説明

熱収縮性フィルム、並びに該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、および該成形品を用いた、又は該ラベルを装着した容器

【課題】熱収縮性フィルムの収縮仕上り性を満足させ、ミシン目の耐破袋性に優れると同時にミシン目適性を両立し、耐破断性等の機械的特性と高い層間強度を両立し、および透明性に優れ、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性フィルムを得ることにある。
【解決手段】 ポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、軟質成分(B)を含む樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムであって、前記フィルムの主収縮方向(TD)の引張破断強度が200MPa以上、引張破断伸度が50%以上であることを特徴とする熱収縮性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性フィルム、並びにこの熱収縮性フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、およびこの成形品を用いた、又はこのラベルを装着した容器に関し、より詳しくは、収縮仕上がりに優れ、ミシン目の耐破袋性に優れると同時にミシン目適性を両立し、耐破断性等の機械的特性と高い層間強度を両立し、および透明性に優れ、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性フィルム、並びにこの熱収縮性フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、およびこの成形品を用いた、又はこのラベルを装着した容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ジュース等の清涼飲料、ビール等のアルコール飲料等は、瓶又はペットボトルといった容器に充填された状態で販売されている。その際、他商品との差別化や商品の視認性向上のために、容器の外側に印刷が施された熱収縮性ラベルが装着されている。この熱収縮性ラベルの素材としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、芳香族ポリエステル等が一般的に使用されている。
【0003】
前記熱収縮性ラベル用の用途に対し、室温において剛性であり、低温収縮性を有し、かつ自然収縮性が良好な熱収縮性フィルムとして、ポリエステル系、特に、低結晶性のポリエチレンテレフタレート(PET)やポリ乳酸を基材とするフィルムが主として使用されている。しかしながら、これらのポリエステル系熱収縮フィルムは、PVC系熱収縮性フィルムと比較して、加熱収縮時に収縮斑やしわが発生しやすいという問題がある。また、ポリ乳酸系熱収縮フィルムは、加熱した際、結晶化が進行し十分な熱収縮特性が得られないという問題もあった。
【0004】
前記の問題を解決する手段として、ポリ乳酸系樹脂のL−乳酸とD−乳酸の共重合比を調整したフィルムが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、このフィルムは加熱の際の結晶化は抑制できているものの、急激な収縮により斑、皺、アバタを生じるという問題は十分に解決できていない。また、ポリ乳酸系樹脂の結晶化度を調整し、さらに脂肪族ポリエステル系樹脂をブレンドすること等による収縮仕上がり性の改良が試みられている(特許文献2,3等参照)。しかしながら、現在主流となっているポリスチレン系熱収縮性フィルムと比べると、未だ十分な収縮仕上がり性とは言い難い。
【0005】
さらに、特定の重量平均分子量を有するポリ乳酸系樹脂とポリメタクリル酸エステル樹脂とを配合した延伸フィルムが知られている(特許文献4)。しかしながら、この技術はポリ乳酸系樹脂フィルムの耐熱性、透明性を向上させる目的を主としたものであり、本発明のような熱収縮性フィルムには適用し難い。
【0006】
前記の問題に対し、ポリ乳酸系樹脂とアクリル系樹脂とを配合した熱収縮性フィルムが知られている(特許文献5)。しかしながら、このフィルムは、ポリスチレン系熱収縮フィルムと比べると、未だ十分な収縮仕上り性を有しているとは言い難く、なおかつアクリル系樹脂については、素材自体がもつ脆性のため、耐破断性に対して不十分な点が残っていた。
【0007】
さらにまた、ポリ乳酸系樹脂についても、素材自体がもつ脆性のため、単体にシート状やフィルム状等に成形した場合、十分な強度を得られず、実用に供しづらいという問題を抱えている。この問題に対し、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル(特許文献6参照)、ポリカプロラクトン(特許文献7参照)、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの共重合ポリオレフィン(特許文献8参照)等を含有させる方法が知られている。これらはポリ乳酸系樹脂フィルムの透明性を維持したまま脆性を改良させる目的を主としており、収縮仕上り性に対してはまだ不十分な点が残っていた。
【0008】
一方、ポリ乳酸系樹脂、アクリル系樹脂、およびゴム状成分からなる熱収縮性フィルムが知られている(特許文献9、10)。これらはポリ乳酸の透明性を維持したまま脆性を改良させ、なおかつ収縮仕上り性についても改良させる目的を主としている。しかしながら、これらのフィルムにおいても、透明性や脆性は改良されているが、収縮仕上りに関してはポリスチレン系熱収縮フィルムと比べると、未だ十分とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−119367号公報
【特許文献2】特開2001−011214号公報
【特許文献3】特開2000−280342号公報
【特許文献4】特開2005−036054号公報
【特許文献5】特開2006−316137号公報
【特許文献6】特開平09−169896号公報
【特許文献7】特開平08−300481号公報
【特許文献8】特開平09−151310号公報
【特許文献9】特開2007−161826号公報
【特許文献10】特開2007−176083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、熱収縮性フィルムの収縮仕上り性を満足させ、ミシン目の耐破袋性に優れると同時にミシン目適性を両立し、耐破断性等の機械的特性と高い層間強度を両立し、および透明性に優れ、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性フィルムを得ることにある。
更に、近年の環境配慮型商品を求める観点より樹脂そのものの使用量を抑える目的でフィルムの厚みを薄くする、同時に低コスト化の要求に応える観点からもフィルムを薄くしても同様の性能を有する熱収縮性フィルムを得ることにある。
【0011】
ここで、ミシン目の耐破袋性とミシン目適性について、PETボトル飲料のラベルとして使われる場合を例に挙げてもう少し詳述する。飲料用PETボトルのリサイクルの観点より、ラベルを容易にPETボトルから剥がす為にミシン目が施されている。消費者が飲料を飲み終わった後にミシン目に沿ってラベルを切り離し、PETボトルとラベルを分別する中で、ミシン目に沿って簡便にラベルが切れないと非常に手間取り、かえって分別が不十分になるケースが想定される。よって、環境配慮を求められる今の世情を鑑みるとミシン目に沿ってラベルが切り離せるか否かはラベル用のフィルムに求められる重要な適性といえ、これをミシン目適性と表現する。
一方、ディスプレー効果、アイキャッチ性に代表される様に飲料等の商品の価値を高める為にラベルは重要な役割を成しており、例えば小売店等で消費者が不意に商品を落とした際にラベルが破れることなく形態を維持することが求められる。その中で、先のリサイクル性を高める為に施されたミシン目部分は強度的に非常に弱くなるため、商品の落下時にミシン目部分で簡単に破袋しないことが求められる。これをミシン目の耐破袋性と表現する。
