説明

熱供給装置及び熱輸送システム

【課題】多くの熱量を供給・輸送すると共に、地球環境を考慮する。
【解決手段】熱交換媒体12と熱交換可能な蓄熱を蓄えた蓄熱体11を収容する蓄熱カセット10と、水素又はバイオマス起源の燃料21を蓄えるタンク20と、タンク20に蓄えられた燃料21の燃焼熱により熱交換媒体12を加熱する燃焼熱交換装置25と、からなる熱供給装置1をトラック40に備える。熱供給システム100では、熱源30において、廃熱を蓄熱カセット10の蓄熱体11に蓄熱すると共に燃料21をタンク20に蓄える。トラック40の搬送先にある熱需要側50において、燃焼熱交換装置25でタンク20の燃料21の燃焼熱により、蓄熱カセット10で蓄熱体11と熱交換された熱交換媒体12を更に加熱し、熱需要側熱交換器51により熱交換媒体12を介して熱量を放熱装置50に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夜間の電力や排蒸気を利用して蓄熱し、必要なときに取り出す家庭用又は業務用の移動方式の蓄熱式熱供給装置及び熱輸送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、昼間の熱利用のピーク時におけるエネルギー消費を低減する必要があり、例えば、特許文献1に示すように、発生する熱を一時的に蓄熱する蓄熱装置が提案されている。また、熱源と熱需要先が遠隔地に有る場合、特許文献2に示すような、蓄熱技術を利用したシステムが提案されている。特許文献1の発明は、蓄熱槽に、熱を蓄熱する蓄熱材と、蓄熱材よりも比重が小さく、蓄熱材と分離する熱媒(熱交換媒体)を収容している。蓄熱槽では、比重の相違から上方に熱媒、下方に蓄熱材と互いに分離される。そして、例えば、製鉄所、ゴミ処理場等において発生する熱が供給された熱媒を蓄熱槽の底部から供給すると、蓄熱材よりも比重が小さいため、蓄熱槽の上方に移動する。そして、かかる移動中に蓄熱材と直接接触することで、熱媒に供給された熱が蓄熱材に伝わり、蓄熱されるようになる。
【0003】
また、蓄熱した熱を利用する場合は、上記と同様に、熱供給されていない熱媒を蓄熱槽の底部から供給すると、蓄熱材よりも比重が小さいため、蓄熱槽の上方に移動する。そして、かかる移動中に蓄熱材と直接接触することで、蓄熱材に蓄熱された熱が熱媒に伝わり、熱媒に熱が供給されるようになる。そして、かかる熱媒を熱取出器に供給し、熱取出器において熱を回収することで、例えば、暖房機器のような外部機器において熱を利用することができるようになる。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−104494号公報
【特許文献2】実開平04−138565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2のように、潜熱蓄熱による熱供給装置を利用した熱輸送方式では、単位体積当り輸送できる熱量が600MJ/m3以下と極めて少なく、経済性の向上のために、更なる輸送可能熱量の拡大が必要である。一方、燃料による熱供給装置を利用した熱輸送方式では、例えば燃料が液体燃料である場合、単位体積当り輸送できる熱量が、10000MJ/m3以上と多くすることが可能であるが、液体燃料として化石燃料が用いられるため、燃料の消費に当りCO2の増加につながり、地球温暖化等の地球環境に対して悪影響を及ぼす。
【0006】
そこで、本発明の目的は、多くの熱量を供給・輸送すると共に、地球環境を考慮した熱供給装置及び熱輸送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明に係る熱供給装置は、固体と液体との状態変化により熱源側で発生する廃熱を蓄熱する蓄熱体と、前記蓄熱体に接触することにより熱交換する熱交換媒体とを収容する蓄熱槽と、水素又はバイオマス起源の燃料を蓄える燃料槽と、前記燃料槽から供給された燃料を燃焼させて得られた燃焼熱により前記蓄熱層から排出された前記熱交換媒体を加熱する燃焼熱交換装置と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
