説明

熱分析装置および熱分析方法

本発明は、熱分析装置(1)に関する。本発明の熱分析装置(1)は、試料キャリア(3)および加熱装置(4)ならびに不活性ガス(5)の存在する試料空間(2)を有し、さらに本発明の熱分析装置(1)内には、不活性ガス流(7)を試料キャリア(3)に向けて発生させる不活性ガス(5)の流通装置(6)が存在し、また、ゲッタ装置(11)が不活性ガス(5)から残留酸素を除去するために存在し、ゲッタ装置(11)は不活性ガス流(7)の流れ方向における試料キャリア(3)の上流でその近くに配置される。本発明の熱分析装置(1)は、試料キャリア(3)および加熱装置(4)ならびに不活性ガス(5)の存在する試料空間(2)を有し、さらに本発明の熱分析装置(1)内には、不活性ガス流(7)を試料キャリア(3)に向けて発生させる不活性ガス(5)の流通装置(6)が存在し、また、酸素捕捉装置(8)が不活性ガス(5)から残留酸素を除去するために存在し、ゲッタ装置(8)は不活性ガス流(7)の流れ方向における試料キャリア(3)の上流でその近くに配置される。また、本発明は熱分析方法に関し、試料空間(2)中で、試料キャリア(3)および加熱装置(4)は不活性ガス(5)で囲まれ、不活性ガス(5)は不活性ガス流(7)として試料空間(2)中でまずゲッタ装置(11)の上方をまたは通過して流れ、不活性ガス(5)から残留酸素を除去し、そしてゲッタ装置(11)の近くに配置される試料キャリア(3)に流れるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に従う熱分析装置および請求項21の前提部に従う熱分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料特性の調査方法には熱分析があり、この熱分析では試料を温度制御プログラムにかける。寸法変化、質量変化、熱効果、固有の熱容量および漏れガスなどを調査する。
【0003】
その試料は試料空間中に供給される不活性ガス雰囲気中の残留酸素で酸化されえ、これにより結果が変わってしまうことは望ましくない。よって、パージガスとも呼ばれる不活性ガスおよび/またはパージガスとして使用されている不活性ガスの中に残留酸素が存在する、名ばかりの不活性ガス(例えば窒素、アルゴンまたはヘリウム)雰囲気下において測定装置中で問題が起こる。
【0004】
装置中の残留酸素は、通常真空気密装置により抜き、そして高純度の不活性ガスを充満させてパージすることにより、最小限に抑える。従って、残留酸素濃度はその装置の真空気密性、ガス供給配線の真空気密性および存在する不活性ガスの純度に依存する。装置自体の有限漏出速度や装置の壁からの残留酸素の離脱により、装置に導入する前にパージガスを精製しても全く不十分である。
【0005】
従って、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4の文献に従う不活性ガスから残留酸素を除去する装置および方法は、不活性ガスの残留酸素含有量を減少させるには基本的に好適であるが、残留酸素についての不活性ガスの純度は、いずれの場合にも、それぞれの装置への後続の経路によって不活性ガスの使用前に再度悪化する。例えば前述の文献中で不活性ガスの応用として用いられているような特定の製造方法および製造環境においては許容しうるが、特に熱分析装置および熱分析方法などの測定・分析の装置・方法においては、それらによって満足できる結果は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願第2340102(A)号明細書
【特許文献2】独国特許出願第69830247(T2)号明細書
【特許文献3】独国特許第3621014(C2)号公報
【特許文献4】独国特許出願第68910638(T2)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、熱分析装置および熱分析方法での測定における、残留酸素の混入の低減ひいては測定の向上である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に従う熱分析装置および請求項21に従う熱分析方法により達成できる。
