説明

熱伝達性能測定用装置

【課題】温度センサの収納部を測定対象体に形成せずに温度センサを装着できる、測定対象体への温度センサの装着構成を備えた熱伝達性能測定用装置の提供。
【解決手段】この発明の熱伝達性能測定用装置1は、アルミ合金展伸材製で直方体状の外形と長方形平面である伝熱面23と熱媒9の通流路22用の複数の丸孔とが形成され,0.7mmの最薄肉厚部を持つ測定試料本体21を有する測定対象体2、無酸素銅製で長方形状の平面32と熱媒9の加熱源のシーズヒータ36を持つ熱源装置体3、0.42mmの外径の球状の測温接点を持ち伝熱面23に装着された複数の熱電対4、伝熱面23と平面32との間に介挿された0.5mmの外径のステンレス鋼丸線材製の複数の介挿体5、伝熱面23と平面32との間に充填された放熱用のシリコーンオイルコンパウンドを用いたグリース状伝熱材6などを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱媒を通流させる通流路を有する測定対象体の前記熱媒との間の熱伝達係数などの熱伝達性能を測定するための熱伝達性能測定用装置に係わり、前記測定対象体の熱媒通流路の近傍の温度を計測する温度センサの測定対象体への装着構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱電対などの温度センサの測定対象物への装着方法としては、測定対象物に温度センサを収納することができる形状・寸法の溝を形成し、この溝に温度センサの温度検出部を挿入して固定することで行われている。また、測定対象物に温度センサを収納することができる形状・寸法の穴、あるいはこの穴に加えてこの穴に連通される溝を形成する方法も知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−296358号公報 (第2,4−8頁、第1−5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明者は前述した従来技術による温度センサの測定対象物への装着構造を、熱媒を通流させる通流路を有することで薄肉部を持つ測定対象体に適用する場合について検討を行った。検討対象の測定対象体は、例えば、素材にアルミ・マンガン系のアルミ合金展伸材が用いられた押し出し成形品であり、厚さ3mm,幅24mmの長方形の断面形状を持ち、内部に熱媒の通流路用として9本の直径1.6mmの丸孔が互いに平行する関係でほぼ等間隔で形成されている。そうして、この場合の温度センサの測定対象体への設置目的は、前記直径1.6mmの丸孔である通流路内を通流する熱媒の、測定対象体との間の熱伝達係数などの熱伝達性能を測定するためである。測定対象体の温度計測に用いる温度センサとしては高い計測精度を得られると共に,所要の機械的強度を持つようにする見地から素線径が0.1mmの熱電対が採用された。
【0004】
この熱電対には、熱電対素線の先端部同士を溶接法により接合して球状の外面形状にした測温接点を形成することとしたが、この測温接点の外径は0.42mmであった。前述した従来技術の一つである温度センサを収納するための収納用溝を前記検討対象の測定対象体に形成して、この場合での温度センサである前記熱電対をこの収納用溝に装着する場合には、収納用溝の断面形状・寸法は、前記測温接点の外径寸法から、最小でも0.5mm×0.5mm程度が必要になると判断された。前記検討対象の測定対象体の断面形状・寸法から、検討対象の測定対象体の最小肉厚(片側)となる部位は熱媒の通流路用である直径1.6mmの丸孔の形成部位にあり、その最小肉厚値(片側)は0.7mmである。前記したこの場合の温度センサの設置目的から、温度センサは直径1.6mmの丸孔である熱媒の通流路の周辺部分に配設しなければならないので、前記収納用溝は前記した最小肉厚部〔肉厚値(片側)は0.7mm〕にも形成を要することになる。
【0005】
