説明

熱分析装置

【課題】熱分析装置、具体的には示差走査熱量測定器が、第1及び第2の測定場所との温度オフセットを解消する。
【解決手段】所定の温度プログラムを設定する手段と、第1の加熱器1及び第2の加熱器4と、測定場所それぞれにおいて第1及び第2の温度を測定するための第1のセンサー3及び第2のセンサー8と、第1の測定温度を温度プログラムに基本的に従わせるように、第1の加熱器の熱電力を制御し、第1及び第2の測定温度の任意の差が基本的に0になるように第1及び第2の加熱器を制御するためのコントローラー7,10とを含んでいて、コントローラー10が、前記第1及び第2の測定温度の低い方を決定する手段を含み、他よりも低い温度の測定場所に関連付けられている加熱器に追加電力を与えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分析装置に関し、具体的には示差走査熱量測定器及びそのような装置を作動するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
示差走査熱量測定器(DSC)などの熱分析装置は、温度プログラムに晒される試料の異なる特性及び特質を測定するために使用される。
DSCは、試料の物理的又は化学的特性の温度に対する変化を記録するために利用される。例えば、温度変化によって試料に発生する転移及び他の影響に伴う発熱又は吸熱事象に関する熱測定がある。試料の変化が基準に対して測定され、それらは空の基準場所又は適切な基準物質があり得る。DSCの種類によって基準又は試料物質は、測定場所それぞれに直接配置され得るか又はその後、測定場所に配置されている適切な「るつぼ」に配置され得る。
【0003】
DSCに関して主に2つの制御原理が知られていて、それらは熱流束原理及び電力補償原理である。以下に電力補償DSCに関する例を更に詳細に論述する。
電力補償は通常、補償加熱器としてしばしば参照される追加加熱器を試料場所に配置し、個別に制御することによって熱分析装置の中に実装される。試料場所、基準場所及び前記場所の1つに配置される任意の物質が、温度プログラムに晒され、基準場所及び試料場所の主加熱器によって適用される。試料場所の主加熱器は、基準場所の加熱器によって送信される熱電力を単純に模倣する。前記補償加熱器は、試料と基準場所との間の温度差が、基本的に0に留まるように制御されると同時に吸熱相転移を介して試料を加熱するために必要とされる任意の超過電力を送信するように使用される。過剰又は補償電力は、冷却運転を実行するためにも必要とされ、その場合、補償加熱器は、実験の始めに一定の熱量を試料に適用し、実験の間、徐々に低下される。
【0004】
電力補償DSCの基準場所も備えられるか又は別の補償加熱器と熱接触し固定のオフセット電圧に設定されて一定の補償電力を提供する。前記固定の基準オフセットに対し、試料電圧として表される試料の実際の熱電力需要は、正又は負である。そのような電力補償DSCは、例えば米国出願特許第6,632,015 B2号に開示されている。
【0005】
マイクログラム又はナノグラムの範囲の大きさを有する非常に薄いフィルム及び粒子分析に関しては、チップベースの異なる熱量計が、多くの場合、シリコン技術に基づいて開発されている。例えば高速DSCなどこれらのチップ熱量計の異なる用途の概要が、A.W.van Herwaardenによる「Overview of Calorimeter Chips for Various Applications」,Thermochimica Acta,432(2005),192−201で与えられている。
【0006】
チップ型のDSCに関する電力補償原理の実現が、この原理の無視可能なほどかなり取るに足らないいくつかの欠点を改良している。構成によってこれらの欠点は、例えば限定された負の補償空間、オフセット温度並びにベースラインオフセット、ドリフト及び曲率に関連する。
【0007】
限定された負の補償空間は、測定可能な熱流量のカットオフを導き得、不正又は不完全な結果をもたらし得る。電力補償に関しては、「負」の補償電力量は、基準場所におけるオフセット補償電力セットによって制限される。したがって、基準オフセット電力は、調査する試料に対し適用される必要がある。未知の試料に関しては、適切な基準オフセット電力を決定するために、実験的な数回の実行が実行され得、貴重な試料物質及び時間の浪費をもたらし得る。
【0008】
前記基準オフセット電力は、装置の動作温度範囲を減少させるオフセット温度を生成する。基準オフセット電力を減少させることによって、オフセット温度も、動作温度の範囲を拡大するために低下され得るが、残念なことに、これが限定された負の補償空間に対する問題を増大させる。例えば、高速冷却の実験をするための十分な空間を保証するためには、結果として生じるオフセット温度が、摂氏数十度に達し得る。
【0009】
