説明

熱処理ロール

【課題】 剛性が大きく、熱伝達効率のよい熱処理ロールの構造を提供する。
【解決手段】 円筒面に近接して同一半径上に密接した一定ピッチでロール軸方向に明けた多数の円形貫通孔に冷媒又は加熱媒体を通過させるとき、円筒面に対して最も熱伝導効率が良くなるようにかつ円周方向の温度ムラが最も小さくなるように円筒面からの距離に対する円形貫通孔の間隔を算定して形成されたロール本体11と、ロール本体11の両側端面に芯を合わせて固設され、ロール本体11の円筒面の多数の円形貫通孔に通じる半径方向の熱媒体通路が設けられた一対の側板12,13と、側板12,13と一体に固設され側板の半径方向の熱媒体通路に通じる熱媒体通路を軸中心に設けた冷却ロール2の両側に同一中心線上に伸びる一対の回転支持軸とにより構成。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、押出成形シート製造装置の溶融樹脂キャスティング後の冷却やシート熱処理のための温度調整に使用される樹脂シート等の被処理物の熱処理ロールに設けられた熱伝達効率を良好にする冷媒又は熱媒体通路の構造に関する。
【従来の技術】
【0002】一般に押出成形シート製造装置においては、押出機のTダイから一定厚の溶融樹脂を押出した後、直ちに冷却ロールに接触させて急速に冷却して固化し、その後シートを熱処理ロールで温度調整し、縦方向、横方向に延伸して所要のフィルムに加工する。上記冷却ロールは、押出機のTダイから押出された一定温度の樹脂シートを、全幅に亙って急速にむらなく冷却する必要がある。樹脂シートの幅方向に冷却温度のむらがあると、樹脂の特性がバラツキ、温度下降速度が遅いとシートの特性に悪影響を生じると共に、冷却のための接触時間を長くするため冷却ロールの径が大きくなる。
【0003】従来の押出成形シート製造装置の冷却又は加熱処理用ロールの例は、図12、図13に示したような一体物の素材にドリル加工により熱媒体の通路017、018を形成したものがある。このようなロール016は曲げ剛性が大きいが、重量が甚だしく大きく、熱容量が大きいため稼働開始時の加熱に長時間を要し、また、軸受けが大型となり、製造コストも高価で不経済なものである。なお、031は内管、032は流体の導入孔、033は流体の導出孔である。
【0004】また、図14、図15に示したような従来の冷却ロール001は、適当な一定肉厚の円筒ロール002の内側に鉄板加工で軸方向に延びる多数の仕切り板012、013で囲われた矩形断面の多数の冷媒通路015を設けた構成である。冷却ロールの回転支持軸004から導入された冷媒を、この通路015の片側から他の側に通して円筒ロール002の円筒面を冷却し、シートを冷却し、冷媒は反対側の回転支持軸005から排出される。このロール001は鉄板加工で構成されているので、前述の一体ロールと比べ、軽量で熱容量が少なく、稼働開始時の加熱に時間がかからない、また、軸受も小形で、製造コストも安価で経済的である。その他、冷却、加熱の温度調整用の熱処理ロールとして、ロール本体の軸心方向に沿ってジャケット室をロール本体の円周方向に多数並べて設け、このジャケット室内に気液二相の熱媒体を封入し、ジャケット室列の内側に冷却源又は熱源を設けた構成のロールが実公昭63−48807号に公示され市販もされている。ロール円周表面を一定温度に維持する温調ロールとして良い特性を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の鉄板加工ロール構造は冷媒の流路形状は矩形となっているが、矩形を構成する鉄板部材はロールの剛性の補強にはならないので、剛性を保持するためロールの厚みを薄くすることができない。その結果、熱伝導の効率が低くなり、冷却面積が不足し、冷却面積を増すためにはロールの径を大きくしなくてはならない。また、ロール本体の表面下に気液二相の熱媒体を封入したジャケット室を設けた温調ロールは熱伝導性が不充分であるため、急速な冷却、加熱には適しない。本発明は、剛性が大きく、熱伝達効率のよい熱処理ロールの構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の問題点に対して以下の各項の手段を以て解決を図る。