【0009】
したがって、本発明では試料空間を有する熱分析装置を創出し、その試料空間中には、試料キャリアと加熱装置と不活性ガスとが含まれ、さらに、不活性ガスから残留酸素を除去するために、サンプルキャリアおよびゲッタ装置(酸素捕捉装置)へと不活性ガス流を起こすための不活性ガスの流通装置が含まれ、前記ゲッタ装置は不活性ガス流の流れ方向における試料キャリアの上流でこの試料キャリアの近くに配置される。
【0010】
有効かつ進歩的な方法のゲッタ装置により、熱分析装置中の試料位置での残留酸素濃度はその場(in-situ)でかなり低減させることができた。
【0011】
また、このゲッタ装置は、不活性ガス流の流れ方向の試料キャリアの上流でこの試料キャリアと離間して配置することが好ましい。
【0012】
また、前記不活性ガスの流通装置は、試料空間に不活性ガスサプライを有することが好ましい。
【0013】
さらに好適な実施形態は、ゲッタ装置がゲッタキャリアと、その中または上に配置した特に金属製のゲッタ材とを有することからなり、具体的には、ゲッタキャリアおよび/またはゲッタ材を不活性ガスの流れ方向の試料キャリアの上流に配置し、少なくとも試料キャリアと大体軸方向に揃えて並べるようにすることもできる。その代わりに、または、それに加えて、好適には次のようにすることができる。
・このゲッタ材は耐熱性であり、
・このゲッタ材はジルコニウムを含み、
・この加熱装置は、このゲッタ材を400℃以上の温度に加熱するように設計し、特に構成し、形成しおよび/または配置し、
・このゲッタキャリアは少なくとも基本的にセラミック材、具体的にはYを含有するセラミックからなり、
・このゲッタキャリアは少なくとも基本的にゲッタ材と反応しない材料からなり、および/または
・ゲッタキャリアはロッド、ワイヤ、またはリングである。
【0014】
さらに好適な実施形態では、加熱装置が加熱領域を定め、その加熱領域中に、試料キャリアを、その試料キャリアの上または中に随意に載置した試料と共に配置し、ゲッタ装置の少なくとも一部(適切な場合は少なくともゲッタ材)を配置する。
【0015】
また、各加熱装置は、試料キャリアの上に載置できる試料と、ゲッタ装置の少なくとも一部(適切な場合は少なくともゲッタ材)とを同時に加熱するように設計して配置することが好ましい。
【0016】
別の好適な実施形態によれば、試料キャリア上に載置しうる試料を加熱するための加熱装置は、少なくとも1つの発熱体を有し、この発熱体は試料キャリアの上または中の試料に対して試料キャリアから横方向に離間して位置し、具体的には、1つまたは複数の発熱体は、少なくとも一部で試料キャリアを側面に沿って囲むようにすることもできる。
【0017】
流通装置は好適には、少なくとも基本的に垂直方向の不活性ガス流を発生させるように設計および配置し、また、試料キャリアを少なくとも基本的にゲッタ装置の上方に配置する結果、その不活性ガス流は試料キャリアを横方向に通過し、試料キャリア上に載置できる試料を通過する。あるいは、流通装置を少なくとも基本的に水平方向の不活性ガス流を発生させるように設計および配置し、かつ、試料キャリアを少なくとも基本的にゲッタ装置に対して横方向に配置する結果、不活性ガス流は試料キャリアおよび試料キャリアの上に載置できる試料の上方を少なくとも流れる。
【0018】
不活性ガスは、具体的には純度99.996のアルゴン、窒素および/またはヘリウムを含むことが好ましい。
【0019】
さらに試料キャリアは調査用の試料を受けるるつぼを支えるように設計することが好ましい。
【0020】
酸素捕捉装置はゲッタ装置を有することが好ましい。
【0021】
ゲッタ装置のみならず一般的な熱分析装置の既述の実施形態も好ましいものである。
【0022】
最後に本発明は熱分析方法も創出し、その方法においては、試料キャリアおよび加熱装置が試料空間中の不活性ガスで囲まれる。また、不活性ガスを不活性ガス流として試料空間中に流し、まず不活性ガスからの残留酸素の除去のためのゲッタ装置の上方をまたは通過して流れ、そしてその後にゲッタ装置の近くに配置した試料キャリアに流れる。
【0023】