結果として生じるDSC曲線のベースラインも基準場所において供給されるオフセット電力量のために相殺され得る。更に、基準場所におけるオフセット電圧が一定に保たれているときであっても基準補償加熱器の抵抗が温度に従うにつれて結果として生じるオフセット電力が温度と共に変化する。この影響が、試料と基準場所との間の固有の物理的な差によって更に重ね合わせられ得る所望しないベースライン変動及び/又はベースライン曲率をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の目的は、熱分析装置、特に電力補償原理の欠点を克服する前記熱分析装置に示差走査熱量測定器(DSC)及び補償原理を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の特徴によれば本発明は、特にDSCの熱分析装置に関していて、第1及び第2の測定場所と、所定の温度プログラムの時間に対する名目温度値を設定する手段と、第1の測定場所に関連付けられている第1の加熱器及び第2の測定場所に関連付けられている第2の加熱器と、第1の測定場所の温度を測定するための第1のセンサーと、第2の測定場所の温度を測定するための第2のセンサーと、コントローラーと、を含む。前記コントローラーは、前記第1の測定温度が、基本的に前記温度プログラムに従わせるために前記第1の加熱器の熱電力を制御し、更に前記コントローラーは、前記第1及び第2の測定温度の間の任意の差が基本的に0になるように第1及び第2の加熱器を制御する。熱分析装置は、前記コントローラーが、前記第1及び第2の温度の低い方を決定する手段を含み、前記他よりも低い測定温度を有する測定場所に関連付けられている加熱器に追加電力を適用することを特徴とする。言い換えると、コントローラーは、測定場所の他よりも低い方に追加熱電力を適用することによって、第1及び第2の測定場所の間に生じる差温としても参照される任意の温度差を補償するために第1の加熱器又は第2の加熱器のいずれかを動的に制御する。
【0012】
本発明による例示的な熱分析装置であるDSCに関連し本発明を主に記載する。望ましくは、測定場所の1つが試料場所として参照され、他方が基準場所として参照され、測定場所それぞれに直接配置され得るか又は任意の試料又は基準物質がその後、測定場所それぞれに配置されている適切な「るつぼ」に配置され得る。
【0013】
本発明による熱分析装置、特にDSCは、特に動的補償アプローチを導入することによって電力補償装置の欠点である完全に固定の基準補償オフセットを克服している。補償電力又は追加電力だけを試料場所に供給する代わりに、電力補償原理に関して知られているように、本発明による熱分析装置においては、補償電力は、それが必要とされる場所及び時間に従って測定場所の1つ又は他方に選択的に適用される。補償電力が、第1若しくは第2の加熱器又は測定場所それぞれに関連付けられている個別の補償加熱器を介し直接供給され得る。
【0014】
例示的な実施形態においては、熱分析装置は更に、第1の測定場所に関連付けられている第1の補償加熱器及び第2の測定場所に関連付けられている第2の補償加熱器を含む。温度プログラムが、加熱器それぞれを介し測定場所それぞれに適用され得る。コントローラーに含まれる決定手段を用いて他よりも低い温度を有する測定場所が決定され得、コントローラーは、前記他よりも低い測定温度を有する測定場所に関連付けられている補償加熱器に追加電力を適用する。
【0015】
コントローラーは、第1と第2の測定場所との間に発生する温度差又は差温を補償するために第1の補償加熱器又は第2の補償加熱器のいずれかを動的に制御する。補償加熱器の1つを介する追加電力並びに第1及び第2の加熱器を介する温度プログラムを適用することによって加熱器機能の分離が、信号対ノイズ(SN)比を改善することは好都合である。追加又は補償電力が、どの場所が他よりも低い温度かに従って、選択的にいずれの測定場所に供給され得、それ故、最も高い瞬時電力需要を有する。補償電力は常に、非負の電力値、特に非負の補償電圧として供給され、補償電力、更に補償温度に変換される。
【0016】
これら2つのDSCの動作法を区別する方法として、既知のアプローチを電力補償として参照し、本発明によるアプローチを動的補償として参照する。
望ましくは、コントローラーは、温度プログラムアプリケーションを制御するための第1の制御ループ及び差温補償を制御するための第2の制御ループを含む。差温は、他よりも低い温度の測定場所に追加電力を適用することによって補償される。
【0017】
利点として、前記決定手段が、第2の制御ループに含まれていて、第1と第2の測定場所との間の差温の符号が決定され得る。差温は、所定の時間間隔か又は連続的かいずれかにおいて第1と第2の測定温度との間の差から決定される。
【0018】
構成に従ってコントローラーは、アナログ又はデジタルいずれかであり得る。アナログコントローラーは、望ましくは、制御ループそれぞれに関するPIDコントローラーを含む。デジタルコントローラーは、より柔軟なアプローチが可能であって例えばファジー制御システムとして設計され得る。
【0019】
例示的な実施形態においては、センサーそれぞれは、第1又は第2の温度を測定するための少なくとも1つの熱電対を有する熱電対列配列を含む。特にDSC装置に関しては、熱電対配列のいくつかの設計は、単一の熱電対から1つ以上の層の真下及び/又は測定場所それぞれの周囲に配置される熱電対パターンから成る複雑な設計まで及ぶことが知られている。
【0020】
動的補償に関しては、第1及び第2の測定場所が基本的に対称を示すときに好都合であって、いかなる差温も試料又は試料からの過熱流動となって、構成物の差によるエラー修正がほとんどない状況になるために測定場所の質量又は他の特性が、試料の特性決定を生み出す。求めている特性は通常、任意の差温を補償するために必要とされる前記追加電力から決定される。
【0021】
測定場所は、共通の容器に測定場所を配置され得るか又は個別の容器の測定場所それぞれに配置され得、熱的に分離されていることが不可欠である。