(1) 押出成形シート製造装置等に使用される樹脂シート等の被処理物を連続的に冷却又は加熱する熱処理ロールにおいて、円筒面に近接してロール軸方向に複数の円形の貫通孔を設けた中空のロール本体と、ロール本体の両側面に両側端面に固設された、前記ロール本体の複数の円形の貫通孔に通じる半径方向の熱媒体通路が設けられた一対の側板と、前記一対の側板のそれぞれに一体に固設され、前記側板の半径方向の熱媒体通路に通じる熱媒体通路を内部に有する、ロール軸方向にそれぞれ伸びる一対の回転支軸とを備えたことを特徴とする熱処理ロール。
【0007】(2) 押出成形シート製造装置等に使用される樹脂シート等の被処理物を連続的に冷却又は加熱する熱処理ロールにおいて、円筒面に近接して同一半径上に密接した一定ピッチでロール軸方向に複数の円形貫通孔を明けた中空のロール本体と、ロール本体の両側端面に芯を合わせて固設され、ロール本体の円筒面の複数の円形貫通孔に通じる半径方向の熱媒体通路が設けられた一対の側板と、側板と一体に固設され側板の半径方向の熱媒体通路に通じる熱媒体通路を軸中心に設けた熱処理ロールの両側に同一中心線上に伸びる一対の回転支持軸とにより構成され、一方の側の回転支持軸の熱媒体通路からロール本体の円形貫通孔へ冷媒又は加熱媒体を流通させ、他の側の回転支持軸の熱媒体通路から排出するようにして、樹脂シート等の被処理物を冷却又は加熱するようにした樹脂シート熱処理ロール。
【0008】(3) (1)又は2のいずれかに記載する熱処理ロールにおいて、ロールの片側の回転支持軸の中心に2重の熱媒体通路を設け、ロール本体の内部に前記回転支持軸の2重の熱媒体通路の内側通路と他の側の側板の熱媒体通路と通じる軸方向の熱媒体通路を設け、片側の回転支持軸の2重の通路の内側通路から冷媒又は加熱媒体を供給し、2重の通路の外側通路から排出するように(又は供給通路と排出通路をこれと逆に)構成した熱処理ロール。
【0009】(4) (1)乃至(3)のいずれかに記載する熱処理ロールにおいて、前記ロールの両側の側板の熱媒体通路を2重に設け、冷媒又は熱媒体がロール本体の複数の円形貫通孔の1つ置きに反対方向に流れるようにしてロールの表面の軸方向の温度分布を均等にするようにした熱処理ロール。
【0010】(5) (4)に記載する熱処理ロールにおいて、上述の複数の円形貫通孔を明けた中空のロール本体と、ロール本体の片側(熱媒体供給軸側)端面に芯を合わせて固設され、ロール本体の円筒面の複数の円形貫通孔の1つ置きに通じる半径方向の熱媒体通路が設けられた側板Aと、側板Aの通路開口部を覆い側板Aと通じている1つ置きの円形貫通孔以外の円形貫通孔に通じる熱媒体通路が設けられたリング形状の中蓋Aと、中蓋の側面を覆い中蓋Aの熱媒体通路と半径方向の複数の水通路管が取付けられている側カバーAと、軸内に2重の熱媒体通路を有し、中側の熱媒体通路は側板Aの半径方向の熱媒体通路に通じ、外側の熱媒体通路は側カバーAに取付けられた半径方向の熱媒体通路に通じるように取付けられ、側板Aと一体に固設された回転支持軸Aと、ロール本体の他の片側(熱媒体供給軸と反対側)端面に芯を合わせて固設され、ロール本体の円筒面の多数の円形貫通孔の1つ置きに通じる半径方向の熱媒体通路が設けられた側板Bと、側板Bの通路開口部を覆い側板Bと通じている1つ置きの円形貫通孔以外の円形貫通孔に通じる熱媒体通路が設けられたリング形状の中蓋Bと、中蓋Bの側面を覆い中蓋Bの熱媒体通路と半径方向の複数の水通路管が取付けられている側カバーBと、軸内に2重の片側が閉塞された熱媒体通路を有し、外側の熱媒体通路は側板Bの半径方向の熱媒体通路に通じ、内側の熱媒体通路は側カバーBに取付けられた半径方向の熱媒体通路に通じるように取付けられ、側板Bと一体に固設された回転支持軸Bと、前記回転支持軸Aと回転支持軸Bのそれぞれの2重の熱媒体通路を連結する2重の水通路管とにより構成され、回転支持軸Aの2重の通路の内側通路から冷媒又は加熱媒体を供給し、2重の通路の外側通路から排出するように(又は供給通路と排出通路をこれと逆に)したとき、冷媒又は加熱媒体がロール本体の円筒面の複数の円形貫通孔の1つ置きに反対方向に流れるようにしてロールの表面の軸方向の温度分布を均等にするようにした熱処理ロール。
