熱処理フラワー
ゲル化を最小限にするか避けるためにフラワーを脱水する工程、および、前記脱水フラワーを熱処理する工程を含む、フラワーを熱処理する方法。結果として生じたフラワーは、増加された水分吸収を有する。未処理のフラワーから作られたドウおよびベークド製品と比べて、前記熱処理フラワーから作られたドウは、改良された性能を有し、前記熱処理フラワーから作られたベークド製品は、改良された特性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、吸水能力、ドウの処理およびフラワーのベーキング・クオリティを改良する分野に関し、より具体的には、その性能を改良するためにフラワーを熱処理するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
フラワーまたは小麦の熱処理は、当該技術分野において様々な目的のために実行されてきた。たとえば、Japiske等は、フラワーの物理的化学的性質における不可逆変化を最小限に抑えながら、フラワー中の微生物に由来する汚染物質を除去するために、1〜10分間の昇圧下、水蒸気を含む雰囲気中で、フラワーを華氏260〜310度の温度にかけた(米国特許第3159493号)。この範囲未満では、微生物に由来する汚染物質が完全には除去されず、この範囲を越える温度はフラワーにダメージを与える可能性があった。
【0003】
Hatton等は、フラワーを、10〜80分間、40%を越える相対湿度の雰囲気下で華氏150〜360度の温度で処理し、料理の混合において有用な処理フラワーを作った(米国特許第3428461号)。Bush等は、デンプンの10%がゲル化(ゼラチン化)するように、穀粉の含水量を減少させるため、30〜180秒間、華氏300〜600度で穀粉を熱処理した(米国特許第4937087号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3159493号
【特許文献2】米国特許第3428461号
【特許文献3】米国特許第4937087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記参照文献のいずれも、それによって、熱処理したフラワーまたは熱処理した小麦から作られたドウの特性を、水分の吸収、付着性、ファリノグラフ品質番号(farinograph quality number)および耐性指標に関して改善する方法を提供していない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、改良された特性を有する熱処理フラワーを提供し、また、その製造方法を提供する。一態様において、本発明は、フラワーを熱処理する方法であって、
a)フラワーを準備する工程;
b)前記フラワーの含水量が1.5〜4.1%に減少するように、且つ前記フラワーがゲル化(ゼラチン化)しないように、フラワーを熱的に脱水する(乾燥する)工程;および
c)フラワーの含水量が1.5%未満にならないように、前記脱水フラワーを加熱して、熱処理フラワーを得る工程を含む方法を提供する。
前記熱処理フラワーにおいて、総プロテインの少なくとも7%が変性する。前記熱処理フラワーは、未処理のフラワーと比べて、少なくとも3.0%の水分吸収の増加を示す。
【0007】
一実施形態において、フラワーを熱処理するための前記方法の工程b)とc)は、2つの分離した操作として行われる。別の実施形態では、前記方法の工程b)とc)は一単位(シングル・ユニット)の操作として行なわれる。
【0008】
別の態様において、本発明は、1.5%〜4.1%の含水量を有する熱処理フラワーを提供する。熱処理フラワー中の変性プロテインの量は、7%より大きく、フラワーは、識別可能なデンプン粒を有する。一実施形態において、熱処理フラワーは、フラワー粒子の80%より多くが90〜150ミクロンの間にあるか、またはフラワー粒子の80%より多くが90〜150ミクロンの間にあり、且つ、フラワー粒子の7%より多くが150〜250ミクロンの間にあるような粒度分布を有する。
【0009】
本発明はまた、改良された性能を示す熱処理フラワーから作られたドウを提供し、および、改良された特性を示す熱処理フラワーから作られたベークド食品を提供する。一実施形態において、本発明の方法によって熱処理されたフラワーから作られたドウは、未処理のフラワーから作られたドウに比べて、少なくとも3%の減少した粘着性、および/または少なくとも3%の減少した付着性、および/または少なくとも3%の増加した強度を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、ドウのファリノグラフの一例である。
【図2】図2は、ドウの「力」対「時間」プロットの一例である。
【図3】図3は、熱処理フラワーから調製されたドウのa)粘着性、b)付着性、c)凝集性のデータである。
【図4】図4は、一体化プロセス(複合プロセス)において、脱水され、加熱されたフラワーのファリノグラフ・データである。
【図5】図5は、10.9〜13.1%のプロテイン含有量の、未処理および処理フラワー(一体化プロセス)のファリノグラフ・データである。
【図6】図6は、乾燥固形分1ポンド当たり乾燥空気970ポンドのプロダクト比の空気を有するオーブン内での、華氏260、290、および320度での、小麦粉の乾燥キネティクスのグラフ表示である。
【図7】図7は、熱処理フラワーから作られたベークド製品の「焼成比体積(BSV)」対「時間」のプロットである。
【図8】図8は、二段階熱処理プロセスのための、並流フラッシュ・ドライヤー・マスバランス配置のグラフ表示である。
【図9】図9は、一体型熱処理プロセスのための、ラックオーブン(キャビネット型ドライヤー)マスバランス配置のグラフ表示である。
【図10】図10は、水分吸着等温線データのグラフ表示である。12.5%のプロテインを含むフラワーの水分吸着等温線。
【図11】図11は、再水和データのグラフ表示である。29.4℃(華氏85度)および85%RHの自然対流環境中で再水和された12.5%のプロテインを含む熱処理フラワー。
【図12】図12は、ドウの発達時間におけるフラワーの熱処理コンディションの影響を示すグラフ表示である。
【図13】図13は、水分の吸収におけるフラワーの熱処理コンディションの影響を示すグラフ表示である。
【図14】図14は、焼成比体積におけるフラワーの熱処理コンディションの影響を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、改良された特性を有する熱処理フラワーを提供し、およびこれを製造する方法を提供する。こうして、本発明は、前記フラワーから作られたドウのベーキング性能を損なうことなく、フラワーの吸水能力を増加させる方法を提供する。この方法は、フラワーを脱水する工程、および脱水されたフラワーを加熱する工程を含む。
【0012】
既知の熱処理レジメンは、フラワーの吸収特性の増加をもたらすことができるが、フラワーのベーキング性能は、増加した吸水能力と相関性があるように思われない。本発明は、吸水能力およびベーキング性能を増加させるために、ゲル化(ゼラチン化)をサポートしないコンディション下でフラワーを熱処理することが必要であるという驚くべき観察に基づいている。したがって、本発明の方法は、ゲル化を最小限に抑えながら、フラワーを加熱する工程を含む。
【0013】
我々は、フラワーのゲル化が、フラワーが脱水される温度またはその最終的な含水量だけでなく、加熱モードに関連する脱水の速度にも依存して発生するかどうかを見出した。ゲル化温度は含水量に反比例する。すなわち、含水量が減少するにつれて、ゲル化温度は上昇する。したがって、本発明では、脱水の間、フラワーを、加熱中に水分が急速に除去され、それにより、ゲル化温度が上昇するようなコンデイション下で加熱することによって、ゲル化を最小限にするか避ける。もし、フラワーが急速に脱水されなければ、フラワーのゲル化をもたらし得るゲル化温度に達する可能性がある。たとえば、ゲル化を避けるために、フラワーの含水量を1分以内、好ましくは45〜30秒以内に、4.1〜1.5%の値まで減じることが好ましい。
【0014】
ゲル化を避けることは、熱処理フラワーから作られたドウの改良されたベーキング性能に寄与する、フラワー中のデンプンの性質を保つと考えられる。したがって、改良されたベーキング性能は、熱処理の間、ゲル化が最小限であったことの表れである。さらに、無傷のデンプン粒(複屈折データによって識別される)も、ゲル化がないことの指標となる。
【0015】
本発明のプロセスの第一工程は、脱水である。フラワーの脱水はフラワーの比熱を下げる(結果的に、より効率的な熱伝達をもたらす)。脱水後、デンプン粒は無傷であり、識別できる(複屈折率データによって実証されているように)。これはゲル化がないことを示す。本発明にかかる脱水の間に、フラワーの含水量は、フラワーの重量の1.5〜4.1%の値(1.5〜4.1%の間の全ての整数および小数第一位の%を含む)に減じられる。好ましくは、含水量は2.0〜3.5%に減じられる(2.0〜3.5%の間の全ての整数と小数第一位の%を含む)。4.1%以下に水分を保つことが重要である。なぜなら、4.1%を越えると、より高い温度となる次の加熱が、水分の吸収、ドウの形成およびベーキング・クオリティに影響を及ぼすゲル化や他の変化(例えば、望ましくないデンプンの損傷)を導く可能性があるからである。フラワーの含水量を1%より高く(より好ましくは、1.5%より高く)保つことも重要である。これは1%以下に水分を減少させることが、質の悪いドウの形成および許容できない品質と低いBSVを伴うベークド製品をもたらすことが観察されたためである。特定の理論に拘束されることを意図しないが、フラワーが水分1%以下に脱水されると、デンプン粒とプロテインは、ドウ形成に悪影響を及ぼすように改変されると考えられる。
【0016】
典型的には、フラワーは熱により脱水される。しかしながら、他の脱水方法も使用することができる(凍結乾燥、溶媒抽出法およびマイクロ波処理など)。
【0017】
フラワーが脱水される温度を脱水温度と称する。脱水工程において、フラワーは、フラワーのゲル化温度未満の温度で加熱されることが好ましい。したがって、一実施形態において、フラワーの温度は脱水の継続期間の間、ゲル化温度未満である。しかしながら、ゲル化温度を越える温度に一過性およびわずかに上昇しても、ゲル化をもたらすのに十分ではないことが理解されるであろう。それ故、別の実施形態において、フラワーは、フラワーの温度が、連続して5秒より長い期間、ゲル化温度より著しく高くならないように加熱される。「ゲル化温度より著しく高くない」とは、ゲル化温度より高いが5%を超えない範囲で高い温度を意味する。フラワーの温度を、フラワーがゲル化温度に達することなく、フラワーが脱水される温度に急速に昇温させることが好ましい。
【0018】
一実施形態において、脱水後、複屈折によって判定されるような検出可能なゲル化はフラワー中になく、また、フラワーは、明細書中で述べる改良された特性の1つあるいは全てを示す。
【0019】
フラワーが脱水された後、フラワーはさらに加熱される。一実施形態において、さらなる加熱工程中に、フラワーからさらなる水分の損失はない。別の実施形態において、さらなる加熱は、実質的な水分の損失なしに行なわれる。「実質的な水分の損失なし」とは、さらなる水分の損失が、製品重量の2%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは、0.5%未満であることを意味する。しかしながら、含水量は、加熱工程中に1.5%未満まで減少すべきでない。より明確にいうと、もし脱水工程後のフラワーの含水量が4%であれば、さらなる加熱工程後のフラワーの含水量は2%以上であり、好ましくは、3%以上であり、より好ましくは、3.5%以上である。もし脱水後の含水量が2%であれば、さらなる加熱工程後の含水量は1.5%以上である。なぜなら、加熱工程は、華氏330度(165.6℃)以下の温度で行なわれ、脱水フラワーの含水量は4.1%以下であり、、加熱工程の間にゲル化が発生するとは予期されない。したがって、一実施形態において、脱水フラワーは加熱工程の間にゲル化されない。
【0020】
加熱工程は、フラワーの吸水能力の増加に寄与する。特定の理論に拘束されることを意図しないが、吸水能力は、少なくとも一部は、フワラー中のプロテインの変性、および/またはデンプン粒の改変に起因して増加すると考えられる。「変性」とは、プロテインの構造(たとえば、二次および/または三次構造)が改変される(すなわち、変化する)ことを意味する。プロテインの変性の多くは、加熱工程中に発生するが、幾つかのプロテインの変性は、脱水工程中に発生し得る。デンプン粒は、無傷且つ識別可能なままである一方、加熱工程中に、デンプン粒の構造が、予め潜在していた水結合ドメインが、水を吸収するために利用できるように、変化すると考えられる。
【0021】
一態様では、本発明は、フラワーを熱処理する方法であって、
a)フラワーを準備する工程;
b)前記フラワーの含水量が1.5〜4.1%に減少するように、且つ前記フラワーが脱水工程中にゲル化(ゼラチン化)しないように、前記フラワーを熱的に脱水する工程;および
c)フラワーの含水量が、この加熱工程中に1.5%未満にならないように、前記脱水フラワーを加熱して、熱処理フラワーを得る工程
を含む方法を提供する。
当該熱処理フラワー中の総プロテインの少なくとも7%が変性される。熱処理されたフラワーは、未処理のフラワーに比べて、少なくとも3.0%の水分吸収の増加を示す。一実施形態において、前記方法は、本質的に、工程a)、b)およびc)からなる。別の実施形態において、前記方法は、本質的に、工程a)、b)、c)およびd)からなる。ここで、工程d)は、熱処理フラワーの含水量を増加させるために(たとえば、6〜10%に)、熱処理フラワーに水を添加する工程である。また、別の実施形態において、前記方法は、工程a)、b)およびc)からなるか、あるいは工程a)、b)、c)およびd)からなる。
【0022】
脱水工程および加熱工程は、一体化(複合化)した熱処理プロセスとして実行される(たとえば、脱水と加熱は一単位の操作で実行される)ことができ、または分離した工程として実行される(たとえば、脱水と加熱は二単位の操作として実行される)ことができる。工程が、一体化された加熱プロセス中で実行される場合、フラワーを囲い(装置)に入れ、ゲル化を伴わず、もしくは最小限のゲル化を伴って脱水(水分を1.5〜4.1%に減ずる)が生じるような、所定の温度・所定の期間に、フラワーをかけることができる。その後、脱水されたフラワーは、同じ囲い中で(同一またはより高い温度で)加熱され続ける。分離された工程として行なわれる場合、フラワーは、まず水分を1.5〜4.1%に減少させるために、フラワーが急速に脱水されるコンディション下(例えば、フラッシュ・ドライヤー内)で脱水され、その後、前記脱水されたフラワーは、同一または異なる囲い(装置)内で加熱されることができる。たとえば、並流エアフロー・ドライヤー内でフラワーを脱水した後、フラワーを加熱するために熱交換器を使用することができる。もし、加熱工程が同じ装置内で行なわれる場合、工程は連続して行なわれることができ(フラワーは工程と工程の間に冷却されてもよい)、あるいは、工程は一体化プロセスにおいて行なわれることができる。プロセスが分離した工程として実施される場合、工程と工程の間にフラワーは冷却されてもよく(所望により貯蔵されてもよい)、あるいは、フラワーは直ちに次の工程に移されてもよい(何ら介在する工程なく、およびフラワーがかなりの程度まで冷却されることなく)。
【0023】
一実施形態では、脱水工程は、華氏180〜245度(華氏180〜245度(82.2〜118.3℃)の間の全ての整数を含む)の間の製品(フラワー)出口温度(フラワーがフラッシュ・ドライヤーを出るときに測定されるフラワーの温度)を有する並流エアフロー・ドライヤー(本明細書中でフラッシュ・ドライヤーとも称する)内で分離した工程として実施される。一実施形態では、製品出口温度は、華氏205〜225度(96.1〜107.2℃)が好ましい。滞留時間、すなわちフラワーがフラッシュ・ドライヤー内にある時間は、5〜20秒(5〜20秒の間の全ての整数を含む)である。この脱水工程中に、含水量は、1.5〜4.1%の間(1.5〜4.1の間の全ての整数と小数第一位の値を含む)に低減される。フラッシュ・ドライヤー内で、フラワーは、並流の気流中に運ばれた分散したフラワー顆粒として(フラワーの有効表面積を増やすために)ドライヤー内に導入される。並流エアフロー・ドライヤーは、直接的な動的な加熱システムの一例である。「直接的な」とは、独立して加熱された空気との接触により、フラワーが加熱されることを意味する。「動的な」とは、フラワーが空気の連続流に曝されることを意味し、クローズドシステム中で、例えば静的システムの一例であるキャビネット型ドライヤー(例えば、オーブン)中で、空気の静止質量に曝されないことを意味する。
【0024】
一実施形態において、加熱工程は、ジャケット形熱交換器内で、分離された工程として実施される。たとえば、加熱工程は、華氏260〜330度(華氏260〜330度(126.7〜165.6℃)の間の全ての整数を含む)のジャケット温度を有する熱交換器(Solidaire(登録商標)熱交換器など)中で実施されることができる。フラワーは、2〜6分間(2〜6分の間の全ての整数を含む)加熱される。これは間接的な加熱システムの一例である。「間接的な」とは、ジャケット形熱交換器内を循環する熱媒体を経てフラワーに適用される熱によって、フラワーが加熱されることを意味する。
【0025】