単一の試料物質に対し実行される測定量又は同様の状況下で実行される実験量に従って、複数のペアの第1及び第2の測定場所を装置に提供することが好都合であり得、測定場所が、1つ以上の測定場所を含む共通の容器又は個別の容器に配置され得る。
【0022】
動的補償を用いて熱分析装置を制御することは、もっと詳細に後述する更なる課題を生じる。
第1及び第2の加熱器並びに第1及び第2の補償加熱器を含むDSCなどの熱分析装置は、単一の実験の実行中に補償加熱器間において数回の補償電力切替を提示し得る。走査方向の反転時、例えば冷却から加熱又は逆もまた同様で切替が発生している限り、これは、関係なくて無視され得る。これらの方向変更の間に取得されたデータは通常、−電力補償から知られているように−いかなる実験結果の生成に含まれない。しかし、前記切替は、走査中も発生し得るか又は物理的若しくは化学的な転移が試料内でも発生し得る。その場合、切替によってもたらされるアーチファクト(artifact)が、不正確なデータ及び最終的に不正確な実験結果を生じ得る。補償加熱器間の切替は、信号が非常に小さいことよる試料と基準場所との間の絶対対称性の欠如が、スキャンの間か又は低温結晶化実験の間に0交差を生じ得るときに遅延測定のために更に頻繁に生じ得る。これらの実験に関しては、データの取得の頻度に対する高速切替が重要であり得る。
【0023】
第2の特徴によれば本発明は、前記追加電力の供給を制限する手段を更に含む熱分析装置、特にDSCに関連していて、前記追加電力が、加熱器又は補償加熱器の1つだけに同時に供給される。
【0024】
望ましくは、制限手段は、第1と第2の測定場所との間の温度差に比例して加熱器の1つか又補償加熱器の1つだけを起動する。
第1及び第2の補償加熱器を有する装置に関して、前記制限手段による補償電圧形式の補償電力が、まだ補償加熱器すべてに提供されているが、これは、測定場所それぞれにおける熱電力要求に従って、選択された適切な補償加熱器に電流だけが供給されることを意味する。補償加熱器を有していない装置に関しては、前記補償電圧は、第1又は第2の加熱器いずれかの電圧に重ね合わせられる。
【0025】
前記加熱器又は補償加熱器の間の切替は、アーチファクトを回避するためにスムーズ且つシームレスである必要がある。
望ましくは、これらの制限手段は、加熱器それぞれ又は補償加熱器それぞれに関する電圧フォロワー及びダイオードを含んでいて、ダイオードは、電圧フォロワーそれぞれと逆方向である。例示的な実施形態においては、演算増幅器が、電圧フォロワーとして使用され得る。望ましくは、演算増幅器の安定化の時間は、サンプリング周波数と比較すると常に小さい。
【0026】
第1及び第2の補償加熱器を含む熱分析装置を提供するときのもう1つの課題は、第2の制御ループの感度が0交差の近くで0に降下することを防ぐことである。
第2の制御ループは、前記差温に比例する電圧によって更に正確に第1と第2の測定場所との間の差温によって制御され得る。必要な補償熱電力の量は、基本的にこの差温に比例するが、第2の制御ループの出力は、電力というよりもむしろ電圧である。
【0027】
第2の制御ループの利得又は感度は、
【0028】
【数1】

として表され、ここでΔTは第1及び第2の測定場所の間の差温、Uは補償電圧、ΔUtpは第1と第2の測定場所との間の特異熱電対列電圧、Rは第1又は第2のアクティブ補償加熱器の電気抵抗値、CPIDはセンサーに含まれている熱電対列配列のゼーベック係数などのPIDコントローラーを含む第2の制御ループの利得係数であって、アクティブ補償加熱器に関連付けられている測定場所の温度を測定する。この方程式は、前記補償電圧Uが0であるとき、第2のループの利得全体が、補償電圧Uに比例し、0まで降下し得ることを暗示している。この−空間問題を除く−状況は、第2の補償加熱器が固定のオフセットに設定される電力補償を用いると発生し得ない。他方、動的補償を用いると、この状況は、補償加熱器間の切替の瞬間と同時に発生し得、0交差付近の補償信号の平坦化によってそれ自体が現れ得る。
【0029】
第3の特徴によれば本発明は、熱分析装置、特にDSCに関連していて、第2の制御ループに供給される入力は、第2の制御ループの感度低下を0にすることを防ぐためにアクティブ加熱器又はアクティブ補償加熱器によって要求される電圧に基本的に比例する。前記追加又は補償電力を供給するアクティブ加熱器又はアクティブ補償加熱器が存在する。
【0030】
第2の制御ループは更に、PIDコントローラーの前方で特異な熱電対列配列電圧の平方根を取得する平方根回路を含み得る。この回路を用いると第2の制御ループの補償獲得全体は、もはや(U)に依存せず、
【0031】
【数2】

として表現され得る。
【0032】
平方根回路の実装は、特にデジタル制御ループを用いた使用に適する。また平方根回路は、補償加熱器それぞれに対する平方根増幅器を第2の制御ループに追加することによってアナログ制御ループ用に実装されている。アナログ制御ループへの平方根回路の追加は、雑音及び不安定性が追加される可能性ある原因を構成し得るなどほとんど好ましくない解決策である。記載された感度の低下を防ぐためのもう1つのアプローチは、動的補償をDSCに提供することによって実現され得、更に、制限手段及びオフセット電圧形式で個別のオフセット電力を補償加熱器それぞれに供給する手段を含む。
【0033】