これによると、蓄熱槽に収容される蓄熱を蓄えた蓄熱体と熱交換した熱交換媒体を、燃料槽に蓄えられる燃料により燃焼された燃焼熱により加熱することにより、蓄熱体に蓄えられた蓄熱と燃料により燃焼された燃焼熱とを同時に熱交換媒体に取り込むことができ、熱交換媒体を介して多くの熱量を供給することができる。また、燃料が水素又はバイオマス起源(例えば、メタノール)の燃料であることから、CO2が発生しない又はCO2の発生が無視でき、地球環境に与える影響を改善することができる。
【0009】
また、本発明に係る熱供給装置は、前記燃焼熱交換装置が、前記燃料を一定容積内で燃焼させて燃焼ガスを発生させる燃焼容器と、前記燃焼ガスと前記熱交換媒体とを熱交換させる燃焼熱交換器と、から構成されて良い。
【0010】
これによると、燃焼熱交換装置が、燃焼熱交換器において、蓄熱体に蓄えられた蓄熱と熱交換された熱交換媒体と、燃焼容器で燃料が燃焼されることにより発生する燃焼ガスとを熱交換することにより、具体的に、蓄熱体に蓄えられた蓄熱と燃料により燃焼された燃焼熱とを同時に熱交換媒体に取り込むことができ、熱交換媒体を介して多くの熱量を供給することができる。
【0011】
そして、本発明に係る熱輸送システムは、本発明に係る熱供給装置が移動可能な搬送手段に備えられ、熱源側で前記蓄熱槽に前記廃熱を蓄熱すると共に前記燃料槽に前記燃料を蓄え、熱需要側に備えられた熱取出器において、前記搬送手段により搬送された前記熱供給装置の前記熱交換媒体から熱を取り出すことを特徴とする。
【0012】
これによると、熱交換媒体と熱交換可能な蓄熱を蓄えた蓄熱体を収容する熱供給装置の蓄熱槽と、燃焼することにより発生する燃焼熱により熱交換媒体を加熱することが可能な燃料を蓄える熱供給装置の燃料槽と、燃料槽に蓄えられた燃料を燃焼することにより発生する燃焼熱により熱交換媒体を加熱する熱供給装置の燃焼熱交換装置と、を搬送手段(例えば、トラック)に備えることにより、熱源側から多くの熱量を輸送することができる。そして、搬送手段の搬送先にある熱需要側において、燃焼熱交換装置で燃料槽に蓄えられた燃料を燃焼することにより発生した燃焼熱により、蓄熱槽に収容された蓄熱体と熱交換された熱交換媒体を更に加熱し、熱取出器により熱交換媒体を介して多くの熱量を熱需要側に供給することができる。また、燃料が水素又はバイオマス起源(例えば、メタノール)の燃料であることから、CO2が発生しない又はCO2の発生が無視でき、地球環境に与える影響を改善することができる。
【0013】
または、本発明に係る熱輸送システムは、本発明に係る熱供給装置の前記蓄熱槽及び前記燃焼槽が移動可能な搬送手段に備えられ、熱源側で前記蓄熱槽に前記廃熱を蓄熱すると共に前記燃料槽に前記燃料を蓄え、熱需要側に備えられた本発明に係る熱供給装置の前記燃焼熱交換装置において、前記搬送手段により搬送された前記蓄熱槽から排出された前記熱交換媒体を加熱すると共に、熱需要側に備えられた熱取出器において、前記熱交換媒体から熱を取り出すことを特徴とする。
【0014】
これによると、熱交換媒体と熱交換可能な蓄熱を蓄えた蓄熱体を収容する熱供給装置の蓄熱槽と、燃焼することにより発生する燃焼熱により熱交換媒体を加熱することが可能な燃料を蓄える熱供給装置の燃料槽と、を搬送手段(例えば、トラック)に備えることにより、熱源側から多くの熱量を輸送することができる。そして、搬送手段の搬送先にある熱需要側に備えられた熱供給装置の燃焼熱交換装置において、搬送手段に備えられた燃料槽の燃料を燃焼することにより発生した燃焼熱により、蓄熱槽に収容された蓄熱体と熱交換された熱交換媒体を更に加熱し、熱取出器により熱交換媒体を介して多くの熱量を熱需要側に供給することができる。また、燃料が水素又はバイオマス起源(例えば、メタノール)の燃料であることから、CO2が発生しない又はCO2の発生が無視でき、地球環境に与える影響を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0016】
[熱供給装置]
