説明

熱冷却機能を有するコネクタシステム

【課題】熱負荷の処理に適したコネクタシステムを提供する。
【解決手段】コネクタはヒートスプレッダを含む。ヒートスプレッダは熱をポートから、コネクタより離れて配置されたサーマルプレートへ向けるよう構成される。複数のコネクタが支持され得、ヒートスプレッダが、各コネクタによって結合され得る。1つ以上のサーマルプレートが、各コネクタから離れた方向に熱エネルギーを向けるよう、対応するヒートスプレッダと熱的に接合され得る。冷却ブロックが、ヒートスプレッダを対応するサーマルプレートと熱的に接合するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2011年11月8日出願の米国仮出願第61/556,890号、及び2012年5月1日出願の米国仮出願第61/640,786号に基づく優先権を主張し、その両方の仮出願全体は、参照によって援用される。
【0002】
本発明は、コネクタ分野に関し、より具体的には、熱負荷の処理に適したコネクタの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
I /Oコネクタ、特に高速データ通信向けのコネクタは既知である。そのようなコネクタの一例として一般的にQSFPコネクタと呼ばれるものがある。QSFPコネクタは、4X構成(4送信チャンネルと4受信のチャンネル)で10Gbpsのデータレートを提供する事を目的とする。他の同等なデータレートを提供するコネクタは、インフィニバンド12Xコネクタ(12X構成で10Gbpsを提供する事を目的とする)、及びSFP+コネクタ(1X構成で10Gbpsを提供する事を目的とする)を含む。より高速のデータレート(例えば、16Gbps、または28Gbpsチャンネル)で同等のインタフェースを提供するための開発も進行中である。
【0004】
理解できるように、これらの高速データレートは大いに有益であり、遠距離通信技術やネットワークアプリケーション、ならびに特定のサーバアプリケーションにおいて必要とされる帯域幅に関する課題への取り組みを支援するように、実施されている。これらの典型的な用途から予想できるように、2つの基本的な使用様式がある。使用様式の1つは、一箇所から近くの他所へデータを提供するものである。データはたいてい10メートル未満しか移動しないため、これらの用途において、全ての銅による解決策は、良好に機能する。パッシブケーブルアッセンブリは、そのような用途によく適していて、費用効率が良い傾向がある。しかしながら、距離が増加するにつれて、動力ケーブルが必要となる。中距離(例えば100メートル未満)用にはアクティブケーブルが、使用されることが多く、それらケーブルは銅の導体を通して信号を提供するが、高周波数信号が導体の長さに沿って伝わる際に発生する減衰を管理するように、信号対雑音(S/N)比を高めている。最後に、より長距離(例えば1キロメートル)にわたって伝送するには、光伝送媒体を利用するのが合理的である。それらのケーブルは両端に電気信号を光信号に変換するモジュールを使用し、それによってはるかに長距離間に信号を送ることを可能にする。このように、2つの使用パターンは、1)パッシブケーブル装置、及び2)動力ケーブル装置である。
【0005】
動力ケーブルシステムに関する1つの大きな問題は、対応するケーブルを通して信号を送るために使用されるチップ/モジュールが動力を必要とすることである。相当なエネルギーを必要とし得、光モジュールにおいては、しばしば3ワットの範囲となる。この熱エネルギー量は、信号の伝送に使用される構成要素が過熱しないことを確実にするため、冷却を必要とする。冷却の対策が既知である(例えば、100ワット以上を放散させる必要があり得るCPUのための対策)が、ケーブルアッセンブリに関する問題は、冷却を必要とするモジュールが冷却の手段との取り外しが可能なインタフェースを必要とするといった事実から非常に複雑である。言い換えれば、モジュールはレセプタクルに挿入され、十分な熱エネルギーがモジュールから除去されるように、冷却の手段と適切に接触(多くの場合滑動的に接触)されなければならない。
【0006】
かねてから用いられている冷却方法は、ライディングヒートシンクである。この種類のヒートシンクは、モジュールがレセプタクルに挿入される時にモジュールと係合するよう意図された平面を提供する。この平面は、ヒートシンクをケージに固定するクリップによりモジュールの表面に対してバイアスをかけられ、そのため、ヒートシンクはケージ、ヒートシンク、及びモジュールにおいて、許容範囲の量まで垂直に移動することができる。しかしながら、この設計に関する問題の1つは、平面を備えたヒートシンクを提供することが困難であることと、モジュールも完全な平面にはなり難い傾向にあるということである。このように、実際上、基本的にヒートシンクとモジュールの間に3つの直接的な接点があることが一般的である。したがって、理解できるように、ある特定の個人は、改善された熱管理システムが有益なものと評価するであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
