してレゾール型フェノール樹脂を混合すると、大豆皮の焼成物の強度、炭素量の向上を図ることができる。もっとも、当該混合自体は、本実施形態の熱伝導材料及び熱伝導部材の製造上、必ずしも必要ではない点に留意されたい。
【0016】
図1(a),図1(b)の横軸は周波数[MHz]を示し、縦軸は電磁波遮蔽量[dB]を示している。また、図1(a),図1(b)に示す測定結果の測定対象は、いずれも、大豆皮の焼成物のメディアン径を約60μm、大豆皮の焼成温度を約900[℃]、板状の熱伝導部材の厚さ(板厚)を約2.5[mm]としている。
【0017】
なお、この電磁波シールド特性は、2007年7月5日に山形県工業技術センター置賜試験場にて、シールド効果評価器(アドバンテスト社製:TR17301A)とスペクトラムアナライザー(アドバンテスト社製:TR4172)とを用いて行った。
【0018】
図1を見ると、母材に対する熱伝導材料の含有率が高まるにつれて、電磁波遮蔽量が向上していることがわかる。ここで、注目すべき点がいくつかあるが、第1に、本実施形態によれば、母材に対する大豆皮の焼成物の含有率を自由に調整できるという点である。さらに、特出すべきは、大豆皮を含む植物焼成物全般の場合、母材に対する含有率を高められるという点である。図1に示すように、本実施形態の熱伝導部材は、大豆皮の焼成物の含有率を多くすることで、電磁波遮蔽量が向上するといった特性がある。
【0019】
ここで、エチレン・プロピレンジエンゴムへの含有対象を、大豆皮の焼成物に代えてカーボンブラックとしてみたところ、エチレン・プロピレンジエンゴムに対して100[phr]もの量のカーボンブラックを含有させたのでは、熱伝導部材の可撓性が低下することがわかった。
【0020】
そして、そもそも、ゴムに対して400[phr]もの量のカーボンブラックを含有させることは不可能とは言わないまでも、その実現は非常に困難である。これに対して、本実施形態の熱伝導部材の場合には、ゴムに対して約400[phr]もの量の大豆皮の焼成物を含有させることができる。
【0021】
第2に、本実施形態の熱伝導部材は、母材に対する大豆皮の焼成物の含有率を高められる結果、電磁波遮蔽量を著しく向上させられるといった利点を有する。また、見方を変えれば、本実施形態の熱伝導部材は、母材に対する大豆皮の焼成物の含有率を調整することによって、電磁波遮蔽量を制御しやすいという利点も有する。
【0022】
図1に示すように、特に、50[MHz]付近の周波数帯域において、優れた電磁波遮蔽量が確認できる。具体的には、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率が約400[phr]であれば、500[MHz]までの周波数帯域における、電磁波遮蔽量が20[dB]以上を保持していて、その最高値は40[dB]を超えている。
【0023】
この数値は、一般的に市販されている電磁波シールド材の電磁波遮蔽量が5[dB]〜25[dB]の納まるものが大半であることからすると驚異的な数値である。同様に、大豆皮の焼成物の含有率が約300[phr]の場合であっても、300[MHz]以下という周波数帯域で、電磁波遮蔽量が20[dB]以上を保持していることもわかる。
【0024】
図19は、図1に示す電磁波シールド特性の測定範囲を拡大した測定結果を示すグラフである。図19の横軸は周波数[MHz]を示し、縦軸は電磁波遮蔽量[dB]を示している。なお、図1では500[MHz]までの周波数帯域を測定範囲としていたが、図19では1000[MHz]までの周波数帯域を測定範囲としている。また、ここでは、生大豆にレゾール型フェノール樹脂を含有させずに、焼成させたものを測定対象としている。
【0025】
まず、500[MHz]までの周波数帯域に着目すると、電磁波遮蔽量は、図1のグラフと同様の測定結果が得られたことがわかる。一方、500[MHz]〜1000[MHz]までの周波数帯域に着目すると、600[MHz]までは、いずれの測定対象も、電磁波遮蔽量が減少することがわかる。
【0026】
しかし、その後、ほとんどの測定対象は、800[MHz]くらいの周波数帯域まで電磁波遮蔽量が向上する。そして、約900[MHz]〜約1000[MHz]にかけて、再び、電磁波遮蔽量が減少することがわかる。
【0027】
図20(a)〜図20(d)は、菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハルの焼成物についての電磁波シールド特性の測定結果を示すグラフである。図48は、カカオハスクの焼成物についての電磁波シールド特性の測定結果を示すグラフである。図20(a)〜図20(d)及び図48の横軸は周波数[MHz]を示し、縦軸は電磁波遮蔽量[dB]を示している。また、図20(a)には菜種粕、図20(b)には胡麻粕、図20(c)には綿実粕、図20(d)にはコットンハルのそれぞれの電磁波シールド特性の測定結果を示している。
【0028】
なお、菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハル、カカオハスクを、900[℃]の焼成温度で焼成して得られる焼成物を粉砕し、例えば106μm四方のメッシュを用いて篩分けしたところ、それらのメディアン径は、それぞれ、約48μm、約61μm、約36μm、約34μm、約39μmであった。したがって、以下、単に、菜種粕等の焼成温度が900[℃]であると明示する場合には、その菜種粕等の焼成物は、メディアン径が約48μm等であることを意味する。
【0029】
まず、図20(a)〜図20(d)及び図48と図19とを相互に比較すると、これらの間の電磁波シールド特性には、同様の傾向がみられることがわかる。具体的には、いずれのグラフでも、約500[MHz]まではゴムに対する焼成物の含有量が多くなるにつれて、電磁波遮蔽量が向上する傾向にある。
【0030】
また、いずれのグラフでも、植物の焼成物の含有量が400[phr]の場合には、最高値としては、30[dB]を超える電磁波遮蔽量が確認できる。さらに、700[MHz]〜1000[MHz]の周波数帯域において小さな電磁波遮蔽量のピークが形成されることも確認できる。
【0031】
図21(a)〜図21(c)は、大豆皮の焼成物の製造条件等を変更した場合の電磁波シールド特性の測定結果を示すグラフである。図21(a)〜図21(c)の横軸は周波数[MHz]を示し、縦軸は電磁波遮蔽量[dB]を示している。
【0032】
また、図21(a)には焼成温度を900[℃]のままとして大豆皮の焼成物を微粉砕したもの、図21(b)には大豆皮の焼成温度を1500[℃](厳密には、一旦、900[℃]での焼成物を1500[℃]で二次焼成した。以下同じ。)とし微粉砕していないもの、図21(c)には大豆皮の焼成温度を3000[℃](厳密には、一旦、900[℃]での焼成物を3000[℃]で二次焼成した。以下同じ。)とし微粉砕していないもののグラフを、それぞれ示している。
【0033】
図21(a)に示すように、大豆皮の焼成物を微粉砕した場合には、微粉砕しないものに比して、ゴムに対する焼成物の含有量に拘わらず、総じて、電磁波遮蔽量が減少する傾向がある。具体的にみてみると、ゴムに対する植物の焼成物の含有量が400[phr]の場合には、最高値でも約25[dB]程度までしか電磁波遮蔽量が確認できなかった。これに対して、図1に示した900℃で焼成し微粉砕しないものでは、40[dB]を超える。このことから、焼成物の粒径が大きいほど、電磁波遮蔽量が向上しているといえよう。
【0034】
図21(b)に示すように、大豆皮の焼成温度を1500[℃]とした場合には、図19に示した大豆皮の焼成温度を900[℃]とした場合と同様の電磁波遮蔽量が確認できた。換言すると、大豆皮の焼成温度を1500[℃]としても、電磁波遮蔽量に著しい向上は見られなかった。
【0035】
図21(c)に示すように、大豆皮の焼成温度を3000[℃]とした場合には、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有量を400[phr]とすると、安定した電磁波遮蔽量が得られることが確認できた。すなわち、図19のグラフでは、約150[MHz]〜約600[MHz]に進むにつれて電磁波遮蔽量が大きく低下していたが、図21のグラフでは、ほぼ横ばいともいえるような緩やかな低下しか確認されなかった。また、図21(b)のグラフと対比するとわかりやすいが、ゴムに対する焼成物の含有量を150[phr]とすると、電磁波遮蔽量の向上が確認できた。
【0036】
さらに、図21(c)によれば、1000[MHz]までという広範囲な周波数帯域に亘って、約25[dB]を超える電磁波遮蔽量が得られる点は、注目に値するものである。既述のように、一般的な従来品の電磁波遮蔽量は、5[dB]〜25[dB]の納まるものが大半である。ただ、従来品は、25[dB]という電磁波遮蔽量を、限定的な周波数帯域でのみ実現できるものであり、1000[MHz]までという広範囲な周波数帯域に亘って実現できるものはない。したがって、本実施形態の熱伝導部材は、電磁波遮蔽量の面でも顕著な効果を奏するものであるといえる。
【0037】
以下、本実施形態の熱伝導材料及び熱伝導部材について更に詳細に説明する。
【0038】
図2は、本実施形態の熱伝導材料及び熱伝導部材の模式的な製造工程図である。まず、食用油等の製造時に発生する生大豆皮を炭化装置にセットして、窒素ガス雰囲気下で1分当たり約2[℃]ずつ温度を上昇させ、700[℃]〜1500[℃](たとえば900[℃])といった所定の温度まで到達させる。それから、到達温度で3時間程度、炭化焼成処理を施す。
【0039】
つぎに、焼成した大豆皮を粉砕してから篩分処理を経て、メディアン径が例えば約4μm〜約80μm(たとえば60μm)の大豆皮の焼成物を得る。こうして、まずは、熱伝導材料の製造を行う。つぎに、この熱伝導材料とエチレン・プロピレンジエンゴムとを、各種添加剤とともに、混練機にセットして混練処理し、それから、混練物に対して成形処理を施してから、加硫処理を行う。こうして、熱伝導部材の製造が完了する。
【0040】
ここで、本実施形態の熱伝導部材は、所要の形状の金型等を用いて成形することができる。このため、仮に、電子機器などに搭載されている、熱伝導部材が必要な電子基板の形状が平面的でないものであったとしても、電子基板の形状に応じた熱伝導部材の製造が可能となる。
【0041】
もっとも、本実施形態の熱伝導部材は、切断する、曲げる等の加工の自由度もある。この点も、熱伝導部材を製造する上での利点となる。
【0042】
ここで、近年の電子機器の小型化に伴う、電子機器の筐体内の省スペース化によって、熱伝導部材を用いることが困難であったり、熱伝導部材の配置スペースを考慮した電子機器のレイアウトが必要であったりという課題がある。本実施形態の熱伝導部材は、電子機器内のスペースの形状に対応する形状とすることができるので、熱伝導部材の配置スペースを考慮した製品レイアウトを行うなどの必要がなくなるといった副次的な効果を奏することにもなる。
【0043】
本実施形態の熱伝導部材は、電子機器、電子機器の検査装置、建材などに好適に用いることができる。すなわち、例えば、本実施形態の熱伝導部材は、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)などの通信端末本体に備えたり、通信端末本体に搭載されている電子基板に取り付けたり、いわゆるシールドボックスに備えたり、屋根材、床材又は壁材などに備えたり、導電性もあることから静電気帯電防止体として作業靴、作業服の一部に用いたりすることもできる。
【0044】
この結果、例えば、携帯電話機等或いは家屋周辺の高圧線等から発せられる電磁波の人体への悪影響の懸念材料をなくしたり、軽量なシールドボックスを提供したり、静電防止機能を有する作業靴等を提供することが可能となるといった利点がある。
【0045】
より詳しくは、図13に示すように、本実施形態の熱伝導部材は、製造条件を適宜調整することによって、例えば50[MHz]〜300[MHz]周辺の周波数帯域で、優れた電磁吸収特性を得ることができる。
【0046】
また、図1に示したように、本実施形態の熱伝導部材は、製造条件を適宜調整することによって、500[MHz]以下の周波数帯域で20[dB]を超える電磁波遮蔽量を実現できる。したがって、500[MHz]以下の周波数帯域に有用なシールドボックスを提供できるといった利点がある。
【0047】
つぎに、「生大豆皮」、「大豆皮の焼成物(熱伝導材料)」及び「熱伝導部材」に対して、以下の計測等を行った。
【0048】
(1)「生大豆皮」及び「大豆皮の焼成物」等の成分分析、
(2)「生大豆皮」及び「大豆皮の焼成物」の組織観察、
(3)「大豆皮の焼成物」の導電性試験、
(4)「熱伝導部材」について、試験対象の熱伝導材料に係る焼成温度又はメディアン径の違いによる表面抵抗率の測定。
【0049】
図3(a)は、大豆皮、菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハル、カカオハスクの焼成前のZAF定量分析法による成分分析結果を示すグラフである。図3(b)は、図3(a)に示した大豆皮等の焼成後のZAF定量分析法による成分分析結果を示すグラフである。なお、大豆皮等の焼成物の製造条件は、図2を用いて説明したとおりであるが、「所定の温度」は900[℃]とし、「メディアン径」は約30μm〜約60μmとした。また、ZAF定量分析法は、有機元素分析法に比して、C,H,N元素についての定量信頼性が低いといわれているので、C,H,N元素について高信頼の分析を行うべく、別に有機元素分析法による分析も行った。この点は、後述する。
