説明

熱制御性シート

【課題】夏季の遮熱性に優れ、シートの過度の温度上昇を防ぎ、冬季の蓄温性を有し、採光性と彩色の自由度を有する熱制御性シートの提供。
【解決手段】本発明の熱制御性シートは、近赤外線遮蔽層を含む可撓性シートであって、前記近赤外線遮蔽層が、金属−絶縁体転移物質粒子を含む合成樹脂と、近赤外線散乱着色剤を含む合成樹脂との混合体からなる海島分散構造によって形成された非相溶樹脂層であることによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱制御性を有するシートに関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、夏季の炎天下においては熱エネルギーを遠赤外線として放射してシートの過度の温度上昇を防ぎ、かつ、太陽光に含まれる近赤外線を遮蔽することでこのシートにより構成した膜構造物内部の温度上昇を抑制し、冬季の低温時には、太陽光線や暖房などにより暖められたシートからの熱の放射が少なく蓄温性を有し、特にテント倉庫、イベント用大型テント、農園芸用ハウス、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、間仕切りやトラック幌等に好適に用いることの出来る、熱制御性シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維基布に可撓性樹脂が被覆されてなる光透過性または半透過性のシートは、テント倉庫、イベント用大型テント、農園芸用ハウス、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、間仕切りやトラック幌等、日常生活に係わる屋外用途に広く利用されている。しかしながら、これらのシートは、太陽光線に含まれる近赤外線を遮蔽する能力が低いため、テント倉庫では内部の気温が夏季に極度に上昇して、作業環境を過酷なものとしている。また日除けテントでは、まぶしさを防ぎ、紫外線を減少させるには効果的であるが、冷涼効果には乏しいのが実情である。また、最近薄型フレキシブル太陽電池と可撓性膜材との複合による屋外施設用材料が注目されているが、この用途では夏季の日射によってシートと太陽電池素子とが高温となり易いことで、発電効率や実用性に影響を及ぼす問題があった。
【0003】
この様なシートにおいて、酸化チタン等の無機白色顔料を含有する白色のシートを用いることによって、太陽光線が含む近赤外線を散乱させてその透過を防ぎ、またシート自体の温度上昇を抑えられることが知られている。しかし、十分な温度上昇抑制効果を得るためには、多量の白色顔料を用いる必要があり、そのためこの様なシートを用いた構造体の内部環境が暗くなり、日中でも照明が必要となる。
【0004】
これに対して本発明者は、屈折率1.8以上、粒子径分布0.3〜3.0μm、アスペクト比1.0〜3.0不定形無機化合物粒子を用いた採光性を有する遮熱シートを提案した。(特許文献1参照)この不定形無機化合物粒子は近赤外線を選択的に散乱しながら、可視光は透過することで遮熱性と採光性を同時に得る事を可能とし、また、遮熱性をさほど失うことなく彩色使用することもできる。しかし、この技術によって得られる遮熱シートであっても、真夏の強い日射しの下ではシート自体の温度が60℃近くまで上昇することがあるので、この遮熱シートを薄型太陽電池の支持体として用いるにはまだ要求性能に不満足であり、またこのシートによるテント構造物においても、内部の温度環境を大幅に改善するまでには至っていない。この遮熱シートは従来のシートに比べ10〜15℃レベルの高い熱制御機能を発現するものであるが、エアコン不使用の省エネルギーの観点から、さらなる熱制御効果の向上が望まれている。一方、この遮熱シートは近赤外線を散乱して透過しないため冬季に太陽熱をテント構造物内に取り込んで構造体内部を蓄温するための機能には適していない。
【0005】
タングステン酸化物を含有することで、可視光を透過して透光性を有し、近赤外線を吸収して遮熱性を有するシートを得る試みも行われている。(例えば特許文献2参照)しかし、タングステン酸化物は近赤外線だけでなく可視光の一部(赤〜黄)にも吸収を有するため、これを含有するシートが着色(青または緑)され彩色の自由度が得られない。また、吸収による近赤外線遮蔽であるため、夏季にシート自体の温度上昇を抑える事ができず、薄型太陽電池に用いるには不向きなシートである。
【0006】
LaBやCeB等の6ホウ化物と、酸化チタン等の無機白色顔料とを併用し、6ホウ化物を含むフィルムと無機白色顔料を含むフィルムの積層体、或いは、6ホウ化物と無機白色顔料を併せて含むフィルムに関する技術も開示されている。(例えば特許文献3参照)この方法によれば、優れた近赤外線遮蔽性を得る事ができるが、可視光も同時に遮蔽されるため採光性は得られない。また、夏季にシート自体の温度上昇を抑える事ができず、薄型太陽電池に用いるには不向きなシートである。
【0007】
温度を調節するために、高温では熱放射率が大きく、低温では熱放射率が小さい物質を繊維や塗料組成物に含有させる方法が開示されている(例えば、特許文献4及び5参照)。この様な性質を有する物質として、A1 - XX MnO3 で表されるMnを含んだペロブスカイト酸化物(AはLa,Pr,Nd,Smの希土類イオンの中の少なくとも一つ、BはCa,Sr,Baのアルカリ土類金属イオンの中の少なくとも一つ)、やCrを含んだコランダムバナジウム酸化物が開示されている。これらの物質は280K〜300K(約7℃〜約27℃)において金属−絶縁体転移を起こし、転移温度以上では絶縁体性質で熱放射率が大きく、転移温度より低い温度では金属的性質で熱放射率が小さい性質を有する。これらの複合酸化物をテント構造物用のシートに応用すれば、夏季にシートの温度が転移温度以上に上昇した際には、遠赤外線として熱エネルギーを放射してシート温度を下げる効果が期待され、冬季は、天気の良い日であれば日射を受けてシート温度が上昇し、転移温度付近に保つ効果が期待される。しかし、単にこれらの複合酸化物の粒子を可撓性樹脂中に混ぜ込んだだけでは、近赤外線の透過を十分に防ぐことが出来ず、夏季にシート自体の温度をある程度低く保つことが出来ても、近赤外線が一部透過することでテント構造体内部の温度上昇を防ぐ効果が十分ではなかった。
【0008】
以上の様に現在までのところ、夏季には遮熱性を有し、かつ、シートの過度の温度上昇を防ぎ、冬季の晴天時に一定の熱を取り入れる事が出来、さらに採光性と彩色の自由度を有する熱制御性シートは提供されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−055177号公報
【特許文献2】特開2009−144037号公報
【特許文献3】特開2006−340675号公報
【特許文献4】特開2006−342450号公報
【特許文献5】特許第3221412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、夏季の炎天下においては熱エネルギーを遠赤外線として放射することでシートの過度の温度上昇を防ぎ、かつ、近赤外線を遮蔽して、高い遮熱性を示し、冬季の低温時には、太陽光線や暖房などにより暖められた熱の放射が少なく蓄温性を有し、さらに採光性と彩色の自由度を有する熱制御性シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討の結果、10〜60℃の範囲に転移温度を有する金属−絶縁体転移物質粒子を含む合成樹脂と、近赤外線散乱着色剤を含む合成樹脂との混合体からなる海島分散構造によって形成された非相溶樹脂層を近赤外線遮蔽層として含むことで、夏季の遮熱性を有し、シート自体の過度な温度上昇を防ぎ、かつ、冬季の蓄温性を有するシートが得られる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明の熱制御性シートは、近赤外線遮蔽層を含む可撓性シートであって、前記近赤外線遮蔽層が、金属−絶縁体転移物質粒子を含む合成樹脂と、近赤外線散乱着色剤を含む合成樹脂との混合体からなる海島分散構造によって形成された非相溶樹脂層からなるものである。本発明の熱制御性シートは、海島分散構造において、海成分が前記金属−絶縁体転移物質粒子を含み、島成分が前記近赤外線散乱着色剤を含んでいても良い。本発明の熱制御性シートは、前記海島分散構造において、海成分が前記近赤外線散乱着色剤を含み、島成分が前記金属−絶縁体転移物質粒子を含んでいても良い。本発明の熱制御性シートにおいて、前記金属−絶縁体転移物質粒子が、ペロブスカイト構造を有しマンガンを含む金属複合酸化物粒子、及びコランダム構造を有しクロムとバナジウムを含む金属複合酸化物粒子、から選ばれる一種以上を含み、10〜60℃の範囲に転移温度を有することが好ましい。本発明の熱制御性シートにおいて、前記近赤外線散乱着色剤が、チタン酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、ジルコニウム酸化物、インジウム酸化物、三酸化アンチモン、クロム酸化物、鉄酸化物、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズから選ばれた金属酸化物、及び、ルチル型、ヘマタイト型、またはスピネル型構造を有し、チタン、亜鉛、アンチモン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、銅、マンガン、アルミニウム、ニオブ、及びケイ素の内2種以上の成分を含んでなる金属複合酸化物、から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。本発明の熱制御性シートにおいて、前記可撓性シートが、繊維基布を含む積層体であることが好ましい。本発明の熱制御性シートは、可撓性シートの最外面に、可撓性太陽電池モジュールが積層されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱制御性シートは、近赤外線を遮蔽し、かつ、高温時には熱放射率が高いことで、真夏の炎天下において太陽光線から受けた熱を速やかに放射してシートの温度上昇を防ぎ、冬の低温時には熱放射率が低いため、太陽光線や暖房などにより暖められた熱の放射が少なく蓄温性を有し、さらに採光性と、彩色の自由度を有するものである。最外層に可撓性太陽電池モジュールが積層された熱制御性シートは、夏季に太陽電池素子の温度が上昇して発電効率が低下するのを抑制したり、膨張・収縮の繰り返しにより太陽電池の寿命が短くなることを防止する事ができる。また、この熱制御性シートをテント倉庫、イベント用大型テント、農園芸用ハウス、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、間仕切りやトラック幌等に用いることで、夏は涼しく、冬は暖かく、日中は照明を点灯する必要の無い程度の採光性を有する膜構造物を提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の熱制御性シートの一例を示す図
【図2】本発明の熱制御性シートの一例を示し、海成分が金属−絶縁体転移物質粒 子を含み、島成分が近赤外線散乱着色剤を含む状態を示す図