望ましくは、補償加熱器それぞれが、等価のオフセット電圧値を供給される。不等価な値に関しては、オフセット温度は、更に高いオフセット電圧に依存すると同時に0交差問題は、他よりも低いオフセット電圧に依存する。双方の影響が、測定結果の精度を減少させる。
【0034】
オフセット電圧値は、0交差の近くのアーチファクトを排除できるくらい高いと同時に、装置の動作温度範囲を制限し得る大きい任意のオフセット温度発生を回避し得るくらい小さい必要がある。オフセット電力を生じるオフセット電圧は、実際の機器構成、試料物質及び装置を構成する部品特性に関して選定される必要がある。受容可能なオフセット温度(ΔToff)に関するオフセット電圧(Uoff)は、
【0035】
【数3】

として表され、ここで(R)は補償加熱器の抵抗値を表し、(Rth)は、測定場所と環境との間の熱抵抗を表す。
【0036】
動的補償原理を実装するときの更なる課題は、特に、第1と第2の補償加熱器を含む一般に対称的に作動可能な熱分析装置における非対称の発生であり得る。第1及び第2の補償加熱器は、第1又は第2の測定場所それぞれに補償電力を供給し得る。残念なことに第2の補償加熱器の補償電力は、第2の測定場所の温度に直接的な影響を有し、特に前記第2の測定場所は、補償電力を受信するときの基準場所としても参照される。これは、第1の制御ループに影響し、第1及び第2の測定場所に温度プログラムを課す原因となって干渉を誘発する振動問題を生じ得る。
【0037】
第4の特徴によれば本発明は、第1及び第2の制御ループを有する動的補償原理を用いて作動する熱分析装置に関連し、2つの制御ループは、個別の時定数を有する。
2つの制御ループの時定数の離調は、1つの制御ループだけが、常に特定の測定場所において動作するような干渉を誘発する振動問題を回避し得る利点を有する。
【0038】
時定数離調に加えて、切替手段が、第1及び第2の制御ループに含まれ得、第2の制御ループが、第2の補償加熱器の起動から第1の補償加熱器の起動に切替えたとき、第1の制御ループに入力される温度を第1の温度から第2の温度に切替え、逆もまた同様である。本明細書の文脈においては、起動された補償加熱器に補償電流を流すことを可能にするものとして起動を理解する。入力温度の切替は、第2の制御ループの切替と関連付けられ得る。この測定を介し第1及び第2の制御ループが、同一の測定場所において同時にアクティブであることが回避され得、それによって第1と第2の制御ループとの間の前述の干渉可能性が回避され得る。
【0039】
この測定に関しては、制御ループ双方の切替が、同時に発生する必要がある。この条件下においては、第1の制御ループへの代替入力―第1又は第2の温度―は、切替の瞬間に基本的に同一の大きさを有する。これは、切替装置双方を差温の0交差に関連付けする前述の測定によって提供され得る。
【0040】
望ましくは、動的補償が、DSCなどの熱分析装置を制御するために使用される。特に大きな対称性の測定場所として実現され得ることは、チップ型の示差走査熱量測定器を用いた使用が好都合である。更に、熱分析装置は、DSC及びTGA(TGA:熱重量分析)を結合する装置であり得る。本発明による方法が、これらの熱分析装置のいずれかを制御するために使用され得る。
【0041】
本発明の別の特徴は、熱分析装置、特に示差走査熱量測定器を制御するための方法に関連していて、熱分析装置は、第1の測定場所と、第2の測定場所、所定の温度プログラムの時間に対する名目温度値を設定する手段と、第1の測定場所に関連付けられている第1の加熱器と、第2の測定場所に関連付けられている第2の加熱器と、第1の測定場所の温度を測定する第1のセンサーと、第2の測定場所の温度を測定する第2のセンサーと、コントローラーと、を含む。前記コントローラーは、前記測定第1の温度が基本的に前記温度プログラムに従うように前記第1の加熱器の熱電力を制御し、更に、前記コントローラーは、第1と第2との任意の温度差が基本的に0になるように第1及び第2の加熱器を制御する。更に、コントローラーは、前記第1及び第2の測定温度が低い方を決定し、他よりも低い測定温度を有する測定場所に関連付けられている加熱器に対し追加電力を適用する。
【0042】
例示的な別の実施形態においては、熱分析装置は更に、第1の測定場所に関連付けられている第1の補償加熱器及び第2の測定場所に関連付けられている第2の補償加熱器を含む。この実施形態においては、温度プログラムは、加熱器それぞれによって測定場所それぞれに適用され得、コントローラーは、他よりも低い温度の測定場所、すなわち他よりも低い測定温度を有する測定場所に関連付けられている補償加熱器に追加電力を適用する。
【0043】
望ましくは、温度プログラムアプリケーションが第1の制御ループによって制御され得、差温補償が第2の制御ループによって制御され得る。
例示的な別の実施形態においては、差温補償は更に、第2の制御ループに含まれている制限手段によって制御される。
【0044】
例示的な別の実施形態においては、前記動的補償原理は更に、個別のオフセット電圧を補償加熱器それぞれに適用するステップを含む。望ましくは、同一のオフセット電圧が、補償加熱器それぞれに適用される。
【0045】
利点として前述のような方法を用いて本発明による熱分析装置を制御するための計算機プログラムが提供され、計算機プログラムが、熱分析装置のコントローラーの記憶装置にストアされる。
【0046】