【0050】
図3(a)に示す焼成前の大豆皮は、炭素(C)成分が51.68%、酸素(O)成分が45.98%と、これらが約半数ずつを占めている。無機成分等は、残り2.35%であった。
【0051】
焼成前の菜種粕等も、焼成前の大豆皮と同様に、炭素(C)成分、酸素(O)成分が全体の約半数ずつを占めている。具体的に見てみると、図3(a)の「C」は、すべての植物について50%〜60%が含まれていることが分かる。また、これら5つのすべての植物について、「C」に次いで「O」が多く含まれていることも分かる。
【0052】
また、図3(b)に示すように、焼成後の大豆皮は、炭素(C)成分は、焼成前のものから1.2倍近くまで増加した。具体的には、焼成後の大豆皮は、61.73%となった。
【0053】
また、焼成後の大豆皮は、焼成によって、酸素(O)成分は半分近くまで減少した。さらに、その他は、半減したものから5倍まで増加したものまで様々であるが、いずれにしても、全体の数%以内であった。焼成後の菜種粕等も、程度の差こそあれ、焼成後の大豆皮と同様に、炭素(C)成分が増加し、酸素(O)成分が減少する傾向が読み取れる。また、計測対象の元素については、すべての植物について大豆皮の場合と同様に、「C」及び「O」を除き、量的に特徴のあるものは見受けられなかった。
【0054】
なお、大豆皮に関し、焼成温度を1500[℃]とした場合、「C」は75.25%に増加し、「H」は0.51%に減少し、「N」は0.96%に減少した。さらに、大豆皮に関し、焼成温度を3000[℃]とした場合、「C」は99.92%に増加し、「H」は0.00%に減少し、「N」は0.03%に減少した。
【0055】
もっとも、図3に示す成分分析結果は、図2に示す手順・条件で製造したものであるから、炭素含有率等は、上記例示のように、大豆皮等の焼成温度によっても異なる点には留意されたい。この点は、後述する。
【0056】
図23(a)は、図3(a)に対応する有機元素分析法による成分分析結果を示すグラフである。図23(b)は、図3(b)に対応する有機元素分析法による成分分析結果を示すグラフである。
【0057】
図23(a),図23(b)を見てみると、総じて言えば、6つの各植物の焼成物に含まれている有機元素の割合は、同様であると評価することができる。これは、大豆皮も菜種粕等も植物であることには変わりがないことに起因するものと思われる。それでも、菜種粕、胡麻粕、綿実粕については、油粕という共通点があるためか、グラフがより似通っているといえる。具体的にいえば、「N」が相対的には多く、焼成前後の「C」の増加率は相対的には低いといえる。
【0058】
一方、大豆皮、コットンハルについても、外皮という共通点があるためか、グラフが似通っているといえる。具体的にいえば、「N」が相対的には少なく、焼成前後の「C」の増加率は相対的には高いといえる。これに対して、カカオハスクは、「N」が相対的には少ない点は共通するが、焼成前後の「C」の増加率は相対的には低いといえる。また、「C」について見ると、コットンハルが最も高く(約83%)、胡麻粕が最も低い(約63%)。
【0059】
個別にみてみると、有機微量元素分析法による成分分析では、焼成前の大豆皮は、炭素(C)成分、水素(H)成分、窒素(N)成分は、各々、39.98%、6.11%、1.50%であった。したがって、焼成前の大豆皮は、元々、炭素成分が多いことが分かる。また、菜種粕等の他の植物においても、焼成前には、元々、炭素成分が多いことが図23(a)から読み取れる。
【0060】
一方、有機微量元素分析法による成分分析では、焼成後の大豆皮は、炭素(C)成分、水素(H)成分、窒素(N)成分は、各々、73.57%、0.70%、1.55%であった。したがって、炭素成分が焼成によって増加していることがわかる。また、菜種粕等の他の植物においても、焼成によって、炭素成分が増加していることが図23(b)から読み取れる。
【0061】
図4は、「生大豆皮」の組織観察結果を示す走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)写真である。図4(a)〜図4(c)は、それぞれ「生大豆皮」の1000倍の倍率で撮影した外皮写真、1000倍の倍率で撮影した内皮写真、500倍の倍率で撮影した断面写真である。なお、ここでいう断面とは、外皮と内皮との界面付近の略直交断面を指す。
【0062】
図4(a)に示す生大豆皮の外皮は、外界と内皮との間の水分を幾分遮断する機能がある。この外皮写真を見る限りでは、全体的な形状としては、凹凸の点在が表面に確認できる。
【0063】
図4(b)に示す生大豆皮の内皮は、網目状の構造をしている。この内皮写真を見る限りでは、全体的な形状としては、緩やかで高低差が少ない起伏が表面に確認できる。
【0064】
図4(c)に示す生大豆皮の断面は、この断面写真を見る限りでは、一端が外皮に接続され、他端が内皮に接続される複数の柱状構造が確認できる。
【0065】
図5は、「大豆皮の焼成物」の組織観察結果を示すSEM写真である。図5(a)〜図5(c)は、それぞれ「大豆皮の焼成物」の1000倍の倍率で撮影した外皮写真、1000倍の倍率で撮影した内皮写真、500倍の倍率で撮影した断面写真である。なお、この大豆皮は、900[℃]の焼成温度で焼成したものである。
【0066】
図5(a)に示す大豆皮の焼成物の外皮は、全体的な形状として、「生大豆皮」の場合に確認できていた凹凸が無くなったことが確認できる。ただし、「大豆皮の焼成物」の外皮は、ざらついていた。
【0067】
図5(b)に示す大豆皮の焼成物の内皮は、依然として、網目状の構造が確認できるが、水分がなくなったため、網目が細かくなった。また、「大豆皮の焼成物」の内皮は、網目状の構造がつぶれたようにも評価できる。
【0068】
図5(c)に示す大豆皮の焼成物の断面も、依然として、柱状構造が確認できるが、個々の柱状部分が細くなり、その丈も縮み、隙間が著しく減少している。柱状部分がつぶれて繊維質のように変化したようにも見える。
【0069】
図24は、「大豆皮の焼成物」のSEM写真である。図24(a)〜図24(c)には、それぞれ「大豆皮の焼成物」を900[℃]、1500[℃]、3000[℃]の焼成温度で焼成したもののSEM写真、図24(d)には、900[℃]の焼成温度で焼成した大豆皮の焼成物を微粉砕したもののSEM写真を示している。なお、いずれのSEM写真も、1500倍の倍率で撮影している。
【0070】
図24(a)〜図24(c)に示すように、これらのいずれの写真からも、「大豆皮の焼成物」は、柱状構造、つまり、多孔質構造が確認できる。ただ、焼成温度が高くなるにつれて、個々の柱状部分が一層細くなって、縮んだような印象を受ける。これは、焼成温度が高くなるにつれて、炭化が一層進行することに起因するものと思われる。
【0071】
図24(d)に示すように、微粉砕した大豆皮の焼成物は、大半が約10μm以下の大きさの粒子となっている。なお、これは、大豆皮の焼成物を微粉砕したときのメディアン径が、微粉砕前のものの約1/10のメディアン径であるとの条件に符合する。具体的には、図24(d)に示す焼成物は、メディアン径が約6.9μmであった。
【0072】
図22は、900[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物のガス吸着過程の細孔径分布曲線図である。図22の横軸は細孔半径(Å)、縦軸は微分容積((mL/g)/Å)を示している。なお、ここでの大豆皮の焼成物のメディアン径は、約34μmであった。
【0073】
ここで注目すべきは、少なくとも大豆皮の焼成物には、以下説明する1500[℃],3000[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物についての検証結果も加味すれば、他の植物の焼成物では稀な特定の細孔半径値において、唯一の微分容積のシャープなピークが現れることである。
【0074】
通常、大豆皮等の焼成物を除く他の植物の焼成物では、特定の細孔半径値に微分容積の単一のシャープなピークが現れることがほとんどなく、細孔径分布曲線図はブロードとなるか、或いは、細孔径分布曲線図には複数のピークが現れることとなる。
【0075】
図22に示す900[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物の細孔径は、細孔半径が約4.42Åの場合に、微分容積のシャープなピークが確認できる。その他の細孔半径と微分容積との詳細な計測結果は、図22内のものを参照されたい。また、大豆皮の焼成物は、黒鉛化処理後でも、比表面積が大きく、ポーラスな構造が残ったままである。
【0076】
図36は、1500[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物のガス吸着過程の細孔径分布曲線図である。図36の横軸は細孔半径(Å)、縦軸は微分容積((mL/g)/Å)を示している。なお、ここでの大豆皮の焼成物のメディアン径は、約27μmであった。
【0077】
ここでも、特定の細孔半径値に微分容積のピークが現れることがわかる。1500[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物の細孔径は、細孔半径が約8.29Åの場合に、ピークのシャープさがやや劣るものの、それでも微分容積のややシャープなピークが確認された。ただし、30Å程度のレンジで細孔分布が広がっている。なお、詳細な計測結果は、図36内のものを参照されたい。
【0078】
図37は、3000[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物のガス脱着過程の細孔径分布曲線図である。図37の横軸には細孔半径(Å)、縦軸には微分容積((mL/g)/Å)を示している。なお、ここでの大豆皮の焼成物のメディアン径は、約24μmであった。ここでも、特定の細孔半径値に微分容積のシャープなピークが現れることがわかる。3000[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物の細孔径は、ガス吸着過程の場合に、細孔半径が約4.41Åの場合に、微分容積のシャープなピークが確認された。ただし、ガス吸着過程の場合には、細孔半径が14.3Åとなるあたりに、ブロードな小さなピークが確認された。なお、詳細な計測結果は、図37内のものを参照されたい。
【0079】
図38は、3000[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物のガス吸着過程の細孔径分布曲線図である。ここでも、特定の細孔半径値に微分容積のシャープなピークが現れることがわかる。3000[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物の細孔径は、ガス脱着過程の場合には、細孔半径が約21.1Åの場合に、微分容積のシャープなピークが確認された。なお、詳細な計測結果は、図38内のものを参照されたい。
【0080】
以上説明したように、大豆皮の焼成物は、焼成温度にかかわらず、特定の細孔半径値に微分容積のピークが現れるという、非常に珍しい特性を有していることがわかる。
【0081】
図25(a),図25(b)は、図24(a)に係る「大豆皮の焼成物」を、それぞれ、2万倍、5万倍という倍率で撮影したSEM写真である。図25(c),図25(d)は、図24(b)に係る「大豆皮の焼成物」を、それぞれ、2万倍、5万倍という倍率で撮影したSEM写真である。図25(e),図25(f)は、図24(c)に係る「大豆皮の焼成物」を、それぞれ、2万倍、5万倍という倍率で撮影したSEM写真である。
【0082】
興味深いことに、大豆皮の焼成物は、その表面に粒状の物体が位置していることがわかった。しかも、これらの物体は、大豆皮の焼成物の焼成温度が高くなるにつれて、数が増加し、かつ、そのサイズも大きくなっていることがわかった。これらの物体は、結晶が成長したものであるのか、カーボンナノチューブのようなものであるのか、或いは、これらのいずれでもないのかを特定するには至らなかったが、他の植物ではこの種の現象は確認できていない。
【0083】
また、図25(a)〜図25(f)を見れば、大豆皮の焼成物は、多孔質構造であることが確認できるは明らかである。また、X線回折によって、大豆皮の焼成物における結晶子サイズを測定したところ、図24(a)のものは約1nm〜約3nm、図24(b),図24(c)のものは約20nmであることがわかった。
【0084】
図6は、「大豆皮の焼成物」についての導電性試験の試験結果を示すグラフである。図6の横軸には大豆皮の焼成物に印加した圧力[MPa]を示し、縦軸には体積固有抵抗率[Ω・cm]を示している。比較例として生大豆皮に対するフェノール樹脂の含浸率を0[wt.%]、25[wt.%]、30[wt.%]、40[wt.%]とした場合の各大豆皮の焼成物を試験対象とした。図6(b)には、比較例として、籾殻焼成物の試験結果を、大豆皮の焼成物の導電性試験とともに示している。導電性試験は、JIS−K7194に準拠して行った。なお、図6(a),図6(b)のいずれの「大豆皮の焼成物」も籾殻焼成物も、各々、焼成温度を900[℃]、メディアン径を60μmという製造条件とした。
【0085】
