説明

熱収縮性フィルム用ホットメルト粘着剤

【課題】本発明は、熱可塑型粘着剤でありながら、熱収縮フィルムが加熱収縮する温度でも粘着剤層が流動せず、熱収縮後にも包装材に皺が入りにくく、衛生性良好であり、紫外線光源等の余分な生産設備を要さずに包装材を生産可能できる熱収縮性フィルム用ホットメルト粘着剤の提供を目的とする。
【解決手段】エラストマー10〜20重量%と、粘着付与剤25〜40重量%と、可塑剤25〜40重量%と、軟化点が125℃以上165℃以下のポリプロピレンワックス15〜35重量%とを含む熱収縮性フィルム用ホットメルト接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の包装に使用する熱収縮性フィルム用ホットメルト粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリエチレンテレフタレートボトル(以下、PETボトルという)などの飲料容器で、意匠性向上を目的としてさまざまな形状の容器が使用されており、プラスチックフィルムのラベルが使用されている。また乾電池単体のラベル、さらには、乾電池、健康ドリンク剤、その他飲料容器等で複数の物品を一括して包装する、いわゆるマルチパックに包装材が使用されている。また、異物混入防止を目的として医薬品容器や飲料容器の蓋を覆うように包装材が使用されている。
【0003】
上述のようなラベルを含めた包装材は、多様な形状の物品を包装するために熱収縮フィルムが包装材として使用されている。この熱収縮フィルムには熱硬化型の接着剤や粘着剤が使用されていたが、市場からは、溶剤不使用および二酸化炭素の排出を減らす等の環境対応、さらにはコストダウンの要求がされていた。そのため一般的なラベル用途では、前記要求を満たしているホットメルト接着剤や粘着剤が検討されていた。しかし熱収縮フィルムに、熱可塑型のホットメルト粘着剤を塗工した粘着剤層付き包装材は、物品に当該包装材を装着したのち収縮のために加熱したとき、粘着剤層が軟化して流動してしまうため、物品を粘着剤が汚染する場合や、物品から包装材が外れる問題があった。
【0004】
そこで、ホットメルト接着剤を紫外線硬化型にすることで、熱収縮のために包装材を加熱するときにも粘着剤層を流動させない方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−145498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の紫外線硬化型ホットメルト接着剤は、熱収縮フィルムの熱収縮と、粘着剤層の硬化収縮が合わず、包装材に皺が入る問題があった。また包装材に印刷層が形成されている場合、紫外線が粘着剤層まで到達せず硬化が不十分になる問題があった。また、紫外線硬化型ホットメルト接着剤は、原料に紫外線硬化樹脂、光重合開始剤が必要であるため食品関係の物品を包装材として衛生的に問題があった。また、UV硬化型は、硬化に紫外線光源が必要であり、生産設備を新設する必要があるなど費用がかかる問題があった。
【0007】
本発明は、熱可塑型粘着剤でありながら、熱収縮フィルムが加熱収縮する温度でも粘着剤層が流動せず、熱収縮後にも包装材に皺が入りにくく、衛生性が良好であり、紫外線光源等の余分な生産設備を要さずに包装材を生産可能できる熱収縮性フィルム用ホットメルト粘着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軟化点が125℃以上165℃以下のポリプロピレンワックス15〜35重量%と、エラストマーと、粘着付与剤と、可塑剤25〜40重量%を含む構成の熱収縮性フィルム用ホットメルト粘着剤である。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の本発明によると、特定のポリプロピレンワックスを含むことによりホットメルト粘着剤を加熱溶融させて、塗工するとき、すなわちホットメルト粘着剤の温度が高温から低温へ低下するときには、ホットメルト粘着剤の粘度が低い。そして、粘着剤層が形成された熱収縮性フィルムを収縮させるために加熱するとき、すなわちホットメルト粘着剤の温度が低温から高温へ上昇するときには、当該粘着剤層が流動しないため当該フィルムが外れたり、ズレが生じないという効果が得られる。また、本発明は熱可塑型ホットメルト粘着剤であるため、紫外線硬化型ホットメルト粘着剤が含む光重合開始剤およびアクリロイル基のような多官能モノマー等を含まずため、取り扱いに際して、作業者に皮膚のかぶれ等が生じにくいため衛生性に優れる。