【0011】(6) (5)に記載する熱処理ロールにおいて、上述のロール本体の両端部に貫通孔の1つ置きにロール本体の中心に向う切り欠き通路を設け、この切り欠き通路により円形貫通孔が1つ置きに側板A及び側板Bの熱媒体通路に通じるようにした熱処理ロール。
【0012】(7) (5)に記載する熱処理ロールにおいて、(6)に記載したような貫通孔の1つ置きにロール本体の中心に向う切り欠き通路を形成せず、側板A及び側板Bの通路開口部を覆っているリング形状の中蓋A及び中蓋Bのロール本体の円形貫通孔が1つ置きに当接する位置に、ロール本体の内周より内側に伸びて熱媒体通路となる底付きの座ぐり長穴(小判形穴)を形成し、この座ぐり長穴以外の1つ置きの円形貫通孔の位置には円形貫通孔に通じる貫通孔(熱媒体通路)が明けてある熱処理ロール。
【0013】(8) (1)乃至(6)のいずれかに記載する熱処理ロールにおいて、ロール本体の円筒面に近接して設けられた複数の円形貫通孔の中に星形多角形断面の縦通材を嵌入して冷媒又は熱媒体の流量を減らすようにした熱処理ロール。
【0014】(9) (8)に記載する熱処理ロールにおいて、上記星形多角形断面の縦通材を押出成形した耐熱媒体性及び耐熱性樹脂とした熱処理ロール。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態については、押出成形シート製造装置に使用されている大容量の冷却能力を必要とする冷却ロールを例に挙げることにする。まず、押出成形シート製造装置の溶融樹脂シート押出からシート固化、引き取りまでの概略を図に基づいて説明する。図1は押出成形用キャスティング機の冷却ロール周りの概略レイアウト図である。図に示したように、押出機のTダイ1から一定厚の溶融樹脂5を下方に押出した後、直ちに冷却ロール2(30、40)に接触させて急速に冷却して固化し、その後引取ロール3を経て、図示していない以降のシート処理(温度調整、縦方向、横方向に延伸して所要のフィルムに加工)が行われる。
【0016】
【第1の実施形態】本発明の第1の実施形態の冷却ロールを図に基づいて説明する。図2は冷却ロールの側面断面図、図3は図2の冷却ロールのA−A断面及びB矢視図、図4は図3のC部の拡大図である。冷却ロール2の構成を説明すると、図において、11はロール本体である。ロール本体11は、炭素鋼等の板材を曲げ、溶接結合し、更に所定の真円度と所定の板厚精度を保つ為に内外面を削り加工して中空の円筒形状に形成し、ガンドリル等の切削装置により、円筒面に近接して同一半径上に一定ピッチにロール軸方向の多数の円形貫通孔を明けて冷却水通路11aとしたもので、この多数(複数)の冷却水通路11aに冷媒又は加熱媒体を通過させるとき、円筒面に対して最も熱伝導効率が良くなるようにかつ円周方向の温度ムラが最も小さくなるように、図4に示した冷却水通路11aの内径dと円筒面からの距離aと冷却水通路11aの間隔bを算定したものである。冷却能力を大きくするためには、この冷却水通路11aを通る冷却水の流速を早くする必要がある。ロール本体11の両端は冷却水通路11aの1部分が露出するように、所要寸法だけ内径を大きく加工してある。
【0017】側板12は冷却ロール2の一方の回転支持軸となっている水導入軸部12aと一体の溶接構造体であり、また、側板13は冷却ロール2のもう一方の回転支持軸となっている側板軸部13aと一体の溶接構造体であり、側板12と側板13はロール本体11の両側に芯を合わせて液密に溶接固定されている。冷却ロール2は水導入軸部12aと側板軸部13aに設けられた軸受20、20により回転可能に支えられ、側板軸部13aに固設された歯車23を介して図示略の動力装置により回転駆動される。12b、13bはそれぞれ側板12、13に溶接固定された環状の突起で、適当な間隔で冷却水通路となる切り欠き12c、13cが設けてある。また、12d、13dはそれぞれ側板12、13に溶接固定された環状の突起で、突起12b、13b、12d、13dの高さはロール本体11の端面と面一に合わせてある。