一実施形態において、脱水および加熱工程は、静的システム中で、一体化プロセスとして実施される。たとえば、プロセスは、対流オーブン(例えば、実験室規模のラックオーブンや同等のもの)内で実施されることができる。一体化された脱水および加熱工程が、静的システム中で実施されるプロセスの例には、華氏290〜330度(143.3〜165.6℃)で2〜20分間(華氏290〜330度および2〜20分の間の全ての整数を含む)、対流オーブン内でフラワーを加熱することが含まれるが、これに限定されない。好ましくは、フラワー試料は、華氏295〜325度(146.1〜162.8℃)で加熱される。好ましくは、一体化プロセスは、2〜8分間(2〜8分の間の全ての整数を含む)実施され、より好ましくは、3〜5分間実施される。一実施形態において、フラワーは、華氏290度(143.3℃)で5分間加熱される。別の実施形態では、華氏320度(160℃)で3分間加熱される。一体化された加熱処理プロセス中で、華氏350度(176.7℃)より高い温度で3分以上熱処理されたフラワーは、結果的に、望ましくない特性を有するフラワーになった。
【0026】
大規模の産業プロセスに好適な一実施形態では、フラワーは、並流エアフロー・ドライヤーを使用して脱水され、そして、脱水されたフラワーは、Solidaire(登録商標)熱交換器を使用して熱処理される。
【0027】
一般に、工場規模の熱処理(たとえば、1時間あたり10ポンドより多いフラワーを熱処理する)では、脱水工程は、急速な脱水コンディション下で(例えば、フラッシュ・ドライヤー内で)分離された工程として実施される。大規模の熱処理において、静的な雰囲気の装置(Solidaire(登録商標)熱交換器など)内で脱水と加熱工程の両方を華氏290度(143.3℃)未満の温度で実施すること、または動的な加熱装置(フラッシュ・ドライヤーなど)内で高温(たとえば、華氏270度(132.2℃))で実施することは、質の悪いベーキング性能を有するフラワーをもたらす結果となることが見出された(実施例8参照)。小規模の(すなわち、実験室規模の)(たとえば、10ポンド未満のフラワーを熱処理する)熱処理では、対流オーブン内で脱水工程と加熱工程を複合して一体化プロセスとし、それによってフラワーの含水量を低下させる(たとえば、1分未満で12.3%を4.1〜1.5%に減少させる)ことが、大規模な二段階プロセスで実現されたものと同様の改良された性質を有するフラワーを提供することが見出された。静的なキャビネット型のドライヤー内で熱処理を行なう場合、温度は一般に大規模な二段階プロセスで使用される温度よりも高い。何らかの特定の理論に拘束されることを意図しないが、実験室規模と工業規模のプロセスで要求される加熱プロトコルの違いは、少なくとも一部は、産業規模のプロセスで典型的に使用される加熱装置と、典型的な実験室規模のオーブンとを比較した際の、空気質量とフラワー質量の比の違いおよび加熱環境の違い(静的vs動的)に起因すると考えられる。
【0028】
一実施形態において、二単位の作業工程では、脱水工程は、並流エアフロー・ドライヤー内で、華氏180〜245度(華氏180〜245度(82.2〜118.3℃)の間の全ての整数を含む)、好ましくは、華氏205〜225度(華氏205〜225度(96.1〜107.2℃)の間の全ての整数を含む)の温度で実施され、フラワーのオーブン内での滞在時間は5〜20秒(5〜20秒の間の全ての整数を含む)である。脱水されたフラワーは、その後、間接的な加熱装置(ジャケット形熱交換器など)内で、ジャケット温度華氏260〜330度(華氏260〜330度(126.7〜165.6℃)の間の全ての整数を含む)、好ましくは、華氏290〜325度(華氏290〜325度(143.3〜162.8℃)の間の全ての整数を含む)で、2〜20分間(2〜20分の間の全ての整数を含む)、好ましくは、2〜6分間(2〜6分の間の全ての整数を含む)加熱される。熱交換器を出る際の製品(フラワー)温度(出口温度)は、華氏245〜320度(華氏245〜320度(118.3〜160℃)の間の全ての整数を含む)、好ましくは、華氏270〜305度(華氏270〜305度(132.2〜151.7℃)の間の全ての整数を含む)である。フラワーの含水量は、その後、6〜10%に、且つ水分活性(Aw)0.30〜0.35に増加される。
【0029】
別の実施形態において、一単位の作業工程(一体化された工程)では、フラワーは、対流オーブン内で、華氏290〜330度(143.3〜165.6℃)で2〜20分間(華氏290〜330度および2〜20分の間の全ての整数を含む)加熱される。好ましくは、フラワー試料は、華氏295〜325度(華氏295〜325度(146.1〜162.8℃)の間の全ての整数を含む)で加熱される。好ましくは、一体化プロセスは、2〜8分間(2〜8分の間の全ての整数を含む)、より好ましくは、3〜5分間(3〜5分の間の全ての整数を含む)実施される。
【0030】
一実施形態において、本発明は、含水量が1.5〜4.1%の間のフラワーを提供すること、およびそのフワラーを、ジャケット形熱交換器(Solidare(登録商標)熱交換器など)内で、華氏260〜330度(126.7〜165.6℃)で2〜20分間、好ましくは2〜8分間、加熱することを含む。
【0031】
フラワーは、当業者に認識されるいずれかの方法によって加熱されることができ、これには、バッチ法、連続フロー法が含まれるが、これらに限定されない。本発明において有用な装置の例には、工業用オーブン、従来式のオーブン、マイクロ波オーブン、流動床、デキストリナイザー、ドライヤー、ミキサー、およびブレンダー(加熱装置を備えたもの)、および他のタイプの加熱器であって、水蒸気が蓄積し、フラワー上で凝結しないように、空気への通気口が取り付けられている装置が含まれるが、これらに限定されない。たとえば、回転式ドラム・ドライヤーは、本発明の方法を実行するために、連続流構成にて使用される。このようなドライヤーは市販されている。
【0032】
典型的に、空気の質量/体積:フラワーの質量/体積の比が1より大きい、好ましくは5より大きい、動的な加熱装置が、フラワーを脱水するのに好適である。本発明にかかる、フラワーを急速に脱水するために使用できる動的加熱装置の例には、並流エアフロー・ドライヤー、回転式ドライヤー、箱形ドライヤー、サイロ・ドライヤー、タワー・ドライヤー、トンネル型ドライヤー、ベルト・コンベア式ドライヤー、Yamato(登録商標)ドライヤー、流動層ドライヤー、空気圧/フラッシュ・ドライヤー、および撹拌型ドライヤーが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
フラワーの水分吸収を増加させるために、脱水フラワーを加熱するのに使用できる静的な熱交換器の例には、チューブ状の熱交換器(Solidaire(登録商標)熱交換器など)、ダイレクト熱交換器、および屈折性ドライヤーが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
一般に、一体化(脱水、加熱)プロセスでフラワーを熱処理するのに好適な装置は、フラワーの質量/体積よりはるかに大きい空気の質量/体積を有する。典型的には、そのような静的な加熱装置は、空気の質量/体積:フラワーの質量/体積の比が、9より大きく、好ましくは200より大きい。一体化プロセスでフラワーを加熱処理するために使用できる静的な加熱装置の例には、何らかのキャビネット型ドライヤーまたは対流オーブン(例えば、典型的なラボラトリー・オーブン)、および同等のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
一実施形態において、外部からの水分は、フラワーが加熱される雰囲気に添加されない。本発明の加熱温度において、雰囲気の相対湿度は、2%以下である。
加熱処理後のフラワーの含水量は、1.5〜4.1%である。一般的には、冷却後、加熱処理したフラワーは、少なくとも2%の含水量を有する。これは、所望のレベルに増加させることができる。たとえば、熱処理フラワーの含水量は、水分活性が0.15〜0.55(0.15〜0.55の間の小数第二位の全ての値を含む)、好ましくは、0.25〜0.45および0.30〜0.35、より好ましくは、0.33となるように、6〜10%に増加させることができる。たとえば、加熱後、フラワーは、所望の含水量が得られるように、水蒸気を含む雰囲気に曝される。
【0036】
一実施形態において、熱処理の前、途中、および/または後に、添加物がフラワーに添加されてもよい。もし、熱処理後に加える場合は、添加物は、フラワーが冷却される前または後に添加される。そのような添加剤の例には、ビタミン、ミネラル、塩、香味料、および酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
本発明の熱処理は、少なくとも7.0%のフラワー中のプロテインが変性される結果をもたらす。これは「Orth and Bushek, Cereal Chem., 49:268 (1972)」に記載されているグルテン変性テストによって測定される、酸可溶性プロテインの量によって測定される。このテストは、希酢酸中のプロテインの損失を測定することによってグルテンの変性を測定する。一実施形態において、プロテインの7.0〜13.0%(7.0〜13.0%の間の全ての整数と小数第一位の値を含む)が変性される。種々の実施形態において、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、および13.0%のプロテインが変性される。本明細書中で使用される「プロテイン」は、フラワー中に存在する全てのプロテインを意味する。一般に、グルテン形成プロテイン(たとえば、グリアジンおよびグルテニン)は、フラワー中の主要なプロテインであり、時には、フラワー中の総プロテインの80%以上を占める。
【0038】
本明細書中で記載される脱水と加熱のプロセスは、熱処理後に、1.5%〜4.1%、好ましくは、1.5%〜3.6%の間の含水量;0.03〜0.10の水分活性(Aw);および、未処理フラワーのプロテインと比べて、少なくとも7.0%が変性されているプロテイン;を有するフラワーをもたらす。プロテインの変性が6%未満の場合、フラワーは所望の品質および/または性能を有するドウを作り出さないことが観察された。
【0039】
明細書中に記載されるプロセスは、そのように処理されていないフラワーの粒度分布とは異なる粒度分布を有するフラワーをもたらす。一実施形態において、明細書中に記載される熱処理プロセスは、少なくとも80%の粒子が90〜150ミクロンの大きさであるフラワーをもたらす。別の実施形態では、粒子の少なくとも80%が、90〜150ミクロンの大きさであり、且つ粒子の少なくとも7%が、150〜250ミクロンの大きさである。
【0040】
熱処理フラワーは、未処理のフラワーと比べて、減少した微生物負荷を有する。
【0041】
別の態様において、本発明は、明細書中に記載されたプロセスによって製造された熱処理フラワーを提供する。また、別の態様では、本発明は、明細書中に記載された含水量、Aw、変性プロテイン含有量および粒子サイズを有するフラワーを含む組成物を提供する。一実施形態において、本発明は、6〜10%の含水量、0.25〜0.45、好ましくは0.30〜0.35のAw、7〜13%の変性プロテインレベルを有する熱処理フラワーを提供する。別の実施形態において、本発明は、6〜10%の含水量、0.25〜0.45、好ましくは0.30〜0.35のAw、7〜13%の変性プロテインレベルを有し、且つ、粒子の少なくとも80%の粒径が、90〜150ミクロンの間にある熱処理フラワーを提供する。
【0042】
本発明において有用なフラワーのタイプには、穀物に由来するものが含まれる。その例には、小麦、軟質もしくは硬質小麦、デュラム小麦、大麦、米、ジャガイモ粉、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。グルテン形成プロテインを含むフラワー(たとえば、小麦粉)およびグルテン形成プロテインを含まないフラワー(たとえば、米、タピオカ、およびジャガイモ粉)のいずれも、本発明において有用である。製粉工程のいずれかの段階で得られた如何なる等級のフラワー、粉または粗挽き粉は、本発明にかかる熱処理にかけられることができる。明細書中で説明された本発明の研究成果(たとえば、熱処理フラワーの改良された吸収特性および熱処理フラワーから作られたドウの望ましいベーキング特性)は、プロテインを含み、機能性のために水和を要求する、乾燥状態の粉状またはミルにかけられた有機物質にも当てはまる。
【0043】
本発明にかかる熱処理にかけられたフラワーは、ドウを作るために使用されることができる。ドウは冷凍されても冷凍されなくてもよい。本発明において有用なドウの一例は、フラワー、水、膨張剤(イーストまたは化学膨張剤のいずれでもよく、両方でもよい)および任意に1つ以上の添加成分(たとえば、鉄、塩、安定剤、フレーバー・オイル、酵素、糖、ナイアシン、少なくとも1つの脂質源、リボフラビン、コーンミール、硝酸チアミン、香味料など)を含む。
【0044】
一例において、本発明のドウは、7〜14%の圧搾イースト、1〜6%の高フルクトース・コーンシロップ、0.2%のデキストロース、0.5〜2%のオイル、乳化剤、安定剤、および水を含む。ドウの組成および製造方法は、当該分野において知られている。ドウの形成および方法は、米国特許出願第11/641,300号に記載されており、そのドウ形成および方法は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0045】
本発明は、改良された特性を有するフラワーを提供する。これらの改良された特性には、フラワー自体の特性、熱処理フラワーから作られたドウ(冷凍ドウを含む)の特性、および、ドウ(冷凍ドウを含む)のベーキング特性が含まれる。これらの改良された特性には、増加された水分吸収、増加されたファリノグラフ品質番号、低減された付着性、低減された粘着性、および低減された凝集性が含まれるが、これらに限定されない。これらの改良された特性は、実施例3〜14に論じられている。製造プロセスにおいて、低減された粘着性は、製造装置への材料の粘着が少なくなるので、加工処理能力が増加するという利点を有する。たとえば、熱処理フラワーから調製された高水分のドウを加工することができる。
【0046】
一実施形態において、一以上の以下の現象が観察された:熱処理フラワーから作られたドウの、水分吸収、ファリノグラフ品質番号、耐性指標、および付着性は、未処理のドウの同じ特性に比べて、少なくとも5、6、7、8、9または10%改良された。別の例において、これらの特性は、10%を超えて改良された。このように、本発明の熱処理ドウでは、水分吸収、ファリノグラフ品質番号、耐性指標または付着性の一以上の特性が、少なくとも3、4、5、6、7、8、9または10%まで増加されることが望ましい。さらに、熱処理フラワーおよびこれから作られたドウは、未処理フラワーおよびこれから作られたドウと、実質的に同じ保存可能期間特性を示す。
【0047】
本発明の熱処理フラワーから調製されたベークド製品は、熱処理されなかったフラワーから作られたものと比べて、望ましい特性(例えば、焼成比体積)を有する。例えば、10〜12%のプロテインを有する熱処理フラワーから作られたベークド製品は、同じプロテイン含有量を有する未処理のフラワーを使用して作られたものよりも、高い焼成比体積を有する。
【0048】
一態様において、本発明は、熱処理フラワーから作られたドウから調製されたベークド製品を提供する。一実施形態において、前記ベークド製品は、最大で15%未満のプロテインを含む未処理フラワーから作られたベークド製品と比べて、同等かより高い焼成比体積と、より低い%の固形分を有する。
【0049】
別の実施形態において、プロテイン含有量が10〜12%の熱処理フラワーから作られたドウから調製されたベークド製品の焼成比体積(BSV)は、熱処理されなかったフラワーを用いて調製されたドウから作られたベークド製品と比べて、少なくとも5%増加した。
【0050】
本発明の一態様は、フラワーを熱処理し、それによって、フラワーがより高いプロテイン含有量を有するフラワーのように機能する(例えば、ドウの形成およびベーキングにおいて)ように、その性能を改良することである(実施例3参照)。例えば、11.3%のプロテイン含有量を有するフワラーが、本発明にかかる熱処理にかけられたとき、その性能が、12.4%のプロテインを有するフラワーの性能に匹敵することが確認された(実施例10参照)。何らかの特定の理論に拘束されることを意図しないが、熱処理された低プロテイン・フラワーの改良された性能は、明細書中に記載されているフラワーの特性の改良に起因する。
【0051】
別の態様において、改良された性能を達成するために、非-熱処理フラワー(同じプロテイン含有量を有する)と比べて、より少ない量の熱処理フラワーを使用することができる。例えば、熱処理フラワー(プロテイン含有量10〜12%)を用いて作られたベークド製品は、同じプロテイン含有量を有するフラワーと比べて、増加されたBSVと低減された全固形分(増加された水分吸収に起因する)を有する。別の例として、熱処理フラワー(12%を越えるプロテイン含有量を有する)を用いて作られたベークド製品は、同じプロテイン含有量を有するフラワーと比べて、同程度のBSVと低減された全固形分を有する。
【0052】
また、本発明の別の態様では、季節変動のある穀物から作られたフラワーは、熱処理フラワーが類似したベーキング性能を供するように熱処理される。
【0053】