測定対象の「大豆皮の焼成物」の粉末1gを内径が約25φの円筒状の容器に入れてから、直径が約25φの円柱状の真鍮を上記容器の開口部分に位置合わせして、プレス機(東洋精機社製:MP−SC)を用いて、0[MPa]から0.5[MPa]刻みで4[MPa]又は5[MPa]まで、真鍮を介してプレスすることによって、大豆皮の焼成物を加圧しながら、その体積固有抵抗率を低抵抗測定器(ダイヤインスツルメント社製:loresta−GP MCP−T600)のプローブを真鍮の側部と底部とに接触させて測定するという手法を採用した。
【0086】
なお、約25φの円筒状の容器に代えて約10φの円筒状の容器を用い、直径が約25φの円柱状の真鍮に代えて直径が約10φの円柱状の真鍮を用いて、他の条件は上記のとおりとした場合にも、導電性試験の試験結果については同等のものが得られた。
【0087】
図6(a)に示す試験結果によれば、生大豆皮に対するフェノール樹脂の含浸率の高低に拘わらず、大豆皮の焼成物は、加圧が増加するにつれて、体積固有抵抗率が低下している、つまり、導電率が向上していることがわかる。
【0088】
さらに、図6(a)に示す試験結果によれば、大豆皮の焼成物の導電率は、フェノール樹脂の含浸率によっては余り影響がない。さらには、大豆皮の焼成物は、無加圧時(0[MPa])には体積固有抵抗率が約101.0[Ω・cm]であるものの、0.5[MPa]の加圧時には体積固有抵抗率が約10−0.4[Ω・cm]であり、その後、4.0[MPa]まで加圧時しても体積固有抵抗率が約10−1.0[Ω・cm]に留まる。このことから、大豆皮の焼成物は、ある程度の加圧さえすれば、体積固有抵抗率が低下するが、その後は、加圧の増加によって顕著な体積固有抵抗率の低下があるとまでは言えないと評価できる。
【0089】
図6(b)によれば、大豆皮の焼成物の体積固有抵抗率は、籾殻の焼成物に比して、無加圧時・加圧時の双方において低く、大豆皮の焼成物の導電率が高いことがわかる。ちなみに、図6(b)に示す大豆皮の焼成物の導電率は、カーボンブラックのそれと同程度である。
【0090】
なお、例えば、体積固有抵抗率が1.0×10−1[Ω・cm]と体積固有抵抗率が3.0×10−1[Ω・cm]とでは厳密にいえば3倍の差があるが、当業者にとって明らかなように、体積固有抵抗率の測定結果には、そこまで厳密性が要求されていない。したがって、体積固有抵抗率が1.0×10−1[Ω・cm]と体積固有抵抗率が3.0×10−1[Ω・cm]とでは、双方ともに「10−1」という桁数であることには変わりがないことから、これらは相互に同等であると評価しうる。
【0091】
また、図6の評価から、大豆皮にフェノール樹脂が効果的に含浸されていない可能性もあるので、大豆皮を仮焼成する、或いは、更に細かく粉砕してから生大豆皮に対するフェノール樹脂を含浸するなど、大豆皮にフェノール樹脂を染みこみ易くするといった前処理を行うと、大豆皮の焼成物の導電率が向上する余地が残されているといえよう。
【0092】
以上をまとめると、本実施形態の植物焼成物は、例えば0.5[MPa]以上の圧力を印加することによって、導電率が向上するという特性を有していることがわかる。
【0093】
図26は、コットンハル、胡麻粕、菜種粕、綿実粕、カカオハスクの焼成物に係る導電性試験の試験結果を示すグラフである。図26の横軸にはコットンハル等を900℃の焼成温度で焼成した焼成物に印加した圧力[MPa]を示し、縦軸には体積固有抵抗率[Ω・cm]を示している。なお、この導電性試験は、図6の説明の場合と同様の手法によって行った。
【0094】
図6(b)と対比すると明らかなように、コットンハル、胡麻粕、菜種粕、綿実粕、カカオハスクに係る導電性は、大豆皮の焼成物に比して、体積固有抵抗率は略同等であることがわかる。
【0095】
具体的には、コットンハルの体積固有抵抗率は3.74×10−2[Ω・cm]、胡麻粕の体積固有抵抗率は4.17×10−2[Ω・cm]、菜種粕の体積固有抵抗率は4.49×10−2[Ω・cm]、綿実粕の体積固有抵抗率は3.35×10−2[Ω・cm]、カカオハスクの体積固有抵抗率は4.06×10−2[Ω・cm]であった。
【0096】
図27は、焼成炉と焼成温度とを変更させたときの大豆皮の焼成物に係る導電性試験の試験結果を示すグラフである。図27の横軸には大豆皮の焼成物に印加した圧力[MPa]を示し、縦軸には体積固有抵抗率[Ω・cm]を示している。なお、図6に示したものに対応する条件のものは、□でプロットしたグラフで示している。
【0097】
まず、焼成炉として静置炉を選択して焼成温度を900[℃]のままとした場合(▽でプロットしたもの)と、焼成炉としてロータリーキルンを選択して焼成温度を900[℃]のままとした場合(□でプロットしたもの)とを比較すると、体積固有抵抗率に大差はないといえる。具体的には、▽でプロットしたグラフの体積固有抵抗率は、4.68×10−2[Ω・cm]であり、□でプロットしたグラフの体積固有抵抗率は、9.60×10−2[Ω・cm]であり、双方ともに、「10−2」という桁数の共通が見られるためである。したがって、大豆皮の焼成炉の選別が、体積固有抵抗率に与える影響はほぼないといえる。
【0098】
一方、焼成炉としてロータリーキルンを選択して、焼成温度を700[℃]に低下させた場合(△でプロットしたもの)には、静置炉で焼成温度を900[℃]にした場合(▽でプロットしたもの)に比して、体積固有抵抗率が増加した。したがって、大豆皮の焼成温度は、体積固有抵抗率に影響を与えるといえる。
【0099】
そこで、大豆皮の焼成温度を更に変更して、体積固有抵抗率の測定を行ってみた。また、大豆皮の焼成物を微粉砕した場合の体積固有抵抗率の測定も行ってみた。
【0100】
図28は、焼成温度等を変更させたときの大豆皮の焼成物に係る導電性試験の試験結果を示すグラフである。図28の横軸には大豆皮の焼成物に印加した圧力[MPa]を示し、縦軸には体積固有抵抗率[Ω・cm]を示している。
【0101】
図28には、焼成温度を1100[℃]とした場合(△でプロット)、焼成温度を1500[℃]とした場合(▽でプロット)、焼成温度を3000[℃]とした場合(実線・□でプロット)、焼成温度を1500[℃]とした焼成物を微粉砕した場合(○でプロット)、焼成温度を3000[℃]とした焼成物を微粉砕した場合(◇でプロット)、焼成温度を900[℃]のままとして焼成物を微粉砕した場合(破線・□でプロット)のグラフをそれぞれ示している。
【0102】
図28から明らかなように、焼成温度を900[℃]のままとして焼成物を微粉砕したもの(破線・□でプロット)が、これらの中では最も体積固有抵抗率が高い。なお、この体積固有抵抗率のグラフと図6のものと対比すると、若干ではあるが、焼成物を微粉砕すると体積固有抵抗率が高いことがわかる。
【0103】
次いで体積固有抵抗率が高いグラフは、焼成温度を1500[℃]とした焼成物を微粉砕したものである(○でプロット)。体積固有抵抗率が高くなった理由は、焼成温度が相対的に低温であることに起因すると評価できる。また、焼成温度を1500[℃]とした焼成物を微粉砕したもの(○でプロット)を、焼成物を微粉砕していないで焼成温度を1500[℃]としたもの(▽でプロット)と対比すると、焼成物を微粉砕した方が、体積固有抵抗率が高い。
【0104】
同様の傾向は、上記のように、焼成温度が900[℃]の焼成物でも見られるし、以下説明するように、焼成温度が3000[℃]の焼成物でも見られる。このことから、大豆皮の焼成物は、微粉砕すると体積固有抵抗率が高くなるといえる。
【0105】
また、焼成温度に着目すると、焼成温度を1100[℃]とした場合(△でプロット)よりも、焼成温度を1500[℃]とした場合(▽でプロット)、さらには、焼成温度を3000[℃]とした場合(実線・□でプロット)の方が、大豆皮の焼成物は、体積固有抵抗率が低いことから、焼成温度を高くするにつれて体積固有抵抗率が低くなるということがいえる。なお、この焼成温度と体積固有抵抗率との関係は、焼成物を微粉砕した場合にもあてはまる。
【0106】
つぎに、大豆皮の焼成物の体積固有抵抗率の測定に際し、いくつかのパラメータを変更してみた。なお、加圧条件は0.5[MPa]で統一した。
【0107】
(2)大豆皮の焼成物のメディアン径の変更
大豆皮の焼成物のメディアン径を、既述の篩分け後に粉砕等することによって、約15μm,約30μmと変更してみた。しかし、これらの数値の場合には、体積固有抵抗率は、いずれも約10−1.0[Ω・cm]付近であり、大差はなかった。
【0108】
一方、大豆皮の焼成物のメディアン径を、既述の篩分け後に粉砕等することによって、約4μm,約8μmとした場合には、体積固有抵抗率が約10−0.7〜0.8[Ω・cm]付近となり、若干の上昇がみられた。これは、これらの数値の場合には、大豆皮の焼成物のメディアン径を変更しても、大豆皮特有の細胞層の柱状および網目状の構造のほとんどが存在していないからであろうと推測される。
【0109】
(3)大豆皮の焼成温度の変更
大豆皮の焼成温度を変化させたところ、興味深い測定結果が得られた。すなわち、大豆皮の焼成温度を、約500[℃],約700[℃],約1100[℃],約1300[℃],約1500[℃]と変更してみた。なお、測定対象は、生大豆皮に対するフェノール樹脂の含浸率を25[wt.%]、大豆皮の焼成物に対する加圧条件は5[MPa]とした。
【0110】
図7は、大豆皮の焼成温度と体積固有抵抗率との関係を示すグラフである。図7の横軸には大豆皮の焼成温度[℃]を示し、縦軸には体積固有抵抗率[Ω・cm]を示している。図7によれば、大豆皮の焼成温度が上昇するにつれて、体積固有抵抗率が激減している。これは、大豆皮の焼成物中の炭素含有率が向上していることに起因している可能性が高い。
【0111】
一方で、大豆皮の焼成温度が約1100[℃]以上になると、体積固有抵抗率に、あまり変化はみられないことがわかる。これは、大豆皮の焼成物中の炭素含有率及び他の成分含有率に、ほとんど変化が生じていないためであると考えられる。
【0112】
また、特に、大豆皮の焼成温度が約500[℃]〜約700[℃]の間で、大きく変動していることも読み取れる。これは、大豆皮の焼成物中の炭素含有率の変化が大きいためであると考えられる。なお、大豆皮の焼成温度が約1500[℃]の場合には、体積固有抵抗率は、約10−1.5[Ω・cm]と極めて小さな値となった。
【0113】
以上をまとめると、本実施形態の熱伝導材料は、大豆皮の焼成温度が例えば700[℃]以上の場合には、導電率が向上するという特性を有していることがわかる。
【0114】
(4)その他の変更
大豆皮の焼成物のメディアン径と大豆皮の焼成温度とのいずれかを変更させるとともに、加えてエチレン・プロピレンジエンゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率を変化させてみた。
【0115】
図8は、大豆皮の焼成物の含有率と体積固有抵抗率との関係を示すグラフである。図8(a)では、大豆皮の焼成温度が、600[℃],900[℃],1500[℃]のそれぞれの場合で測定してある。図8(a)の横軸には大豆皮の焼成物の含有率[phr]を示し、縦軸には体積固有抵抗率[Ω・cm]を示している。なお、いずれも、大豆皮の焼成物のメディアン径を60μm、大豆皮の焼成物と母材との混合物の厚さを2.5[mm]とした。また、図8内のプロットの数値は、大豆皮の焼成物と母材との混合物の中から任意に選択した9点で測定の平均値である。
【0116】
図8(a)に示すように、体積固有抵抗率は、大豆皮の焼成温度に拘わらず、大豆皮の焼成物の含有率が向上するにつれて低下することがわかる。大豆皮の焼成温度が900[℃],1500[℃]のように、焼成温度が相対的に高温の場合には、大豆皮の焼成物の含有率の高低に拘わらず大差が見られなかった。そして、当該体積固有抵抗率は、大豆皮の焼成物の含有率が高くなるにつれて低下していて、特に、大豆皮の焼成物の含有率が約100[phr]〜約200[phr]にかけて、急激な低下が見受けられる。
【0117】
一方、大豆皮の焼成温度が600[℃]のように、焼成温度が相対的に低温の場合には、体積固有抵抗率は、大豆皮の焼成物の含有率が高くなるに伴って低下しているものの、大豆皮の焼成温度が相対的に高温の場合に比して、当該低下は線形的であった。したがって、大豆皮の焼成温度が900[℃]等の場合のように、急激な低下は見られなかった。
【0118】
このように、大豆皮の焼成温度が相対的に高温の場合と低温の場合とで測定結果が異なる理由は、次のように考えられる。すなわち、大豆皮の焼成温度が相対的に低温の場合には、大豆皮内に元々絶縁性を有する有機成分が存在しているところ、大豆皮の焼成温度が相対的に高温の場合に比して、これらの多くが炭化、若しくは熱分解せずに残留しているからであろうと考えられる。
【0119】
また、大豆皮の焼成温度が900[℃]の場合と1500[℃]の場合とで、体積固有抵抗率がほぼ同一の測定結果となった理由は、焼成温度が900[℃]以上になれば、大豆皮の成分構成、すなわち炭素含有率に大きな変化がないためであると考えられる。
【0120】
図39は、焼成温度等を変更させたときの大豆皮の焼成物に係る体積固有抵抗率を示すグラフである。図39には、900[℃]で焼成して微粉砕した大豆皮の焼成物と、3000[℃]で焼成して微粉砕していない大豆皮の焼成物についてのそれぞれの測定結果を示している。なお、参考のため、図8(a)に示した1500[℃]で焼成して微粉砕していない大豆皮の焼成物の測定結果を付記している。
【0121】
まず、3000[℃]で焼成した大豆皮の焼成物の場合には、大豆皮の焼成物の含有率が0[phr]のときには、900[℃]で焼成して微粉砕した大豆皮の焼成物の場合とほぼ同一の測定結果である。
【0122】