これらより、一見相反すると思われるミシン目適性とミシン目の耐破袋性を両立することが本発明の重要な課題であり、近年のフィルムの薄肉化が求められる中では、より難易度が増している。
【0012】
本発明のもう一つの課題は、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した前記熱収縮性積層フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル、および前記成形品を用いた、又は熱収縮性ラベルを装着した容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、ポリ乳酸に特定の成分を含有させてなる特定のフィルムとすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0014】
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[11]に存する。
[1] ポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、軟質成分(B)を含む樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムであって、前記フィルムの主収縮方向(TD)の引張破断強度が200MPa以上、引張破断伸度が50%以上であることを特徴とする熱収縮性フィルム。
[2] 前記フィルムの主収縮方向(TD)とそれと直行する方向(MD)の引き裂き強さの比がMD/TD=1〜2の範囲であることを特徴とする上記[1]に記載の熱収縮性フィルム。
[3] 主収縮方向と直行する方向の製膜後に30℃の環境下で30日経過後の引張破断伸度が200%以上であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の熱収縮性フィルム。
【0015】
[4] ポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、軟質成分(B)を含む樹脂組成物からなる層と、その他の層の少なくとも2層有する積層フィルムであって、その層間の剥離強度が4N/15mm以上であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
[5] ポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、軟質成分(B)を含む樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する積層フィルムであって、JISK7136に基づくヘーズ値が7%以下であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
[6] 前記の軟質成分(B)がコアシェル型ゴムであることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
【0016】
[7] 前記コアシェル型ゴム(B)が、アクリル酸エステルを含む重合体を有するコア層と、該アクリル酸エステルと相違する化学構造を有するアクリル酸エステルを含む重合体を有するシェル層とから構成される重合体であることを特徴とする、上記[6]に記載の熱収縮性フィルム。
[8] 前記のコアシェル型ゴム(B)の含有量が、ある層を構成する樹脂組成物を100質量%とした場合、3〜30質量%である、上記[7]に記載の熱収縮性フィルム。
【0017】
[9] 上記[1]〜[8]のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを基材として有する成形品。
[10] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを基材として有する熱収縮性ラベル。
[10] 上記[9]に記載の成形品を用いた、又は上記[10]に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱収縮性フィルムの収縮仕上り性を満足させ、ミシン目の耐破袋性に優れると同時にミシン目適性を両立し、耐破断性等の機械的特性と高い層間強度を両立し、および透明性に優れ、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性フィルムを提供することが出来る。
また、近年の環境配慮型商品を求める観点より樹脂そのものの使用量を抑える目的でフィルムの厚みを薄くする、同時に低コスト化の要求に応える観点からもフィルムを薄くしても同様の性能を有する熱収縮性フィルムを提供することが出来る。
【0019】
さらに本発明によれば、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した前記熱収縮性フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベルおよび前記成形品を用いた、又は熱収縮性ラベルを装着した容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る熱収縮性積層フィルム、成形品、熱収縮性ラベル、および容器(以下、それぞれ、「本発明のフィルム」、「本発明の成形品」、「本発明のラベル」、「本発明の容器」という。)について詳細に説明する。
なお、本明細書において、「主成分とする」とは、主成分として含有される樹脂が有する作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。
【0021】
[本発明のフィルム]
本発明のフィルムはポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、軟質成分(B)を含む樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムであって、かつ所定の引張破断強度、引張破断伸度を有する熱収縮性フィルムである。
【0022】
<(I)層>
(A)成分(ポリ乳酸系樹脂)
(A)成分は、本発明における層を構成する樹脂組成物の主成分として含有される。
(A)成分であるポリ乳酸系樹脂とは、D−乳酸若しくはL−乳酸の単独重合体、又はそれらの共重合体をいい、具体的には構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、さらにはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ(DL−乳酸)があり、これらの共重合体の混合樹脂も含まれる。
【0023】
前記L−乳酸とD−乳酸との共重合体は、D−乳酸とL−乳酸との構成比(以下、「D/L比」と略する。)が、1/99〜25/75、又は75/25〜99/1であることが好ましく、3/97〜20/80、又は80/20〜97/3であることがより好ましく、5/95〜15/85、又は85/15〜95/5であることがよりさらに好ましい。
【0024】
上記D/L比が0/100、又は100/0の場合は、非常に高い結晶性を示し、融点が高く、耐熱性および機械的物性に優れる傾向がある。しかしながら、熱収縮性フィルムとして使用する場合は、通常、印刷および溶剤を用いた製袋工程が伴うため、印刷適性および溶剤シール性を向上させるために、構成材料自体の結晶性を適度に下げることが必要となる。また、結晶性が過度に高い場合、延伸時に配向結晶化が進行し、加熱時のフィルム収縮特性が低下する傾向がある。そこで、本発明のフィルムでは、D−乳酸の共重合比を1以上、又は99以下とすることが好ましい。一方、D−乳酸の共重合比を25以下、又は75以上とすると、耐破断性が大幅に低下することを抑えられるため望ましい。
【0025】
