説明

熱分析用試料容器への液化ガス充填装置および充填方法

【課題】熱分析用試料容器内に目標充填量の液化ガスを正確に充填することができる熱分析用試料容器への液化ガス充填装置および充填方法を提供することである。
【解決手段】熱分析用試料容器2と、この試料容器2を冷却する冷却手段3と、第1〜第3配管4〜6と、を備え、第1配管4は、一端が第1開閉弁7を介して液化ガス供給ライン20に接続され、他端が第2開閉弁8を介して試料容器2に接続されており、第2配管5は、他端に圧力測定手段10を有し、第3配管6は、第3開閉弁9を介して他端が真空引きライン21に接続されている、熱分析用試料容器への液化ガス充填装置1と充填方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分析用試料容器に液化ガスを充填する装置および充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物質の熱分析を行う際には、例えばカルベ式熱量計(以下、C80(Calorimetry applied to C80)と言う。)、断熱熱量計(以下、ARC(Accelerating Rate Calorimeter)と言う。)等の熱分析装置が使用される。これらの熱分析装置は、容積の小さい熱分析用試料容器を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述した熱分析装置を使用して液化ガスの分解や反応による発熱挙動を評価する際には、熱分析装置の検出感度を高くする上で、熱分析用試料容器内に目標充填量の液化ガスを正確に充填するのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−14674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、熱分析用試料容器内に目標充填量の液化ガスを正確に充填することができる熱分析用試料容器への液化ガス充填装置および充填方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)液化ガス供給手段から供給される液化ガスが充填される熱分析用試料容器と、この熱分析用試料容器を冷却する熱分析用試料容器冷却手段と、前記液化ガス供給手段および熱分析用試料容器に接続されている第1配管と、この第1配管に各々の一端が接続されている第2および第3配管と、を備え、前記第1配管は、一端に第1開閉弁を有し、他端に第2開閉弁を有するとともに、前記一端が第1開閉弁を介して前記液化ガス供給手段に接続され、前記他端が第2開閉弁を介して前記熱分析用試料容器に接続されており、前記第2配管は、他端に圧力測定手段を有し、前記第3配管は、他端に第3開閉弁を有し、この第3開閉弁を介して他端が真空引き手段に接続されていることを特徴とする熱分析用試料容器への液化ガス充填装置。
(2)前記第1〜第3開閉弁を閉じた状態における前記第1〜第3配管の合計容積をC1、前記熱分析用試料容器の容積をC2としたとき、前記C1およびC2が、C1>C2の関係を有する前記(1)記載の熱分析用試料容器への液化ガス充填装置。
(3)前記第1配管に、液化ガスを保管する液化ガス保管部が設けられている前記(1)または(2)記載の熱分析用試料容器への液化ガス充填装置。
【0007】
(4)液化ガス供給手段から供給される液化ガスが充填される熱分析用試料容器と、この熱分析用試料容器を冷却する熱分析用試料容器冷却手段と、前記液化ガス供給手段および熱分析用試料容器に接続されている第1配管と、この第1配管に各々の一端が接続されている第2および第3配管と、を備え、前記第1配管は、一端に第1開閉弁を有し、他端に第2開閉弁を有するとともに、前記一端が第1開閉弁を介して前記液化ガス供給手段に接続され、前記他端が第2開閉弁を介して前記熱分析用試料容器に接続されており、前記第2配管は、他端に圧力測定手段を有し、前記第3配管は、他端に第3開閉弁を有し、この第3開閉弁を介して他端が真空引き手段に接続されている熱分析用試料容器への液化ガス充填装置を用いて、液化ガスを熱分析用試料容器へ充填する方法であって、前記第1開閉弁を閉じるとともに第2および第3開閉弁を開いて、前記第1〜第3配管内および熱分析用試料容器内を前記真空引き手段によって真空引きした後、前記第2および第3開閉弁を閉じる第1工程と、ついで前記第1開閉弁を開いて、前記液化ガス供給手段から第1〜第3配管内に目標充填量よりも多い量の液化ガスを導入した後、前記第1開閉弁を閉じる第2工程と、ついで前記第2開閉弁を開いて、前記第1〜第3配管内から前記熱分析用試料容器冷却手段によって冷却されている熱分析用試料容器内に、液化ガスを凝縮させながら充填する第3工程と、目標充填量の液化ガスが前記熱分析用試料容器内に充填された後、前記第2開閉弁を閉じる第4工程と、を含むことを特徴とする熱分析用試料容器への液化ガス充填方法。