しかし、3000[℃]で焼成した大豆皮の焼成物の場合には、大豆皮の焼成物の含有率が150[phr]のときには、3.0×10[Ω・cm]程度、400[phr]のときには80×10−1[Ω・cm]程度という体積固有抵抗率が確認できた。
【0123】
図39に示す3000[℃]で焼成した大豆皮の焼成物についての測定結果と図8(a)に示す測定結果とによれば、1500[℃]以上の所定の焼成温度を超えると、大豆皮の焼成物の炭素含有率に大きな変化が生じ、体積固有抵抗率に変化が見られることがわかる。
【0124】
また、図39に示す測定結果によれば、一般的には、焼成温度が高いほど導電性が高く、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率が高いほど導電性が向上するといえる。
【0125】
さらに、図39に示す測定結果によれば、大豆皮の焼成物を微粉砕すると、導電性がやや低下する。したがって、大豆皮の焼成物の粒径が、導電性の良否に影響を与えていることが分かる。ただ、大豆皮の焼成物を微粉砕すると、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率の変化に対する体積固有抵抗率の変化が緩やかになっていることが分かる。これは、大豆皮の焼成物の含有率が150[phr]〜300[phr]にかけて変化させている場合に顕著にみられる。したがって、大豆皮の焼成物を微粉砕した場合には、体積固有抵抗率を制御しやすくなるという利点があるといえる。
【0126】
図8(b)では、大豆皮の焼成物のメディアン径が、2μm,10μm,60μmのそれぞれの場合での体積固有抵抗率を測定してある。図8(b)の横軸には大豆皮の焼成物の含有率[phr]を示し、縦軸には体積固有抵抗率[Ω・cm]を示している。なお、いずれも、大豆皮の焼成温度を900[℃]、大豆皮の焼成物と母材との混合物の厚さを2.5[mm]とした。
【0127】
図8(b)に示すように、体積固有抵抗率は、大豆皮の焼成物のメディアン径の大小にかかわらず、大豆皮の焼成物の含有率の向上につれて低下することがわかる。また、体積固有抵抗率は、大豆皮の焼成物のメディアン径が大きいほど低下することがわかる。メディアン径が小さい焼成物では,ゴム内において大豆皮の焼成物のクラスターが形成しにくくなるからだと考えられる。
【0128】
ここで、クラスターとは、大豆皮の焼成物が相互に繋がることによって形成されるものであって、電流経路となるものである。そのため、クラスターが形成されにくい場合には電流が流れにくい。そして、大豆皮の焼成物の含有率の向上に伴い、体積固有抵抗率は、緩やかに低下し、電流が流れやすくなる。一方、クラスターが極端に多量に形成されていると、体積固有抵抗率は、大豆皮の焼成物の含有率が低くても急激に低下する。
【0129】
以上をまとめると、本実施形態の熱伝導材料は、大豆皮の焼成物のメディアン径を例えば10μm以上とすると、導電率が向上するという特性を有していることがわかる。
【0130】
図29は、コットンハル、胡麻粕、菜種粕、綿実粕、カカオハスクの焼成物の含有率と体積固有抵抗率との関係を示すグラフである。図29の横軸にはコットンハル等の焼成物の含有率[phr]を示し、縦軸には体積固有抵抗率[Ω・cm]を示している。なお、いずれの植物の焼成物も、焼成温度を900[℃]とし、熱伝導部材の厚さを2.5[mm]とした。また、図29内のプロットの数値は、熱伝導部材の中から任意に選択した9点で測定の平均値である。
【0131】
図29に示すように、コットンハル、胡麻粕、菜種粕、綿実粕の各体積固有抵抗率は、相互に同様の測定結果が得られた。これらの体積固有抵抗率は、図8(b)に示す、大豆皮の体積固有抵抗率とも同様であるといえる。
【0132】
図9は、試験対象の熱伝導部材の「表面抵抗率」の測定結果を示すグラフである。表面抵抗率の測定に際し、大豆皮の焼成温度、大豆皮のメディアン径、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率を変更してみた。
【0133】
図9(a)は、試験対象の熱伝導部材を得るための焼成温度の違いによる「表面抵抗率」の測定結果を示す図である。図9(a)の横軸には熱伝導部材の測定箇所を示し、縦軸には表面抵抗率[Ω/sq]を示している。ここでは、大豆皮の焼成温度が600[℃],900[℃],1500[℃]のそれぞれの場合に、熱伝導部材の中から任意に選択した9点で測定した。なお、いずれも、大豆皮の焼成物のメディアン径を60μmとし、母材に対する大豆皮の焼成物の含有率を200[phr]、熱伝導部材の厚さを2.5[mm]とした。
【0134】
図9(a)に示す測定結果によると、焼成温度の高低に拘わらず、表面抵抗率は、熱伝導部材の位置によって大きな差が出なかった。ただし、焼成温度が高い方が表面抵抗率のバラつきは若干減少しているように見受けられる。これは、焼成温度が高いほど大豆皮の炭化が進行するので、大豆皮の成分構成の不均一性が是正されたためであると考えられる。
【0135】
図9(b)は、試験対象の熱伝導材料に係る大豆皮の焼成物のメディアン径の違いによる「表面抵抗率」の測定結果を示す図である。図9(b)の横軸には熱伝導部材の測定箇所を示し、縦軸には表面抵抗率[Ω/sq]を示している。ここでは、大豆皮の焼成物のメディアン径が2μm,10μm,60μmのそれぞれの場合に、熱伝導部材の中から任意に選択した9点で測定した。なお、いずれも、大豆皮の焼成温度を900[℃]とし、母材に対する大豆皮の焼成物の含有率を200[phr]とし、熱伝導部材の厚さを2.5[mm]とした。
【0136】
図9(b)に示す測定結果によると、大豆皮の焼成物のメディアン径の大小に拘わらず、表面抵抗率は、熱伝導部材の位置によって大きな差が出なかった。ただし、大豆皮の焼成物のメディアン径が大きい方が表面抵抗率のバラつきは若干減少し、かつ、表面抵抗率も低下するように見受けられる。
【0137】
図9(c)は、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率の違いによる「表面抵抗率」の測定結果を示す図である。図9(c)の横軸には熱伝導部材の測定箇所を示し、縦軸には表面抵抗率[Ω/sq]を示している。ここでは、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率が0[phr],100[phr],200[phr],300[phr],400[phr]のそれぞれの場合に、熱伝導部材の中から任意に選択した9点で測定した。なお、いずれも、大豆皮の焼成物のメディアン径を60μmとし、大豆皮の焼成温度を900[℃]とし、熱伝導部材の厚さを2.5[mm]とした。
【0138】
図9(c)に示す測定結果によると、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率の高低に拘わらず、表面抵抗率は、熱伝導部材の位置によって大きな差が出なかった。ただし、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率が高い方が表面抵抗率のバラつきは若干減少し、かつ、表面抵抗率も低下するように見受けられる。
【0139】
以上をまとめると、本実施形態の熱伝導材料は、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率を200[phr]以上とし、焼成温度を上げ、粒子径を大きくすることによって、導電率が向上するという特性を有していることがわかる。
【0140】
図30(a)〜図30(h)は、菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハルの焼成物の熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率の測定結果を示すグラフであり、図47(a),図47(b)は、カカオハスクの焼成物の熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率の測定結果を示すグラフであり、それぞれ図9(c)に対応するものである。なお、菜種粕等の焼成温度は900[℃]とした。
【0141】
図30(a),図30(c),図30(e),図30(g),図47(a)の横軸には熱伝導部材の測定箇所を示し、縦軸には体積固有抵抗率[Ω・cm]を示している。図30(b),図30(d),図30(f),図30(h),図47(b)の横軸には熱伝導部材の測定箇所を示し、縦軸には表面抵抗率[Ω/sq]を示している。
【0142】
図30(a),図30(b)には、菜種粕の焼成物の熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率の各グラフを示している。図30(a),図30(b)によれば、ゴムに対する菜種粕の焼成物の含有率を200[phr]以上とすると、導電率が向上するという特性を有していることがわかる。なお、ゴムに対する菜種粕の焼成物の含有率を400[phr]とした場合には、体積固有抵抗率は11.5[Ω・cm]、表面抵抗率は46.3[Ω/sq]となった。
【0143】
図30(c),図30(d)には、綿実粕の焼成物の熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率の各グラフを示している。図30(c),図30(d)によれば、ゴムに対する綿実粕の焼成物の含有率を200[phr]以上とした場合にも、導電率が向上するという特性を有していることがわかる。なお、ゴムに対する綿実粕の焼成物の含有率を400[phr]とした場合には、体積固有抵抗率は4.93[Ω・cm]、表面抵抗率は19.7[Ω/sq]となり、図30に示したものの中では、それぞれ最も良い結果となった。
【0144】
図30(e),図30(f)には、胡麻粕の焼成物の熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率の各グラフを示している。図30(e),図30(f)によれば、ゴムに対する胡麻粕の焼成物の含有率を200[phr]以上とした場合にも、導電率が向上するという特性を有していることがわかる。なお、ゴムに対する綿実粕の焼成物の含有率を400[phr]とした場合には、体積固有抵抗率は13.7[Ω・cm]、表面抵抗率は54.7[Ω/sq]となった。
【0145】
図30(g),図30(h)には、コットンハルの焼成物の熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率の各グラフを示している。図30(g),図30(h)によれば、ゴムに対するコットンハルの焼成物の含有率を200[phr]以上とした場合にも、導電率が向上するという特性を有していることがわかる。なお、ゴムに対するコットンハルの焼成物の含有率を400[phr]とした場合には、体積固有抵抗率は5.69[Ω・cm]、表面抵抗率は22.8[Ω/sq]となった。
【0146】
図47(a),図47(b)には、カカオハスクの焼成物の熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率の各グラフを示している。図47(a),図47(b)によれば、ゴムに対するカカオハスクの焼成物の含有率を200[phr]以上とすると、導電率が向上するという特性を有していることがわかる。なお、ゴムに対する菜種粕の焼成物の含有率を400[phr]とした場合には、体積固有抵抗率は30.6[Ω・cm]、表面抵抗率は119.2[Ω/sq]となった。
【0147】
以上の考察から、大豆皮の焼成物の場合と同様に、ゴムに対する植物の焼成物の含有率を200[phr]以上とすると、導電率が向上するという特性を有しているといえよう。
【0148】
また、大豆皮、菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハルの各焼成物に限って言えば、ゴムに対する植物の焼成物の含有率を200[phr]以上とすると、いずれの場合であっても、当該含有率が150[phr]までの場合に比して、表面抵抗率が非常に低下していることがわかる。また、各体積固有抵抗率を見ても、当該含有率が200[phr]以上となると、当該含有率が150[phr]までの場合に比して非常に低下していることがわかる。
【0149】
図31(a)〜図31(f)は、本実施形態の熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率の測定結果を示すグラフであり、それぞれ図9(c)に対応するものである。大豆皮の焼成物のメディアン径は60μmとした。
【0150】
図31(a),図31(c),図31(e)の横軸には熱伝導部材の測定箇所を示し、縦軸には体積固有抵抗率[Ω・cm]を示している。図31(b),図31(d),図31(f)の横軸には熱伝導部材の測定箇所を示し、縦軸には表面抵抗率[Ω/sq]を示している。
【0151】
図31(a),図31(b)には焼成温度を900[℃]とした焼成物を微粉砕した大豆皮に係る熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率、図31(c),図31(d)には大豆皮の焼成温度を1500[℃]とした大豆皮に係る熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率、図31(e),図31(f)には大豆皮の焼成温度を3000[℃]とした大豆皮に係る熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率の各グラフを示している。
【0152】
