説明

熱供給システム

【課題】エネルギー効率が高く、自然媒体を利用可能な熱供給システムを提供する。
【解決手段】
熱供給システムは、複数の圧縮機(20A−20H)、複数の放熱部(35A−35H)、及びタービン(40)を含む第1装置と、被加熱流体が流れかつ複数の放熱部にそれぞれ熱的に接続される複数の経路(37A−37H)を含む第2装置と、を備える。第1装置は、作動流体として空気を使用する開放型である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱供給システムとしては、ボイラで生成した蒸気の熱を対象物に伝える構成が一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ヒートポンプの媒体の熱を対象物に伝える構成が知られている。ヒートポンプは、サイクル外の熱(低温熱源の熱)を利用することにより、エネルギー利用効率が比較的高いことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−249450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒートポンプにおいて、フロンに代わる作動媒体の一例として、二酸化炭素、水、アンモニア、空気などの自然媒体が挙げられる。
【0005】
本発明は、エネルギー効率が高く、自然媒体を利用可能な熱供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、複数の圧縮機、複数の放熱部、及びタービンを含む第1装置と、被加熱流体が流れかつ前記複数の放熱部にそれぞれ熱的に接続される複数の経路を含む第2装置と、を備え、前記第1装置は、作動流体として空気を使用する開放型である、熱供給システムが提供される。
【0007】
本発明の別の態様に従えば、圧縮機、放熱部、及びタービンを含む第1装置と、被加熱流体が流れかつ前記放熱部に熱的に接続される経路を含む第2装置と、を備え、前記第1装置は、作動流体として空気を使用する開放型である、熱供給システムが提供される。
【0008】
この熱供給システムによれば、圧縮空気を利用することで、エネルギー効率が高く、自然媒体を利用可能な熱供給システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態を示す概略図である。
【図2】熱供給システムを給湯に利用する場合の試算結果の一例を示す図である。
【図3】他の一実施形態を示す概略図である。
【図4】熱供給システムを蒸気生成に利用する場合の試算結果の一例を示す図である。
【図5】他の一実施形態を示す概略図である。
【図6】熱供給システムを蒸気生成に利用する場合の試算結果の一例を示す図である。
【図7】他の一実施形態を示す概略図である。
【図8】熱供給システムを蒸気生成に利用する場合の試算結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、熱供給システムS1を示す概略図である。
【0011】
図1に示すように、熱供給システムS1は、圧縮機20と、熱交換器30と、タービン40と、制御装置50とを備える。制御装置50は、システム全体を統括的に制御する。システムS1の構成は設計要求に応じて様々に変更可能である。
【0012】
圧縮機20、熱交換器30の高温側経路35(放熱部)、及びタービン40を含む第1装置12は、開放型であり、作動流体(作動媒体、熱媒体)として空気を使用する(空気を作動流体とする開放型のヒートポンプ)。熱交換器30の低温側経路37(吸熱部)を含む第2装置16は、水や空気などの被加熱流体が流れる流路を含む。
【0013】
第1装置12において、圧縮機20の出口と熱交換器30の経路35の入口が流体的につながり、経路35の出口とタービン40の入口とが流体的につながる。なお、各部及び導管には、必要に応じて、不図示の、各種センサ、ポンプ、バルブ等を配設することができる。
【0014】
圧縮機20は、作動流体を圧縮する。この際、作動流体の温度が上がる。圧縮機20は、単段圧縮構造、又は作動流体を複数段に圧縮する多段圧縮構造を有することができる。圧縮の段数は、熱供給システムS1の仕様に応じて設定され、1、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上である。圧縮機20は、軸流圧縮機、遠心圧縮機、レシプロ式圧縮機、ロータリー式圧縮機などの様々な圧縮機のうち、作動流体の圧縮に適するものが適用される。圧縮機には動力が供給される。多段圧縮構造を有する圧縮機20において、多軸圧縮構造又は同軸圧縮構造が適用可能である。圧縮機20の入口には必要に応じてフィルタが配置される。
