説明

熱収縮フィルム

【課題】本発明は、低温収縮性、自然収縮性、剛性等に優れ、耐ブロッキング性、耐温水融着性及び耐衝撃性等の物性バランスに優れ、取り分け製膜安定性が良好な熱収縮性フィルムを提供する。
【解決手段】特定のブロック共重合体又はその水添物成分からなる組成物を延伸してなる熱収縮フィルムにおいて、溶融張力測定における60m/sec速度時の溶融張力が2.0〜7.5gfとなるシート押出温度範囲で製造する熱収縮フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性フィルムに適した自然収縮性、低温収縮性、剛性、透明性及び耐衝撃性等の物性バランスに優れ、取り分けフィルムの厚みが均質で製膜安定性に優れる熱収縮フィルム及び熱収縮性多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族炭化水素含有量が比較的高い、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体は、透明性、耐衝撃性等の特性を利用して射出成形用途、シート、フィルム等の押し出し成形用途等に使用されている。とりわけビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体樹脂を用いた熱収縮性フィルムは、従来使用されている塩化ビニル樹脂の残留モノマーや可塑剤の残留及び焼却時の塩化水素の発生の問題もないため、食品包装やキャップシール、ラベル等に利用されている。熱収縮性フィルムに必要な特性として自然収縮性、低温収縮性、透明性、機械強度、包装機械適性等の要求がある。これまで、これらの特性の向上と良好な物性バランスを得るため種々の検討がなされてきた。
【0003】
例えば下記文献1には熱収縮性を改良するため、スチレン−ブタジエンブロック共重合体を融点範囲内で余熱した後、延伸して熱収縮フィルムの製造方法が開示されている。下記文献2には収縮特性を改良するため、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の2軸延伸フィルムに特定の配向緩和応力を保持させたスチレン系樹脂収縮フィルムが開示されている。
下記文献3には機械特性、光学特性、延伸特性及び耐クラック特性等に優れる組成物を得るため、脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体含有量が5〜80重量%で、ビカット軟化点が90℃を超えないビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体とビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体との組成物が開示されている。
【0004】
下記文献4には収縮特性、耐環境破壊性に優れた熱収縮性フィルムを得るため、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体のセグメントに特定のTgを有する熱収縮性フィルムが開示されている。下記文献5には収縮特性、耐環境破壊性に優れた熱収縮性フィルムを得るため、特定構造のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体の組成物からなる熱収縮性フィルムが開示されている。
下記文献6には低温収縮性、光学特性、耐クラック特性、寸法安定性等に優れる収縮フィルムを得るため、ビニル芳香族炭化水素含有量が95〜20重量%で、ビカット軟化点が90℃を超えないビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体とビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体との組成物を延伸した低温収縮性フィルムが開示されている。
【0005】
下記文献7には室温での自然収縮性を改良するため、スチレン系炭化水素と共役ジエン炭化水素からなるブロック共重合体とスチレン系炭化水素を含有した特定Tgのランダム共重合体の組成物からなるポリスチレン系熱収縮フィルムが開示されている。下記文献8にはフィルムの経時安定性と耐衝撃性に優れた透明性熱収縮性フィルムを得るため、ビカット軟化点が105℃を超えないビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体とビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体との組成物で、特定の熱収縮力を特徴とする熱収縮性硬質フィルムが開示されている。
下記文献9には透明性、剛性及び低温面衝撃性をバランスさせた組成物を得るため、特定構造と分子量分布を有するビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体とビニル芳香族炭化水素−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂との組成物が開示されている。下記文献10には透明性と耐衝撃性に優れた樹脂組成物を得るため、特定構造のビニル芳香族炭化水素ブロックビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合体ブロックを有するブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を含有する透明高強度樹脂組成物が開示されている。
【0006】
下記特許文献11には、低温収縮性、光学特性、耐クラック特性、寸法安定性等に優れる収縮フィルムを得るため、ビニル芳香族炭化水素含有量が95〜20重量%で、ビカット軟化点が90℃を超えないビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体とビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロックからなる共重合体との組成物を少なくとも1層有する多層低温収縮性フィルムが開示されている。
下記特許文献12には、自然収縮性、強度、表面特性、腰の強さ、低温収縮性等に優れる収縮フィルムを得るため、両外層が特定ブタジエン単位含量のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体とスチレン−ブチルアクリレートの混合物、中間層が特定ブタジエン単位含量のスチレン−ブタジエン−スチレン型ブロック共重合体とスチレン−ブチルアクリレートの混合物からなる少なくとも3層の多層ポリスチレン系熱収縮フィルムが開示されている。
【0007】
下記特許文献13には、自然収縮性、耐熱融着性、透明性、収縮仕上がり性のいずれかの特性に優れた熱収縮性フィルムを得るため、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を組み合わせた配合物を中間層とし、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン系炭化水素からなるブロック共重合体を主成分とした混合重合体を表裏層とする熱収縮性ポリスチレン系積層フィルムが開示されている。
下記特許文献14には、低温での熱収縮特性、収縮仕上がり性、自然収縮率、熱時、フィルム同士のブロッキングが発生しない熱収縮性フィルムを得るため、中間層が特定のビカット軟化点のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主成分とし、内外層が特定のビカット軟化点のスチレン−共役ジエンブロック共重合体を主成分とする特定の熱収縮率を有する多層熱収縮性ポリスチレン系フィルムが開示されている。
【0008】
下記特許文献15には、加工特性、保存安定性、臭気が少なく、剛性や耐衝撃性に優れた樹脂組成物及びフィルム、多層フィルムを得るため、特定の分子量分布、残存単量体量を特徴とするスチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる共重合体樹脂とスチレンと共役ジエンからなるブロック共重合体樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂組成物を主体とする層を有する(多層)熱収縮性フィルムが開示されている。
しかしながら、これらのビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体又は該ブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体共重合体の組成物は、自然収縮性、低温収縮性、剛性、透明性、耐ブロッキング性、耐温水融着性及び耐衝撃性のバランス及びゲルに起因するフィッシュアイ(FE)が十分でなく、また、熱収縮フィルムの厚みの均質化において、これらの文献にはそれらを改良する方法に関して開示されておらず、依然として市場での問題点が指摘されている。
【0009】
【特許文献1】特開昭57−34921号公報
【特許文献2】特開昭58−108112号公報
【特許文献3】特開昭59−221348号公報
【特許文献4】特開昭60−224520号公報
【特許文献5】特開昭60−224522号公報
【特許文献6】特開昭61−25819号公報
【特許文献7】特開平4−52129号公報
【特許文献8】特開平5−104630号公報
