説明

熱分析センサー並びに熱分析センサーを製造する方法

【課題】感度の増大した熱分析センサーを提供する。
【解決手段】基板1に熱的に連結された熱源と、センサーに形成された少なくとも1つの測定位置3との間で熱流を伝達することができ、基板1上の測定位置3に形成された熱電対配列部5、6、7、8、9、10とを備えた熱分析センサーにおいて、熱電対配列部の特殊な形状及び/又は基板1のための材料の選択を用いて感度の増大が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を用いる熱分析センサーに関する。該基板は、該基板に熱的に連結された熱源と該センサー上に形成された少なくとも1つの測定位置との間で熱の流れを伝達することができる。更に、本発明の熱分析センサーは、熱起電力信号を分配するため基板の略平坦表面に熱電対配列部を形成している。また、本発明の範囲に含まれるものは、この種のセンサーを製造する方法である。
【背景技術】
【0002】
上記種類の熱分析センサーは、物質、混合物質及び/又は反応を被る混合物の物理的及び/又は化学的特性を測定するため使用される。この測定は、温度又は時間の関数として実行され、測定されているサンプルは、制御された温度プログラムの実行下にある。他の知られた例は、微分熱流計及び微分パワー補償熱流計である。これらの用途の両方では、サンプルの分析は、参照サンプルに関連付けられて実行される。従って、これらの場合で使用されるセンサーは、2つの測定位置、即ち、サンプル上で測定を実行するための一つの位置と、参照サンプル上で測定を実行するための他の位置とを持っている。前述した用途のうち最初のものでは、熱電対配列部により分配された熱起電力信号は、サンプルへの熱流と、参照サンプルへの熱流との間の差異に関する測度を表している。次に名付けられた用途では、熱電対配列部により分配された熱起電力信号は、サンプルと参照サンプルとの間の温度差がゼロに調整されるような態様でサンプル及び参照サンプルへの各々の熱流率を制御するため使用される。
【0003】
熱分析センサーは、可能ならば当該分析の全温度範囲をカバーする、可能となる最高感度を持つべきである。即ち、熱流の関数として生成された熱起電力信号が、信号電圧の点で可能な限りに強くあるべきである。このことは、良好な信号ノイズ比率を得ることを援助する。従って、この要求を満足させる方法として、最先端技術を用いた熱分析センサー(DE 39 16 311 C2 及び EP 0 990 893 A1)は、個々の熱電対電圧の総和として熱起電力信号が生成される態様で回路内に連結された熱電対配列部の一連の熱電対接続部を持っている。熱電対配列部を形成する熱電対接続部は、測定位置の中心の回り(1より多い測定位置が存在する場合には複数の測定位置の複数の中心の回り)の円状パターンで配置され、方位角方向に互いに可能な限り接近して間隔配置されている。その結果、これらの現行の構成では、熱電対接続部の数を更に増加させることを可能にするための有効なスペースが存在しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した種類の熱分析センサーにおいて感度の更なる増大を達成するという課題を解決することをその目的とする。また、本発明は、そのようなセンサーを製造する方法を提供することもその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、基板を用いる熱分析センサーであって、該基板は、該基板に熱的に連結された熱源と、該センサーに形成された少なくとも1つの測定位置との間で熱流を伝達することができ、熱分析センサーは、更に、熱起電力信号を分配するため基板の略平坦表面に形成された熱電対配列部を備え、該熱電対配列部は、2つの異なる熱電対材料から構成され且つ熱電対コラムを形成するように連続的に接続された熱電対接続部の連続鎖を備える。該熱電対制御の連続鎖は、測定位置の中心の回りに方位角方向に亘って存在し、個々の熱電対接続部は、測定位置の中心から交互に異なる径方向距離で配列されている。本発明の解決手段によれば、上記中心に最も近い第1の熱電対接続部と連続鎖において2つの隣接する第2の熱電対接続部との間に方位角方向に閉じ込められた間隙表面部の少なくとも1つが、連続鎖において互いに直接隣接した第3の熱電対接続部と第4の熱電対接続部とを含む。
【0006】
上記熱電対接続部の連続的に接続された鎖により形成された熱電対コラムでは、該鎖で直接隣接する任意の2つの熱電対接続部が径方向に互いに対してある距離を有する。かくして、測定位置の中心に向かう方向又は測定位置の中心から離れる方向のいずれかに熱流が存在するとき、センサーの温度依存抵抗のため鎖の任意の2つの隣接する熱電対接続部の間に温度差が生じる。この温度差は、当該鎖の隣接する熱電対接続部の間に温度電圧を生じさせ、直列鎖配列のために、当該電圧は電圧総和として加算される。かくして、その結果発生した全体的な熱起電力信号は、直接隣接する第1及び第2の熱電対接続部の対の各々で、並びに、直接隣接する第3及び第4の熱電対接続部の対で発生した個々の温度電圧の総和を表している。熱電対材料の対は、熱電対接続部の全てに対して同じであってもよい。しかし、明らかなように、異なる材料の対を唯一つだけ使用する代わりに、熱電対を形成するため複数の異なる対の熱電対材料を使用することもできる。直接隣接する第3及び第4の熱電対接続部の各々は、第1の熱電対接続部の一つと、2つの直ぐに隣接する第2の熱電対接続部との間に方位角方向に閉じ込められた自由間隙空間に配列されているので、センサー表面に利用可能なスペースは、熱電対接続部の総数を増大させるためオプションで利用される。この配列では、第3の熱電対接続部は、第1の熱電対接続部に比較的近接した径方向距離で配列することができ、後者は、測定位置の中心から最短の径方向距離で配置され、第4の熱電対接続部は、第2の熱電対接続部に比較的近い径方向距離で配列することができる。分析サンプルを保持するように機能するるつぼは、測定位置で、第2及び第4の熱電対接続部が測定位置の中心からより大きい半径上にあるが故に覆われていない状態のままである一方で、該るつぼの底部表面が第1及び第2の熱電対接続部を覆うように寸法形状を定めることができる。この態様で設計されたるつぼを用いた場合、熱電対配列部は、るつぼの近傍で生じ、熱源とるつぼとの間で交換される熱流に対応する径方向温度勾配を測定する際に特に有効となる。
【0007】
本発明の特に有利な実施例は、第1の熱電対接続部が、測定位置の中心に中央部が位置するところの第1の円上にあり、第2の熱電対接続部が、第1の円と同心で該第1の円の半径より大きい半径を有する第2の円上にあり、第3の熱電対接続部が、第1の円と同心で、第1の円の半径より大きく第2の円の半径よりも小さい半径を有する第3の円上にあり、第4の熱電対接続部が、第1の円と同心で、第3の円の半径よりも大きい半径を有する第4の円上にある形態を使用する。この構成は、1つの測定位置又は複数の測定位置(当該構成が1より多く測定位置を持つ場合)の中心に関する径方向対称性の要求に従っており、それは、対称性の要求と両立可能であるサンプルるつぼの径方向に対称的な慣用形状にも従っている。当該熱分析センサーのこの実施例で使用するように設計された、るつぼの円形底部表面は、第3の円の半径よりも大きいが第2の円の半径よりも小さい半径で寸法が定められている。