【図3】本発明の熱制御性シートの一例を示し、海成分が近赤外線散乱着色剤を含 み、島成分が金属−絶縁体転移物質粒子を含む状態を示す図
【図4】最外面に積層された可撓性太陽電池モジュールを含む本発明の熱制御性シー トの一例を示す図
【図5】実施例・比較例において低温環境の昇温と降温を評価した構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の熱制御性シートは、近赤外線遮蔽層を含む可撓性シートであって、その形態は、樹脂シート(樹脂フィルム)、ターポリン、帆布等の防水性シート、またはメッシュシートである。このうち樹脂シートは、カレンダー成型法、Tダイス押出法、あるいはキャスティング法により製造することができ、近赤外線遮蔽層単層であっても良く、近赤外線遮蔽層を含む複数の樹脂シートを積層した積層体であっても良い。ターポリン、帆布等の防水性シート、およびメッシュシートは、近赤外線遮蔽層と繊維基布とを含む積層体であり、近赤外線遮蔽層は繊維基布の一方の面のみに形成されても良く、両面に形成されても良い。帆布やメッシュシートは、有機溶剤に可溶化した可撓性樹脂、水中で乳化重合された可撓性樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは可撓性樹脂を水中に強制分散させ安定化したディスパージョン樹脂などの水分散樹脂、軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾル、等を用いるディッピング加工(繊維布帛への両面加工)、及びコーティング加工(繊維布帛への片面加工、または両面加工)等によって製造することができる。ターポリンはカレンダー成型法、Tダイス押出法またはキャスティング法により成型された樹脂フィルム又は樹脂シートを、繊維基布の片面または両面に接着層を介在して積層する方法、あるいは粗目状の繊維基布の両面に目抜け空隙部を介して熱ラミネート積層する方法により製造することが好ましく、さらにディッピング加工、またはコーティング加工と、樹脂フィルム積層の組み合わせによっても実施可能である。本発明の熱制御性シートは、樹脂シート、ターポリン、および帆布の場合、その可視光透過率(JISZ8722.5.4(条件g))は3〜35%、透明樹脂シート、透明ターポリン、およびメッシュシートの場合10〜80%であることが好ましい。
【0016】
本発明の熱制御性シートは、強度、耐久性、寸法安定性などを付与するために、繊維基布を含む積層体、具体的には上述のターポリン、帆布、およびメッシュシートである事が好ましい。繊維基布に用いられる繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維、木綿、麻などの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維が挙げられ、これらは単独または2種以上からなる混用繊維によって構成されていてもよい。その形状はマルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン糸条、テープヤーン糸条などいずれであってもよい。本発明に使用される繊維基布は、織布、編布、不織布のいずれでもよい。織布を用いる場合、平織、綾織、繻子織、模紗織などいずれの構造をとるものでもよいが、平織織物は、得られる熱制御性シートの経緯物性バランスに優れているため好ましく用いられる。編布を用いるときはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。これら編織物は、少なくともそれぞれ、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の編織物(空隙率は最大90%、好ましくは5〜50%)、及び非粗目状編織物(糸条間に実質上間隙が形成されていない編織物)を包含する。不織布としてはスパンボンド不織布などが使用できる。繊維基布には必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などが施されていても良い。
【0017】
上記の内特にガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる非粗目状の編織物を繊維基布として用いることで、建築基準法に規定される不燃性を有する熱制御性シートを得ることが可能となる。具体的には、輻射電気ヒーターを用いて50kW/mの輻射熱を照射する発熱性試験(ASTM−E1354:コーンカロリーメーター試験法)において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、かつ加熱開始後20分間、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えないことを満足する不燃性を有する熱制御性シートであり、例えばガラス繊維織布(目付質量200〜300g/m、空隙率1%以下の非目抜け平織)を繊維基布として、この1面以上に近赤外線遮蔽層を設けることで得られる。また、無機繊維からなる繊維基材を用いる事で寸法安定性が向上し、熱制御性シートが可撓性太陽電池モジュールを含む場合、温度の変化により膨張・収縮を起こしてモジュールが損傷することを抑制する事が出来る。
【0018】
本発明において、近赤外線遮蔽層は、合成樹脂ブレンドの溶融、または合成樹脂ブレンドの液状合成樹脂の攪拌混合物により公知の加工方法によって成型される。本発明で好ましく用いられる合成樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂(PET,PEN,PBTなど)、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など、可視光透過率が高く可撓性のある熱可塑性樹脂および硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0019】
本発明の近赤外線遮蔽層は、合成樹脂の混合体からなる海島分散構造によって形成された非相溶樹脂層であり、混合する合成樹脂の組み合わせについて、非相溶であれば特に制限はない。非相溶の組合せとしては、塩化ビニル樹脂とポリエチレン、塩化ビニル樹脂とポリプロピレン、塩化ビニル樹脂とスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂とスチレン系共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂とシリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂とフッ素含有共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂とビニルエステル樹脂、スチレン樹脂とポリエチレン、スチレン樹脂とポリプロピレン、ウレタン樹脂とポリエチレン、ウレタン樹脂とポリプロピレン、ポリエステル樹脂とポリエチレン、ポリエステル樹脂とポリプロピレン、ポリアミドとポリカーボネート、アクリル樹脂とスチレン樹脂、アクリル樹脂とポリカーボネート、ポリアミドとスチレン樹脂、ポリアミドとポリプロピレンなど、非相溶の可撓性樹脂対が例示される。また、これらの非相溶の可撓性樹脂対に対して、さらに別種の可撓性樹脂を含有することもできる。
【0020】
これらの非相溶樹脂層は相分離構造を示す白濁概観の海島分散構造であることが好ましい。この海島分散構造において海成分と島成分は種類の異なる樹脂で構成され、例えば合成樹脂Aと合成樹脂Bからなる非相溶混合物において、合成樹脂Aと合成樹脂Bとの比率設定により、海成分を合成樹脂Aで構成し、島成分を合成樹脂Bで構成することができ、また海成分を合成樹脂Bで構成し、島成分を合成樹脂Aで構成することもできる。ここで、近赤外線遮蔽層が海島分散構造を有し、海成分または島成分のいずれか一方が金属−絶縁体転移物質粒子を含み、もう一方が近赤外線散乱着色剤を含んでいることで、夏季においては太陽光線から受けた熱を放射してシートの過度の温度上昇を防ぎ、かつ、近赤外線を遮蔽して遮熱性を示し、冬季にはシートが太陽光線や暖房などにより暖められた熱の放射が少なく、蓄温性を有し、さらに採光性と、彩色の自由度を有する熱制御性シートが得られる。島成分を構成する合成樹脂の比率は、海成分を構成する合成樹脂の体積に対して3〜50体積%が好ましく、5〜40体積%がより好ましい。海島分散構造を有する近赤外線遮蔽層全体に対する島成分含有率は2.9〜33.3体積%が好ましく、4.7〜28.6体積%がより好ましい。海島分散構造を有する近赤外線遮蔽層全体に対する島成分含有率が2.9体積%未満では、海島分散構造を有さない場合との差が無くなり、本発明の効果を十分に得る事が出来ない。即ち、海成分に金属−絶縁体転移物質粒子を含む場合の近赤外線遮蔽性が不足することがあり、海成分に近赤外線散乱着色剤を含む場合には熱エネルギーを遠赤外線として放射する効果が不足する事がある。一方近赤外線遮蔽層全体に対する島成分含有率が33.3体積%を超えると、近赤外線遮蔽層の樹脂強度が低下し、得られるシートの強度や耐久性が低くなるので好ましくない。また、本発明において、海島分散構造における島成分の平均粒子径は0.4〜20μmであることが好ましい。島成分の平均粒子径がこの範囲にあることで、海成分と島成分の界面において近赤外線の屈折散乱現象を生じ、近赤外線遮蔽層中での近赤外線の散乱が増大する。島成分の平均粒子径が0.4μm未満であると、界面における屈折散乱現象により可視光の一部で光の散乱が大きくなり、可視光透過率が低下したり、可視光領域の内特定波長の光を散乱することで、近赤外線遮蔽層が着色されているように見えることがある。島成分の平均粒子径が20μmを超えると、可視光全域に亘る散乱を起こし可視光透過率が低下することがある。また非相溶の可撓性樹脂対A−Bに対して、さらに別種の可撓性樹脂Cを含有する場合、海島分散構造において島成分が可撓性樹脂Bによる島成分と可撓性樹脂Cによる島成分で構成されてもよく、同様に島成分が可撓性樹脂Aによる島成分と可撓性樹脂Cによる島成分で構成されてもよい。本発明において海島分散構造を有する近赤外線遮蔽層の厚さは、0.03〜1.0mmが好ましく、0.05〜0.5mmがさらに好ましい。近赤外線遮蔽層の厚さが0.03mm未満では、十分な熱制御性が得られないことがあり、1.0mmを超えると、可視光透過率が低下したり、柔軟なシートが得られなくなることがある。
【0021】
本発明に用いられる金属−絶縁体転移物質粒子としては、以下の(A)及び(B)から1種以上を選択して用いる事が出来る。
(A)ペロブスカイト構造を有しマンガン(Mn)を含み、
(A1−x)Mn1+y(但し、AはLa,Pr,Nd,Smの希土類元素の
内から選択される1種または2種以上、BはCa,Sr,Baのアルカリ土類金属の内
から選択される1種または2種以上である)で表される金属複合酸化物粒子。
(B)コランダム構造を有しクロム(Cr)とバナジウム(V)を含み、
(V1−XCr3で表され、0≦x<1である金属複合酸化物粒子。