【特許文献9】特開平6−220278号公報
【特許文献10】特開平7−216187号公報
【特許文献11】特開昭61−41544号公報
【特許文献12】特開2000−185373号公報
【特許文献13】特開2000−6329号公報
【特許文献14】特開2002−46231号公報
【特許文献15】特開2002−201324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、自然収縮性、低温収縮性、剛性、透明性及び耐衝撃性等の物性バランスに優れ、取り分けフィルムの厚みムラが小さい熱収縮フィルム及び熱収縮性多層フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の組成物を熱収縮フィルムとして製造する条件を規定することによって上記の目的が達成されることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.成分(I)〜成分(III)からなる組成物を延伸してなる熱収縮フィルムにおいて、溶融張力測定における60m/sec速度時の溶融張力が2.0〜7.5gfとなるシート押出温度範囲で製造することを特徴とする熱収縮フィルム、
但し、該組成物の重量比は合計を100重量部とした時、(I)/(II)/(III)が40〜65/40〜65/6〜15重量部であり、かつビカット軟化点が70〜78℃である。
(I)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が85/15〜95/5、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量が3万〜50万、ビカット軟化温度が65〜80℃であることを特徴とするブロック共重合体又はその水添物。
(II)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が65/35〜78/22、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量が3万〜50万、ビカット軟化温度が68〜82℃であることを特徴とするブロック共重合体又はその水添物。
(III)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が30/70〜50/50、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量が3万〜20万であることを特徴とするブロック共重合体又はその水添物。
【0012】
2.組成物中のビニル芳香族炭化水素含有量が、75〜83重量%の範囲であることを特徴とする上記1記載の熱収縮フィルム、
3.組成物中のイソプレン含有量が、0.5〜10重量%の範囲であることを特徴とする上記1又は2記載の熱収縮フィルム、
4.上記1〜3のいずれかに記載の熱収縮フィルムが、延伸方向における65℃の熱収縮率5〜60%、延伸方向における引張弾性率7000〜30000Kg/cmであることを特徴とする熱収縮性フィルム、
5.組成物100重量部に対して、下記のa)〜c)から選ばれる少なくとも1種のビニル芳香族炭化水素重合体を0.5〜200重量部添加することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の熱収縮性フィルム、
a)スチレン系重合体
b)脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体
c)ゴム変性スチレン系重合体
【0013】
6.上記1〜5のいずれかに記載の熱収縮フィルム100重量部に対して、脂肪酸アミド、パラフィン炭化水素系樹脂、及び脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の滑剤を0.01〜5重量部添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性フィルム、
7.上記1〜6のいずれかに記載の熱収縮フィルム100重量部に対して、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、及び2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾールから選ばれる少なくとも1種の安定剤を0.05〜3重量部添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱収縮性フィルム、
8.上記1〜7のいずれかに記載のブロック共重合体水添物100重量部に対して、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びヒンダード・アミン系光安定剤から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤又は光安定剤を0.05〜3重量部添加することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のブロック共重合体水添物又は組成物、
【0014】
9.上記8に記載されたブロック共重合体水添物または組成物から得られることを特徴とするシ−ト・フィルムあるいは熱収縮フィルム。
【0015】
10.上記1〜9のいずれかに記載の熱収縮フィルムからなる層を多層フィルムの少なくとも1つの層とし、延伸方向における80℃の熱収縮率が10〜80%であることを特徴とする熱収縮性多層フィルム、
11.上記1〜9のいずれかに記載の熱収縮フィルムからなる層を中層として、外層のビカット軟化温度が中層よりも3〜15℃高いことを特徴とする熱収縮性多層フィルム、
12.延伸方向における65℃の熱収縮率が5〜60%、延伸方向における引張弾性率が
7000〜30000Kg/cmである請求項10又は請求項11に記載の熱収縮性多
層フィルム、
である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱収縮性フィルムは厚みムラが小さく、自然収縮性、低温収縮性、剛性、透明性及び耐衝撃性等の物性バランスに優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に使用する成分(I)は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が85/15〜95/5、好ましくは87/13〜93/12である。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの比が85/15以上では剛性が優れ、95/5以下では耐衝撃性が向上した熱収縮性フィルムを得ることができる。尚、成分(I)がブロック共重合体水添物の場合、ビニル芳香族炭化水素含有量は、水添前のブロック共重合体のビニル芳香族化合物含有量で把握しても良い。成分(I)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量は3万〜50万、好ましくは5万〜30万、更に好ましくは8万〜20万である。数平均分子量が3万〜50万の範囲にあっては成形加工性に優れる。成分(I)のビカット軟化温度は65〜80℃、好ましくは68〜78℃、更に好ましくは70〜76℃である。ビカット軟化温度は65〜80℃の範囲にあっては自然収縮性、低温収縮性に優れる。
【0018】
本発明に使用する成分(II)は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が65/35〜75/25、好ましくは68/32〜73/27である。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が65/35〜75/25の範囲にあっては耐衝撃性と剛性のバランスに優れる。尚、成分(II)がブロック共重合体水添物の場合、ビニル芳香族炭化水素含有量は、水添前のブロック共重合体のビニル芳香族化合物含有量で把握しても良い。成分(II)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量は3万〜50万、好ましくは5万〜30万、更に好ましくは8万〜20万である。数平均分子量が3万〜50万の範囲にあっては成形加工性に優れる。成分(II)のビカット軟化温度は68〜82℃、好ましくは70〜78℃である。ビカット軟化温度は68〜82℃の範囲にあっては自然収縮性、低温収縮性に優れる。
【0019】
本発明に使用する成分(III)は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が30/70〜50/50、好ましくは33/67〜46/54、更に好ましくは36/64〜42/58の範囲である。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が30/70〜50/50の範囲にあっては耐衝撃性と剛性のバランスに優れる。尚、成分(III)がブロック共重合体水添物の場合、ビニル芳香族炭化水素含有量は、水添前のブロック共重合体のビニル芳香族化合物含有量で把握しても良い。成分(III)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量は3万〜20万、好ましくは4万〜15万、更に好ましくは5万〜10万である。数平均分子量が3万〜20万の範囲にあっては成形加工性に優れる。