まず、本実施形態に係る熱供給装置1について、図1〜図3に基づいて、説明する。図1は、本実施形態に係る熱供給装置を用いた第一の実施形態に係る熱輸送システムの概略図であり、(a)は熱輸送システムの熱源側の概略図であり、(b)は熱輸送システムの熱需要側の概略図である。図2は、本実施形態に係る熱供給装置を用いた第二の実施形態に係る熱輸送システムの概略図であり、(a)は熱輸送システムの熱源側の概略図であり、(b)は熱輸送システムの熱需要側の概略図である。図3は、本実施形態に係る熱供給装置の燃焼熱交換装置の概略図である。
【0017】
図1及び図2に示すように、熱供給装置1は、潜熱蓄熱式蓄熱カセット(蓄熱槽)10と、バイオマス燃料用タンク(燃料槽)20と、燃焼熱交換装置25と、を備えている。
【0018】
潜熱蓄熱式蓄熱カセット(以下、「蓄熱カセット」と略する。)10は、内部空間を有しており、外周部分には、耐熱性を有する気泡発泡樹脂からなる断熱材等が敷設されている。そして、蓄熱カセット10の内部空間には、蓄熱体11であるエリスリトールと熱交換媒体12である油とが収容されている。具他的には、蓄熱カセット10には、内部空間を上下に2つの空間に分離する分離板13が配設されている。分離板13は、平板であり、熱伝導率が高い部材から形成されており、熱交換媒体12が通過することができる複数の孔が設けられている。そして、分離板13により上下に分離された内部空間の上側には、蓄熱体11と熱交換媒体12とが収容されており、分離された内部空間の下側には、熱交換媒体12のみが収容されている。尚、本実施形態においては、蓄熱体11は、短時間で効率よく蓄熱することができるエリスリトールを使用しているが、酢酸ナトリウム三水和塩等であっても良い。
【0019】
熱交換媒体12は、熱媒ポンプ31で熱媒循環管32内を循環させられながら、熱源側熱交換器33において熱源30側で発生する廃熱(余剰蒸気34としての廃熱)が供給され、蓄熱体11との直接接触により、蓄熱体11との間で熱交換をして、蓄熱体11に廃熱を蓄熱したり、蓄熱体11との直接接触により、蓄熱体11との間で熱交換をして、蓄熱体11に蓄熱された熱を取り出し、熱需要側である放熱装置50の熱需要側熱交換器(熱取器)51に供給したりする。尚、本実施形態においては、熱交換媒体12は、油を使用しているが、それに限らない。
【0020】
蓄熱体11は、固体と液体との状態変化により、熱供給された熱交換媒体12と直接接触することで、熱交換媒体12の熱を蓄熱する。具体的には、本実施形態における蓄熱体11であるエリスリトールの融点は約119度であり、平時(室温状態)では固体となっている。そして、熱供給された熱交換媒体12と直接接触することで熱交換媒体12の熱が伝導されると、固体から液体に状態変化し、液体状態で蓄熱するようになっている。また、蓄熱体11が蓄熱しているとき、即ち、蓄熱体11であるエリスリトールが液体状態のとき、熱を有さない熱交換媒体12と直接接触することで、蓄熱した熱を熱交換媒体12に伝導するとともに、液体から固体に状態変化する。
【0021】
バイオマス燃料用タンク(以下、「タンク」と略する。)20は、水素又はバイオマス燃料(バイオマスを起源とする燃料。本実施形態においては、メタノールとする。以下、「燃料」と略する。)21を蓄える容器である。そして、燃料供給管22を介して、タンク20から後述する燃焼交換装置25の燃焼容器26に燃料21が供給される。
【0022】
燃焼熱交換装置25は、蓄熱カセット10の熱交換媒体12の熱媒循環管32への出口側に、熱媒循環管32に接続されて配設されている。燃焼熱交換装置25は、図3に示すように、一定容積を有する燃焼容器26と、燃焼熱交換器27とを備えている。燃焼容器26は、燃料供給管22を通って供給された燃料21(図3中の「fuel」)を空気(図3中の「air」)と共に燃焼させて、燃焼ガス23を発生させる容器である。燃焼熱交換器27は、燃焼容器26で発生した燃焼ガス23を取り込むと共に、蓄熱カセット10から熱交換媒体12を取り込んで(図3中の「Thermal medium inlet」)、燃焼ガス23と熱交換媒体12と熱交換させて、熱媒循環管32に排出する(図3中の「Thermal medium outlet」)ようになっている。具体的には、燃焼熱交換器27は、蓄熱カセット10において蓄熱した熱が伝導された熱交換媒体12を、燃焼ガス23の燃焼熱で加熱する。尚、熱交換媒体12と熱交換をした燃焼ガス23は、排ガス(図3中の「Exhaust gas」)として放出される。
