説明

熱収縮チューブ組付方法及び熱収縮チューブ組付用治具

【課題】熱収縮チューブが確実に固定できて接着剤の漏れがなく、電気接触部に近接配置した熱収縮チューブの開口端まで接着剤を充填できる熱収縮チューブ組付方法を提供する。
【解決手段】端子付電線21の端子23が基台13に設けられた下枠15の端子嵌合凹部49に嵌合される工程と、ホットメルトを内方に有した熱収縮チューブ27が下枠15から導出される端子23の芯線圧着部に外挿されてチューブ一端部55が下枠15の堰き止め壁部53に当接させられる工程と、下枠15に連結された上枠17が端子嵌合凹部49を覆って端子23の一平面と直交する方向の移動を規制する工程と、上枠17が端子嵌合凹部49を覆うと同時に上枠17に突設されたチューブ固定爪59と端子23とが熱収縮チューブ27の周壁一部分61を挟持する工程と、基台13に設けられたクランプレバー19が下枠15と上枠17とを挟持する工程と、を備える熱収縮チューブ組付方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯線に端子の芯線圧着部が圧着された端子付電線に熱収縮チューブを組み付ける熱収縮チューブ組付方法及び熱収縮チューブ組付用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
電線に圧着した例えばアース端子が被水領域である車体ボディに接続される場合、アース端子に圧着した露出芯線から水が電線内部に侵入し、電線の反対端に接続される装置や機器に水が浸入することがある。このような経路での水の浸入を止めるため、端子加締め部に対して防水処理を施すことがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このような端子加締め部の防水処理には、例えば図10に示すような治具把手部501に取り付けられた治具503が使用される。治具503は、1枚の金属板を打ち抜き加工及び折り曲げ加工することによって形成され、上側把持部505と下側把持部507とを有し、これら上側把持部505と下側把持部507の一端側は自由端になっている。下側把持部507の先端側には、上側把持部505に向けて略90度折り曲げられ、更に治具先端側に向けて折り返された、側面形状が略L字状のチューブ押え部509が設けられている。治具503は、接着剤流れ止め部511が、結線された電線513の複数の芯線515の先端と、組合せLA端子517の電気接触部519との間に配置されるようにして、熱収縮チューブ521で芯線圧着部523の前後が覆われた組合せLA端子517に装着される。
【0004】
この治具503によれば、熱収縮チューブ521における芯線515の先端を覆う側の端部がチューブ押え部509によって押さえつけられているため、ミルクオフ(溶融した接着剤が潤滑剤として作用し熱収縮チューブ521が移動してしまう現象)やシュリンクバック(熱収縮チューブ521の長さ方向の収縮現象)が生じることが防止され、溶融した接着剤が接着剤流れ止め部511まで確実に到達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−135858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の治具503は、円筒状の熱収縮チューブ521の外周を、L字状に折り曲げた小板状のチューブ押え部509で押さえていた。このため、熱収縮チューブ521の固定力を大きくできず、熱収縮チューブ521は、収縮時に押し出されて接着剤流れ止め部511に当たった接着剤により押し戻され、チューブ押え部509から外れる虞がある。熱収縮チューブ521の押さえが外れれば、接着剤が不要箇所に流出し、止水構造の信頼性が低下する可能性がある。また、熱収縮チューブ521と接着剤流れ止め部511との間には隙間525が形成されるため、接着剤の流失量が多くなるという問題があった。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、熱収縮チューブが確実に固定できて接着剤の漏れがなく、電気接触部に近接配置した熱収縮チューブの開口端まで確実に接着剤を充填できる熱収縮チューブ組付方法及び熱収縮チューブ組付用治具並びに端子付電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 端子付電線の端子が基台に設けられた下枠の端子嵌合凹部に嵌合される工程と、