【0008】
完全な径方向対称性に可能な限り接近させるため、熱電対が、等しい角度間隔で夫々の円上に配列されると更に有用となる。径方向対称性を可能な限り完全にするため、当該鎖において隣接する第1及び第2の熱電対接続部の間の熱電対材料が、直線状ストリップ区分の形状で延在すると共に、当該鎖で直ぐに隣接し、同じ間隙領域内にある第3及び第4の熱電対接続部の間の熱電対材料が、直線状ストリップ区分の形状で同様に延在すると同様に有用となる。これらの場合における全体的な熱電対配列部は、二重星、即ち、測定位置の中央ポイントに中心を定められ、互いに入れ子になった2つの個々の星の外観を呈する。この設計では、表面領域が非常に効率的に使用され、特別に多数の熱電対接続部の配列が可能となり、これに相応しいセンサーの高い感度が実現する。更なる利点として、この配列は、より外側の星の熱電対接続部の内部円が、より内側の星の熱電対接続部の外部円よりも小さい半径を有する限り、更に入れ子になった星を追加することにより拡張可能である。
【0009】
本発明は、第3の熱電対接続部の各々を、星の次の割れ目にあるそれに隣接した第4の接続部のものに接続する熱電対材料が、方位角方向に向けられたトラック部を含むという径方向対称性を達成するという目的を更に奏する。この方位角方向のトラック部は、その(測定位置の中央ポイントからの)半径が、星の割れ目を互いに分離する第2の熱電対接続部の円半径よりも僅かに大きいところの円の区分の形状を取り得る。この配列では、方位角方向の部分の一端部が、第4の熱電対接続部を形成するため2つの熱電対材料の他方からなるトラック部の端部と合致することができ、その一方で、方位角部分の他方の端部は、隣接する割れ目の第3の熱電対接続部へと延在する径方向部分へと続くことができる。
【0010】
本発明の熱分析センサーを処理回路に接続するために、コネクターターミナルは、基板の表面上に形成されるという実用的な目的を持っている。
【0011】
これらのターミナルは、熱電対コラムの端部に接続され、熱分析センサーの信号を分岐するように機能する。それらは、処理回路への接続ワイヤを取り付けることができる、平坦なコネクターパッド又はコネクタースポットの形状に構成することができる。
特に、1つより多い測定位置がセンサーに配列されることが本発明の範囲内にあると考えられる。詳しくは、測定位置の一つは参照位置として機能することができ、その一方で、他の測定位置はテストサンプルを受け入れるように機能する。参照位置は、空の状態のままであるか、又は、既知の特性の不活性の参照サンプルがその位置を占めることができる。差分熱量実験を実行するべき場合には、個々の測定位置からの夫々の熱起電力信号を、参照位置と、サンプル位置の各々との間の夫々の差分信号を直接得ることができるように、適切な回路構成を通して結合することができる。
【0012】
本発明に係るセンサーの重要な実施例は、一つのセンサーユニットに配列された2つの測定位置を有する。この配列では、測定位置の一つを、参照位置として、他方をサンプル位置として使用することができる。この形態は、当業者に知られている、差分熱流カロリー計算のため使用される配列に類似している。
本発明の有利な代替実施例では、一対の位置の中心の間の直線ラインが他方の対の中心の間の直線ラインと垂直に交差し、その逆も成り立つ形態において、一つのセンサーユニット上に4つの測定位置を配列することが考えられる。かくして、4つの測定位置の中心は、仮想の正方形のコーナーにある。この配列は、測定位置の全ての温度対称性を最適化するという点で有利である。
【0013】
この段階までに論じられたセンサーの熱分析配列は、測定位置と熱源との間の熱流を検知し、又は、異なる測定位置に連係された熱流の間の差異を検知するように機能する。これに加えて、更なる熱電対配列部が測定位置の絶対温度を表す熱起電力信号を分配するという目的のため基板の表面上の測定位置に形成され、別個のコネクターターミナルが絶対温度を表す信号を分岐させる、本発明の実施例を提供することが有利であると考えられる。熱電対は、温度差の直接的な測定値を提供することしかできないということが知られている。絶対温度測定が実行されるべき場合、測定位置の一つの温度が知られているか又は一定値に保持されなければならない。当該技術分野の状況によれば、測定位置の一つの既知の温度への露出は、センサーの外部で行われる。これにより測定位置の絶対温度に関して得られた情報は、例えば、複数の測定位置を備えたセンサーにおける温度対称性からの逸脱を数学的に修正するための使用に供することができる。それを使用する場合には、そのような逸脱が測定位置の間の単なる差分温度測定によっては検出結果から漏れてしまう場合、並びに、逸脱を検出することができないと分析結果に誤差を引き起こす場合がある。非対称性の結果として、温度差は、異なる測定位置における熱流の間の差異には正確に相関しないからである。
【0014】
実用的な設計形態では、絶対温度を表す熱起電力信号を供給するように作用する熱電対配列部は、測定位置を取り囲む熱電対接続部により範囲が制限された表面に配列された第1の熱電対材料を含む領域を有し、コネクター部が該表面上に配列されたコネクターターミナルの一つへと導いている。この形態では、絶対温度の検出のための更なる熱電対配列部が、測定位置の中心の回りに集中され、かくして、測定位置、即ち測定位置を示すサンプルとの直接的な熱接触にある。可能な限り当該配列の径方向対称性を最適化するための実用的な手段として、第1の熱電対材料の範囲が制限された領域を円形リングの形態に設計することが提案されている。
【0015】
絶対温度を表す熱起電力信号を生成するため、信号を分岐することを可能にするため、第2の異なる熱電対材料を備えた熱電対接続部が、第2の熱電対材料が表面上に形成されたコネクターターミナルの一つへと延在している状態で、第1の熱電対材料の範囲を制限された部分上に配列されている。
【0016】
簡素化の改善、並びに、センサー上の利用可能な表面空間の特別に効率的な使用法は、測定位置のうち2つがセンサー上に形成され、2つの測定位置の第2の熱電対材料の間の接続部が共通のターミナルへと回送されている状態で、基板上に形成される設計形態を通して達成される。測定位置の絶対温度を表す熱電対信号は、共通のターミナルと、2つの測定位置で第1の熱電対材料に接続された2つのターミナルとの間で夫々の電圧を分岐することにより得られる。
【0017】
基板上に配列されなければならないコネクターターミナルのパターンを最小化するという目的を有する更なる実用的な実施例では、測定位置のうち2つがセンサー上に形成され、接続は、測定位置と連係された夫々の熱電対コラムの2つの電気的に等価な端部の間で基板上に形成される。他方、2つの熱電対コラムの他方の端部は、基板上に形成されたターミナルに接続され、2つの熱電対コラムの各々の熱起電力信号の間の差異を分岐するように機能する。この形態では、2つの熱電対コラムは、それらが、互いに電気的に逆になるように接続され、2つのターミナルで生じる熱起電力信号が2つの測定位置における温度差を表すという結果をもたらす。