この結果、収納用溝形成部での検討対象の測定対象体の最小肉厚部の肉厚値(片側)は、計算上では0.2mmという極めて薄い肉厚値になることで、検討対象の測定対象体の耐圧値が大幅に低下してしまうことが判明した。前記検討対象の測定対象体を用いて行われる熱伝達性能の評価対象の熱媒には、沸騰冷媒なども含まれるので、前記検討対象の測定対象体には評価対象の熱媒の高い圧力が印加されることが必須であるために、前述した従来技術による温度センサの測定対象物への装着構造を、前記検討対象の測定対象体の場合に適用することはできないことが分かった。すなわち、測定対象体の熱媒通流路の近傍の温度を計測する温度センサを、熱媒を通流させる通流路を有するなどのために薄肉部を持つ測定対象体に装着するためには、新たな温度センサの装着構成が求められることになる。したがって、この発明の目的は、温度センサの収納部を測定対象体に形成せずに温度センサを装着できる、測定対象体への温度センサの装着構成を備えた熱伝達性能測定用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明では前述の目的は、
1)熱伝導性の良好な材料が用いられ熱媒を通流させる通流路を有すると共に平面状および/または2次曲面状の伝熱面を外面部に持つ測定対象体と、この測定対象体の通流路内を通流する前記熱媒を加熱および/または冷却するための熱を発生する熱源を有して前記伝熱面を介して前記熱媒に前記熱を与える熱源装置体と、前記測定対象体の熱媒通流路の近傍の温度を計測する温度センサとを備えた熱伝達性能測定用装置において、
前記測定対象体の伝熱面と前記熱源装置体との間に介挿された円形の外形で長さ方向に関してほぼ同一の外径寸法を持つ複数の介挿体を備え、これ等の介挿体は前記伝熱面と前記熱源装置体との間に配設される部位の前記温度センサの最大の外径よりも大きな外径を持つものであり、前記温度センサは前記介挿体によって前記伝熱面と前記熱源装置体との間に形成されたスペースを利用しこの伝熱面と熱源装置体との間に配設されて前記伝熱面の温度を計測するものであり、前記介挿体と前記温度センサとが介挿される前記伝熱面と前記熱源装置体との間にグリース状伝熱材が塗布されること、または、
2)前記1項に記載の手段において、前記測定対象体が金属材製でありほぼ直方体状の外形形状を有しその外面部のほぼ平行する関係で相対する広い方の面積の長方形状の平面が伝熱面に用いられ、前記熱源装置体が金属材製であり前記伝熱面に対応する形状・寸法の長方形状の平面を外面部に有し,この平面を測定対象体のいずれかの前記伝熱面にそれぞれ相対させて合計2個が配設され、前記介挿体が金属製であり、前記温度センサが熱電対であることにより達成される。
【発明の効果】
【0007】
この発明による熱伝達性能測定用装置では、前記課題を解決するための手段の項で述べた構成とすることで、測定対象体の熱媒通流路の近傍の温度を計測する温度センサを、測定対象体に温度センサを収納するための溝などの温度センサ収納部を形成することなしに測定対象体に配設できる。そうして、この発明の熱伝達性能測定用装置は、測定対象体の熱媒を通流させる通流路の内壁と前記熱媒との間の熱伝達係数を、この通流路内壁と熱媒との間の熱移動量と,通流路内壁と熱媒との間の温度差とを基にして求める公知の方法に従って得ることができる。このような熱伝達性能測定用装置による温度センサの測定対象体への装着構成は、薄肉部を持つことなどの理由で温度センサ収納部の形成が困難な測定対象体に適用することで、このような測定対象体であってもその熱伝達係数などの測定を行うことが可能になり、また、測定対象体には温度センサ収納部の形成が不要であるために、薄肉部を持つ測定対象体はそれが製品などで実際に使用される場合と同一の状態で熱伝達係数などの測定を行うことができるので、熱伝達係数などの測定に対する信頼感を高めることが可能になるとの効果を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下この発明を実施するための最良の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1はこの発明の実施の形態の一例による熱伝達性能測定用装置を示すその断面図であり、図2は図1におけるS部の詳細図である。