まず、各グラフを対比すると、既述のように、焼成温度を上げるにつれて、体積固有抵抗率及び表面抵抗率がともに低下することがわかる。つぎに、各グラフ内の測定結果を対比すると、焼成温度を上げるにつれ、また、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率が多くなるにつれて、体積固有抵抗率及び表面抵抗率がともに低下することもわかる。
【0153】
図10〜図12は、「熱伝導部材」の電磁波吸収特性を示すグラフである。図10等の横軸には周波数[MHz]を示し、縦軸には電磁波吸収量[dB]を示している。図10等に示す電磁波吸収特性は、300[mm]×300[mm]の大きさのメタリックプレート上に、同サイズの熱伝導部材を載置した状態で、図10等内でプロットしている周波数の入射波を当該混合物に対して照射し、熱伝導部材からの反射波のエネルギーを計測して、入射波と反射波とのエネルギー差、つまり、電磁波吸収量(エネルギー損失)を算出したものである。なお、当該測定は、アーチ型電磁波吸収測定器を使用して、アーチテスト法に基づいて行った。
【0154】
ここでは、下記条件の試料1〜4を用意した。すなわち、
試料1:熱伝導部材の厚み2.5[mm]、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率300[phr]
試料2:熱伝導部材の厚み2.5[mm]、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率400[phr]
試料3:熱伝導部材の厚み5.0[mm]、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率300[phr]
試料4:熱伝導部材の厚み5.0[mm]、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率400[phr]
を用意した。
【0155】
なお、試料1〜4のいずれも、
熱伝導材料を得るための大豆皮の焼成温度:900[℃]
大豆皮の焼成物のメディアン径:60μm
とした。
【0156】
図10によれば、熱伝導部材の厚みがない試料1,2(図内○、×でプロットしたもの)は、周波数帯域4000[MHz]〜6000[MHz]での電磁波吸収量が相対的に多く、周波数帯域6000[MHz]〜8000[MHz]での電磁波吸収量が相対的に少ないことがわかる。一方、熱伝導部材の厚みがある試料3,4(図内△、□でプロットしたもの)は、周波数帯域4000[MHz]〜8000[MHz]で、電磁波吸収量のバラつきが少なく、電磁波吸収量が相対的に少ないことがわかる。
【0157】
また、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率が高い試料2,4(図内×、□でプロットしたもの)が、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率が低い試料1,3(図内○、△でプロットしたもの)よりも、電磁波吸収量が少ないことがわかる。
【0158】
図11に関し、下記試料5〜7を用意した。すなわち、
試料5:熱伝導材料を得るための大豆皮の焼成温度:600[℃]
試料6:熱伝導材料を得るための大豆皮の焼成温度:900[℃](試料1)
試料7:熱伝導材料を得るための大豆皮の焼成温度:1500[℃]
を用意した。
【0159】
なお、試料5〜7のいずれも、
大豆皮の焼成物のメディアン径:60μm
熱伝導部材の厚み:2.5[mm]
ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率:300[phr]
とした。
【0160】
図11によれば、試料7(図内□でプロットしたもの)に関する電磁波吸収量は、周波数帯域に拘わらずほぼ一定量を示すが、それでも、低い周波数の方が高い周波数の場合よりも電磁波吸収量が多いといえる。
【0161】
一方、試料5(図内△でプロットしたもの)は、周波数が高くなるにつれて電磁波吸収量が多くなっていることがわかる。他方、試料6(図内○でプロットしたもの)は、周波数が高くなるにつれて電磁波吸収量が少なくなっていることがわかる。
【0162】
図12に関し、下記試料8〜12を用意した。すなわち、
試料8:熱伝導部材の厚み:0.5[mm]
試料9:熱伝導部材の厚み:1.0[mm]
試料10:熱伝導部材の厚み:1.5[mm]
試料11:熱伝導部材の厚み:2.0[mm](試料4)
試料12:熱伝導部材の厚み:5.0[mm](試料3)
を用意した。
【0163】
なお、試料8〜12のいずれも、
熱伝導材料を得るための大豆皮の焼成温度:900[℃]
大豆皮の焼成物のメディアン径:60μm
ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率:300[phr]
とした。
【0164】
図12によれば、試料8,9,12(図内□、▽、×でプロットしたもの)に関する電磁波吸収量は、総じてみれば周波数帯域に拘わらずほぼ一定量を示す。ただし、試料12(図内×でプロットしたもの)は、試料8,9(図内□、▽でプロットしたもの)に比して電磁波吸収量が多い。一方、試料10,11(図内△、○でプロットしたもの)は、周波数の高低により電磁波吸収量に変化がみられる。
【0165】
図13,図14は、「熱伝導部材」の電磁波吸収特性を示すグラフである。図13等の横軸には周波数[MHz]を示し、縦軸に電磁波吸収量[dB]を示している。さらに、図13には、500[MHz]までの周波数帯域の拡大図を付記している。
【0166】
図13,図14に示す電磁波吸収特性は、いわゆるS−パラメータ法によって計測した。具体的には、内径が約20φの円筒状のテスト用容器の底面に外径が約20φで内径が8.7φのトロイダル形状の熱伝導部材を載置した状態で、図13,図14内でプロットしている周波数の入射波をテスト用容器の開口端から当該混合物に対して照射し、当該混合物からの反射波のエネルギーを計測して、電磁波吸収量を算出したものである。熱伝導部材は、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率を0[phr]〜400[phr]まで50[phr]刻みで変更している。なお、いずれも、大豆皮の焼成温度を900[℃]とし、大豆皮の焼成物のメディアン径を60μmとした。
【0167】
図13によれば、大豆皮の焼成物の含有率の高低に拘わらず、500[MHz]〜2300[MHz]付近では、電磁波吸収量はバラつきが少なく略0[dB]である。なお、2300[MHz]〜2400[MHz]のものは、測定時のノイズである。一方、2400[MHz]以上では、大豆皮の焼成物の含有率が150[phr]以下の場合には、電磁波吸収量はバラつきが少なく約0[dB]であるが、大豆皮の焼成物の含有率が200[phr]以上の場合には、程度の差こそあれ電磁波吸収量が多くなっている。
【0168】
図13の拡大図によれば、50[MHz]付近では、大豆皮の焼成物の含有率が150[phr],400[phr]の場合には、それぞれ、−3[dB],−6[dB]の電磁波吸収量が確認できるが、その他の含有率の場合には電磁波吸収量にバラつきが大きくなるものの−1.0[dB]内に納まっている。
【0169】
ここで、大豆皮の焼成物の含有率が400[phr]のものに着目すれば、本実施形態の電磁波吸収体は、50[MHz]付近周波数帯域においては、図2に示したように電磁波シールド効果が40[dB]であるところ、図13に示すように電磁波吸収量が−6[dB]であることから,34[dB]の反射が生じていると考えられる。また、図13に示すグラフから、50[MHz]〜100[MHz]の周波数帯域では,電磁波反射体として用いることが好ましい。
【0170】
図14には、熱伝導部材の厚さを0.5[mm]〜5.0[mm]まで、0.5[mm]刻みで変更した場合の周波数と電磁波吸収量との関係を示している。ここでは、大豆皮の焼成物の含有率を300[phr]としている。
【0171】
図14によれば、熱伝導部材の厚さが2.5[mm],5.0[mm]の場合を除くと、相互に近似した電磁波吸収量を示していることがわかる。すなわち、熱伝導部材の厚さが0.5[mm]〜1.5[mm]の場合には、500[MHz]〜2300[MHz]付近では、電磁波吸収量はバラつきが少なく略0[dB]である。2400[MHz]以上では、熱伝導部材の厚さの相違に基づく程度の差こそあれ、電磁波吸収量が多くなっていて、500[MHz]以下では、電磁波吸収量にバラつきが大きくなるものの−1.0[dB]内に納まっている。なお、2300[MHz]〜2400[MHz]に表れているものはノイズである。
【0172】
これに対して、熱伝導部材の厚さが5.0[mm]の場合には、3000[MHz]までの周波数帯域のいずれの個所でも電磁波吸収量が相対的に多い。また、熱伝導部材の厚さが2.5[mm]の場合にも、1200[MHz]を超える付近から、電磁波吸収量が多くなる。
【0173】
ただし、この実験結果によると、2400[MHz]以上の周波数帯域では、熱伝導部材の厚さが2.5[mm]の場合と熱伝導部材の厚さが5.0[mm]の場合とでは電磁波吸収量の多少の相違が見受けられる。
【0174】
もっとも、熱伝導部材の厚さが5.0[mm]の場合には、周波数50[MHz]において、−4[dB]程度の吸収特性が得られている点と、周波数帯域2000[MHz]〜2500[MHz]において最大−5[dB]程度の吸収特性が得られている点とには注目すべきである。
【0175】
図32(a)〜図32(h)は、それぞれ、菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハルの焼成物からなる熱伝導部材の電磁波吸収特性を示すグラフである。図32(a)〜図32(h)の横軸には周波数[MHz]を示し、縦軸に電磁波吸収量[dB]を示している。ここでは、熱伝導部材の厚さを2.5[mm]、5.0[mm]とし、ゴムに対する菜種粕等の焼成物の含有率を変化させている。
【0176】
図32(a)には菜種粕の焼成物を900[℃]の焼成温度で焼成した厚さを2.5[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示し、図32(b)には菜種粕の焼成物を900[℃]の焼成温度で焼成した厚さを5.0[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示している。
【0177】
図32(c)には綿実粕の焼成物を900[℃]の焼成温度で焼成した厚さを2.5[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示し、図32(d)には綿実粕の焼成物を900[℃]の焼成温度で焼成した厚さを5.0[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示している。
【0178】
図32(e)には胡麻粕の焼成物を900[℃]の焼成温度で焼成した厚さを2.5[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示し、図32(f)には胡麻粕の焼成物を900[℃]の焼成温度で焼成した厚さを5.0[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示している。
【0179】
図32(g)にはコットンハルの焼成物を900[℃]の焼成温度で焼成した厚さを2.5[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示し、図32(h)にはコットンハルの焼成物を900[℃]の焼成温度で焼成した厚さを5.0[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示している。
【0180】
菜種粕等のいずれの植物の焼成物を用いたときも、3000[MHz]以下の周波数帯域では、熱伝導部材の厚さが2.5[mm]の場合には最大で−5[dB]程度の吸収特性が得られ、5.0[mm]の場合には最大で−8[dB]程度の吸収特性が得られた。
【0181】
なお、胡麻粕については、ゴムに対して300[phr]の焼成物を含有させた場合の測定を行うことができなかったため、確定的なことは言えないが、2000[MHz]〜3000[MHz]という周波数帯域では、菜種粕等のいずれの植物の焼成物の場合にも、ゴムに対して300[phr]を含有させた場合に、効果的な周波数吸収特性があるといえる。
【0182】
図33は、焼成温度等を変更させたときの大豆皮の焼成物に係る電磁波吸収特性を示すグラフであり、図13に相当するものである。図33(a)〜図33(f)の横軸には周波数[MHz]を示し、縦軸に電磁波吸収量[dB]を示している。ここでも、熱伝導部材の厚さを2.5[mm]、5.0[mm]の双方の場合の測定を行った。
【0183】
図33(a)には焼成温度を900[℃]とした焼成物を微粉砕した厚さ2.5[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示し、図33(b)には焼成温度を900[℃]とした焼成物を微粉砕した厚さ5.0[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示している。
【0184】
図33(c)には焼成温度を1500[℃]とした厚さ2.5[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示し、図33(d)には焼成温度を1500[℃]とした厚さ5.0[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示している。