【0023】
[第一の実施形態に係る熱輸送システム]
次に、本発明の第一の実施形態に係る熱輸送システムについて、図1に基づいて説明する。
【0024】
図1に示すように、第一の実施形態に係る熱輸送システム100においては、トラック等の搬送手段(本実施形態においては、トラックとする。)40に、熱供給装置1の蓄熱カセット10と、タンク20と、燃焼熱交換装置25とが載置されている。
【0025】
まず、図1(a)に示すように、熱輸送システム100の熱源30側において、トラック40に載置された熱供給装置1の蓄熱カセット10において、工場や廃棄処理場などの熱源30から廃熱を蓄熱する。具体的には、熱供給装置1において、熱交換媒体12が、熱媒ポンプ31で熱媒循環管32内を循環させられながら、熱源側熱交換器33を介して熱源30側で発生する廃熱(余剰蒸気34としての廃熱)が供給され、蓄熱体11との直接接触により、蓄熱体11との間で熱交換をして、蓄熱体11に廃熱を蓄熱する。尚、熱源側熱交換器31において、熱交換媒体12と熱交換をした余剰蒸気は、排蒸気として排出される。
【0026】
また、熱輸送システム100の熱源側において、トラック40に載置された熱供給装置1のタンク20において、燃料21が蓄えられる。
【0027】
そして、トラック40により熱需要側(放熱装置50)に搬送され、図1(b)に示すように、熱輸送システム100の熱需要側において、トラック40に載置された熱供給装置1の蓄熱カセット10から蓄熱した熱が伝導された熱交換媒体12を、熱媒ポンプ31で熱媒循環管32に流通させて、熱媒循環管32を介して熱交換媒体12を取り込んだ熱需要側熱交換器(熱取器)51を通して放熱装置50に熱を供給する。同時に、熱輸送システム100の熱需要側において、トラック40に載置された燃焼熱交換装置25において、トラック40に載置されたタンク20から燃料供給管22を通って供給された燃料21を燃焼させ、燃焼熱交換装置25において発生する燃焼熱を取り込んだ熱交換媒体12を、熱媒循環管32に流通させて、熱媒循環管32を介して熱交換媒体12を取り込んだ熱需要側熱交換器51を通して、温水循環52により放熱装置(熱需要側)50に熱を供給する。
【0028】
[第二の実施形態に係る熱輸送システム]
次に、本発明の第二の実施形態に係る熱輸送システムについて、図2に基づいて説明する。
【0029】
図2に示すように、第二の実施形態に係る熱輸送システム100においては、トラック等の搬送手段(本実施形態においては、トラックとする。)40に、熱供給装置1の蓄熱カセット10と、タンク20とが載置されている。
【0030】
まず、図2(a)に示すように、熱輸送システム100の熱源30側において、トラック40に載置された熱供給装置1の蓄熱カセット10において、工場や廃棄処理場などの熱源30から廃熱を蓄熱する。具体的には、熱供給装置1において、熱交換媒体12が、熱媒ポンプ31で熱媒循環管32内を循環させられながら、熱源側熱交換器33を介して熱源30側で発生する廃熱(余剰蒸気34としての廃熱)が供給され、蓄熱体11との直接接触により、蓄熱体11との間で熱交換をして、蓄熱体11に廃熱を蓄熱する。尚、熱源側熱交換器31において、熱交換媒体12と熱交換をした余剰蒸気は、排蒸気として排出される。
【0031】
また、熱輸送システム100の熱源側において、トラック40に載置された熱供給装置1のタンク20において、燃料21が蓄えられる。
【0032】
