説明

熱光電式火災感知器

感熱素子を簡単に所定位置に設定し、かつ、その位置を維持する。
【構成】光学台カバー50の上面の中央部に設けられた位置決め溝51a付ホルダ51と;該光学台カバーに設けられ、該ホルダから該カバーの端縁に達するリード線案内溝55と;前記位置決め溝に嵌合する複数の突起部71bを備え、該ホルダに嵌合するとともに前記光学台カバーと保護カバー60とにより挟持される支持体71と;該支持体に直立して設けられ、リード線72が前記案内溝55を通してプリント基板10に接続される感熱素子70と;保護カバーの天板63に設けられた挿通孔63aと;を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、熱式及び光電式の感知機能を備えた熱光電式火災感知器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の熱光電式火災感知器は、ボディとカバーの嵌合により筐体を形成し、このボディの底面部にプリント基板を配設するとともに、前記筐体の上面に開口部を形成し、この開口部内に光学室台を配置して、この光学台上に投光素子や受光素子を光軸が光学室台と略平行になるように配設し、ラビリンス付上面板を筐体の上面開口部を通して前記光学室台を覆うように被せ、このラビリンス付上面板の外周を防虫網で覆っている。そして、前記上面板に感熱素子のリード線を接着テープで固定するとともに前記カバーの貫通孔から該感熱素子を突出させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来例の熱光電式火災感知器は、固定手段として多くのねじを用いているので、組み立てや分解が極めて面倒で時間がかかる。又、筐体の開口部内の光学室台は、プリント基板上の電気回路部品を保護するため、L字状折曲脚を介して該プリント基板から離間されているので、L字状折曲脚の長さ分だけ筐体の高さが高くなる。そこで、感知器を薄くする場合には、暗室の高さを低くすることが考えられるが、このようにすると、感知器の性能の低下を招くので好ましくない。そこで、やむをえず、暗箱の高さを通常の高さにしている。そのため、感知器自体が厚くなってしまう。また、位置合わせしながら感熱素子を所定位置に固定するのが面倒であるとともに、折角所定位置に接着テープで固定してもリード線が引っ張られると感熱素子が動き位置ずれが生じる。そのため、正確な火災監視が困難になる。
【0004】この発明は上記事情に鑑み、感熱素子を簡単に所定位置に設定し、かつ、その位置を維持することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、光学台カバーの上面の中央部に設けられた位置決め溝付ホルダと;該光学台カバーに設けられ、該ホルダから該カバーの端縁に達するリード線案内壁と;前記位置決め溝に嵌合する複数の突起部を備え、該ホルダに嵌合するとともに前記光学台カバーと保護カバーとにより挟持される支持体と;該支持体に直立して設けられ、リード線が前記案内壁を通してプリント基板に接続される感熱素子と;保護カバーの天板に設けられた挿通孔と;を備えること、により前記目的を達成しようとするものである。
【0006】
【作用】光学台の上面に光学台カバーを被せた後、該光学台カバーの感熱素子のホルダに感熱素子の支持体を嵌着し、リード線をリード線案内溝に嵌着する。その後、該支持体を天板の挿通孔に嵌着し、前記光学台カバーに保護カバーを被せて該支持体と光学台カバーとを圧しながら保護カバーを本体に係合させて固定する。
【0007】
【実施例】この発明の実施例を添付図面により説明する。本体1は図11に示す様に構成されている。該本体1の上面1aには、挿通孔2の付いた支持柱3とプリント基板10の位置決め用の突柱9とが突設され、又、該本体1の外周部には係止部4が設けられている。この本体1の下面1bには、図2に示すような排水用の環状溝1Rが形成されているが、この環状溝1Rは本体1の外周縁部に形成した排水穴1Hと連通している。この本体1の下面1bには、図12に示す導電性接続金具としての刃金具5が固定される。該刃金具5は、固定部5aと刃部5bとから構成されている。この固定部5aには、図9に示す端子ねじ6と螺合するねじ穴7が設けられている。また、刃部5bは図示しないベースの導電性接続金具としての刃受金具と係合される。