本発明の異なる実施形態を以下の図に関連して論述する。図面において同様の要素は、同一の参照記号を用いて参照されている。図面を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】米国出願特許第6,632,015 B2号
【非特許文献】
【0048】
【非特許文献1】A. W. van Herwaarden "Overview of Calorimeter Chips for Various Applications", Thermochimica Acta, 432 (2005), 192-201
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】電力補償を有するDSCに関する電子構成。
【図2】DSCが測定場所それぞれに対する加熱器及び補償加熱器を含む動的補償を有するDSCに関する電子構成。
【図3】DSCが測定場所それぞれに対する加熱器を含む動的補償を有するDSCに関する電子構成。
【図4a】ポリプロピレンの融解中の電力補償を有するDSCの試料及び基準加熱器電力並びに基準オフセット電力需要及び補償電力要求の表示。
【図4b】ポリプロピレンの結晶化中の電力補償を有するDSCの試料及び基準加熱器電力並びに基準オフセット電力需要及び補償電力要求の表示。
【図5a】ポリプロピレンの融解中の動的補償を有するDSCの基準補償電力需要並びに試料補償電力需要、試料及び基準加熱器電力の表示。
【図5b】ポリプロピレンの結晶化中の動的補償を有するDSCの基準補償電力需要並びに試料補償電力需要、試料及び基準加熱器電力の表示。
【図6】補償加熱器切換を制御する手段及び補償加熱器それぞれに適用されるオフセット電圧を含む動的補償を有するDSCに関する電子構成。
【図7】補償加熱器及び補償加熱器それぞれに適用されるオフセット電圧切替を制御する手段を含む動的補償を有するDSCのデータ取得に関する電子構成。
【図8】動的補償及び第2の制御ループによって制御される測定場所と関連する第1の制御ループへの温度入力誘導切替を有するDSC用電子構成。
【図9】第2の制御ループの感度低下を防ぐ手段の利点を示すポリアミド6の低温結晶化の比較測定。
【図10】電力補償と比較した動的補償のオフセット温度、ベースラインオフセット、ドリフト及び曲率における利点を示すポリプロピレンに関するDSC測定。
【図11】電力補償と比較した動的補償の空間利点を示すポリプロピレンに関するDSC測定。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、電力補償を有するDSCに関する電子構成を示している。
DSCは、少なくとも2つの測定場所、第1の測定又は試料場所(S)及び第2の測定又は基準場所(R)を含む。試料又は試料物質が、試料場所(S)に配置され得、基準物質が、基準場所(R)に配置され得る。試料に関する実験は、基準物質の有無に関わらず実行され得る。
【0051】
試料場所(S)は、試料加熱器(1)及び第1補償加熱器(2)と熱接触している。試料場所(S)における温度が、少なくとも1つの熱電対(3)を含むセンサーによって決定される。同様に基準場所(R)は、基準加熱器(4)及び第2の補償加熱器(5)と熱接触していて、一定のオフセット電圧(Uoff)から生じるオフセット電力を供給する。基準場所(R)における温度は、少なくとも1つの熱電対(8)を含むセンサーを用いて測定される。加熱器(1)、(2)、(4)、(5)が、望ましくは、個別の抵抗加熱器として設計される。
【0052】
試料加熱器(1)及び基準加熱器(4)は、第1の制御ループ(6)の一部である測定場所(S)、(R)それぞれに温度プログラムを適用する。この制御ループ(6)は、PIDコントローラー(7)も含む。温度プログラムが、温度セット点(TSET)によって示されるように第1の制御ループ(6)に与えられる。
【0053】
第1の補償加熱器(2)が、PIDコントローラー(10)も含む第2の制御ループ(9)に統合される。試料場所(S)に供給される補償電圧は、補償電力を生じ、その大きさは、基本的に0に留まるように試料場所(S)と基準場所(R)との間の任意の温度差を制御するために選定される。したがって第2の制御ループ(9)への入力は、前記温度差(ΔT)と熱電対ゼーベック定数(αs)との積である。制御ループ(6)、(9)は、本明細書に示されていないDSCを制御するためのメインコントローラーに接続される。
【0054】
図2は、動的補償としても参照される本発明による補償を有するDSCに関する電子構成を示していて、図1の電力補償DSCを有するいくつかの機能を共有する。図2に示されているような動的補償に関しては、第2の制御ループ(11)は、第1の補償加熱器(2)及びPIDコントローラー(10)の他に基準場所(R)に熱接触している第2の補償加熱器(12)も含む。第2の制御ループ(11)は更に、第1の補償加熱器(2)又は第2の補償加熱器(12)の選定によって測定場所それぞれに適用され、補償電力を生じる補償電圧の受信を可能にする決定手段(13)を含む。2つの補償加熱器(2)、(12)の補償電圧を受信するいずれかは、試料場所(S)と基準場所(R)との間の差温(ΔT)の符号に依存する。温度差(ΔT)=(T)−(T)が負である場合、基準場所における温度(T)が、試料場所における温度(T)よりも高いために第1の補償加熱器(2)に適用される補償電圧が引上げられ、その結果、補償電力は、前記第1の補償加熱器(2)に適用され、再度、基本的に差温(ΔT)を0に低下させるために、試料温度(T)の増加をもたらす。差温(ΔT)の符号が正の場合、第2の補償加熱器(12)に適用される補償電圧は、差温(ΔT)を基本的に0に低下させるために引上げられる。