【0010】
本発明により、熱可塑型でありながら、熱収縮フィルムが加熱収縮する温度でも粘着剤層が流動せず、熱収縮後にも包装材に皺が入りにくく、衛生性も良好であり、紫外線光源等の余分な生産設備を要さずに包装材を生産可能できる熱収縮性フィルム用ホットメルト粘着剤の提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】熱収縮性フィルム用ホットメルト粘着剤の粘度温度曲線
【図2】包装材の1例
【図3】包装材の1例
【図4】円筒状包装材の1例
【図5】円筒状包装材を使用した包装材付物品の製造方法の模式図
【図6】図2の包装材を使用した包装材付物品の製造方法の模式図
【図7】図3の包装材を使用した包装材付物品の製造方法の模式図
【図8】包装材を物品に装着した模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の熱収縮性フィルム用ホットメルト粘着剤は、エラストマーと、粘着付与剤と、
可塑剤と、軟化点が125℃以上165℃以下のポリプロピレンワックス15〜35重量%を含むことが好ましい。
【0013】
エラストマーは、ホットメルト粘着剤に凝集力を付与するために使用される。そして粘着剤がホットメルト型であるため、熱可塑性のエラストマーが好ましい。このエラストマーは、加熱溶融性と適度な凝縮力を有することが好ましく、例えばオレフィン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ナイロン系エラストマーエラストマー、アクリル系、またはスチレン系ポリマー等が好ましい。これらの中でも、粘着力と凝集力のバランスの点で、スチレン系エラストマーがより好ましい。
【0014】
スチレン系エラストマーは、一般的にポリスチレンブロックとゴム中間ブロックとを有する。そして、ポリスチレンブロックは、ハードセグメントとして物理的架橋(ドメイン)を形成して橋掛け点となり、ゴム中間ブロックは、ソフトセグメントとしてゴム弾性的働きをする。また、ソフトセグメントにはポリブタジエン(B)、ポリイソプレン(I)及びポリオレフィンエラストマー(エチレン・プロピレン、EP)があり、ハードセグメントのポリスチレン(S)との配列の様式によって、直鎖状(リニアタイプ)及び放射状(ラジカルタイプ)とに分かれる。本発明では、スチレン/ブタジエンブロック共重合体(S−B、ジブロック)、(S−B−S、トリブロック)、スチレン/イソプレンブロック共重合体(S−I,ジブロック),(S−I−S、トリブロック)およびスチレン/ブタジエン−イソプレンブロック共重合体(S−B・I、ジブロック)、(S−B/I−B、トリブロック)ならびにこれらブロック共重合体の水添物、例えば、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(SBS)の水添物、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体の水添物(SEPS)、スチレン/水添ポリ(イソプレン/ブタジエン)/スチレン(SEEPS)、並びに、カルボン酸変性した上記記載のスチレン系エラストマー、並びに、スチレンブロックの中のスチレンのほかにスチレンとα―メチルスチレンなどの芳香族系ビニル化合物の共重合体が挙げられる。これらの中でも、スチレンーエチレン・ブチレンースチレンブロックポリマー共重合体(SEBS)が熱安定性(熱分解し難い)観点からより好ましい。
【0015】
エラストマーは、溶融粘度が1Pa・s以上10Pa・s以下であることが好ましい。エラストマーの溶融粘度が1Pa・s以上になることで、フィルムの熱収縮温度でも粘着剤層が軟化しにくくなることで、物品からフィルムが外れにくくなる。一方、エラストマーの溶融粘度が10Pa・s以下になることで、ホットメルト粘着剤を塗工するときの粘度が適切になり粘着剤層(以下、粘着部ともいう)が形成しやすくなる。なお、本発明で溶融粘度とは、トルエンにエラストマーを25重量%溶解した溶液の、25℃におけるB型粘度計での測定粘度である。
【0016】