(5)前記液化ガスの目標充填量に応じた圧力をP1、前記熱分析用試料容器冷却手段によって冷却されている熱分析用試料容器内の温度における飽和蒸気圧をP2としたとき、前記P1とP2との合計圧力と同じ圧力になるように、前記第2工程において前記液化ガス供給手段から第1〜第3配管内に液化ガスを導入する前記(4)記載の熱分析用試料容器への液化ガス充填方法。
(6)前記P1とP2との合計圧力よりも大きな圧力になるように、前記第2工程において前記液化ガス供給手段から第1〜第3配管内に液化ガスを導入する前記(5)記載の熱分析用試料容器への液化ガス充填方法。
(7)前記P1とP2との合計圧力と同じか、または前記合計圧力よりも大きな圧力になるように、前記第2工程において前記液化ガス供給手段から第1〜第3配管内に導入した液化ガスの圧力をP3としたとき、このP3が、前記第3工程において前記第2開閉弁を開き、第1〜第3配管内から熱分析用試料容器内に液化ガスを凝縮させながら充填し、式:P3−P1から算出される値と同じ圧力となったときに、前記第4工程において前記第2開閉弁を閉じる前記(5)または(6)記載の熱分析用試料容器への液化ガス充填方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱分析用試料容器内に目標充填量の液化ガスを正確に充填することができ、それゆえ熱分析装置の検出感度を高めて液化ガスの熱分析を正確に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる熱分析用試料容器への液化ガス充填装置を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<熱分析用試料容器への液化ガス充填装置>
以下、本発明にかかる熱分析用試料容器への液化ガス充填装置(以下、液化ガス充填装置と言う。)の一実施形態について、図1を参照して詳細に説明する。同図に示すように、本実施形態にかかる液化ガス充填装置1は、熱分析用試料容器(以下、試料容器と言う。)2と、熱分析用試料容器冷却手段(以下、冷却手段と言う。)3と、各々が所定の容積を有する第1〜第3配管4〜6と、を備えている。
【0011】
試料容器2は、C80やARC等の熱分析装置に備えられているものであり、液化ガス供給手段から供給される液化ガスが充填されるものである。液化ガスとは、高圧ガス保安法で定める液化ガスのことを意味する。
【0012】
本実施形態にかかる液化ガス供給手段は、液化ガスを収容したボンベに一端が接続されている液化ガス供給ライン20で構成されている。この液化ガス供給ライン20から供給される液化ガスとしては、分解や反応による発熱挙動の評価を必要とする所望のものが採用可能であり、特に限定されるものではない。
【0013】
試料容器2は、液化ガス供給ライン20から供給される液化ガスを密封可能なように構成されている。これにより、試料容器2から液化ガスが漏洩するのを抑制することができる。
【0014】
試料容器2の容積としては、通常、20cm3以下であり、15cm3以下であるのが好ましく、10cm3以下であるのがさらに好ましい。本実施形態にかかる液化ガス充填装置1は、このような小さな容積を有する試料容器2内に目標充填量の液化ガスを充填するのに適している。
【0015】
試料容器2を構成する材料としては、充填される液化ガスに応じたものを採用すればよく、特に限定されないが、例えばチタン、ハステロイ、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0016】
冷却手段3は、上述した試料容器2を冷却するものである。本実施形態にかかる冷却手段3は、冷媒3aと、この冷媒3aを収容している容器3bとで構成されている。
【0017】