不活性ガス流を不活性ガスサプライにより試料空間に発生させることが好ましい。
【0024】
また、好適には加熱装置が加熱領域を定め、その加熱領域中に、試料キャリアを、その試料キャリアの上または中に随意に載置した試料と共に配置し、ゲッタ装置の少なくとも一部(適切な場合は少なくともゲッタ材)を配置する結果、各加熱装置が試料キャリアの上に載置できる試料と、ゲッタ装置の少なくとも一部またはゲッタ装置に収容されたゲッタ材とを同時に加熱する。
【0025】
熱分析方法の別の好適な実施形態では、少なくとも基本的に垂直方向の不活性ガス流を発生させ、それがゲッタ装置を通過して流れ、そして少なくとも基本的にゲッタ装置の上方に配置される試料キャリアに流れ、その結果、不活性ガス流が、試料キャリアを横方向に通過し、試料キャリアの上に載置できる試料を通過して流れる。あるいは、少なくとも基本的に水平方向の不活性ガス流を発生させ、そのガス流がまずゲッタ装置を通過して流れ、そして少なくとも基本的にゲッタ装置に対して横方向に配置した試料キャリアへ流れ、その結果、不活性ガス流は試料キャリアおよび試料キャリアの上に載置できる試料の上方を少なくとも部分的に流れる。
【0026】
さらに、熱分析装置は複数の加熱装置を有してもよく、その各加熱装置でゲッタ装置および試料をそれぞれ別々に加熱することができる。
【0027】
さらなる実施形態において、熱分析装置は予め真空引きすることなく稼動させる。この実施形態では、試料空間は、ゲッタ装置と引き続き試料に押し寄せる不活性ガス流にのみ曝される。
【0028】
さらに好ましいおよび/または有利な本発明の実施形態は、特許請求の範囲およびそれらの組合せならびに本出願書類の全てから生まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明は以下に詳細に説明するが、その説明は例としてのみ、以下の図面を参照しつつ実施形態の例を説明するものである。
【0030】
【図1】図1は熱分析装置の実施形態の第1例を示す図面である。
【図2】図2は熱分析装置の実施形態の第2例を示す図面である。
【図3】図3は本発明に従う熱分析装置の使用の効果を表す測定図である。
【0031】
個々の図面および図の説明における同一の符号は、同一若しくは同様の部品または等しく若しくは同様に作動する部品を意味する。図中の符合を付けていない特徴も、以下に説明が有る無しにかかわらず、図面の描写の助けにより明らかとなる。一方、本明細書に含まれるが図面で見えないあるいは表れない特徴は、当業者が読んで容易に理解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
熱分析装置1の実施形態の第1例および第2例を図1および図2に模式的に示す。
【0033】
この熱分析装置1は、試料空間2を有し、この試料空間2中には試料キャリア3と加熱装置4と不活性ガス5とが含まれる。試料キャリア3に向けて不活性ガス流7を発生させるための不活性ガス5の流通装置6、また、不活性ガス5から残留酸素を除去する酸素捕捉装置8もさらに含まれる。流通装置6は試料空間2への不活性ガスサプライ9を有し、その試料空間2は不活性ガス排気口10をさらに有し、その結果、不活性ガス5は不活性ガスサプライ9から試料空間2を通って不活性ガス排気口10へ流れ、その試料空間2の中で酸素捕捉装置8から試料キャリア3の順に流れる。
【0034】
不活性ガス5は例えばアルゴンであり、具体的には99.996の純度のアルゴンであるが、例えば窒素若しくはヘリウムなどのガスまたは混合ガスも用いることができる。
【0035】
酸素捕捉装置8は、不活性ガス5から残留酸素を除去するためのゲッタ装置11を有し、不活性ガス流7の流れ方向の試料キャリア3の上流で試料キャリアの近くに試料キャリアから離間して設置する。ゲッタ装置の構造、機能および動作は、具体的には冒頭に記載した文献などの先行技術により原則理解される。参照は明確になされ、その結果、ゲッタ装置11の全ての既知の実施形態と、具体的には、特許文献1〜4にて開示される特徴は、重複を避けるためにこの参照のみによって、本明細書中にそれらの全てを包含する。
【0036】