突起12d、13dには等角度間隔で軸中心方向に複数の突き通し孔が明けられ、同突き通し孔と同一線上の先の水導入軸部12aと側板軸部13aに明けられた突き通し孔12e、13eに複数の水通路管15が液密に溶接固定されている。18は冷却ロール2内に漏れた冷却水を抜くための排水用プラグである。ロール本体11の端部と突起12b、13b、12d、13dは側カバー16でパッキン19を挟んで覆われ多数のボルトで液密に固定される。ロール本体11の端部と側板12、13と突起12b、13b、12d、13dとで冷却水の通路が形成されている。水導入軸部12aと側板軸部13aとの間に水通路管14が液密に溶接固定されている。また、水導入軸部12aに水導入管17が差し込まれ、2重の水通路となっている。
【0018】調温された冷却水はロータリジョイント22を通して水導入管17へ供給され、水通路管14、側板軸部13aの水通路、水通路管15を経て側板13の水通路からロール本体11の冷却水通路に流れ、ロール本体11の円筒面に接している樹脂シート5を冷却し、樹脂シート5から奪った熱で温められた水は、側板12の水通路、水通路管15、水導入軸部12aの2重管部の外側の水通路を通ってロータリジョイント21から排出される。この構造においては、供給通路と排出通路を逆に、即ち、水導入軸部12aの2重管部の外側の水通路から冷却水を供給し、水導入管17から温められた水を排出するようにしても差し支えない。この冷却ロール2の構成は、冷却水の代わりに熱媒体を回流させることにより、加熱ロールにも転用可能である。
【0019】
【第2の実施形態】本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態のロールの両側の側板の冷却水通路を2重に設け、冷却水がロール本体の多数の冷却水通路の1つ置きに反対方向に流れるようにして、ロールの表面の軸方向の温度分布を均等にするようにしたものである。本発明の第2の実施形態に係る冷却ロールを図に基づいて説明する。図5は冷却ロールの構成を示す断面図、図6は図5R>5の冷却ロールのD矢視、F断面、G断面を示す図、図7R>7は図5の冷却ロールのE−E断面図である。
【0020】冷却ロール30の構成を説明すると、図において、ロール本体31は第1の実施形態のロール本体11と殆ど同じ構造のロールであり、円形貫通孔を明けた冷却水通路31aの内径と、ロール本体31の円筒面からの距離と冷却水通路31aの間隔は、図4に示した第1の実施形態の冷却水通路11aの関連と全く同じように算定されたものである。図6のF断面に示すように、ロール本体31の両端の冷却水通路31aは一つ置きに側板側の水通路に通じるように、内側半径方向に所要長さだけ切り欠き31bが設けられている。側板32は冷却ロール30の一方の回転支持軸となっている水導入軸部32aと一体の溶接構造体であり、また、側板33は冷却ロール30のもう一方の回転支持軸となっている側板軸部33aと一体の溶接構造体であり、側板32とが沸いた33はロール本体31の両側に芯を合わせて液密に溶接固定されている。冷却ロール30は水導入軸部32aと側板軸部33aに設けられた軸受20、20により回転可能に支えられ、図示略の動力装置により回転駆動される。
【0021】32b、33bはそれぞれ側板32、33に溶接固定された環状の突起で、適当な間隔で冷却水通路となる切り欠き32c、33cが設けてある。また、32d、33dはそれぞれ側板32、33に溶接固定された環状の突起で、突起32b、33b、32d、33dの高さはロール本体31のは紙面と面一に合わせてある。突起32d、33dには等角度間隔で軸中心方向に複数の貫通孔が明けられ、同貫通孔と同一線上の先の水導入軸部32aと側板軸部33aに明けられた貫通孔32e、33eとを通じる複数の水通路管15が液密に溶接固定されている。18は冷却ロール30内に漏れた冷却水を抜くための排水用プラグである。貫通孔32eは水導入管37に通じている。また、貫通孔33eは側板軸部33aの水通路33グラムに通じている。