一実施形態において、本発明の熱処理ドウから調製されたベークド製品は、最大で15%未満のプロテインを含む未処理フラワーから作られたベークド製品と、同様に機能する。別の実施形態では、熱処理ドウから作られたベークド製品は、最大で15%未満のプロテインを含む未処理フラワーから作られたベークド製品と比べて、同等かより高い焼成比体積およびより低い%の固形分を有する。また、別の実施形態では、熱処理ドウから作られたベークド製品は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15%未満のプロテインを含む未処理フラワーから作られたベークド製品と比べて、同等かより高い焼成比体積およびより低い%の固形分を有する。
【0054】
以下の実施例は、本発明を説明するために存在する。それらは、如何なる方法における限定も意図していない。
【実施例1】
【0055】
この実施例は、ラックオーブン内でのフラワーの熱処理を記述する。
メッシュボールを使用して、フラワー(150g)は、約0.1cmの厚みを有する金属トレイ(62cm×42cm)の上に篩われた。2つの金属トレイが、対流熱風ラックオーブン内で同時に加熱された。フラワーの低比熱(1.4〜1.8J/g・℃)、高い加熱表面積(2064cm2)、低質量(150g)、および対流熱風ラックオーブン内の高い表面熱伝達係数により、フラワーの温度は、1分未満でオーブン温度に達した。処理後、トレイは、すぐにオーブンから取り除かれ、冷却するためにテーブルの上に置かれた。冷却後、フラワーは、プラスチック容器に移され、次の使用まで室温で貯蔵された。
【実施例2】
【0056】
実施例1に記載したように熱処理されたフラワーは、吸水、シート力、およびベーキング・クオリティに対する熱処理の効果を決定するため、さらなる研究に使用された。ドウ形成中のフラワーの吸水の変化は、ファリノグラフ(Brabender, Inc.)を使用してモニターされた。我々の結果は、十分にコントロールされた熱処理が、予期できない増加された吸収および増加された安定時間をもたらすことを示す。使用した時間と温度の組み合わせは、温度が華氏255〜330度(123.9〜165.6℃)および時間が1〜20分であった。この結果は、華氏255度未満の温度は、実際適用するには長すぎる処理時間を要求することを示す。華氏330度を越える温度は、不快な臭いをもたらし、このように熱処理したフラワーを使用して調製されたドウは、不十分に機能した。3つの異なるプロテイン濃度(13.0、12.4、および11.9%)のフラワーが、3種類の温度(華氏260度(126.7℃)、華氏290度(143.3℃)、および華氏320度(160℃);+華氏8度および−華氏2度のオーブンコントロールの変動性を伴う)で、フラワーのプロテイン含有量に応じて少なくとも4種類の処理時間で加熱された。
【0057】
300gのミキシングボウル・ファリノグラフ‐E(ドイツ、デュイスブルク、Brabender(登録商標)OHG)が、フラワーの吸水を評価するため、および混合中のドウの安定性と他の特徴を測定するために使用された。AACC法(54−21)が、少し変更を加えただけで分析のために使用された。我々の研究において使用された混合温度は21℃であり、公表されている方法では30℃である。より低い混合温度は、冷凍ドウ製造のためのドウ混合をシミュレーションするために使用された。全てのフラワー試料が21℃でテストされたので、テスト手順の前記変更にかかわらず、種々のフラワーの結果は比較可能なはずである。フラワー試料は、Ohaus水分分析器(スイス)を使用して、含水量を分析された。水分分析器は、試料から水分を蒸発させ、水分の減少を測定するためのハロゲンランプを備えていた。フラワー試料は、分析まで、水分の蒸発を防ぐために密閉容器内に貯蔵された。サーモスタットと循環ポンプは、機器を使用する少なくとも1時間前にオンにされた。ビュレットは、室温で脱イオン水で満たされた。テストプログラムは、インプットとして、以下のパラメータを用いて構成された;ミキサーサイズ:300g;評価:AACC;コンシステンシー:500Brabender単位(FU);テスト時間:20分(必要に応じて、より長く);スピード:63rpm。ミキサーボウルに添加されるフラワーの量は、フラワーの含水量に基づいて計算された。計算は、ミキサーボウルに添加される乾燥固形分の量が、14%の水分を有するフラワー300gを添加することによって得られる量と同程度になるように行われた。ボウルは、蒸発を防ぐためにガラスプレートで覆われた。混合は、約20分または必要に応じてより長い時間、続けられた。
【0058】
テストの終わりに、ファリノグラフ(トルク(BU)vs時間を描く)が得られた(図1)。ファリノグラフは、トルク単位(BU)vs時間の曲線である。その曲線は分析され、結果は以下のように表わされる。
吸水:以下の2つの値で示される。
1.500BUの所望のコンシステンシーに対して補正された吸水
2.所望のコンシステンシーおよび14%の水分ベースに対して補正された吸水
発達時間:テストの開始(水の添加)と、低下が始まる直前のトルク曲線の点との間の時間
安定性:トルク曲線の上部トレースと、コンステンシーラインとの第1および第2交点の間の時間
耐性指標(MTI):ピークにおける曲線の頂点から、ピークに達してから5分後に測定された曲線の頂点までの、Brabender単位(BU)の差
ブレークダウン時間:混合の開始から、ピークポイントから30単位減少するまでの時間
ファリノグラフ品質番号:曲線が最大値後、30FUまで減少した際の曲線のポイント。この番号は、フラワーの品質の測定値である。質の悪いフラワーは、初期に素早く弱まり、これは低い品質番号に対応する。一方、強いフラワーは、遅れてゆっくり弱まり、高い番号を示す。
本明細書中で使用される「ドウ強度」という用語は、以下の特性:耐性指標、ファリノグラフ品質番号、および同類のものの一以上を意味する。
【実施例3】
【0059】
この実施例は、ドウの粘着性、付着性および凝集性の測定によって、本発明のドウの増加されたシート力(sheetability)を記述する。TAXT2(英国、サリー州、Stable Microsystems Ltd.)と関連して、SMS Chen-Hosene Dough Stickiness Rigが、ドウの粘着性、付着性および凝集性を測定するために使用された。この方法は、過混合、過剰な水分の添加、プロテイン分解酵素の過活性、小麦粉の種類と組成の違いに起因するドウの粘着性を調査するために広く使用されている。
【0060】
ドウ試料が、フラワー、水、イースト、塩および他の少量の成分(例えば、酵素、ドウ・コンディショナーなど)を使用して調製された。ドウで使用されるフラワーの種類および水の量を、以下の6つの処理物を得るために変化させた:5、8および10%の追加水分(フラワーベースで)を有する未処理フラワー;5、8および10%の追加水分(フラワーベースで)を有する処理フラワー。追加水分とは、調合法において推奨されている水分含有を越えて添加された水のことを意味する。処理フラワーは、フラワーの初期の含水量の違いによって生じる如何なる作為も避けるために、未処理フラワーと同程度の含水量に調節された。各ドウ試料は調製され、ドウ混合の終わりから10分以内に、付着性を分析された。
【0061】
セルを使用する前に、ピストンを動かし、試料チャンバをその最大容量に増加させるために、内部スクリューが回転された。調製されたドウの少量が、チャンバ内に置かれ、余分なドウは、チャンバの上端と同一平面になるように、へらで取り除かれた。内部スクリューは、その後、孔を通して少量のドウを押し出すために回転された。この最初の押出し物は、へらを使用して、蓋表面から取り除かれた。スクリューは、1mm高さのドウ試料を押し出すために、再度回転された。調製されたドウの表面を、押出しによって生じたストレスを解消するために30秒間休ませる間、水分の損失を最小限にするために、露出した試料表面の上にキャップが被された。その後、カバーは取り除かれ、ロードセルに付属している25mmのシリンダープローブの真下のセルの上に置かれた。テストは、以下のパラメーターを使用して開始された;プレ-テストスピード:2mm/秒;テストスピード:1mm/秒;ポスト-テストスピード:10mm/秒;距離:5mm;力:40g;時間:0.2秒;トリガータイプ:自動−5g。ドウは、その後、へらを使用して蓋の表面から取り除かれ、再び押し出されて、上述のようにテストが繰り返されてもよい。
【0062】
分析に関する典型的な力−時間のプロットを図2に示す。試料評価に対する特定の影響力の値は、所定のソフトウエアによって自動的に得ることができる。最大力の表示、すなわちマーカー1における最も高いピーク、正のエリアおよびマーカー1と2の間の距離は、全てドウのレオロジー特性の指標である。粘着性は、マーカー1における最大力として測定される。付着仕事量(付着性)は、マーカー1と2の間の曲線の下のエリアとして計算される(影付きの部分で示されるように)。凝集性またはドウ強度は、マーカー1と2の間の距離として測定される。図3に示されるように、未処理フラワーのドウでは、付着性は、水和が5、8、10%と増加するに連れて増加する。処理フラワーのドウは、未処理ドウより低い付着性を有する。
【実施例4】
【0063】
この実施例は、ラックオーブン内で、一体化加熱プロセスによって熱処理されたフラワーの改良された特性の例を示す。
【0064】
12.4%のプロテイン含有量を有し、5および8%の増加した水分吸水を有するフラワーを使用して焼かれたブレッド(一体化された脱水および加熱プロセスで熱処理された)。両方のブレッドのセットは、そのベーキング性能を基に評価された。
【0065】
【表1】
【0066】
上記表中および図4および5に示されるデータは、実施例2で述べた実験手順を使用して得られた。図4において、華氏290度(143.3℃)で8分間熱処理された12.4%プロテイン含有フラワーで観察された安定性とファリノグラフ品質番号は、5分間処理されたフラワーと比べて増加する。華氏320度(160℃)で、4分間処理したフラワーは、2分間処理したフラワーのそれと比べて、より高い安定性とファリノグラフ品質番号を示す。これらの温度において、同様の傾向が、図4に示される他の測定パラメータについて観察される。また、吸収(14%水分)は、所定の温度における熱処理時間が増加するに連れて増加する。
【0067】
プロテイン含有量が10.9%〜13.1%の範囲のフラワーを熱処理し、そのファリノグラフデータを図5に示す。一般に、低プロテインの熱処理フラワーから作られたドウは、高プロテインの未処理フラワーから作られたドウに匹敵する安定性と吸収を有する。
【実施例5】
【0068】
この実施例は、酸可溶性フラクションによって測定されるプロテイン変性を示す。表2に示すデータは、「Orth and Bushk, Cereal Chem., 49;268 (1972)」に記載される試験手順を使用して得られた。
【0069】
【表2】
【実施例6】
【0070】
この実施例は、以下のように熱処理されたフラワーの粒径特性を記述する。試料Aは、華氏275度(135℃)でSolidaire(登録商標)熱交換器のみで熱処理された。試料Bは、未処理の対照試料である。試料Cは、本発明に従って熱処理された[華氏220度(104.4℃)で10秒間フラッシュ・ドライヤー内で脱水、その後、Solidaire熱交換器(華氏270度(132.2℃)のジャケット温度;華氏248度(120℃)の内部温度)内で2.7分間の熱処理]。
【0071】
【表3】
【0072】
フラワー顆粒のサイズは、様々な試料によって異なることが観察された。
【0073】
表3の値は、適切なメッシュサイズのスクリーンの上にフラワー試料を置くことによって測定された。表3の値は、スクリーン上に残ったフラワーのパーセンテージである。
【実施例7】
【0074】
この実施例では、熱処理フラワーの微生物分析を記述する。微生物分析は、標準のプロトコルを使用して行なわれた。熱処理フラワーは、12.4%プロテイン・フラワーをラックオーブン内で290℃で5分間加熱したものである。
【0075】
【表4】
【実施例8】
【0076】
この実施例は、熱処理フラワーから調製されたベークド製品の特性を記述する。
【0077】
【表5】
【0078】
これらのデータは、熱処理フラワーから焼成されたブレッド中の水分%が、未処理フラワーから作られたブレッドより高い(より低い固形分%)ことを示す。
【実施例9】
【0079】
この実施例は、12.4%のプロテインを含有するフラワー(すなわち、標準プロテイン)を使用して、熱処理フラワーおよび未処理フラワーから作られたフランスパンの冷凍ドウの保存可能期間を記述する。処理フラワーと比べて、未処理フラワー製品はより平らであった。
【0080】
【表6】
【0081】
冷凍ドウ試料から作られた製品の焼成比体積(BSV)(mL/g)は、対照より高かった(表6および図7のデータ参照)。両方の試料は、その処方中に同程度の水を有する。より多量の水は、イースト細胞およびドウ/グルテン構造に害を及ぼす大きな氷の結晶をもたらす。熱処理は、水を、結晶形成に利用されない形に保つこと、それゆえ、より高い体積とベークド製品の優れた輪郭を示すことに成功した。対照では、水は、ドウ基質によって保持されることができる範囲を超え、それゆえ、より低い体積とより平らな輪郭を示した。
【実施例10】
【0082】
本実施例は、低プロテイン・フラワーのベーキング性能が、熱処理によって、高プロテイン・フラワーのそれに改良されることを実証する。
【0083】
3バッチ分のブレッドが、スポンジ・ドウの手法を使用して製造された:
バッチ1:12.4%プロテイン・フラワー、栄養強化、未処理であり、処方中に63%の吸収を伴う;
バッチ2:11.3%プロテイン・フラワー、栄養強化、未処理であり、処方中に58%の吸収を伴う;
バッチ3:11.3%プロテイン・フラワー、栄養強化、処理され(華氏290度(143.3℃)、6分)、処方中に63%の吸収を伴う。
【0084】
スポンジ・ドウは、フラワー、水、イースト、およびSSLを使用して作られ、2時間30分インキュベートされた。インキュベーション後、スポンジは、ドウを形成するために、フラワー、水、塩、糖、脱脂粉乳、ショートニング、アスコルビン酸および酵素と混合された。ドウは分割され、成形され、70分間プルーフされた。プルーフされたドウは、華氏375度(190.6℃)で13分間焼成された。焼成製品の体積(mL)、及び比体積(mL/g)を以下に示す。データは、11.3%プロテイン・フラワーを熱処理することが、未処理の対応物と比べて、体積および焼成比体積を向上させ、それを12.4%プロテイン・フラワーと同程度にすることを示す。
【0085】
【表7】
【実施例11】
【0086】
本実施例は、二単位の操作(フラッシュ・ドライヤーによる脱水、および、ジャケット形熱交換器による加熱)を使用した製品の熱処理を実証する。
【0087】
フラワー[12.4%プロテイン、12.0%含水量(ウェットベース、またはフラワー1ポンド当たりの水(ポンド))、13.6%含水量(ドライベース、または乾燥固形分1ポンド当たりの水(ポンド))]が脱水され、その後、熱処理された。脱水は、フラワーの含水量を低下させ、(1)所望の時間と温度条件でのより効果的な熱処理のために、フラワーの比熱を低下させるために、および(2)熱処理後に、デンプン粒を無傷のままにしておくために、重要である。12%および8%の含水量(水(ポンド)/乾燥固形分(ポンド))のフラワーにおいて、デンプン結晶子が、融解し始める温度(すなわち、ゲル化温度)は、約華氏320度(160℃)であり(我々の処理パラメータの範囲内)、および、3%の含水量では、華氏400度(204.4℃)に増加する(Burt and Russell, 1983)。並流フラッシュ・ドライヤーでのこの実施例のマスバランス配置を図8に示す。図8において、maは空気流量(乾燥空気(ポンド)/h);mpは製品流量(乾燥固形分(ポンド)/h);W1は流入空気の含水量(水(ポンド)/乾燥空気(ポンド));W2は流出空気の含水量(水(ポンド)/乾燥空気(ポンド));w1はドライヤーに流入する製品の含水量、ドライベース(水(ポンド)/乾燥固形分(ポンド));w2はドライヤーから流出する製品の含水量、ドライベース(水(ポンド)/乾燥固形分(ポンド));Ta2はドライヤーから流出する製品の含水量、ドライベース(水(ポンド)/乾燥固形分(ポンド));Ta1はドライヤーから流出する製品の含水量、ドライベース(水(ポンド)/乾燥固形分(ポンド))。
【0088】
ドライヤーを通過するフラワーの供給量は、乾燥固形分220(ポンド)/hである。乾燥されたフラワーは、2%の水分(水(ポンド)/乾燥固形分(ポンド))を含み、それゆえ、ドライヤー内で蒸発される水の量は、水25.6(ポンド)/hとなるであろう。フラワー製品を乾燥させるために加熱され、使用される流入空気は、露点温度が華氏57度(13.9℃)であり、乾球温度が華氏75度(23.9℃)であり、相対湿度が約55%であり、この流入空気の含水量とエンタルピーはそれぞれ水0.01(ポンド)/乾燥空気(ポンド)、および28.5BTU/乾燥空気(ポンド)であった。空気は、華氏390度(198.9℃)まで加熱され、加熱の間、空気の含水量は同じままであり(水0.01(ポンド)/乾燥空気(ポンド))、加熱空気のエンタルピーは、112BTU/乾燥空気(ポンド)まで増加する。ドライヤーを通過する体積空気流量は、355SCFM(標準立方フィート/分)であり、流入空気の比体積は、13.75cu.ft/乾燥空気(ポンド)であり;したがって、空気流量は、乾燥空気1550(ポンド)/hである。華氏80度(26.7℃)でフラッシュ・ドライヤーに入った製品は、フラッシュ・ドライヤーを通過する滞留時間が約10秒(9〜11)であり、製品の出口での温度は、華氏210度(98.9℃)であった。ドライヤーを出ていく空気は、華氏240度(115.6℃)の測定乾球温度を有していた。流出空気の含水量の値を求めるために再編成された、図8のマスバランス方程式から、流出空気の含水量は、水約0.0265(ポンド)/乾燥空気(ポンド)であり、2.5%の相対湿度(心理測定的チャートより)を有した。流出空気と流入熱風の間の水分の差を考慮すると、空気は、乾燥空気1ポンド当たり0.0165ポンドの水を除去した。このように、乾燥空気1550(ポンド)/hの空気流量では、水分除去速度は水25.58(ポンド)/hであり、これは、乾燥固形分220(ポンド)/hでドライヤーに入って行き且つ出て行く製品含水量に基づいて計算された値と同程度であった。それ故、乾燥固形分1ポンドにつき、このシステムにおいて、フラワーを乾燥するために要求される乾燥空気の量は、空気流量(乾燥空気1550(ポンド)/h)を求め、且つ製品流量(乾燥固形分220(ポンド)/h)で割ることによって計算することができ、その結果、乾燥空気約7(ポンド)/乾燥固形分(ポンド)となり、これは標準的なフラッシュ・ドライヤーの乾燥空気5〜10(ポンド)/乾燥固形分(ポンド)の範囲内である。このフラッシュ・ドライヤー内でのフラワーの乾燥速度は、非常に高く、水0.695(ポンド)/(乾燥固形分(ポンド)×分)であった。