本発明においては、(A)成分のD/L比をより容易に調整するために、D−乳酸とL−乳酸との共重合比が異なるポリ乳酸系樹脂をブレンドすることも可能である。この場合、複数のポリ乳酸系樹脂のD/L比を平均した値が前記範囲内に入るようにすればよい。使用用途に合わせて、D−乳酸とL−乳酸との共重合体比の異なるポリ乳酸系樹脂を二種以上ブレンドし、結晶性を調整することにより、耐熱性と熱収縮特性のバランスをとることができる。
【0026】
また、(A)成分は、D−乳酸および/又はL−乳酸と、α−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、および脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも一種との共重合体であってもよい。
【0027】
前記のα−ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸を指す)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシn−酪酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒロドキシ3−メチル酪酸、2−メチル酪酸、2−ヒドロキシカプロラクトン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸、カプロラクトン、ブチルラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0028】
また、前記脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。さらに、前記脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸などが挙げられる。
【0029】
乳酸と、α−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、および脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも一種との共重合体の共重合比率は、乳酸:(α−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、および脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも一種)の質量比で、好ましくは95:5〜10:90、より好ましくは90:10〜20:80、さらに好ましくは80:20〜30:70である。共重合比が上記範囲内であれば、剛性、透明性、耐衝撃性などの物性バランスの良好なフィルムを得ることができる。
【0030】
(A)成分の重合法としては、縮合重合法、開環重合法など、公知の方法をいずれも採用することができる。例えば縮合重合法であれば、D−乳酸、L−乳酸、又は、これらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤などを用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合することにより任意の組成を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。前記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸系樹脂を得ることができる。さらには、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ジエポキシ化合物、酸無水物、酸クロライドなどを使用しても構わない。
【0031】
(A)成分の質量平均分子量は、好ましくは20,000以上、より好ましくは40,000以上、さらに好ましくは60,000以上であり、また、好ましくは400,000以下、より好ましくは350,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。質量平均分子量が20,000以上であれば、適度な樹脂凝集力が得られ、フィルムの強伸度が不足したり、脆化したりすることを抑えることができる。一方、重量(質量)平均分子量が400,000以下であれば、溶融粘度を下げることができ、製造、生産性向上の観点からは好ましい。質量平均分子量は、一般的にGPC(ゲルパーメイションクロマトグラフ)や粘度法により測定することができる。
【0032】
前記(A)成分の市販品としては、例えば、「NatureWorks」(ネイチャーワークス社製)、「LACEA」(三井化学社製)などが挙げられる。
【0033】
(B)成分(軟質成分)
次に、(B)成分である軟質成分について説明する。本発明では軟質成分として、脂肪族ポリエステル重合体、芳香族−脂肪族ポリエステル共重合体、軟質ポリオレフィン、コアシェル型ゴム等が挙げられるが、フィルムとしての透明性、強度を維持する為にコアシェル型ゴムが好ましい。以下、(B)成分がコアシェル型ゴムである場合について説明する。
コアシェル型ゴムは、コア層と、コア層を覆う少なくとも1層以上のシェル層とから構成される重合体である。該シェルの層数は特に限定されるものではなく、単層であっても2層以上であっても構わない。
【0034】
(B)成分のコア層としては、耐衝撃性向上のため、ゴム弾性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系、シリコーン系、スチレン系、ニトリル系、共役ジエン系、ウレタン系、オレフィン系の各重合体などからなるものが挙げられる。中でも、熱収縮性フィルムの要求特性の一つである透明性の観点から、コア層としては、シリコーンゴム、アクリル系ゴム、シリコーン・アクリル複合ゴムが好ましい。
その中でもフィルムの外観の点で、アクリル酸エステルを含む重合体であるのが好ましい。アクリル酸エステルは、アクリル酸成分とアルコール成分から構成されるアクリル酸エステルであればいずれであってもよいが、炭素数1〜15のアルコール成分を有するアクリル酸エステルが好ましい。好ましいアクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等のアクリル酸1級アルキルエステル;アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸トリメチルシリル等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸エステル(a)は1種類を用いても又は2種類以上を用いてもよい。
【0035】
中でも、コア層としては、熱収縮性フィルムの要求特性の一つである耐衝撃性向上のため、ゴム弾性を有するものが好ましい。その具体例としては、アクリル酸エチルやアクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル等を重合させた重合成分、またはこれらの成分の共重合成分等が好ましい。
また、コア層中におけるアクリル酸エステル成分は、耐衝撃性向上のため70%以上であることが好ましい。
【0036】
(B)成分のシェル層、又はシェル層が二層以上である場合はその最外層を形成するシェル層としては、不飽和カルボン酸エステル系単位、グリシジル基含有ビニル系単位、脂肪族ビニル系単位、芳香族ビニル系単位、シアン化ビニル系単位、マレイミド系単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、またはその他のビニル系単位等を含有する重合体が挙げられる。
中でも、不飽和カルボン酸エステル系であるのが好ましく、より好ましくは、上記コア層で好ましいとしたアクリル酸エステルとは相違する化学構造を有するアクリル酸エステルを含む重合体である。尚、アクリル酸エステル(a)と相違する化学構造を有するアクリル酸エステル(b)を少なくとも含んでいればよく、その重合成分としてアクリル酸エステル(a)を更に含んでいてもよい。