【0055】
図3は、補償加熱器を有していない動的補償を用いたDSCに関する別の電子構成を示している。測定場所(S)、(R)それぞれは、既に図2に記載されたような主加熱器(1)、(4)及び少なくとも1つの熱電対(3)、(8)を備えている。主加熱器(1)、(4)は、測定場所(S)、(R)に温度プログラム(TSET)を供給する第1の制御ループ(16)によって制御される一方であって、図2に記載されているような同様の部品を含む第2の制御ループ(17)によって制御されるもう一方である。熱電対(3)、(8)から決定された差温によって過剰熱電力が、第2の制御ループ(17)を介して試料場所(S)又は基準場所(R)いずれかに供給される。この過剰熱電力は、メイン加熱器(1)、(4)それぞれに第1の制御ループ(16)によって送信される主加熱電力に対して電子的に追加される。
【0056】
図4及び5においては、知られている電力補償原理が、本発明による動的補償を用いて高い抽象レベルで比較される。図4aは、電力補償DSC実験対象の試料ポリプロピレン(14)の記録された融解曲線の点で熱電力分布を示している。図4bは、電力補償DSC対象の試料ポリプロピレン(14)の記録された結晶化曲線の点で熱電力分布を示している。図5a及び5bは、動的補償DSCの実験対象の試料ポリプロピレン(14)の融解又は結晶化曲線の同一の点で熱電力分布をそれぞれ示す。
【0057】
図4a及び4bに示されている実験の間、試料場所(S)及び基準場所(R)は、試料及び基準加熱器を介する温度プログラムの対象である。記録された曲線の点で試料加熱器及び基準加熱器による供給電圧を基準記号(M)を用いて示す。更に、第2の補償加熱器は、実験を通してずっと基準場所(R)に一定のオフセット電圧(O)を供給する。位相転移による試料のいかなる温度変化も補償するために、補償電圧(C)は、試料場所(S)にも供給され、試料場所(S)と基準場所(R)との間の差温を基本的に0に保持するように制御される。記録された融解曲線上の点においては、第1の補償加熱器は、オフセット電圧(O)よりも高い補償電圧(C)を供給されるが、記録された結晶化曲線上の点においては、補償電圧(C)は、オフセット電圧(O)よりも低い。双方の点は、同一温度を粗く記録するので、主加熱器電圧(M)は、双方の状況においてほとんど等価である。
【0058】
電力補償に関する図4a及び4bの状況と動的補償に関する図5a及び5bに示されている状況とを比較すると、補償電力全体が大きく減少されていて改善されたSN比をもたらすことが明白である。図5aの融解曲線上の点においては、第1の補償加熱器だけは、任意の補償電力を適用するが、第2の補償加熱器は機能しない。図5bの記録されている結晶化曲線の点においては状況が逆である。
【0059】
動的補償は、補償電圧としての補償電力が、それが必要とされる場所及び時間に適用されるだけであって既に言及した増加された空間及びオフセット温度の不在を導く利点をもたらす。
【0060】
図6は、図2の構成と同様の動的補償を有するDSCに関する更なる電子構成を示すが、一定のオフセット電圧(U’off)が、第1の補償加熱器(2)及び第2の補償加熱器(12)に供給される。本発明によるチップ熱量計構成におけるオフセット電圧(U’off)は、例えば約0.5Vであり得、約5kΩの抵抗を有する補償加熱器に基づいて熱電力の約50μWに相当する。そのようなチップ型の熱量計構成においては、典型的な大きさである0.01K/μWの次数の熱抵抗は、非常にわずかな約0.5℃のオフセット温度だけをもたらす。オフセット電圧(U’off)に対する正確な量は、構成等、すなわちPIDコントローラーの品質に依存する。ベースラインに大きな温度オフセットを加えずにアーチファクトを防ぐために十分高いそのような方法で、オフセット電圧(U’off)は選定される必要がある。
【0061】
本発明による動的補償によって、データ取得が適合される必要がある。電力補償に関しては、補償電力は、補償加熱器を介する電流及び電圧を測定することによって取得される。動的補償に関しては、2つの測定場所の1つ又は他の熱電力を選択的に送信され、回路の1つの定点において補償電圧及び補償電流などの個別の信号の抽出は、もはや可能ではなくなる。この問題を克服するために、第1及び第2の補償加熱器を有する熱分析装置に対するデータの取得は、補償加熱器双方を介し特異的に電圧(Ucomp)を測定することと、補償加熱器の合計電流として追加的に電流(Icomp)を測定することと、を含む。追加補償オフセット電力を用いた動的補償に関しては、これを図6の第2の制御ループ(15)を更に詳細に示している図7の回路図に図的に示す。この構成に関しては、ネット補償電力が、第1の補償加熱器(2)の電力(P)と第2の補償加熱器(12)との電力(P)の差によって、
comp=P−P=U−U
として与えられ、アクティブ補償加熱器と比較してもアクティブでない補償加熱器のオフセットへの寄与は常に小さいが、適用される補償オフセット電圧のため無視できない。ネット補償電力(Pcomp)は、対象となる信号である。しかし、実際の測定電力は、
【0062】
【数4】

として表わされ得、ここで(R)は、第1の補償加熱器(2)の加熱器抵抗、(R)は、第2の補償加熱器(12)の加熱器抵抗である。
【0063】