エラストマーは、ホットメルト粘着剤100重量%中に、10重量%以上25重量%以下含むことが好ましく、15重量%以上20重量%以下がより好ましい。エラストマーの量が10重量%以上になることで、凝集力と粘着力のバランスを取りやすくなり、熱収縮特性がより向上する。一方、エラストマーの量が25重量%以下になることで、ホットメルト粘着剤を塗工するときの粘度がより適切になることで粘着剤層が形成しやすくなる。なお、熱収縮特性とは、熱収縮性プラスチックフィルムにホットメルト粘着剤を塗工したラベルを、PETボトルに貼り付け、これを90℃の温水に3秒間浸漬して、当該フィルムを収縮させたときに当該ラベルが、PETボトルから剥離やズレが生じないことをいう。
【0017】
粘着付与剤は、粘着力を向上するために使用する。粘着付与剤としてフェノール樹脂、変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、キシレンフェノール樹脂、キシレン樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油樹脂、水素添加された脂肪族系、脂環族系、芳香族系等の石油樹脂、フェノール−変性石油樹脂、ロジンエステル樹脂、酸変性ロジン樹脂、水素添加されたロジン樹脂、水素添加されたロジンエステル樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、テルペン樹脂、水素添加されたテルペン樹脂などが好ましい。粘着付与剤は、単独で用いられても、2種類以上が併用されてもよい。
【0018】
粘着付与剤は、ホットメルト粘着剤100重量%中に、25重量%以上40重量%以下含むことが好ましい。粘着付与剤の量が25重量%以上になることで、粘着力がより向上する。一方、粘着付与剤の量が40重量%以下になることで、粘着剤層の凝集力を保ちやすく、フィルムの熱収縮温度でも粘着剤層が軟化しにくくなることで、物品からフィルムが外れにくくなる。
【0019】
可塑剤は、ホットメルト粘着剤を熱収縮性フィルムに使用したときに、当該フィルムを物品に低温雰囲気下で装着する場合にも、適切な粘着力を得る目的で使用する。可塑剤は、前記特性を満たすものであれば良く、液状ポリイソプレン等の液状ゴムエステル系可塑剤、植物性油、液状ポリブテン、またはプロセスオイル等が好ましい。これらの中でも、物性バランスや価格の観点からプロセスオイルが好ましい。
プロセスオイルは、石油精製等において生産されるものであり、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルが挙げられる。そして、プロセスオイルは、前記オイルの混合物であるが、一般に全炭素中に芳香族炭素を30重量%以上含むもの芳香族系プロセスオイル、ナフテン環炭素を35〜45重量%含むものをナフテン系プロセスオイル、パラフィン鎖炭素を50重量%以上含むものをパラフィン系プロセスオイルに分類できる。本発明では、粘着剤層に凝集力を維持しやすいため、においては、手剥がし時の糊残り性の観点から、ナフテン系プロセスオイルとパラフィン系プロセスオイルがより好ましい。
【0020】
可塑剤は、ホットメルト粘着剤100重量%中に、25重量%以上40重量%以下含むことが好ましい。可塑剤を25重量%以上40重量%以下含むことで、低温雰囲気と熱収縮温度との粘着力のバランスを取りやすくなる。
【0021】
ポリプロピレンワックスは、軟化点が125℃以上165℃以下であることが重要である。ポリプロピレンワックスは、ホットメルト粘着剤の温度を上昇させるときの粘度と、温度が低下するときの粘度の差を大きくする目的で使用する。
【0022】
ポリプロピレンワックスの軟化点が125℃以上になることで、熱収縮温度での粘着力と凝集力のバランスを取りやすい。一方、軟化点が165℃以下になることで、粘着剤の粘度が高いため塗工がしにくくなる。なお、軟化点の測定は、JIS K−2207(石油アスファルト) 6.4軟化点試験方法(環球法)に準拠して行った。
【0023】
ポリプロピレンの代表的な合成方法は、純度95%以上のプロピレンガスを触媒(チーグラー・ナッタ触媒、例えばトリエチレンアルミニュウムと三塩化チタン系)を加えた溶剤(n−ヘプタンなど)中に、30〜70℃で吹き込むと重合反応が進行する。重合後、アルコールを加え触媒を溶かして除去すると、重合体は白色の粉末状の形で得られる。重合は常圧ないし8MPaの間で行われ、製品中のイソタクチック重合物の含有量は触媒の種類、濃度、トリエチルアルミニュウムと三塩化チタンとのモル比、反応温度、時間などによって異なる。