【0018】
結果を評価し、修正を計算するために、2つの熱電対コラムの夫々の出力信号を別々に分岐することを可能とすることが更に望ましい。再び、基板上に要求されるコネクターターミナルの構造を最小化するという関心事において、熱電対コラムの2つの電気的に等価な端部の間の前述した接続部が、基板上に形成された共通のターミナルにも接続される場合には有利となる。かくして、各熱電対コラムの各々の出力信号は、共通のターミナルと各々の熱電対コラムの他方の端部のターミナルとの間で別々に分岐できる。
【0019】
本発明の範囲内において、特に基板に形成された熱電対配列部が厚膜配列として構成されるということが考えられる。基板上で熱電対配列部を製造するための厚膜技術を使用するというコンセプトは、上記参照されたドイツ特許DE 39 16 311 C2と、現在継続中のドイツ特許出願公開DE 39 16 311 A1と、で与えられ、厚膜技術を使用することにより達成される利点について議論されている。これらの2つの文書の開示内容は、ここで参照したことにより、本願に組み込まれる。特に、厚膜技術を使用することは、熱電対配列部の個々の構造要素を外側に対して、即ち、測定位置に配置された1つ又はそれ以上の参照サンプルるつぼに対して絶縁するという課題への簡単な解決法を提供する。
【0020】
センサーの所望の温度的に不活性の振る舞い及び耐久性を達成するために、基板がセラミック材料から構成されるのが有利となる。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、前述した目的に合致するための更なる解答は、基板に熱的に連結された熱源と、センサー上に形成された少なくとも1つの測定位置との間で熱流を運ぶことができ、熱起電力信号を分配するため基板の略平坦表面に形成される熱電対配列部を更に備える、該基板を用いる熱分析センサーに対して、提案される。熱電対配列部は、2つの異なる熱電対材料から構成される連続接続された熱電対接続部の鎖を備える。本発明の解答によれば、熱電対接続部は、互いの頂部に載った2つ以上の平面内で配列され、各平面は、絶縁層により隣接する平面から絶縁され、各平面は、回路構成部の一区分を備え、各区分は、熱電対接続部を接続するコンダクターリードにより形成され、全体に亘る回路構成部は、内部層接点により互いに当該区分の適切な端部を接続することにより形成される。
【0022】
概説された本発明の解答によれば、全体的に亘る回路構成部は少なくとも2つの区分へと小さく区分化される。個々の区分に属する熱電対接続部が互いの頂部に配列されるので、センサーの利用可能な表面積は、互いの頂部に層をなして積み重ねられた平面の数に従って倍増される。その結果、回路構成部は、増倍された数の熱電対接続部を含むことができる。その結果は、回路構成部により分配された熱起電力信号の強度並びにセンサーの感度の相応しい増大である。
【0023】
前述した本発明のコンセプトを実現する有利な方法として、熱電対配列部の熱起電力信号を分岐するためのターミナルは、基板に対して頂部平面内に形成され、底部平面を占める回路区分の一端部は相互層の接点を通してターミナルの一つへと接続される。頂部平面に載っているターミナルから熱起電力信号を分岐する能力は、熱分析器具におけるセンサーの設置及び接続を容易にする。
【0024】
有利な実施例では、回路構成部の一区分内にある熱電対接続部は、直列接続され、これらの区分は、熱電対コラムが形成されるように回路構成部を形成するため直列接続される。
【0025】
好ましくは、熱電対接続部は、それらが測定位置の回りに方位角方向に進行するように配列されると共に、当該中心から交互に異なる径方向距離で配置される。
更に有利な形態では、異なる平面内にある回路構成部の区分は、略一致した形状を持っている。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、前述した目的に合致するための更なる解答は、基板に熱的に連結された熱源と、センサー上に形成された少なくとも1つの測定位置との間で熱流を運ぶことができ、熱起電力信号を分配するため基板の略平坦表面に形成される熱電対配列部を更に備える、該基板を用いる熱分析センサーに対して、提案される。熱電対配列部は、測定位置と連係された熱交換器接続部の連続鎖を備え、これらの接続部は、2つの異なる熱電対材料から構成され、回路構成部へと接続され、本発明に係る解答によれば、基板は、5W/(m・K)を超えない熱伝導度を有する。
【0027】
従来の酸化アルミニウム基板と比較して減少した大きさの上記熱伝導度は、異なる温度レベルにさらされた熱電対接続部の間でより強い温度勾配が生成されるという効果を奏する。その結果、熱電対配列部により生成された熱起電力信号は、これに相応して、増大し、それにより、センサーの感度及び信号対ノイズ比が改善される。しかし、注意事項として、基板の熱伝導度は減少し、センサーの時定数が増大する。材料技術が熱伝導度を低下させることに関して制限を課さないという仮説の下でさえ、破るべきでない下限は、基板の時定数がなおも少しは適切である熱伝導度のレベルにより表される。この点において、実用的な用途に対して興味のある範囲は、0.5W/(m・K)以上の熱伝導度を有する材料を包含する。
【0028】
低い熱伝導度を使用する本発明のコンセプトによれば、3W/(m・K)以下の伝導値が好ましく、2W/(m・K)を超えない値に対しては更に高いレベルで好ましい。これは、従来の酸化アルミニウム基板と比較して特に顕著な改善へと導く。
【0029】
本発明のコンセプトの実用的な実施例では、従来の酸化セラミック材料よりも低い伝導度であるが、酸化セラミックと比較可能な好ましい機械的及び電気的特性を備える特殊なセラミック材料が基板に対して選択される。一例では、2W/(m・K)の熱伝導度を有する、ピタゴラスという商品名の下で市販されている基板材料が適切であることがわかった。また好ましくは、たとえその機械的特性に関してそれほど望ましくなかったとしても、マクターという製品名で市販されているガラスセラミック基板は、2W/(m・K)よりかなり小さい熱伝導度を有する。
【0030】
本発明の第4の態様は、少なくとも2つの異なる熱電対材料ペーストの設計パターンが厚膜技術を用いて基板の略平坦な表面上にプリントされるところの、熱分析センサーを製造する方法に関する。プリント後に点火される厚膜パターンは、2つの異なる熱電対材料から構成され且つ少なくとも1つの測定位置に連係される熱電対接続部の連続的に接続された鎖を備え、温度分配信号を分配するように機能する熱交換器配列部を表している。本発明に係る方法は、回路パターンが少なくとも2つの部分的パターンへと分割され、第1の部分的パターンが基板上の厚膜技術で製造され、部分的パターンの接続のための接触通路孔を備えた絶縁層が第1の部分的パターン上に重ねられ、前述した処理が、全ての部分的パターンが互いの上方に製造されるまで繰り返されるという事実により区別される。