【0037】
シェル層中におけるアクリル酸エステルの代表例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸シクロアルキルエステル;メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アラルキルエステル;メタクリル酸グリシジル;メタクリル酸アリル;メタクリル酸トリメチルシリル;メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル等を挙げることができる。特には、ポリ乳酸系樹脂(A)との相溶性の観点よりシェル層は(メタ)アクリル酸メチルを含有する重合体で形成することが好ましい。
【0038】
本発明において、(B)成分がコアシェル型ゴムの場合には、アクリル酸エステルを含む重合体を有するコア層と、該アクリル酸エステルと相違する化学構造を有するアクリル酸エステルを含む重合体を有するコア層を覆う少なくとも1層以上のシェル層とから構成される重合体が特に好ましい。
また、コアシェル型ゴム(B)成分におけるアクリル酸エステルは、耐衝撃性向上のため80%以上(コアとシェルを併せた質量に対して)であることが好ましい。
尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0039】
(B)成分の製造方法としては、特に限定されるものでなく、公知の重合方法、例えば、所望の原料モノマーを(特定比率で含む混合物を)懸濁重合、乳化重合等することによって得られる。
【0040】
(B)成分の粒径は、特に限定されるものではないが、平均粒径で0.01μm以上、好ましくは0.02μm以上であり、さらに好ましくは0.05μm以上であり、100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。平均粒径が0.01μm以上であれば、耐破断性効果を発現するのに十分であるため好ましく、また、100μm以下であれば、最表層を形成する(II)層に添加した場合においても、表面荒れ等による外部ヘーズの増加が少なく、本発明のフィルムに印刷を施し、意匠性を高める場合においても、インキ抜けなどが生じにくく、印刷図柄の外観を損ねるなどの欠点もなく好ましい。
なお、(B)成分の平均粒径は、一般的に動的光散乱法やレーザー回折法により測定することができる。
【0041】
(B)成分を構成するコア層とシェル層の質量比は、特に限定されるものではないが、(B)成分100質量部に対して、コア層が40質量部以上、好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは60質量部以上であり、シェル層が40質量部以下、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。コア層が40質量部以上であれば耐衝撃性効果を保持できるため好ましい。
【0042】
(B)成分の市販品としては、例えば、「カネエース」(カネカ社製)、「メタブレン」(三菱レイヨン社製)、「パラロイド」(ロームアンドハース社製)、「スタフィロイド」(ガンツ化成社製)または「パラフェイス」(クラレ社製)などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
本発明のフィルムの層における(B)成分の含有量は、層を構成する樹脂組成物の質量(100質量%)を基準として、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは、10質量%以上また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。(B)成分の含有量が3質量%以上であれば、層の耐破断性を向上し、本発明が積層構造を有する場合においても、層の耐破断性の向上により積層フィルム全体への破断の伝播を抑制することができ、シュリンクフィルムとしての要求品質に十分な引張破断伸度を得ることができる。また、(B)成分の含有量が30質量%以下であれば、フィルムの硬さを損なうことなく、印刷工程、製袋工程、自動装着工程でのハンドリングが良好となる。
【0044】
その他の添加物
本発明では、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(汎用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブタジエン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体(SEPS)、スチレン−カルボン酸共重合体等)、ポリアミド系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を少なくとも1種を、前記の(I)層を構成する樹脂組成物に添加することができる。
尚、その場合であっても、(A)成分のポリ乳酸系樹脂は、樹脂のみの合計100質量%中、50%以上であるのが、本発明の効果を充分に奏するには、望ましい。
【0045】
本発明において、フィルムの滑り性付与やブロッキング防止のため、本発明の効果を阻害しない範囲で、非相溶性の樹脂をブレンドする手法や、アンチブロッキング剤をさらに添加してもよい。
【0046】
前記アンチブロッキング剤を例示すると、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウムなどの無機粒子、無機酸化物、炭酸塩や、架橋アクリル系、架橋ポリエステル系、架橋ポリスチレン系、シリコーン系等の各有機粒子などが挙げられる。また、多段階で重合せしめた多層構造を形成した有機粒子も用いることができる。中でも、シリカや有機粒子が好ましく用いられる。
【0047】
前記アンチブロッキング剤はフィルム表面を荒らすことにより、滑り性や耐ブロッキング性を発現させ、かつ、透明性や、フィルムの光沢を阻害しないよう、適切な添加量、および種類を選択する必要がある。上記アンチブロッキング剤の添加量は、層を構成する樹脂組成物全体の質量を基準(100質量%)として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.015質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上であり、かつ、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下とする。前記アンチブロッキング剤の添加量が少なすぎる(0.01質量%未満)と、フィルム表面へのアンチブロッキング剤の析出が十分でなく、フィルム表面に凹凸を形成しにくいため、十分な滑り性や耐ブロッキング性を発現できないことがある。また、逆にアンチブロッキング剤が多すぎる(2質量%超)と、フィルム表面の過剰な凹凸が生じやすく、表面荒れによる透明性の阻害や、過剰な滑り性の付与によるフィルムロールの巻きづれなどが生じやすい。
【0048】
前記アンチブロッキング剤の形状は、特に限定されるものではないが、層内での凝集抑制、均一分散の観点、透過する光の乱反射抑制、およびフィルム表面に形成される凹凸の観点から球状のものが好ましく用いられる。前記アンチブロッキング剤の平均粒径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、かつ、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下である。前記アンチブロッキング剤の平均粒径が小さすぎる(0.5μm未満)と、アンチブロッキング剤がフィルム表面へ析出しづらく、また、表面に析出したアンチブロッキング剤においても、滑り性や耐ブロッキング性を発現するに十分な凹凸を付与しづらい。一方、前記アンチブロッキング剤の平均粒径が大きすぎる(10μm超)と、本発明のフィルムに印刷を施し、意匠性を高める場合において、インキ抜けなどが生じやすく、印刷図柄の外観を損ねることがある。前記アンチブロッキング剤の粒径の分布は、特に制限されるものではないが、前記粒径の大小による弊害の関係より、粒径分布が狭いものが好ましい。粒径分布が広くなりすぎると、前述した好ましい粒径の範囲を逸脱するものが含まれる可能性がある。