【0089】
熱処理のために、脱水されたフラワーは、華氏290度(143.3℃)の一定のジャケット温度を有するジャケット形熱交換器に搬送された。製品は、ドライヤーから搬送される間に冷却され(華氏210度(98.9℃)の製品出口温度)、熱交換器に入る前には、約華氏180度(82.2℃)になった。950rpmのパドル回転は、フラワー製品を熱交換器の内表面積に沿って、熱交換器を通過させ、パドルの角度は熱交換器の終わりに近づくに連れて栓流の輪郭を作り出し、フラワーの粒子の大部分は、2.7分間の同じ滞留時間を有する。華氏270度(132.2℃)で熱交換器を出た製品は、その後、すぐに運ばれ、外気を使用したバッグハウスを通して冷却される。製品は、バッグハウスを華氏115度(46.1℃)で出ていく。
【0090】
【表8】
【実施例12】
【0091】
この実施例は、一体化熱処理プロセスを実証する(キャビネット型ドライヤー(ラックオーブン)内での脱水および加熱)。
フラワーは、ラックオーブン内で、華氏290度(143.3℃)で5分間乾燥され、加熱された;マスバランス・フローチャートを図9に示す(項は、図8中に示される)。
【0092】
乾燥と加熱速度を最大化するために、13.6%の初期含水量(乾燥固形分1ポンド当たりの水(ポンド))を有するフラワーの薄膜は、2つのトレイ(62cm×42cm、あるいは24.4インチ×16.5インチ)の上に、約0.1cmの厚みでまぶされ、各トレイ上の初期フラワーの重量は、約150g(0.33ポンド)であった。それ故、オーブン内の総製品重量は、0.66ポンドであり、乾燥固形分として0.58ポンドである。オーブン内で加熱される流入空気は、製造に関して記載した流入空気と同様のコンディションを有した[華氏57度(13.9℃)の露点温度、華氏75度(23.9℃)の乾球温度、約55%の相対湿度、および流入空気の含水量とエンタルピーは、それぞれ水0.01(ポンド)/乾燥空気(ポンド)および28.5BTU/乾燥空気(ポンド)]。オーブンが華氏290度(143.3℃)の温度に達し、平衡化された時点で、トレイは、オーブン内の棚の上に置かれた。製品は、乾燥チャンバを通って動かないので、マスバランス方程式は、製品の速度を、製品の乾燥固形分ベースに変換するために、以下のように変換されることができる。
【0093】
【数1】
【0094】
ラックオーブンは、120CFM(1分当たりの立方フィート)の体積空気流量を有する対流熱風コンディション下で稼働し、流入空気の比体積は、13.75cu.ft./乾燥空気(ポンド)であり、空気流量は、乾燥空気527(ポンド)/hである。ラックオーブン内で華氏290度(143.3℃)・5分後のフラワーの最終含水量は、2%であった。オーブン内の製品の量に対するこのラックオーブン内で使用された空気の量は、527ポンドの乾燥空気を0.58ポンドの乾燥固形分で割ることによって計算され、乾燥固形分1ポンド当たり907ポンドの乾燥空気に相当する。流出空気の含水量(W2)のためのマスバランス方程式を解くにあたって、薄膜の製品に対する大量の対流熱風に起因して、流出空気の含水量に変化はない。また、このラックオーブン内の乾燥速度を示す図6から分かるように、1分以内で、フラワーの水分は、13.6%(ドライベース)から2.3%に減少され、乾燥速度は、水0.111(ポンド)/(乾燥固形分(ポンド)×分)(水0.111(kg)/乾燥固形分(kg)×分)であった。したがって、水分蒸散のこの高い速度と程度は、熱処理が同時に発生することを可能にし、この際、処理温度は、3%未満の含水量を有するフラワーのゲル化温度より著しく低い(Burt and Russell, 1983; Eliasson, 1980)。
【0095】
実施例11および12の熱処理は、所望のファリノグラフ特性(増加された吸収と安定性、および減少されたMHI)およびベーキング・クオリティを有するフラワーをもたらした。
【0096】
【表9】
【実施例13】
【0097】
この実施例は、質の悪いベーキング性能を有する熱処理フラワーから作られたベークド製品の例を実証する。
熱処理フラワーを使用して製造されたドウは、改良されたベーク性能を示すために、最適水準の水を含有すべきである。3バッチのフランスパンのドウが、未処理のフラワー、華氏320度(160℃)で4分間処理されたフラワー(フラワーベースで5%の水を有し、対照として使用されたものより過剰)、および華氏320度で8分間処理されたフラワー(フラワーベースで10%の水を有し、対照として使用されたものより過剰)を使用して製造された。ベークド製品の比体積は、それぞれ5.55、4.59、および3.06mL/gであった。
【実施例14】
【0098】
この実施例は、様々な穀物から作られたフラワーの熱処理を実証する。この実施例において、高プロテイン含有量の小麦は、+5%増加した吸収(14%水分ベース)を達成するために、処理時間中、より高い温度を必要とした。
【0099】
【表10】
【0100】
【表11】
【実施例15】
【0101】
この実施例は、熱処理フラワーの水分活性と再水和を記述する。
フラワーの熱処理は、フラワーの含水量を水0.015〜0.041(kg)/乾燥固形分(kg)間に減少させ、この含水量の範囲で測定された水分活性は、0.05未満であった。このように低い水分活性で貯蔵中に起きる主要なフラワーの劣化反応は、脂質酸化であり、脂質酸化の速度は、水分活性が0.35から増加および減少するに連れて増加する。したがって、脂質酸化の速度は、水分活性(Aw)0.35付近で最も低くなる。12.3%(ウェットベース)の未処理のフラワーは、約0.56の水分活性を有する。平衡含水量と水分活性の関数としての脂質酸化の速度の典型的なグラフから、水分活性0.55付近の脂質酸化の速度は、0.15付近の速度に等しい。それ故、熱処理フラワーの保存可能期間を延長するには、0.15<Aw<0.55の水分活性範囲内の含水量にフラワーを再水和する必要がある。未処理および熱処理のフラワーの水分吸着等温線が、平衡含水量と水分活性の間の関係を決定するために、SpiessとWolf(1987)によって概説された手順に基づき導かれた。食物の水分活性は、基本的に所定の温度での閉鎖環境での食物の水蒸気圧の測定であり、その平衡相対湿度を測定し、それを100で割ることによって決定することができる。水分吸着等温線の手順は、密閉されたデシケーター内で所定の温度で飽和食塩水を使用して、所定の平衡相対温度に食物サンプルを調節し、その後、調節後の食物サンプルの含水量を測定することからなる。この実験において、8つの異なる相対湿度条件が未処理および熱処理フラワーの等温線を決定するために使用された。これを以下の表に示す。
【0102】
【表12】
【0103】
デシケーターは、飽和塩溶液と3つの異なる試料(未処理フラワー、熱処理フラワー、および参照資料としての微結晶性セルロース)のために、覆われた環境を提供する恒温器として機能した。各試料は、それぞれ3つ使用され、したがって、各恒温器内の試料の合計は9となる。磁器プレートが、各デキシケーター内で飽和塩溶液の上に試料を支えるために使用された。試料は、秤量中の水分の吸収と損失から試料を保護するために、栓をしたガラスの秤量瓶内に収容された。試料がデシケーター内に収容されている間、デシケーター内の環境条件に試料を曝すために、栓はその付随ガラス瓶の上に横にして置かれた。微生物増殖は、水分活性0.6以上で起こり、それ故、皿に置かれた約2グラムのチモールが、平衡相対湿度60%を越えるデシケーター内に置かれた。平衡には、約6週間必要であった。乾燥固形分の定量のために、付随する蓋が各瓶の上に横置きされた秤量瓶が、真空オーブン内に、98℃および2.5cm(1インチ)Hg真空度にて、5時間置かれた。その後、その瓶は、磁器プレートの下の底部に少なくとも1cmのポリリン酸を有する大きなデシケーター内に一晩中置かれ、試料中の残存水分を除去した。試料の重量がその後、測定された。正味重量は、乾燥固形分の重量であり、ドライベースの含水量は、各平衡相対湿度条件で各試料について計算された。水分吸着等温線の結果を、図10に示す。
【0104】
0.6未満の所定の水分活性にて、熱処理フラワーは、未処理フラワーの脱着等温線より低い平衡含水量を有する。水分吸着等温線に示された非常に興味深い観察は、熱処理フラワーが未処理フラワーの吸着等温線より大きな吸着等温線を示すことであり、これは所定の含水量において、処理フラワーの水分活性が、再吸収された未処理フラワーより低いことを意味する。さらに、脱着等温線との関連で、処理フラワーは、未処理フラワーより低いヒステリシスを示した。この等温線の結果は、脂質酸化の速度が最小限になる範囲に到達するために要求される熱処理フラワーの含水量が、水0.08〜0.136(kg)/乾燥固形分(kg)の間であることを示す。
【0105】
【表13】
【0106】
熱処理フラワーの再水和キネティクスは、華氏85度(29.4℃)および相対湿度85%のプルーファー(proofer)内で、自然対流下で実施された。少量の熱処理フラワー(1〜1.5g)は、アルミ皿の上に篩われ、プルーファー内に置かれ、2つ組の試料が5分毎に秤量された。再水和の結果を、図11に示す。
【0107】
図11に示すように、熱処理フラワーを中間水分に再水和するための時間は、4分〜9分の間である。再水和の湿度は、少なくとも35%RHであるべきであり、これは平衡相対湿度が0.35以上であるために必要であるからであり、また、再水和のための推進力を増加するために100%RHと同じ高さであってもよい。60%を越える再水和湿度環境を使用する場合、フラワーが最終的に0.6を越える水分活性のレベルに再水和される可能性があり、脂質酸化の速度が著しく増加し、微生物増殖が起こり得るので、注意を払う必要がある。再水和の温度範囲は、20℃〜100℃とするべきであり、極端な温度は、熱処理フラワーをさらに変化させる可能性があるので避けるべきである。
【実施例16】
【0108】
この実施例は、ドウとベークド製品の特性に対する、フラワーの熱処理条件の影響を記述する。
フラワーは、フラッシュ・ドライヤー内で脱水された(フラワーの出口温度は、図12〜図13中でx軸である)。フラワーは、その後、以下の条件下(図12〜13参照)で、Solidaire(登録商標)熱交換器内で熱処理された。製品番号1〜3は、ジャケット温度が華氏270度(132.2℃)で、製品出口温度が華氏250度(121.1℃)であり、製品番号4は、ジャケット温度が華氏290度(143.3℃)で、製品出口温度が華氏270度である。
【0109】
図14は、様々なフラッシュ・ドライヤーの出口条件でのBSVを示す。Solidaire(登録商標)ジャケット温度は、華氏290度であり、製品温度は、華氏270度である。
【0110】
本発明は、特定の実施例を通じて説明されてきた。通常の変更は、当業者にとって明らかであり、明細書中に開示された発明の範囲内にあることが意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、吸水能力、ドウの処理およびフラワーのベーキング・クオリティを改良する分野に関し、より具体的には、その性能を改良するためにフラワーを熱処理するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
フラワーまたは小麦の熱処理は、当該技術分野において様々な目的のために実行されてきた。たとえば、Japiske等は、フラワーの物理的化学的性質における不可逆変化を最小限に抑えながら、フラワー中の微生物に由来する汚染物質を除去するために、1〜10分間の昇圧下、水蒸気を含む雰囲気中で、フラワーを華氏260〜310度の温度にかけた(米国特許第3159493号)。この範囲未満では、微生物に由来する汚染物質が完全には除去されず、この範囲を越える温度はフラワーにダメージを与える可能性があった。
【0003】
Hatton等は、フラワーを、10〜80分間、40%を越える相対湿度の雰囲気下で華氏150〜360度の温度で処理し、料理の混合において有用な処理フラワーを作った(米国特許第3428461号)。Bush等は、デンプンの10%がゲル化(ゼラチン化)するように、穀粉の含水量を減少させるため、30〜180秒間、華氏300〜600度で穀粉を熱処理した(米国特許第4937087号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3159493号
【特許文献2】米国特許第3428461号
【特許文献3】米国特許第4937087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記参照文献のいずれも、それによって、熱処理したフラワーまたは熱処理した小麦から作られたドウの特性を、水分の吸収、付着性、ファリノグラフ品質番号(farinograph quality number)および耐性指標に関して改善する方法を提供していない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、改良された特性を有する熱処理フラワーを提供し、また、その製造方法を提供する。一態様において、本発明は、フラワーを熱処理する方法であって、
a)フラワーを準備する工程;
b)前記フラワーの含水量が1.5〜4.1%に減少するように、且つ前記フラワーがゲル化(ゼラチン化)しないように、フラワーを熱的に脱水する(乾燥する)工程;および
c)フラワーの含水量が1.5%未満にならないように、前記脱水フラワーを加熱して、熱処理フラワーを得る工程を含む方法を提供する。
前記熱処理フラワーにおいて、総プロテインの少なくとも7%が変性する。前記熱処理フラワーは、未処理のフラワーと比べて、少なくとも3.0%の水分吸収の増加を示す。
【0007】
一実施形態において、フラワーを熱処理するための前記方法の工程b)とc)は、2つの分離した操作として行われる。別の実施形態では、前記方法の工程b)とc)は一単位(シングル・ユニット)の操作として行なわれる。
【0008】
別の態様において、本発明は、1.5%〜4.1%の含水量を有する熱処理フラワーを提供する。熱処理フラワー中の変性プロテインの量は、7%より大きく、フラワーは、識別可能なデンプン粒を有する。一実施形態において、熱処理フラワーは、フラワー粒子の80%より多くが90〜150ミクロンの間にあるか、またはフラワー粒子の80%より多くが90〜150ミクロンの間にあり、且つ、フラワー粒子の7%より多くが150〜250ミクロンの間にあるような粒度分布を有する。
【0009】
本発明はまた、改良された性能を示す熱処理フラワーから作られたドウを提供し、および、改良された特性を示す熱処理フラワーから作られたベークド食品を提供する。一実施形態において、本発明の方法によって熱処理されたフラワーから作られたドウは、未処理のフラワーから作られたドウに比べて、少なくとも3%の減少した粘着性、および/または少なくとも3%の減少した付着性、および/または少なくとも3%の増加した強度を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、ドウのファリノグラフの一例である。
【図2】図2は、ドウの「力」対「時間」プロットの一例である。
【図3】図3は、熱処理フラワーから調製されたドウのa)粘着性、b)付着性、c)凝集性のデータである。
【図4】図4は、一体化プロセス(複合プロセス)において、脱水され、加熱されたフラワーのファリノグラフ・データである。
【図5】図5は、10.9〜13.1%のプロテイン含有量の、未処理および処理フラワー(一体化プロセス)のファリノグラフ・データである。
【図6】図6は、乾燥固形分1ポンド当たり乾燥空気970ポンドのプロダクト比の空気を有するオーブン内での、華氏260、290、および320度での、小麦粉の乾燥キネティクスのグラフ表示である。
【図7】図7は、熱処理フラワーから作られたベークド製品の「焼成比体積(BSV)」対「時間」のプロットである。
【図8】図8は、二段階熱処理プロセスのための、並流フラッシュ・ドライヤー・マスバランス配置のグラフ表示である。
【図9】図9は、一体型熱処理プロセスのための、ラックオーブン(キャビネット型ドライヤー)マスバランス配置のグラフ表示である。
【図10】図10は、水分吸着等温線データのグラフ表示である。12.5%のプロテインを含むフラワーの水分吸着等温線。
【図11】図11は、再水和データのグラフ表示である。29.4℃(華氏85度)および85%RHの自然対流環境中で再水和された12.5%のプロテインを含む熱処理フラワー。
【図12】図12は、ドウの発達時間におけるフラワーの熱処理コンディションの影響を示すグラフ表示である。
【図13】図13は、水分の吸収におけるフラワーの熱処理コンディションの影響を示すグラフ表示である。