【0008】プリント基板10は、図10に示す様に構成されている。該プリント基板10の上面10aには、十字状の広い面積のシールド部11とチェック端子12とシールド部11上に形成される光学台載置部13と表示灯14とが設けられている。該プリント基板10の下面10bには表面実装タイプの電気回路部品10eが設けられている。又、該プリント基板10には、光学台40のフック48を通す挿通孔17が設けられ、下面10b側の挿通孔17の周縁には前記フック48の係止部17aが設けられている。
【0009】光学台ホルダ20は図8、図16に示す様に構成されている。該光学台ホルダ20は、L字状に形成され、その一端部には該ホルダ20の中心に向かい順次、発光素子収納部22とレンズ収納部23と発光窓部24とが形成されており、又、他端部には、該ホルダ20の中心に向かい順次、受光素子収納部25とシールドケース収納部28と受光窓を備えた下部遮光壁29とが形成されている。前記発光素子収納部22及び受光素子収納部25の下部には、前記収納部22、25と連続する垂直状の挿通孔22a、25aが形成されている。該ホルダ20の底面20aは、水平状であり、又、前記収納部22、25の上面は開放されていて上側から発光素子30、受光素子35が差し込めるようになっている。
【0010】図8、図15に示す様に、発光素子、例えば、LED30は光軸が軸心に対して直角方向に形成されている所謂サイド発光式発光素子であり、その下部には垂直状のリード端子31が設けられている。レンズ32の上部及び下部には、それぞれ支持部33、34が設けられている。受光素子、例えば、PD35は光軸が軸心と直角方向であり、その下部には垂直状のリード端子36が設けられている。シールドケース37は無塗装であり、その前面には受光窓38が形成されている。前記発光素子30、レンズの支持部33、及びシールドケース37のそれぞれ上面には、光学台40に圧接される当接部30a、33a、37aが形成されている。
【0011】光学台40は図7、図14、図17、図18R>8、に示す様に構成されている。光学台40の底面40aには、下面が開放されている発光部収納部41と受光部収納部42と遮光柱43とが設けられている。両収納部41、42は前記光学台ホルダ20に対応して形成され、発光部収納部41の内面には、発光素子30に圧接する当接部41aと、レンズ32を収納し該レンズ32に圧接する溝部45が設けられている。受光部収納部42の内面には、下部遮光壁29と当接する上部遮光壁44と、シールドケース37に圧接する当接部42aとが形成されている。光学台の底面40aには、前記発光部収納部41と受光部収納部42とを挟む様にしてラビリンス47が環状に配設されている。該ラビリンス47の外周には、図6に示す防虫網46が設けられているが、この防虫網46は環状壁49により支持されている。この環状壁49は光学台40の側部に設けられ、かつ、その先端49aはラビリンス47の下部側に位置している。光学台40の側部には、円周方向に間隔をおいて3本のフック48が設けられている。
【0012】光学台カバー50は図5、図13、図19R>9、図20に示す様に構成されている。光学台カバー50の上面には感熱素子70のホルダ51とリード線案内溝55と円筒状部52が設けられている。このホルダ51は円筒状で、円周方向に等間隔をおいて3つの位置決め溝51aが設けられている。該円筒状部52は光学台カバー50の外周縁に設けられ、その高さは前記ホルダ51と同一である。該カバー50の下面には複数の突起部54が形成されているが、この突起部54はラビリンス47、発光部収納部41、受光部収納部42のそれぞれの上面に形成されている嵌着孔47b、41b、42bに嵌着される。感熱素子70は支持体71により保持されており、その一端はリード線72に接続されている。支持体71の中央部にはリード線72または感熱素子70を通す挿通孔71aが設けられ、又、その外周には前記ホルダ51の位置決め溝51aに嵌着される突起部71bが形成されている。