接着剤を内方に有した熱収縮チューブが前記下枠から導出される前記端子の芯線圧着部に外挿されてチューブ一端部が前記下枠の堰き止め壁部に当接させられる工程と、前記下枠に回動自在に連結された上枠が前記端子嵌合凹部を覆って前記端子の一平面と直交する方向の移動を規制する工程と、前記上枠が前記端子嵌合凹部を覆うと同時に前記上枠に突設されたチューブ固定爪と前記端子とが前記熱収縮チューブの周壁一部分を挟持する工程と、前記基台に回動自在に設けられたクランプレバーが挟持位置へ回動されて前記下枠と前記上枠とを挟持する工程と、を備えることを特徴とする熱収縮チューブ組付方法。
【0009】
上記(1)の構成の熱収縮チューブ組付方法によれば、下枠の端子嵌合凹部に嵌合配置された端子の芯線圧着部に外挿される熱収縮チューブは、下枠の堰き止め壁部にチューブ一端部が当接させられる。これにより、チューブ一端部の開口には、堰き止め壁部によって閉塞された接着剤の充填空間が形成される。この状態で、上枠が回動され、端子が下枠と上枠とに挟まれて挟持固定される。端子が固定されると同時に、上枠に設けられたチューブ固定爪が、チューブ一端部における周壁一部分に押圧され、前記端子との間でこの周壁一部分を挟持する。チューブ一端部は、接着剤の流失する隙間が無い状態で、堰き止め壁部に近接して固定される。
【0010】
(2) 基台に設けられて端子付電線における端子の一平面内での移動を規制する端子嵌合凹部を有する下枠と、前記下枠に形成されて前記端子の芯線圧着部に外挿される熱収縮チューブのチューブ一端部が当接させられる堰き止め壁部と、前記下枠に回動自在に連結され、前記端子嵌合凹部を覆って前記端子の一平面と直交する方向の移動を規制する上枠と、前記上枠に突設されて前記端子とで前記熱収縮チューブの周壁一部分を挟むチューブ固定爪と、前記基台に回動自在に設けられ、挟持位置へ回動されて前記下枠と前記上枠とを挟持するクランプレバーと、を備えることを特徴とする熱収縮チューブ組付用治具。
【0011】
上記(2)の構成の熱収縮チューブ組付用治具によれば、下枠の端子嵌合凹部に端子を配置し、端子嵌合凹部に配置された端子の芯線圧着部に熱収縮チューブを外挿する際、熱収縮チューブのチューブ一端部は下枠の堰き止め壁部に当接される。この状態で上枠が回動され、端子が下枠と上枠とに挟まれて固定されると同時に、上枠に突設されたチューブ固定爪が、チューブ一端部における周壁一部分に押圧される。チューブ固定爪は、下枠と上枠とで挟持された端子との間でチューブ一端部の周壁一部分を挟持するので、チューブ一端部を確実に挟持できる。また、チューブ一端部は、開口が堰き止め壁部によって閉塞されるとともに、周壁一部分が端子とチューブ固定爪とによって基台側に固定される。これにより、堰き止め壁部とチューブ一端部との間には接着剤の流失する隙間が無くなり、チューブ一端部を端子の電気接触部に接近して配置することができる。
【0012】
(3) 上記(2)の構成の熱収縮チューブ組付用治具であって、前記チューブ固定爪が、前記熱収縮チューブの軸線方向に直交する方向に延在する複数の平行な線状押圧歯を有することを特徴とする熱収縮チューブ組付用治具。
【0013】
上記(3)の構成の熱収縮チューブ組付用治具によれば、熱収縮チューブの周壁一部分を押圧するチューブ固定爪が、線状押圧歯となることで、面状のものに比べ大きな接触圧力で周壁一部分を挟持でき、熱収縮チューブがより離脱し難くなる。
【0014】
(4) 上記(2)または(3)の構成の熱収縮チューブ組付用治具であって、前記基台には、前記端子嵌合凹部に配置された前記端子の外周縁部を係止して前記端子の前記端子嵌合凹部からの浮き上がりを規制する仮保持爪が設けられていることを特徴とする熱収縮チューブ組付用治具。
【0015】