本発明に用いる金属−絶縁体転移物質粒子とは、特定の温度を境に、その温度よりも高温側では絶縁体的な性質を発現して熱放射量が増大し、低温側では金属的な性質を発現して熱放射量が減少する特性を有する金属複合酸化物粒子である。本発明において、これらの金属−絶縁体転移物質粒子を、海島分散構造における海成分または島成分に含む樹脂層は、夏季に日射を受けて、この粒子を含有する樹脂の温度が転移温度よりも高温になると、その熱を遠赤外線として放射して樹脂の温度を下げ、冬季は、樹脂の温度が転移温度に達しない範囲では放射量が少ないため、日射から受けた熱を逃がしにくい、熱制御性を示すことができる。本発明において、金属−絶縁体転移物質粒子の転移温度は、10〜60℃の範囲にあることが好ましい。転移温度は、選択する元素の種類や上記式におけるx及びyの値により変化させることが出来、この範囲に転移温度を有するために、xとyをそれぞれ、0≦x<1、0≦y≦0.1とする事が好ましい。本発明において、金属−絶縁体転移物質粒子は、海成分または島成分を構成する合成樹脂に対して0.01〜30質量%含まれる事が好ましく、0.1〜15質量%である事がより好ましい。0.01質量%未満では添加による効果が不足し、充分な熱制御性が得られないことがある。30質量%を超えて添加すると、加工性や樹脂強度が低下したり、得られる熱制御性シートの可視光透過率が低下することがある。本発明において、用いる金属−絶縁体転移物質粒子の粒径について特に制限は無いが、樹脂への分散性、シートの加工性などを勘案して、平均粒子径1〜1000nmの粒子から、適宜選択して用いることができる。特に可視光の透過性を高めるためには、平均粒子径2〜400nmの粒子が好ましく、2〜200nmであることがより好ましい。これらの金属−絶縁体転移物質粒子は、その表面に近赤外線領域に吸収が少なく、可視光領域に吸収を有するアゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系およびアゾメチンアゾ系の有機色素からなる群から選ばれた少なくとも一種を被覆したものであっても良い。また、樹脂への分散性を向上させるために、表面をSi、Zr、Alから選ばれる一種または2種以上の金属を含有する酸化物、或いは、高級脂肪酸等で被覆したものを用いても良い。
【0022】
本発明に用いられる近赤外線散乱着色剤は、近赤外線を散乱させる特性を有する無機の着色剤から適宜選択して用いる事ができ、例えば金属粒子、金属酸化物粒子、及び金属複合酸化物粒子などを例示することができる。これらの粒子を、海島分散構造における海成分または島成分に含むことで、近赤外線遮蔽層内部で近赤外線を散乱させ、シートの近赤外線透過率を低下させると共に、海島分散構造におけるもう一方の側の樹脂に日射からの熱を取り込み易くして、熱制御性を向上させる。金属粒子および金属酸化物粒子としては、アルミニウム、ステンレス、チタン酸化物、亜鉛酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、マンガン酸化物、バリウム酸化物、スズ酸化物、ジルコニウム酸化物、インジウム酸化物、三酸化アンチモン、クロム酸化物、鉄酸化物、銅酸化物、モリブデン酸化物、コバルト酸化物、イットリウム酸化物、セリウム酸化物、ビスマス酸化物、ケイ素酸化物、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、及びアンチモンドープ酸化スズなどからなる粒子が例示され、これらの内特にチタン酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、ジルコニウム酸化物、インジウム酸化物、三酸化アンチモン、クロム酸化物、鉄酸化物、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ及びアンチモンドープ酸化スズの赤外線散乱効果が高く、好ましく用いられる。これらの金属粒子および金属酸化物粒子は、その表面に近赤外線領域に吸収が少なく、可視光領域に吸収を有するアゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系およびアゾメチンアゾ系の有機色素からなる群から選ばれた少なくとも一種を被覆したものであっても良い。また、光触媒活性を有する粒子の光触媒活性を抑制したり、樹脂への分散性を向上させたりするために、表面をSi、Zr、Alから選ばれる一種または2種以上の金属を含有する酸化物、或いは、高級脂肪酸等で被覆したものを用いても良い。金属複合酸化物粒子としては、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、及びケイ素(Si)の内2種以上の成分を含む金属複合酸化物粒子、から選択して用いることができ、これらを2種以上含むものであれば、上記以外の成分を更に含む金属複合酸化物粒子を用いることもできる。具体的には、例えばCo−Al、Co−Al−Cr、Co−Al−Cr−Ti、Co−Mg−Sn、Co−Ni−Ti、Co−Zn−Ni−Ti、Co−Zn−Cr−Ti、Co−Sb−Ni−Ti、Co−Nb−Ni−Ti、Nb−Ni−Ti、Co−Si、Sn−Cr−Ti、Zn−Cr−Ti、Zn−Cr−Fe、Co−Zn−Cr−Fe、Co−Ni−Cr−Fe−Si、Co−Cr−Mg−Zn−Al、Co−Mn−Cr−Fe、Co−Fe−Cr、Co−Cr−Ni、Co−Cr、Cu−Mn−Cr、Cu−Mn−Fe、Cu−Cr、Mn−Fe、Zn−Fe、Cr−Fe、Cr−Fe−Zn−Ti、Pb−Sb−Fe、Pb−Sb−Al、Ni−Sb、Fe−Zn−Ti、Fe−Al−Ti、Fe−Ti、Fe−Mo、Cr−Sb、Cr−Sb−Ti、Mn−Sb−Ti、Ti−Sb−Ni、Cr−Sn、Fe−Co−Mn−Ni、Ti−Sb−CrおよびZr−Feなどの成分からなる複合酸化物粒子を例示することができる。これらの金属複合酸化物粒子は、ルチル型、ヘマタイト型、またはスピネル型構造を有し、赤外線反射性の顔料として市販されており、所望の色相を有する粒子を単独で、または2種以上を併用して用いることができ、光触媒性の抑制や、樹脂への分散性向上のために、表面をSi、Zr、Alから選ばれる一種または2種以上の金属を含有する酸化物、或いは、高級脂肪酸等で被覆したものを用いても良い。
【0023】
本発明において、近赤外線散乱着色剤は、海成分または島成分を構成する合成樹脂に対して0.05〜20質量%含まれる事が好ましく、0.1〜10質量%である事がより好ましい。0.05質量%未満では添加による効果が不足し、充分な熱制御性が得られないことがある。20質量%を超えて添加すると、加工性や樹脂強度が低下し、得られる熱制御性シートの可視光透過率が低下することがある。本発明において、用いる近赤外線散乱着色剤の粒径については特に制限は無いが、樹脂への分散性、シートの加工性などを勘案して、平均粒子径1〜3000nmの粒子から適宜選択して用いることができる。特に近赤外線の散乱をより高めるためには、平均粒子径350〜2000nmの粒子が好ましく、400〜1600nmであることがより好ましい。また、可視光透過率を高め、かつ透視性のある近赤外線遮蔽層を得るには、平均粒子径20〜100nmの粒子が好ましく用いられる。
【0024】
本発明の近赤外線遮蔽層の海島分散構造において、(i)海成分が金属−絶縁体転移物質粒子を含み、島成分が近赤外線散乱着色剤を含む構成、(ii)海成分が近赤外線散乱着色剤を含み、島成分が金属−絶縁体転移物質粒子を含む構成、の何れであっても良い。これらの構成により熱制御性が得られる要因については定かではないが、例えば上記(i)の構成の場合、以下の様に推察される。
(a)近赤外線遮蔽層が太陽光を受けると、太陽光に含まれる近赤外線は海成分に含ま
れる金属−絶縁体転移物質粒子で一部が吸収され、一部が散乱され、残りは海成分を
透過する。
(b)海成分で散乱された近赤外線及び海成分を透過した近赤外線の多くは、近赤外線
散乱着色剤を含む島成分で散乱され、海成分に返される。海成分に返された近赤外線
は、再び一部が吸収され、一部が散乱され、残りが海成分を透過する。これを繰り返
すことで、多くの近赤外線が海成分で吸収され、近赤外線遮蔽層を透過する近赤外線
は僅かとなり遮熱性が得られる。
(c)近赤外線遮蔽層は、海成分が近赤外線を吸収することで徐々に温度が上昇し、
それが金属−絶縁体転移物質の転移温度に達するまでは、熱の放射が少なく蓄温性を
有する。
(d)近赤外線遮蔽層の温度が転移温度を超えると遠赤外線として放射する熱エネルギー
量が増加して、一定の温度で太陽光から吸収する熱量と平衡に達し、熱制御性シート
の温度がそれ以上上昇するのを防ぐ。
上記(i)および(ii)の構成は、それぞれ夏季の炎天下ではシートの過度の温度上昇を防ぎ、近赤外線を遮蔽して、優れた遮熱性を有し、冬季に熱制御性シートの温度が低い時には、シートからの熱の放射が少なく蓄温性を有するが、両者の比較において、(i)は(ii)より冬季の蓄温性が優れ、(ii)は(i)より夏季の遮熱性が優れる特性を有する。従って、本発明の熱制御性シートを使用する地域や用途に応じて、上記(i)および(ii)の構成から適宜選択して採用すればよい。
【0025】
本発明の熱制御性シートは、熱制御性を維持し、採光性の低下を防ぎ、美観を維持するため、可撓性シート最外表面に防汚層を有する事が好ましい。防汚層は熱制御性及び採光性を損なわず、極度の隠蔽性を伴わないものである限り、その形成方法及び素材に特に限定はない。このような防汚層は例えば、溶剤に可溶化されたアクリル系樹脂もしくはフッ素系樹脂の少なくとも1種以上からなる樹脂溶液あるいは樹脂分散液を塗布して形成した塗膜、これらにシリカ微粒子、またはコロイダルシリカを含む塗膜、オルガノシリケート及び/又はその縮合体を含む塗布剤で塗布し親水性被膜層を形成したもの、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン)と結着剤とを含む塗布剤を塗布し光触媒層を形成したもの、少なくとも最外表面がフッ素系樹脂により形成されたフィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層したもの、等から適宜選択することができる。
【0026】
本発明の熱制御性シートにおいて、上記防汚層の他に必要に応じて、防汚層の接着性を向上させるための接着層、防汚層が光触媒層である場合に光触媒による樹脂の分解を妨げるための保護層、近赤外線遮蔽層及び/またはその他の樹脂層に含まれる添加剤が防汚層に移行するのを妨げるための添加剤移行防止層、等が形成されていてもよい。また、本発明の熱制御性シートの、防汚層が形成された面とは反対の面に、防汚層との高周波加熱融着性及び熱風融着性を付与するための裏面接着層が形成されていてもよい。あるいは、熱制御性シートをロール状に巻き取って保管している間に、裏面側の樹脂層に含まれる添加剤が、防汚層上に移行して防汚性が低下するのを防ぐために、裏面側(防汚層とは反対の面)に添加剤移行防止層が形成されていても良い。
【0027】
本発明の熱制御性シートにおいて、近赤外線遮蔽層はこの他に、海成分と島成分それぞれ独立して、必要に応じて公知の添加剤を含んでいても良い。添加剤としては、例えば、有機顔料、蓄光顔料、蛍光増白剤、蛍光顔料、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、可撓性付与剤、充填剤、接着剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、加工助剤、レベリング剤、消泡剤、抗菌剤、防黴剤などが例示される。