冷媒3aとしては、冷却する液化ガスに応じたものを採用すればよく、特に限定されないが、例えば氷、氷水、ドライアイス、ドライアイスをアセトンやメタノール等の溶媒に加えたもの、液体窒素等が挙げられる。容器3bとしては、冷媒3aを収容可能な限り、特に限定されるものではない。
【0018】
第1〜第3配管4〜6のうち第1配管4は、液化ガス供給ライン20および試料容器2に接続されている。具体的に説明すると、第1配管4は、液化ガス供給ライン20側に位置している一端に第1開閉弁7を有し、試料容器2側に位置している他端に第2開閉弁8を有している。第1配管4は、一端が第1開閉弁7を介して液化ガス供給ライン20に接続され、他端が第2開閉弁8を介して試料容器2に接続されている。
【0019】
第2,第3配管5,6は、この第1配管4に各々の一端が接続されている。第2配管5は、他端に圧力計等の圧力測定手段10を有している。第3配管6は、他端に第3開閉弁9を有し、この第3開閉弁9を介して他端が真空引き手段に接続されている。本実施形態にかかる真空引き手段は、真空ポンプに一端が接続されている真空引きライン21で構成されているが、第1〜第3配管4〜6内および試料容器2内を真空引き可能な限り、これに限定されるものではない。
【0020】
上述した第1〜第3配管4〜6および第1〜第3開閉弁7〜9を構成する材料としては、液化ガスに応じたものを採用すればよく、特に限定されないが、例えばチタン、ハステロイ、ステンレス鋼等が挙げられる。また、第1〜第3開閉弁7〜9は、各々が開閉自在に構成されている。
【0021】
ここで、上述した各部材で構成されている液化ガス充填装置1は、第1〜第3開閉弁7〜9を閉じた状態における第1〜第3配管4〜6の合計容積をC1、試料容器2の容積をC2としたとき、C1およびC2が、C1>C2の関係を有しているのが好ましい。これにより、試料容器2に対する目標充填量よりも多い量の液化ガスを液化ガス供給ライン20から第1〜第3配管4〜6内に導入し、かつ目標充填量の液化ガスを試料容器2内に充填する工程を、安全に行うことができる。なお、目標充填量の液化ガスを試料容器2内に充填可能な限り、C1およびC2は、C1>C2の関係に限定されるものではない。
【0022】
第1〜第3配管4〜6の合計容積であるC1は、試料容器2の容積であるC2に対して3〜30倍程度の容積であるのが好ましい。C1があまり小さいと、C1およびC2をC1>C2の関係にすることによる効果が得られ難くなるおそれがある。また、C1があまり大きいと、必要以上の量の液化ガスを第1〜第3配管4〜6内に導入することになるので、効率が低下するとともに、経済的にも好ましくない。なお、第1〜第3配管4〜6の各々の容積は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0023】
本実施形態では、第1配管4に液化ガス保管部11が設けられている。液化ガス保管部11は、液化ガスを保管するものであり、所定の容積を有している。したがって、液化ガス保管部11を設けると、その分に応じて第1配管4の容積が大きくなるので、上述したC1およびC2がC1>C2の関係に構成され易くなる。その結果、第1〜第3配管4〜6の各々の容積や長さの制限が少なくなり、液化ガス充填装置1の設計自由度を向上させることができる。
【0024】
なお、液化ガス保管部11の容積は、第1配管4の容積に含まれるものである。したがって、第1配管4に液化ガス保管部11を設けた場合のC1は、第1〜第3開閉弁7〜9を閉じた状態において、液化ガス保管部11の容積を含む第1配管4の容積と、第2,第3配管5,6の各々の容積とを合計した値になる。また、液化ガス保管部11を構成する材料としては、上述した第1〜第3配管4〜6および第1〜第3開閉弁7〜9を構成する材料で例示したのと同じ材料が挙げられる。
【0025】
<熱分析用試料容器への液化ガス充填方法>
次に、本発明にかかる熱分析用試料容器への液化ガス充填方法(以下、液化ガス充填方法と言う。)の一実施形態について、上述した液化ガス充填装置1を用いる場合を例に挙げ、詳細に説明する。本実施形態にかかる液化ガス充填方法は、以下の第1〜第4工程を含んでいる。
【0026】
(第1工程)
まず、第1開閉弁7を閉じるとともに、第2,第3開閉弁8,9を開いた状態にする。ついで、第1〜第3配管4〜6内および試料容器2内を、真空引きライン21によって矢印A方向に真空引きした後、第2,第3開閉弁8,9を閉じる。これにより、第1〜第3配管4〜6内および試料容器2内が、真空状態になる。