【0031】
厚膜技術を使用することにより、部分的パターン及び絶縁層からなる構造が、比較的低いコストで基板上に製造することができる。従来のペーストは、例えば、一方の熱電対材料のための金ペーストと他方の熱電対材料のための金/パラジウムペースト等、熱電対材料のため使用することができる。所望ならば、異なる特性を備えた熱電対を製造するため他の材料を使用することもできる。該ペーストは、処方されたパターンに従って、スクリーンプリント技術を使用して既知の処理により塗布することができる。各パターンを塗布した後、点火作業が続く。特に、各部分的パターンのための熱電対材料の一つを最初に塗布し、点火することができ、次に、夫々の部分的パターンに従って、他の熱交換器材料を塗布し点火することができる。2つの点火作業を実行することは、上記説明された態様で形成される熱電対の熱起電力伝導度信号に好ましい効果を別々に及ぼす。
【0032】
本発明の方法の有利な実施例では、部分的パターンは、各部分的パターンを層として印加する繰り返し処理が、好ましい回路構成を備えた熱分析センサーを直接製造する仕方で構成される。この種の第1の実施例では、部分的パターンは、互いに略一致するように設計されている。更なる実施例では、各部分的パターンは、一つの接続部だけによって隣接する接続部に連続的に接続され、これにより、内部層接続部の数を小さく維持することができる。更なる実施例では、基板に対して最頂上部にある部分的パターンは、コネクターターミナルを備えた絶縁層で覆われており、該コネクターターミナルから、熱起電力信号を分岐させることができ、少なくとも1つのコネクターターミナルは、基板に対して底部層にある部分的パターンへの内部層接触を通して連結されている。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を図面を参照してより詳細に説明する。
本発明の第1の実施例に係る熱分析センサーは、柱状基板1を有する。該基板の柱体の高さはその半径に応じて小さくなる。図1は、基板1の柱体軸の方向で見たときの円状ディスクの形状を有する基板の頂部表面2の平面図を概略形態で表している。柱体軸と、表面2の径方向外側境界との間で範囲が定められた領域では、測定位置3が設けられ、該位置には、厚膜技術処理により適所に置かれた熱電対配列部が配列されている。
【0034】
上記熱電対配列部では、2つの異なる熱電対材料のストリップ形状区分が、それらの連結端部の各々で重なり合っており、一連の熱電対接続部がこれらの重なり合いにより形成されている。熱電対接続部は、4つの同心円に配列されており、これらの円の共通中心点4は、測定位置3の中心を表している。中心に最も近い第1の円で配置された第1の熱電対接続部は、参照記号5によって図1で同定される。第1の熱電対接続部の各々は、2つの異なる熱電対材料6、7の重なり合った短い方位角端部から構成されている。方位角端部からは、熱電対材料6及び7が、互いに狭い間隔を隔て、中心4に対して第2の円まで略外側径方向に互いに平行に延在している。第2の熱電対接続部8は、第1の熱電対接続部5に類似して、重なり合った短い方位角端部により同様に形成されている。
【0035】
第3の熱電対接続部9は、第3の円上に置かれており、該第3の円の半径は、第1の円の半径よりも大きく、第2の円の半径よりも小さい。第1の熱電対接続部5に類似して、第3の熱電対接続部9は、2つの熱電対材料6及び7の短い方位角の重なり合った端部から構成される。第3の熱電対接続部9からは、熱電対材料6及び7が、第4の円に向かって径方向外側に略ストリップ区分の形状で延在している。第4の半径は、第2の円の半径よりも大きい。熱電対材料7のストリップの端部は、第4の円上にあり、該第4の円では、それら端部は、第4の熱電対接続部10を形成するため熱電対材料6の端部と合致し、重なり合っている。第4の熱電対接続部10からは、熱電対材料6は、第4の円に続いて方位角方向に延在している。第1の熱電対材料6の方位角ストリップ区分11の各々は、第4の熱電対接続部10から熱電対材料6の略径方向ストリップ区分へと延在し、該ストリップ区分は、第3の熱電対接続部9に方位角方向に最も隣接したものから始まっている。第1、第2、第3及び第4の熱電対接続部5,8,9及び10は、互いに等しい方位角間隔で夫々の円上に配列されている。
【0036】
第1の熱電対接続部5の完全に対称的な形態から離れた場合、接続部5’から始まる第1の熱電対材料6’の略径方向ストリップ区分は、第2の円の半径を超えて基板1の表面2上に形成されたターミナルパッド12へと続くという事実により、一つの第1の熱電対接続部5’が区別される。この第1の熱電対接続部5’は、全ての熱電対接続部5、5’、8、9及び10が直列シーケンスで接続されるところの熱電対コラムの端部を形成する。該熱電対コラムの他方の端部は、第4の熱電対接続部10’により形成され、これに前述した第1の熱電対接続部5’に径方向に隣接して配置される第3の熱電対接続部9’が続いて形成される。第3の熱電対接続部9’から略外側径方向に延びる熱電対材料7’のストリップ区分は、第4の熱電対接続部10’を形成するため、熱電対材料6”のストリップ区分に接続された第4の円上にその外側端部がある。熱電対材料6”のストリップ区分は、表面2上に形成されたターミナルパッド12’へと延在する。
【0037】
前述した段落で与えられた、図面及び添付の説明は、熱電対材料6、7、7’が、それらが相互に重なり合う領域においてのみ互いの上を覆っており、これにより、即ち、重なり合いにより形成された接点を通して熱電対接続部5、5’、8、9、10、10’を形成するということも明瞭にする。熱電対材料6、7、7’の他の全ての部分は、1つの同じ平面内で並んで延在している。
【0038】
第1の熱電対接続部5’で始まる熱電対コラムを形成する直列接続されたシーケンスでは、各々の第1の熱電対接続部5又は5’は、中心点4の回りの反時計回りの方位角ループが第1の熱電対接続部5”に到達するまで、その直ぐ隣接する接続部として第2の熱電対接続部8を有する。該第1の熱電対接続部5”は、コラムのうち開始した熱電対接続部5’に隣接して存在する。接続部5”は、熱電対材料7の略径方向に向いたストリップ区分を介して、更なる熱電対接続部8’へと接続される。該熱電対接続部8’は、その連続順番で直ぐに隣接するものとして第3の熱電対接続部9”を有し、これには、直ぐに隣接する第4の熱電対接続部10及び第3の熱電対接続部9の対が、第4の熱電対接続部10’に到達して熱電対コラムの他方の端部を形成するまで、続いていく。全体に亘る熱電対配列部は、二重星の外観を呈する。第1及び第2の熱電対接続部5及び8の間の直線状ストリップの形状で延在する熱電対材料6、7は、内部星を形成し、互いの方位角方向の間隙領域13の間の範囲を制限する。間隙領域13の各々では、連続順番で直ぐに隣接する第3及び第4の熱電対接続部の対9、10が存在する。第3及び第4の熱電対接続部9、10は、熱電対材料6、7の接続ストリップ区分と共に、外側星を形成する。当該構成は、熱電対接続部10’で始まる反時計回りの方向に、更なる方位角方向範囲に類似した態様で続いていてもよい。