【0028】
次に、図を用いて、本発明の熱制御性シートの構成例と、それを構造物に応用した場合の効果について述べる。
【0029】
本発明の熱制御性シートを農園芸用ハウスに用いる場合、図1の様に近赤外線遮蔽層(2)のみからなるものが可視光透過率を高める上で有利であるが、耐引裂性を付与するために、目合いの大きな基布を含んでも良い。近赤外線遮蔽層の海島分散構造において、海成分(4−2)に転移温度が10〜60℃の金属−絶縁体転移物質粒子を含み、島成分(3−1)に近赤外線散乱着色剤を含むことで、夏季はハウス内部の温度上昇を抑制して、遮光シート展張等の手間を軽減し、冬季は太陽光からの熱エネルギーや暖房によって温められたハウス内部の熱が熱制御性シート表面から放射されるのを抑制する。さらに、可視光線を透過することで1年を通して植物の育成を行うことができる。また、低温から暖められていく段階で、金属−絶縁体転移物質の転移温度以下では熱の放射が少なく、朝日を浴びて熱制御性シートが早く昇温するため、朝方の結露を短時間で解消する。必要に応じて暖房装置、好ましくは近赤外線を照射する暖房装置を熱制御性シートに向けて使用すれば、シート温度が上昇し易く、夜間或いは曇天時の結露を防止する事ができる。なお、図1とは逆に、海成分に近赤外線散乱着色剤を含み、島成分に転移温度が10〜60℃の金属−絶縁体転移物質粒子を含んでも良い。
【0030】
本発明の熱制御性シートをテント倉庫に用いる場合、図2及び図3の様に繊維基布(5)を含む熱制御性シート(1)を用いることで、強度、耐久性に優れたテント倉庫が得られる。本発明の熱制御性シートは、近赤外線を反射する従来の遮熱シートとは異なり、近赤外線を吸収して遮熱性を示し、その熱エネルギーを遠赤外線として放射してシート温度の過度の上昇を防ぐものであるため、夏季の遮熱性に関しては表面に汚れが付着してもあまり影響は無い。しかし、汚れが付着すると低温時に遠赤外線放射を抑制する効果が損なわれる事があり、更に採光性が低下し美観も損なわれるため、最外面に更に防汚層(8)を有することが好ましい。近赤外線遮蔽層の海島分散構造において、海成分または島成分中に転移温度が10〜60℃の金属−絶縁体転移物質粒子を含み、海成分または島成分のもう一方の側に近赤外線散乱着色剤を含むことで、夏季の日照時にはテント倉庫内部の温度上昇を防いで作業環境が改善される。また、本発明の熱制御性シートは金属−絶縁体転移物質粒子の転移温度以下では放射が少なくシート温度の低下が緩やかであるため、夜間の結露を生じにくい。一方、冬季は太陽光からの熱エネルギーをテント倉庫内部に取り込み、日照時には暖かい環境を得る事ができ、曇天時や夜間には暖房を用いれば、暖房によって温まった熱が熱制御性シート表面から放射されるのを抑制し、暖房効率を高める事ができる。
【0031】
図4は、本発明の可撓性シート最外面に可撓性太陽電池モジュール(7)が積層された熱制御性シート(1)の一例である(可撓性太陽電池モジュールの詳細は省略した)。可撓性太陽電池モジュールに含まれる太陽電池素子には、結晶シリコンタイプと非結晶シリコンタイプとがありそれぞれに特性が異なるため、それぞれの特性に合わせた熱制御性シートが求められる。まず結晶シリコンタイプは温度が上昇すると出力が低下する問題を有するため、熱制御性シートには、特に夏季において温度の上昇を抑制する事が求められる。そのため、10〜60℃の範囲で転移温度が比較的低い、例えば30℃以下の金属−絶縁体転移物質粒子を海成分に含み、島成分に近赤外線散乱着色剤を含む近赤外線遮蔽層を有する構成とすれば、30℃を超える温度において遠赤外線として放射される熱エネルギー量が増大して、熱制御性シートの温度を低く(例えば60℃以下に)保ち、温度上昇による出力低下を抑制する事ができる。一方、非晶質シリコンタイプは、低温では出力が低く、温度の上昇につれて出力が上昇するため、冬季に日射を浴びて温度を上昇させる事が求められる。そのため、10〜60℃の範囲で転移温度が比較的高く、例えば30℃を超える金属−絶縁体転移物質粒子を海成分に含み、島成分に近赤外線散乱着色剤を含む近赤外線遮蔽層を有する構成とすれば、30℃以下の温度において日射に含まれる近赤外線を吸収して温度が上がりやすく、出力を高く保つ事ができる。また、繊維基布(5)を含む熱制御性シートであれば、繊維基布により補強されているため、日中と夜間の温度差が大きくても、膨張と収縮の繰り返しにより太陽電池モジュールが損傷を受ける事を防ぎ、太陽電池としての寿命を長くする事が出来、テント倉庫、イベント用大型テント、日除けなどの膜構造物の一部として使用することも可能となる。
【実施例】
【0032】
本発明を下記実施例、および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
下記実施例・比較例において得られたシートについて下記の試験方法により、遮熱率、表面温度、蓄温性、近赤外線遮蔽性、及び、可視光透過率を評価した。
<遮熱率>
試験環境:内径が高さ45cm×幅35cm×長さ35cmで、外気温遮断性と気密性とを有
し、側面に開閉可能な扉を有する箱型構造体の天井部中央に白熱ランプ(100V,5
00Wのフォトリフレクタランプ:デイライトカラー用:東芝(株)製)を取り付け、
箱型構造体の底面部中央には熱流量計(Shothrm HFM熱流量計:昭和電工
(株)製)のセンサーを取り付けて固定し、この箱型構造体を20℃の恒温室内に設置
して、遮熱性評価の試験環境を構成した。
試験:たて・よこともに0.5cmの正方形の断面を有するアクリル樹脂製角材棒を柱及
び梁として、瞬間接着剤で固定する事で、高さ5cm×幅10cm×長さ15cmの外径を有
する箱型フレームを組み立て、この箱型フレームを箱型構造体の底面部中央(熱流量計
センサー上)に取り付け、箱型構造体の扉を閉めて密閉状態とし、シート無しの熱流量
(kcal/m2h)を1分ごとに測定し、30分後の熱流量qn(kcal/m2h)を測定した。
熱流量qn測定後、内部の温度が恒温室と同じ20℃で安定するまで、箱型構造体の扉
を開放した。次に、箱型フレームの4側面、及び上面(天井)部に、そのおもて面が外
向きとなるように、実施例及び比較例で作成したシートを、両面テープで貼り付けて固
定し、底面があいた試験箱を準備した。シートを貼り付けた試験箱を、箱型構造体の底
面部の中央に取り付けて、ランプの中心点と試験箱の中心点とを結ぶ直線の方向が鉛直
方向に重なるように固定した。この箱型構造体内部におけるランプ先端から試験箱の天
井部(シートおもて面)までの距離は35cmであった。箱型構造体の扉を閉めて密閉
状態に置き、ランプを点灯し、熱流量(kcal/m2h)を1分ごとに測定し、30分後の
熱流量qc(kcal/m2h)を測定し、下記式により遮熱率を求めた。遮熱率は、数値が
大きい程、遮熱性が高いものと判断した。
遮熱率(%)=〔(qn−qc)/qn〕×100
なお、繊維基布を含むシートに関しては、初期の遮熱性に加え、屋外曝露1年後につい
ても測定した。
屋外曝露:
屋外曝露台上に、実施例及び比較例で作成したシートのおもて面を上にして南向きに傾
斜角30度に設置して1年間の屋外曝露試験を行った。
場所:埼玉県草加市
期間:平成21年6月1日〜平成22年5月31日
<表面温度>
試験:上記遮熱率の熱流量qc測定後、速やかに天井部のシートおもて側中心部表面の温
度を熱伝対センサを用いた接触式の表面温度計((株)テストー社製TT−905−T
2)により測定した。
<低温環境での昇温と降温(蓄温性)>
試験環境(図5参照):実施例及び比較例で作成したシート(1)を20cm四方に裁断
し、その裏面側中央に表面温度センサー(9:三菱マテリアル(株)STS−60)を
粘着テープ(図示しない)で固定した。次に、たて20cmよこ20cm厚さ5cmの
発泡スチロール板(10)を用意し、シート(1)のおもて面側を上にして、4辺が浮
かないように発泡スチロール板に粘着テープ(図示しない)で固定して、測定用サンプ
ル(11)とし、5℃の保冷倉庫内に24時間以上静置した。測定用サンプル(11)
のシート(1)を固定した側を上にして、保冷倉庫床面上に水平に置き、シートおもて
面とランプ先端の距離が30cmとなり、ランプの中心点とシートの中心点とを結ぶ直
線の方向が垂直方向に重なる様に、ハロゲンランプ(12:100V、85Wのレフラ
ンプ型、ウシオライティング(株)製)を固定した。
試験:ハロゲンランプを点灯し、シート裏面に貼り付けた表面温度センサーで温度を観察
し、30℃に達するまでの昇温時間を計測し、さらに、30℃に達した段階で速やかに
ハロゲンランプを消灯し、15℃に下がるまでの降温時間(分)を計測した。
昇温時間が短く、降温時間が長いものが蓄温性の高いシートであると判断した。
なお、繊維基布を含むシートに関しては、初期の蓄温性に加え、屋外曝露1年後につい
ても測定した。(曝露は上記<遮熱率>と同様の条件で行った)
<近赤外線遮蔽性>
島津製作所UV−3600を用いて、シートおもて面を光源に向けて、波長1000n
mの近赤外線の透過率を測定した。
透過率が低いほど近赤外線遮蔽性が高いものと判断した。
<可視光透過率(採光性)>
JIS Z8722.5.4(条件g)に従い、ミノルタ分光測色計CM−3600dを用いて、
可視光透過率を測定した。
可視光透過率が高いものが、採光性に優れるものと判断した。
【0034】
[実施例1]
下記配合1の金属−絶縁体転移物質粒子含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合2の近赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマー(SBS)の熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、軟質塩化ビニル樹脂中にスチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物1を得た。配合1には金属−絶縁体転移物質粒子として平均粒子径200nmのペロブスカイト酸化物(La0.825Sr0.175MnO:転移温度17℃)粒子を用い、配合2には近赤外線散乱着色剤として平均粒子径1000nmの酸化チタン粒子を用いた。この非相溶樹脂混合物1を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.3mmの近赤外線遮蔽層からなる白色の熱制御性シートを成型した。この近赤外線遮蔽層を顕微鏡観察すると、近赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分を構成しており、金属−絶縁体転移物質粒子含有軟質塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は7.2μmであった。この熱制御性シートは表裏に差を有さないため、一方の面にしるしを付け、その面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合1>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
La0.825Sr0.175MnO3:平均粒子径200nm 5質量部