コネクタはヒートスプレッダを含む。ヒートスプレッダは熱をポートから、コネクタと離して設置されるサーマルプレートへ向けるよう構成される。一実施形態において、ボックスは、複数のコネクタを支持することができ、2つのサーマルプレートを提供し各コネクタに付随するヒートスプレッダは、熱エネルギーを両方のサーマルプレートへ向けることができる。コネクタを小型の構成で配置し得ることを確実にするため、ヒートスプレッダは薄型に保持され得る。ヒートスプレッダを対応するサーマルプレートへ熱的に結合するため、冷却ブロックを使用することができる。
【0008】
本発明は実施例によって示され、添付の図に限定されることなく、これらの図においては、同一の参照番号は同様の構成要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】コネクタシステムの実施形態の斜視図である。
【図2】非嵌合位置にあるプラグコネクタを伴った、図1に図示される実施形態を示す斜視図である。
【図3】コネクタシステムの実施形態の部分分解斜視図である。
【図4】簡略化されたコネクタシステムの実施形態の部分分解斜視図である。
【図5】図4に図示される実施形態の別の斜視図である。
【図6】コネクタシステムの実施形態の正面図である。
【図6A】図6に図示される実施形態の6A−6Aの線に沿った部分の拡大図である。
【図7】コネクタシステムの実施形態の斜視図である。
【図8】図7に図示される実施形態の線8−8に沿った断面の立面図である。
【図9】図8に図示される実施形態の斜視図である。
【図10】2段の熱管理システムの簡易化された斜視図である。
【図11】1段の熱管理システムの簡易化された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明は例示的な実施形態を示すものであり、明確に開示された組み合わせに限定することは意図されていない。従って、特に断りのない限り、本明細書に開示される特徴は、共に組み合わせられて、簡潔化の目的のために示されていない別の組み合わせを形成し得る。加えて、本明細書に図示されるある特定の特徴は任意のものであることに留意しなければならない。熱管理(及び付随するシステム)は、予想される熱負荷に依存する。そのため、より大きな熱処理の許容量を提供することを目的とする特徴は、熱負荷が比較的低いと予想される実施形態においては省略され得る。加えて、環境が比較的温和である場合(例えば、非常に低温の空気が利用できる場所にシステムが配置された場合)での適用においては、いくつかの特徴は、所望の熱管理性能を提供するには不要であり得る。
【0011】
図1は、第1のサーマルプレート31、サイドプレート、及び第2のサーマルプレート33を有するボックス30を含むコネクタシステムを示す。サーマルプレートはボックスの外部にあるように図示されているが、ボックスは、図示されたプレートの外部に位置した追加のプレート、及び/または構造を含み得るということに留意しなければならない(従って、図示されたサーマルプレート31、33は内部のサーマルプレートとなり得る)。ボックス設計にかかわらず、設計の潜在的な利益の1つは、ボックス30がヒートシンクとして機能し得ることである。ボックス30は通常、大幅により大きく、サーマルプレートを通過する大量の空気の流れを享受することが多いため、このシステムは、冷却性能の向上に適した機構を提供する。
【0012】
ボックス30は、ケージ80の開口部42であるポート41のカラムを含み、ポート41は、好ましくは平面である面7を有する外郭6を含む信号ケーブル8の端にあるプラグコネクタ5を受容するように構成される。図示された構成は、間隔の量を最小化するよう、互いに隣接して配置される3つの分離コネクタ100を提供し、図示されるように、ボックス30は、上部サーマルプレート31に据え付けられる上部冷却ブロック52a、及び下部サーマルプレート33に据え付けられる下部冷却ブロック52bを有し、1つの上部冷却ブロック52a及び1つの下部冷却ブロック52bは、各コネクタに付随する。理解できるように、目的とする空気の通り方によって、いくつかの実施形態では、各コネクタに付随する上部の冷却ブロック52aまたは下部の冷却ブロック52b(両方ではなく)のいずれかのみで十分であり得る。更に、各コネクタ100は、コネクタアセンブリを単一の装置として提供するように、ヒートスプレッダ70に取り付けたケージ80を含み得る。
【0013】