図1,図2において、1は、測定対象体2、熱源装置体3,3、複数の温度センサである熱電対4、複数の介挿体5、グリース状伝熱材6、保持用具8などを備えたこの発明による熱伝達性能測定用装置である。測定対象体2は、金属材製で直方体状の外形形状をなし,内部に熱媒9を通流させる複数の通流路22を持つ測定試料本体21と、測定試料本体21に対して熱媒9を供給するための供給側ヘッダー25と、測定試料本体21からの熱媒9を集めて排出させるための排出側ヘッダー27とを有する。測定試料本体21は、この事例の場合には、通流路22内を通流する熱媒9との間の熱伝達係数が実測される、この熱伝達性能測定用装置1での測定対象そのものである。
【0009】
測定試料本体21は、素材にアルミ・マンガン系のアルミ合金展伸材が用いられた押し出し成形品であり、その断面形状は、厚さ(T21)3mm,幅(不図示)24mmの長方形状を持ち、内部に熱媒9の通流路22用として9本の直径(D22)1.6mmの丸孔が互いに平行する関係でほぼ等間隔で形成されている。また、測定試料本体21の熱媒9の通流方向に沿う方向の有効長さL21は700mmである。供給側ヘッダー25,排出側ヘッダー27は単体状態では同一品であり、その素材には測定試料本体21の使用材料と同系統の材料が用いられた丸棒材が使用され、熱媒9を通流させる通流路26,28がそれぞれに形成されており、測定試料本体21との接続部は気密に封止されている。前記した構成を持つ測定試料本体21は、その外面部に24mm×700mmおよび、3mm×700mmの面積を持つ長方形状の平面の対を持つことになるが、この内の広い方の面積の方の24mm×700mmの平面が、熱源装置体3,3に対する伝熱面23,23として選択されている。
【0010】
なお、測定試料本体21に通流される熱媒9としては、一般に広く用いられている水,油などや、冷蔵庫などに用いられている沸騰冷媒などの、各種の熱媒の採用が想定される。それぞれの熱源装置体3は、この事例の場合には、測定試料本体21に通流する熱媒9を加熱する熱を発生するための装置とされており、金属材(例えば、熱伝導率値の大きな金属材である無酸素銅)製で直方体状をした外形を持つ熱源装置本体部31と、この熱源装置本体部31に形成された複数の貫通孔のそれぞれに装填されたシーズヒータ36とを有している。熱源装置本体部31の外面部の測定試料本体21の伝熱面23に相対するように配設される平面32は、伝熱面23にほぼ対応する形状・寸法とされている。熱電対4は、例えば、JIS規格による種類Kの熱電対であり、高い計測精度を得られると共に所要の機械的強度を持つようにする見地から径が0.1mmの熱電対素線が採用されている。
【0011】
この熱電対4の測温接点は、熱電対素線の先端部同士を溶接法により接合し、外径が0.42mmの球状の外面形状に形成されている。この熱電対4は、その測温接点の外面部を測定試料本体21の幅方向の中央部分に位置させて伝熱面23に密着させると共に、その素線の長さ方向を伝熱面23に沿わせて熱媒9の通流方向に対してほぼ直交する関係で配設され、アルミ箔(例えば、アルミ箔の厚さ寸法は0.05mmである。)テープ(接着剤付き)7を用いて伝熱面23に接着されている。そうして、この事例の熱伝達性能測定用装置1の場合には、図1,図2に示すように、複数の熱電対4が有効長さL21に沿う方向にほぼ等間隔で配設されている。介挿体5は、この事例の場合には、アルミニウム材と接触してもアルミニウムを腐食させることがない金属材としてステンレス鋼材が用材として選定され、このステンレス鋼製の丸線材が使用されている。
【0012】