<配合2>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:アサフレックス830)
酸化チタン:平均粒子径1000nm 5質量部
【0035】
[実施例2]
下記配合3の近赤外線散乱着色剤含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合4の金属−絶縁体転移物質粒子含有スチレンブタジエンブロックコポリマーの熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物2を得た。配合3には近赤外線散乱着色剤として平均粒子径1000nmの酸化チタンを用い、配合4には金属−絶縁体転移物質粒子として平均粒子径200nmのペロブスカイト酸化物(La0.825Sr0.175MnO:転移温度17℃)粒子を用いた。この非相溶樹脂混合物2を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.3mmの近赤外線遮蔽層からなる白色の熱制御性シートを成型した。この近赤外線遮蔽層を顕微鏡観察すると、金属−絶縁体転移物質粒子含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが島成分を構成しており、近赤外線散乱着色剤含有軟質塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は7.2μmであった。この熱制御性シートは表裏に差を有さないため、一方の面にしるしを付け、その面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合3>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
酸化チタン:平均粒子径1000nm 3質量部

<配合4>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:アサフレックス830)
La0.825Sr0.175MnO3:平均粒子径200nm 10質量部
【0036】
[実施例3]
配合1の金属−絶縁体転移物質粒子を転移温度47℃、平均粒子径200nmのペロブスカイト酸化物((La0.78Sr0.12Ca0.1)MnO)粒子に置き換えた以外は、実施例1と同様にして熱制御性シートを得た。この熱制御性シートは表裏に差を有さないため、一方の面にしるしを付け、その面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0037】
実施例1〜3の熱制御性シートは、金属−絶縁体転移物質粒子を含む合成樹脂と、近赤外線散乱着色剤を含む合成樹脂との混合体からなる海島分散構造によって形成された非相溶樹脂層を有することで、いずれも熱制御性、採光性に優れたシートであった。金属−絶縁体転移物質粒子を海成分に含む実施例1と、島成分に含む実施例2を比較すると、実施例1は実施例2に比べて遮熱率測定後の表面温度が低く、低温時の昇温が優れ、実施例2は実施例1に比べて遮熱性が高い結果であった。また、転移温度の高い金属−絶縁体転移物質を用いた実施例3は、実施例1に比べて低温時の昇温・降温が優れており、一方実施例1は実施例3に比べて遮熱性が優れ、遮熱率測定後の表面温度が低い結果であった。
【0038】
[比較例1]
配合1の金属−絶縁体転移物質粒子含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を、180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて、厚さ0.3mmの乳白のシートを成型した。このシートは表裏に差を有さないため、一方の面にしるしを付け、その面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
比較例1のシートは海島構造を有さず、全体に金属−絶縁体転移物質粒子を含むシートであり、実施例1〜3に比べて採光性は高いものの、近赤外線遮蔽性が低く、遮熱性が劣っていた。
【0040】
[比較例2]
配合3の近赤外線散乱着色剤含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を、180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて、厚さ0.3mmの白色のシートを成型した。このシートは表裏に差を有さないため、一方の面にしるしを付け、その面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
比較例2のシートは、海島構造を有さず、全体に近赤外線散乱着色剤を含むシートであり、近赤外線遮蔽性が高く遮熱性は実施例1と同等であったが、近赤外線を散乱することによって得られる遮熱性であるため、シートが近赤外線をあまり吸収せず、低温時の昇温に時間を要した。
【0042】
[比較例3]
下記配合5の金属−絶縁体転移物質粒子・近赤外線散乱着色剤含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を、180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて、厚さ0.3mmの白色のシートを成型した。配合5には金属−絶縁体転移物質粒子として平均粒子径200nmのペロブスカイト酸化物(La0.825Sr0.175MnO:転移温度17℃)粒子を、近赤外線散乱着色剤として平均粒子径1000nmの酸化チタンを用いた。このシートは表裏に差を有さないため、一方の面にしるしを付け、その面をおもて面として各種評価を行った。結果を表1に示す。
<配合5>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
La0.825Sr0.175MnO:平均粒子径200nm 4.3質量部
酸化チタン:平均粒子径1000nm 0.9質量部
【0043】
比較例3のシートは海島構造を有さず、全体に金属−絶縁体転移物質粒子と近赤外線散乱着色剤を含有するシートであり、シートの単位面積あたりのそれぞれの含有量は実施例1と同等であるが、遮熱性・低温時の昇温ともに実施例1よりも劣る結果であった。これは、比較例3ではシート内での近赤外線の散乱が近赤外線散乱着色剤によるもののみであるのに対して、実施例1においては、海島界面においても近赤外線が散乱されるため、シートを透過する近赤外線量は比較例3の方が多くなり、シートが吸収する近赤外線量は実施例1の方が多くなるためであると考えられる。
【0044】
【表1】