【0022】35は側板32の通路開口部を覆う中蓋であり、中蓋35には側板32の水通路と通じている1つ置きの切り欠き31bを備えている冷却水通路31a以外の冷却水通路31aに通じる貫通孔35aが明けられている。36は中蓋35の側面を覆っている側カバーで、突起32b、33bと同様に環状の突起36aを有し、冷却水通路となる切り欠き36bを設けてある。側カバー36の開口部には冷却水通路となる複数の曲管38が取付けられ、曲管38には直管39が結合され、直管39は水導入軸部32aの貫通孔32fの開口部と溶接固定されている。貫通孔32fは水導入軸部32aの水通路32iに開口している。
【0023】側板33の取付け部品も側板32と同様で、中蓋35、側カバー36が取り付けられ、複数の曲管38及び直管39が結合され、直管39派が沸いた軸部33aに明けられた貫通孔33fの開口部と溶接固定されている。貫通孔33fは中側水通路33hに通じている。
【0024】34は水導入軸部32aと側板軸部33aの水通路管の外側水通路を形成する水通路管である水導入管37は水導入軸部32aの嵌合部32gに嵌合し、側板軸部33aの中側の水通路33hに結合され、水導入軸部32aと側板軸部33aの2重の水通路の中側を分担し開口部にはロータリジョイント22が結合されている。水導入軸部32aには、図5及び図7に示すように、水通路管34と水導入管37との間の外側水通路から水導入軸部32aの外側水通路へ通じる複数の貫通孔32hが明けられている。
【0025】調温された冷却水はロータリジョイント22から水導入軸部32aの中側水通路となっている水導入管37に供給され、冷却水の一部(半分の量)は貫通孔32eから水通路管15、側板32の水通路を経てロール本体31の冷却水通路31aを通ってロール本体31の表面を冷却して樹脂シートを冷やし、側板33の水通路、水通路管15、貫通孔33eを経て側板軸部33aの外側の水通路33gに流れ込み、さらに水通路管34の外側の水通路、貫通孔32h、水導入軸部32aの外側水通路32iを経てロータリジョイント21から排水される。
【0026】一方、水導入管37に供給された冷却水の残り半分の量は、水導入管37の最奥端の水通路33hから貫通孔33f、直管39、曲管38、側カバー36と中蓋35で囲まれた水通路、中蓋35の貫通孔35aから(上述と逆方向に)ロール本体31の冷却水通路31aを通ってロール本体31の表面を冷却して樹脂シートを冷やし、側板32側の中蓋貫通孔35a、側カバー36と中蓋35で囲まれた水通路、曲管38、直管39、貫通孔32fを経て、水導入軸部32aの外側水通路32iに流れ込んで上述の冷却排水と合流し、一緒にロータリジョイント21から排水される。この第2の実施形態の構造においても、供給通路と排出通路を逆に、即ち、水導入軸部32aの2重管部の外側の水通路から冷却水を供給し、水導入管37から温められた冷却排水を排出するようにしても差し支えない。
【0027】前述したように、ロール本体31の冷却水通路31aの両端に設けられた側板32、33の水通路に通じる内側方向の切り欠き31bは、一つ置きに備えられているので、冷却水はロール本体31の多数の冷却水通路31アールの一つ置きに反対方向に流れ、冷却水通路31aの入口と出口に多少の温度差があっても、ロール本体31の表面の軸方向の温度分布を均等にすることができる。従って冷却水の流量を無闇に早くする必要はなく、冷却水用のポンプ容量、温調設備等をより小型のものにすることができる。この冷却ロール30の構成は、冷却水の代わりに熱媒体を回流させることにより、加熱ロールにも転用可能である。
【0028】
【第3の実施形態】図8は図5の冷却ロールの冷却水の他の通路構造を示す部分断面図、図9は図8のH−H断面により冷却水の通路形状を示す部分図である。本発明の第3の実施形態は、上述の第2の実施形態における、ロール本体31の冷却水通路31aの両端の内側方向の切り欠き31bを設けず、図9に示したように、側板32及び側板33の水通路開口部を覆っている一対のリング形状の中蓋45(リング外形形状は中蓋35と近似)のロール本体41(第2の実施形態における31)の冷却水通路41a(第2の実施形態における31a)が一つ置きに当接する位置に、内周側に伸びる底付きの座ぐり長穴(小判形穴)45aを形成し、この座ぐり長穴45a以外の一つ置きの冷却水通路41aの位置にはこの冷却水通路41aに通じる貫通孔45bを明けたものである。その他の構成と作用は、第2の実施形態と全く同様であるので、重複を避け説明を省略するが、この構造は大型のロール本体41の加工部分を減らし、より軽い中蓋45を座ぐり加工をするようにして、部品加工時のハンドリングを容易にすることにより加工コストを減少するようにしたものである。