介挿体5の用材は具体的には、例えば、外径d:0.5mmのSUS304ステンレス鋼丸線材であり、この用材を用いることで、介挿体5と接触することになる部材に腐食し易いアルミニウム材が使用されていたとしても(図1,図2に示す事例の場合には、測定対象体2がこれに該当する。)このアルミニウム材の腐食を防止できる。そうして、介挿体5のd:0.5mmの外径寸法は、熱電対4の測温接点の0.42mmの外径寸法よりも大きい値に設定されていることになる。介挿体5の断面形状を円形にすることにより、介挿体5と接触する部材(この事例の場合には、測定対象体2および熱源装置体3)との接触面積が狭く限定され、介挿体5がステンレス鋼材製であっても測定対象体2,熱源装置体3の温度分布に与える影響度を抑制することができる。さらに、断面形状が円形の介挿体5を使用することで、介挿体5の配設姿勢に無関係に、測定対象体2の伝熱面23と熱源装置体3の平面32との間の間隔16の間隔長Tを一定に維持することができる。
【0013】
また、SUS304ステンレス鋼丸線材は長尺材として市場に供給されているものであり、長尺材であることによって、介挿体5の長さ方向の外径寸法値が実質的に一定値である素材を容易に入手できることで、複数の介挿体5の外径寸法値のばらつきを実質的に零にすることができることになる。そうして、SUS304ステンレス鋼材は他の鋼材と比較しても優れた機械的強度性能を備えた材料であるので、測定対象体2と熱源装置体3とに介挿された上で保持用具8により締め付けられる組立て状態とされても、間隔16の間隔長Tを安定に保持することができる。この介挿体5はその長さ方向を、例えば、熱電対4の素線の長さ方向の配設方向に平行する状態とされて、熱電対4の場合と同様に前記アルミ箔テープ7を用いて伝熱面23に接着されている。なお、この事例の場合の間隔長Tの実際値は、介挿体5の外径dが0.5mmであり、アルミ箔テープ7の厚さが接着剤層の厚さを含めると0.1mm程度であるので、合計して約0.6mmである。
【0014】
保持用具8は、この事例の場合には、基台81と締付板82,82と締付板82,82を基台81に締結するための不図示の複数の締結体(例えば、小ネジ)とで構成されている。熱伝達性能測定用装置1は、基台81の上に図1に示したように、一方の熱源装置体3、熱電対4と介挿体5とがそれぞれの伝熱面23に配設された測定対象体2、他方の熱源装置体3と順次積み重ねた後に、他方の熱源装置体3の反伝熱面23側の面に締付板82を当接させて、前記締結体により基台81に締結することで組み立てられる。グリース状伝熱材6には、例えば、信越化学工業(株)の放熱用のシリコーンオイルコンパウンドの品名:G747などが使用される。
【0015】
発明者が検討したところでは、熱伝達性能測定用装置1のグリース状伝熱材6用としては熱伝導率値のことに加えて塗布がし易いことが好ましく、信越化学工業(株)の品名:G747は、その熱伝導率値は最高のものではないが粘度が比較的に低いことで塗り易いために、総合すると熱伝達性能測定用装置1のグリース状伝熱材6用として好適なものの一つであると判断されている。このグリース状伝熱材6は、熱伝達性能測定用装置1の組み立て作業の前に、熱電対4,介挿体5が配設された測定対象体2の熱電対4,介挿体5が配設された周辺部位に塗布され(図2参照。)、互いに対向し合う測定対象体2の伝熱面23と熱源装置体3の平面32との間である間隔16に、空気が残存しないようにする。なお、グリース状伝熱材6は、必要によっては、熱伝達性能測定用装置1が組み立てられた後に、間隔16の部位に追加して塗布することもできる。
【0016】
図1,図2に示すこの発明の実施の形態の一例による熱伝達性能測定用装置1では前述の構成としたので、この事例の場合には熱媒9に対する加熱源である熱源装置体3から発生した熱は、熱源装置体3の平面32と測定対象体2の伝熱面23との間の間隔16の部位を介して測定試料本体21に与えられ、測定試料本体21の通流路22内を通流する熱媒9を加熱して熱媒9を昇温させることになる。通流路22内を通流する熱媒9と測定試料本体21との間の熱伝達係数などの熱伝達性能の測定に当たっては、平面32と伝熱面23との間の熱抵抗の面方向の値のばらつきが、熱媒9に与えられる局部的な熱移動量をばらつかせる原因になるので、平面32と伝熱面23との間の熱抵抗の面方向の値の均等化が肝要であることはよく知られているところである。熱伝達性能測定用装置1ではそれぞれの間隔16に複数の介挿体5を配設することで、間隔16の間隔長Tを一定値に保持するようにしている。