【0015】
熱交換器30の高温側経路35(放熱部)は、圧縮機20で圧縮された作動流体が流れる導管を有し、主経路25内を流れる作動流体の熱を外部の熱源(被加熱流体)に与える。放熱部の数は、システムS1の仕様に応じて設定され、1、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10以上にできる。
【0016】
タービン40は、作動流体を膨張させる。この際、作動流体の温度が下がる。タービン40を介して動力を取り出す(回収する)ことができる。例えば、その動力を圧縮機20に供給できる。
【0017】
第2装置16において、熱交換器30の低温側経路37は、被加熱流体(水、空気など)が流れる導管を含む。なお、各部及び導管には、必要に応じて、不図示の、各種センサ、ポンプ、バルブ等を配設することができる。
【0018】
第2装置16の経路37は、第1装置12の経路35に熱的に接続される。経路35と経路37とを含んで熱交換器30が構成される。熱交換器30は、高温の流体(第1装置12内の作動流体)と、低温の流体(第2装置16内の被加熱流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造を有することができる。あるいは、熱交換器30は、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造を有することができる。本実施形態において、熱交換器30の熱交換構造として、公知の様々なものを採用することができる。高温側経路35の導管と低温側経路37の導管とは互いに接触あるいは隣接して配置される。例えば、高温側経路35の導管を、低温側経路37の導管の外周面や内部に配設することができる。追加的又は代替的に、所定の外部装置95の吸熱管を被加熱流体の出力部に熱的に接続できる。
【0019】
上記のシステムS1において、第1装置12の圧縮機20の入口から空気が流入する。圧縮機20からの高温空気が熱交換器30の経路35を流れる。熱交換器30において、第1装置12の経路35の熱が第2装置16の経路37に伝わる。経路37において、第1装置12の経路(放熱部)35からの伝達熱によって、導管内の被加熱流体が温度上昇する。温度上昇した流体は、所定の外部装置95に供給される。追加的又は代替的に、所定の外部装置95の吸熱管を被加熱流体の出力部に熱的に接続できる。
【0020】
本実施形態において、第1装置12における、熱交換器30からの圧縮空気はタービン40を流れ、これにより動力が回収される。また、タービン40から排出される空気は冷気であるので、これを冷熱として利用できる。タービン40の出力軸と圧縮機20とを機械的に接続し、圧縮機20の動力低減を図ることもできる。これらは成績係数(COP:Coefficient of Performance)の向上に有利である。
【0021】
ここで、空気の密度は比較的小さい。空気を熱源とする場合、伝熱に関係するパラメータであるプラントル数が小さくなり、結果として、熱交換器が大きくなる等の課題がある。以下はプラントル数Pr、ヌッセルト数Nuを表す式である。
Pr=vρCp/λ
Nu=αi・di/λ :Nu=0.023Re0.8Pr0.4
【0022】
本実施形態において、熱交換器30には圧縮された空気が供給される。空気の圧縮に伴い、熱交換器30において空気の密度が増す。密度の増大は伝熱に有利である。そして、熱交換器30の小型化に有利である。
【0023】
また、本実施形態において、第1装置12の作動媒体として空気を使用することから、脱フロン化が図られる。代替的又は追加的に、第1装置12の作動媒体として空気以外の自然媒体、例えば、二酸化炭素、水、アンモニアなどを使用できる。
【0024】
本実施形態において、システムS1を給水加熱に利用できる。この場合、被加熱流体は水である。給水加熱適用の場合、圧縮空気が保有する熱を、比較的低い温度を含む温度範囲にわたり利用できる。
【0025】
図1に示すシステムS1を給湯に利用する場合の試算結果の一例を図2に示す。圧縮機20の入口、断熱過程、出口、タービン40の入口、断熱過程、及び出口のそれぞれについて温度、圧力、密度、エンタルピ、エントロピを試算した。圧縮機20、及びタービン40の各効率を80%とした。また、圧縮機動力、及び熱出力の算出結果に基づき、温熱を利用した場合のCOPと、温熱及び冷熱を利用した場合のCOPとを算出した。