本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物の数平均分子量は、分子量が異なる複数のブロック共重合体の混合物であっても良く、非水添共重合体の数平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で、分子量を特定するものである。分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)用の単分散ポリスチレンをGPCにより、そのピークカウント数と単分散ポリスチレンの数平均分子量との検量線を作成し、常法(例えば「ゲルクロマトグラフィー<基礎編>」講談社発行)に従って算出する。
【0020】
本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物の好ましいメルトフローレイト(JISK−6870により測定。条件はG条件で温度200℃、荷重5Kg)は成形加工性の点から、0.01〜100g/10min、0.05〜50g/10min、更に好ましくは0.5〜30g/10minであることが推奨される。数平均分子量とメルトフローレイト(以下、MFRと略すこともある)は重合に使用する触媒量により任意に調整できる。
本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物及び組成物のビカット軟化点は、厚さ3mmに圧縮成形したものを試験片とし、ASTM D−1525に準じて測定(荷重:1Kg、昇温速度:2℃/min)した値である。ビカット軟化温度の調整は例えば、数平均分子量を大きくすると高くなり、ビニル芳香族炭化水素の含有量を増すことで高くすることができる。
【0021】
本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物は、ビニル芳香族炭化水素単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体から構成されるセグメントを少なくとも1つと、共役ジエン単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体から構成されるセグメントを少なくとも1つ有する。該ブロック共重合体水添物のポリマー構造は特に制限は無いが、例えば一般式、
(A−B)n、A−(B−A)n 、B−(A−B)n+1
[(A−B)km+1−X 、[(A−B)k−A]m+1−X
[(B−A)km+1−X 、[(B−A)k−B]m+1−X
(上式において、セグメントAはビニル芳香族炭化水素単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体、セグメントBは共役ジエン単独重合体及び/又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなる共重合体である。Xは例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ、1,3ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ化大豆油等のカップリング剤の残基または多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。n、k及びmは1以上の整数、一般的には1〜5の整数である。また、Xに複数結合しているポリマー鎖の構造は同一でも、異なっていても良い。)で表される線状ブロック共重合体水添物やラジアルブロック共重合体水添物、或いはこれらのポリマー構造の任意の混合物が使用できる。また、上記一般式で表されるラジアルブロック共重合体水添物において、更にA及び/又はBが少なくとも一つXに結合していても良い。
【0022】
本発明において、セブメントA、セグメントBにおけるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの共重合体中のビニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、テーパー(漸減)状に分布していてもよい。また該共重合体中水添物には、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がセグメント中にそれぞれ複数個共存してもよい。セグメントA中のビニル芳香族炭化水素含有量({セグメントA中のビニル芳香族炭化水素/(セグメントA中のビニル芳香族炭化水素+共役ジエン)}×100)とセグメントB中のビニル芳香族炭化水素含有量({セグメントB中のビニル芳香族炭化水素/(セグメントB中のビニル芳香族炭化水素+共役ジエン)}×100)との関係は、セグメントAにおけるビニル芳香族炭化水素含有量のほうが、セグメントBにおけるビニル芳香族炭化水素含有量より大である。セグメントAとセグメントBの好ましいビニル芳香族炭化水素含有量の差は5重量%以上であることが好ましい。
【0023】
本発明において、ブロック共重合体又は水添物の水添前のブロック共重合体は、炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンを重合することにより得ることができる。本発明に用いるビニル芳香族炭化水素としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンなどがあるが、特に一般的なものはスチレンが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
共役ジエンとしては、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどであるが、特に一般的なものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0024】
本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物において、(i)イソプレンと1,3−ブタジエンからなる共重合体ブロック、(ii)イソプレンとビニル芳香族炭化水素からなる共重合体ブロックおよび(iii)イソプレンと1,3−ブタジエンとビニル芳香族炭化水素からなる共重合体ブロックの(i)〜(iii)の群から選ばれる少なくとも1つの重合体ブロックが組み込まれていても良く、ブタジエンとイソプレンの重量比が3/97〜90/10、好ましくは5/95〜85/15、更に好ましくは10/90〜80/20であるブロック共重合体又はその水添物は、水添率が50重量%以下にあっては熱成形・加工等におけるゲル生成が少ない。
【0025】
本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物の水添前のブロック共重合体は、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の開始剤を用いてアニオンリビング重合により得られる。炭化水素溶媒としては、例えばn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類、また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が使用できる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0026】
また重合開始剤としては、一般的に共役ジエン及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等を用いることができる。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、好適な有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物であって、1分子中に1個のリチウムを含む化合物や1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が挙げられる。具体的にはn−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。更に、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。これらは1種のみならず2種以上混合使用してもよい。
【0027】
本発明において、水添前のブロック共重合体を製造する際の重合温度は一般的に−10℃〜150℃、好ましくは40℃〜120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は10時間以内であり、特に好適には0.5〜5時間である。また、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガスなどをもって置換するのが望ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液層に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に制限されるものではない。更に重合系内には触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が混入しないよう留意する必要がある。
【0028】