ゲッタ装置11は、ゲッタキャリア12およびこのゲッタキャリア12の中または上に配置されるゲッタ材13を有し、このゲッタ材13は特に金属を有する。ゲッタキャリア12および/または好適には金属のゲッタ材13は、不活性ガス5または不活性ガス流7の流れ方向における試料キャリア3の上流にて、試料キャリア3と大体軸方向に揃えて並べるようにする。加熱装置4は、ゲッタ材13を十分高い温度(例えば400度超え)に加熱するように設計し、特に構成、形成および/または配置する。しかしながら、この温度の値は、単に実施形態での例として示している。有用なゲッタ装置11およびゲッタ材13は、本発明の内容において、400度以上の温度のみで駆動または作動するものに制限されず、それどころか、400度未満で駆動または作動するゲッタ装置11およびゲッタ材13を用いてもよい。ゲッタ材13は耐熱性でジルコニウムを含む。ゲッタキャリア12は金属材料、具体的にはYからなり、ゲッタ材13と反応しない物質からなる。本実施形態において、ゲッタキャリア12はロッド、ワイヤ、またはリングでもよい。
【0037】
加熱装置4は加熱領域14を定め、加熱領域14中において、試料キャリア3を、その上(図1参照)またはその中(図2参照)に載置したるつぼ16中の試料15と共に配置し、ゲッタ装置11または通常の酸素捕捉装置8を配置する。したがって、ゲッタ装置11または酸素捕捉装置8は、不活性ガス5または不活性ガス流7の流れ方向に対して試料キャリア3の上流で試料キャリア3と離間して配置することにより、試料15とゲッタ材13を反応させないようにする。
【0038】
さらに、加熱装置4は、試料キャリア3の上に載置できる試料15と、ゲッタ装置11または少なくともゲッタ装置11の具体的には金属製ゲッタ材13とを同時に加熱するように設計および配置する。このために、加熱装置4は複数の発熱体17を有し、その各発熱体17は、試料キャリア3の上または中の試料15に対して、試料キャリア3から横方向に離間させ、各発熱体が少なくとも一部で試料キャリア3を側面に沿って囲むように形成および配置する。
【0039】
図1に従う実施形態の第1例の場合、熱分析装置1は、不活性ガスサプライ9および不活性ガス排出口10の配置を受けて、流通装置6が垂直方向の不活性ガス流7を底部から上部へ発生させるように配置して具体化し、そして試料キャリア3をゲッタ装置11の上方に配置する結果、不活性ガス流7は試料キャリア3およびこの試料キャリア3の上に載置した試料15の横方向を通過して流れる。
【0040】
それとは異なり、実施形態の第1例および第2例の唯一の違いとして、図2に記載される実施形態の第2例に従う熱分析装置1は、流通装置6を設計および配置して、不活性ガスサプライ9および不活性ガス排気口10の配置により水平方向の不活性ガス流7を発生させ、また、試料キャリア3をゲッタ装置11に対して横方向に配置することにより、不活性ガス流7が試料キャリアおよびこの試料キャリアの上に載置できる試料の上方を少なくとも流れる。
【0041】
したがって、この方法によれば、不活性ガス5によって十分に囲まれた試料キャリア3および加熱装置4を含む試料空間2中で、不活性ガス5は、試料空間2中を不活性ガス流7として流れ、まず不活性ガス5から残留酸素を除去するゲッタ装置11の上方をまたは通過して流れ、そしてゲッタ装置11から離間するがその近くに配置する試料キャリア3へ流れるようになる。
【0042】
図1および2で最も重要なのは、不活性ガスの流れる方向、すなわち、不活性ガス流7であり、不活性ガス5中の残留酸素がまず金属を含むゲッタ材13に移動して、これに吸収されるため、この残留酸素は試料15部位まで移動しない。垂直方向または水平方向の配置の選択は、装置および/または測定のさらなる必要に応じて決めることができる。
【実施例】
【0043】