【0049】
<本発明のフィルムの構造>
本発明のフィルムの構成は、前述したとおり、(A)成分、及び(B)成分、含む樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有すれば、層構成は特に限定されるものではない。積層構成をとる場合も十分想定され、例えば2種3層の積層構成をとる場合は表面/裏面に配する層を(II)層、中心層に配する層を(I)層と積層することにより、(I)層と(II)層の材料配合を種々調整することにより熱収縮性フィルムの特性を調整することができる。
また、本発明のフィルムを積層構成にする場合、各層の積層比は特に制限されるものではなく、上記の各層の材料配合の調整と併せて、各層の積層比を種々調整することにより熱収縮性フィルムの特性を調整することができる。
特には、上記した、好ましい層構成の(II)層/(I)層/(II)層の3層の場合、その厚みの比率は、1:2:1:〜1:10:1の範囲であるのが好ましい。
【0050】
本発明のフィルムの総厚みは特に限定されるものではないが、透明性、収縮加工性、原料コスト等の観点からは薄い方が好ましい。具体的には従来の市場環境では延伸後のフィルムの総厚みが好ましくは70μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下であることが一般的であった。近年の環境意識の高まりを背景に薄肉化が進行し、本発明では40μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下にて実用に供するフィルムを提供するものである。また、フィルムの総厚みの下限は特に限定されないが、印刷工程、製袋工程、自動装着工程でのフィルム/ラベルのハンドリング性を考慮すると、10μm以上であることが好ましい。
【0051】
本発明のフィルムを構成する(各)層には、上述した成分のほか、本発明の効果を阻害しない範囲内で、成形加工性、生産性及び熱収縮性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で、フィルムの耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、核剤、老化防止剤などの添加剤を適宜添加できる。
【0052】
<本発明のフィルムの製造方法>
本発明のフィルムは、公知の方法によって製造することができる。フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という点から平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、複数の押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから共押出し、チルドロールで冷却固化し、縦方向にロール延伸をし、横方向にテンター延伸をし、アニールし、冷却し、巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。また、チューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も適用できる。
押出温度は、180〜230℃であるのが好ましく、より好ましくは、190〜220℃である。押出の温度やせん断の状態を最適化することにより材料の分散状態を制御することも、下記詳述するフィルムの種々の物理的特性・機械的特性を所望の値にするのに有効である。
【0053】
延伸倍率はオーバーラップ用等、二方向に収縮させる用途では、好ましくは、縦方向が2倍〜10倍、横方向が2〜10倍、より好ましくは縦方向が3〜6倍、横方向が3〜6倍程度である。一方、熱収縮性ラベル用等、主として一方向に収縮させる用途では、主収縮方向に相当する方向が、好ましくは2〜10倍、より好ましくは4〜8倍、それと直交する方向が、好ましくは1〜2倍、より好ましくは1.01〜1.5倍の、実質的には一軸延伸の範疇にある倍率比を選定することが望ましい。なお、1倍とは、延伸していな場合を指す。
【0054】
前記一軸延伸の範疇にある範囲内の延伸倍率で延伸した延伸フィルムは、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が大きくなりすぎることはなく、例えば、収縮ラベルとして用いる場合、容器に装着するとき容器の高さ方向にもフィルムが熱収縮する、いわゆる縦引け現象を抑えることができるため好ましい。
【0055】
延伸温度は、用いる樹脂のガラス転移温度や熱収縮性フィルムに要求される特性によって適宜選択できるが、概ね60℃以上、好ましくは70℃以上であり、上限値を考慮して、100℃以下、好ましくは90℃以下の範囲で制御される。次いで、延伸したフィルムは、必要に応じて、自然収縮率の低減や熱収縮特性の改良等を目的として、50〜120℃程度の温度で熱処理や弛緩処理を行った後、分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却され、熱収縮性フィルムとなる。
【0056】
また本発明のフィルムは、必要に応じて帯電防止処理、コロナ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシールによる製袋加工やミシン目加工などを施すことができる。
【0057】
<熱収縮性積層フィルムの物理的・機械的特性>
(主収縮方向の引張破断強度、引張破断伸度)
本発明のフィルムの耐衝撃性は、引張破断強度ならびに引張破断伸度により評価される。主収縮方向の23℃環境下の引張試験において、引張破断強度が200MPa以上、好ましくは220MPa以上、より好ましくは250MPa以上であり、実用性の観点から、350MPa以下であるのが好ましい。
また、引張破断伸度が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であり、実用性の観点から、150%以下であるのが好ましい。
【0058】
引張破断強度ならびに引張破断伸度が上記値であれば、例えば飲料用のラベル用途に用いられた場合に、PETボトルに代表される飲料容器を落下してもミシン目から破袋しにくいという特性を有する。フィルムの厚みが厚い場合には、これらの数値を満たさなくても実用に供するに足る耐ミシン目破袋性を有したが、近年の薄肉化の中においてはこれらの数値を満たさないフィルムは耐ミシン目破袋性が低く、実用に供さない。
本発明において、引張破断強度ならびに引張破断伸度は、例えば、層の材料配合の調整と併せて、製膜工程での押出条件の調整、延伸条件の調整、熱収縮率の調整、積層フィルム構成の場合は積層比をも適宜行うことなどによって、上記値に調整することができる。
ここで言う押出条件の調整とは、一例として押出の温度やせん断の状態を最適化することで材料の分散状態を制御することが挙げられる。また延伸条件の調整とは、一例として延伸温度や延伸倍率を最適化してフィルムの配向状態を制御することが挙げられる。
【0059】
(主収縮方向と直行する方向の引張破断伸度)
フィルムの主収縮方向と直行する方向、特に飲料用のラベル用途ではフィルムの引き取り方向(MD)の引張破断伸度が0℃環境下の引張試験において、製膜直後並びに30℃環境下で30日間経過した後も好ましくは200%以上、より好ましくは220%以上、さらに好ましくは250%以上を有することである。製膜直後での0℃環境下での引張破断伸度が200%以上あれば印刷・製袋などの工程時にフィルムが破断するなどの不具合を生じにくく好ましいのは勿論だが、実際の商品の流通過程においては倉庫内で一時滞留することも十分想定される。そのような過程を経た後に印刷・製袋を行ってもフィルムの破断などの不具合を起こさない為に、30℃環境下で30日間経過させた後でも0℃環境下での引張破断伸度が200%以上を有することが好ましい。