【0024】
ポリプロピレンワックスは分子量5,000〜15,000が好ましく、さらに好ましく6,000〜8,000がより好ましい。分子量が5,000以上になることで、フィルムの熱収縮温度でも粘着剤の凝集力を維持しやすい。一方、分子量が15,000以下になることで、粘着剤の塗工適性を維持しやすくなる。なお、分子量は粘度法で測定した。測定方法は、高分子の溶液の粘度ηが、以下のような平均分子量の関数であることを利用した測定法方法で、一般的に平均分子量を粘度平均分子量と言い下記の式1で求められる。
式1 η=kMα
(式中、kおよびαは高分子に固有の定数)
【0025】
ポリプロピレンワックスは、ホットメルト粘着剤100重量%中に、15重量%以上35重量%以下を含むことが好ましい。ホットメルト粘着剤が15重量%以上になることで、熱収縮特性を得やすくなる。一方、ホットメルト粘着剤が30重量%以下になることで塗工がより容易になる。
【0026】
本発明のホットメルト粘着剤は、加熱時の粘度挙動と、冷却時の粘度挙動が異なることを特徴とする。例えば、ホットメルト粘着剤を160℃まで加熱し、その後25℃まで冷却するときに、加熱するとき120℃の粘着剤の粘度が200Pa・s以上50,000Pa・s以下であり、冷却するとき110℃の粘着剤の粘度が0.1Pa・s以上150Pa・s以下であることが好ましい。まず、ホットメルト粘着剤を熱収縮性フィルムに塗工する場合は、粘着剤を150℃以上に加熱し溶融させてから塗工する。この場合は、粘着剤の温度は高温から低温へと冷却されているが、低粘度であるため塗工が容易である。一方、ホットメルト粘着剤を熱収縮性フィルムに塗工した包装材料を物品へ装着し、加熱することでフィルムを収縮させる場合は、粘着剤の温度は低温から高温へ加熱されているが、その粘度は高粘度を維持しているため、粘着剤は、熱で流動しない。すなわち当該包装材料は物品から外れることや、ズレが生じない。
【0027】
上記のホットメルト粘着剤の粘度挙動を図1により説明する。
ホットメルト粘着剤を高温(図1においては、130℃以上)の状態から冷却していくと、1の経路を辿って、2つの変曲点A,Bを示して粘度は上昇する。次いで、ホットメルト粘着剤を低温(図1においては、80℃以下)の状態から加熱していくと、2の経路を辿って、すなわち、冷却時とは異なった経路を辿って、2つの変曲点C,Dを示してホットメルト粘着剤の粘度が低下する。このように、ホットメルト粘着剤は冷却時と加熱時の粘度挙動が異なり、それらの差が大きい。すなわち、ホットメルト粘着剤を塗工するときには、一旦加熱することで粘着剤が溶融し、粘着剤の温度が大幅に低下し、低粘度の状態で熱収縮フィルム上に粘着剤層が形成できる。一方、当該フィルムを熱収縮させるために加熱するときは、粘着剤の温度は上昇しているが、その粘度が低下しにくいことで、当該フィルムを物品の包装材として使用したときにも、包装材が外れないという優れた効果が得られる。なお、上記降温時および昇温時の粘度は、レオメーター(動的粘度粘弾性測定装置 Rheosol−G3000 株式会社 ユービーエム社製)で測定したものである。
【0028】
本発明のホットメルト粘着剤は、例えば、可塑剤とエラストマーを容器に投入し、加熱溶解した後に、粘着付与剤を投入する。これらが全て溶解したのを確認してからポリプロピレンワックスを投入することで製造できる。溶解するときは、プロペラ式の攪拌機を使用することが好ましく、その回転数は200〜500rpmが好ましい。
【0029】
本発明の包装材は、熱収縮性フィルムの左右2つ端部のうち、少なくとも一方の端部に、熱収縮性フィルム用ホットメルト粘着剤を塗工して形成した粘着部を備えたことが好ましい。具体的には、図2に示すように熱可塑性フィルムの一方の端部(3−1)に粘着部が形成されていることが好ましい、また、図3に示すように熱可塑性フィルムの両端(3−1、3−2)に粘着部が形成されることも好ましい。そして、図3の粘着部のうち少なくとも一方の粘着部(3−1)が熱収縮性フィルム用ホットメルト粘着剤から形成されていれば良い。次に、他方の端部の粘着部の形成に使用できる粘着剤は、一般的なホットメルト粘着剤、アクリル系、ゴム系およびウレタン系などの粘着剤から選ばれる溶剤系または水系の粘着剤が好ましい。