例として、図3に示すニッケルにより得られたTG−DSC測定カーブによって、熱分析装置1の稼動様態およびその中で行う熱分析方法の様態、具体的には、本発明に従って不活性ガス流7中の試料15およびその試料ホルダ3の上流に配置した酸素捕捉装置8またはゲッタ装置11の態様が明らかとなる。2つのニッケル試料を測定した。より正確には、熱分析装置1およびその中で行う熱分析方法で測定したニッケル試料であって、具体的には、不活性ガス流7中の試料15およびその試料ホルダ3の上流に本発明に従って配置した酸素捕捉装置8またはゲッタ装置11で測定したニッケル試料については実線で結果を表示し、他方は、不活性ガス流7中の試料15およびその試料ホルダ3の上流に配置する酸素捕捉装置8またはゲッタ装置11を用いずに測定したニッケル試料である。
【0044】
TGは熱重量測定(thermal gravimetry)、すなわち質量変化を定量的に示し、DSCは示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry)を示し、例えば融解などの熱効果を調べることができる。両方の測定を、99.996純度のアルゴンパージガスを用いて行った。文献で既知の1455℃であるニッケルの融点(Tmelt)は、しばしば熱分析装置において高温での温度測定に用いられる。しかしながら、ニッケルは非常に酸素に敏感であり、その結果融点は不明確に下がるため、もはや温度測定に用いることができない。
【0045】
熱分析装置1およびそれにより行う熱分析方法、具体的には不活性ガス流7中の試料15およびその試料ホルダ3の上流に本発明に従って配置した酸素捕捉装置8またはゲッタ装置11での測定では、実線で示す測定カーブが示すように、この点について正確な結果を示した。試料15はもはや著しく酸化しておらず、これは、水平に延びるTGカーブ、つまり重量変化が起きていないことによってわかる。ニッケルのいわゆるDSC融解ピークは1454.9℃で起き、すなわち、文献値1455℃の付近でみられ、測定された融解エンタルピーデルタHは299.8J/g、すなわち、およそ300.0J/gに達する。
【0046】
不活性ガス流7における試料15およびその試料ホルダ3の上流で本発明に従って配置する酸素捕捉装置8またはゲッタ装置11を用いずに行う測定の間は、試料15は酸化し、これは破線で表される測定カーブによりTGカーブが顕著に増大する(重量増加)ことからわかる。酸化により、DSC融解ピークは1443℃ですでに起こり、すなわち、それは文献値より12℃低い温度である。測定した融解エンタルピーの275J/gも文献値の300J/gより小さいことがわかる。
【0047】
熱分析装置1およびそれで行う熱分析方法、具体的には不活性ガス流7中の試料15およびその試料ホルダ3の上流に本発明に従って配置した酸素捕捉装置8またはゲッタ装置11は、熱分析測定(TGA,DSC,STA,DILなど)において残留酸素濃度をその場(in-situ)で減少させることができ、具体的には耐熱性ゲッタ材13が熱分析装置1の測定領域または試料空間2に入るように構成する。所定の時間が必要な方法では、ゲッタ材13は、発熱体17によって十分高い温度にすることにより駆動させることができる。試料空間2内の不活性ガス5中の残留酸素はゲッタ材13によって吸収され、試料15の酸化は従って効果的に防がれている。このために、ゲッタ材13は熱分析装置内において、不活性ガス5がまずゲッタ材13を通過し、その後試料15を通過して流れるように位置させる。ゲッタ材13はるつぼ16および試料15と接触しない。耐熱性ゲッタキャリア12は、ゲッタ材13を熱分析装置1の試料空間2の中に位置決めする。ゲッタキャリア12はゲッタ材13と反応しない、例えばYセラミックなどの材料を含む。
【0048】
具体的には、本発明の全ての個々の特徴およびあり得る実施形態、ならびにその実施形態の例は組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 熱分析装置
2 試料空間
3 試料キャリア
4 加熱装置
5 不活性ガス
6 流通装置
7 不活性ガス流
8 酸素捕捉装置
9 不活性ガスサプライ
10 不活性ガス排気口
11 ゲッタ装置
12 ゲッタキャリア
13 ゲッタ材
14 加熱領域
15 試料
16 るつぼ
17 発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料キャリア(3)と、加熱装置(4)と、不活性ガス(5)の不活性ガスサプライ(9)を有する流通装置(6)とが含まれる試料空間(2)を有する熱分析装置(1)であって、