上記(4)の構成の熱収縮チューブ組付用治具によれば、回動した上枠が端子嵌合凹部を覆う前に、端子を端子嵌合凹部に仮保持することができ、上枠を回動させる前に芯線圧着部に外挿しなければならない熱収縮チューブの外挿作業が容易となる。
【0016】
(5) 上記(2)〜(4)のいずれか1つの構成の熱収縮チューブ組付用治具であって、前記基台には、前記端子に接続された複数本の電線の間に挟入される充填用隙間形成板が設けられていることを特徴とする熱収縮チューブ組付用治具。
【0017】
上記(5)の構成の熱収縮チューブ組付用治具によれば、端子に接続された電線が複数本の場合、各電線間に充填用隙間形成板が挟み入れられることで、複数本の電線の捻れを防止して、複数本の電線を平行に配置できる。これにより、それぞれの電線の間に接着剤を確実に充填でき、接着剤の未充填空間が電線間に生じることを防止できる。
【0018】
(6) 上記(2)〜(5)のいずれか1つの構成の熱収縮チューブ組付用治具であって、前記端子嵌合凹部は、芯線圧着部が下側となる向きで前記端子を嵌合し、前記チューブ固定爪は、前記芯線圧着部の反対側の端子背面とで前記周壁一部分を挟むことを特徴とする熱収縮チューブ組付用治具。
【0019】
上記(6)の構成の熱収縮チューブ組付用治具によれば、端子嵌合凹部に嵌合配置された端子は、端子背面が上側となり、芯線圧着部が下向きとなる。芯線圧着部に外挿された熱収縮チューブは、上側の周壁一部分が端子背面とチューブ固定爪とによって挟持され、周壁一部分以外の周壁他部分が下側の芯線圧着部を包囲して垂下する。接着剤は、下方に配置される芯線圧着部に向かって集まり、熱収縮チューブ内の芯線圧着部に接着剤が確実に充填される。
【0020】
(7) 芯線圧着部を有する端子と、前記芯線圧着部に芯線が圧着された電線と、前記芯線圧着部を覆う熱収縮チューブと、前記熱収縮チューブの内方に設けられて端子側のチューブ一端部の開口を前記熱収縮チューブの軸線に直交する閉塞面で塞ぐように固化した接着剤と、を備えることを特徴とする端子付電線。
【0021】
上記(7)の構成の端子付電線によれば、芯線圧着部を覆った熱収縮チューブの端子側の開口が、固化した接着剤からなる熱収縮チューブの軸線に直交する閉塞面によって塞がれる。そこで、チューブ一端部の開口端まで十分な容積の接着剤で塞ぐことができ、接着剤の充填されたチューブ一端部を電気接触部に近接配置できる。これにより、チューブ一端部を端子の電気接触部に接近させた分、端子の電気接触部からチューブ他端部までの長さを短くできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る熱収縮チューブ組付方法及び熱収縮チューブ組付用治具によれば、熱収縮チューブが確実に固定できて接着剤の漏れがなく、電気接触部に近接配置した熱収縮チューブの開口端まで確実に接着剤を充填できる。
また、本発明に係る端子付電線によれば、端子からチューブ他端部までの長さを短くできる。
【0023】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱収縮チューブ組付用治具の平面図である。
【図2】図1に示したチューブ固定爪の拡大斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る端子付電線の平面図である。
【図4】端子嵌合凹部に端子を装着する工程を説明する図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】(a)は芯線圧着部に外挿される熱収縮チューブのチューブ一端部を堰き止め壁部に当接させる工程を説明する図、(b)はクランプレバーの操作を説明する図である。
【図7】チューブ固定爪による周壁一部分の挟持状態を示す要部拡大斜視図である。
【図8】(a)は複数本の電線間に充填用隙間形成板が挟入された端子付電線の平面図、(b)は端子の電線接触部に近接して固着された熱収縮チューブの拡大図である。
【図9】(a)は熱収縮チューブによって止水された端子付電線の芯線圧着部側の端子表面を示す斜視図、(b)は(a)に示した端子付電線の端子背面を示す斜視図である。