【0045】
[実施例4]
下記配合6の金属−絶縁体転移物質粒子含有軟質塩化ビニル樹脂ペーストの攪拌混合物に、下記配合7の近赤外線散乱着色剤含有ビニルエステル樹脂攪拌混合物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えて撹拌し、近赤外線散乱着色剤含有ビニルエステル樹脂を均一分散させた非相溶樹脂混合物液4を得た。配合6において、金属−絶縁体転移物質粒子として平均粒子径200nmのペロブスカイト酸化物(La0.825Sr0.175MnO:転移温度17℃)粒子を用い、配合7には近赤外線散乱着色剤として平均粒子径600nmのCr−Sb−Tiの複合酸化物(黄色:ルチル型)を用いた。この樹脂混合物液4の液バス中に下記基布1を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行い、さらにその片面に鏡面エンボス処理を施した。これにより基布1の両面への付着、および内部含浸した状態で、黄色に着色された非相溶樹脂混合物液4が320g/m付着して、海島構造を有する近赤外線遮蔽層が形成された帆布状のシートを得た。この近赤外線遮蔽層を顕微鏡観察すると、近赤外線散乱着色剤含有ビニルエステル樹脂が黄色の島成分を構成しており、金属−絶縁体転移物質粒子含有軟質塩化ビニル樹脂が乳白の海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は8.5μmであった。このシートの、鏡面エンボス処理を施した平滑な側の近赤外線遮蔽層上に、下記配合8の防汚層塗工液をグラビアコーターによりコーティング加工し、120℃で1分間乾燥した。これによって片面に塗布量:5g/mの防汚層が形成された黄色い帆布状の熱制御性シートを得た。この熱制御性シートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
<配合6>
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 20質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
La0.825Sr0.175MnO3:平均粒子径200nm 5質量部
<配合7>
ビニルエステル樹脂 100質量部
(商標:ネオポール8319:日本ユピカ(株) )
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
Cr−Sb−Tiの複合酸化物:平均粒子径600nm 5質量部
<配合8>
商標:アクリプレン ペレットHBS001(三菱レイヨン(株)製) 20質量部
トルエン−MEK(50/50重量比)(溶剤) 80質量部