前記不活性ガス(5)から残留酸素を除去するための、少なくとも1つのゲッタ装置(11)が含まれ、
前記1つのゲッタ装置(11)は、不活性ガス流(7)の流れ方向(6)における前記試料キャリア(3)の上流で前記試料キャリア(3)の近くに配置し、
前記ゲッタ装置(11)は、ゲッタ材(13)を受けるためのゲッタキャリア(12)を少なくとも1つ有し、
前記ゲッタキャリア(12)および/または前記ゲッタ材(13)は前記試料キャリア(3)に対して軸方向に配置し、かつ
前記ゲッタキャリア(12)はセラミック材から製造できることを特徴とする熱分析装置(1)。
【請求項2】
前記ゲッタ材(13)が、耐熱性金属材料および/または金属、好ましくはジルコニウムを含む材料であることを特徴とする、請求項1に記載の熱分析装置(1)。
【請求項3】
前記ゲッタキャリア(12)は少なくとも部分的に、セラミック材、好ましくはYを含むセラミック材からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱分析装置(1)。
【請求項4】
前記ゲッタキャリア(12)は前記ゲッタ材(13)と反応しない材料からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱分析装置(1)。
【請求項5】
前記ゲッタキャリア(12)がロッド、ワイヤまたはリングであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱分析装置(1)。
【請求項6】
前記加熱装置(4)は、前記ゲッタ材(13)を400℃以上の温度に加熱することができるように設計、構成、形成および/または配置することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱分析装置(1)。
【請求項7】
前記加熱装置(4)は加熱領域(14)を定め、該加熱領域中に、前記試料キャリア(3)を前記試料キャリア(3)の上または中に載置した試料(15)と共に配置し、前記ゲッタ装置(11)の少なくとも一部または少なくとも前記ゲッタ材(13)を配置することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱分析装置(1)。
【請求項8】
前記加熱装置(4)は、前記試料キャリア(3)の上に存在する試料(15)と、前記ゲッタ装置(11)の少なくとも一部、適切には少なくとも前記ゲッタ材(13)とを同時に加熱できるように設計および配置することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱分析装置(1)。
【請求項9】
前記試料キャリア(3)の上に存在する試料(15)を加熱する前記加熱装置(4)は、少なくとも1つの発熱体(17)を前記試料(15)から横方向に離間して有していることを特徴とする、請求項7または8に記載の熱分析装置(1)。
【請求項10】
1つまたは複数の前記発熱体(17)は、少なくとも一部で前記試料キャリア(3)を側面に沿って囲むことを特徴とする、請求項7または8に記載の熱分析装置(1)。
【請求項11】
前記ゲッタ装置(11)は分かれた加熱装置(4)を有し、該加熱装置(4)により前記ゲッタ装置(11)は別々に加熱することができおよび/または特定の温度で維持することができることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱分析装置(1)。
【請求項12】
前記流通装置(6)は基本的に垂直方向および/または水平方向の前記不活性ガス流(7)を発生するように設計され、前記試料キャリア(3)は前記ゲッタ装置(11)の上方および/または前記ゲッタ装置(11)に対して横方向に配置し、その結果、前記不活性ガス流(7)が、前記試料キャリア(3)および該試料キャリア(3)上に載置できる試料(15)を横方向に通過して流れるおよび/または上方を流れることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱分析装置(1)。