【図14】図14は、焼成比体積におけるフラワーの熱処理コンディションの影響を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、改良された特性を有する熱処理フラワーを提供し、およびこれを製造する方法を提供する。こうして、本発明は、前記フラワーから作られたドウのベーキング性能を損なうことなく、フラワーの吸水能力を増加させる方法を提供する。この方法は、フラワーを脱水する工程、および脱水されたフラワーを加熱する工程を含む。
【0012】
既知の熱処理レジメンは、フラワーの吸収特性の増加をもたらすことができるが、フラワーのベーキング性能は、増加した吸水能力と相関性があるように思われない。本発明は、吸水能力およびベーキング性能を増加させるために、ゲル化(ゼラチン化)をサポートしないコンディション下でフラワーを熱処理することが必要であるという驚くべき観察に基づいている。したがって、本発明の方法は、ゲル化を最小限に抑えながら、フラワーを加熱する工程を含む。
【0013】
我々は、フラワーのゲル化が、フラワーが脱水される温度またはその最終的な含水量だけでなく、加熱モードに関連する脱水の速度にも依存して発生するかどうかを見出した。ゲル化温度は含水量に反比例する。すなわち、含水量が減少するにつれて、ゲル化温度は上昇する。したがって、本発明では、脱水の間、フラワーを、加熱中に水分が急速に除去され、それにより、ゲル化温度が上昇するようなコンデイション下で加熱することによって、ゲル化を最小限にするか避ける。もし、フラワーが急速に脱水されなければ、フラワーのゲル化をもたらし得るゲル化温度に達する可能性がある。たとえば、ゲル化を避けるために、フラワーの含水量を1分以内、好ましくは45〜30秒以内に、4.1〜1.5%の値まで減じることが好ましい。
【0014】
ゲル化を避けることは、熱処理フラワーから作られたドウの改良されたベーキング性能に寄与する、フラワー中のデンプンの性質を保つと考えられる。したがって、改良されたベーキング性能は、熱処理の間、ゲル化が最小限であったことの表れである。さらに、無傷のデンプン粒(複屈折データによって識別される)も、ゲル化がないことの指標となる。
【0015】
本発明のプロセスの第一工程は、脱水である。フラワーの脱水はフラワーの比熱を下げる(結果的に、より効率的な熱伝達をもたらす)。脱水後、デンプン粒は無傷であり、識別できる(複屈折率データによって実証されているように)。これはゲル化がないことを示す。本発明にかかる脱水の間に、フラワーの含水量は、フラワーの重量の1.5〜4.1%の値(1.5〜4.1%の間の全ての整数および小数第一位の%を含む)に減じられる。好ましくは、含水量は2.0〜3.5%に減じられる(2.0〜3.5%の間の全ての整数と小数第一位の%を含む)。4.1%以下に水分を保つことが重要である。なぜなら、4.1%を越えると、より高い温度となる次の加熱が、水分の吸収、ドウの形成およびベーキング・クオリティに影響を及ぼすゲル化や他の変化(例えば、望ましくないデンプンの損傷)を導く可能性があるからである。フラワーの含水量を1%より高く(より好ましくは、1.5%より高く)保つことも重要である。これは1%以下に水分を減少させることが、質の悪いドウの形成および許容できない品質と低いBSVを伴うベークド製品をもたらすことが観察されたためである。特定の理論に拘束されることを意図しないが、フラワーが水分1%以下に脱水されると、デンプン粒とプロテインは、ドウ形成に悪影響を及ぼすように改変されると考えられる。
【0016】
典型的には、フラワーは熱により脱水される。しかしながら、他の脱水方法も使用することができる(凍結乾燥、溶媒抽出法およびマイクロ波処理など)。
【0017】
フラワーが脱水される温度を脱水温度と称する。脱水工程において、フラワーは、フラワーのゲル化温度未満の温度で加熱されることが好ましい。したがって、一実施形態において、フラワーの温度は脱水の継続期間の間、ゲル化温度未満である。しかしながら、ゲル化温度を越える温度に一過性およびわずかに上昇しても、ゲル化をもたらすのに十分ではないことが理解されるであろう。それ故、別の実施形態において、フラワーは、フラワーの温度が、連続して5秒より長い期間、ゲル化温度より著しく高くならないように加熱される。「ゲル化温度より著しく高くない」とは、ゲル化温度より高いが5%を超えない範囲で高い温度を意味する。フラワーの温度を、フラワーがゲル化温度に達することなく、フラワーが脱水される温度に急速に昇温させることが好ましい。
【0018】
一実施形態において、脱水後、複屈折によって判定されるような検出可能なゲル化はフラワー中になく、また、フラワーは、明細書中で述べる改良された特性の1つあるいは全てを示す。
【0019】
フラワーが脱水された後、フラワーはさらに加熱される。一実施形態において、さらなる加熱工程中に、フラワーからさらなる水分の損失はない。別の実施形態において、さらなる加熱は、実質的な水分の損失なしに行なわれる。「実質的な水分の損失なし」とは、さらなる水分の損失が、製品重量の2%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは、0.5%未満であることを意味する。しかしながら、含水量は、加熱工程中に1.5%未満まで減少すべきでない。より明確にいうと、もし脱水工程後のフラワーの含水量が4%であれば、さらなる加熱工程後のフラワーの含水量は2%以上であり、好ましくは、3%以上であり、より好ましくは、3.5%以上である。もし脱水後の含水量が2%であれば、さらなる加熱工程後の含水量は1.5%以上である。なぜなら、加熱工程は、華氏330度(165.6℃)以下の温度で行なわれ、脱水フラワーの含水量は4.1%以下であり、、加熱工程の間にゲル化が発生するとは予期されない。したがって、一実施形態において、脱水フラワーは加熱工程の間にゲル化されない。
【0020】
加熱工程は、フラワーの吸水能力の増加に寄与する。特定の理論に拘束されることを意図しないが、吸水能力は、少なくとも一部は、フワラー中のプロテインの変性、および/またはデンプン粒の改変に起因して増加すると考えられる。「変性」とは、プロテインの構造(たとえば、二次および/または三次構造)が改変される(すなわち、変化する)ことを意味する。プロテインの変性の多くは、加熱工程中に発生するが、幾つかのプロテインの変性は、脱水工程中に発生し得る。デンプン粒は、無傷且つ識別可能なままである一方、加熱工程中に、デンプン粒の構造が、予め潜在していた水結合ドメインが、水を吸収するために利用できるように、変化すると考えられる。
【0021】
一態様では、本発明は、フラワーを熱処理する方法であって、
a)フラワーを準備する工程;
b)前記フラワーの含水量が1.5〜4.1%に減少するように、且つ前記フラワーが脱水工程中にゲル化(ゼラチン化)しないように、前記フラワーを熱的に脱水する工程;および
c)フラワーの含水量が、この加熱工程中に1.5%未満にならないように、前記脱水フラワーを加熱して、熱処理フラワーを得る工程
を含む方法を提供する。
当該熱処理フラワー中の総プロテインの少なくとも7%が変性される。熱処理されたフラワーは、未処理のフラワーに比べて、少なくとも3.0%の水分吸収の増加を示す。一実施形態において、前記方法は、本質的に、工程a)、b)およびc)からなる。別の実施形態において、前記方法は、本質的に、工程a)、b)、c)およびd)からなる。ここで、工程d)は、熱処理フラワーの含水量を増加させるために(たとえば、6〜10%に)、熱処理フラワーに水を添加する工程である。また、別の実施形態において、前記方法は、工程a)、b)およびc)からなるか、あるいは工程a)、b)、c)およびd)からなる。
【0022】
脱水工程および加熱工程は、一体化(複合化)した熱処理プロセスとして実行される(たとえば、脱水と加熱は一単位の操作で実行される)ことができ、または分離した工程として実行される(たとえば、脱水と加熱は二単位の操作として実行される)ことができる。工程が、一体化された加熱プロセス中で実行される場合、フラワーを囲い(装置)に入れ、ゲル化を伴わず、もしくは最小限のゲル化を伴って脱水(水分を1.5〜4.1%に減ずる)が生じるような、所定の温度・所定の期間に、フラワーをかけることができる。その後、脱水されたフラワーは、同じ囲い中で(同一またはより高い温度で)加熱され続ける。分離された工程として行なわれる場合、フラワーは、まず水分を1.5〜4.1%に減少させるために、フラワーが急速に脱水されるコンディション下(例えば、フラッシュ・ドライヤー内)で脱水され、その後、前記脱水されたフラワーは、同一または異なる囲い(装置)内で加熱されることができる。たとえば、並流エアフロー・ドライヤー内でフラワーを脱水した後、フラワーを加熱するために熱交換器を使用することができる。もし、加熱工程が同じ装置内で行なわれる場合、工程は連続して行なわれることができ(フラワーは工程と工程の間に冷却されてもよい)、あるいは、工程は一体化プロセスにおいて行なわれることができる。プロセスが分離した工程として実施される場合、工程と工程の間にフラワーは冷却されてもよく(所望により貯蔵されてもよい)、あるいは、フラワーは直ちに次の工程に移されてもよい(何ら介在する工程なく、およびフラワーがかなりの程度まで冷却されることなく)。
【0023】
一実施形態では、脱水工程は、華氏180〜245度(華氏180〜245度(82.2〜118.3℃)の間の全ての整数を含む)の間の製品(フラワー)出口温度(フラワーがフラッシュ・ドライヤーを出るときに測定されるフラワーの温度)を有する並流エアフロー・ドライヤー(本明細書中でフラッシュ・ドライヤーとも称する)内で分離した工程として実施される。一実施形態では、製品出口温度は、華氏205〜225度(96.1〜107.2℃)が好ましい。滞留時間、すなわちフラワーがフラッシュ・ドライヤー内にある時間は、5〜20秒(5〜20秒の間の全ての整数を含む)である。この脱水工程中に、含水量は、1.5〜4.1%の間(1.5〜4.1の間の全ての整数と小数第一位の値を含む)に低減される。フラッシュ・ドライヤー内で、フラワーは、並流の気流中に運ばれた分散したフラワー顆粒として(フラワーの有効表面積を増やすために)ドライヤー内に導入される。並流エアフロー・ドライヤーは、直接的な動的な加熱システムの一例である。「直接的な」とは、独立して加熱された空気との接触により、フラワーが加熱されることを意味する。「動的な」とは、フラワーが空気の連続流に曝されることを意味し、クローズドシステム中で、例えば静的システムの一例であるキャビネット型ドライヤー(例えば、オーブン)中で、空気の静止質量に曝されないことを意味する。
【0024】
一実施形態において、加熱工程は、ジャケット形熱交換器内で、分離された工程として実施される。たとえば、加熱工程は、華氏260〜330度(華氏260〜330度(126.7〜165.6℃)の間の全ての整数を含む)のジャケット温度を有する熱交換器(Solidaire(登録商標)熱交換器など)中で実施されることができる。フラワーは、2〜6分間(2〜6分の間の全ての整数を含む)加熱される。これは間接的な加熱システムの一例である。「間接的な」とは、ジャケット形熱交換器内を循環する熱媒体を経てフラワーに適用される熱によって、フラワーが加熱されることを意味する。
【0025】
一実施形態において、脱水および加熱工程は、静的システム中で、一体化プロセスとして実施される。たとえば、プロセスは、対流オーブン(例えば、実験室規模のラックオーブンや同等のもの)内で実施されることができる。一体化された脱水および加熱工程が、静的システム中で実施されるプロセスの例には、華氏290〜330度(143.3〜165.6℃)で2〜20分間(華氏290〜330度および2〜20分の間の全ての整数を含む)、対流オーブン内でフラワーを加熱することが含まれるが、これに限定されない。好ましくは、フラワー試料は、華氏295〜325度(146.1〜162.8℃)で加熱される。好ましくは、一体化プロセスは、2〜8分間(2〜8分の間の全ての整数を含む)実施され、より好ましくは、3〜5分間実施される。一実施形態において、フラワーは、華氏290度(143.3℃)で5分間加熱される。別の実施形態では、華氏320度(160℃)で3分間加熱される。一体化された加熱処理プロセス中で、華氏350度(176.7℃)より高い温度で3分以上熱処理されたフラワーは、結果的に、望ましくない特性を有するフラワーになった。
【0026】
大規模の産業プロセスに好適な一実施形態では、フラワーは、並流エアフロー・ドライヤーを使用して脱水され、そして、脱水されたフラワーは、Solidaire(登録商標)熱交換器を使用して熱処理される。
【0027】
一般に、工場規模の熱処理(たとえば、1時間あたり10ポンドより多いフラワーを熱処理する)では、脱水工程は、急速な脱水コンディション下で(例えば、フラッシュ・ドライヤー内で)分離された工程として実施される。大規模の熱処理において、静的な雰囲気の装置(Solidaire(登録商標)熱交換器など)内で脱水と加熱工程の両方を華氏290度(143.3℃)未満の温度で実施すること、または動的な加熱装置(フラッシュ・ドライヤーなど)内で高温(たとえば、華氏270度(132.2℃))で実施することは、質の悪いベーキング性能を有するフラワーをもたらす結果となることが見出された(実施例8参照)。小規模の(すなわち、実験室規模の)(たとえば、10ポンド未満のフラワーを熱処理する)熱処理では、対流オーブン内で脱水工程と加熱工程を複合して一体化プロセスとし、それによってフラワーの含水量を低下させる(たとえば、1分未満で12.3%を4.1〜1.5%に減少させる)ことが、大規模な二段階プロセスで実現されたものと同様の改良された性質を有するフラワーを提供することが見出された。静的なキャビネット型のドライヤー内で熱処理を行なう場合、温度は一般に大規模な二段階プロセスで使用される温度よりも高い。何らかの特定の理論に拘束されることを意図しないが、実験室規模と工業規模のプロセスで要求される加熱プロトコルの違いは、少なくとも一部は、産業規模のプロセスで典型的に使用される加熱装置と、典型的な実験室規模のオーブンとを比較した際の、空気質量とフラワー質量の比の違いおよび加熱環境の違い(静的vs動的)に起因すると考えられる。
【0028】
一実施形態において、二単位の作業工程では、脱水工程は、並流エアフロー・ドライヤー内で、華氏180〜245度(華氏180〜245度(82.2〜118.3℃)の間の全ての整数を含む)、好ましくは、華氏205〜225度(華氏205〜225度(96.1〜107.2℃)の間の全ての整数を含む)の温度で実施され、フラワーのオーブン内での滞在時間は5〜20秒(5〜20秒の間の全ての整数を含む)である。脱水されたフラワーは、その後、間接的な加熱装置(ジャケット形熱交換器など)内で、ジャケット温度華氏260〜330度(華氏260〜330度(126.7〜165.6℃)の間の全ての整数を含む)、好ましくは、華氏290〜325度(華氏290〜325度(143.3〜162.8℃)の間の全ての整数を含む)で、2〜20分間(2〜20分の間の全ての整数を含む)、好ましくは、2〜6分間(2〜6分の間の全ての整数を含む)加熱される。熱交換器を出る際の製品(フラワー)温度(出口温度)は、華氏245〜320度(華氏245〜320度(118.3〜160℃)の間の全ての整数を含む)、好ましくは、華氏270〜305度(華氏270〜305度(132.2〜151.7℃)の間の全ての整数を含む)である。フラワーの含水量は、その後、6〜10%に、且つ水分活性(Aw)0.30〜0.35に増加される。
【0029】
別の実施形態において、一単位の作業工程(一体化された工程)では、フラワーは、対流オーブン内で、華氏290〜330度(143.3〜165.6℃)で2〜20分間(華氏290〜330度および2〜20分の間の全ての整数を含む)加熱される。好ましくは、フラワー試料は、華氏295〜325度(華氏295〜325度(146.1〜162.8℃)の間の全ての整数を含む)で加熱される。好ましくは、一体化プロセスは、2〜8分間(2〜8分の間の全ての整数を含む)、より好ましくは、3〜5分間(3〜5分の間の全ての整数を含む)実施される。
【0030】
一実施形態において、本発明は、含水量が1.5〜4.1%の間のフラワーを提供すること、およびそのフワラーを、ジャケット形熱交換器(Solidare(登録商標)熱交換器など)内で、華氏260〜330度(126.7〜165.6℃)で2〜20分間、好ましくは2〜8分間、加熱することを含む。
【0031】
フラワーは、当業者に認識されるいずれかの方法によって加熱されることができ、これには、バッチ法、連続フロー法が含まれるが、これらに限定されない。本発明において有用な装置の例には、工業用オーブン、従来式のオーブン、マイクロ波オーブン、流動床、デキストリナイザー、ドライヤー、ミキサー、およびブレンダー(加熱装置を備えたもの)、および他のタイプの加熱器であって、水蒸気が蓄積し、フラワー上で凝結しないように、空気への通気口が取り付けられている装置が含まれるが、これらに限定されない。たとえば、回転式ドラム・ドライヤーは、本発明の方法を実行するために、連続流構成にて使用される。このようなドライヤーは市販されている。
【0032】
典型的に、空気の質量/体積:フラワーの質量/体積の比が1より大きい、好ましくは5より大きい、動的な加熱装置が、フラワーを脱水するのに好適である。本発明にかかる、フラワーを急速に脱水するために使用できる動的加熱装置の例には、並流エアフロー・ドライヤー、回転式ドライヤー、箱形ドライヤー、サイロ・ドライヤー、タワー・ドライヤー、トンネル型ドライヤー、ベルト・コンベア式ドライヤー、Yamato(登録商標)ドライヤー、流動層ドライヤー、空気圧/フラッシュ・ドライヤー、および撹拌型ドライヤーが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