【0185】
図33(e)には焼成温度3000[℃]とした大豆皮に係る厚さ2.5[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示し、図33(f)には焼成温度を3000[℃]とした大豆皮に係る厚さ5.0[mm]の熱伝導部材の電磁波吸収特性を示している。
【0186】
まず、図33(a)〜図33(f)のすべての測定結果から、2000[MHz]〜3000[MHz]の周波数帯域において、熱伝導部材の厚さが5.0[mm]の場合には最大で10[dB]程度の電磁波吸収量が確認された一方で、熱伝導部材の厚さが2.5[mm]の場合にはこのような電磁波吸収量は確認されなかった。
【0187】
また、図33(a)〜図33(f)を相互に比較すると、熱伝導材料を得るための大豆皮の焼成物の焼成温度、熱伝導部材の厚さ、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有量、大豆皮の焼成物の微粉砕の有無に依存して、最大電磁波吸収量が得られる周波数帯域が変動することが確認できた。
【0188】
このことから、例えば2500[MHz]周辺に好適に用いられる熱伝導材料を得ようとする場合には、
(1)大豆皮の焼成物の焼成温度を1500[℃]、熱伝導部材の厚さを5[mm]、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有量を200[phr]、大豆皮の焼成物を微粉砕せず、としてもよいし、
(2)大豆皮の焼成物の焼成温度を900[℃]、熱伝導部材の厚さを5[mm]、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有量を300[phr]〜400[phr]、大豆皮の焼成物を微粉砕する、としてもよいということがわかる。
【0189】
図15,図16は、図13,図14に対応する周波数と電磁波吸収特性との関係を示すグラフである。ここでは、2000[MHz]〜8000[MHz]の周波数帯域での電磁波吸収特性を示している。
【0190】
図15に示すように、各グラフの極小値に着目すれば、エチレン・プロピレンジエンゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率と周波数帯域との間に関連性が見受けられる。すなわち、エチレン・プロピレンジエンゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率が多いほど、電磁波の吸収領域が低周波数帯域にシフトしている。
【0191】
また、エチレン・プロピレンジエンゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率と吸収量自体との間にも関連性がみられる。すなわち、エチレン・プロピレンジエンゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率が50[phr],100[phr]の場合を除き、エチレン・プロピレンジエンゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率が増加するほど、電磁波吸収量が多くなる。
【0192】
しかし,大豆皮の焼成物の含有率が50[phr]及び100[phr]の試料では吸収特性が得られない。なお、図15において注目すべきは、大豆皮の焼成物の含有率が150[phr]の場合には、7[GHz]〜8[GHz]の周波数帯域において−20[dB]もの吸収特性が得られた点である。
【0193】
図16に示すように、熱伝導部材の厚さと周波数帯域との間に関連性が見受けられる。すなわち、熱伝導部材の厚さが増加するにつれて、電磁波の吸収領域が低周波数帯域にシフトしている。
【0194】
図34(a)〜図34(d)は、それぞれ、菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハルの焼成物からなる熱伝導部材の電磁波吸収特性を示すグラフであり、図15に相当するものである。図34(a)〜図34(d)の横軸には周波数[MHz]を示し、縦軸に電磁波吸収量[dB]を示している。ここでは、菜種粕等の焼成温度を900℃とし、熱伝導部材の厚さを2.5[mm]とし、ゴムに対する菜種粕等の焼成物の含有率を変化させている。
【0195】
図34(a)には、菜種粕の焼成物からなる熱伝導部材の電磁波吸収特性を示している。図34(b)には、胡麻粕の焼成物からなる熱伝導部材の電磁波吸収特性を示している。図34(c)には、綿実粕の焼成物からなる熱伝導部材の電磁波吸収特性を示している。図34(d)にはコットンハルの焼成物からなる熱伝導部材の電磁波吸収特性を示している。
【0196】
まず、図34(a)〜図34(d)を見てみると、2000[MHz]〜6000[MHz]の周波数帯域では、菜種粕等の各焼成物における電磁波吸収量の最大値は、−15[dB]程度であることがわかる。
【0197】
なお、図34(c)に示す綿実粕については、ゴムに対して300[phr]の焼成物を含有させた場合の測定を行うことができなかったため、確定的なことは言えないが、2000[MHz]〜8000[MHz]という周波数帯域では、菜種粕等のいずれの植物の焼成物の場合にも、ゴムに対して300[phr]を含有させた場合に効果的な周波数吸収特性があるといえる。そして、電磁波吸収量が最大となる周波数は、4000[MHz]〜6000[MHz]付近であるという結果が得られた。
【0198】
図35は、焼成温度等を変更させたときの大豆皮の焼成物に係る電磁波吸収特性を示すグラフであり、図15に相当するものである。図35(a)〜図35(c)の横軸には周波数[MHz]を示し、縦軸に電磁波吸収量[dB]を示している。なお、熱伝導部材の厚さは、2.5[mm]としている。
【0199】
図35(a)には、大豆皮の焼成物を900[℃]の焼成温度で焼成して微粉砕したものの電磁波吸収特性を示している。図35(b)には、大豆皮の焼成物を1500[℃]の焼成温度で焼成して微粉砕しないものの電磁波吸収特性を示している。図35(c)には、大豆皮の焼成物を3000[℃]の焼成温度で焼成して微粉砕しないものの電磁波吸収特性を示している。
【0200】
大豆皮の焼成物の場合には、図34に示した菜種粕等の場合に比して、焼成温度に拘わらず、20[dB]以上の強い電磁波吸収特性が確認できる。また、これらの測定結果によれば、電磁波吸収量の最大値と、大豆皮の焼成温度と、ゴムに対する大豆皮の焼成物の含有量との間の相関関係は乏しいといえる。
【0201】
例えば、図35(a)に示すように焼成温度が900[℃]の場合には含有量が300[phr]、図35(b)に示すように焼成温度が1500[℃]の場合には含有量が200[phr]、図35(c)に示すように焼成温度が3000[℃]の場合には含有量が150[phr]のときに、電磁波吸収量が多かった。
【0202】
また、図35(a)から、約4200[MHz]〜約4400[MHz]の周波数帯域で20[dB]以上の電磁波遮蔽量が確認できる。さらに、図35(b)及び図35(c)から、約6000[MHz]付近の周波数帯域で20[dB]以上の電磁波遮蔽量が確認できる。特に、図35(c)では、最大で、40[dB]近い電磁波遮蔽量が確認できる。
【0203】
図17,図18は、大豆皮の焼成物を配合する母材をエチレン・プロピレンジエンゴムに代えて低密度ポリエチレンとした場合の周波数と電磁波吸収量との関係を示すグラフである。図17には、大豆皮の焼成温度を900℃、メディアン径を約60μm、熱伝導部材の厚さを2.5[mm]として、低密度ポリエチレンに対する大豆皮の焼成物の含有率を0〜50[wt.%]まで10[wt.%]刻みで変更した場合のグラフを示している。
【0204】
図17によれば、大豆皮の焼成物の含有率に拘わらず、500[MHz]〜2300[MHz]付近では、電磁波吸収量はバラつきが少なく略0[dB]である。なお、大豆皮の焼成物の含有率に拘わらず、2300[MHz]以上、500[MHz]以下の周波数帯域では、程度の差こそあれ図13に示した場合と同様の電磁波吸収量を示していると評価できる。
【0205】
図18には、低密度ポリエチレンに対する大豆皮の焼成物の含有率を40[wt.%],50[wt.%]から選択し、熱伝導部材の厚さを1,2,3[mm]と変更した場合のグラフを示している。図18の場合にも、総じてみれば、電磁波吸収量については、図17に示した場合と同様の評価ができる。
【0206】
ただし、熱伝導部材の厚さを増して、低密度ポリエチレンに対する大豆皮の焼成物の含有率を高めた場合には、電磁波吸収量は多くなる。このことから、低密度ポリエチレンを母材とする場合には、大豆皮の焼成物の含有率自体を向上させるようにすることが、電磁波吸収の点では好ましい。
【0207】
図17,図18に示すグラフからいえることは、低密度ポリエチレンに対する大豆皮の焼成物の含有率が、低密度ポリエチレンの構造上、特性上の理由から、エチレン・プロピレンジエンゴムに対する大豆皮の焼成物の含有率より多くできないため、電磁波吸収特性が相対的には得られないことがわかる。ちなみに、低密度ポリエチレンに対する大豆皮の焼成物の含有率は、せいぜい、含有率50[wt.%](=大豆皮の焼成物の含有率:100[phr])程度である。
【0208】
以上説明したように、本実施形態の熱伝導部材は、その帯電防止機能、静電防止機能のみならず、遮蔽機能が認められる。また、これらの機能は、大豆皮等の植物焼成物の製造条件を変更することで、種々の用途に適したものとすることができる。
【0209】
換言すると、本実施形態の熱伝導部材は、母材に対する大豆皮の焼成物の含有率、大豆皮の焼成物のメディアン径、大豆皮の焼成物を得るための焼成温度を調整することによって、種々の用途に適したものとすることができる。したがって、例えば、本実施形態の熱伝導材料は、電子機器で用いられるプラスチック、ゴムへの導電性フィラーとして利用することができる。
【0210】
また、本実施形態に係る大豆皮の焼成物について、以下のような実験、測定を行った。なお、ここでは、大豆皮の焼成物のメディアン径を約30μmのもの、約60μmのものを用いて何回かの実験、測定を行ったが、この範囲のメディアン径の相違による実験結果、測定結果の違いは見られなかった。
【0211】
(1)本実施形態に係る大豆皮の焼成物について、かさ比重、BET比表面積、結晶子サイズといった物性値を測定した。
【0212】
(2)本実施形態に係る大豆皮の焼成物について、エチレン・プロピレンジエンゴム以外の母材に対する配合の可否、及び、配合が可能である場合のゴムに対する当該焼成物含有率を測定した。
【0213】
まず、物性値については、以下のような測定結果が得られた。
かさ比重:約0.2g/ml〜約0.6g/ml(最多帯約0.4g/ml)
BET比表面積:約4.7m/g〜約390m/g
結晶子サイズ:約1nm〜約20nm
【0214】
なお、900[℃]、1500[℃]、3000[℃]の各焼成温度で焼成したものを比較すると、焼成温度によりBET比表面積が変化することも分かる。
【0215】
ここで、たとえば、特開2005−336017号公報には、かさ比重が0.6〜1.2g/cmの多孔質炭素材料が開示されている。この公報のものと上記測定結果とを対比すると、本実施形態に係る大豆皮の焼成物は、そのかさ比重が低い値であるといえる。なお、本実施形態に係る大豆皮の焼成物のかさ比重は、JIS K−1474に準拠して測定した。
【0216】
特開2007−191389号公報には、非水系二次電池用電極向きの炭素質あるいは黒鉛質粒子として、メディアン径が5〜50μm、BET法比表面積が、25m2/g以下のものが開示されている。
【0217】
特開2005−222933号公報には、リチウム電池用負極材として、結晶子サイズが100nmよりも大きい炭素質粒子が開示されている。この公報のものと上記測定結果とを対比すると、本実施形態に係る大豆皮の焼成物は、その結晶子サイズが小さく、低結晶性カーボンであると評価できる。
【0218】
なお、補足すると、菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハル、カカオハスクのかさ比重は、それぞれ、約0.6〜0.9g/ml,約0.7〜0.9g/ml,約0.6〜0.9g/ml,約0.3〜0.5g/ml,約0.3〜0.5g/mlであった。このことから、外皮類(大豆皮、コットンハル、カカオハスク)は、比較的かさ高いといえる。
【0219】
つぎに、エチレン・プロピレンジエンゴム以外の母材に対する配合の可否、及び、配合が可能である場合のゴムに対する当該焼成物含有率の測定結果としては、以下のようになった。
【0220】
なお、オープンロール(2軸混練機)として、安田精機製作所社製のNo.191‐TM TEST MIXING ROLLを用い、成型加工機(圧縮成型機)として、TOYOSEIKI mini TEST PRESS・10を用いた。
【0221】
また、比較のために、本実施形態に係る大豆皮の焼成物のほかに、
(1)ヤシ殻活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製の粒状白鷺WH2C8/32SS、Lot No M957)、
(2)カーボンブラック(旭カーボン社製のSUNBLACK285、Lot No 8BFS6)、
を用いた。
【0222】