【0029】
【第4の実施形態】本発明の第4の実施形態は上述の第1〜第3の実施形態におけるロール本体の冷却水通路11a、31a、41aに減容縦通材を挿入したものであり、図に基づいて説明する。図10は、図2、図5、図8R>8の冷却ロールの冷却水通路面積を減らした構造を示す部分断面図で、図11は同様に冷却ロールの冷却水通路面積を減らした別の構造を示す部分断面図である。この実施形態の構成と作用は、第1〜3の実施形態とも全く同様であるので、ロール本体の冷却水通路周辺についてだけ説明し、その他の部分の説明は省略する。説明に用いる部品番号は、第1の実施形態の部品番号を以て代表する。図10はロール本体11の冷却水通路11aに、断面三角形の長さが冷却水通路11aの長さと略同寸法の縦通材48を入れたときの断面を示している。冷却水通路11aの断面積に対して縦通材48の断面積は略1/2であるので、縦通材48が入れてあるときの冷却水通路面積は、縦通材48が入れてないときの冷却水通路面積の約1/2となる。即ち、同一冷却面積に対し冷却水流量は半分で済むことになり、冷却効率が大幅に向上する。図11はロール本体11の冷却水通路11aに、断面が星形の長さが冷却水通路11aの長さと略同寸法の縦通材49を入れたときの断面を示している。この場合の冷却水通路11aの断面積に対して縦通材49の断面積は1/2より大きいので、縦通材49が入れてあるときの冷却水通路面積は、縦通材49が入れてないときの冷却水通路面積の1/2より小さくなり、同一冷却面積に対し冷却水流量は半分以下となり、冷却効率が大幅に向上する。上記の三角、星形に限らず、冷却水の流れ抵抗が著しく増大しない程度の星形断面形状を有する縦通材を差し込むことにより冷却水通路面積を減らし、冷却効率を向上させることができるので、ロール本体のサイズをより小さくすることができる。このような、減容縦通材の材料としては、耐水性の樹脂の押出成形材の使用が便利である。また、この冷却ロールの構成は加熱ロールにも転用可能であるが、そのときには減容縦通材の材料は耐熱媒体性、耐熱性の樹脂の押出成形材を使用する。
【0030】
【発明の効果】本発明の熱処理ロールは熱媒体の通路をロール本体の円周面に沿って穿孔された断面円形の貫通孔としているので、貫通孔をロール本体表面に近接し、貫通孔の間隔を狭くしてもロール本体の剛性強度を保持することができる。また、貫通孔の内面が熱伝導面積となるので熱伝導性が良好になり、その結果ロールの熱伝導効率がよくなり、熱処理ロール本体の外径を小さくすることが可能となり、製作コストを大幅に下げることができる。(請求項1、2、3)
【0031】請求項4〜6に記載の熱媒体がロール本体の多数の熱媒体通路の1つ置きに反対方向に流れるようにした熱処理ロールは、熱媒体通路の入口と出口に多少の温度差があっても、ロール本体の表面の軸方向の温度分布を均等にすることができ、従って熱媒体の流量を無闇に早くする必要はなく、熱媒体用のポンプ容量、温調設備等をより小型のものにすることができる。
【0032】請求項7に記載の側板に設けた2重の熱媒体通路構造において中蓋に一つ置きに内周側に伸びる底付きの座ぐり長穴と貫通孔を交互に設けた構造は、上記の請求項4〜6に記載のロールの2重の熱媒体通路構造より簡単な部品形状になるので、加工コストを減らす効果がある。
【0033】請求項8及び9に記載のロール本体の熱媒体通路に減容縦通材を挿入した構造は、冷却水通路面積が、縦通材を入れてないときの冷却水通路面積の1/2以下となるので、同一冷却面積に対し冷却水流量は半分以下となり、冷却効率が大幅に向上し、ロール本体のサイズをより小さくすることができ、ポンプ等の熱媒体供給設備の能力サイズを小型にすることができ、製造コストが下がる。以上に述べたように、この熱処理ロールの構造は、特に樹脂シート製造装置のキャスティングに使用する大容量の冷却能力を必要とする冷却ロールに用いてその効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】押出成形用キャスティング機の冷却ロール周りの概略レイアウト図である