【0013】保護カバー60は図1、図3、図4に示す様に構成されている。この保護カバー60は鍔部61に連結柱62を介して天板63に接続されている。この天板63の中央に感熱素子70の挿通孔63aが設けられ、その下面には圧着部63bが設けられている。該鍔部61にはチェック棒挿通孔64及び表示灯穴66が設けられ、又、該鍔部61と天板63との間には煙流入口65が設けられている。該鍔部61の外周縁には本体1の係合部4に係止するフックが設けられている。前記天板63には支柱68を介して感熱素子保護リング69が設けられている。この保護リング69の下面には、互いに隣合う支柱68の間から指などが入り込まないように突起69aが設けられている。
【0014】次に本実施例の作動について説明する。光学台ホルダ20の挿通孔22aにリード端子31を挿入して発光素子収納部22にサイド発光式発光素子30を収納した後、レンズ32の支持部34をレンズ収納部23に収納する。この時、発光素子30とリード端子36とは垂直状に保持される。挿通孔25aにリード端子36を挿入して受光素子収納部25に受光素子35を収納する。この時、受光素子35とリード端子31とは垂直状に保持される。又、シールドケース収納部28にシールドケース37を嵌着し、受光素子35に被せ、シールドする。
【0015】光学台ホルダ20を光学台40の底面40aに差し込み、発光部収納部41に発光素子30を収納し、受光部収納部42に受光素子35を収納する。
【0016】この光学台40のフック48をプリント基板10の挿通孔17に挿入し、該フック48を係止部17aに係合する。そうすると、光学台40は3本のフック48によりセンタリングされながら、その底面40aが直接プリント基板10上に当接される。この状態において光学台40は、正確に光学台載置部13に位置せしめられ、又、光学台ホルダ20は光学台40とプリント基板10により挟持される。
【0017】この時、光学台ホルダ20の発光素子30の当接部30a、レンズ32の支持部33の当接部33a、シールドケース37の当接部37aはそれぞれ光学台内面の当接部41a、溝部45、当接部42aにより押圧されるので、それらは正確に所定位置に配設され、振動などがあってもその位置が狂うことはない。従って、発光素子30と受光素子35の光軸Lは光学台40の底面40aに平行な状態を常に維持することができる。この光軸Lは環状壁49の先端49aとほぼ同じ高さに位置する。
【0018】ラビリンス47の外周に防虫網46を設け、該防虫網46を環状壁49により支持する。その後、光学台カバー50の突起部54をラビリンス47の嵌着孔47b、発光部収納部41の嵌着孔41b、受光部収納部42bに嵌着する。これにより、光学台40の内部は暗くなり、所謂、暗箱が形成される。この時、シールドケース37は光学台40の受光部収納部42と上部遮光壁44及び光学台ホルダ20の下部遮光壁29とにより囲まれているので、煙監視空間Sに露出することはない。そのため、シールドケース37を無塗装にしても、暗箱内の散乱光は該シールドケースにより反射されることはない。
【0019】支持体71の挿通孔71aにリード線72を挿通し、感熱素子70を垂直状にするとともにリード線72をL字状に曲げる。そして、該支持体71を光学台カバー50のホルダ51に向かって移動させ、突起部71bを位置決め溝51aに嵌着し、リード線72をリード線案内溝55に嵌着し固定する。この時、支持体71は突起部71bと位置決め溝51aとにより光学台カバー50の中央部に正確に保持される。なお、リード線72は、プリント基板10に接続される。本体1の支持柱3にプリント基板10を載置するとともに突柱9の先端をプリント基板10の孔に挿入し、挿通孔2、18に端子ねじ6を挿入する。その後、該本体1の下面1bに刃金具5の固定部5aを当接し、前記端子ねじ6を回転させてねじ穴7に装着して固定する。保護カバー60を光学台カバー50に向かって移動し、支持体71を天板63の挿通孔63aに挿通嵌着し、該支持体71と光学台カバー50とを天板63の圧着部63bで押さえるとともにフック67を本体1の係止部4に係合せしめて固定する。この状態において支持体71は確実に固定され、感熱素子70は天板63の中央部から直立して所定位置に設定される。また、リード線72は保護カバー60の連結柱62の内側に隠され、外部に露出しない。