フラワーの水分吸収を増加させるために、脱水フラワーを加熱するのに使用できる静的な熱交換器の例には、チューブ状の熱交換器(Solidaire(登録商標)熱交換器など)、ダイレクト熱交換器、および屈折性ドライヤーが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
一般に、一体化(脱水、加熱)プロセスでフラワーを熱処理するのに好適な装置は、フラワーの質量/体積よりはるかに大きい空気の質量/体積を有する。典型的には、そのような静的な加熱装置は、空気の質量/体積:フラワーの質量/体積の比が、9より大きく、好ましくは200より大きい。一体化プロセスでフラワーを加熱処理するために使用できる静的な加熱装置の例には、何らかのキャビネット型ドライヤーまたは対流オーブン(例えば、典型的なラボラトリー・オーブン)、および同等のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
一実施形態において、外部からの水分は、フラワーが加熱される雰囲気に添加されない。本発明の加熱温度において、雰囲気の相対湿度は、2%以下である。
加熱処理後のフラワーの含水量は、1.5〜4.1%である。一般的には、冷却後、加熱処理したフラワーは、少なくとも2%の含水量を有する。これは、所望のレベルに増加させることができる。たとえば、熱処理フラワーの含水量は、水分活性が0.15〜0.55(0.15〜0.55の間の小数第二位の全ての値を含む)、好ましくは、0.25〜0.45および0.30〜0.35、より好ましくは、0.33となるように、6〜10%に増加させることができる。たとえば、加熱後、フラワーは、所望の含水量が得られるように、水蒸気を含む雰囲気に曝される。
【0036】
一実施形態において、熱処理の前、途中、および/または後に、添加物がフラワーに添加されてもよい。もし、熱処理後に加える場合は、添加物は、フラワーが冷却される前または後に添加される。そのような添加剤の例には、ビタミン、ミネラル、塩、香味料、および酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
本発明の熱処理は、少なくとも7.0%のフラワー中のプロテインが変性される結果をもたらす。これは「Orth and Bushek, Cereal Chem., 49:268 (1972)」に記載されているグルテン変性テストによって測定される、酸可溶性プロテインの量によって測定される。このテストは、希酢酸中のプロテインの損失を測定することによってグルテンの変性を測定する。一実施形態において、プロテインの7.0〜13.0%(7.0〜13.0%の間の全ての整数と小数第一位の値を含む)が変性される。種々の実施形態において、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、および13.0%のプロテインが変性される。本明細書中で使用される「プロテイン」は、フラワー中に存在する全てのプロテインを意味する。一般に、グルテン形成プロテイン(たとえば、グリアジンおよびグルテニン)は、フラワー中の主要なプロテインであり、時には、フラワー中の総プロテインの80%以上を占める。
【0038】
本明細書中で記載される脱水と加熱のプロセスは、熱処理後に、1.5%〜4.1%、好ましくは、1.5%〜3.6%の間の含水量;0.03〜0.10の水分活性(Aw);および、未処理フラワーのプロテインと比べて、少なくとも7.0%が変性されているプロテイン;を有するフラワーをもたらす。プロテインの変性が6%未満の場合、フラワーは所望の品質および/または性能を有するドウを作り出さないことが観察された。
【0039】
明細書中に記載されるプロセスは、そのように処理されていないフラワーの粒度分布とは異なる粒度分布を有するフラワーをもたらす。一実施形態において、明細書中に記載される熱処理プロセスは、少なくとも80%の粒子が90〜150ミクロンの大きさであるフラワーをもたらす。別の実施形態では、粒子の少なくとも80%が、90〜150ミクロンの大きさであり、且つ粒子の少なくとも7%が、150〜250ミクロンの大きさである。
【0040】
熱処理フラワーは、未処理のフラワーと比べて、減少した微生物負荷を有する。
【0041】
別の態様において、本発明は、明細書中に記載されたプロセスによって製造された熱処理フラワーを提供する。また、別の態様では、本発明は、明細書中に記載された含水量、Aw、変性プロテイン含有量および粒子サイズを有するフラワーを含む組成物を提供する。一実施形態において、本発明は、6〜10%の含水量、0.25〜0.45、好ましくは0.30〜0.35のAw、7〜13%の変性プロテインレベルを有する熱処理フラワーを提供する。別の実施形態において、本発明は、6〜10%の含水量、0.25〜0.45、好ましくは0.30〜0.35のAw、7〜13%の変性プロテインレベルを有し、且つ、粒子の少なくとも80%の粒径が、90〜150ミクロンの間にある熱処理フラワーを提供する。
【0042】
本発明において有用なフラワーのタイプには、穀物に由来するものが含まれる。その例には、小麦、軟質もしくは硬質小麦、デュラム小麦、大麦、米、ジャガイモ粉、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。グルテン形成プロテインを含むフラワー(たとえば、小麦粉)およびグルテン形成プロテインを含まないフラワー(たとえば、米、タピオカ、およびジャガイモ粉)のいずれも、本発明において有用である。製粉工程のいずれかの段階で得られた如何なる等級のフラワー、粉または粗挽き粉は、本発明にかかる熱処理にかけられることができる。明細書中で説明された本発明の研究成果(たとえば、熱処理フラワーの改良された吸収特性および熱処理フラワーから作られたドウの望ましいベーキング特性)は、プロテインを含み、機能性のために水和を要求する、乾燥状態の粉状またはミルにかけられた有機物質にも当てはまる。
【0043】
本発明にかかる熱処理にかけられたフラワーは、ドウを作るために使用されることができる。ドウは冷凍されても冷凍されなくてもよい。本発明において有用なドウの一例は、フラワー、水、膨張剤(イーストまたは化学膨張剤のいずれでもよく、両方でもよい)および任意に1つ以上の添加成分(たとえば、鉄、塩、安定剤、フレーバー・オイル、酵素、糖、ナイアシン、少なくとも1つの脂質源、リボフラビン、コーンミール、硝酸チアミン、香味料など)を含む。
【0044】
一例において、本発明のドウは、7〜14%の圧搾イースト、1〜6%の高フルクトース・コーンシロップ、0.2%のデキストロース、0.5〜2%のオイル、乳化剤、安定剤、および水を含む。ドウの組成および製造方法は、当該分野において知られている。ドウの形成および方法は、米国特許出願第11/641,300号に記載されており、そのドウ形成および方法は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0045】
本発明は、改良された特性を有するフラワーを提供する。これらの改良された特性には、フラワー自体の特性、熱処理フラワーから作られたドウ(冷凍ドウを含む)の特性、および、ドウ(冷凍ドウを含む)のベーキング特性が含まれる。これらの改良された特性には、増加された水分吸収、増加されたファリノグラフ品質番号、低減された付着性、低減された粘着性、および低減された凝集性が含まれるが、これらに限定されない。これらの改良された特性は、実施例3〜14に論じられている。製造プロセスにおいて、低減された粘着性は、製造装置への材料の粘着が少なくなるので、加工処理能力が増加するという利点を有する。たとえば、熱処理フラワーから調製された高水分のドウを加工することができる。
【0046】
一実施形態において、一以上の以下の現象が観察された:熱処理フラワーから作られたドウの、水分吸収、ファリノグラフ品質番号、耐性指標、および付着性は、未処理のドウの同じ特性に比べて、少なくとも5、6、7、8、9または10%改良された。別の例において、これらの特性は、10%を超えて改良された。このように、本発明の熱処理ドウでは、水分吸収、ファリノグラフ品質番号、耐性指標または付着性の一以上の特性が、少なくとも3、4、5、6、7、8、9または10%まで増加されることが望ましい。さらに、熱処理フラワーおよびこれから作られたドウは、未処理フラワーおよびこれから作られたドウと、実質的に同じ保存可能期間特性を示す。
【0047】
本発明の熱処理フラワーから調製されたベークド製品は、熱処理されなかったフラワーから作られたものと比べて、望ましい特性(例えば、焼成比体積)を有する。例えば、10〜12%のプロテインを有する熱処理フラワーから作られたベークド製品は、同じプロテイン含有量を有する未処理のフラワーを使用して作られたものよりも、高い焼成比体積を有する。
【0048】
一態様において、本発明は、熱処理フラワーから作られたドウから調製されたベークド製品を提供する。一実施形態において、前記ベークド製品は、最大で15%未満のプロテインを含む未処理フラワーから作られたベークド製品と比べて、同等かより高い焼成比体積と、より低い%の固形分を有する。
【0049】
別の実施形態において、プロテイン含有量が10〜12%の熱処理フラワーから作られたドウから調製されたベークド製品の焼成比体積(BSV)は、熱処理されなかったフラワーを用いて調製されたドウから作られたベークド製品と比べて、少なくとも5%増加した。
【0050】
本発明の一態様は、フラワーを熱処理し、それによって、フラワーがより高いプロテイン含有量を有するフラワーのように機能する(例えば、ドウの形成およびベーキングにおいて)ように、その性能を改良することである(実施例3参照)。例えば、11.3%のプロテイン含有量を有するフワラーが、本発明にかかる熱処理にかけられたとき、その性能が、12.4%のプロテインを有するフラワーの性能に匹敵することが確認された(実施例10参照)。何らかの特定の理論に拘束されることを意図しないが、熱処理された低プロテイン・フラワーの改良された性能は、明細書中に記載されているフラワーの特性の改良に起因する。
【0051】
別の態様において、改良された性能を達成するために、非-熱処理フラワー(同じプロテイン含有量を有する)と比べて、より少ない量の熱処理フラワーを使用することができる。例えば、熱処理フラワー(プロテイン含有量10〜12%)を用いて作られたベークド製品は、同じプロテイン含有量を有するフラワーと比べて、増加されたBSVと低減された全固形分(増加された水分吸収に起因する)を有する。別の例として、熱処理フラワー(12%を越えるプロテイン含有量を有する)を用いて作られたベークド製品は、同じプロテイン含有量を有するフラワーと比べて、同程度のBSVと低減された全固形分を有する。
【0052】
また、本発明の別の態様では、季節変動のある穀物から作られたフラワーは、熱処理フラワーが類似したベーキング性能を供するように熱処理される。
【0053】
一実施形態において、本発明の熱処理ドウから調製されたベークド製品は、最大で15%未満のプロテインを含む未処理フラワーから作られたベークド製品と、同様に機能する。別の実施形態では、熱処理ドウから作られたベークド製品は、最大で15%未満のプロテインを含む未処理フラワーから作られたベークド製品と比べて、同等かより高い焼成比体積およびより低い%の固形分を有する。また、別の実施形態では、熱処理ドウから作られたベークド製品は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15%未満のプロテインを含む未処理フラワーから作られたベークド製品と比べて、同等かより高い焼成比体積およびより低い%の固形分を有する。
【0054】
以下の実施例は、本発明を説明するために存在する。それらは、如何なる方法における限定も意図していない。
【実施例1】
【0055】
この実施例は、ラックオーブン内でのフラワーの熱処理を記述する。
メッシュボールを使用して、フラワー(150g)は、約0.1cmの厚みを有する金属トレイ(62cm×42cm)の上に篩われた。2つの金属トレイが、対流熱風ラックオーブン内で同時に加熱された。フラワーの低比熱(1.4〜1.8J/g・℃)、高い加熱表面積(2064cm2)、低質量(150g)、および対流熱風ラックオーブン内の高い表面熱伝達係数により、フラワーの温度は、1分未満でオーブン温度に達した。処理後、トレイは、すぐにオーブンから取り除かれ、冷却するためにテーブルの上に置かれた。冷却後、フラワーは、プラスチック容器に移され、次の使用まで室温で貯蔵された。
【実施例2】
【0056】
実施例1に記載したように熱処理されたフラワーは、吸水、シート力、およびベーキング・クオリティに対する熱処理の効果を決定するため、さらなる研究に使用された。ドウ形成中のフラワーの吸水の変化は、ファリノグラフ(Brabender, Inc.)を使用してモニターされた。我々の結果は、十分にコントロールされた熱処理が、予期できない増加された吸収および増加された安定時間をもたらすことを示す。使用した時間と温度の組み合わせは、温度が華氏255〜330度(123.9〜165.6℃)および時間が1〜20分であった。この結果は、華氏255度未満の温度は、実際適用するには長すぎる処理時間を要求することを示す。華氏330度を越える温度は、不快な臭いをもたらし、このように熱処理したフラワーを使用して調製されたドウは、不十分に機能した。3つの異なるプロテイン濃度(13.0、12.4、および11.9%)のフラワーが、3種類の温度(華氏260度(126.7℃)、華氏290度(143.3℃)、および華氏320度(160℃);+華氏8度および−華氏2度のオーブンコントロールの変動性を伴う)で、フラワーのプロテイン含有量に応じて少なくとも4種類の処理時間で加熱された。
【0057】
300gのミキシングボウル・ファリノグラフ‐E(ドイツ、デュイスブルク、Brabender(登録商標)OHG)が、フラワーの吸水を評価するため、および混合中のドウの安定性と他の特徴を測定するために使用された。AACC法(54−21)が、少し変更を加えただけで分析のために使用された。我々の研究において使用された混合温度は21℃であり、公表されている方法では30℃である。より低い混合温度は、冷凍ドウ製造のためのドウ混合をシミュレーションするために使用された。全てのフラワー試料が21℃でテストされたので、テスト手順の前記変更にかかわらず、種々のフラワーの結果は比較可能なはずである。フラワー試料は、Ohaus水分分析器(スイス)を使用して、含水量を分析された。水分分析器は、試料から水分を蒸発させ、水分の減少を測定するためのハロゲンランプを備えていた。フラワー試料は、分析まで、水分の蒸発を防ぐために密閉容器内に貯蔵された。サーモスタットと循環ポンプは、機器を使用する少なくとも1時間前にオンにされた。ビュレットは、室温で脱イオン水で満たされた。テストプログラムは、インプットとして、以下のパラメータを用いて構成された;ミキサーサイズ:300g;評価:AACC;コンシステンシー:500Brabender単位(FU);テスト時間:20分(必要に応じて、より長く);スピード:63rpm。ミキサーボウルに添加されるフラワーの量は、フラワーの含水量に基づいて計算された。計算は、ミキサーボウルに添加される乾燥固形分の量が、14%の水分を有するフラワー300gを添加することによって得られる量と同程度になるように行われた。ボウルは、蒸発を防ぐためにガラスプレートで覆われた。混合は、約20分または必要に応じてより長い時間、続けられた。
【0058】
テストの終わりに、ファリノグラフ(トルク(BU)vs時間を描く)が得られた(図1)。ファリノグラフは、トルク単位(BU)vs時間の曲線である。その曲線は分析され、結果は以下のように表わされる。
吸水:以下の2つの値で示される。
1.500BUの所望のコンシステンシーに対して補正された吸水
2.所望のコンシステンシーおよび14%の水分ベースに対して補正された吸水
発達時間:テストの開始(水の添加)と、低下が始まる直前のトルク曲線の点との間の時間
安定性:トルク曲線の上部トレースと、コンステンシーラインとの第1および第2交点の間の時間
耐性指標(MTI):ピークにおける曲線の頂点から、ピークに達してから5分後に測定された曲線の頂点までの、Brabender単位(BU)の差
ブレークダウン時間:混合の開始から、ピークポイントから30単位減少するまでの時間
ファリノグラフ品質番号:曲線が最大値後、30FUまで減少した際の曲線のポイント。この番号は、フラワーの品質の測定値である。質の悪いフラワーは、初期に素早く弱まり、これは低い品質番号に対応する。一方、強いフラワーは、遅れてゆっくり弱まり、高い番号を示す。
本明細書中で使用される「ドウ強度」という用語は、以下の特性:耐性指標、ファリノグラフ品質番号、および同類のものの一以上を意味する。
【実施例3】
【0059】
この実施例は、ドウの粘着性、付着性および凝集性の測定によって、本発明のドウの増加されたシート力(sheetability)を記述する。TAXT2(英国、サリー州、Stable Microsystems Ltd.)と関連して、SMS Chen-Hosene Dough Stickiness Rigが、ドウの粘着性、付着性および凝集性を測定するために使用された。この方法は、過混合、過剰な水分の添加、プロテイン分解酵素の過活性、小麦粉の種類と組成の違いに起因するドウの粘着性を調査するために広く使用されている。
【0060】