(基布1)
ポリエステル295.3dtex(20番手)短繊維紡績糸を用いた非粗目状平織布
密度 たて(経糸) 55本/インチ よこ(緯糸) 48本/インチ
【0046】
[実施例5]
下記配合9の金属−絶縁体転移物質粒子含有軟質フッ素樹脂の熱溶融混練物に、下記配合10の近赤外線散乱着色剤含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を軟質フッ素樹脂単体の質量に対して10質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、近赤外線散乱着色剤含有塩化ビニル樹脂を均一分散させ非相溶樹脂混合物5を得た。配合9において、金属−絶縁体転移物質粒子として平均粒子径200nmのペロブスカイト酸化物(La0.825Sr0.175MnO:転移温度17℃)粒子を用い、配合10には近赤外線散乱着色剤として平均粒子径1000nmの酸化チタン粒子を用いた。この樹脂混合物5を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの近赤外線遮蔽層用フィルム5−1を成型した。一方、配合9から金属−絶縁体転移物質粒子を省略した透明な軟質フッ素樹脂の熱溶融混練物を、180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム5−2を成型した。次いで、得られたフィルム5−1とフィルム5−2の中間に下記基布2を挿入し、熱圧着により積層して、一方の面が近赤外線遮蔽層であるターポリン状の白色の熱制御性シートを得た。フィルム5−1からなる近赤外線遮蔽層を顕微鏡観察すると、近赤外線散乱着色剤含有軟質塩化ビニル樹脂が白色の島成分を構成しており、金属−絶縁体転移物質粒子含有軟質フッ素樹脂が乳白の海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は2.1μmであった。この近赤外線遮蔽性シートについて、フィルム5−1を積層した側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
<配合9>
軟質フッ素樹脂 100質量部
(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン−フッ化ビニリデン三元共重合体樹脂)
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
La0.825Sr0.175MnO3:平均粒子径200nm 5質量部

<配合10>
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 50質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 46質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
酸化チタン:平均粒子径1000nm 5質量部

(基布2)
ポリエステル833dtexマルチフィラメントを用いた平織り布
密度 たて(経糸) 19本/インチ よこ(緯糸) 20本/インチ

【0047】
[実施例6]
配合1の金属−絶縁体転移物質粒子含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合11の近赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマーの熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、近赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物6を得た。配合11の近赤外線散乱着色剤として平均粒子径50nmのCr−Sb−Tiの複合酸化物(黄色:ルチル型)を用いた。この非相溶樹脂混合物6を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmの近赤外線遮蔽層用フィルム6−1を成型した。一方、配合1から金属−絶縁体転移物質粒子を省略した軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム6−2を成型した。次いで、得られたフィルム6−1とフィルム6−2の中間に基布2を挿入し、熱圧着により積層して、一方の面が近赤外線遮蔽層であるターポリン状のシートを得た。フィルム6−1からなる近赤外線遮蔽層を顕微鏡観察すると、近赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが黄色の島成分を構成しており、金属−絶縁体転移物質粒子含有軟質塩化ビニル樹脂が乳白の海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は7.1μmであった。次いで、実施例4と同様にして、フィルム6−1上に防汚層を形成して熱制御性シートを得た。この熱制御性シートについて、防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。

<配合11>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:アサフレックス830)
Cr−Sb−Tiの複合酸化物:平均粒子径50nm 10質量部

【0048】
[実施例7]
下記配合12の液バス中に下記基布3を浸漬し、これを引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、150℃で1分間ゲル化した後、190℃で1分間熱処理を行い、基布に対し樹脂を70g/m付着させて、接着樹脂層を形成した。次に配合1の金属−絶縁体転移物質粒子含有軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、下記配合13の近赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマーの熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、近赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物7を得た。配合13の近赤外線散乱着色剤として平均粒子径50nmのCo−Alの複合酸化物(青色:スピネル型)を用いた。この非相溶樹脂混合物7を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.15mmの近赤外線遮蔽層用フィルム7を2枚成型した。次いで、得られた2枚のフィルム7の中間に接着樹脂層を形成した基布3を挿入し、熱圧着により積層して、両面に近赤外線遮蔽層を有するガラス基布入りのシートを得た。フィルム7からなる近赤外線遮蔽層を顕微鏡観察すると、近赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが青色の島成分を構成しており、金属−絶縁体転移物質粒子含有軟質塩化ビニル樹脂が乳白の海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は7.1μmであった。次いで、下記配合14の組成物液をグラビアコーターで塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却し、5g/mの樹脂中間層を両面に形成した。さらに前記樹脂中間層の上に、配合14の樹脂組成物からシリカを除いた溶剤希釈液を、グラビヤコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却して追加樹脂層を形成し、それによって、樹脂中間層と追加樹脂層とからなる、合計10g/mの添加剤移行防止層を両面に形成した。次に、一方の面の添加剤移行防止層上に下記配合15の接着・保護層形成用塗布液をグラビアコーターで塗布し、100℃×1分乾燥後冷却して、1.5g/mの接着・保護層を形成し、さらに、その接着・保護層上に下記配合16の防汚層形成用塗布液をグラビアコーターで塗布し、120℃で2分間乾燥後冷却して1.5g/mの光触媒性物質含有防汚層が形成された熱制御性シートを得た。この熱制御性シートについて、光触媒性物質含有防汚層が形成された側をおもて面として各種評価を行った。結果を表2に示す。
<配合12>
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1600) 100質量部
ジ−2−エチルヘキシルフタレート(可塑剤) 50質量部
熱架橋性接着剤 10質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
エポキシ化大豆油(安定剤) 4質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
トルエン(溶剤) 20質量部

<配合13>
スチレン・ブタジエンブロックコポリマー 100質量部
(旭化成ケミカルズ(株)社製、商品名:アサフレックス830)
Co−Alの複合酸化物:平均粒子径50nm 10質量部

<配合14>
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂 20質量部
(商標:カイナー7201:エルフ・アトケム・ジャパン(株))
シリカ:(商標:ニップシールE−75:東ソー・シリカ(株)) 5質量部
MEK(溶剤) 80質量部

<配合15>
シリコン含有量3mol%のアクリルシリコン樹脂を8質量%(固形分)含有する
エタノール−酢酸エチル(50/50質量比)溶液 100質量部
メチルシリケートMS51(コルコート(株))の
20%エタノール溶液(ポリシロキサン) 8質量部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤) 1質量部