上限については特に限定されないが、過剰に引張破断伸度を付与してもかえってフィルムの剛性を損なう可能性が有るため、500%程度が妥当である。
本発明において、製膜後に30℃の環境下で30日間経過後の引張破断伸度は、例えば、層の材料配合の調整と併せて、製膜工程での押出条件の調整ならびに延伸条件の調整、熱収縮率の調整、積層フィルム構成の場合は積層比をも適宜行うことなどによって、上記値に調整することができる。
【0060】
(引き裂き強さのMD/TD比率)
本発明のフィルムを飲料用PETボトルのラベルに用いる場合、PETボトルのリサイクル性を高める為に設けられているミシン目に沿って、ラベルが切れることが求められる。その際、JISK7128−3(旧:直角法,C法)引き裂き強さのフィルムの引き取り方向(MD)、主収縮方向(TD)の比:MD/TDが1〜2の範囲に入ることが好ましい。MD<TDとなると、ミシン目に沿って消費者がラベルを切ろうとしてもミシン目から外れてりんごの皮を剥くような状態になりやすく、PETボトルからラベルを剥がすのが非常に手間となる。
本発明において、MDとTDの比は、例えば、層の材料配合の調整と併せて、製膜工程での押出条件の調整ならびに延伸条件の調整、熱収縮率の調整、積層フィルム構成の場合は積層比をも適宜行うことなどによって、上記値に調整することができる。
【0061】
(層間の剥離強度)
本発明において、上記したポリ乳酸系樹脂(A)と軟質成分(B)を含む樹脂組成物からなるフィルムに加えて、更なるフィルムを積層した際の、その層間の剥離強度は、4N/15mm以上であるのが好ましく、実質的に剥離できないことが最も好ましい。
本発明において、層間の剥離強度は、例えば、層の材料配合の調整と併せて、製膜工程での押出条件の調整ならびに延伸条件の調整、熱収縮率の調整、積層フィルム構成の場合は積層比をも適宜行うことなどによって、上記値に調整することができる。
【0062】
(熱収縮率、収縮仕上り性)
本発明のフィルムは、70℃温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が5%以上であることが好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上である。また、80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が20%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは35%以上である。また、上限は、70℃温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が40%以下であるのが好ましく、80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率は70%以下であるのが好ましい。
ここで、「熱収縮率」とは、後述するように、縦方向あるいは横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表したものである。これは、ペットボトルの収縮ラベル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を判断する指標となる。なお、「主収縮方向」とは、縦方向と横方向のうち延伸方向の大きい方を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向である。
【0063】
現在、ペットボトルのラベル装着用途に工業的に最も多く用いられている収縮加工機としては、収縮加工を行う加熱媒体として水蒸気を用いる蒸気シュリンカーと一般に呼ばれているものである。さらに熱収縮性フィルムは被覆対象物への熱の影響などの点からできるだけ低い温度で十分熱収縮することが必要である。しかしながら、温度依存性が高く、温度によって極端に収縮率が異なるフィルムの場合、蒸気シュリンカー内の温度斑に対して収縮挙動の異なる部位が発生し易いため、収縮斑、皺、アバタなどが発生し収縮仕上がり外観が悪くなる傾向にある。これら工業生産性も含めた観点から、70℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が5%以上、80℃の温水中に10秒間浸漬させたときの主収縮方向の熱収縮率が20%以上であれば、収縮加工時間内に十分に被覆対象物に密着でき、かつ斑、皺、アバタが発生せず良好な収縮仕上がり外観を得ることができるため好ましい。また、同温度での収縮率が高すぎても収縮速度が速すぎて皺が発生しやすくなり、蒸気シュリンカーの温度設定が非常に難しくなる。
このことより本発明のフィルムは、70℃温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が5%以上40%以下であることが、また80℃の温水中に10秒間浸漬したときの主収縮方向の熱収縮率が20%以上70%以下であることが好ましい。
熱収縮率を上記値にするには、本発明に規定される組成を有するフィルムとすることが必要であるが、さらに、この値は、延伸温度および延伸倍率により適宜調整することができる。
【0064】
一方で、主収縮方向と垂直な方向の収縮率を低く抑えることによって、より優れた収縮仕上がり性を得ることができる。本発明のフィルムが熱収縮性ラベルとして用いられる場合、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率は、80℃の温水中で10秒間浸漬したときは5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
【0065】
主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が5%以下のフィルムであれば、収縮後の主収縮方向と直交する方向の寸法自体が短くなったり、収縮後の印刷柄や文字の歪み等が生じやすかったり、角型ボトルの場合においては縦ひけ等のトラブルが発生し難く、好ましい。なお、この場合の熱収縮率の下限は0%である。上記熱収縮率の値もまた、前記主収縮方向の熱収縮率と同様に調整しうる。
【0066】
(透明性)
本発明のフィルムの透明性は、例えば、厚さ40μmのフィルムをJIS K7136にて測定した場合、ヘーズ値は7%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。ヘーズ値が7%以下であれば、フィルムの透明性が得られ、ディスプレー効果を奏することができる。
また、本発明のフィルムは、種々ロス等により生じる再生原料を添加した場合、厚さ40μmのフィルムをJIS K7136にて測定したときのヘーズ値は7%以下、好ましくは6%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。
【0067】
[本発明の成形品、本発明の熱収縮性ラベルおよび本発明の容器]
本発明は、前記熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品(本発明の成形品)に関し、また本発明は、前記熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル(本発明のラベル)に関し、さらに本発明は、前記成形品を用いた、又は前記熱収縮性ラベルを装着した容器(本発明の容器)に関する。
【0068】
本発明のフィルムは、被包装物によってフラット状から円筒状等に加工し包装に供される。ペットボトル等の円筒状の容器で印刷を要する場合、まずロールに巻き取られた広幅のフラットフィルムの一面に必要な画像を印刷し、そしてこれを必要な幅にカットしつつ印刷面が内側になるように折り畳んでセンターシールして円筒状とすれば良い。この場合、シール部の形状はいわゆる封筒貼りとなる。
【0069】