【0039】
本発明の第2の実施例に係る熱起電力センサーが、図1の表現と類似の形態を使用して、図2に示されている。本実施例では、2つの測定位置3、3’が存在し、各々は、図1の文脈で上述したような測定位置3に完全に等価な構成を備えている。従って、読者は、第2の実施例の構成的詳細を理解するために図1の記載を参照するとよい。第2の実施例の2つの測定位置3、3’は、基板1の柱体軸に対して互いに直径方向反対側に等距離に配列されている。「サンプル」のための文字「S」が、基板表面2上に測定位置3の近傍にプリントされ、「参照サンプル」のための文字「R」が測定位置3’の近傍にプリントされている。これは、サンプルが測定位置3上に配置されるべきであり、不活性な参照サンプルが測定位置3’に配置されるべきことを示している。
【0040】
図2の構成は、測定位置3に形成された熱電対コラムの端部にある第4の熱電対接続部10’と、同様に測定位置3’に形成された熱電対コラムの端部にある第4の熱電対接続部10’とが、図1のターミナルパッド12’に類似した分離したターミナルパッド12’には各々接続されていないという点においてのみ、図1の構成とは異なっている。その代わりに、2つの熱電対コラムのこれらの端部は、熱電対材料6のストリップ区分により連結されている。測定位置3及び3’の各々の熱電対コラムの他方の端部を形成する第1の熱電対接続部5’は、図1と同じ態様でターミナルパッド12に各々接続されている。この設計の構成を通して、2つの熱電対コラムは、それらが、回路中で互いに電気的に反対になるように配列されている。かくして、第2の実施例で2つのターミナルパッド12を分岐させることにより、2つの熱電対コラムの夫々の熱起電力信号の間の差異が得られる。これに対して、第1の実施例は、測定位置3に形成された熱電対コラムにより生成された全熱起電力信号をターミナルパッド12、12’の間に分配している。
【0041】
本発明の第3の実施例に係る熱分析センサーでは、熱電対配列部の熱電対材料及び熱電対接続部により形成された全体的なパターンは、互いの頂部に配列された複数の部分的パターンへと小分割されており、これらの部分的パターンの適切な電気的末端部が互いに接続されている。このコンセプトは、明瞭にするため分解図で示した図3に表されている。
【0042】
図3では、層形成された構成の個々の層が、図1及び図2に示された基板に同一である基板1の柱体軸の方向に互いから離れた状態で示されている。図3の構成は、全部で3つの部分的パターン14、15及び16を有し、該パターンの各々は、図2で表された第2の実施例の熱電対配列部を形成するパターンに類似な態様で構成されている。図2に示されたパターンからの小さな相違点は、部分的パターンの電気的末端部の接続部を形成する必要があるといった程度にしか過ぎない。
【0043】
図3では、底部の部分的パターン14は、図2と同じ態様で基板の表面2に配列されている。図2と同様に、全体的パターンにより表された全体に亘る回路構成の一方の端部を形成する第1の熱電対接続部5’からの熱電対材料は、ターミナルパッド12に接続されている。また、図2と同様に、左側に示されたパターンの一部分は、熱電対材料の接続ストリップ6を用いて右側部分に連結されている。しかし、図2とは対照的に、図3の右側部分の端部における類似の第1の熱電対接続部は、図2及び図3の左側ターミナルパッド12、並びに、図2の右側ターミナルパッドに対応するが、図3では絶縁パッドとして構成され、即ち部分的パターンの残りのパターンとは接触していない第2のターミナルパッド12から一定距離のところに配列された内部層接触パッド17に接続されている。
【0044】
表面2上に配列された部分的パターン14は、内部層接触パッド17のための位置と2つのターミナルパッド12のための位置と整列した位置に内部層接触孔19が形成された絶縁層18により頂面が覆われている。部分的パターン14から離れたところに面した表面20上には、絶縁層18が部分的パターン15を載せている。底部層の部分的パターン14がターミナルパッド12への端部接続を有するところの類似位置には、中間層部分的パターン15が、中間層接触パッド17’への端部接続を有する。該中間層接触パッド17’は、内部層接触パッド17及び17’と整列する内部層接触孔19を用いて、内部層接触パッド17に接続される。底部層部分的パターン14が内部層接触パッド17への端部接続を有する一方で、図3の部分的パターン15の右側部分が、絶縁層18により底部層に対して電気的に絶縁された内部層接触パッド21への類似の端部接続を有する。底部層の2つのターミナルパッド12は、それらと整列した位置に配置された、絶縁層18の表面20への内部層接触孔19を通して、持ち出され、絶縁パッドとして現れる。
【0045】
部分的パターン15を載せる絶縁層18の表面20は、内部層接触パッド21及び2つのターミナルパッド12のための整列位置で、内部層接触孔19’が形成された絶縁層22により頂面を覆われている。絶縁層22の表面23は、図3で最上にある部分的パターン16を載せている。左側部分の端部接続は、絶縁層22の同様に整列した位置に配置された内部層接触孔19’を用いて、中間層部分的パターン15の整列した位置に配置された内部接触パッド17’に接続された内部層接触パッド17”へと導かれる。右側部分の端部接続は、図3の右側ターミナルパッド12へと導かれる。該右側ターミナルパッド12は、絶縁層22及び18の整列配置された内部層接触孔19’及び19を各々用いて全ての層を通して直接接触される。左側ターミナルパッド12は、類似した内部層接触孔19’及び19を通して図3の底部層部分的パターン14の左側ターミナルパッド12に接続される。
【0046】
最上の部分的パターン16を載せる絶縁層22の表面23の頂部では、ターミナルパッド12の位置に一致する位置に内部層接触孔19”だけが形成された絶縁層24が存在する。回路構成全体により分配された熱起電力信号は、内部層接触孔19”を通して接触されたターミナルパッド12のところで分岐することができる。当該信号は、各部分的パターンの左側部分及び右側部分の間に個々の部分的パターン14、15及び16により分配された温度電圧差の総和を表している。
【0047】
更には、図2のところで既に参照された記号「R」及び「S」に加えて、絶縁層24の露出表面25は、夫々の測定位置の中心点4及び4’(図2を参照せよ)に対してサンプル及び参照サンプルの中心位置決めを容易にするため円弧状マーキング26が形成されている。
【0048】
図3に示された第3の実施例は、特に厚膜技術を使用して製造される。当該プロセスは、スクリーン印刷と、基板1の表面2上で適切な熱電対材料ペーストの部分的パターン14を点火させる工程と、により開始する。この作業は、2つの工程で実行されるのが好ましい。その第1の工程は、第1の熱電対材料からなるパターンの構造的構成要素のみを塗布し、直ちに点火する工程からなっている。第2の工程では、他の熱電対材料からなる構造的構成要素がプリントされ、点火が繰り返される。この2つの工程処理は、熱電対接続部の品質に好ましい効果を与える。絶縁層18が適所に置かれた後、第2の部分的パターン15が同じ態様で製造され、全ての絶縁層及び部分的パターンが仕上げ完了となるまで前述した処理が繰り返される。この完了時には、最上の絶縁層24が適所に配置される。