【0030】
熱収縮性フィルムは、熱収縮性を有するものであれば良い。本発明ではプラスチックスフィルムが好ましい。プラスチックスフィルムは、延伸ポリエステル系フィルム、延伸ポリスチレン系フィルム、延伸ポリオレフィン系フィルム、ポリ乳酸系フィルム、発泡ポリオレフィン系フィルム、延伸ポリエステル−ポリスチレン共押出しフィルムまたは発泡ポリスチレン系フィルムがより好ましい。また、プラスチックフィルムには、酸化珪素、酸化アルミニウムまたはアルミニウム等の蒸着膜を設けてもよい。また、プラスチックフィルムは、不織布や、フィルムを2つ以上貼り合せた積層フィルムでも良い。
【0031】
前記延伸には、一軸延伸と二軸延伸がある。本発明では一軸延伸が好ましい。そして、一軸延伸フィルムの延伸方向は、縦一軸延伸であっても横一軸延伸であってもよい。
【0032】
熱収縮性フィルムの厚みは、5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。また前記積層フィルムを使用する場合の厚みは5〜300μmが好ましい。
【0033】
熱収縮フィルムの収縮温度は、当該フィルムの収縮温度で決まるため限定されない。一般に70〜140℃が好ましい。
【0034】
熱収縮フィルムの収縮率は、5〜85%が好ましい。当該フィルムが前記範囲に収縮することで、物品を包装しやすくなる。なお、本発明における熱収縮率とは、100℃の温水に浸漬したときの熱収縮率であって、延伸方向の熱収縮率が下記式2に従うものとする。従って、縦一軸延伸フィルムの場合には、収縮方向は、フィルム流れ方向であるため、流れ方向に対する熱収縮率が5〜85%であり、横一軸延伸フィルムの場合はフィルム幅方向に収縮するため、フィルム幅方向に対する熱収縮率が5〜85%となる。なお、二軸延伸フィルムの場合には、いずれかの延伸方法に対して熱収縮率が上記範囲内であることが好ましい。
式2 熱収縮率(%)=(加熱前の寸法−加熱後の寸法)/(加熱前の寸法)×100
【0035】
また、熱収縮性フィルムには、必要に応じて、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤等の各種添加剤を添加してもよい。また、基材フィルム層の表面には、印刷性を向上させるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理などの慣用の表面処理を施してもよい。
【0036】
ホットメルト粘着剤を熱収縮フィルムに塗工して粘着部を形成するためには、熱収縮性フィルムに直接塗工する方法、ホットメルト粘着剤を剥離シートに塗工したものを、熱収縮性フィルムに転写する方法(以下、転写塗工ともいう)が好ましい。
【0037】
直接塗工する方法としては、スリット塗工、カーテンスプレー、スパイラルスプレー、ドットまたはビード方式による塗工が好ましく、スリット塗工がより好ましい。
【0038】
転写塗工する方法としては、ロール塗工、スリット塗工が好ましい。具体的には、例えば、ハンドアプリケーターを用いてホットメルト粘着剤を剥離シートに塗工した後、形成した粘着部を熱収縮性フィルムに転写できる。
【0039】
ホットメルト粘着剤は、130〜200℃に加熱し、溶融させて塗工することが好ましい。そして、塗工温度は、90〜150℃が好ましく、110〜140℃がより好ましい。塗工温度が90℃未満の場合ホットメルト粘着剤の粘度が高く安定に得することが難しい。一方、150℃以上の場合、塗工時熱収縮フィルムが収縮してしまう。
【0040】
粘着部の厚みは10〜200μmが好ましい。またPETボトルを包装する場合は、10〜200g/m2がより好ましい。
【0041】
また、粘着部の幅は、1〜100mmが好ましく、3〜100mmが好ましい。なお、粘着部の幅とは、粘着剤層の、包装材を物品に巻きつける方向における長さである。
【0042】
本発明の包装材は、物品を包装して使用することが好ましい。当該包装の態様は、物品全体を包装することができる。また、物品の一部、例えば飲料ボトルのキャップ部分を包装するように、物品の一部を包装することも好ましい。また、多数の物品をまとめて包装する、いわゆるマルチパックとして使用することも好ましい。また包装材は、物品全体を包装することができる。また物品の一部、例えば飲料ボトルのキャップ部分を包装することもできる。