【図2】本発明の第1の実施形態に係る冷却ロールの構成を示す断面図である。
【図3】図2の冷却ロールのA−A断面及びB矢視図である。
【図4】図3のC部の拡大図である。
【図5】本発明の第2の実形態に係る冷却ロールの構成を示す断面図である。
【図6】図5の冷却ロールのD矢視、F断面、G断面を示す図である。
【図7】図5の冷却ロールのE−E断面図である。
【図8】図5の冷却ロールの冷却水の他の通路構造を示す部分断面図である。
【図9】図8のH−H断面により冷却水の通路形状を示す部分図である。
【図10】図2及び図5のロールシリンダの冷却水通路面積を減らした構造を示す部分断面図である。
【図11】図2及び図5のロールシリンダの冷却水通路面積を減らした別の構造を示す部分断面図である。
【図12】従来の熱処理用ロールを示す断面図である。
【図13】図12のP−P断面図である。
【図14】従来の熱処理用ロールの他の例を示す断面図である。
【図15】図14のQーQ断面図である。
【符号の説明】
1 Tダイ
2 冷却ロール
5 樹脂シート
11 ロール本体
11a 冷却水通路
12 側板
12a 水導入軸部
13 側板
13a 側板軸部
14 水通路管
15 水通路管
16 側カバー
17 水導入管
31 ロール本体
31a 冷却水通路
32 側板
32a 水導入軸部
33 側板
33a 側板軸部
34 水通路管
35 中蓋
36 側カバー
37 水導入管
38 曲管
41 ロール本体
41a 冷却水通路
48 三角縦通材
49 星形縦通材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 押出成形シート製造装置等に使用される樹脂シート等の被処理物を連続的に冷却又は加熱する熱処理ロールにおいて、円筒面に近接してロール軸方向に複数の円形の貫通孔を設けた中空のロール本体と、ロール本体の両側面に両側端面に固設された、前記ロール本体の複数の円形の貫通孔に通じる半径方向の熱媒体通路が設けられた一対の側板と、前記一対の側板のそれぞれに一体に固設され、前記側板の半径方向の熱媒体通路に通じる熱媒体通路を内部に有する、ロール軸方向にそれぞれ伸びる一対の回転支軸とを備えたことを特徴とする熱処理ロール。
【請求項2】 押出成形シート製造装置等に使用される樹脂シート等の被処理物を連続的に冷却又は加熱する熱処理ロールにおいて、円筒面に近接して同一半径上に密接した一定ピッチでロール軸方向に複数の円形貫通孔を明けた中空のロール本体と、ロール本体の両側端面に芯を合わせて固設され、ロール本体の円筒面の複数の円形貫通孔に通じる半径方向の熱媒体通路が設けられた一対の側板と、側板と一体に固設され側板の半径方向の熱媒体通路に通じる熱媒体通路を軸中心に設けた熱処理ロールの両側に同一中心線上に伸びる一対の回転支持軸とにより構成され、一方の側の回転支持軸の熱媒体通路からロール本体の円形貫通孔へ冷媒又は加熱媒体を流通させ、他の側の回転支持軸の熱媒体通路から排出するようにして、ロール本体の円筒面に接している樹脂シート等の被処理物を冷却又は加熱するようにしたことを特徴とする熱処理ロール。
【請求項3】 請求項1又は2のいずれかに記載する熱処理ロールにおいて、ロールの片側の回転支持軸の中心に2重の熱媒体通路を設け、ロール本体の内部に前記回転支持軸の2重の熱媒体通路の内側通路と他の側の側板の熱媒体通路と通じる軸方向の熱媒体通路を設け、片側の回転支持軸の2重の通路の内側通路から冷媒又は加熱媒体を供給し、2重の通路の外側通路から排出するように(又は供給通路と排出通路をこれと逆に)構成したことを特徴とする熱処理ロール。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載する熱処理ロールにおいて、前記ロールの両側の側板の熱媒体通路を2重に設け、冷媒又は熱媒体がロール本体の複数の円形貫通孔の1つ置きに反対方向に流れるようにしてロールの表面の軸方向の温度分布を均等にするようにしたことを特徴とする熱処理ロール。