試料場所(S)及び基準場所(R)は、動的補償実験の間、ほぼ等価の温度に留まるので、基本的に対称を有する場合、抵抗値が十分に一致していると見なされ得る。したがって実際のネット補償電力の誤差の項
【0064】
【数5】

は、ネット補償電力信号と比較してかなり小さく、無視され得る。
【0065】
図8は、更に動的補償を有するDSCの電子構成を示していて、第1の制御ループ(18)と第2の制御ループ(19)との間の干渉を切換手段(20)の導入によって防ぐ。測定場所(R)又は(S)上で適切な補償加熱器(2、12)を起動するために使用される同一の判定規準は、切替手段(20)を介して第1の制御ループ(18)にも供給され、前記第1のループ(18)を制御するために使用される温度(T)、(T)を制御する。この測定を介し、1つの制御ループ(18)、(19)だけが、測定場所(S)、(R)の1つにおいてアクティブである。第2の制御ループ(19)の制御が、別の測定場所(S)、(R)に切替わると第1の制御ループ(18)の制御が、反対の測定場所に同時に切替えられる。
【0066】
図9は、動的補償及び50℃/sの加熱率を有するDSCの対象となるポリアミド6の低温結晶化に関する比較実験を示している。実線グラフは、追加補償電圧オフセット(U’off)を用いていない測定であって、点線グラフは、補償加熱器(2)、(12)双方に適用される追加補償電圧(U’off)を用いた測定を示している。実線グラフ中、0mWの電力付近に存在するアーチファクトが、前記追加補償電圧オフセット(U’off)を適用する利点を示す結果として、点線グラフには現れていないことが図9から明白である。
【0067】
電力補償を介する動的補償の利点を立証するために、ポリプロピレンに対する加熱/冷却の比較実験結果を図10及び11に示す。実線グラフは、電力補償を用いて測定されたもので、点線グラフは、補償加熱器と追加補償オフセット電圧との間の切替を制御するための手段を含む動的補償を用いて測定されたものである。
【0068】
図10及び11に示されている図は、動的補償を用いると、それは、室温が提供するオフセットにも関係なく、ベースラインにおけるオフセット及び傾きにも関係なく、空間問題も排除されていることを示している。
【0069】
動的補償原理は特に、チップ型の示差走査装置に対して有用であるが、電力補償原理を利用するこれまでの別の熱分析装置にも適合させられ得る。
【符号の説明】
【0070】
1 試料加熱器
2 第1の補償加熱器
3 熱電対
4 基準加熱器
5 第2の補償加熱器
6 第1の制御ループ
7 PIDコントローラー
8 熱電対
9 第2の制御ループ
10 PIDコントローラー
11 第2の制御ループ
12 第2の補償加熱器
13 決定手段
14 試料
15 第2の制御ループ
16 第1の制御ループ
17 第2の制御ループ
18 第1の制御ループ
19 第2の制御ループ
20 切替手段
R 基準場所/第2の測定場所
S 試料場所/第1の測定場所
M 基準に供給される電圧
I 試料加熱器
O オフセット電圧
C 補償加熱器に供給される電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分析装置であって、具体的には示差走査熱量測定器が、第1の測定場所(S)及び第2の測定場所(R)と、所定の温度プログラムの時間に対する名目温度値を設定する手段と、第1の測定場所(S)に関連付けられている第1の加熱器(1)及び第2の測定場所(R)に関連付けられている第2の加熱器(4)と、第1の測定場所(S)において第1の温度を測定するための第1のセンサー(3)と、第2の測定場所(R)において第2の温度を測定するための第2のセンサー(8)と、更に前記第1の測定温度を基本的に前記温度プログラムに従わせるように前記第1の加熱器(1)の熱電力を制御し、前記第1及び第2の測定温度の任意の差が基本的に0になるように第1及び第2の加熱器(1,4)を制御するためのコントローラーと、を含んでいて、前記コントローラーが、前記第1及び第2の測定温度の低い方を決定し、前記他よりも低い測定温度を有する測定場所に関連付けられている加熱器(1,4)に追加電力を与える手段(13)を含むことを特徴とする熱分析装置。
【請求項2】
前記装置が更に、第1の測定場所(S)に関連付けられている第1の補償加熱器(2)及び第2の測定場所(R)に関連付けられている第2の補償加熱器(12)を含んでいて、前記コントローラーが、前記第1及び第2の測定温度の低い方を決定し、前記他よりも低い測定温度を有する測定場所に関連付けられている補償加熱器(2,12)に追加電力を与える手段(13)を含むことを特徴とする請求項1記載の熱分析装置。
【請求項3】
コントローラーが、温度プログラムアプリケーションを制御するための第1の制御ループ(6,16,18)及び第1と第2の測定場所(S,R)との間の差温補償を制御する第2の制御ループ(11,15,17)を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の熱分析装置。
【請求項4】
前記コントローラーが、少なくとも1つのPIDコントローラー(7,10)を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の熱分析装置。
【請求項5】
前記コントローラーが、ファジー制御システムを含むことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の熱分析装置。