本発明に使用するブロック共重合体水添物は、上記で得られた水添前のブロック共重合体を水素添加することにより得られる。水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物があげられる。
【0029】
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
水添反応は一般的に0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜7MPaが推奨される。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0030】
本発明に使用するブロック共重合体水添物において、共役ジエンに基づく不飽和二重結合の水素添加率は目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。熱安定性及び耐候性の良好なブロック共重合体水添物を得る場合、重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の70%を超える、好ましくは75%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上が水添されていることが推奨される。また、熱安定性の良好なブロック共重合体水添物を得る場合、水添添加率は3〜70%、或いは5〜65%、特に好ましくは10〜60%にすることが好ましい。なお、共重合体中のビニル芳香族炭化水素に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、水添率を50%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下にすることが好ましい。水添添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)により知ることができる。
【0031】
本発明において、ブロック共重合体水添物中の共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、前述の極性化合物等の使用により任意に変えることができ、特に制限はない。一般に、ビニル結合量は5〜90%、好ましくは10〜80%、より好ましくは15〜75%の範囲で設定できる。なお、本発明においてビニル結合量とは、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量(但し、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)である。ビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)により把握することができる。
【0032】
本発明において、温水融着性が特に優れた熱収縮フィルムを得る場合、ブロック共重合体水添物の示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、20℃以上、好ましくは30℃以上、更に好ましくは45〜100℃、とりわけ好ましくは50〜90℃の温度範囲に結晶化ピークを有するブロック共重合体水添物が好ましい。この結晶化ピーク熱量は3J/g以上、好ましくは6J/g以上、更に好ましくは10J/g以上であることが好ましい。結晶化ピークを有するブロック共重合体水添物は、水添前のブロック共重合体中のビニル結合量を30%未満、好ましくは8〜25%、更に好ましくは10〜25%、とりわけ好ましくは12〜20%に設定することにより得ることができる。特に水添前のブロック共重合体中にビニル結合量が8〜25%、好ましくは10〜20%、更に好ましくは10〜18%である共役ジエン重合体セグメントを少なくとも1つ含有させることが推奨される。
【0033】
本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物の成分(I)/(II)/(III)からなる組成物の重量比は合計を100として40〜65/40〜65/6〜15、好ましくは35〜60/35〜60/7〜12である。成分(I)/(II)/(III)組成比が本発明で規定する範囲にあっては自然収縮性、低温収縮性、透明性に優れる。
本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物の成分(I)/(II)/(III)からなる組成物のビカット軟化温度は70〜78℃、好ましくは72〜77℃の範囲である。組成物のビカット軟化温度が70〜78℃の範囲にあっては自然収縮性、低温収縮性に優れる。
【0034】
本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物の成分(I)/(II)/(III)からなる組成物中のビニル芳香族炭化水素含有量は75〜83重量%、好ましくは77〜81重量%の範囲である。組成物中のビニル芳香族炭化水素含有量が75〜83重量%の範囲にあっては剛性と耐衝撃性のバランスに優れる。
本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物の成分(I)/(II)/(III)からなる組成物中のイソプレン含有量は0.5〜10重量%、好ましくは1〜8重量%である。組成物中のイソプレン含有量は0.5〜10重量%の範囲にあってはフィルム中のフィッシュアイ(FE)が少なく良好である。
【0035】
組成物のビカット軟化温度はブロック共重合体又はその水添物のビカット軟化温度を調整或いは成分比率を調整することで得ることができ、組成物中のビニル芳香族炭化水素及びイソプレンはブロック共重合体又はその水添物のビニル芳香族炭化水素、イソプレン量を調整する或いは成分比率を調整することで得ることができる。
本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物(以後、成分(A)と呼ぶ)は、ビニル芳香族炭化水素系重合体(以後、成分(B)と呼ぶ)とのブロック共重合体組成物として使用することができる。成分(A)と成分(B)の重量比は、成分(A)100重量部に対して成分(B)が0.5〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、更に好ましくは3〜100重量部である。かかる重量比で成分(A)と成分(B)を組み合わせることで、剛性、耐ブロッキング性、自然収縮性に優れるブロック共重合体組成物を得ることができる。
【0036】
本発明に使用するビニル芳香族炭化水素系重合体としては、下記のa)〜c)から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
a)スチレン系重合体
b)脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体
c)ゴム変性スチレン系重合体
本発明に使用するa)スチレン系重合体はスチレンもしくはこれと共重合可能なモノマーを重合して得られるもの(但し、b)を除く)である。スチレンと共重合可能なモノマーとしては、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、無水マレイン酸等があげられる。スチレン系重合体としては、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられるが、特に好ましいスチレン系重合体としてはポリスチレンをあげることができる。これらのスチレン系重合体の重量平均分子量は、一般に50000〜500000の重合体を使用できる。また、これらのスチレン系重合体はは単独又は二種以上の混合物として使用でき、剛性改良剤として利用できる。
【0037】
本発明で使用するb)脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体の脂肪族不飽和カルボン酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル等の炭素数C1〜C12好ましくはC2〜C12のアルコールとアクリル酸とのエステル、又はメタアクリル酸と炭素数C1〜C12好ましくは炭素数C2〜C12のアルコールとアクリル酸とのエステル、またα、β不飽和ジカルボン酸、例えばフマル酸、イタコン酸、マレイン酸等と炭素数C1〜C12好ましくはC2〜C12のアルコールとのモノ又はジエステルから選ばれる少なくとも1種である。かかる脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体における脂肪族不飽和カルボン酸エステルの含有量は、一般に5〜50重量%、好ましくは8〜30重量%、更に好ましくは10〜25重量%である。また、脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体におけるビカット軟化点は、50〜95℃、好ましくは60〜90℃、更に好ましくは65〜85℃であることが推奨される。ビカット軟化温度は、厚さ3mmに圧縮成形したものを試験片とし、ASTM D−1525に準じて測定(荷重:1Kg、昇温速度:2℃/min)した値である。
【0038】