【0020】この発明の実施例は上記に限定されるものではなく、例えば、光学台40の下面40aを直接プリント基板10に固定する代わりに、下面に環状リングを設け該リングをプリント基板10に当接させるようにしてもよい。又、環状リングの代わりに複数、例えば、3個の突起を円周方向に間隔をおいて配設してもよい。また、チェック端子12はプリント基板10上にプリントパターンで形成してもよい。保護カバー60のチェック棒挿通孔64は省略してもよい。また、導電性接続金具として刃受金具などを用いてもよい。
【0021】
【発明の効果】この発明は以上の様に構成したので、感熱素子は常に設計位置に配設され、その位置が維持される。そのため、複数の感知器間において感熱素子の感度を一定にすることができる。又、感熱素子のリード線はリード線案内溝によって案内され所定状態になるので、プリント基板への接続作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例を示す底面図である。
【図3】図1のA−A線断面拡大図である。
【図4】本発明の保護カバーを示す斜視図である。
【図5】本発明の光学台カバー等を示す斜視図である。
【図6】本発明の防虫網を示す斜視図である。
【図7】本発明の光学台を示す斜視図である。
【図8】本発明の光学台ホルダ等を示す斜視図である。
【図9】本発明の端子ねじを示す斜視図である。
【図10】本発明のプリント基板を示す斜視図である。
【図11】本発明の本体を示す斜視図である。
【図12】本発明の刃金具を示す斜視図である。
【図13】本発明の図1のA−A線断面における光学台カバーを示す断面図である。
【図14】本発明の図1のA−A線断面における光学台を示す断面図である。
【図15】本発明の図1のA−A線断面におけるシ−ルドケース、レンズ、発光素子、受光素子を示す断面図である。
【図16】本発明の図1のA−A線断面における光学台ホルダを示す断面図である。
【図17】本発明の光学台の平面図である。
【図18】本発明の光学台の底面図である。
【図19】図5の拡大図である。
【図20】図19のB−B線断面図である。
【符号の説明】
1 本体
5 刃金具(導電性接続金具)
10 プリント基板
20 光学台ホルダ
30 発光素子
35 受光素子
37 シールドケース
40 光学台
46 防虫網
47 ラビリンス
50 光学台カバー
51 ホルダ
60 保護カバー
63 天板
63a挿通孔
67 フック
70 感熱素子
71 支持体
72 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】光学台カバーの上面の中央部に設けられた位置決め溝付ホルダと;該光学台カバーに設けられ、該ホルダから該カバーの端縁に達するリード線案内壁と;前記位置決め溝に嵌合する複数の突起部を備え、該ホルダに嵌合するとともに前記光学台カバーと保護カバーとにより挟持される支持体と;該支持体に直立して設けられ、リード線が前記案内壁を通してプリント基板に接続される感熱素子と;保護カバーの天板に設けられた挿通孔と;を備えたことを特徴とする熱光電式火災感知器。
【請求項2】光学台カバーの下面に、光学台に嵌着される突起部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の熱光電式火災感知器。
【請求項3】光学台カバーの外周縁に円筒状部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の熱光電式火災感知器。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【図12】
image rotate


【図13】
image rotate


【図14】
image rotate


【図15】
image rotate


【図16】
image rotate


【図17】
image rotate


【図18】
image rotate


【図19】
image rotate


【図20】
image rotate


【公開番号】特開平6−131573
【公開日】平成6年(1994)5月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−55781
【分割の表示】特願平4−131537の分割
【出願日】平成4年(1992)4月25日
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)