【0043】
本発明の包装材は、物品に装着し、加熱することで、包装材付き物品を製造できる。すなわち、物品の外周に包装材を装着する工程、次いで、加熱することで熱収縮性フィルムを収縮させる工程を有することが好ましい。
【0044】
次に包装材の物品への装着方法、すなわち包装材付き物品の製造方法を説明するが、あくまで製造方法の例示であり、以下の製造方法には限定されない。
【0045】
製造方法の第一の態様は、物品としてPETボトルを例に挙げて説明する。物品としてPETボトルを例に挙げて説明する。図2に示す包装材を使用する。粘着部(3−1)を包装材の他方の端部に重ねることで図4に示す円筒状包装材を得ることができる。次いで、図5に示すようにPETボトルの外周(胴部)に円筒状包装材を装着する。さらに、包装材装着部分を加熱することで熱収縮性フィルムを収縮させる工程行うことができる。
【0046】
製造方法の第二の態様は、物品としてPETボトルを例に挙げて説明する。図2に示す包装材を使用する。図6に示すように包装材の粘着部が形成されていない端部をPETボトルの外周(胴部)に押し当てる。次いで、当該端部は押し当てつつPETボトルの胴部に包装材を巻きつけて粘着部(3−1)が当該包装材の他方の端部の上に重なるように貼り付けることで図8に示す通り包装材を装着する工程を行なう。さらに、包装材装着部分を加熱することで熱収縮性フィルムを収縮させる工程(2−3)行うことが好ましい。
【0047】
製造方法の第三の態様は、物品としてPETボトルを例に挙げて説明する。図3に示す包装材を使用する。まず、図7に示すようにPETボトルの外周(胴部)に粘着部(3−2)を貼り付ける。次いで当該包装材を胴部に巻きつけて粘着部(3−1)が当該包装材の他方の端部の上に重なるように貼り付けることで図8に示す通り包装材を装着する工程を行なう。そして、粘着部(3−1)がPETボトルの胴部に直接ふれないことが好ましい。さらに、包装材装着部分を加熱することで熱収縮性フィルムを収縮させる工程行う。
【0048】
上記の熱収縮工程は、蒸気、熱風または温水等の加熱により行なうことができる。当該加熱温度は、80〜110℃が好ましく、80〜95℃がより好ましい。
【0049】
本発明において物品は、例えば、PETなどのプラスチックボトル、ガラス瓶、缶容器、ヨーグルトやプリン等の包装カップ、乾電池、CDやDVD等のメディアやそれが入ったプラスチック等のケース、瓶、容器の頭部に覆せたシュリンク・キャップシール、容器包装のシュリンクキャッピング、段ボールの変わりに用いられるシュリンクパック、乾電池電池ラベルなどを挙げることができる。また、またこれらの物品は内容物が充填されていることも好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例を挙げてさらに具体的に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、単に「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」をそれぞれ表す。また、「wt%」は「重量%」の意である。
【0051】
ホットメルト粘着剤に使用した原料は、以下の通りである。
【0052】
<エラストマー>
・クレイトンG1650(クレイトンポリマー社製)(以下、「G1650」と略記する。)、組成:スチレンーエチレン・ブチレンースチレンブロックポリマー(SEBS)、ジブロック量:0%、溶融粘度*1:8Pa・s
・クレイトンG1652(クレイトンポリマー社製)(以下、「G1652」と略記する。)、組成:スチレンーエチレン・ブチレンースチレンブロックポリマー(SEBS)、ジブロック量:0%、溶融粘度*1;1.350Pa・s
・クレイトンG1730(クレイトンポリマー社製)(以下、「G1730」と略記する。)、組成:スチレンー水添ポリブタジエンースチレンブロックポリマー(SEPS)、溶融粘度*1;2.0Pa・s
【0053】
なお、溶融粘度*1は、熱可塑性エラストマー濃度25重量%トルエン溶液の25℃での溶融粘度である。溶融粘度の測定は、B型粘度計RB80L(東機産業社製)を用い、ローターNo.3を用いて適した回転数で行った。
【0054】
<粘着付与剤>