【0026】
図2に示すように、温熱のみを利用した場合、COPが2.26であった。温熱及び冷熱を利用した場合、COPが3.52であった。
【0027】
図3は、他の実施形態における熱供給システムS2を示す概略図である。以下の説明では、上記実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0028】
図3に示すように、熱供給システムS2は、複数の圧縮機20A、20B、20C、20D、20E、20F、20G、20Hと、複数の熱交換器30A、30B、30C、30D、30E、30F、30G、30Hと、タービン40と、制御装置50とを備える。システムS2の構成は設計要求に応じて様々に変更可能である。
【0029】
複数の圧縮機20A−20H、複数の熱交換器30A−30Hの高温側経路35A−35H(放熱部)、及びタービン40を含む第1装置212は、開放型であり、作動流体(作動媒体、熱媒体)として空気を使用する(空気を作動流体とする開放型のヒートポンプ)。熱交換器30A−30Hの低温側経路37A−37H(吸熱部)を含む第2装置216は、水や空気などの被加熱流体が流れる流路を含む。
【0030】
第1装置212において、第1圧縮機20Aの出口と熱交換器30Aの経路35Aの入口が流体的につながる。圧縮機20A−20H、及び経路30A−30Hは交互に直列に配置されている。すなわち、第1圧縮機20A、経路35A、第2圧縮機20B、経路35B、第3圧縮機20C、経路35C、第4圧縮機20D、経路35D、第5圧縮機20E、経路35E、第6圧縮機20F、経路35F、第7圧縮機20G、経路35G、第8圧縮機20H、経路35Gが順に流体的につながる。経路35Gの出口がタービン40の入口に流体的につながる。なお、各部及び導管には、必要に応じて、不図示の、各種センサ、ポンプ、バルブ等を配設することができる。
【0031】
本実施形態において、システムS2は、8段の圧縮機20A−20Hを有する。第1装置212は、各圧縮機20A−20Hに対応する回転数が個々に制御される多軸圧縮構造を有することができる。あるいは、第1装置212は、同軸圧縮構造を有することができる。各圧縮機20A−20Hの圧縮比(圧力比)は、システムS2の仕様に応じて設定可能である。圧縮の段数は、8に限定されない。必要に応じて圧縮機20A(及び圧縮機20B−20H)の入口には必要に応じて入力空気を清浄するためのフィルタが配置される。
【0032】
本実施形態において、システムS2は、8つの熱交換器30A−30Hを有する。熱交換器30A−30Hの高温側経路35A−35H(放熱部)は、圧縮機20A−20Hで圧縮された作動流体が流れる導管を有し、主経路25内を流れる作動流体の熱を外部の熱源(被加熱流体)に与える。放熱部の数は、8に限定されない。
【0033】
第2装置216において、熱交換器30A−30Hの低温側経路37A−37Hは、被加熱流体(水、空気など)が流れる導管を含む。なお、各部及び導管には、必要に応じて、不図示の、各種センサ、ポンプ、バルブ等を配設することができる。
【0034】
第2装置216の経路37Aは、第1装置212の経路35Hに熱的に接続される。経路35Aと経路37Hとを含んで熱交換器30Aが構成される。熱交換器30Aは、高温の流体(第1装置212内の作動流体)と、低温の流体(第2装置216内の被加熱流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造を有することができる。あるいは、熱交換器30Aは、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造を有することができる。本実施形態において、熱交換器30Aの熱交換構造として、公知の様々なものを採用することができる。高温側経路35Aの導管と低温側経路37Hの導管とは互いに接触あるいは隣接して配置される。例えば、高温側経路35Aの導管を、低温側経路37Hの導管の外周面や内部に配設することができる。他の熱交換器30B−30Hについても同様である。
【0035】
上記のシステムS2において、第1装置212の第1圧縮機20Aの入口から空気が流入する。圧縮機20Aからの高温空気が熱交換器30Aの経路35Aを流れる。熱交換器30Aにおいて、第1装置212の経路35Aの熱が第2装置216の経路37Hに伝わる。同様に、第1装置212の経路35B、35C、35D、35E、35F、35G、及び35Hの熱が、第2装置216の経路37G、37F、37E、37D、37C、37B、及び37Aにそれぞれ伝わる。温度上昇した流体は所定の外部装置95に供給される。