【図10】端子付電線を装着した従来の防止型リード製造用の治具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る熱収縮チューブ組付用治具11は、基台13と、下枠15と、上枠17と、クランプレバー19と、に大別される。この熱収縮チューブ組付用治具11は、端子付電線21に止水処理を施す際に用いられる(図3参照)。止水処理は、電線41の端部に接続された端子23の芯線圧着部25を覆う熱収縮チューブ27を使用することで行われる。熱収縮チューブ27には、内方に接着剤としてのホットメルト29が設けられている。熱収縮チューブ組付用治具11に装着された端子付電線21は、熱収縮チューブ組付用治具11ごと図示しない加熱装置に投入されることで、熱収縮チューブ27が収縮するとともに、その内方の溶融したホットメルト29が芯線圧着部25に充填されて止水処理される。
【0026】
本実施形態において、端子23は、自動車のエンジンルーム内に配置されたバッテリ等に接続されるLA端子の場合を例に説明するが、止水を必要とする芯線圧着部25を備える端子であればその他用途に用いられるものであってもよい。
【0027】
図3に示すように、端子23は、端子基板部31と、端子基板部31の先端側に形成さて挿通穴33を有する電気接触部35と、端子基板部31の後端側に形成される芯線圧着部25と、芯線圧着部25の後端側に離間して形成される被覆圧着部37と、によって構成される。芯線圧着部25には、絶縁被覆39の除去された電線41の芯線43が圧着される。被覆圧着部37には、電線41が絶縁被覆39の外周から圧着される。本実施形態において、端子23には2本の電線41が接続されている。
【0028】
熱収縮チューブ組付用治具11は、装着した端子付電線21と一体に、加熱部の設けられた図示しない加熱装置に投入される。加熱装置には、熱収縮チューブ組付用治具11を加熱部へ搬送するための搬送ベルトが設けられている。そこで、熱収縮チューブ組付用治具11に装着された端子付電線21は、搬送ベルトによって加熱装置内を搬送される。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の熱収縮チューブ組付用治具11は、端子セット台の載置面45に載置される長尺枠状の基台13を有する。基台13には、加熱処理終了後に、端子付電線21を熱収縮チューブ組付用治具11ごと冷却する際に使用される掛止穴47が形成されている。
基台13の先端には下枠15が設けられ、下枠15の上面には端子嵌合凹部49が形成されている。端子嵌合凹部49は、端子付電線21における端子23の外形状と略同じ矩形状の凹みであり、端子23の一平面内での移動を規制することができる。
【0030】
尚、端子嵌合凹部49における先端側の周壁の一部は、嵌合配置された端子23の端子基板部31との干渉を防ぐため切り欠かれている。また、本実施形態に係る端子23は、熱収縮チューブ27の軸線81に対して端子基板部31が非対称な形状を有している(図9参照)。そこで、端子23を端子嵌合凹部49に嵌合配置する際、端子基板部31の端子背面75が上側となり、芯線圧着部25が下向きとなる方向にはセットできるが、芯線圧着部25が上向きとなる方向にセットしようとすると、端子基板部31が端子嵌合凹部49の周壁と干渉してセットできない。従って、端子23を端子嵌合凹部49に嵌合配置する際の誤セットが防止される。
【0031】
更に、基台13の上面には、仮保持爪51が端子嵌合凹部49上に突出して設けられている。仮保持爪51は、図4及び図5に示すように、端子嵌合凹部49に嵌合配置された端子23の端子基板部31における先端側の外周縁を係止して、端子嵌合凹部49からの端子23の浮き上がりを規制する。仮保持爪51が設けられることで、回動した上枠17が端子嵌合凹部49を覆う前に、端子23を端子嵌合凹部49に仮保持することができ、上枠17を回動させる前に芯線圧着部25に外挿しなければならない熱収縮チューブ27の外挿作業が容易となる。
【0032】