前記のセンターシール方法としては、有機溶剤による接着方法、ヒートシールによる方法、接着剤による方法、インパルスシーラーによる方法が考えられる。この中でも、生産性、見栄えの観点から有機溶剤による接着方法が好適に使用される。
【0070】
本発明のフィルムは、フィルムの熱収縮特性、収縮仕がり性、透明性等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層その他機能層を形成することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品の基材として用いることができる。そして、得られる成形品は、容器等として使用できる。
【0071】
また、本発明のフィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用又は食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用の熱収縮性ラベルの基材として用いることができる。この場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗に装着されたラベルとなる。そして、そのラベルを装置した食品容器は、容器として使用することができる。
なお、前記の成形品および容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
【0072】
本発明のフィルムは、優れた低温収縮性、収縮仕上り性を有するため、高温に加熱すると変形を生じるようなプラスチック成形品に用いられる熱収縮性ラベル素材のほか、熱膨張率や吸水性等が本発明の熱収縮性フィルムとは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いた包装体(容器)の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
【0073】
プラスチック包装体を構成する材質としては、前記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS)、(メタ)アクリル酸−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック包装体は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
【実施例】
【0074】
以下に本発明について実施例を用いて例示説明する。なお、以下の実施例により本発明の内容が限定されるものではない。
実施例では、積層フィルムの引き取り方向をMD、主収縮方向TDと記載する。
【0075】
<測定方法>
(1)主収縮方向(TD)の引張破断強度、引張破断伸度
得られた熱収縮性フィルムを主収縮方向(TD)に120mm、フィルムの引き取り方向(MD)に15mmの大きさに切り出し、JIS K7127に準拠し、引張速度200mm/minで、雰囲気温度23℃におけるフィルムの主収縮方向(TD)の引張破断強度、伸度を測定し、5回の測定値の平均値を測定し、下記基準に従い評価した。
◎:引張破断強度が220MPa以上、引張破断伸度が60%以上の場合
○:引張破断強度が200MPa以上、引張破断伸度が50%以上の場合
×:引張破断強度が200MPa未満、引張破断伸度が50%未満の場合
【0076】
(2)引き取り方向(MD)の引張破断伸度
得られた熱収縮性フィルムの製膜直後のフィルム、及び30℃環境下で30日間経過させたフィルムを引き取り方向(MD)に120mm、フィルムの主収縮方向(TD)に15mmの大きさに切り出し、JIS K7127に準拠し、引張速度100mm/minで、雰囲気温度0℃におけるフィルムの引き取り方向(MD)の引張破断伸度を測定し、10回の測定値の平均値を測定し、下記基準に従い評価した。
◎:製膜直後、30℃30日経過後の引張破断伸度が300%以上の場合
○:製膜直後、30℃30日経過後の引張破断伸度が200%以上の場合
×:製膜直後、30℃30日経過後の引張破断伸度が200%未満の場合
【0077】
(3)引き裂き強さ比
JIS K7128−3に基づき、フィルムの流れ方向(MD)、主収縮方向(TD)の引き裂き強さを各々6回測定し、それらの平均値を求め、そのMD/TDの比率を算出した。
【0078】
(4)耐ミシン目破袋性
得られたフィルムを多色印刷機で8色の印刷を施し、MD100m×TD235mmでスリットし、TDに10mm分重なるように折り、重なった部分をメチルエチルケトンで溶剤シールし、円筒状とする。その際に、シール部の両側にMDに沿って、穴部0.5mm、ブリッジ部2.5mmのミシン目を設ける。次いで、この円筒状のフィルムをMD145mmで切断し、500mlの多面体ボトルにボトルの下面までかぶせて耐ミシン目破袋性評価用サンプルを作製した。評価用サンプルは蒸気加熱方式の長さ3m(3ゾーン構成)の収縮トンネル中を回転させずに5秒間で通過させ、ミシン目が直径0.5mmの円形状となる条件を設定した。
蒸気を噴射するトンネル内のノズル位置: 1 ゾーン/ フィルム下部、2 ゾーン前半/ フィルム中央部、2 ゾーン後半/ フィルム全体、3 ゾーン/ フィルム全体
温度調整: ノズルに通じる蒸気配管のバルブ開閉により蒸気量を調整して行う。
各ゾーンの温度はフィルムによりことなるが、1ゾーン:70℃〜80℃、2ゾーン:80℃〜90℃、3ゾーン:80℃〜90℃を目安に調整した。
この評価用ボトルを10本用意し、5℃の環境下で20時間保冷した後取り出して、40cmの高さからコンクリート面に自由落下させて、ミシン目から破袋するまでの落下回数を計測し、10本の平均値を算出した。
ミシン目が破袋するまでの落下回数が平均4回以上あれば、実用上の不具合は無いと考えられる。
【0079】
(5)ミシン目適性
得られたフィルムをMD100m×TD235mmでスリットし、TDに10mm分重なるように折り、重なった部分をメチルエチルケトンで溶剤シールし、円筒状とする。その際に、シール部の両側にMDに沿って、穴部0.5mm、ブリッジ部2.5mmのミシン目を設ける。次いで、この円筒状のフィルムをMD165mmで切断し、500mlの多面体ボトルにボトルの下面までかぶせてミシン目適性評価用サンプルを作製した。評価用サンプルは蒸気加熱方式の長さ3m(3ゾーン構成)の収縮トンネル中を回転させずに5秒間で通過させ、ミシン目が直径0.5mmの円形状となる条件を設定した。
この評価用ボトルを10本用意し、収縮したフィルムをミシン目に沿って切りながら剥がすことが出来るかどうかを以下の基準に沿って評価した。
蒸気を噴射するトンネル内のノズル位置: 1 ゾーン/ フィルム下部、2 ゾーン前半/ フィルム中央部、2 ゾーン後半/ フィルム全体、3 ゾーン/ フィルム全体
温度調整: ノズルに通じる蒸気配管のバルブ開閉により蒸気量を調整して行う。
各ゾーンの温度はフィルムによりことなるが、1ゾーン:70℃〜80℃、2ゾーン:80℃〜90℃、3ゾーン:80℃〜90℃を目安に調整した。
下記基準で評価した。
○:10本中、ミシン目に沿って切れないフィルムが無い
×:10本中、ミシン目に沿って切れずボトルの周方向に切れてしまうものが2本以上ある。
【0080】
(6)ヘーズ値
得られたフィルムの透明性を評価するため、JIS K7136にてヘーズ値を測定した。
◎:ヘーズ値が5%以下の場合
○:ヘーズ値が5%を超え、かつ、7%以下の場合
×:ヘーズ値が7%を超える場合
【0081】
(7)層間剥離強度
積層フィルムの端面を表層と、中心層・裏層との2層に分離し、フィルムの主収縮方向(TD)に15mm、フィルムの引き取り方向(MD)に150mmの大きさに切り出し、引張速度50mm/min.で23℃環境下におけるフィルムの主収縮方向(TD)の層間剥離強度を測定し、3回の測定値の平均値を測定した。
◎:層間剥離強度が高く、実質剥離できない
○:層間剥離強度が4N/15nmm以上
×:層間剥離強度が4N/15mm未満
【0082】
(8)テープ剥離試験