【0049】
本発明の第4の実施例に係る熱分析センサーが、図1に類似した表現の形態で図4に示されている。この第4の実施例は、4つの測定位置30、31、32及び33を各々有し、それらの各々が、図1の測定位置3に類似した形態を有する。従って、個々の測定位置に関しては、読者は、図1に示された実施例の説明を参照することができる。特に図1に類似して、個々の熱電対コラムの端部は、一対のターミナルパッド12、12’に接続され、該パッドで、各々のコラムにより生成された、熱電対電圧が分岐される。4つの測定位置30、31、32、33の中心は、その対角線が基板1の柱体軸で交差する正方形のコーナー上に配置されている。
【0050】
本発明の第5の実施例に係る熱分析センサーが分解図で図5に示されている。図5では、当該構成の層が基板1の柱体軸の方向に離れた状態で示されている。コネクター6及び2つのターミナルパッド12を用いて2つの二重星パターンの間に形成された微分回路構成に関しては、第5の実施例は、図2の文脈で説明された第2の実施例に完全に類似している。従って、微分回路構成に関する限りにおいて、読者は図2の説明を参照することができる。しかし、図5は、第2の実施例でも与えられていたが図2には示されていなかった絶縁層34を更に示している。絶縁層34は、熱電対配列部のターミナルパッド12の位置に整列した窓35を有しており、この窓35のところで微分熱電対信号にアクセスすることができる。絶縁層34は、金属製のるつぼを測定位置に配置することを可能にし、これによって配置熱電対接続部の間で回路の短絡を引き起こすことがない。
【0051】
図2に従って説明され、既に第2の実施例の一部分である特徴に加えて、第5の実施例は、2つの測定位置3、3’の各々に、絶縁層34の露出表面37に、各々、更なる熱電対配列部36、36’を有している。これらの更なる熱電対配列部36、36’の各々は、各々の測定位置3、3’の中心4、4’に対して中心を定められた配列でリング形状の第1の熱電対材料38、38’を備える。図5では、2つの更なる熱電対配列部36、36’は、明瞭さのため、分解図の下側部分と比較して拡大スケールで描かれている。実際には、リング形状の第1の熱電対材料38、38’が、各々の第1の円内に配列され、該円上に、第1の熱電対接続部5が配置されている。リング形状の構成38、38’の内周部39、39’により各々範囲を制限された領域において、絶縁層34及び基板は、各々整列して配置された軸通路開口部40、40’及び41、41’を有する。この種の通路開口部は、他の前述した実施例にも存在し、各々の図面中の対応する参照記号で同定される。
【0052】
リング形状の第1の熱電対材料38、38’の各々は、ターミナルパッド43、43’へと各々導く、ストリップ形状径方向延長部を有する。更には、共通のターミナルパッド44が、測定位置3、3’の各々の中心ポイント4、4’の間の仮想接続ラインに垂直に走る中心ライン上に配置されている。共通のターミナルパッド44から始まって、接続リード45が2つのターミナルパッド43、43’の間の中心ラインに沿ってY字形状接続部へと延びており、該接続部において、接続リード45は、2つのストリップ形状アーム46、46’へと分岐する。2つのストリップ形状アーム46、46’は、中心ラインに対して鏡像対称に、リング形状の第1の熱電対材料38、38’へと延在している。ターミナルパッド44、接続リード45及びそのアーム46、46’は、第2の熱電対材料からなり、該材料は、第1の熱電対材料38、38’への接続部で熱電対接続部を形成する。これらの2つの熱電対接続部で発生する熱起電力信号は、共通のターミナルパッド44と、夫々のターミナルパッド43及び43’との間で分岐することができる。2つの熱起電力信号は、測定位置3及び3’における夫々の絶対温度に対応している。絶対温度値の決定のために、信号は、適切な回路構成を通して既知の態様で更に処理される。
【0053】
前述した説明の全ての実施例において、センサーは、基板1のより広い領域と熱源との間の熱的接触を通して熱源に熱的に連結されている。これは、例えば、当該センサーの底部側、即ち頂部表面2の逆側のリング形状の境界領域が、熱源の適切に形成された熱伝導フランジに着座されている場合に、達成することができる。詳しくは、リング形状の境界領域は、基板1を形成する柱状ディスクの径方向外側の境界により外側が画定され、その半径が基板1の半径より幾分小さい平坦柱体の形状のカットバックにより内側が画定されることができる。
【0054】
測定位置3、3’、30、31、32、33の中心ポイント4、4’に対して発生する径方向温度勾配は、熱電対接続部5及び8の間に、並びに、互いに径方向に離れた接続部9及び10の間に発生した熱電対電圧の原因となる。これらの温度勾配は、基板1の温度伝導度を減少させると共に増大する。従って、センサーの高い感度を達成するために、比較的小さい熱伝導度λの基板が使用され、詳しくは、λは5W/(m・K)を超えず、好ましくは、λは3W/(m・K)を超えず、更に好ましくは、λは2W/(m・K)を超えないのがよい。適切であると見出された基板1は、特殊な特性を備えたセラミックスであり、例えば、「ピタゴラス」という商品名で販売されているセラミック材料から作られ、又は、約1.5W/(m・K)のλ値を有する、「マコール」という商品名で販売されているガラスセラミック材料から作られる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の第1の実施例に係る熱分析センサーが測定位置の領域に配列された状態を概略示す平面図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施例に係る、2つの測定位置を備える熱分析センサーを概略示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施例に係る熱分析センサーの分解図である。
【図4】図4は、本発明の第4の実施例に係る熱分析センサーの概略平面図である。
【図5】図5は、本発明の第5の実施例に係る熱分析センサーの分解図である。
【符号の説明】
【0056】
1 基板
2 表面
3 測定位置
4、4’ 中心ポイント、中心
5、5’、5” 第1の熱電対接続部
6、6’、6” 熱電対材料
7、7’ 熱電対材料
8、8’ 第2の熱電対接続部
9、9’、9” 第3の熱電対接続部
10、10’ 第4の熱電対接続部
11 方位角ストリップ区分
12、12’ ターミナルパッド
13 間隙領域
14、15、16 部分的パターン
17、17’、17” 内部層接触パッド
18 絶縁層
19、19’、19” 内部層接触孔
20 表面
21 内部層接触パッド
22 絶縁層
23 表面
24 絶縁層
25 表面