好ましい脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体はアクリル酸n−ブチルとスチレンを主体とする共重合体であり、アクリル酸n−ブチルとスチレンの合計量が50重量%以上、更に好ましくはアクリル酸n−ブチルとスチレンの合計量が60重量%以上からなる脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体である。アクリル酸n−ブチルとスチレンを主体とする脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体を用いた熱収縮フィルムは収縮性、自然収縮性が良好である。
なお、b)には、本発明の特性が維持される範囲内において、スチレン以外の上述したビニル芳香族炭化水素が共重合されていても良い。b)脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体の製造方法は、スチレン系樹脂を製造する公知の方法、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等を用いることができる。これらの脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体の重量平均分子量は、一般に50000〜500000の重合体を使用できる。
【0039】
本発明で使用するc)ゴム変性スチレン系重合体はビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとエラストマーとの混合物を重合することによって得られ、重合方法としては懸濁重合、乳化重合、塊状重合、塊状−懸濁重合等が一般的に行われている。ビニル芳香族炭化水素と共重合可能なモノマーとしてはα−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸等があげられる。又、共重合可能なエラストマーとしては天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ハイスチレンゴム等が使用される。
これらのエラストマーはビニル芳香族炭化水素もしくはこれと共重合可能なモノマー100重量部に対して一般に3〜50重量部該モノマーに溶解して或いはラテックス状で乳化重合、塊状重合、塊状−懸濁重合等に共される。特に好ましいゴム変性スチレン系重合体としては、耐衝撃性ゴム変性スチレン系重合体(HIPS)があげられ。ゴム変性スチレン系重合体は剛性、耐衝撃性、滑り性の改良剤として利用できる。これらのゴム変性スチレン系重合体の重量平均分子量は、一般に50000〜500000の重合体を使用できる。ゴム変性スチレン系重合体の添加量は透明性維持を考慮すると0.1〜10重量部が好ましい。
【0040】
本発明で使用するビニル芳香族炭化水素系重合体としては、特に、MFR(G条件で温度200℃、荷重5Kg)は成形加工の点から0.1〜100g/10min、好ましくは0.5〜50g/10min、1〜30g/10minであることが推奨される。
本発明の熱収縮フィルムには滑剤として脂肪酸アミド、パラフィン及び炭化水素系樹脂、脂肪酸から選ばれる少なくとも1種を熱収縮フィルム100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部添加することによって、耐ブロッキング性が良好となる。
脂肪酸アミドとしては、ステアロアミド、オレイル・アミド、エルシル・アミド、ベヘン・アミド、高級脂肪酸のモノ又はビスアミド、エチレンビス・ステアロアミド、ステアリル・オレイルアミド、N−ステアリル・エルクアミド等があるが、これらは単独或いは2種以上混合して使用できる。パラフィン及び炭化水素系樹脂としてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、パラフィン系合成ワックス、ポリエチレン・ワックス、複合ワックス、モンタン・ワックス、炭化水素系ワックス、シリコーンオイル等があるが、これらは単独或いは2種以上混合して使用できる。
【0041】
脂肪酸としては飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸が挙げられる。すなわち、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸等があるが、これらは単独或いは2種以上混合して使用できる。
本発明の熱収縮フィルムには紫外線吸収剤及び光安定剤としてベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダード・アミン系光安定剤から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤及び光安定剤を熱収縮フィルム100重量部に対して0.05〜3重量部、好ましくは0.05〜2.5重量部、更に好ましくは0.1〜2重量部添加することによって、耐光性が向上する。
【0042】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシ・ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ・ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ・ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ・ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ・ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ・ベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシ・ベンゾフェノン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル酸,n−ヘクサデシルエステル、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタン、1,6−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ヘキサン等がある。
【0043】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチル−フェニル)−5−クロロ・ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)−5−クロロ・ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’,4’,5’,6’−テトラヒドロ・フタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール等がある。
【0044】
ヒンダード・アミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパケート、ビス(1,2,6,6,6,−ペンメチル−4−ピペリジル)セパケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキジフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキジフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアサスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、こはく酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチ)レ)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物が挙げられる。
【0045】
また、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル]イミノ]]、ポリ[6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジル)イミノ]]、2−(3,5−ジ・第三ブチル−4−ヒドロキジベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンダメチル−4−ピペリジル)、テトラキシ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキシ(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4,−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボシ酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物が挙げられる。
【0046】
さらにまた、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンダメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンダメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリシル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−2,2,6,6−テトラメチ−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリシル−メタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリシル−メタクリレート等がある。