エチレン・プロピレンジエンゴム以外の母材としては、
(a)イソプレン(ジェイエスアールクレイトンエラストマー社製のIR-2200)、
(b)ポリ塩化ビニル樹脂(新第一塩ビ社製のZEST1000Z、Lot NoC60211)、
を用いた。
【0223】
また、ヤシ殻活性炭及びカーボンブラックについては、エチレン・プロピレンジエンゴムに対する配合の可否についても確認した。
【0224】
本実施形態に係る大豆皮の焼成物等の母材に対する配合は、既述の図2を用いた説明と同様であるが、概説すると、イソプレンを母材とした場合には約90[℃]に予熱させたオープンロールで素練りをした。また、PVCを母材とした場合には約185[℃]に予熱させたオープンロールで素練りをした。それから、本実施形態に係る大豆皮の焼成物等を、それぞれ、母材に対して配合してみた。なお、この大豆皮の焼成物は、900[℃]の温度で焼成したものであり、メディアン径は30μmとした。
【0225】
その後、成型加工機を用いて、本実施形態に係る大豆皮の焼成物等を配合した母材に対して、圧力20[MPa]、温度100[℃]、5分間といった条件で成型加工した。
【0226】
こうして、得られた結果物についての、母材に対する配合の可否、及び、配合が可能である場合のゴムに対する当該焼成物含有率の測定結果は以下のとおりである。
【0227】
1.本実施形態に係る大豆皮の焼成物について
(1)イソプレンを母材とした場合には、約600[phr]もの含有率が確認できた。
【0228】
(2)ポリ塩化ビニル樹脂を母材とした場合には、約350[phr]もの含有率が確認できた。
【0229】
2.ヤシ殻活性炭について
(1)イソプレンを母材とした場合には、約150[phr]の含有率が確認できた。しかし、200[phr]以上練り込むのは不可能であった。
【0230】
(2)エチレン・プロピレンジエンゴムを母材とした場合には、約150[phr]の含有率が確認できた。ただし、この場合、この加圧成形体を湾曲させると、クラックが発生した。また、200[phr]以上練り込むのは不可能であった。
【0231】
3.カーボンブラックについて
(1)イソプレンを母材とした場合には、約100[phr]の含有率が確認できた。ただし、この場合、この加圧成形体を湾曲させると、クラックが発生した。また、150[phr]以上練り込むのは不可能であった。
【0232】
(2)エチレン・プロピレンジエンゴムを母材とした場合には、約100[phr]の含有率が確認できた。ただし、この場合、この加圧成形体を湾曲させると、クラックが発生した。また、150[phr]以上練り込むのは不可能であった。
【0233】
以上をまとめると、本実施形態に係る大豆皮の焼成物に対して、植物由来の炭化物という点、及び、多孔質構造であるという点で共通している「ヤシ殻活性炭」を用いても、本実施形態に係る大豆皮の焼成物のような、母材に対する大量の配合は認められなかった。とすると、本実施形態に係る大豆皮の焼成物の焼成温度、それに起因する炭素含有量、反応性官能残基の多さなどのいずれかが、母材に対する含有率を高めることに寄与している可能性がある。
【0234】
また、石油系ピッチ由来のカーボンブラックの場合には、エチレン・プロピレンジエンゴムに対して100[phr]の量を含有させたのでは、その可撓性が低下するのみならず、イソプレンに対して100[phr]の量を含有させた場合であっても、その可撓性が低下することがわかった。
【0235】
なお、本実施形態に係る大豆皮の焼成物は、シリコンゴムを母材とした場合であっても、母材に対して配合することが可能であることを確認した。また、本実施形態において説明した各実験結果等については、選択的に再現性試験を行ってみたところ、いずれも再現性が確認できた。また、本実施形態に係る大豆皮の焼成物は、ゴムのみならず、塗料、セメントなどを母材とすることもできる。したがって、例えば、屋根材等に熱伝導部材入り塗料として塗布したり、集合住宅などの建設時に熱伝導部材入りセメントとして用いたりすることもできる。
【0236】
さらに、本実施形態に係る大豆皮の焼成物のメディアン径を約30μmとして各実験を選択的に行ってみた。図8を用いて説明したとおり、メディアン径を60μm,10μm,2μmと変更した場合には、体積固有抵抗率の差異が見受けられたが、メディアン径が60μmの場合と30μmの場合とでは、顕著な差異は見られなかった。もっとも、「表面抵抗率」についても、メディアン径が60μmの場合と30μmの場合とでは、顕著な差異は見られなかった。
【0237】
実際に、本実施形態の熱伝導材料の酸素吸着量確認試験を行った。具体的には、まず、熱伝導材料(約250g)と酸素濃度計(理研計器社製OX−01:隔膜ガルバニ電池式)とをデシケーターに入れて密封させた。この際、デシケーター内での熱伝導材料と空気との接触面積は約615cmであり、デシケーター内の空気の体積は約2.5Lであった。
【0238】
上記熱伝導材料は、大気に接触済みであり、既に、相当程度の酸素を吸着していたにも関わらず、密封から1時間後に酸素濃度が0.4%も減少した。密閉から3時間後には酸素吸着量が10mL、単位接触面積当たりの酸素吸着量が0.016mL/cmであり、単位重量当たりの酸素吸着量は0.04mL/gであった。
【0239】
つぎに、カカオハスクの焼成物(熱伝導材料)からなる熱伝導部材について説明する。なお、下記の各種測定等は、既述の生大豆皮及び大豆皮の焼成物等に対するものと同様の条件で行った。
【0240】
まず、生カカオハスクの成分分析(有機元素分析法)を行ってみたところ、炭素成分が約43.60%、水素成分が約6.02%、窒素成分が約2.78%であった。一方、カカオハスクの焼成物の成分分析(有機元素分析法)を行ってみたところ、炭素成分が約65.57%、水素成分が約1.12%、窒素成分が約1.93%であった。また、カカオハスクの焼成物の体積固有抵抗率は、0.0406Ω・cmであった。
【0241】
図40,図41は、生カカオハスクのSEM写真である。図40(a)には350倍の倍率で撮影した外皮写真を示し、図40(b)には100倍の倍率で撮影した内皮写真を示し、図41(a)には750倍の倍率で撮影した内皮写真を示し、図41(b)には1500倍の倍率で撮影した内皮写真を示している。
【0242】
図40(a)に示すように、生カカオハスクの外皮は、石灰岩の表面のような形態であることがわかる。一方、図40(b)に示すように、生カカオハスクの内皮は、繊維状の形態をしていることが分かる。
【0243】
興味深い点は、図41(a),図41(b)に示すように、生カカオハスクの内皮は、繊維状部分を拡大してみてみると、螺旋状の形態をしていることが分かる。なお、螺旋状部分の直径は、おおむね10μm〜20μmに見える。
【0244】
図42,図43は、内皮と外皮とで区別せずに焼成したカカオハスクのSEM写真である。図42(a)、図42(b)及び図43(a)には、1500倍の倍率で撮影した焼成物の写真を示し、図43(b)には3500倍の倍率で撮影した焼成物の写真を示している。
【0245】
図42(a),図43(b)から、カカオハスクの焼成物にも、生カカオハスクの内皮に見られた繊維状の形態が残存していることが確認できる。なお、この焼成物のサイズは、螺旋状部分の直径はおおむね5μm〜10μmにまで縮小しているように見える。また、図42(b),図43(a)から、カカオハスクの焼成物は、多彩なポーラス構造であることが確認できる。
【0246】
螺旋状の形態は、既述の大豆皮、菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハル、大豆殻では、確認できていない。したがって、このような形態は、カカオハスク固有のものである可能性が高い。
【0247】
図44は、カカオハスクの焼成物からなる熱伝導部材の電磁波吸収特性を示すグラフであり、図32に示したものに相当する。図45は、カカオハスクの焼成物からなる熱伝導部材の電磁波吸収特性を示すグラフであり、図34に示したものに相当する。
【0248】
図44(a),図44(b)及び図45の横軸には周波数[MHz]を示し、縦軸に電磁波吸収量[dB]を示している。図44,図45と図32,図34とを対比でみると、カカオハスクに係る電磁波吸収特性は、コットンハルに係る電磁波吸収特性に似ているように見える。
【0249】
つぎに、本実施形態の熱伝導部材の熱伝導率の測定結果について説明する。後述する各試料に対して、25℃の温度下で熱伝導率測定を行った。熱伝導率の測定方法は、熱線法とし、JIS規格R2616に準拠して行った。
【0250】
なお、試料の熱伝導率の測定は、長さ100mm×幅50mm×厚さ2.5mmのサイズの熱伝導部材を8枚積層させた状態で行った(試料Aの測定と、試料Dに係る150phrの測定のみ、厚さ2.0mm×10枚積層とした)。また、測定装置には、迅速熱伝導率計QTM−500(京都電子工業製)を用いた。そして、熱伝導率の測定は、後述する標準試料の熱伝導率規格値±5%以内の数値が得られる精度条件で行った。
【0251】
図46は、本実施形態の熱伝導部材の熱伝導率の測定結果を示すグラフである。図46には、以下説明する各種試料と比較例として市場に流通している任意の2種類のカーボンブラック(CB1,2)とを母材(エチレン・プロピレンジエンゴム)に所定量含有させた場合の熱伝導率を示している。なお、図46には、参考のため、標準試料として、発砲ポリエチレン(PE)、シリコンゴム、石英ガラスの各熱伝導率も示している。また、CB2については、厚さ2.0mm×10枚積層とした。
【0252】
まず、標準試料の熱伝導率は、発砲ポリエチレン(PE)が0.036[W/(m・K)]、シリコンゴムが0.238[W/(m・K)]、石英ガラスが1.42[W/(m・K)]であった。
【0253】
カーボンブラック(CB1,2)の熱伝導率は、それぞれ、0.377[W/(m・K)]、0.418[W/(m・K)]であった。なお、母材に対するカーボンブラック(CB1,2)の含有量は、各々、100phrとした。また、母材自体の熱伝導率は、僅かに、0.211[W/(m・K)]であった。
【0254】
試料Aは、大豆皮を約900℃の温度で焼成し、微粉砕することなく製造した熱伝導部材である。この熱伝導部材に用いられている熱伝導材料のメディアン径は、約30μmである。試料Aを母材に対して、それぞれ、100phr、200phr、400phr含有させたときの熱伝導率は、それぞれ、0.342[W/(m・K)]、0.446[W/(m・K)]、0.651[W/(m・K)]であった。
【0255】
試料Bは、大豆皮を約900℃の温度で焼成し、微粉砕して製造した熱伝導部材である。この熱伝導部材に用いられている熱伝導材料のメディアン径は、約5μmである。試料Bを母材に対して、それぞれ、100phr、150phr、200phr、300phr、400phr含有させたときの熱伝導率は、それぞれ、0.334[W/(m・K)]、0.391[W/(m・K)]、0.436[W/(m・K)]、0.518[W/(m・K)]、0.587[W/(m・K)]であった。
【0256】
試料Cは、大豆皮を約1500℃の温度で焼成し、微粉砕することなく製造した熱伝導部材である。この熱伝導部材に用いられている熱伝導材料のメディアン径は、約30μmである。試料Cを母材に対して、それぞれ、100phr、200phr、300phr含有させたときの熱伝導率は、それぞれ、0.498[W/(m・K)]、0.769[W/(m・K)]、1.030[W/(m・K)]であった。
【0257】
試料Dは、大豆皮を約3000℃の温度で焼成し、微粉砕することなく製造した熱伝導部材である。この熱伝導部材に用いられている熱伝導材料のメディアン径は、約30μmである。試料Dを母材に対して、それぞれ、150phr、400phr含有させたときの熱伝導率は、それぞれ、1.100[W/(m・K)]、3.610[W/(m・K)]であった。
【0258】
試料Nは、菜種粕を約900℃の温度で焼成し、微粉砕することなく製造した熱伝導部材である。この熱伝導部材に用いられている熱伝導材料のメディアン径は、約48μmである。試料Nを母材に対して、それぞれ、100phr、200phr、400phr含有させたときの熱伝導率は、それぞれ、0.344[W/(m・K)]、0.460[W/(m・K)]、0.654[W/(m・K)]であった。
【0259】
試料Mは、綿実粕を約900℃の温度で焼成し、微粉砕することなく製造した熱伝導部材である。この熱伝導部材に用いられている熱伝導材料のメディアン径は、約36μmである。試料Nを母材に対して、それぞれ、100phr、200phr、400phr含有させたときの熱伝導率は、それぞれ、0.348[W/(m・K)]、0.482[W/(m・K)]、0.683[W/(m・K)]であった。
【0260】
試料Gは、胡麻粕を約900℃の温度で焼成し、微粉砕することなく製造した熱伝導部材である。この熱伝導部材に用いられている熱伝導材料のメディアン径は、約61μmである。試料Nを母材に対して、それぞれ、100phr、200phr、400phr含有させたときの熱伝導率は、それぞれ、0.345[W/(m・K)]、0.471[W/(m・K)]、0.665[W/(m・K)]であった。
【0261】
試料CTは、コットンハルを約900℃の温度で焼成し、微粉砕することなく製造した熱伝導部材である。この熱伝導部材に用いられている熱伝導材料のメディアン径は、約34μmである。試料CTを母材に対して、それぞれ、100phr、200phr、400phr含有させたときの熱伝導率は、それぞれ、0.361[W/(m・K)]、0.495[W/(m・K)]、0.705[W/(m・K)]であった。