冷却ブロック52a、52bは、据付ブロック53a、53bを含み、据付ブロックは、サーマルプレートと据付ブロックの間で低い熱抵抗を提供する様式でサーマルプレートに据え付けられ得る。例えば、サーマルガスケット56を据付ブロックとサーマルプレートの間に設置することができ、それによって据付ブロックが適切な位置に固定される時、熱抵抗が、所望の値、好ましくは、2C/W未満、より好ましくは、1.5C/W未満、そしてより高性能の応用については、1.25C/W未満に保たれる。
【0014】
冷却ブロック52a、52bは、据付ブロック53a、53bに据え付けられたクリップ60a、60bをも含み、クリップはメインサーマルプレート71と係合するように構成されたフィンガー64を有する。図6Aにおいては、据付ブロックとの締り嵌めを有するように示されるが、実際には移動するであろうフィンガー64が、メインサーマルウォール71を圧するため、下部のサーマルプレート33のような支持プレートに、メインサーマルウォール71から熱エネルギーを伝導することができる多くの並行サーマルチャネルを提供する。クリップ60a、60bは、2つの構成要素間の低い熱抵抗を確実にするために据付ブロックにはんだ付けされ得る。別の実施形態では、クリップはサーマルプレートに直接据え付けることができ、据付ブロックを省略することができる。しかし、一般的には、据付ブロックは、熱抵抗を減らす手助けをする、付加的な面を提供することができる。
【0015】
図7から理解できるように、第1及び第2のサーマルウォール73、72はメインサーマルウォール71から延在する。一実施形態において、メインサーマルウォール71は第1のポートの第1面A、及び第2のポートの第1面Cと整列される。第1のサーマルウォール73は第1のポートの第2面Bと整列される。第2のサーマルウォール72は第2のポートの第2面Dと整列される。理解できるように、第1のサーマルウォールは2つのポート41の間に配置され、第2のサーマルウォールは2つのポートの間には配置されない。あるいは、第2のサーマルウォール72も2つのポート41の間に配置され得るが、その場合、光パイプ95、またはそれの間に配置されることが望まれる他の指示器のような物品のための空間が少なくなるであろう。
【0016】
サーマルウォールは、所望の形に作製することができることに留意しなければならない。例えば、サーマルウォールは金属板、ヒートパイプ、またはいくつかの液体で満たされた構造物によって形成され得る。理解できるように、所望な熱抵抗のために、費用効果のある構造を有することが望ましい。
【0017】
図示されるように、ポートへ挿入されたモジュールは、複数の熱接触点76によって係合される表面を有するであろう。熱接触点76は第1及び第2のサーマルプレート73、72と熱的に接合され、第1及び第2のサーマルプレート73、72はメインサーマルプレート71と熱的に接合され、メインサーマルプレート71は冷却ブロックに係合する。このことによって、ウェハ46を有するコネクタ45が、カードスロットに接合して、プラグコネクタに係合して、比較的密な収納容器で十分な冷却を可能にしながら、良好なEMI保護を有するようにできる。
【0018】
図11に図示されるように、ヒートスプレッダ170はメインサーマルウオール171と、メインサーマルウォール171から延在する第1のサーマルウォール172を含む。理解できるように、熱性能を最大にするためには、2つの冷却ブロック162aと162bが用いられ得る(それぞれ図示される据付ブロック153b及びクリップ160bのような据付ブロックとクリップを有する)。しかし、別の実施形態では、上部または下部の冷却ブロックは省略され得る。ともかく、冷却ブロックは、サーキットボード、サーマルプレート(図示せず)とコネクタの間での寸法変化に起因する積み重ねのような問題を回避すると同時に、良好な熱性能を可能にするスライディングサーマルインタフェースを提供する。
【0019】
このように、図示された実施形態は、ケージとサーマルプレート間のより低い熱抵抗(一実施形態においては、1.5C/W未満、好ましくは1.25C/W未満)を供給する方法を提供する。更に、メインサーマルウォールは、熱性能に大きな影響を与えることなく、サーキットボードにある開口部を通り延在し得る。加えて、この設計は、メインサーマルプレートが、寸法で3mm未満、一実施形態においては、幅2mm未満増加し得るような密な構成を可能にする。このように、図示された熱解消の方法は1つのコネクタの列につき追加のスペースは2mmから4mmしか必要としない一方で、より優れた熱性能を提供できる。
【0020】
サーマルプレート31、33はボックス30の一部として図示されているが、上記のように、サーマルプレートは内部の部品にもなり得ることに留意しなければならない。例えば、制限無く、サーマルプレートはより大きなボックスの内部にも配置できる。サーマルプレートは、中実の金属(典型的にヒートスプレッダに使われる)である必要はなく、代わりに、熱エネルギーをコネクタから移動及び/または放散させることを補助するために液体/蒸気を用いるよう構成される液体冷却構造(または、蒸気チャンバ形式のヒートシンクでさえ)でもあり得る。