【請求項13】
前記不活性ガス(5)がアルゴンおよび/または窒素および/またはヘリウムを具体的には99.996の純度で有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の熱分析装置(1)。
【請求項14】
前記試料キャリア(3)は調査用の試料(15)を受けるるつぼ(16)を支持するように設計することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の熱分析装置(1)。
【請求項15】
前記熱分析装置(1)は前記不活性ガス流(7)のみで稼動でき、予め真空にしている熱分析装置(1)を用いないことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の熱分析装置(1)。
【請求項16】
試料キャリア(3)および加熱装置(4)は試料空間(2)中の不活性ガス(5)によって囲まれ、不活性ガス流(7)は前記試料空間(2)中の不活性ガスサプライ(9)によって発生させ、
前記試料空間(2)中の前記不活性ガス流(7)はまず、前記不活性ガス(5)からの残留酸素の除去のためのゲッタ装置(11)の上方をまたは通過して流れ、そして前記試料キャリア(3)へ流れ、
前記ゲッタ装置(11)は前記試料キャリアの近くに配置し、
ゲッタ材(13)を受けるための少なくとも1つのゲッタキャリア(12)を前記ゲッタ装置(11)に配置し、前記ゲッタキャリア(12)および/または前記ゲッタ材(13)は前記試料キャリアと軸方向に揃えて並べ、かつ
前記ゲッタキャリア(12)はセラミック材から製造することを特徴とする熱分析方法。
【請求項17】
前記加熱装置(4)は加熱領域(14)を定め、該加熱領域中に、前記試料キャリア(3)を前記試料キャリア(3)の上および/または中に載置した試料(15)と共に配置し、前記ゲッタ装置(11)および/または前記ゲッタ材(13)を配置して、前記試料キャリア(3)上に載置した試料(15)および/または前記ゲッタ装置(11)および/または該ゲッタ装置(11)の中に収容された前記ゲッタ材(13)が前記加熱装置(4)によって加熱されるようにしたことを特徴とする、請求項16に記載の熱分析方法。
【請求項18】
垂直方向のおよび/または水平方向の不活性ガス流(7)を発生させ、該不活性ガス流(7)はまず前記ゲッタ装置(11)を通過し、そして前記ゲッタ装置(11)に対して上方および/または横方向に配置した前記試料キャリア(3)へ流れ、その結果、前記不活性ガス流(7)が、前記試料キャリア(3)および該試料キャリア(3)の上に載置した試料(15)を横方向に通過しておよび/または上方で運ばれることを特徴とする、請求項16または17に記載の熱分析方法。
【請求項19】
前記ゲッタ装置(11)が1つの加熱装置(4)により加熱され、前記試料(15)を有する前記試料キャリア(3)が別の加熱装置(4)によって加熱されるように、前記加熱装置(4)を配置することを特徴とする、請求項16〜19のいずれか1項に記載の熱分析方法。
【請求項20】
熱分析装置(1)は、予め真空にしている熱分析装置(1)を用いずに、不活性ガス流(7)によりパージすることのみで稼動されることを特徴とする、請求項16〜20のいずれか1項に記載の熱分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−529014(P2012−529014A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513469(P2012−513469)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000623
【国際公開番号】WO2010/139311
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511294589)ネッシー ガーテゥボー ゲーエムベーハー (2)
【氏名又は名称原語表記】Netzsch−Gertebau GmbH
【Fターム(参考)】