【0027】
(第2工程)
第1〜第3配管4〜6内および試料容器2内を真空状態にした後、第1開閉弁7を開いて、液化ガス供給ライン20から矢印B方向に供給される液化ガスを、第1〜第3配管4〜6内へ導入する。このとき、第1〜第3配管4〜6内は真空状態なので、液化ガスを第1〜第3配管4〜6内へスムーズに導入することができる。また、上述したように、第1〜第3配管4〜6の合計容積であるC1と、試料容器2の容積であるC2とがC1>C2の関係を有している場合には、目標充填量よりも多い量の液化ガスを第1〜第3配管4〜6内に安全に導入することができる。
【0028】
第1〜第3配管4〜6内に目標充填量よりも多い量の液化ガスを導入した後、第1開閉弁7を閉じて、第1〜第3配管4〜6内に液化ガスを密封する。第1〜第3配管4〜6内に目標充填量よりも多い量の液化ガスが導入されていることの確認は、圧力測定手段10を用いて行うことができる。
【0029】
(第3工程)
第2開閉弁8を開いて、第1〜第3配管4〜6内から冷却手段3によって冷却されている試料容器2内に、液化ガスを凝縮させながら充填する。このとき、試料容器2内は真空状態なので、液化ガスを試料容器2内へスムーズに充填することができる。
【0030】
(第4工程)
目標充填量の液化ガスが試料容器2内に充填された後、第2開閉弁8を閉じる。これにより、試料容器2内に目標充填量の液化ガスが正確に充填される。
【0031】
ここで、本実施形態では、上述した第2工程において、液化ガス供給ライン20から第1〜第3配管4〜6内への液化ガスの導入を、以下のようにして行うのが好ましい。すなわち、液化ガスの目標充填量に応じた圧力をP1、冷却手段3によって冷却されている試料容器2内の温度における飽和蒸気圧をP2としたとき、P1とP2との合計圧力と同じ圧力になるように、より好ましくはP1とP2との合計圧力よりも大きな圧力になるように、液化ガス供給ライン20から第1〜第3配管4〜6内に液化ガスを導入するのがよい。これにより、第1〜第3配管4〜6内が試料容器2内よりも適度に加圧された状態になるので、試料容器2内に目標充填量の液化ガスを効率よく充填することができる。
【0032】
また、P1とP2との合計圧力と同じか、またはこの合計圧力よりも大きな圧力になるように、第2工程において液化ガス供給ライン20から第1〜第3配管4〜6内に導入した液化ガスの圧力をP3としたとき、このP3が、第3工程において第2開閉弁8を開き、第1〜第3配管4〜6内から試料容器2内に液化ガスを凝縮させながら充填し、式:P3−P1から算出される値と同じ圧力となったときに、第4工程において第2開閉弁8を閉じるのが好ましい。これにより、試料容器2内に目標充填量の液化ガスを正確に充填することができる。
【0033】
なお、冷却手段3によって冷却されている試料容器2内の温度を実測することが困難なときには、冷媒3aの温度を試料容器2内の温度として判断すればよい。また、圧力の確認は、圧力測定手段10を用いて行うことができる。
【0034】
目標充填量の液化ガスが充填された試料容器2は、C80やARC等の熱分析装置に取付けられ、所定の熱分析に供される。このとき、試料容器2内には目標充填量の液化ガスが正確に充填されているので、熱分析装置の検出感度を高めて液化ガスの熱分析を正確に行うことができる。
【0035】
以上、本発明にかかる好ましい実施形態について説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において、種々の改善や変更が可能である。
【0036】
例えば上述した一実施形態では、液化ガス供給手段として、液化ガスを収容したボンベに一端が接続されている液化ガス供給ライン20を例に挙げて説明したが、液化ガス供給手段の構成は試料容器2に液化ガスを供給可能な限り、これに限定されるものではない。例えば、液化ガスを収容したボンベに代えて、液化ガスを収容したタンク等を採用することもできる。
【0037】
また、上述した一実施形態では、冷却手段として、冷媒3a,容器3bで構成されている冷却手段3を例に挙げて説明したが、冷却手段の構成は試料容器2を冷却可能な限り、これに限定されるものではない。具体例を挙げると、ペルティエ素子等が挙げられる。