ドウ試料が、フラワー、水、イースト、塩および他の少量の成分(例えば、酵素、ドウ・コンディショナーなど)を使用して調製された。ドウで使用されるフラワーの種類および水の量を、以下の6つの処理物を得るために変化させた:5、8および10%の追加水分(フラワーベースで)を有する未処理フラワー;5、8および10%の追加水分(フラワーベースで)を有する処理フラワー。追加水分とは、調合法において推奨されている水分含有を越えて添加された水のことを意味する。処理フラワーは、フラワーの初期の含水量の違いによって生じる如何なる作為も避けるために、未処理フラワーと同程度の含水量に調節された。各ドウ試料は調製され、ドウ混合の終わりから10分以内に、付着性を分析された。
【0061】
セルを使用する前に、ピストンを動かし、試料チャンバをその最大容量に増加させるために、内部スクリューが回転された。調製されたドウの少量が、チャンバ内に置かれ、余分なドウは、チャンバの上端と同一平面になるように、へらで取り除かれた。内部スクリューは、その後、孔を通して少量のドウを押し出すために回転された。この最初の押出し物は、へらを使用して、蓋表面から取り除かれた。スクリューは、1mm高さのドウ試料を押し出すために、再度回転された。調製されたドウの表面を、押出しによって生じたストレスを解消するために30秒間休ませる間、水分の損失を最小限にするために、露出した試料表面の上にキャップが被された。その後、カバーは取り除かれ、ロードセルに付属している25mmのシリンダープローブの真下のセルの上に置かれた。テストは、以下のパラメーターを使用して開始された;プレ-テストスピード:2mm/秒;テストスピード:1mm/秒;ポスト-テストスピード:10mm/秒;距離:5mm;力:40g;時間:0.2秒;トリガータイプ:自動−5g。ドウは、その後、へらを使用して蓋の表面から取り除かれ、再び押し出されて、上述のようにテストが繰り返されてもよい。
【0062】
分析に関する典型的な力−時間のプロットを図2に示す。試料評価に対する特定の影響力の値は、所定のソフトウエアによって自動的に得ることができる。最大力の表示、すなわちマーカー1における最も高いピーク、正のエリアおよびマーカー1と2の間の距離は、全てドウのレオロジー特性の指標である。粘着性は、マーカー1における最大力として測定される。付着仕事量(付着性)は、マーカー1と2の間の曲線の下のエリアとして計算される(影付きの部分で示されるように)。凝集性またはドウ強度は、マーカー1と2の間の距離として測定される。図3に示されるように、未処理フラワーのドウでは、付着性は、水和が5、8、10%と増加するに連れて増加する。処理フラワーのドウは、未処理ドウより低い付着性を有する。
【実施例4】
【0063】
この実施例は、ラックオーブン内で、一体化加熱プロセスによって熱処理されたフラワーの改良された特性の例を示す。
【0064】
12.4%のプロテイン含有量を有し、5および8%の増加した水分吸水を有するフラワーを使用して焼かれたブレッド(一体化された脱水および加熱プロセスで熱処理された)。両方のブレッドのセットは、そのベーキング性能を基に評価された。
【0065】
【表1】
【0066】
上記表中および図4および5に示されるデータは、実施例2で述べた実験手順を使用して得られた。図4において、華氏290度(143.3℃)で8分間熱処理された12.4%プロテイン含有フラワーで観察された安定性とファリノグラフ品質番号は、5分間処理されたフラワーと比べて増加する。華氏320度(160℃)で、4分間処理したフラワーは、2分間処理したフラワーのそれと比べて、より高い安定性とファリノグラフ品質番号を示す。これらの温度において、同様の傾向が、図4に示される他の測定パラメータについて観察される。また、吸収(14%水分)は、所定の温度における熱処理時間が増加するに連れて増加する。
【0067】
プロテイン含有量が10.9%〜13.1%の範囲のフラワーを熱処理し、そのファリノグラフデータを図5に示す。一般に、低プロテインの熱処理フラワーから作られたドウは、高プロテインの未処理フラワーから作られたドウに匹敵する安定性と吸収を有する。
【実施例5】
【0068】
この実施例は、酸可溶性フラクションによって測定されるプロテイン変性を示す。表2に示すデータは、「Orth and Bushk, Cereal Chem., 49;268 (1972)」に記載される試験手順を使用して得られた。
【0069】
【表2】
【実施例6】
【0070】
この実施例は、以下のように熱処理されたフラワーの粒径特性を記述する。試料Aは、華氏275度(135℃)でSolidaire(登録商標)熱交換器のみで熱処理された。試料Bは、未処理の対照試料である。試料Cは、本発明に従って熱処理された[華氏220度(104.4℃)で10秒間フラッシュ・ドライヤー内で脱水、その後、Solidaire熱交換器(華氏270度(132.2℃)のジャケット温度;華氏248度(120℃)の内部温度)内で2.7分間の熱処理]。
【0071】
【表3】
【0072】
フラワー顆粒のサイズは、様々な試料によって異なることが観察された。
【0073】
表3の値は、適切なメッシュサイズのスクリーンの上にフラワー試料を置くことによって測定された。表3の値は、スクリーン上に残ったフラワーのパーセンテージである。
【実施例7】
【0074】
この実施例では、熱処理フラワーの微生物分析を記述する。微生物分析は、標準のプロトコルを使用して行なわれた。熱処理フラワーは、12.4%プロテイン・フラワーをラックオーブン内で290℃で5分間加熱したものである。
【0075】
【表4】
【実施例8】
【0076】
この実施例は、熱処理フラワーから調製されたベークド製品の特性を記述する。
【0077】
【表5】
【0078】
これらのデータは、熱処理フラワーから焼成されたブレッド中の水分%が、未処理フラワーから作られたブレッドより高い(より低い固形分%)ことを示す。
【実施例9】
【0079】
この実施例は、12.4%のプロテインを含有するフラワー(すなわち、標準プロテイン)を使用して、熱処理フラワーおよび未処理フラワーから作られたフランスパンの冷凍ドウの保存可能期間を記述する。処理フラワーと比べて、未処理フラワー製品はより平らであった。
【0080】
【表6】
【0081】
冷凍ドウ試料から作られた製品の焼成比体積(BSV)(mL/g)は、対照より高かった(表6および図7のデータ参照)。両方の試料は、その処方中に同程度の水を有する。より多量の水は、イースト細胞およびドウ/グルテン構造に害を及ぼす大きな氷の結晶をもたらす。熱処理は、水を、結晶形成に利用されない形に保つこと、それゆえ、より高い体積とベークド製品の優れた輪郭を示すことに成功した。対照では、水は、ドウ基質によって保持されることができる範囲を超え、それゆえ、より低い体積とより平らな輪郭を示した。
【実施例10】
【0082】
本実施例は、低プロテイン・フラワーのベーキング性能が、熱処理によって、高プロテイン・フラワーのそれに改良されることを実証する。
【0083】
3バッチ分のブレッドが、スポンジ・ドウの手法を使用して製造された:
バッチ1:12.4%プロテイン・フラワー、栄養強化、未処理であり、処方中に63%の吸収を伴う;
バッチ2:11.3%プロテイン・フラワー、栄養強化、未処理であり、処方中に58%の吸収を伴う;
バッチ3:11.3%プロテイン・フラワー、栄養強化、処理され(華氏290度(143.3℃)、6分)、処方中に63%の吸収を伴う。
【0084】
スポンジ・ドウは、フラワー、水、イースト、およびSSLを使用して作られ、2時間30分インキュベートされた。インキュベーション後、スポンジは、ドウを形成するために、フラワー、水、塩、糖、脱脂粉乳、ショートニング、アスコルビン酸および酵素と混合された。ドウは分割され、成形され、70分間プルーフされた。プルーフされたドウは、華氏375度(190.6℃)で13分間焼成された。焼成製品の体積(mL)、及び比体積(mL/g)を以下に示す。データは、11.3%プロテイン・フラワーを熱処理することが、未処理の対応物と比べて、体積および焼成比体積を向上させ、それを12.4%プロテイン・フラワーと同程度にすることを示す。
【0085】
【表7】
【実施例11】
【0086】
本実施例は、二単位の操作(フラッシュ・ドライヤーによる脱水、および、ジャケット形熱交換器による加熱)を使用した製品の熱処理を実証する。
【0087】
フラワー[12.4%プロテイン、12.0%含水量(ウェットベース、またはフラワー1ポンド当たりの水(ポンド))、13.6%含水量(ドライベース、または乾燥固形分1ポンド当たりの水(ポンド))]が脱水され、その後、熱処理された。脱水は、フラワーの含水量を低下させ、(1)所望の時間と温度条件でのより効果的な熱処理のために、フラワーの比熱を低下させるために、および(2)熱処理後に、デンプン粒を無傷のままにしておくために、重要である。12%および8%の含水量(水(ポンド)/乾燥固形分(ポンド))のフラワーにおいて、デンプン結晶子が、融解し始める温度(すなわち、ゲル化温度)は、約華氏320度(160℃)であり(我々の処理パラメータの範囲内)、および、3%の含水量では、華氏400度(204.4℃)に増加する(Burt and Russell, 1983)。並流フラッシュ・ドライヤーでのこの実施例のマスバランス配置を図8に示す。図8において、maは空気流量(乾燥空気(ポンド)/h);mpは製品流量(乾燥固形分(ポンド)/h);W1は流入空気の含水量(水(ポンド)/乾燥空気(ポンド));W2は流出空気の含水量(水(ポンド)/乾燥空気(ポンド));w1はドライヤーに流入する製品の含水量、ドライベース(水(ポンド)/乾燥固形分(ポンド));w2はドライヤーから流出する製品の含水量、ドライベース(水(ポンド)/乾燥固形分(ポンド));Ta2はドライヤーから流出する製品の含水量、ドライベース(水(ポンド)/乾燥固形分(ポンド));Ta1はドライヤーから流出する製品の含水量、ドライベース(水(ポンド)/乾燥固形分(ポンド))。
【0088】
ドライヤーを通過するフラワーの供給量は、乾燥固形分220(ポンド)/hである。乾燥されたフラワーは、2%の水分(水(ポンド)/乾燥固形分(ポンド))を含み、それゆえ、ドライヤー内で蒸発される水の量は、水25.6(ポンド)/hとなるであろう。フラワー製品を乾燥させるために加熱され、使用される流入空気は、露点温度が華氏57度(13.9℃)であり、乾球温度が華氏75度(23.9℃)であり、相対湿度が約55%であり、この流入空気の含水量とエンタルピーはそれぞれ水0.01(ポンド)/乾燥空気(ポンド)、および28.5BTU/乾燥空気(ポンド)であった。空気は、華氏390度(198.9℃)まで加熱され、加熱の間、空気の含水量は同じままであり(水0.01(ポンド)/乾燥空気(ポンド))、加熱空気のエンタルピーは、112BTU/乾燥空気(ポンド)まで増加する。ドライヤーを通過する体積空気流量は、355SCFM(標準立方フィート/分)であり、流入空気の比体積は、13.75cu.ft/乾燥空気(ポンド)であり;したがって、空気流量は、乾燥空気1550(ポンド)/hである。華氏80度(26.7℃)でフラッシュ・ドライヤーに入った製品は、フラッシュ・ドライヤーを通過する滞留時間が約10秒(9〜11)であり、製品の出口での温度は、華氏210度(98.9℃)であった。ドライヤーを出ていく空気は、華氏240度(115.6℃)の測定乾球温度を有していた。流出空気の含水量の値を求めるために再編成された、図8のマスバランス方程式から、流出空気の含水量は、水約0.0265(ポンド)/乾燥空気(ポンド)であり、2.5%の相対湿度(心理測定的チャートより)を有した。流出空気と流入熱風の間の水分の差を考慮すると、空気は、乾燥空気1ポンド当たり0.0165ポンドの水を除去した。このように、乾燥空気1550(ポンド)/hの空気流量では、水分除去速度は水25.58(ポンド)/hであり、これは、乾燥固形分220(ポンド)/hでドライヤーに入って行き且つ出て行く製品含水量に基づいて計算された値と同程度であった。それ故、乾燥固形分1ポンドにつき、このシステムにおいて、フラワーを乾燥するために要求される乾燥空気の量は、空気流量(乾燥空気1550(ポンド)/h)を求め、且つ製品流量(乾燥固形分220(ポンド)/h)で割ることによって計算することができ、その結果、乾燥空気約7(ポンド)/乾燥固形分(ポンド)となり、これは標準的なフラッシュ・ドライヤーの乾燥空気5〜10(ポンド)/乾燥固形分(ポンド)の範囲内である。このフラッシュ・ドライヤー内でのフラワーの乾燥速度は、非常に高く、水0.695(ポンド)/(乾燥固形分(ポンド)×分)であった。
【0089】
熱処理のために、脱水されたフラワーは、華氏290度(143.3℃)の一定のジャケット温度を有するジャケット形熱交換器に搬送された。製品は、ドライヤーから搬送される間に冷却され(華氏210度(98.9℃)の製品出口温度)、熱交換器に入る前には、約華氏180度(82.2℃)になった。950rpmのパドル回転は、フラワー製品を熱交換器の内表面積に沿って、熱交換器を通過させ、パドルの角度は熱交換器の終わりに近づくに連れて栓流の輪郭を作り出し、フラワーの粒子の大部分は、2.7分間の同じ滞留時間を有する。華氏270度(132.2℃)で熱交換器を出た製品は、その後、すぐに運ばれ、外気を使用したバッグハウスを通して冷却される。製品は、バッグハウスを華氏115度(46.1℃)で出ていく。
【0090】
【表8】
【実施例12】
【0091】
この実施例は、一体化熱処理プロセスを実証する(キャビネット型ドライヤー(ラックオーブン)内での脱水および加熱)。
フラワーは、ラックオーブン内で、華氏290度(143.3℃)で5分間乾燥され、加熱された;マスバランス・フローチャートを図9に示す(項は、図8中に示される)。
【0092】
乾燥と加熱速度を最大化するために、13.6%の初期含水量(乾燥固形分1ポンド当たりの水(ポンド))を有するフラワーの薄膜は、2つのトレイ(62cm×42cm、あるいは24.4インチ×16.5インチ)の上に、約0.1cmの厚みでまぶされ、各トレイ上の初期フラワーの重量は、約150g(0.33ポンド)であった。それ故、オーブン内の総製品重量は、0.66ポンドであり、乾燥固形分として0.58ポンドである。オーブン内で加熱される流入空気は、製造に関して記載した流入空気と同様のコンディションを有した[華氏57度(13.9℃)の露点温度、華氏75度(23.9℃)の乾球温度、約55%の相対湿度、および流入空気の含水量とエンタルピーは、それぞれ水0.01(ポンド)/乾燥空気(ポンド)および28.5BTU/乾燥空気(ポンド)]。オーブンが華氏290度(143.3℃)の温度に達し、平衡化された時点で、トレイは、オーブン内の棚の上に置かれた。製品は、乾燥チャンバを通って動かないので、マスバランス方程式は、製品の速度を、製品の乾燥固形分ベースに変換するために、以下のように変換されることができる。
【0093】
【数1】
【0094】
ラックオーブンは、120CFM(1分当たりの立方フィート)の体積空気流量を有する対流熱風コンディション下で稼働し、流入空気の比体積は、13.75cu.ft./乾燥空気(ポンド)であり、空気流量は、乾燥空気527(ポンド)/hである。ラックオーブン内で華氏290度(143.3℃)・5分後のフラワーの最終含水量は、2%であった。オーブン内の製品の量に対するこのラックオーブン内で使用された空気の量は、527ポンドの乾燥空気を0.58ポンドの乾燥固形分で割ることによって計算され、乾燥固形分1ポンド当たり907ポンドの乾燥空気に相当する。流出空気の含水量(W2)のためのマスバランス方程式を解くにあたって、薄膜の製品に対する大量の対流熱風に起因して、流出空気の含水量に変化はない。また、このラックオーブン内の乾燥速度を示す図6から分かるように、1分以内で、フラワーの水分は、13.6%(ドライベース)から2.3%に減少され、乾燥速度は、水0.111(ポンド)/(乾燥固形分(ポンド)×分)(水0.111(kg)/乾燥固形分(kg)×分)であった。したがって、水分蒸散のこの高い速度と程度は、熱処理が同時に発生することを可能にし、この際、処理温度は、3%未満の含水量を有するフラワーのゲル化温度より著しく低い(Burt and Russell, 1983; Eliasson, 1980)。
【0095】
実施例11および12の熱処理は、所望のファリノグラフ特性(増加された吸収と安定性、および減少されたMHI)およびベーキング・クオリティを有するフラワーをもたらした。
【0096】
【表9】
【実施例13】
【0097】
この実施例は、質の悪いベーキング性能を有する熱処理フラワーから作られたベークド製品の例を実証する。
熱処理フラワーを使用して製造されたドウは、改良されたベーク性能を示すために、最適水準の水を含有すべきである。3バッチのフランスパンのドウが、未処理のフラワー、華氏320度(160℃)で4分間処理されたフラワー(フラワーベースで5%の水を有し、対照として使用されたものより過剰)、および華氏320度で8分間処理されたフラワー(フラワーベースで10%の水を有し、対照として使用されたものより過剰)を使用して製造された。ベークド製品の比体積は、それぞれ5.55、4.59、および3.06mL/gであった。
【実施例14】
【0098】
この実施例は、様々な穀物から作られたフラワーの熱処理を実証する。この実施例において、高プロテイン含有量の小麦は、+5%増加した吸収(14%水分ベース)を達成するために、処理時間中、より高い温度を必要とした。
【0099】
【表10】
【0100】
【表11】
【実施例15】
【0101】
この実施例は、熱処理フラワーの水分活性と再水和を記述する。