【請求項5】 請求項4に記載する熱処理ロールにおいて、上述の多数の円形貫通孔を明けた中空のロール本体と、ロール本体の片側(熱媒体供給軸側)端面に芯を合わせて固設され、ロール本体の円筒面の複数の円形貫通孔の1つ置きに通じる半径方向の熱媒体通路が設けられた側板Aと、側板Aの通路開口部を覆い側板Aと通じている1つ置きの円形貫通孔以外の円形貫通孔に通じる熱媒体通路が設けられたリング形状の中蓋Aと、中蓋の側面を覆い中蓋Aの熱媒体通路と半径方向の複数の水通路管が取付けられている側カバーAと、軸内に2重の熱媒体通路を有し、中側の熱媒体通路は側板Aの半径方向の熱媒体通路に通じ、外側の熱媒体通路は側カバーAに取付けられた半径方向の熱媒体通路に通じるように取付けられ、側板Aと一体に固設された回転支持軸Aと、ロール本体の他の片側(熱媒体供給軸と反対側)端面に芯を合わせて固設され、ロール本体の円筒面の複数の円形貫通孔の1つ置きに通じる半径方向の熱媒体通路が設けられた側板Bと、側板Bの通路開口部を覆い側板Bと通じている1つ置きの円形貫通孔以外の円形貫通孔に通じる熱媒体通路が設けられたリング形状の中蓋Bと、中蓋Bの側面を覆い中蓋Bの熱媒体通路と半径方向の複数の水通路管が取付けられている側カバーBと、軸内に2重の片側が閉塞された熱媒体通路を有し、外側の熱媒体通路は側板Bの半径方向の熱媒体通路に通じ、内側の熱媒体通路は側カバーBに取付けられた半径方向の熱媒体通路に通じるように取付けられ、側板Bと一体に固設された回転支持軸Bと、前記回転支持軸Aと回転支持軸Bのそれぞれの2重の熱媒体通路を連結する2重の水通路管とにより構成され、回転支持軸Aの2重の通路の内側通路から冷媒又は加熱媒体を供給し、2重の通路の外側通路から排出するように(又は供給通路と排出通路をこれと逆に)したとき、冷媒又は加熱媒体がロール本体の円筒面の複数の円形貫通孔の1つ置きに反対方向に流れるようにしてロールの表面の軸方向の温度分布を均等にするようにしたことを特徴とする熱処理ロール。
【請求項6】 請求項5に記載する熱処理ロールにおいて、上述のロール本体の両端部に貫通孔の1つ置きにロール本体の中心に向う切り欠き通路を設け、この切り欠き通路により円形貫通孔が1つ置きに側板A及び側板Bの熱媒体通路に通じるようにしたことを特徴とする熱処理ロール。
【請求項7】 請求項5に記載する熱処理ロールにおいて、請求項6に記載したような貫通孔の1つ置きにロール本体の中心に向う切り欠き通路を形成せず、側板A及び側板Bの通路開口部を覆っているリング形状の中蓋A及び中蓋Bのロール本体の円形貫通孔が1つ置きに当接する位置に、ロール本体の内周より内側に伸びて熱媒体通路となる底付きの座ぐり長穴(小判形穴)を形成し、この座ぐり長穴以外の1つ置きの円形貫通孔の位置には円形貫通孔に通じる貫通孔(熱媒体通路)が明けてあることを特徴とする熱処理ロール。
【請求項8】 請求項1乃至7のいずれかに記載する熱処理ロールにおいて、ロール本体の円筒面に近接して設けられた複数の円形貫通孔の中に星形多角形断面の縦通材を嵌入して熱伝導面積に対して冷媒又は熱媒体の流量を減らすようにしたことを特徴とする熱処理ロール。
【請求項9】 請求項8に記載する熱処理ロールにおいて、上記星形多角形断面の縦通材を押出成形した耐熱媒体性及び耐熱性樹脂としたことを特徴とする熱処理ロール。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【図12】
image rotate


【図13】
image rotate


【図14】
image rotate


【図15】
image rotate


【公開番号】特開2002−339950(P2002−339950A)
【公開日】平成14年11月27日(2002.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−148542(P2001−148542)
【出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】