下枠15の先端縁には、堰き止め壁部53が形成される。この堰き止め壁部53には、端子付電線21の電線41に外挿される熱収縮チューブ27のチューブ一端部55(図4参照)が当接する。下枠15の一側縁にはヒンジ57を介して上枠17が回動自在に連結される。上枠17は、端子嵌合凹部49を覆って端子23の一平面である端子背面75と直交する方向の移動を規制する。
【0033】
上枠17の先端縁には、電線41に沿う方向に突出するチューブ固定爪59が設けられる。チューブ固定爪59は、下枠15と上枠17とで挟持固定された状態の端子23とで熱収縮チューブ27の周壁一部分61(図4参照)を挟む。チューブ固定爪59は、図2に示すように、熱収縮チューブ27の軸線方向に直交する方向に延在する複数の平行な線状押圧歯63を有する。熱収縮チューブ27の周壁一部分61を押圧するチューブ固定爪59は、線状押圧歯63を有することで、面状のものに比べ大きな接触圧力で周壁一部分61を挟持でき、熱収縮チューブ27がより離脱し難くなっている。
【0034】
基台13の側部には、挟持位置へ回動されて下枠15と上枠17とを挟持するクランプレバー19が回動自在に設けられる。クランプレバー19には、一対の平行な挟持片65(図4参照)が形成され、下枠15に重ねた上枠17の揺動端側をこれら一対の挟持片65で挟持固定する。
【0035】
本実施形態の基台13には、熱収縮チューブ27から導出された複数本(本実施形態では2本)の電線41の間に挟入される充填用隙間形成板67が着脱自在に設けられている。充填用隙間形成板67は、支持杆69の先端側に設けられている。支持杆69の基端側には固定部71が設けられ、固定部71は基台13を挟んで締結固定される。基台13には、固定部71を位置決めする為の複数の位置決め溝73が設けられている。勿論、端子23に接続される電線41が1本の場合には、充填用隙間形成板67は取り外される。
【0036】
本実施形態のように電線41が2本である場合、図8(a)に示すように、各電線41間に充填用隙間形成板67が挟み入れられる。そこで、充填用隙間形成板67は、2本の電線41の捻れを防止して、2本の電線41を平行に配置できる。これにより、それぞれの電線41の間にホットメルト29を確実に充填でき、ホットメルト29の未充填空間が電線41間に生じることを防止できる。
【0037】
本実施形態の熱収縮チューブ組付用治具11において、端子23の端子基板部31は、芯線圧着部25が下側となる向きで端子嵌合凹部49に嵌合配置される(図4参照)。そこで、端子嵌合凹部49に配置された端子23は、端子背面75が上側となり、芯線圧着部25が下向きとなる。
【0038】
芯線圧着部25に外挿された熱収縮チューブ27は、図7に示すように、上側の周壁一部分61が端子基板部31の端子背面75(図8(b)参照)とチューブ固定爪59とによって挟持され、周壁一部分61以外の周壁他部分が下側の芯線圧着部25を包囲して垂下する。このため、溶融したホットメルト29は、下方に配置される芯線圧着部25に向かって集まり、熱収縮チューブ27内の芯線圧着部25にホットメルト29が確実に充填される。
【0039】
次に、上記構成を有する熱収縮チューブ組付用治具11の作用を説明する。
熱収縮チューブ組付用治具11では、端子背面75を上側とし、先端側の外周縁を仮保持爪51の下方に潜り込ませるようにして、端子基板部31が下枠15の端子嵌合凹部49嵌合配置される。端子嵌合凹部49に配置された端子23から導出される電線41及び芯線圧着部25には熱収縮チューブ27が外挿され、熱収縮チューブ27は下枠15の堰き止め壁部53にチューブ一端部55が当接される(図4参照)。
【0040】
この状態で、上枠17が回動され、端子23が下枠15と上枠17とに挟まれて固定されると同時に、上枠17に突設されたチューブ固定爪59が、チューブ一端部55における周壁一部分61に押圧される。チューブ固定爪59は、下枠15と上枠17とで挟持された端子基板部31との間でチューブ一端部55の周壁一部分61を挟持するので、チューブ一端部55を確実に挟持できる。また、チューブ一端部55は、開口79(図9参照)が堰き止め壁部53によって閉塞されるとともに、周壁一部分61が端子23とチューブ固定爪59とによって基台13側に固定される。これにより、堰き止め壁部53とチューブ一端部55との間にはホットメルト29の流失する隙間が無くなり、チューブ一端部55を端子23の電気接触部35に接近して配置することができる。