フラワーの熱処理は、フラワーの含水量を水0.015〜0.041(kg)/乾燥固形分(kg)間に減少させ、この含水量の範囲で測定された水分活性は、0.05未満であった。このように低い水分活性で貯蔵中に起きる主要なフラワーの劣化反応は、脂質酸化であり、脂質酸化の速度は、水分活性が0.35から増加および減少するに連れて増加する。したがって、脂質酸化の速度は、水分活性(Aw)0.35付近で最も低くなる。12.3%(ウェットベース)の未処理のフラワーは、約0.56の水分活性を有する。平衡含水量と水分活性の関数としての脂質酸化の速度の典型的なグラフから、水分活性0.55付近の脂質酸化の速度は、0.15付近の速度に等しい。それ故、熱処理フラワーの保存可能期間を延長するには、0.15<Aw<0.55の水分活性範囲内の含水量にフラワーを再水和する必要がある。未処理および熱処理のフラワーの水分吸着等温線が、平衡含水量と水分活性の間の関係を決定するために、SpiessとWolf(1987)によって概説された手順に基づき導かれた。食物の水分活性は、基本的に所定の温度での閉鎖環境での食物の水蒸気圧の測定であり、その平衡相対湿度を測定し、それを100で割ることによって決定することができる。水分吸着等温線の手順は、密閉されたデシケーター内で所定の温度で飽和食塩水を使用して、所定の平衡相対温度に食物サンプルを調節し、その後、調節後の食物サンプルの含水量を測定することからなる。この実験において、8つの異なる相対湿度条件が未処理および熱処理フラワーの等温線を決定するために使用された。これを以下の表に示す。
【0102】
【表12】
【0103】
デシケーターは、飽和塩溶液と3つの異なる試料(未処理フラワー、熱処理フラワー、および参照資料としての微結晶性セルロース)のために、覆われた環境を提供する恒温器として機能した。各試料は、それぞれ3つ使用され、したがって、各恒温器内の試料の合計は9となる。磁器プレートが、各デキシケーター内で飽和塩溶液の上に試料を支えるために使用された。試料は、秤量中の水分の吸収と損失から試料を保護するために、栓をしたガラスの秤量瓶内に収容された。試料がデシケーター内に収容されている間、デシケーター内の環境条件に試料を曝すために、栓はその付随ガラス瓶の上に横にして置かれた。微生物増殖は、水分活性0.6以上で起こり、それ故、皿に置かれた約2グラムのチモールが、平衡相対湿度60%を越えるデシケーター内に置かれた。平衡には、約6週間必要であった。乾燥固形分の定量のために、付随する蓋が各瓶の上に横置きされた秤量瓶が、真空オーブン内に、98℃および2.5cm(1インチ)Hg真空度にて、5時間置かれた。その後、その瓶は、磁器プレートの下の底部に少なくとも1cmのポリリン酸を有する大きなデシケーター内に一晩中置かれ、試料中の残存水分を除去した。試料の重量がその後、測定された。正味重量は、乾燥固形分の重量であり、ドライベースの含水量は、各平衡相対湿度条件で各試料について計算された。水分吸着等温線の結果を、図10に示す。
【0104】
0.6未満の所定の水分活性にて、熱処理フラワーは、未処理フラワーの脱着等温線より低い平衡含水量を有する。水分吸着等温線に示された非常に興味深い観察は、熱処理フラワーが未処理フラワーの吸着等温線より大きな吸着等温線を示すことであり、これは所定の含水量において、処理フラワーの水分活性が、再吸収された未処理フラワーより低いことを意味する。さらに、脱着等温線との関連で、処理フラワーは、未処理フラワーより低いヒステリシスを示した。この等温線の結果は、脂質酸化の速度が最小限になる範囲に到達するために要求される熱処理フラワーの含水量が、水0.08〜0.136(kg)/乾燥固形分(kg)の間であることを示す。
【0105】
【表13】
【0106】
熱処理フラワーの再水和キネティクスは、華氏85度(29.4℃)および相対湿度85%のプルーファー(proofer)内で、自然対流下で実施された。少量の熱処理フラワー(1〜1.5g)は、アルミ皿の上に篩われ、プルーファー内に置かれ、2つ組の試料が5分毎に秤量された。再水和の結果を、図11に示す。
【0107】
図11に示すように、熱処理フラワーを中間水分に再水和するための時間は、4分〜9分の間である。再水和の湿度は、少なくとも35%RHであるべきであり、これは平衡相対湿度が0.35以上であるために必要であるからであり、また、再水和のための推進力を増加するために100%RHと同じ高さであってもよい。60%を越える再水和湿度環境を使用する場合、フラワーが最終的に0.6を越える水分活性のレベルに再水和される可能性があり、脂質酸化の速度が著しく増加し、微生物増殖が起こり得るので、注意を払う必要がある。再水和の温度範囲は、20℃〜100℃とするべきであり、極端な温度は、熱処理フラワーをさらに変化させる可能性があるので避けるべきである。
【実施例16】
【0108】
この実施例は、ドウとベークド製品の特性に対する、フラワーの熱処理条件の影響を記述する。
フラワーは、フラッシュ・ドライヤー内で脱水された(フラワーの出口温度は、図12〜図13中でx軸である)。フラワーは、その後、以下の条件下(図12〜13参照)で、Solidaire(登録商標)熱交換器内で熱処理された。製品番号1〜3は、ジャケット温度が華氏270度(132.2℃)で、製品出口温度が華氏250度(121.1℃)であり、製品番号4は、ジャケット温度が華氏290度(143.3℃)で、製品出口温度が華氏270度である。
【0109】
図14は、様々なフラッシュ・ドライヤーの出口条件でのBSVを示す。Solidaire(登録商標)ジャケット温度は、華氏290度であり、製品温度は、華氏270度である。
【0110】
本発明は、特定の実施例を通じて説明されてきた。通常の変更は、当業者にとって明らかであり、明細書中に開示された発明の範囲内にあることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラワーを熱処理するための方法であって、
a)フラワーを準備する工程;
b)前記フラワーの含水量が1.5〜4.1%に減少するように、且つ前記フラワーがゲル化しないように、前記フラワーを熱的に脱水する工程;および
c)前記脱水フラワーの含水量を1.5%以上に維持しながら、前記脱水フラワーを加熱し、熱処理フラワーを得る工程;
を含むこと、
前記熱処理フラワー中の総プロテインの7〜13%が変性し、前記熱処理フラワーが、未処理のフラワーと比べて少なくとも3.0%の水分吸収の増加を示すこと
を特徴とする方法。
【請求項2】
工程b)およびc)が、2つの分離した単位の操作として行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)における加熱脱水が、30秒未満で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)における加熱脱水が、並流エアフロー・ドライヤー内で行われ、フラワーの出口温度が華氏180〜245度(82.2〜118.3℃)となるよう、および、当該並流エアフロー・ドライヤー内でのフラワーの滞留時間が5〜20秒となるように行なわれる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
工程b)における加熱脱水が、並流エアフロー・ドライヤー内で行われ、フラワーの出口温度が華氏205〜225度(96.1〜107.2℃)となるよう、および、当該並流エアフロー・ドライヤー内でのフラワーの滞留時間が8〜12秒となるように行なわれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程b)における加熱脱水中に、フラワーの含水量が2〜3.5%に減少する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
工程c)における加熱が、華氏260〜330度(126.7〜165.6℃)のジャケット温度を有する熱交換器内で、2〜6分間行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
工程b)およびc)が、一単位の操作で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程b)およびc)が、華氏290〜330度(143.3〜165.6℃)の温度で8分未満、フラワーを加熱することによって行なわれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱処理フラワー中の変性プロテイン量が、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12、12.5、および13.0%からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記熱処理フラワーの水分活性(Aw)が、0.03〜0.1である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
含水量が6〜10%および水分活性が0.15〜0.55となるように、前記熱処理フラワーを再水和する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記含水量が8%であり、前記水分活性が0.33である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
熱処理されたフラワーであって、
前記フラワーの含水量が1.5%〜4.1%であること、および、
変性プロテインの量が、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12、12.5、および13.0%からなる群から選択されること、および
前記フラワーが識別可能なデンプン粒を有すること
を特徴とする、熱処理フラワー。
【請求項15】
前記フラワーの粒度分布が、フラワー粒子の80%より多くが、90〜150ミクロンの間にあるか、あるいはフラワー粒子の80%より多くが90〜150ミクロンの間にあり、且つ、フラワー粒子の7%より多くが150〜250ミクロンの間にある、請求項14に記載の熱処理フラワー。
【請求項16】
前記フラワーの含水量が2.0〜3.5%である、請求項14に記載の熱処理フラワー。
【請求項17】
前記熱処理フラワーの水分活性(Aw)が、0.03〜0.1である、請求項14に記載の熱処理フラワー。
【請求項18】
請求項14に記載のフラワーから作られたドウであって、
前記ドウは、未処理のフラワーから作られたドウと比べて、少なくとも3%減少した粘着性、および/または、少なくとも3%減少した付着性、および/または、少なくとも3%増加した強度を示すこと
を特徴とする、ドウ。
【請求項19】
前記ドウが冷凍ドウであり、当該冷凍ドウが、未処理のフラワーから作られた冷凍ドウと比べて、より長い保存期間を有する(前記処理フラワーから作られた冷凍ドウと未処理フラワーから作られた冷凍ドウは同じ水分含量を有する)、請求項18に記載のドウ。
【請求項20】
請求項18に記載のドウから作られたベークド製品であって、当該ベークド製品が、未処理のフラワーから作られたベークド製品と比べて、同じかより高い焼成比体積、およびより低い%の固形分を有することを特徴とする、ベークド製品。
【請求項1】
フラワーを熱処理するための方法であって、
a)フラワーを準備する工程;
b)前記フラワーの含水量が1.5〜4.1%に減少するように、且つ前記フラワーがゲル化しないように、前記フラワーを熱的に脱水する工程;および
c)前記脱水フラワーの含水量を1.5%以上に維持しながら、前記脱水フラワーを加熱し、熱処理フラワーを得る工程;
を含むこと、
前記熱処理フラワー中の総プロテインの7〜13%が変性し、前記熱処理フラワーが、未処理のフラワーと比べて少なくとも3.0%の水分吸収の増加を示すこと
を特徴とする方法。
【請求項2】
工程b)およびc)が、2つの分離した単位の操作として行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)における加熱脱水が、30秒未満で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)における加熱脱水が、並流エアフロー・ドライヤー内で行われ、フラワーの出口温度が華氏180〜245度(82.2〜118.3℃)となるよう、および、当該並流エアフロー・ドライヤー内でのフラワーの滞留時間が5〜20秒となるように行なわれる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
工程b)における加熱脱水が、並流エアフロー・ドライヤー内で行われ、フラワーの出口温度が華氏205〜225度(96.1〜107.2℃)となるよう、および、当該並流エアフロー・ドライヤー内でのフラワーの滞留時間が8〜12秒となるように行なわれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程b)における加熱脱水中に、フラワーの含水量が2〜3.5%に減少する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
工程c)における加熱が、華氏260〜330度(126.7〜165.6℃)のジャケット温度を有する熱交換器内で、2〜6分間行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
工程b)およびc)が、一単位の操作で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程b)およびc)が、華氏290〜330度(143.3〜165.6℃)の温度で8分未満、フラワーを加熱することによって行なわれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱処理フラワー中の変性プロテイン量が、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12、12.5、および13.0%からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記熱処理フラワーの水分活性(Aw)が、0.03〜0.1である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
含水量が6〜10%および水分活性が0.15〜0.55となるように、前記熱処理フラワーを再水和する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記含水量が8%であり、前記水分活性が0.33である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
熱処理されたフラワーであって、
前記フラワーの含水量が1.5%〜4.1%であること、および、
変性プロテインの量が、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12、12.5、および13.0%からなる群から選択されること、および
前記フラワーが識別可能なデンプン粒を有すること
を特徴とする、熱処理フラワー。
【請求項15】
前記フラワーの粒度分布が、フラワー粒子の80%より多くが、90〜150ミクロンの間にあるか、あるいはフラワー粒子の80%より多くが90〜150ミクロンの間にあり、且つ、フラワー粒子の7%より多くが150〜250ミクロンの間にある、請求項14に記載の熱処理フラワー。
【請求項16】
前記フラワーの含水量が2.0〜3.5%である、請求項14に記載の熱処理フラワー。
【請求項17】
前記熱処理フラワーの水分活性(Aw)が、0.03〜0.1である、請求項14に記載の熱処理フラワー。
【請求項18】
請求項14に記載のフラワーから作られたドウであって、
前記ドウは、未処理のフラワーから作られたドウと比べて、少なくとも3%減少した粘着性、および/または、少なくとも3%減少した付着性、および/または、少なくとも3%増加した強度を示すこと
を特徴とする、ドウ。
【請求項19】
前記ドウが冷凍ドウであり、当該冷凍ドウが、未処理のフラワーから作られた冷凍ドウと比べて、より長い保存期間を有する(前記処理フラワーから作られた冷凍ドウと未処理フラワーから作られた冷凍ドウは同じ水分含量を有する)、請求項18に記載のドウ。
【請求項20】
請求項18に記載のドウから作られたベークド製品であって、当該ベークド製品が、未処理のフラワーから作られたベークド製品と比べて、同じかより高い焼成比体積、およびより低い%の固形分を有することを特徴とする、ベークド製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−504968(P2012−504968A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531210(P2011−531210)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/060177
【国際公開番号】WO2010/042825
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(505411055)リッチ プロダクツ コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/060177
【国際公開番号】WO2010/042825
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(505411055)リッチ プロダクツ コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】
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