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
上述した図1に示す液化ガス充填装置1を使用して、試料容器2に液化ガスを充填した。使用した液化ガスと、液化ガス充填装置1の構成は、以下に示す通りである。
【0040】
・液化ガス:プロパンガス
・試料容器2:ステンレス鋼製の密封容器
・冷媒3a:ドライアイス
・容器3b:ステンレス鋼製の容器
・圧力測定手段10:圧力計
・第1〜第3配管4〜6,第1〜第3開閉弁7〜9および液化ガス保管部11の構成材料:ステンレス鋼
・第1〜第3開閉弁7〜9を閉じた状態における第1〜第3配管4〜6の合計容積であるC1:155cm3
・試料容器2の容積であるC2:9cm3
なお、上述のC1は、第1〜第3開閉弁7〜9を閉じた状態において、液化ガス保管部11の容積を含む第1配管4の容積と、第2,第3配管5,6の各々の容積とを合計した値である。
【0041】
試料容器2への液化ガスの目標充填量は、以下の通りである。
・目標充填量:0.00575モル
この目標充填量は、50℃における容積9cm3の試料容器2内のプロパンの飽和蒸気量である。この飽和蒸気量は、50℃におけるプロパンの飽和蒸気圧である1.72MPaAを気体の状態方程式に当てはめて算出した値である。
【0042】
上述した構成の液化ガス充填装置1を使用し、以下に示す第1〜第4工程を経て試料容器2内にプロパンガスを充填した。まず、第1開閉弁7を閉じるとともに、第2,第3開閉弁8,9を開いて、第1〜第3配管4〜6内および試料容器2内を、真空ポンプに一端が接続されている真空引きライン21によって真空引きした後、第2,第3開閉弁8,9を閉じた(第1工程)。
【0043】
ついで第1開閉弁7を開いて、プロパンガスを収容したボンベに一端が接続されている液化ガス供給ライン20から第1〜第3配管4〜6内に目標充填量よりも多い量のプロパンガスを導入した後、第1開閉弁7を閉じた(第2工程)。
【0044】
このとき、液化ガス供給ライン20から第1〜第3配管4〜6内へのプロパンガスの導入を、25℃の雰囲気温度で行った。また、プロパンガスの目標充填量に応じた圧力をP1、冷却手段3によって冷却されている試料容器2内の温度における飽和蒸気圧をP2としたとき、P1とP2との合計圧力よりも大きな圧力である0.5MPaAになるように、圧力測定手段10で確認しながら第1〜第3配管4〜6内にプロパンガスを導入した。
【0045】
なお、プロパンガスの目標充填量0.00575モルに応じた圧力であるP1は、25℃においては0.092MPaである。また、冷媒3aの温度を実測すると、−20℃であり、この温度を試料容器2内の温度とした。この温度における飽和蒸気圧であるP2は、0.245MPaである。
【0046】
ついで第2開閉弁8を開いて、第1〜第3配管4〜6内から冷却手段3によって冷却されている試料容器2内に、プロパンガスを凝縮させながら充填した(第3工程)。
【0047】
そして、圧力測定手段10で確認される圧力が、0.5MPaAから0.408MPaAまで低下したときに、第2開閉弁8を閉じた(第4工程)。ここで、圧力が0.5MPaAから0.408MPaAまで低下することは、0.092MPaのプロパンガスが試料容器2内に充填されたことを意味する。この0.092MPaは、上述した通り、目標充填量である0.00575モルに応じた圧力である。しがたって、0.5MPaAから0.408MPaAまで圧力が低下したときに第2開閉弁8を閉じることができた、ということは、目標充填量のプロパンガスが試料容器2内に正確に充填されたことを意味する。よって、液化ガス充填装置1を使用して第1〜第4工程を経れば、試料容器2内に目標充填量のプロパンガスを正確に充填できることがわかる。
【符号の説明】
【0048】
1 液化ガス充填装置
2 熱分析用試料容器
3 熱分析用試料容器冷却手段
3a 冷媒
3b 容器
4 第1配管
5 第2配管
6 第3配管
7 第1開閉弁
8 第2開閉弁
9 第3開閉弁
10 圧力測定手段
11 液化ガス保管部
20 液化ガス供給ライン
21 真空引きライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス供給手段から供給される液化ガスが充填される熱分析用試料容器と、