【0041】
次に、本実施形態に係る熱収縮チューブ組付方法を説明する。
上述した熱収縮チューブ組付用治具11を用いて熱収縮チューブ27を端子付電線21に組み付けるには、先ず、図4に示すように、端子付電線21の端子23を基台13に設けられた下枠15の端子嵌合凹部49に嵌合配置する。
この際、図5に示すように、端子嵌合凹部49に嵌合された端子23は、仮保持爪51によって端子基板部31の先端側の外周縁が係止され、端子嵌合凹部49からの浮き上がりが規制される。これにより、回動した上枠17が端子嵌合凹部49を覆う前に、端子23を端子嵌合凹部49に仮保持することができ、上枠17を回動させる前に芯線圧着部25に外挿しなければならない熱収縮チューブ27の外挿作業が容易となる。
【0042】
次いで、図6(a)に示すように、下枠15から導出される芯線圧着部25にホットメルト29を内方に有した熱収縮チューブ27を外挿し、チューブ一端部55を下枠15の堰き止め壁部53(図4参照)に当接する。これにより、チューブ一端部55には、開口79が堰き止め壁部53によって閉塞されたホットメルト29の充填空間が形成される。
その後、下枠15にヒンジ57を介して回動自在に連結された上枠17によって端子嵌合凹部49を覆って端子セット台の載置面45(図1参照)と直交する方向の移動を規制する。図7に示すように、端子嵌合凹部49の閉塞と同時に、上枠17に突設されたチューブ固定爪59と端子23の端子基板部31とが熱収縮チューブ27の周壁一部分61を挟持する。
【0043】
次いで、図6(b)に示すように、基台13に回動自在に設けられたクランプレバー19を挟持位置へ回動して、下枠15と上枠17とを挟持する。また、充填用隙間形成板67を2本の電線41間に挟み入れる。
このようにして端子23を保持した熱収縮チューブ組付用治具11は、端子付電線21と共に図示しない加熱装置に投入される。加熱装置にて加熱された熱収縮チューブ27は、図8(a)に示すように、半径方向内側に収縮するとともに、その内方が溶融したホットメルト29によって充填されて止水される。線状押圧歯63によって固定された熱収縮チューブ27は、図8(b)に示すように、端子背面75側の周壁一部分61に圧接痕77を残してチューブ一端部55が電気接触部35に近接して固定される。
【0044】
そして、このようにして熱収縮チューブ27が組み付けられた端子付電線21は、芯線圧着部25(図3参照)を有する端子23と、芯線圧着部25に芯線43(図3参照)が圧着された電線41と、電線41に外挿され且つ芯線圧着部25を覆う熱収縮チューブ27と、熱収縮チューブ27の内方に充填されて端子側のチューブ一端部55の開口79(図9(a)参照)を熱収縮チューブ27の軸線81に直交する閉塞面83で塞ぐように固化したホットメルト29と、によって構成される。
【0045】
このように構成される端子付電線21では、図9(a)に示すように、芯線圧着部25を覆った熱収縮チューブ27の端子側の開口79が、固化したホットメルト29からなる熱収縮チューブ27の軸線81に直交する閉塞面83によって塞がれる。そこで、チューブ一端部55の開口端まで十分な容積のホットメルト29で塞ぐことができ、ホットメルト29の充填されたチューブ一端部55を電気接触部35に近接配置できる。これにより、図9(b)に示すように、チューブ一端部55を電気接触部35に接近させた分、端子23の電気接触部35からチューブ他端部87までの長さL(図3参照)を短くできる。
【0046】
従って、本実施形態に係る熱収縮チューブ組付方法及び熱収縮チューブ組付用治具11によれば、熱収縮チューブ27が確実に固定できてホットメルト29の漏れがなく、電気接触部35に近接配置した熱収縮チューブ27の開口端までホットメルト29を充填できる。