・ハリタックF(ハリマ化成社製)、組成:水添ロジン、酸価:175mgKOH/g、軟化点:72℃
・YSポリスターT30(ヤスハラケミカル社製)(以下、「T30」と略す)組成:テルペンフェノール樹脂、軟化点:30℃
【0055】
<可塑剤>
・ダイアナフレシアN90 (出光興産社製)(以下、「N90」と略記す。)組成:パラフィン系プロセスオイル
【0056】
<ポリプロピレンワックス>
・NP−030(三井化学(株)社製)分子量5,800、軟化点153℃
・NP−055(三井化学(株)社製)分子量7,000、軟化点148℃
・NP−056(三井化学(株)社製)分子量7,000、軟化点131℃
【0057】
<再剥離型ホットメルト>
ラベルメルトP−708J(東洋アドレ社製)
【0058】
<ホットメルト粘着剤の作製方法>
(製造例1)
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、可塑剤(N90)を30重量部、エラストマー(G1652)を15重量部及び粘着付与剤(T30)を5重量部投入し、加熱して溶融した。加熱は内容物が130℃未満150℃超にならないように注意して行った。溶融後攪拌を行い、均一溶融溶液とした後、150℃未満の温度を保ちながら、かつ攪拌を続けながら、この溶融物に粘着付与剤:ハリタックFを35重量部徐々に加え、添加終了後、ポリプロピレンワックス(NP−030)を15重量部添加して、溶融均一混合物とし、冷却して熱収縮フィルム用ホットメルト粘着剤組成物を得た。
【0059】
(製造例2〜7)
各原料を表1に記載された通りに変更した以外は製造例1と同様に行うことで製造例2〜7の熱収縮フィルム用ホットメルト粘着剤を得た。
【0060】
(比較製造例1〜4)
各原料を表2に記載された通りに変更した以外は製造例1と同様に行うことで製造例2〜7のホットメルト粘着剤を得た。
【0061】
<パラフィンワックス>
・HNP−9(日本精蝋社製)分子量500、軟化点75℃
【0062】
<粘度の測定方法>
得られたホットメルト粘着剤を、プレート型レオメーターを用いて、粘度測定を行った。測定方法及び測定条件は下記の通りである。測定結果を表1に示す。
・測定装置:動的粘度粘弾性測定装置 Rheosol−G3000(株式会社 ユービーエム社製
・測定モード:温度依存性
・チャック:パラレルプレート
・波形:正弦波
・パラレル直径:19.99mm
・キャップ:1mm
・降温粘度測定開始温度:180℃ 測定終了温度: 30℃
・昇温温度測定開始温度: 30℃ 測定終了温度:180℃
・降温速度:3℃/分
・昇温速度:3℃/分
・回転幅:2Hz,3deg
【0063】
<包装材1の作製方法>
得られた熱収縮フィルム用ホットメルト粘着剤を150℃に加熱し、溶融させた。それを離型シートにハンドアプリケーターを用いて塗工厚60μm、幅15mmになるように塗工することで粘着部1を形成した。次いで、当該粘着部を縦17cm、横22cmの大きさの下記熱収縮性フィルムの横長方向の一方の端部に転写することで包装材1を得た。
【0064】
<熱収縮フィルム>
熱収縮フィルムは、厚さ20μmのMD方向一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製)を使用した。
【0065】
<包装材2の作製方法>
ホットメルト粘着剤(製品名 トヨメルトP−708K 東洋アドレ社製)を150℃に加熱し、溶融させた。それを離型シートにハンドアプリケーターを用いて塗工厚30μm、幅15mmになるように塗工することで粘着部2を形成した。当該粘着部を包装材1の粘着部1が形成されていない他方の端部に転写することで包装材2を得た。
【0066】
(実施例1〜6)
<包装材付き物品の製造A>
包装材1を、粘着部1を内側にして当該粘着部の全ての部分が、当該包装材1の他方の端部に重なるように貼り合わせて円筒状の包装材を作成した。当該円筒状の包装材を円周200mmの円筒状のPETボトルの胴部に装着することで試験サンプル1を得た。
【0067】
(実施例7)
<包装材付き物品の製造B>
包装材2の粘着部2を円周200mmの円筒状のPETボトルの胴部に貼り付けた。次いで、当該包装材2の粘着部1の全ての部分が当該包装材2の他方の端部に重なるように、当該PETボトルの外周に巻きつけることで試験サンプル2を得た。
【0068】
(比較例1〜4)