【0262】
試料CAは、カカオハスクを約900℃の温度で焼成し、微粉砕することなく製造した熱伝導部材である。この熱伝導部材に用いられている熱伝導材料のメディアン径は、約39μmである。試料CAを母材に対して、それぞれ、100phr、200phr、400phr含有させたときの熱伝導率は、それぞれ、0.355[W/(m・K)]、0.483[W/(m・K)]、0.692[W/(m・K)]であった。
【0263】
まず、母材の熱伝導率と各試料の熱伝導率とを対比すると、各試料の熱伝導率が高いことが分かる。したがって、母材のみを熱伝導部材として用いるよりも、ここに本実施形態の熱伝導材料を含有させた方が熱伝導率の点で優れていることが分かる。
【0264】
試料Aを母材に対して100phr含有させたときの熱伝導率は、比較例の各々のものと大差がない。これは、母材に対する炭素含有量が近いことに起因していると思われる。また、試料Aを母材に対して200phr含有させたときの熱伝導率は、比較例の各々のものよりも若干良いと評価できるものの、際立った増加は確認できない。これに対して、試料Aを母材に対して400phr含有させたときの熱伝導率は、比較例の各々のものの1.5倍以上に増加した。
【0265】
つぎに、試料Aと試料N,M,G,CT,CAとの熱伝導率を対比すると、総じて、同様の傾向がみられることが分かった。すなわち、これらの試料は、いずれも、母材に対する熱伝導材料の含有量が同様の場合には、同様の熱伝導率となることが分かる。そして、これらの試料のいずれも、母材に対する熱伝導材料の含有量が増加するにつれて、熱伝導率も増加していることが分かる。
【0266】
つぎに、試料Aと試料Bとを対比すると、メディアン径が小さい熱伝導材料を用いている試料Bの方が熱伝導率の増加傾向に若干ではあるが陰りがある。したがって、熱伝導率を増加させたい場合には、「微粉砕」工程を省く方が良いと考察される。
【0267】
つぎに、試料Aと試料Cとを対比すると、熱伝導材料を製造する際の焼成温度を増加させるにつれて、熱伝導率が増加していることがわかる。試料Cの場合には、母材に対して僅かに100phrの熱伝導材料を含有させただけでも、略0.5[W/(m・K)]の熱伝導率が確認できる。
【0268】
同様に、試料Aと試料Dとを対比しても、熱伝導材料を製造する際の焼成温度を増加させるにつれて、熱伝導率が増加していることがわかる。試料Dの場合には、母材に対して僅かに150phrの熱伝導材料を含有させただけでも、略1.1[W/(m・K)]の熱伝導率が確認できる。さらに、驚くべきことに、試料Dの場合には、母材に対して400phrの熱伝導材料を含有させた場合には、母材の熱伝導率の約17倍もの熱伝導率が得られる。
【0269】
このような測定結果が得られた理由を考察してみる。まず、炭素自体は、伝熱性を有している。伝熱性を有している物質が相互に近接すると、ヒートブリッジが形成される。本実施形態の熱伝導材料は、炭素含有率が高いことから、ヒートブリッジが形成されやすいといえる。このため、本実施形態の熱伝導材料が含有された熱伝導部材は、熱伝導性が優れているものと考察される。
【0270】
図49は、図46のグラフを補充する測定結果を示すグラフである。図49には、図46に示す試料Dと同条件で製造及び測定した試料Eの測定結果を示している。なお、ここでは、参考のため、標準試料として、図46の場合と同様に、発砲ポリエチレン(PE)、シリコンゴム、石英ガラスの各熱伝導率も示している。
【0271】
ここで、試料Eは、その大豆皮の焼成物を、試料Dに係る大豆皮の焼成物と同様の工程で、試料Dに係る大豆皮の焼成物よりも1年以上経過後に製造したものである。つまり、試料Eは、試料Dと同様に、大豆皮を約3000℃の温度で焼成し、微粉砕することなく製造した熱伝導部材である。この熱伝導部材に用いられている熱伝導材料のメディアン径は、約30μmである。
【0272】
試料Eを母材に対して、それぞれ、100phr、150phr、200phr、300phr、400phr含有させたときの熱伝導率を測定してみた。
【0273】
試料Eを母材に対して100phr含有させたときの熱伝導率は、0.765[W/(m・K)]であった。これは、試料Eを母材に対して150phr含有させたときの熱伝導率よりも低いことがわかる。
【0274】
また、試料Eを母材に対して150phr含有させたときの熱伝導率は、図36に示した試料Dを母材に対して150phr含有させたときの熱伝導率と同値の1.100[W/(m・K)]であった。また、試料Eを母材に対して400phr含有させたときの熱伝導率は、3.770[W/(m・K)]であり、図36に示した3.610[W/(m・K)]とは多少相違したものの、ほぼ同値であるといえる。
【0275】
このことから、本実施形態の熱伝導部材は、熱伝導率に関して再現性が高いということがわかった。付言すると、試料Dに係る大豆皮の焼成物と試料Eに係る大豆皮の焼成物は、熱伝導率のみならず、物性、成分分析なども同様の結果であった。
【0276】
また、試料Eを母材に対して、それぞれ、200phr、300phr含有させたときの熱伝導率は、1.680[W/(m・K)]、2.860[W/(m・K)]であった。
【0277】
また、図49からも明らかなように、母材に対する試料Eの含有量を線形的に増加させた結果、熱伝導率も線形的に増加することがわかった。したがって、本実施形態に係る植物焼成物は、母材に対する含有量を適宜選択することによって、熱伝導率を容易に制御することができるということが明白になった。換言すると、母材に対する植物焼成物の含有率の増減と熱伝導部材本体の熱伝導率の高低とに線形性があることが明白になった。
【産業上の利用分野】
【0278】
本発明は、熱伝導シート、熱伝導板、熱伝導塗料などの分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】本実施形態の熱伝導部材の電磁波遮蔽特性の測定結果を示すグラフである。
【図2】本実施形態の熱伝導材料及び熱伝導部材の模式的な製造工程図である。
【図3】大豆皮等の焼成前後のZAF定量分析法による成分分析結果を示すグラフである。
【図4】「生大豆皮」の組織観察結果を示すSEM写真である。
【図5】「大豆皮の焼成物」の組織観察結果を示すSEM写真である。
【図6】「大豆皮の焼成物」についての導電性試験の試験結果を示すグラフである。
【図7】大豆皮の焼成温度と体積固有抵抗率との関係を示すグラフである。
【図8】大豆皮の焼成物の含有率と体積固有抵抗率との関係を示すグラフである。
【図9】試験対象の熱伝導部材の「表面抵抗率」の測定結果を示すグラフである。
【図10】「熱伝導部材」の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図11】「熱伝導部材」の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図12】「熱伝導部材」の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図13】「熱伝導部材」の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図14】「熱伝導部材」の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図15】図13に対応する周波数と電磁波吸収特性との関係を示すグラフである。
【図16】図14に対応する周波数と電磁波吸収特性との関係を示すグラフである。
【図17】大豆皮の焼成物を配合する母材を低密度ポリエチレンとした場合の周波数と電磁波吸収量との関係を示すグラフである。
【図18】大豆皮の焼成物を配合する母材を低密度ポリエチレンとした場合の周波数と電磁波吸収量との関係を示すグラフである。
【図19】図1に示す電磁波シールド特性の測定範囲を拡大した測定結果を示すグラフである。
【図20】菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハルの焼成物についての電磁波シールド特性の測定結果を示すグラフである。
【図21】大豆皮の焼成物の製造条件等を変更した場合の電磁波シールド特性の測定結果を示すグラフである。
【図22】900[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物のガス吸着過程の細孔径分布曲線図である。
【図23】図3に対応する有機元素分析法による成分分析結果を示すグラフである。
【図24】「大豆皮の焼成物」のSEM写真である。
【図25】図24の「大豆皮の焼成物」を、それぞれ、2万倍、5万倍という倍率で撮影したSEM写真である。
【図26】コットンハル、胡麻粕、菜種粕、綿実粕、カカオハスクの焼成物に係る導電性試験の試験結果を示すグラフである。
【図27】焼成炉と焼成温度とを変更させたときの大豆皮の焼成物に係る導電性試験の試験結果を示すグラフである。
【図28】焼成温度等を変更させたときの大豆皮の焼成物に係る導電性試験の試験結果を示すグラフである。
【図29】コットンハル、胡麻粕、菜種粕、綿実粕の焼成物の含有率と体積固有抵抗率との関係を示すグラフである。
【図30】菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハルの焼成物の熱伝導材料の体積固有抵抗率及び表面抵抗率の測定結果を示すグラフである。
【図31】本実施形態の熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率の測定結果を示すグラフである。
【図32】菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハルの焼成物からなる熱伝導部材の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図33】焼成温度等を変更させたときの大豆皮の焼成物に係る電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図34】菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハルの焼成物からなる熱伝導部材の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図35】焼成温度等を変更させたときの大豆皮の焼成物に係る電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図36】1500[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物のガス吸着過程の細孔径分布曲線図である。
【図37】3000[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物のガス脱着過程の細孔径分布曲線図である。
【図38】3000[℃]の温度で焼成した大豆皮の焼成物のガス吸着過程の細孔径分布曲線図である。
【図39】焼成温度等を変更させたときの大豆皮の焼成物に係る体積固有抵抗率を示すグラフである。
【図40】生カカオハスクのSEM写真である。
【図41】生カカオハスクのSEM写真である。
【図42】内皮と外皮とで区別せずに焼成したカカオハスクのSEM写真である。
【図43】内皮と外皮とで区別せずに焼成したカカオハスクのSEM写真である。
【図44】カカオハスクの焼成物からなる熱伝導部材の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図45】カカオハスクの焼成物からなる熱伝導部材の電磁波吸収特性を示すグラフである。
【図46】本実施形態の熱伝導部材の熱伝導率の測定結果を示すグラフである。
【図47】カカオハスクの焼成物の熱伝導部材の体積固有抵抗率及び表面抵抗率の測定結果を示すグラフである。
【図48】カカオハスクの焼成物についての電磁波シールド特性の測定結果を示すグラフである。
【図49】図46のグラフを補充する測定結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材と当該母材に対して含有される植物焼成物とを備え、
前記母材に対する植物焼成物の含有率と当該植物焼成物の焼成温度との少なくとも一方を制御することによって製造されている熱伝導部材。
【請求項2】
前記植物焼成物は、大豆皮、菜種粕、胡麻粕、綿実粕、コットンハル、大豆殻、カカオハスクのいずれかの焼成物である請求項1記載の熱伝導部材。
【請求項3】
前記母材は、ゴム、樹脂、塗料、セメントのいずれかである請求項1記載の熱伝導部材。
【請求項4】
前記母材に対する植物焼成物の含有率の増減と熱伝導部材本体の熱伝導率の高低とに線形性がある、請求項1記載の熱伝導部材。
【請求項5】
請求項1記載の熱伝導部材に用いられる植物焼成物である熱伝導材料。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2011−208124(P2011−208124A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12512(P2011−12512)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(396009458)三和油脂株式会社 (10)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】