【0047】
本発明の熱収縮フィルムには安定剤として2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートを熱収縮フィルム100重量部に対して0.05〜3重量部、更に好ましくは0.1〜2重量部添加することによって、ゲル抑制効果を得ることができる。安定剤が0.05重量部未満ではゲルを抑制する効果がなく、3重量部を超えて添加しても本発明以上のゲル抑制効果に寄与しない。
【0048】
本発明の熱収縮フィルムにはn−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾール、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のフェノール系安定剤の少なくとも1種を(I)と(II)の合計100重量部に対して0.05〜3重量部、トリス−(ノニルフェニル)フォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2−〔〔2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d、f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル〕オキシ〕−N,N−ビス〔2−〔〔2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d、f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン−6−イル〕オキシ〕−エチル〕−エタンアミン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等の有機ホスフェート系、有機ホスファイト系安定剤の少なくとも1種を熱収縮フィルム100重量部に対して0.05〜3重量部添加することができる。
【0049】
本発明の熱収縮フィルムには、目的に応じて種々の重合体及び添加剤を添加することができる。
本発明の熱収縮フィルムには本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物とは異なるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体及び/又はその水添物は、ビニル芳香族炭化水素含有量が60〜95重量%、好ましくは65〜90重量%で、本発明のブロック共重合体水添物と同様の構造を有するものが使用でき、本発明に使用するブロック共重合体又はその水添物100重量部に対して5〜90重量部、好ましくは10〜80重量部配合することにより、耐衝撃性や剛性、伸び等を改善することができる。
【0050】
その他の好適な添加剤としては、クマロン−インデン樹脂、テルペン樹脂、オイル等の軟化剤、可塑剤が挙げられる。又各種の安定剤、顔料、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤等も添加できる。尚、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤としては、例えば脂肪酸アマイド、エチレンビス・ステアロアミド、ソルビタンモノステアレート、脂肪酸アルコールの飽和脂肪酸エステル、ペンタエリストール脂肪酸エステル等、又紫外線吸収剤としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,5−ビス−[5’−t−ブチルベンゾオキサゾリル−(2)]チオフェン等、「プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧」(化学工業社)に記載された化合物が使用できる。これらは、一般的に0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%の範囲で用いられる。
【0051】
本発明の熱収縮フィルムはブロック共重合体又はその水添物を通常のTダイ又は環状ダイからフラット状又はチューブ状に押出成形し、得られた未延伸物を実質的に1軸延伸又は2軸延伸して得るものであるが、該熱収縮フィルムを製造する際のシート押出温度は、溶融張力測定における60m/secの速度時の溶融張力が2.0〜7.5gfとなる温度範囲で製造することが必要である。60m/secの速度における溶融張力は2.0〜7.5gf、好ましくは2.3〜7.3gf、更に好ましくは2.5〜7.0gf、取り分け好ましくは2.7〜6.7gfである。40m/secの速度における溶融張力が2.5〜7gfの範囲にあっては熱収縮フィルムの厚みが均一である。Tダイ又は環状ダイからの押出温度は本発明で規定した溶融張力の範囲であれば特に制限はない。溶融張力はロザンド社の「アドバンスド・キャピラリー・エクストゥルージョン・レオメーター」を用いて、オリフィス径1mm、押出速度10mm/minで測定した値である。本発明の熱収縮フィルムは単層或いは多層フィルムのいづれかであっても、本発明で規定した溶融張力の範囲で製造するものである。
【0052】
本発明の熱収縮フィルムが例えば1軸延伸フィルムの場合、フィルム、シート状の場合はカレンダーロール等で押出方向に、或いはテンター等で押出方向と直交する方向に延伸し、チューブ状の場合はチューブの押出方向又は円周方向に延伸する。2軸延伸の場合、フィルム、シート状の場合には押出フィルム又はシートを金属ロール等で縦方向に延伸した後、テンター等で横方向に延伸し、チューブ状の場合にはチューブの押出方向及びチューブの円周方向、即ちチューブ軸と直角をなす方向にそれぞれ同時に、或いは別々に延伸する。
【0053】
本発明においては、延伸温度60〜110℃、好ましくは80〜100℃で、縦方向及び/又は横方向に延伸倍率1.5〜8倍、好ましくは2〜6倍に延伸するのが好ましい。延伸温度が60℃未満の場合には延伸時に破断を生じて所望の熱収縮性フィルムが得にくく、110℃を超える場合は収縮特性の良好な物が得難い。延伸倍率は用途によって必要とする収縮率に対応するように上記範囲内で選定されるが、延伸倍率が1.5倍未満の場合は熱収縮率が小さく熱収縮包装用として好ましくなく、又8倍を超える延伸倍率は延伸加工工程における安定生産上好ましくない。2軸延伸フィルムの場合、縦方向及び横方向における延伸倍率は同一であっても、異なっていてもよい。1軸延伸又は2軸延伸の熱収縮性フィルムは、次いで必要に応じて60〜105℃、好ましくは80〜95℃で短時間、例えば3〜60秒間、好ましくは10〜40秒間熱処理して室温下における自然収縮を防止する手段を実施することも可能である。
【0054】
このようにして得られた熱収縮フィルムを熱収縮性包装用素材や熱収縮性ラベル用素材として使用するには、延伸方向における65℃の熱収縮率が5〜60%、好ましくは10〜55%、更に好ましくは15〜50%である。熱収縮率がかかる範囲の場合、熱収縮率と自然収縮率のバランスに優れた熱収縮性フィルムが得られる。尚、本発明において65℃の熱収縮率は低温収縮性の尺度であり、1軸延伸又は2軸延伸フィルムを65℃の熱水、シリコーンオイル、グリセリン等の成形品の特性を阻害しない熱媒体中に5分間浸漬したときの成形品の各延伸方向における熱収縮率である。本発明においては、上記熱収縮率の範囲において、熱収縮フィルム自体の自然収縮率が2.5%以下、好ましくは2.0%以下、更に好ましくは1.5%以下であることが推奨される。ここで熱収縮フィルム自体の自然収縮率とは、上記熱収縮率の範囲の熱収縮フィルムを35℃で5日間放置し、後述する式により算出した値である。
【0055】
更に、本発明の1軸延伸または2軸延伸熱収縮フィルムは、延伸方向における引張弾性率が7000〜30000Kg/cm2、好ましくは10000〜25000Kg/cm2であることが熱収縮包装材として必要である。延伸方向における引張弾性率が7000Kg/cm2未満の場合は収縮包装工程においてヘタリを生じ正常な包装ができず好ましくなく、30000Kg/cm2を超えるとフィルムの耐衝撃性が低下するため好ましくない。
本発明の1軸延伸又は2軸延伸熱収縮フィルムを熱収縮性包装材として使用する場合、目的の熱収縮率を達成するために130〜300℃、好ましくは150〜250℃の温度で数秒から数分、好ましくは1〜60秒加熱して熱収縮させることができる。
【0056】
本発明の熱収縮フィルムは、少なくとも2層、好ましくは少なくとも3層構造を有する多層積層体であっても良い。多層積層体としての使用形態は、例えば特公平3−5306号公報に開示されている形態が具体例として挙げられる。本発明の熱収縮フィルムは中間層及び両外層に用いても良い。本発明の熱収縮フィルムを中層とする場合の外層フィルムのビカット軟化温度は中層よりも3〜15℃、好ましくは5〜12℃高いものが良い。ビカット軟化温度は中層よりも3〜15℃外層フィルムからなる多層フィルムは自然収縮性と低温収縮性のバランスに優れる。
【0057】