比較製造例1〜4で得られたホットメルト粘着剤を前記の包装材1の作製方法と同様に行うことで包装材1を得た。さらに、上記包装材付き物品の製造Aと同様に行なうことで試験サンプル1を得た。
【0069】
<熱収縮性試験>
得られた試験サンプル1および2を90℃に加熱した湯浴に浸漬することで熱収縮フィルムを収縮させて、外観を目視で評価した。
○:粘着部1のずれが2mm以下で包装材が剥離しない。
×:粘着部1のずれが2mmより大きい、または包装材が剥離した。
【0070】
<塗工適性および1時間停止後の塗工性>
ノードソン社製メルターシリーズ3400を用いて、塗工機の温度140℃、ホース温度140℃、ヘッド温度110℃にそれぞれ設定した。そしてスリットコーター方式で熱収縮PETフィルムに塗工速度20〜150m/minで、製造例で得られたホットメルト粘着剤を塗工した。また、別途、塗工を1時間停止させ、再度塗工したとき塗工状態を評価した。以下に評価基準を示す。
○:塗工が問題なくできた。
×:塗工面が不均一であった。または再塗工できなかった。または再塗工の際、粘着剤の糸曳きが発生した。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【符号の説明】
【0073】
1:ホットメルト粘着剤の、冷却時の粘度挙動の一例。
2:ホットメルト粘着剤の、加熱時の粘度挙動の一例。
3:熱可塑性フィルム
3−1:粘着部1
3−2:粘着部2
4:PETボトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー10〜25重量%と、
粘着付与剤25〜40重量%と、
可塑剤25〜40重量%と、
軟化点が125℃以上165℃以下のポリプロピレンワックス15〜35重量%とを含む熱収縮性フィルム用ホットメルト接着剤。
【請求項2】
ポリプロピレンワックスの分子量が5,000〜15,000であることを特徴とする請求項1記載の熱収縮性フィルム用ホットメルト接着剤。
【請求項3】
粘着剤を160〜200℃まで加熱し、25℃まで冷却するときに、
加熱するとき120℃の粘着剤の粘度が200Pa・s以上50,000Pa・s以下であり、
冷却するとき110℃の粘着剤の粘度が0.1Pa・s以上150Pa・s以下であることを特徴とする請求項1または2記載の熱収縮性フィルム用ホットメルト接着剤。
【請求項4】
熱収縮性フィルムの少なくとも一方の端部に、請求項1〜3いずれか記載の熱収縮性フィルム用ホットメルト接着剤から形成されてなる粘着部を備えた包装材。
【請求項5】
物品の外周に請求項4記載の包装材を装着する工程、
次いで、加熱することで熱収縮性フィルムを収縮させる工程を有する包装材付き物品の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の包装材の粘着部を、前記包装材の他方の端部に重ねて円筒状包装材を形成する工程、
次に、物品に前記円筒状包装材を装着する工程、
さらに、加熱することで熱収縮性フィルムを収縮させる工程を有する包装材付き物品の製造方法。
【請求項7】
包装材の一方の端部に請求項1〜3いずれか記載の熱収縮性フィルム用ホットメルト接着剤から形成された粘着部1を有し、他方の端部に粘着部2が形成された包装材の粘着部2を物品に貼り付ける工程、
次に、当該物品の外周に当該包装材を巻きつけて、粘着部1を当該包装材に重なるように貼り付けることで物品に包装材を装着する工程、
さらに、加熱することで熱収縮性フィルムを収縮させる工程を有する包装材付き物品の製造方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−236965(P2012−236965A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228254(P2011−228254)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【特許番号】特許第5000004号(P5000004)
【特許公報発行日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【出願人】(591004881)東洋アドレ株式会社 (51)
【出願人】(711004506)トーヨーケム株式会社 (17)
【Fターム(参考)】