<配合16>
酸化チタン含有量10質量%に相当する硝酸酸性酸化チタンゾルを分散させた
水−エタノール(50/50質量比)溶液 50質量部
酸化珪素含有量10質量%に相当する硝酸酸性シリカゾルを分散させた
水−エタノール(50/50質量比)溶液 50質量部

(基布3)
フィラメント直径9μm/75texのガラス繊維を用いた平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
精練(ヒートクリーニング)
シランカップリング処理 メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ
コーニング社製Z6030)
【0049】
実施例4〜7の熱制御性シートは、金属−絶縁体転移物質粒子を含む合成樹脂と、近赤外線散乱着色剤を含む合成樹脂との混合体からなる海島分散構造を有する近赤外線遮蔽層を有し、いずれも遮熱性、低温時の昇温・降温、採光性に優れたシートであった。また、繊維基布を含む積層体であるため、高い強度を要求されるテント倉庫、イベント用大型テント、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、間仕切りやトラック幌等の膜構造物を構成するのに好適な熱制御性シートである。実施例4、6、7はそれぞれ防汚層を有し、実施例5は海成分が軟質フッ素樹脂であるため、いずれも防汚性に優れており、屋外で使用した場合に、経時的な汚れの付着による採光性の低下が防止され、且つ美観が維持される。更に汚れの付着が防止されることで、1年曝露後も低温時の降温が緩やかであり、蓄温性も長期間維持されるシートであった。
【0050】
[比較例4]
配合7から近赤外線散乱着色剤を省略し、防汚層を設けなかった以外は実施例4と同様にして、一方の面に鏡面エンボスを施した乳白の帆布状のシートを得た。基布1の両面および内部含浸した樹脂層を顕微鏡観察すると、透明なビニルエステル樹脂が島成分を構成しており、金属−絶縁体転移物質粒子含有軟質塩化ビニル樹脂が乳白の海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は8.5μmであった。このシートについて、鏡面エンボスを施した側をおもて面として各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0051】
比較例4のシートは、基布1両面への付着、および内部含浸した樹脂層が海島構造を有し、その海成分が金属−絶縁体転移物質粒子を含んでいるが、島成分が近赤外線散乱着色剤を含んでいないため、実施例4に比べて採光性は高いものの近赤外線遮蔽性が低く、初期の遮熱性に劣るシートであった。1年曝露後には遮熱性が僅かに向上しているが、これは、比較例4のシートは防汚層を有さず、表面に付着した汚れが近赤外線を吸収して遮蔽し、その熱エネルギーを金属−絶縁体転移物質を含む海成分が遠赤外線として放射したためであると考えられる。また低温時の昇温と降温について、初期は実施例4に比べて何れも劣り、1年曝露後は昇温が実施例4と同程度であり、降温は比較例4の初期よりも更に劣っていた。これもやはり表面に付着した汚れが、ランプから照射された近赤外線を吸収して昇温が早まり、ランプ消灯後には汚れが遠赤外線を放射することで降温が早まっていたものと考えられる。
【0052】
[比較例5]
配合1から金属−絶縁体転移物質粒子を省略した軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物に、配合11の近赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマーの熱溶融混練物を、塩化ビニル樹脂単体の質量に対して20質量%加えてバンバリーミキサーで熱溶融混練し、近赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマーを均一分散させた非相溶樹脂混合物比−5を得た。この非相溶樹脂混合物比−5を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比5−1を成型した。一方、配合1から金属−絶縁体転移物質粒子を省略した軟質塩化ビニル樹脂の熱溶融混練物を180℃設定のカレンダーロール4本を通過させて厚さ0.25mmのフィルム比5−2を成型した。次いで、得られたフィルム比5−1とフィルム比5−2の中間に基布2を挿入し、熱圧着により積層してターポリン状のシートを得た。フィルム比5−1からなる層を顕微鏡観察すると、近赤外線散乱着色剤含有スチレンブタジエンブロックコポリマーが黄色の島成分を構成しており、軟質塩化ビニル樹脂が海成分を構成していた。海島分散構造における島成分の平均粒子径は7.1μmであった。このシートについて、フィルム比5−1を積層した側をおもて面として各種評価を行った。結果を表3に示す。
【0053】
比較例5のシートは、海島構造の樹脂層を有し、島成分が近赤外線散乱着色剤を含んでいるが、海成分が金属−絶縁体転移物質粒子を含んでおらず、採光性と遮熱性は優れるものの、低温時の昇温に劣るシートであった。1年曝露後には遮熱性が低下しているが、これは比較例5のシートは防汚層を有さず、汚れが表面に付着することで近赤外線の反射が低下したためであると考えられる。
【0054】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の熱制御性シートは、夏季の炎天下においては熱エネルギーを遠赤外線として放射することでシートの過度の温度上昇を防ぎ、かつ、近赤外線を遮蔽して、高い遮熱性を示し、冬季の低温時には、太陽光線や暖房などにより暖められた熱の放射が少なく蓄温性を有し、さらに採光性と彩色の自由度を有するため、テント倉庫、イベント向けテント、災害時用テント、農園芸用ハウス、トラック幌、フレキシブルコンテナ、日除けテント、日除けモニュメント、装飾テント、ブラインド、シートシャッター、または間仕切りなどの膜構造物に好適に用いることができる。また、可撓性太陽電池モジュールを含む熱制御性シートは、出力の安定したシート状太陽電池として有益に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
1:熱制御性シート
2:海島構造を有する近赤外線遮蔽層
3:島成分
3−1:近赤外線散乱着色剤を含有する島成分
3−2:金属−絶縁体転移物質粒子を含有する島成分
4:海成分
4−1:近赤外線散乱着色剤を含有する含有する海成分
4−2:金属−絶縁体転移物質粒子を含有する海成分
5:繊維基布
6:海島構造を有さない樹脂層
7:可撓性太陽電池モジュール
8:防汚層
9:表面温度センサー
10:発泡スチロール板
11:測定用サンプル
12: ハロゲンランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線遮蔽層を含む可撓性シートであって、前記近赤外線遮蔽層が、金属−絶縁体転移物質粒子を含む合成樹脂と、近赤外線散乱着色剤を含む合成樹脂との混合体からなる海島分散構造によって形成された非相溶樹脂層であることを特徴とする、熱制御性シート。
【請求項2】
前記海島分散構造において、海成分が前記金属−絶縁体転移物質粒子を含み、島成分が前記近赤外線散乱着色剤を含んでいる、請求項1に記載の熱制御性シート。
【請求項3】
前記海島分散構造において、海成分が前記近赤外線散乱着色剤を含み、島成分が前記金属−絶縁体転移物質粒子を含んでいる、請求項1に記載の熱制御性シート。
【請求項4】
前記金属−絶縁体転移物質粒子が、ペロブスカイト構造を有しマンガンを含む金属複合酸化物粒子、及びコランダム構造を有しクロムとバナジウムを含む金属複合酸化物粒子、から選ばれる1種以上を含み、10〜60℃の範囲に転移温度を有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の熱制御性シート。
【請求項5】
前記近赤外線散乱着色剤が、チタン酸化物、亜鉛酸化物、スズ酸化物、ジルコニウム酸化物、インジウム酸化物、三酸化アンチモン、クロム酸化物、鉄酸化物、スズドープ酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズから選ばれた金属酸化物、及び、ルチル型、ヘマタイト型、またはスピネル型構造構造を有し、チタン、亜鉛、アンチモン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、銅、マンガン、アルミニウム、ニオブ、及びケイ素の内2種以上の成分を含む金属複合酸化物、から選ばれた1種以上を含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の熱制御性シート。
【請求項6】
前記可撓性シートが、繊維基布を含む積層体である、請求項1〜5いずれか1項に記載の熱制御性シート。
【請求項7】
前記可撓性シートの最外面に、可撓性太陽電池モジュールが積層された請求項1〜6いずれか1項に記載の熱制御性シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−51113(P2012−51113A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193290(P2010−193290)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】