本発明の熱収縮フィルムを多層フィルムに使用する場合、本発明の熱収縮フィルム層以外の層は特に制限はなく、本発明に使用した以外のブロック共重合体及び/又はその水添物或いは本発明以外のブロック共重合体及び/又はその水添物と前記のビニル芳香族炭化水素系重合体との組成物を組み合わせた多層積層体であっても良い。またその他、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン系重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル・アクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等)アイオノマー樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ABS樹脂、前記のビニル芳香族炭化水素系重合体等より少なくとも1種選ばれた成分が挙げられるが、好ましくは本発明に使用した以外のブロック共重合体及び/又はその水添物或いは本発明に使用した以外のブロック共重合体及び/又はその水添物と前記のビニル芳香族炭化水素系重合体との組成物、前記のビニル芳香族炭化水素系重合体である。
【0058】
本発明において好ましい熱収縮性多層フィルムは、本発明の熱収縮フィルム層を、多層フィルムの少なくとも1つの層とし、延伸方向における80℃の熱収縮率が10〜80%、好ましくは15〜70%、更に好ましくは20〜60%である熱収縮性多層フィルムである。
本発明の熱収縮性多層フィルムは、延伸方向における65℃の熱収縮率が5〜60%、好ましくは10〜55%、更に好ましくは15〜50%であり、延伸方向における引張弾性率が7000〜30000Kg/cm、好ましくは10000〜25000Kg/cmである熱収縮性多層フィルムを得ることもできる。
【0059】
本発明の熱収縮性フィルム及び熱収縮性多層フィルムの厚さは10〜300μm、好ましくは20〜200μm、更に好ましくは30〜100μmで、内層と両表層との厚みの割合は5/95〜45/55、好ましくは10/90〜35/65であることが推奨される。
本発明の熱収縮フィルムは、その特性を生かして種々の用途、例えば生鮮食品、菓子類の包装、衣類、文具等の包装等に利用できる。特に好ましい用途としては、本発明で規定するブロック共重合体の1軸延伸フィルムに文字や図案を印刷した後、プラスチック成形品や金属製品、ガラス容器、磁器等の被包装体表面に熱収縮により密着させて使用する、いわゆる熱収縮性ラベル用素材としての利用が挙げられる。
【0060】
取り分け、本発明の1軸延伸熱収縮フィルムは低温収縮性、剛性及び自然収縮性に優れるため、高温に加熱すると変形を生じる様なプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材の他、熱膨張率や吸水性等が本発明のブロック共重合体とは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いた容器の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
【0061】
尚、本発明の熱収縮フィルムが利用できるプラスチック容器を構成する材質としては、上記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック容器は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
尚、本発明の熱収縮フィルムを熱収縮性ラベル用素材として使用する場合、延伸方向と直交する方向における65℃の熱収縮率は20%未満、好ましくは15%以下である。従って、本発明において熱収縮性ラベル様として1軸延伸するとは、延伸方向における65℃の熱収縮率が5〜60%で延伸方向と直交する方向の熱収縮率が20%未満になる様に延伸処理を施すことを云う。
【実施例】
【0062】
以下に本発明の実施例を説明するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。表1にブロック共重合体又はその水添物、表2にビニル芳香族炭化水素系重合体としてスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体及び汎用ポリスチレン(GPPS)を示した。
(ブロック共重合体又はその水添物A−1〜A−9の調製)
水添前のブロック共重合体はシクロヘキサン溶媒中n−ブチルリチウムを触媒とし、テトラメチルエチレンジアミンをランダム化剤として、表1に示したスチレン含有量(重量%)、MFR(g/10min)を有するブロック共重合体を製造した。スチレン含有量はスチレンとブタジエン(イソプレンが入る場合はイソプレンも含む)の添加量で、分子量とMFRは触媒量で調整した。なお、ブロック共重合体の調製において、モノマーはシクロヘキサンで濃度20重量%に希釈したものを使用した。
また、水添触媒は、窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた水添触媒を使用した。
【0063】
1)ブロック共重合体A−1
攪拌機付きオートクレーブを用い、窒素ガス雰囲気下で1,3−ブタジエン3重量部を含むシクロヘキサン溶液にn−ブチルリチウムを0.056重量部、テトラメチルエチレンジアミンを0.05重量部添加し、70℃で20分間重合した。次にスチレン12重量部と1,3−ブタジエン2重量部を含むシクロヘキサン溶液を15分間連続的に添加して70℃で重合した後、5分間保持する工程を繰り返し5回行った。
次にスチレン27重量部を含むシクロヘキサン溶液を添加して70℃で35分間重合した。次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートをブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加した後、脱溶媒してブロック共重合体水添物を得た。
【0064】
2)ブロック共重合体水添物A−2〜A−6、A−8、A−9
ブロック共重合体水添物A−2〜A−6、A−8、A−9はA−1同様な方法で調製した。
3)ブロック共重合体水添物A−7
ブロック共重合体A−1のn−ブチルリチウムが0.08重量部以外はブロック共重合体A−1と同様な方法で得られたブロック共重合体の溶液に、水添触媒をブロック共重合体100重量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートをブロック共重合体100質量部に対して0.3質量部添加した後、脱溶媒してブロック共重合体水添物を得た。ブロック共重合体水添物A−7の水添率は、水添率が97%になるように水素量で調整した。
【0065】
(脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体の調製)
スチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体B−1及びB−2は撹拌器付き10Lオートクレーブに、スチレンとアクリル酸n−ブチル又はメチルメタアクリレートを表2に示す比率で5kg添加し、同時にエチルベンゼン0.3kgと、MFRを調整するため1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを所定量仕込み、110〜150℃で2〜10時間重合後、ベント押出機で未反応スチレン、アクリル酸n−ブチル、エチルベンゼンを回収して製造した。得られたB−1のMFRは3.0g/10min、B−2のMFR2.6g/10minであった。
【0066】
(測定・評価方法)
実施例及び比較例に記載した測定、評価は以下の方法で行った。
1)スチレン含有量
ブロック共重合体水添物のスチレン含有量は、紫外分光光度計(装置名:UV−2450;島津製作所製)を用いて測定した。
2)数平均分子量
ブロック共重合体水添物の分子量は、GPC装置(米国、ウォーターズ製)を用いて測定した。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、35℃で測定した。重量平均分子量と数平均分子量が既知の市販の標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を使用し、数平均分子量を求めた。
3)水素添加率
ブロック共重合体水添物を用い,核磁気共鳴装置(装置名:DPX−400;ドイツ国、BRUKER社製)で測定した。
4)溶融張力
ロザンド社の「アドバンスド・キャピラリー・エクストゥルージョン・レオメーター」を用いて、オリフィス内径2mmを使用し、押出速度10mm/minで測定した。
5)ビカット軟化温度(VSP)
ブロック共重合体又はその水添物を厚さ3mmに圧縮成形したものを試験片とし、ASTM D−1525に準じて測定(荷重:1Kg、昇温速度:2℃/min)した値である。
【0067】
6)収縮率
65℃収縮率は、延伸フィルムを65℃のシリコーンオイル中に5分間浸漬し、次式により算出した。
熱収縮率(%)=(L−L1)/L×100、
L:収縮前の長さ、L1:収縮後の長さ。
また、熱収縮性多層フィルムの80℃収縮率は、80℃の温水中に10秒間浸漬し、次式により算出した。
7)自然収縮率
80℃で測定した収縮率が40%の延伸フィルムを35℃で5日間放置し、次式により算出した値である。
自然収縮率(%)=(L2−L3)/L2×100、
L2:放置前の長さ、L3:放置後の長さ。
自然収縮率が小さいほど、自然収縮性は優れる。