この熱分析用試料容器を冷却する熱分析用試料容器冷却手段と、
前記液化ガス供給手段および熱分析用試料容器に接続されている第1配管と、
この第1配管に各々の一端が接続されている第2および第3配管と、を備え、
前記第1配管は、
一端に第1開閉弁を有し、他端に第2開閉弁を有するとともに、
前記一端が第1開閉弁を介して前記液化ガス供給手段に接続され、
前記他端が第2開閉弁を介して前記熱分析用試料容器に接続されており、
前記第2配管は、他端に圧力測定手段を有し、
前記第3配管は、他端に第3開閉弁を有し、この第3開閉弁を介して他端が真空引き手段に接続されていることを特徴とする熱分析用試料容器への液化ガス充填装置。
【請求項2】
前記第1〜第3開閉弁を閉じた状態における前記第1〜第3配管の合計容積をC1、前記熱分析用試料容器の容積をC2としたとき、前記C1およびC2が、C1>C2の関係を有する請求項1記載の熱分析用試料容器への液化ガス充填装置。
【請求項3】
前記第1配管に、液化ガスを保管する液化ガス保管部が設けられている請求項1または2記載の熱分析用試料容器への液化ガス充填装置。
【請求項4】
液化ガス供給手段から供給される液化ガスが充填される熱分析用試料容器と、
この熱分析用試料容器を冷却する熱分析用試料容器冷却手段と、
前記液化ガス供給手段および熱分析用試料容器に接続されている第1配管と、
この第1配管に各々の一端が接続されている第2および第3配管と、を備え、
前記第1配管は、
一端に第1開閉弁を有し、他端に第2開閉弁を有するとともに、
前記一端が第1開閉弁を介して前記液化ガス供給手段に接続され、
前記他端が第2開閉弁を介して前記熱分析用試料容器に接続されており、
前記第2配管は、他端に圧力測定手段を有し、
前記第3配管は、他端に第3開閉弁を有し、この第3開閉弁を介して他端が真空引き手段に接続されている熱分析用試料容器への液化ガス充填装置を用いて、液化ガスを熱分析用試料容器へ充填する方法であって、
前記第1開閉弁を閉じるとともに第2および第3開閉弁を開いて、前記第1〜第3配管内および熱分析用試料容器内を前記真空引き手段によって真空引きした後、前記第2および第3開閉弁を閉じる第1工程と、
ついで前記第1開閉弁を開いて、前記液化ガス供給手段から第1〜第3配管内に目標充填量よりも多い量の液化ガスを導入した後、前記第1開閉弁を閉じる第2工程と、
ついで前記第2開閉弁を開いて、前記第1〜第3配管内から前記熱分析用試料容器冷却手段によって冷却されている熱分析用試料容器内に、液化ガスを凝縮させながら充填する第3工程と、
目標充填量の液化ガスが前記熱分析用試料容器内に充填された後、前記第2開閉弁を閉じる第4工程と、
を含むことを特徴とする熱分析用試料容器への液化ガス充填方法。
【請求項5】
前記液化ガスの目標充填量に応じた圧力をP1、
前記熱分析用試料容器冷却手段によって冷却されている熱分析用試料容器内の温度における飽和蒸気圧をP2としたとき、
前記P1とP2との合計圧力と同じ圧力になるように、前記第2工程において前記液化ガス供給手段から第1〜第3配管内に液化ガスを導入する請求項4記載の熱分析用試料容器への液化ガス充填方法。
【請求項6】
前記P1とP2との合計圧力よりも大きな圧力になるように、前記第2工程において前記液化ガス供給手段から第1〜第3配管内に液化ガスを導入する請求項5記載の熱分析用試料容器への液化ガス充填方法。
【請求項7】
前記P1とP2との合計圧力と同じか、または前記合計圧力よりも大きな圧力になるように、前記第2工程において前記液化ガス供給手段から第1〜第3配管内に導入した液化ガスの圧力をP3としたとき、
このP3が、前記第3工程において前記第2開閉弁を開き、第1〜第3配管内から熱分析用試料容器内に液化ガスを凝縮させながら充填し、式:P3−P1から算出される値と同じ圧力となったときに、前記第4工程において前記第2開閉弁を閉じる請求項5または6記載の熱分析用試料容器への液化ガス充填方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−202886(P2012−202886A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69140(P2011−69140)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】