そして、トラック40により熱需要側(放熱装置50)に搬送され、図2(b)に示すように、熱輸送システム100の熱需要側において、トラック40に載置された熱供給装置1の蓄熱カセット10から蓄熱した熱が伝導された熱交換媒体12を、熱媒ポンプ31で熱媒循環管32に流通させて、熱媒循環管32を介して熱交換媒体12を取り込んだ熱需要側熱交換器(熱取器)51を通して放熱装置50に熱を供給する。同時に、熱輸送システム100の熱需要側(放熱装置50)において、熱需要側(放熱装置50)に定置された熱供給装置1の燃焼熱交換装置25において、トラック40に載置されたタンク20から燃料供給管22を通って供給された燃料21を燃焼させ、燃焼熱交換装置25において発生する燃焼熱を取り込んだ熱交換媒体12を、熱媒循環管32に流通させて、熱媒循環管32を介して熱交換媒体12を取り込んだ熱需要側熱交換器51を通して、温水循環52により放熱装置(熱需要側)50に熱を供給する。
【0033】
次に、上述の本実施形態に係る熱供給装置1において、輸送可能な熱量を測定した実験結果について、図4に基づいて説明する。尚、本実施形態に係る熱供給装置1を用いた第一の実施形態及び第二の実施形態に係る熱輸送システム100において、輸送可能な熱量も同様である。図4は、本実施形態に係る熱供給装置のタンクに蓄えた燃料(メタノール)の量と蓄熱密度との関係を示す実験結果である。
【0034】
蓄熱カセット10の容積を6.9m3とし、蓄熱体(エタノール)11を3tとし、熱交換媒体(油)12を1tとし、温度範囲を90〜160℃として、実験を行った。尚、図4において、丸印は、蓄熱カセット10のみによる蓄熱密度を表しており、三角印は、蓄熱カセット10とタンク20の合計による蓄熱密度を表している。図4に示すように、本実験結果では、わずか200kgのメタノールを熱供給装置1のタンク20に蓄えることにより、約2倍の熱量を輸送することができる。
【0035】
以上に説明したように、本実施形態に係る熱供給装置1によると、蓄熱カセット10に収容される蓄熱を蓄えた蓄熱体11と熱交換した熱交換媒体12を、タンク20に蓄えられる燃料21により燃焼された燃焼熱により加熱することにより、蓄熱体11に蓄えられた蓄熱と燃料21により燃焼された燃焼熱とを同時に熱交換媒体12に取り込むことができ、熱交換媒体12を介して多くの熱量を供給することができる。また、燃料21が水素又はバイオマス起源(例えば、メタノール)の燃料であることから、CO2が発生しない又はCO2の発生が無視でき、地球環境に与える影響を改善することができる。
【0036】
また、燃焼熱交換装置26が、燃焼熱交換器27において、蓄熱体11に蓄えられた蓄熱と熱交換された熱交換媒体12と、燃焼容器26で燃料21が燃焼されることにより発生する燃焼ガス23とを熱交換することにより、具体的に、蓄熱体11に蓄えられた蓄熱と燃料21により燃焼された燃焼熱とを同時に熱交換媒体12に取り込むことができ、熱交換媒体12を介して多くの熱量を供給することができる。
【0037】
また、第一の実施形態に係る熱供給システム100によると、熱交換媒体12と熱交換可能な蓄熱を蓄えた蓄熱体11を収容する熱供給装置1の蓄熱カセット10と、燃焼することにより発生する燃焼熱により熱交換媒体12を加熱することが可能な燃料21を蓄える熱供給装置1のタンク20と、タンク20に蓄えられた燃料21を燃焼することにより発生する燃焼熱により熱交換媒体12を加熱する熱供給装置1の燃焼熱交換装置25と、を搬送手段であるトラック40に備えることにより、熱源30側から多くの熱量を輸送することができる。そして、トラック40の搬送先にある熱需要側(放熱装置50)において、燃焼熱交換装置25でタンク20に蓄えられた燃料21を燃焼することにより発生した燃焼熱により、蓄熱カセット10に収容された蓄熱体11と熱交換された熱交換媒体12を更に加熱し、熱需要側熱交換器51により熱交換媒体12を介して多くの熱量を放熱装置50に供給することができる。また、燃料21が水素又はバイオマス起源(例えば、メタノール)の燃料であることから、CO2が発生しない又はCO2の発生が無視でき、地球環境に与える影響を改善することができる。
【0038】