また、本実施形態に係る端子付電線21によれば、端子23の電気接触部35からチューブ他端部87までの長さを短くできる。
【0047】
なお、本発明の熱収縮チューブ組付方法及び熱収縮チューブ組付用治具並びに端子付電線は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0048】
11…熱収縮チューブ組付用治具
13…基台
15…下枠
17…上枠
19…クランプレバー
21…端子付電線
23…端子
25…芯線圧着部
27…熱収縮チューブ
29…ホットメルト(接着剤)
41…電線
43…芯線
45…載置面
49…端子嵌合凹部
51…仮保持爪
53…堰き止め壁部
55…チューブ一端部
57…ヒンジ
59…チューブ固定爪
61…周壁一部分
63…線状押圧歯
67…充填用隙間形成板
75…端子背面(一平面)
79…開口
81…軸線
83…閉塞面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子付電線の端子が基台に設けられた下枠の端子嵌合凹部に嵌合される工程と、
接着剤を内方に有した熱収縮チューブが前記下枠から導出される前記端子の芯線圧着部に外挿されてチューブ一端部が前記下枠の堰き止め壁部に当接させられる工程と、
前記下枠に回動自在に連結された上枠が前記端子嵌合凹部を覆って前記端子の一平面と直交する方向の移動を規制する工程と、
前記上枠が前記端子嵌合凹部を覆うと同時に前記上枠に突設されたチューブ固定爪と前記端子とが前記熱収縮チューブの周壁一部分を挟持する工程と、
前記基台に回動自在に設けられたクランプレバーが挟持位置へ回動されて前記下枠と前記上枠とを挟持する工程と、
を備えることを特徴とする熱収縮チューブ組付方法。
【請求項2】
基台に設けられて端子付電線における端子の一平面内での移動を規制する端子嵌合凹部を有する下枠と、
前記下枠に形成されて前記端子の芯線圧着部に外挿される熱収縮チューブのチューブ一端部が当接させられる堰き止め壁部と、
前記下枠に回動自在に連結され、前記端子嵌合凹部を覆って前記端子の一平面と直交する方向の移動を規制する上枠と、
前記上枠に突設されて前記端子とで前記熱収縮チューブの周壁一部分を挟むチューブ固定爪と、
前記基台に回動自在に設けられ、挟持位置へ回動されて前記下枠と前記上枠とを挟持するクランプレバーと、
を備えることを特徴とする熱収縮チューブ組付用治具。
【請求項3】
請求項2記載の熱収縮チューブ組付用治具であって、
前記チューブ固定爪が、前記熱収縮チューブの軸線方向に直交する方向に延在する複数の平行な線状押圧歯を有することを特徴とする熱収縮チューブ組付用治具。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の熱収縮チューブ組付用治具であって、
前記基台には、前記端子嵌合凹部に配置された前記端子の外周縁部を係止して前記端子の前記端子嵌合凹部からの浮き上がりを規制する仮保持爪が設けられていることを特徴とする熱収縮チューブ組付用治具。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の熱収縮チューブ組付用治具であって、
前記基台には、前記端子に接続された複数本の電線の間に挟入される充填用隙間形成板が設けられていることを特徴とする熱収縮チューブ組付用治具。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の熱収縮チューブ組付用治具であって、
前記端子嵌合凹部は、前記芯線圧着部が下側となる向きで前記端子を嵌合し、前記チューブ固定爪は、前記芯線圧着部の反対側の端子背面とで前記周壁一部分を挟むことを特徴とする熱収縮チューブ組付用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−114936(P2013−114936A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260810(P2011−260810)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】