【請求項6】
センサー(3,8)それぞれが、少なくとも1つの熱電対を有する熱電対列配列を含むことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の熱分析装置。
【請求項7】
測定場所(S,R)が、共通のホルダーに配置されること又は測定場所(S,R)それぞれが、個別の容器に配置されることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の熱分析装置。
【請求項8】
本装置が、複数のペアの第1及び第2の測定場所(S,R)を含むことを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の熱分析装置。
【請求項9】
第2の制御ループが更に、前記追加電力が、時間内の何時でも加熱器(1,4)又は補償加熱器(2,12)の1つだけに供給されるように前記追加電力の供給を制限する手段を含むことを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の熱分析装置。
【請求項10】
前記制限手段が、加熱器又は補償加熱器それぞれに対する電圧フォロワー及びダイオードを含んでいて、前記ダイオードが、電圧フォロワーそれぞれと逆方向であることを特徴とする請求項9記載の熱分析装置。
【請求項11】
第2の制御ループに供給される入力が、前記追加電力を供給される加熱器又は補償加熱器によって必要とされる電圧に基本的に比例することを特徴とする請求項1〜10いずれかに記載の熱分析装置。
【請求項12】
第2の制御ループが、平方根回路を含むことを特徴とする請求項11記載の熱分析装置。
【請求項13】
本装置が更に、補償加熱器(2,12)それぞれに個別のオフセット電圧(U’off)を供給するための手段を含むことを特徴とする請求項2〜10いずれかに記載の熱分析装置。
【請求項14】
第1及び第2の制御ループ(18,19)が、異なる時定数を有することを特徴とする請求項2〜13いずれかに記載の熱分析装置。
【請求項15】
第1及び第2の制御ループ(19)が、第2の制御ループ(19)によって起動される補償加熱器(2,12)に逆に接続されている第1の制御ループ(18)に入力される温度を制御する切替手段(20)を含むことを特徴とする請求項2〜14いずれかに記載の熱分析装置。
【請求項16】
熱量計が、チップ型の示差走査熱量測定器であることを特徴とする請求項1〜15いずれかに記載の熱分析装置。
【請求項17】
熱分析装置、具体的には示差走査熱量測定器を制御するための方法であって、前記装置が、第1の測定場所(S)及び第2の測定場所(R)と、所定の温度プログラムの時間に対する名目温度値を設定する手段と、第1の測定場所(S)に関連付けられている第1の加熱器(1)及び第2の測定場所(R)に関連付けられている第2の加熱器(4)と、第1の測定場所(S)において第1の温度を測定するための第1のセンサー(3)と、第2の測定場所(R)において第2の温度を測定するための第2のセンサー(8)と、前記第1の測定温度を基本的に前記温度プログラムに従わせるように前記第1の加熱器(1)の熱電力を制御し、前記第1及び第2の測定温度の任意の差が基本的に0になるように第1及び第2の加熱器(1,4)を制御するコントローラーとを含み、前記コントローラーが、前記第1及び第2の測定温度の低い方を決定し、前記他よりも低い測定温度を有する測定場所(S,R)に関連付けられている加熱器(1,4)に追加電力を与えることを特徴とする熱分析装置。
【請求項18】
熱分析装置が更に、第1の測定場所(S)に関連付けられている第1の補償加熱器(2)と、第2の測定場所(R)に関連付けられている第2の補償加熱器(12)とを含んでいて、前記コントローラーが、前記第1及び第2の測定温度の他よりも低い方を決定し、前記他よりも低い測定温度を有する測定場所(S,R)に関連付けられている補償加熱器(2,12)に追加電力を与えることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
温度プログラムアプリケーションが、第1の制御ループ(6,16,18)によって制御されることと、差温補償が、第2の制御ループ(12,15,17)によって制御されることを特徴とする請求項17又は18記載の方法。
【請求項20】
差温補償が更に、第2の制御ループに含まれている制限手段によって制御されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
個別のオフセット電圧(U’off)が、補償加熱器(2,12)それぞれに与えることを特徴とする請求項18又は20記載いずれかの方法。
【請求項22】
計算機プログラムが、熱分析装置のコントローラーの記憶装置にストアされることを特徴とする請求項17〜21いずれかの方法を用いて、請求項1〜16いずれかによる熱分析装置を制御するための計算機プログラム。

【図1】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−2412(P2010−2412A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−116516(P2009−116516)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
【Fターム(参考)】