【0036】
本実施形態において、第1装置212における、熱交換器30Hからの圧縮空気はタービン40を流れ、これにより動力が回収される。また、タービン40から排出される空気は冷気であるので、これを冷熱として利用できる。タービン40の出力軸と圧縮機20とを機械的に接続し、圧縮機20の動力低減を図ることもできる。これらは成績係数(COP)の向上に有利である。
【0037】
また、本実施形態において、各熱交換器30A−30Hには圧縮された空気が供給される。空気の圧縮に伴い、各熱交換器30A−30Hにおいて作動媒体としての空気の密度が増す。密度の増大は伝熱に有利である。そして、熱交換器30A−30Hの小型化に有利である。
【0038】
また、本実施形態において、第1装置212の作動媒体として空気を使用することから、脱フロン化が図られる。代替的又は追加的に、第1装置12の作動媒体として空気以外の自然媒体、例えば、二酸化炭素、水、アンモニアなどを使用できる。
【0039】
本実施形態において、システムS2を蒸気生成に利用できる。この場合、被加熱流体は水である。本実施形態において、熱交換器30Hにおける、低温側経路37Aに比較的高温の被加熱流体が供給される。被加熱流体の供給温度は、例えば約100℃である。熱交換器30A―30Hの少なくとも1つにおいて、温度上昇した水が相変化して蒸気となる。
【0040】
図3に示すシステムS2を蒸気生成に利用する場合の試算結果の一例を図4に示す。圧縮機20A−20Hの入口、断熱過程、出口、タービン40の入口、断熱過程、及び出口のそれぞれについて温度、圧力、密度、エンタルピ、エントロピを試算した。圧縮機20A−20H、及びタービン40の各効率を80%とした。また、圧縮機動力、及び熱出力の算出結果に基づき、温熱を利用した場合のCOPと、温熱及び冷熱を利用した場合のCOPとを算出した。
【0041】
図4に示すように、温熱のみを利用した場合、COPが1.28であった。温熱及び冷熱を利用した場合、COPが1.57であった。
【0042】
図5は、図3の熱供給システムS2の変形例である熱供給システムS3を示す概略図である。以下の説明では、上記実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0043】
図5に示すように、システムS3は、システムS2と同様に、複数の圧縮機20A、20B、20C、20D、20E、20F、20G、20Hと、複数の熱交換器30A、30B、30C、30D、30E、30F、30G、30Hと、タービン40と、制御装置50とを備える。また、システムS3は、システムS2と異なり、熱交換器30Hが予備加熱(予備加温)用として用いられる。システムS3の構成は設計要求に応じて様々に変更可能である。
【0044】
複数の圧縮機20A−20H、複数の熱交換器30A−30Hの高温側経路35A−35H(放熱部)、及びタービン40を含む第1装置312は、開放型であり、作動流体(作動媒体、熱媒体)として空気を使用する(空気を作動流体とする開放型のヒートポンプ)。熱交換器30A−30Hの低温側経路37A−37H(吸熱部)を含む第2装置316は、水や空気などの被加熱流体が流れる流路を含む。
【0045】
本実施形態において、システムS3は、8つの熱交換器30A−30Hを有する。熱交換器30A−30Hの高温側経路35A−35H(放熱部)は、圧縮機20A−20Hで圧縮された作動流体が流れる導管を有し、主経路25内を流れる作動流体の熱を外部の熱源(被加熱流体)に与える。放熱部の数は、8に限定されない。
【0046】
本実施形態において、熱交換器30Hにおける、低温側経路37Aに比較的低温の被加熱流体が供給される。被加熱流体の供給温度は、例えば約15℃である。圧縮機20Hからの高温空気が熱交換器30Hの経路35Hを流れる。熱交換器30Hにおいて、第1装置312の経路35Aの熱が第2装置316の経路37Hに伝わる。同様に、第1装置312の経路35B、35C、35D、35E、35F、35G、及び35Hの熱が、第2装置316の37G、37F、37E、37D、37C、37B、及び37Aにそれぞれ伝わる。温度上昇した流体は所定の外部装置95に供給される。
【0047】
本実施形態において、熱交換器30Hによって給水加熱(予備加熱、予備加温)が行われる。この場合、被加熱流体は水である。熱交換器30Hにおいて、圧縮空気が保有する熱を、比較的低い温度を含む温度範囲にわたり利用できる。これはCOPの向上に有利である。