得られたフィルムの引き取り方向(MD)に沿ってニチバン製の18mm幅の透明粘着テープを貼り付け、馬簾状の冶具を用いてテープとフィルムを密着させた後、粘着テープを瞬時に剥がした際のフィルムの状態を評価した。
○:粘着テープを剥がすと、剥がす前の状態を保ちフィルムに剥離が生じない場合
×:粘着テープを剥がすと、フィルム内で剥離が発生する場合
【0083】
(9)収縮率
得られたフィルムを縦40mm、横200mmの大きさに切り取り、70℃、並びに80℃の温水バスに10秒間それぞれ浸漬し、収縮量を測定した。熱収縮率は、主収縮方向(TD)について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で計測した。
【0084】
また、各実施例、比較例で使用した原材料は、下記の通りである。
(A)成分(ポリ乳酸系樹脂)
・Nature WorksLLC社製、商品名:NatureWorks4043D、D体/L体量=4.25/95.75、「PLA1」と略する。
・Nature WorksLLC社製、商品名:NatureWorks4060D、D体/L体量=12/88、「PLA2」と略する。
【0085】
(B)成分(軟質成分)
・カネカ社製、商品名:カネエースFM−40、コア層:アクリル酸ブチル重合体、シェル層: メタクリル酸メチル重合体(コア層67質量%、コア層中のアクリル系重合体含有量100質量%)、屈折率1.44、「コアシェルゴム1」と略する。
・三菱レイヨン社製、商品名:メタブレンS2006、コア層:シリコーン/ アクリル重合体、シェル層: メタクリル酸メチル重合体(コア層71質量%、コア層中のアクリル系重合体含有量63質量%)、屈折率1.44、「コアシェルゴム2」と略する。
・LANXESS社製、商品名:Levapren700HV、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVAと称する)「EVA1」と略する。
【0086】
(C)成分(ポリオレフィン系樹脂)
・ダウケミカル社製、商品名:バーシファイ2400、ポリプロピレン−エチレンランダム共重合体、「PO」と略する。
【0087】
(D)成分(相溶化剤)
・日油社製、商品名:モディパーA5200[(エチレン−アクリル酸エチル)−メタクリル酸メチルグラフト共重合体「相溶化剤」と略する。
【0088】
実施例1〜5、比較例1〜6
(A)層および(B)層を含む2種3層の積層フィルムを製造するために、各原材料をそれぞれ表1に示す配合にて混合した後、2台の2軸押出機および2種3層マルチマニホールド口金により、(B)層/(A)層/(B)層の積層共押出が可能な設備において、各押出機設定温度200〜220℃で溶融混合後、各層の厚み比が、(B)層/(A)層/(B)層=1/6/1となるよう共押出し、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて未延伸積層シートを得た。次いで、このシートをフィルムテンターを用いて、延伸温度75℃、TD延伸倍率5倍にて、厚さ25〜45μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0089】
【表1】

【0090】
実施例1〜5で得られたフィルムは主収縮方向(TD)の引張破断強度、引張破断伸度共に高い値を示し、引き裂き強さのMD/TD比も好ましい範囲を維持し、ミシン目の耐破袋性とミシン目適性を両立している。また、30日経過後の引き取り方向(MD)の破断伸度が高い値を示し、層間剥離強度も高い値を示しており、さらには透明性も良好な値をしめしており、フィルムとして求められる要求品質を満たす結果を得た。
一方、比較例1〜6で得られたフィルムは引き裂き強さのMD/TD比が一定範囲に入る為にミシン目適性は良好であるが、主収縮方向(TD)の引張破断強度、破断伸度が低い為にミシン目の耐破袋性に劣る。また、比較例4のフィルムは軟質成分としてEVAを用いており、30日経過後の破断伸度が大きく低下しているため倉庫等で保管された後で印刷工程、製袋工程、自動装着工程を経る際にフィルム/ラベルが破断する懸念が有る。
特に、比較例1,3のフィルムは、主収縮方向(TD)の引張破断強度、破断伸度が不十分な為に厚みが薄くなった場合にミシン目の耐破袋性が不十分となる懸念がある。
【0091】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱収縮性フィルム、該フィルムを用いた成形品および熱収縮性ラベル、並びに、該成形品およびラベルを装着してなる容器もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の熱収縮性フィルムは、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、軟質成分(B)を含む樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムであって、前記フィルムの主収縮方向(TD)の引張破断強度が200MPa以上、引張破断伸度が50%以上であることを特徴とする熱収縮性フィルム。
【請求項2】
前記フィルムの主収縮方向(TD)とそれと直行する方向(MD)の引き裂き強さの比がMD/TD=1〜2の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項3】
主収縮方向と直行する方向の製膜後に30℃の環境下で30日経過後の引張破断伸度が200%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項4】
ポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、軟質成分(B)を含む樹脂組成物からなる層と、その他の層の少なくとも2層有する積層フィルムであって、その層間の剥離強度が4N/15mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
【請求項5】
ポリ乳酸系樹脂(A)を主成分とし、軟質成分(B)を含む樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する積層フィルムであって、JISK7136に基づくヘーズ値が7%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
【請求項6】
前記の軟質成分(B)がコアシェル型ゴムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性フィルム。
【請求項7】
前記コアシェル型ゴム(B)が、アクリル酸エステルを含む重合体を有するコア層と、該アクリル酸エステルと相違する化学構造を有するアクリル酸エステルを含む重合体を有するシェル層とから構成される重合体であることを特徴とする、請求項6に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項8】
前記のコアシェル型ゴム(B)の含有量が、ある層を構成する樹脂組成物を100質量%とした場合、3〜30質量%である、請求項7に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを基材として有する成形品。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の熱収縮性フィルムを基材として有する熱収縮性ラベル。
【請求項11】
請求項9に記載の成形品を用いた、又は請求項10に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。

【公開番号】特開2012−7051(P2012−7051A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143190(P2010−143190)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】