また、熱収縮性多層フィルムの自然収縮率は、80℃収縮率が30%の熱収縮多層フィルムを35℃で5日間放置し、次式により算出した。
【0068】
8)引張弾性率
JIS K−6732に準拠し、引張速度5mm/minでフィルムの延伸方向について測定した。試験片は幅を12.7mm、標線間を50mmとした。測定温度は23℃で行った。単位はKg/cm2
9)パンクチャー衝撃強度
JISP−8134に準拠して測定した。単位はKg・cm。
10)Haze
延伸前のシート表面に流動パラフィンを塗布し、ASTM D1003に準拠して測定した。
11)ブロッキング性
縦5cm×横5cmの熱収縮性多層フィルム2枚重ねて100g/cmGの加重をかけ、40℃、7日間放置し、フィルムのブロッキング状態を目視判定した。
<判定基準>
○:ブロッキングが認められない。
×:ブロッキングが認められる。
【0069】
12)温水融着性
延伸フィルムを直径約8cmのガラス瓶に巻き付け、70℃温水中に3本俵積
みで5分間放置し、フィルムの融着状態を目視判定した。判定基準は、◎は全く
融着していない、○は僅かに融着しているがすぐ離れる、×は融着してすぐには
離れない。
13)製膜安定性
延伸後のフィルムをダイヤルゲージを用いてフィルムの全幅(ヨコ)方向に等間隔で最低15点、及び機械(タテ)方向に最低15点の合計30点以上の厚みを測定し、その平均値を算出する。次に最大値と最小値の差の1/2の値を先に算出した平均値に対する百分率で表し、これに±の符号を付けて表示した。
○フィルム厚みムラが±20%以内。
×フィルム厚みムラが±20%を超える、或いはフィルム切れが発生する。
【0070】
[実施例1〜6、比較例1〜4]
熱収縮性フィルム性能の測定は、表1に示したブロック共重合体:A−1〜A−9、スチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体:B−1、B−2、汎用ポリスチレン:B−3(エーアンド・エム スチレン株式会社製 A&Mポリスチレン685)の種類と量の組成物を40mm押出機を用いて表3に記載の温度で厚さ0.25mmのシート状に成形し、その後延伸温度を85℃(比較例3は85℃で延伸不可のため、105℃で延伸した)として、テンターを用いて横軸に延伸倍率を5倍に1軸延伸して厚さ約60μmの熱収縮性フィルムを得た。この熱収縮性フィルムのフィルム性能を表3に示した。本発明の熱収縮性フィルムの性能は引張弾性率で表される剛性、80℃収縮率で表される低温収縮性、自然収縮性、パンクチャー衝撃強度で表される耐衝撃性、温水融着性、Hazeで表される透明性に優れ、製膜安定性が良好である。尚、表3に示したシート、フィルム性能は上記の方法で行った。
【0071】
[実施例7]
表4した配合組成物を中層、表裏層とした3層シートをTダイより押出し、縦方向に1.2倍の延伸を行い、厚さ0.25mmのシートに成形した。次いで、テンターにより横方向に5倍延伸して厚さ60μmの熱収縮フィルムを得た。中層と表層・裏層の厚みの比率(%)は15(表層)/70(中層)/15(裏層)であった。得られた3層熱収縮フィルムの性能を表4に示した。尚、紫外線吸収剤として表裏層100重量部に対してアデカスタブLA−32(旭電化工業(株)社製)を0.2重量部、滑剤としてステアロアミドを表裏層の組成物100重量部に対して0.2重量部添加した。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の熱収縮性フィルムは製膜安定性に優れ、透明で剛性、自然収縮性、低温収縮性、温水融着性及び耐衝撃性が良好であることから、フィルムの薄肉化と寸法安定性及び低温収縮性を同時に達成でき、飲料容器包装やキャップシール及び各種ラベル等に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(I)〜成分(III)からなる組成物を延伸してなる熱収縮フィルムにおいて、溶融張力測定における60m/sec速度時の溶融張力が2.0〜7.5gfとなるシート押出温度範囲で製造することを特徴とする熱収縮フィルム。
但し、該組成物の重量比は合計を100重量部とした時、(I)/(II)/(III)が40〜65/40〜65/6〜15重量部であり、かつビカット軟化点が70〜78℃である。
(I)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が85/15〜95/5、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量が3万〜50万、ビカット軟化温度が65〜80℃であることを特徴とするブロック共重合体又はその水添物。
(II)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が65/35〜78/22、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量が3万〜50万、ビカット軟化温度が68〜82℃であることを特徴とするブロック共重合体又はその水添物。
(III)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの重量比が30/70〜50/50、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量が3万〜20万であることを特徴とするブロック共重合体又はその水添物。
【請求項2】
組成物中のビニル芳香族炭化水素含有量が、75〜83重量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の熱収縮フィルム。
【請求項3】
組成物中のイソプレン含有量が、0.5〜10重量%の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の熱収縮フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮フィルムが、延伸方向における65℃の熱収縮率5〜60%、延伸方向における引張弾性率7000〜30000Kg/cmであることを特徴とする熱収縮性フィルム。
【請求項5】
組成物100重量部に対して、下記のa)〜c)から選ばれる少なくとも1種のビニル芳香族炭化水素重合体を0.5〜200重量部添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
a)スチレン系重合体
b)脂肪族不飽和カルボン酸エステル−スチレン共重合体
c)ゴム変性スチレン系重合体
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮フィルム100重量部に対して、脂肪酸アミド、パラフィン炭化水素系樹脂、及び脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の滑剤を0.01〜5重量部添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱収縮フィルム100重量部に対して、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、及び2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾールから選ばれる少なくとも1種の安定剤を0.05〜3重量部添加することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のブロック共重合体水添物100重量部に対して、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びヒンダード・アミン系光安定剤から選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤又は光安定剤を0.05〜3重量部添加することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のブロック共重合体水添物又は組成物。
【請求項9】
請求項8に記載されたブロック共重合体水添物または組成物から得られることを特徴とするシ−ト・フィルムあるいは熱収縮フィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の熱収縮フィルムからなる層を多層フィルムの少なくとも1つの層とし、延伸方向における80℃の熱収縮率が10〜80%であることを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の熱収縮フィルムからなる層を中層として、外層のビカット軟化温度が中層よりも3〜15℃高いことを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項12】
延伸方向における65℃の熱収縮率が5〜60%、延伸方向における引張弾性率が7000〜30000Kg/cmである請求項10又は請求項11に記載の熱収縮性多層フィルム。

【公開番号】特開2006−175799(P2006−175799A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373402(P2004−373402)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】