【0048】
本実施形態において、システムS3を蒸気生成に利用できる。この場合、被加熱流体は水である。また、熱交換器30A―30Gの少なくとも1つにおいて、温度上昇した水が相変化して蒸気となる。
【0049】
図5に示すシステムS3を蒸気生成に利用する場合の試算結果の一例を図6に示す。圧縮機20A−20Hの入口、断熱過程、出口、タービン40の入口、断熱過程、及び出口のそれぞれについて温度、圧力、密度、エンタルピ、エントロピを試算した。圧縮機20A−20H、及びタービン40の各効率を80%とした。また、圧縮機動力、及び熱出力の算出結果に基づき、温熱を利用した場合のCOPと、温熱及び冷熱を利用した場合のCOPとを算出した。
【0050】
図6に示すように、温熱のみを利用した場合、COPが1.73であった。温熱及び冷熱を利用した場合、COPが2.64であった。
【0051】
図7は、図5の熱供給システムS3の変形例である熱供給システムS4を示す概略図である。以下の説明では、上記実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0052】
図7に示すように、システムS4は、システムS3と同様に、複数の圧縮機20A、20B、20C、20D、20E、20F、20G、20Hと、複数の熱交換器30A、30B、30C、30D、30E、30F、30G、30Hと、制御装置50とを備える。熱交換器30Hは予備加熱(予備加温)用として用いられる。また、システムS4は、システムS3と異なり、複数のタービン40A、40B、40C、40D、40E、40Fを備える。さらに、システムS4は、冷熱取り出し用の複数の熱交換器60A、60B、60C、60D、60Eを備える。システムS4の構成は設計要求に応じて様々に変更可能である。
【0053】
複数の圧縮機20A−20H、複数の熱交換器30A−30Hの高温側経路35A−35H(放熱部)、及びタービン40A−40Fを含む第1装置412は、開放型であり、作動流体(作動媒体、熱媒体)として空気を使用する(空気を作動流体とする開放型のヒートポンプ)。熱交換器30A−30Hの低温側経路37A−37H(吸熱部)を含む第2装置416は、水や空気などの被加熱流体が流れる流路を含む。
【0054】
本実施形態において、システムS4は、6段のタービン40A−40Fを有する。第1装置412は、多軸構造の多段タービン40A−40F、又は少なくとも一部が同軸構造の多段タービン40A−40Fを有することができる。タービンの段数は、6に限定されない。
【0055】
また、本実施形態において、システムS4は、冷熱取り出し用の5つの熱交換器60A−60Eを有する。熱交換器60A−60Eの高温側経路65A−65E(放熱部)は、外部から導入された被冷却流体が流れる導管を有する。経路65A−65E(放熱部)を含む第3装置418は、水や空気などの被冷却流体が流れる流路を含む。
【0056】
熱交換器60A−60Eの低温側経路67A−67E(吸熱部)はタービン40A−40Fで膨張された作動流体が流れる導管を有し、経路65A−65Eを流れる被冷却流体の熱を奪う。吸熱部の数は、5に限定されない。なお、各部及び導管には、必要に応じて、不図示の、各種センサ、ポンプ、バルブ等を配設することができる。
【0057】
経路67Aは、経路65Eに熱的に接続される。経路67Aと経路65Eとを含んで熱交換器60Aが構成される。熱交換器60Aは、高温の流体(被冷却流体)と、低温の流体(作動流体)とが対向して流れる向流型の熱交換構造を有することができる。あるいは、熱交換器60Aは、高温流体と低温流体とが並行して流れる並行流型の熱交換構造を有することができる。本実施形態において、熱交換器60Aの熱交換構造として、公知の様々なものを採用することができる。高温側経路65Eの導管と低温側経路67Aの導管とは互いに接触あるいは隣接して配置される。例えば、高温側経路65Aの導管を、低温側経路67Hの導管の外周面や内部に配設することができる。他の熱交換器60B−60Eについても同様である。
【0058】
上記のシステムS4において、第1装置412の第1圧縮機20Aの入口から空気が流入する。圧縮機20Aからの高温空気が熱交換器30Aの経路35Aを流れる。熱交換器30Aにおいて、第1装置412の経路35Aの熱が第2装置416の経路37Hに伝わる。同様に、第1装置412の経路35B、35C、35D、35E、35F、35G、及び35Hの熱が、第2装置416の経路37G、37F、37E、37D、37C、37B、及び37Aにそれぞれ伝わる。温度上昇した流体は所定の外部装置95に供給される。