【0017】
そうして、この間隔16には局部的に熱電対4および介挿体5が存在していても、空気の熱伝導率値(0℃において、0.0241W/m・K)よりも遙かに大きな熱伝導率値を持つグリース状伝熱材6〔例えば、信越化学工業(株)のG747の熱伝導率のカタログ値は0.90W/m・Kである。〕が充填されるので、熱伝達性能測定用装置1では平面32と伝熱面23との間の熱抵抗の面方向の値を、必要なレベル内に均等化することができる。そうして、熱伝達性能測定用装置1では介挿体5が設けられていることにより、熱電対4にはその測温接点も含めて熱源装置体3との接触が生じないので、熱電対4は伝熱面23の温度を正確に計測できる。ところで、測定試料本体21の通流路22の内壁と熱媒9との間の熱伝達係数は、既に公知のことではあるが、通流路22の内壁と熱媒9との間の熱移動量と、通流路22の内壁と熱媒9との間の温度差とを基にして求めることができる。
【0018】
熱伝達性能測定用装置1の場合には、通流路22の内壁と熱媒9との間の熱移動量は、通流路22の内壁から熱媒9への熱移動量だけが計測対象である。この熱媒9への熱移動量は、熱伝達性能測定用装置1の熱媒9の流路に接続された不図示の質量流量計によって計測された熱媒9の質量流量値と、熱媒9の温度変化から得られたエンタルピー値との積として計算できる。この熱媒9の温度変化は、例えば、通流路22の熱媒9の通流方向に関する両端部付近のそれぞれに配設された不図示の熱電対によって直接計測することで得ることができる。また、通流路22の内壁の温度は、熱電対4によって計測された通流路22の近傍の温度である伝熱面23の温度値を基にして推定することができ、熱媒9の温度は、前記熱電対(熱媒9の温度変化の計測用)によって計測された熱媒9の温度の算術平均値を代表値にできる。したがって、通流路22の内壁と熱媒9との間の温度差値は、前述した内容の通流路22の内壁の温度値と、前述した内容の熱媒9の代表温度値との差として計算することができる。
【0019】
そうして、前記した熱移動量値を、通流路22の内壁と熱媒9との間の前記した温度差値と,通流路22の内壁から熱媒9への伝熱面積値(熱伝達性能測定用装置1では既に説明したように既知の値である。)との積によって割ることにより、熱伝達係数値を得ることができる。すなわち、熱伝達性能測定用装置1は、測定試料本体21の通流路22の内壁と熱媒9との間の熱伝達係数を、通流路22の内壁と熱媒9との間の熱移動量と,通流路22の内壁と熱媒9との間の温度差とを基にして求める公知の方法に従って得ることができる。そうして、通流路22の内壁の温度を得るための熱電対4は、その測温接点の外面部を伝熱面23に密着させることで測定試料本体21に配設されており、測定試料本体21には前記特許文献1の場合のような熱電対などの温度センサを収納するための溝などの温度センサ収納部の形成は不要である。
【0020】
このような熱伝達性能測定用装置1による熱電対4の測定試料本体21などの測定対象体への装着構成は、測定試料本体21のように薄肉部を持つことなどの理由で温度センサ収納部の形成が困難な測定対象体に適用することで、このような測定対象体であってもその熱伝達係数などの測定を行うことができるようになるとの特徴が得られる。また、測定対象体には温度センサ収納部の形成が不要であるために、薄肉部を持つ測定対象体はそれが製品などで実際に使用される場合と同一の状態で熱伝達係数などの測定を行うことができるので、熱伝達係数などの測定に対する信頼感を高めることができる。
【0021】