【0021】
理解できるように、熱抵抗はそれぞれのインタフェースによって上昇する。例えば、一実施形態において、挿入されたコネクタとサーマルプレート間の全抵抗は、8C/W未満であり得り、より好ましい実施形態においては、6C/W以下の熱抵抗を提供するよう構成され得る。注意を働かせる場合、熱抵抗が、約4C/Wを越えないよう設計することができる。
【0022】
本明細書に提供される開示は、その好ましく、例示的な実施形態に関する特徴を記載する。当業者は、本開示を参照して、多くの他の実施形態、修正形態及び変形形態及び用例を、添付の特許請求の範囲と趣旨から逸脱することなく、想起されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタシステムであって、
サーマルプレートを支持するボックスと、
第1面を有する第1ポートを画定する開口部を含むケージと、
該ケージ内に配置され、第1のポートと整列された少なくとも1つのカードスロットを有する筐体と、
第1面と整列されたメインサーマルウォールを含むヒートスプレッダと、
熱的に前記サーマルプレートへ接合され、前記メインサーマルウォールと熱的に接合するよう構成される冷却ブロックとを含む、コネクタシステム。
【請求項2】
前記サーマルプレートが前記ボックスの底壁である、請求項1に記載のコネクタシステム。
【請求項3】
前記第1ポートは第2面を有し、前記ヒートスプレッダはメインサーマルウォールから延在する第1面サーマルウォールを含み、該第1面サーマルウォールは前記第2面と整列される、請求項1に記載のコネクタシステム。
【請求項4】
前記第1面サーマルウォールが複数のフィンガーと熱的に接合され、該フィンガーは、作動時、嵌合プラグコネクタの面と係合するよう構成される、請求項3に記載のコネクタシステム。
【請求項5】
前記ケージが前記サーマルプレートからオフセットされたサーキットボードに据え付けられ、前記第1サーマルウォールが前記サーキットボード内の開口部を通って延在する、請求項4に記載のコネクタシステム。
【請求項6】
前記ケージが第2ポートを含み、前記筐体が前記第2ポートと整列される第2カードスロットを少なくとも有し、前記第1面サーマルウォールが前記第1ポートと前記第2ポートの間に配置される、請求項3に記載のコネクタシステム。
【請求項7】
前記第2ポートが、前記第1ポートの第2面に隣接していない第3面を含み、前記ヒートスプレッダが前記メインサーマルウォールから延在する第2面サーマルウォールを含み、該第2面サーマルウォールは前記第3面と整列される、請求項6に記載のコネクタシステム。
【請求項8】
前記冷却ブロックが、垂直壁と係合するように構成されるタブを含む、請求項1に記載のコネクタシステム。
【請求項9】
前記サーマルプレートが液体冷却を提供するよう構成される、請求項1に記載のコネクタシステム。
【請求項10】
コネクタであって、
上面と底面と、第1面及び第2面を有する第1ポートを画定する開口部とを有するケージと、
該ケージに配置され、前記ポートと整列される少なくとも1つのカードスロットを有する筐体と、
前記第1面と整列されるメインサーマルウォール、及び前記第2壁と整列される第1サーマルウォールとを含むヒートスプレッダとを含み、
前記第1サーマルウォールは、第2面から前記メインサーマルウォールへ熱エネルギーを向けるよう構成され、前記メインサーマルウォールは、上面及び底面のうち1つを越えて延在する、コネクタ。
【請求項11】
前記メインサーマルウォールが前記上面と前記底面の両方を越えて延在する、請求項10に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記ケージが第3面と第4面を有する第2のポートを含み、
前記メインサーマルウォールが前記第3面と整列され、前記ヒートスプレッダが前記第4面と整列された第2サーマルウォールを含む、請求項11に記載のコネクタ。
【請求項13】
前記第1サーマルウォールが前記第1ポートと前記第2ポートの間に配置される、請求項12に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6A】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−102163(P2013−102163A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−245523(P2012−245523)
【出願日】平成24年11月7日(2012.11.7)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】