【0059】
また、本実施形態において、第1装置412における、熱交換器30Hからの圧縮空気はタービン40A−40Fを流れ、各タービン40A−40Eにおいて動力が回収される。また、タービン40A−40Fから排出される空気は冷気である。熱交換器60A−60Eにおいて、冷気を使って被冷却用流体から熱を奪う。温度降下した流体は所定の外部装置96に供給される。
【0060】
本実施形態において、冷気(冷熱)の有効利用により、COPの向上が図られる。また、冷熱の取り出しは、タービン40A−40Fの出力の増大に貢献し、この点からもCOPの向上が図られる。
【0061】
本実施形態において、システムS4を蒸気生成に利用できる。この場合、被加熱流体は水である。また、熱交換器30A―30Gの少なくとも1つにおいて、温度上昇した水が相変化して蒸気となる。
【0062】
図7に示すシステムS4を蒸気生成に利用する場合の試算結果の一例を図8に示す。圧縮機20A−20Hの入口、断熱過程、出口、タービン40A−40Fの入口、断熱過程、及び出口のそれぞれについて温度、圧力、密度、エンタルピ、エントロピを試算した。圧縮機20A−20H、及びタービン40A−40Fの各効率を80%とした。また、圧縮機動力、及び熱出力の算出結果に基づき、温熱を利用した場合のCOPと、温熱及び冷熱を利用した場合のCOPとを算出した。
【0063】
図8に示すように、温熱のみを利用した場合、COPが1.98であった。温熱及び冷熱を利用した場合、COPが2.94であった。
【0064】
以上説明したように、上記各実施形態にかける熱供給システムによれば、圧縮空気を利用することで、エネルギー効率が高く、自然媒体を利用可能な熱供給システムが提供される。すなわち、空気熱源で、フロン等の熱媒を使わない蒸気生成システム又は高温熱供給システムを提供可能である。いくつかの実施形態において、圧縮機、タービン効率が80%の場合において、COPが3程度を確保することが可能である。また、上記各実施形態において、省エネ及び省CO2に貢献可能である。
【0065】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。上記説明において使用した数値は一例であって、本発明はこれに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0066】
S1,S2,S3,S4:熱供給システム、20,20A−20H:圧縮機、30,30A−30H:熱交換器、40:タービン、50:制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧縮機、複数の放熱部、及びタービンを含む第1装置と、
被加熱流体が流れかつ前記複数の放熱部にそれぞれ熱的に接続される複数の経路を含む第2装置と、を備え、
前記第1装置は、作動流体として空気を使用する開放型である、ことを特徴とする熱供給システム。
【請求項2】
前記被加熱流体は水であり、
前記第2装置の前記複数の経路の少なくとも1つで蒸気が生成される、ことを特徴とする請求項1に記載の熱供給システム。
【請求項3】
前記複数の放熱部の少なくとも1つは、前記被加熱流体を予備加熱する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱供給システム。
【請求項4】
前記タービンは、多段タービンを含む、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱供給システム。
【請求項5】
被冷却流体が流れかつ前記タービンからの冷熱を取り出す第3装置をさらに備える、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱供給システム。
【請求項6】
圧縮機、放熱部、及びタービンを含む第1装置と、
被加熱流体が流れかつ前記放熱部に熱的に接続される経路を含む第2装置と、を備え、
前記第1装置は、作動流体として空気を使用する開放型である、ことを特徴とする熱供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−13292(P2012−13292A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149291(P2010−149291)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)