26 弧状マーキング
30、31、32、33 測定位置
34 絶縁層
35 窓
36、36’ 更なる熱電対配列部
37 表面
38、38’ 第1の熱電対材料
39、39’ リングの内周
40、40’ 軸上通路開口部
41、41’ 軸上通路開口部
43、43’ ターミナルパッド
44 ターミナルパッド
45 接続リード
46、46’ アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)を用いる熱分析センサーであって、
前記基板(1)は、該基板(1)に熱的に連結された熱源と、前記センサーに形成された少なくとも1つの測定位置(3、3’、30、31、32、33)との間で熱流を伝達することができ、
前記熱分析センサーは、更に、熱起電力信号を分配するため前記基板(1)の略平坦表面(2)に形成された熱電対配列部を備え、
前記熱電対配列部は、2つの異なる熱電対材料(6、7)から構成され且つ熱電対コラムを形成するように連続的に接続された熱電対接続部(5、8、9、10)の連続鎖を備え、
前記熱電対制御の連続鎖は、前記測定位置(3、3’)の中心(4、4’)の回りに方位角方向に亘って存在し、
前記個々の熱電対接続部は、前記測定位置(3、3’)の中心(4、4’)から交互に異なる径方向距離で配列され、
前記中心(4、4’)に最も近い第1の熱電対接続部(5)と前記連続鎖において2つの隣接する第2の熱電対接続部(8)との間に方位角方向に閉じ込められた表面(2)の間隙領域(13)の少なくとも1つが、前記連続鎖において互いに直接隣接した、第3の熱電対接続部(9)と第4の熱電対接続部(10)とを含むことを特徴とする、熱分析センサー。
【請求項2】
前記第1の熱電対接続部(5)は、その中央ポイントが前記測定位置の中心(4、4’)に配置され、前記第2の熱電対接続部(8)は、前記第1の円と同心で且つ該第1の円の半径よりも大きい半径を有する第2の円上にあり、前記第3の熱電対接続部(9)は、第1の円と同心で且つ該第1の円の半径よりも大きく、前記第2の円の半径よりも小さい半径を有する第3の円上にあり、前記第4の熱電対接続部(10)は、前記第1の円と同心で且つ前記第3の円の半径よりも大きい半径を有する第4の円上にあることを特徴とする、請求項1に記載の熱分析センサー。
【請求項3】
前記熱電対接続部(5、8、9、10)は、等角度間隔でそれらの各々の円上に配列されていることを特徴とする、請求項2に記載の熱分析センサー。
【請求項4】
前記連続鎖において直ぐに隣接する第1及び第2の熱電対接続部(5,8)の間の熱電対材料(6,7)は、直線状のストリップ区分の形状で延在することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項5】
前記連続鎖において直ぐに隣接すると共に同じ間隙(13)内に位置する第3及び第4の熱電対接続部(9,10)の間の熱電対材料(6,7)は、直線状のストリップ区分の形状で延在することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項6】
前記連続鎖において直ぐに隣接すると共に異なる間隙領域(13)内に位置する第3及び第4の熱電対接続部(9,10)の間で延在する熱電対材料(6,7)は、方位角ストリップ区分(11)の形状で延在することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項7】
コネクターターミナル(12、12’)が前記基板(1)の表面(2)に形成され、該コネクターターミナルは、前記熱電対コラムの前記2つの端部に各々接続され、該熱電対コラムにより分配された前記熱起電力信号は、前記コネクターターミナル(12、12’)から分岐することができることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項8】
複数の測定位置(3、3’)が前記センサーに配列されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項9】
前記測定位置(3、3’、30、31、32、33)のうち2つが前記センサーに配列されていることを特徴とする、請求項8に記載の熱分析センサー。
【請求項10】
前記測定位置(3、3’、30、31、32、33)のうち4つが、該測定位置のうち一対の中心の間の直接接続ラインが他方の対の中心の間の直線ラインと垂直に交差し、その逆もまた成立する形態で、前記センサーに配列されていることを特徴とする、請求項8に記載の熱分析センサー。
【請求項11】
更なる熱電対配列部(36、36’)が、前記測定位置における絶対温度を現す熱起電力信号を分配するという目的のため前記基板(1)の表面(2)上の前記測定位置(3、3’)に形成され、前記絶対温度を表す熱起電力信号を分岐するためのコネクターターミナル(43、43’、44)が、前記基板(1)の表面(2)上に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項12】
前記絶対温度を表す熱起電力信号を分配するように機能する前記熱電対配列部(36、36’)が、第1の熱電対材料(38、38’)を含む領域を備え、該領域は、前記測定位置(3、3’)を取り囲む熱電対接続部により範囲が定められ、前記第1の熱電対材料(38、38’)を含んで範囲が定められた前記領域から前記基板(2)上に配列された前記コネクターターミナル(43、43’)のうち一つへと導くコネクター部を更に備えることを特徴とする、請求項11に記載の熱分析センサー。
【請求項13】
前記第1の熱電対材料(38、38’)を含んで範囲が定められた前記領域は、円形リングの形状に構成されていることを特徴とする、請求項12に記載の熱分析センサー。
【請求項14】
前記第1の熱電対材料(38、38’)を含んで範囲が定められた前記領域において、熱電対接続部は、前記第1の熱電対材料とは異なる第2の熱電対材料(46、46’)で形成され、前記表面上に形成されたコネクターターミナル(44)まで延在することを特徴とする、請求項11乃至13のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項15】
前記測定位置(3,3’)のうち2つが前記センサーに形成され、該2つの測定位置(3、3’)の前記第2の熱電対材料の間で接続部(45、46、46’)が前記基板(1)に形成され、該接続部(45、46、46’)が共通のコネクターターミナル(44)へと導くことを特徴とする、請求項14及び請求項1乃至10のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項16】
前記測定位置(3、3’)のうち2つが前記センサーに形成され、該測定位置(3、3’)で各々の熱電対コラムの2つの電気的に等価な端部の間で接続部(6)が前記基板(1)に形成され、該2つの熱電対コラムの他の端部は、該基板(1)に形成されたコネクターターミナル(12)に接続され、該2つの熱電対コラムの各々の熱起電力信号の間の差異を分岐させるように機能することを特徴とする、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項17】