更に、第二の実施形態に係る熱供給システム100によると、熱交換媒体12と熱交換可能な蓄熱を蓄えた蓄熱体11を収容する熱供給装置1の蓄熱カセット10と、燃焼することにより発生する燃焼熱により熱交換媒体12を加熱することが可能な燃料21を蓄える熱供給装置1のタンク20と、を搬送手段であるトラック40に備えることにより、熱源30側から多くの熱量を輸送することができる。そして、トラック40の搬送先にある熱需要側(放熱装置50)に備えられた熱供給装置1の燃焼熱交換装置25において、トラック40に備えられたタンク20の燃料21を燃焼することにより発生した燃焼熱により、蓄熱カセット10に収容された蓄熱体11と熱交換された熱交換媒体12を更に加熱し、熱需要側熱交換器51により熱交換媒体12を介して多くの熱量を放熱装置50に供給することができる。また、燃料21が水素又はバイオマス起源(例えば、メタノール)の燃料であることから、CO2が発生しない又はCO2の発生が無視でき、地球環境に与える影響を改善することができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその趣旨を超えない範囲において変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係る熱供給装置を用いた第一の実施形態に係る熱輸送システムの概略図であり、(a)は熱輸送システムの熱源側の概略図であり、(b)は熱輸送システムの熱需要側の概略図である。
【図2】本実施形態に係る熱供給装置を用いた第二の実施形態に係る熱輸送システムの概略図であり、(a)は熱輸送システムの熱源側の概略図であり、(b)は熱輸送システムの熱需要側の概略図である。
【図3】本実施形態に係る熱供給装置の燃焼熱交換装置の概略図である。
【図4】本実施形態に係る熱供給装置のタンクに蓄えた燃料(メタノール)の量と蓄熱密度との関係を示す実験結果である。
【符号の説明】
【0041】
1 熱供給装置
10 潜熱蓄熱式蓄熱カセット(蓄熱槽)
20 バイオマス燃料用タンク(燃料槽)
21 燃料
25 燃焼熱交換装置
26 燃焼容器
27 燃焼熱交換器
30 熱源
40 搬送手段
50 熱需要側(放熱装置)
51 熱需要側熱交換器(熱取器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体と液体との状態変化により熱源側で発生する廃熱を蓄熱する蓄熱体と、前記蓄熱体に接触することにより熱交換する熱交換媒体とを収容する蓄熱槽と、
水素又はバイオマス起源の燃料を蓄える燃料槽と、
前記燃料槽から供給された燃料を燃焼させて得られた燃焼熱により前記蓄熱層から排出された前記熱交換媒体を加熱する燃焼熱交換装置と、
を備えていることを特徴とする熱供給装置。
【請求項2】
前記燃焼熱交換装置は、
前記燃料を一定容積内で燃焼させて燃焼ガスを発生させる燃焼容器と、
前記燃焼ガスと前記熱交換媒体とを熱交換させる燃焼熱交換器と、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載の熱供給装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱供給装置が移動可能な搬送手段に備えられ、
熱源側で前記蓄熱槽に前記廃熱を蓄熱すると共に前記燃料槽に前記燃料を蓄え、
熱需要側に備えられた熱取出器において、前記搬送手段により搬送された前記熱供給装置の前記熱交換媒体から熱を取り出すことを特徴とする熱輸送システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の熱供給装置の前記蓄熱槽及び前記燃焼槽が移動可能な搬送手段に備えられ、
熱源側で前記蓄熱槽に前記廃熱を蓄熱すると共に前記燃料槽に前記燃料を蓄え、
熱需要側に備えられた請求項1または2に記載の熱供給装置の前記燃焼熱交換装置において、前記搬送手段により搬送された前記蓄熱槽から排出された前記熱交換媒体を加熱すると共に、熱需要側に備えられた熱取出器において、前記熱交換媒体から熱を取り出すことを特徴とする熱輸送システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−46867(P2007−46867A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233991(P2005−233991)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)