前述の説明では、熱伝達性能測定用装置1が備える測定対象体2の測定試料本体21はアルミ合金展伸材製であり、熱源装置体3の熱源装置本体部31は無酸素銅製であり、温度センサは種類Kの熱電対であり、介挿体5はステンレス鋼材製であり、グリース状伝熱材6はシリコーンオイルコンパウンドであるとしてきたが、これに限定されるものではなく、例えば、前記『課題を解決するための手段』の項で記述された内容に適合する部材・素材であるならば、適宜の部材・素材を使用できる。また、前述の説明では、熱源装置体3はシーズヒータ36を備えることで熱媒9を加熱する熱を発生するための装置であるとしてきたが、これに限定されるものではなく、例えば、熱源装置体3は熱媒9を冷却する冷熱を発生するための装置であってもよい。また、前述の説明では、測定対象体2の測定試料本体21の外形形状は直方体状であり、熱源装置体3に対する伝熱面23は長方形状の平面であるとしてきたが、これに限定されるものではなく、例えば、測定対象体2の外面部形状は円形状などの2次曲面状の伝熱面を持つものであってもよい。なお、この場合には、測定対象体2の2次曲面状の伝熱面の形状に合わせて、熱源装置体3の測定対象体2の伝熱面に対向し合う面の形状も、2次曲面状にする必要があることは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態の一例による熱伝達性能測定用装置を示すその断面図である。
【図2】図1におけるS部の詳細図である。
【符号の説明】
【0023】
1 熱伝達性能測定用装置
2 測定対象体
21 測定試料本体
22 通流路
23 伝熱面
3 熱源装置体
32 平面
36 シーズヒータ
4 熱電対
5 介挿体
6 グリース状伝熱材
9 熱媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性の良好な材料が用いられ熱媒を通流させる通流路を有すると共に平面状および/または2次曲面状の伝熱面を外面部に持つ測定対象体と、この測定対象体の前記通流路内を通流する前記熱媒を加熱および/または冷却するための熱を発生する熱源を有して前記伝熱面を介して前記熱媒に前記熱を与える熱源装置体と、前記測定対象体の熱媒通流路の近傍の温度を計測する温度センサとを備えた熱伝達性能測定用装置において、
前記測定対象体の伝熱面と前記熱源装置体との間に介挿された円形の外形で長さ方向に関してほぼ同一の外径寸法を持つ複数の介挿体を備え、これ等の介挿体は前記伝熱面と前記熱源装置体との間に配設される部位の前記温度センサの最大の外径よりも大きな外径を持つものであり、前記温度センサは前記介挿体によって前記伝熱面と前記熱源装置体との間に形成されたスペースを利用しこの伝熱面と熱源装置体との間に配設されて前記伝熱面の温度を計測するものであり、前記介挿体と前記温度センサとが介挿される前記伝熱面と前記熱源装置体との間にグリース状伝熱材が塗布されることを特徴とする熱伝達性能測定用装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱伝達性能測定用装置において、前記測定対象体が金属材製でありほぼ直方体状の外形形状を有しその外面部のほぼ平行する関係で相対する広い方の面積の長方形状の平面が伝熱面に用いられ、前記熱源装置体が金属材製であり前記伝熱面に対応する形状・寸法の長方形状の平面を外面部に有し,この平面を測定対象体のいずれかの前記伝熱面にそれぞれ相対させて合計2個が配設され、前記介挿体が金属製であり、前記温度センサが熱電対であることを特徴とする熱伝達性能測定用装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−51588(P2008−51588A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226358(P2006−226358)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】