前記接続部(6)は、前記基板(1)に形成された共通のコネクターターミナルに接続されていることを特徴とする、請求項16に記載の熱分析センサー。
【請求項18】
前記基板(1)に形成された前記熱電対配列部は、厚膜構成部として構成されていることを特徴とする、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項19】
前記基板(1)はセラミック材料であることを特徴とする、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項20】
基板(1)を用いる熱分析センサーにおいて、
前記基板(1)は、該基板(1)に熱的に連結された熱源と、前記センサーに形成された少なくとも1つの測定位置(3、3’、30、31、32、33)との間で熱流を伝達することができ、
熱起電力信号を分配するため熱電対配列部が該基板(1)の略平坦表面(2)に更に形成され、該熱電対配列部は前記測定位置に専用に設けられた、熱電対接続部(5、8、9、10)の連続鎖を備え、該熱電対接続部(5、8、9、10)は回路構成部において互いに接続され、各々の熱電対接続部は、2つの異なる熱電対材料(6、7)から構成されており、
前記熱電対接続部(5、8、9、10)は互いの頂部上の少なくとも2つの平面内で配列され、絶縁層(18、22)が該平面を互いに分離し、前記回路構成部の各々の区分(14、15、16)は、熱電対接続部(5、8、9、10)の間でリードを接続することにより各平面に形成され、前記回路区分の対応する端部は、内部層接触孔(19、19’、19”)を通して互いに接続されていることを特徴とする、特に、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項21】
前記熱電対配列部の熱起電力信号を分岐するためのターミナル(12)は、前記基板(1)に対して頂部にある前記平面に形成され、底部にある前記平面を占める前記回路区分(14)の一方の端部は、内部層接触を通して前記ターミナル(12)の一つに接続されていることを特徴とする、請求項20に記載の熱分析センサー。
【請求項22】
前記回路構成部は、熱電対コラムであり、該コラムでは、前記熱電対接続部が直列に接続され、該回路構成部の前記区分(14、15、16)は前記熱電対コラムの区分であることを特徴とする、請求項20又は21に記載の熱分析センサー。
【請求項23】
前記熱電対接続部(5、8、9、10)は、該接続部が前記測定位置(3、3’)の中心(4、4’)の回りで方位角方向に並ぶと共に、前記測定位置の中心から異なる径方向距離で交互に配置されるように配列されていることを特徴とする、請求項20乃至22のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項24】
前記異なる平面に存在する前記回路構成部の前記区分(14、15、16)は、略一致した形状を有することを特徴とする、請求項20乃至23のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項25】
基板(1)を用いる熱分析センサーにおいて、
前記基板(1)は、該基板(1)に熱的に連結された熱源と、前記センサーに形成された少なくとも1つの測定位置(3、3’、30、31、32、33)との間で熱流を伝達することができ、
熱起電力信号を分配するため熱電対配列部が該基板(1)の略平坦表面(2)に更に形成され、該熱電対配列部は前記測定位置に専用に設けられた、熱電対接続部(5、8、9、10)の連続鎖を備え、該熱電対接続部(5、8、9、10)は回路構成部において互いに接続され、各々の熱電対接続部は、2つの異なる熱電対材料(6、7)から構成されており、
前記基板(1)は、その温度伝導度が5W/(m・K)以下であり、好ましくは、3W/(m・K)より小さく、特に好ましくは、2W/(m・K)より小さいことを特徴とする、特に、請求項1乃至24のいずれか1項に記載の熱分析センサー。
【請求項26】
前記基板(1)はガラスセラミック材料を含むことを特徴とする、請求項25に記載の熱分析センサー。
【請求項27】
少なくとも2つの異なる熱電対材料ペースト(6、7)から構成されるパターンが厚膜フィルム技術を用いて基板(1)の略平坦表面(2)にプリントされ、
前記パターンは、2つの異なる熱電対材料(6、7)から構成され、少なくとも1つの測定位置(3、3’、30、31、32、33)と連係された、熱電対接続部の連続接続された鎖を備え、熱起電力信号を分配するように作動可能である熱電対配列部であり、
前記パターンは、プリント工程の後に点火される、特に請求項20乃至26のいずれか1項に記載の熱分析センサーを製造するための方法であって、
前記パターンは、少なくとも2つの部分的パターン(14、15、16)へと分割され、該部分的パターン(14、15、16)の一つは、前記基板(1)上に厚膜技術で製造され、該部分的パターンの前記一つは、該部分的パターンの前記接続部のための内部層接触孔(19、19’)を備えた絶縁層(18,22)が重ねられ、該部分的パターン(14、15、16)の更に一つは、前記絶縁層に厚膜技術で製造され、前記各工程は、全ての部分的パターン(14、15、16)が互いの上に生成されるまで繰り返されることを特徴とする、方法。
【請求項28】
前記部分的パターン(14、15、16)は、略一致した形状を有することを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記部分的パターン(14、15、16)の各々が、一つだけの接続部817、17’、17”)により次の部分的パターンに接続されるところの、部分的パターン(14、15、16)の形態をとることを特徴とする、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
コネクターターミナルを備えた絶縁層(24)が前記基板(1)に対して最上の部分的パターン(16)の頂部に生成され、前記コネクターターミナルから前記熱起電力信号を分岐することができ、前記コネクターターミナルの少なくとも1つが、前記基板に対して底部にある層の前記部分的パターン(14)との内部層接触を通して該基板に連結されていることを特徴とする、請求項27乃至29のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−14725(P2010−14725A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−208847(P2009−208847)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【分割の表示】特願2004−313337(P2004−313337)の分割
【原出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
【Fターム(参考)】