説明

熱収縮性フィルム

【課題】延伸性、熱収縮性、ガスバリア性、光学特性に優れた熱収縮性フィルムを提供すること。
【解決手段】上記目的は、特定の構造単位(I)を有する変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)と、構造単位(I)を含有しないエチレン−ビニルアルコール共重合体(F)とを特定の割合で含む樹脂組成物からなる層を有する熱収縮性フィルムによって達成される。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)とエチレン−ビニルアルコール共重合体(F)をブレンドした樹脂組成物からなる熱収縮性フィルムに関し、更に詳しくは延伸性、熱収縮性、ガスバリア性、光学特性に優れた熱収縮性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食肉やその加工品等の多くは形状が不規則で大きさも不揃いであるため、この様な食品包装分野においては、熱収縮フィルムによる包装がしばしば用いられている。このような熱収縮性フィルムには、熱収縮性に加え、食品鮮度保持のため、ガスバリア性や保香性などに優れたフィルムが望まれている。このような目的のため熱収縮フィルムに用いられるガスバリア材として、ポリ塩化ビニリデン(以下PVDCと略すことがある)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下EVOHと略すことがある)等が知られている。例えば特許文献1には、PVDC、EVOHをバリア層とする多層フィルムを畜肉包装材として用い、熱収縮させることに関する記載がある。
【0003】
しかしながら、PVDCをガスバリア材として使用した場合、使用後のフィルムを焼却処理する際に環境への負荷が懸念される。また、EVOHを用いた場合、高い倍率で延伸が困難であるため収縮率が必ずしも充分ではなかった。
【0004】
EVOHの延伸性を改善、あるいは熱収縮性を改良するため、従前から種々の提案がなされている。例えば特許文献2にはEVOHをエポキシ化合物類にて変性した樹脂組成物を有する多層熱収縮フィルムが記載されている。また、特許文献3には特定の構造単位を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体を有する層の片面または両面に熱可塑性樹脂含有層を積層してなる多層シュリンクフィルムが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−248482号公報
【特許文献2】特開2003−231715号公報
【特許文献3】特開2006−123531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献2に記載の変性EVOHを用いて多層フィルムを作成した場合においても依然として収縮率が必ずしも充分ではなく、また、高い収縮率を得ようとして変性度を大きくすると、未変性のEVOHに比べてガスバリア性が低下するため、より高いレベルでの収縮率とガスバリア性の両立が望まれていた。さらに、上記変性EVOHは未変性のEVOHに比べて、熱安定性に劣るという問題点もあった。
【0007】
また、上記特許文献3に記載の変性EVOHを合成する際には、特殊なモノマーを共重合する必要があり、製品特性は重合段階で決定されるため、製品に要求される特性を製品に応じて臨機応変に調整しにくく、小ロットの製品に対応しにくい場合がある。従って、より簡便な方法で製造できる、高い収縮率とガスバリア性を有する熱収縮性フィルムが望まれていた。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、延伸性、収縮性、ガスバリア性、光学特性、熱安定性に優れ、工業的に容易な方法で製造できるシュリンクフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはかかる問題点を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造を有する変性エチレン−ビニルアルコール共重合体と上記特定の構造を有しない(変性されていない)エチレン−ビニルアルコール共重合体とを特定の割合でブレンドすることにより、高い収縮率及びガスバリア性の両立が可能なことを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記構造単位(I)を0.5〜40モル%含有するエチレン含量5〜55モル%の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)5〜50重量%と、構造単位(I)を含有しないエチレン含量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(F)50〜95重量%とからなる樹脂組成物(G)からなる層を含む熱収縮性フィルムである。
【0011】
【化1】

【0012】
{式中、R、R、R、及びRは水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基または炭素数6〜10の芳香属炭化水素基を表す。R、R、R、及びRは同じ基でも良いし、異なっていても良い。またR、とRとは結合していても良い。またR、R、R、及びRは水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基又はハロゲン原子を有していてもよい}
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱収縮フィルムは優れた収縮性を有しており、内容物との密着性に優れている。更には高いガスバリア性を有しておるため、内容物の長期保存が可能となる。また高い収縮率で収縮させても優れた透明性を有しているため、市販PVDC系フィルムに比べ内容物を損なわず美麗感に優れた包装を行うことが可能となる。更に、本発明においては変性量を、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)の変性率と、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)と変性されていないエチレン−ビニルアルコール共重合体(F)との比率で変更可能なため、バリア性や延伸性、収縮性を要求に応じて任意に変更することが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の熱収縮フィルムは、特定の構造単位を含む変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)を含む層を有する。以下、本発明の熱収縮性フィルムを構成する変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を変性EVOH(C)と略記することがある。
【0015】
変性EVOH(C)はエチレン単位と、ビニルアルコール単位と、下記式(I)で表される構造単位とを含む。
【0016】
【化2】

【0017】
上記式(I)において、R、R、R、及びRは水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基または炭素数6〜10の芳香属炭化水素基を表す。R、R、R、及びRは同じ基でも良いし、異なっていても良い。またR、とRとは結合していても良い。またR、R、R、及びRは水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基又はハロゲン原子を有していてもよい。
【0018】
これらの構造単位の中で、通常の用途においては構造単位内に炭素−炭素二重結合を有しないものが好ましい。構造単位内に炭素−炭素二重結合を有すると、樹脂組成物が保存、使用中に光、熱などで架橋され、充分な柔軟性を保てなくなることがありうる。一方、逆に積極的に適度な架橋を行い、耐熱性などを向上させる場合は構造単位内に炭素−炭素二重結合を有する構造が好ましい。
【0019】
これらの構造単位の中でも、上記式(I)において、式中R及びRが水素原子であり、R及びRの一方が水素原子であり、他方が、水素原子、メチル基、エチル基及びヒドロキシメチル基からなる群より選ばれる少なくともひとつであるものが好ましい。これらの構造を有することにより、変性によるガスバリア性の低下を抑制しつつ高い延伸性をえることができる。なかでも上記式(I)において、式中R及びRが水素原子であり、R及びRの一方が水素原子であり、他方が、メチル基、エチル基のいずれかであるものが工業的に製造しやすい点において好ましく採用される。
【0020】
変性EVOH(C)の製造方法に特に制限はないが、通常のエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOH(A)と記すことがある)に、1価のエポキシ化合物(B)を反応させることにより容易に製造することができる。
【0021】
本発明で変性EVOH(C)の原料として用いられるEVOH(A)としては、エチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られるものが好ましい。EVOHの製造時に用いるビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。また、本発明の目的が阻害されない範囲であれば、他の共単量体、例えば、プロピレン、ブチレン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸又はそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸又はその塩;アルキルチオール類;N−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドン等を共重合することもできる。通常これらの共重合成分は全モノマー単位の5%未満である。
【0022】
EVOH(A)として、共重合成分としてビニルシラン化合物を共重合したEVOHを用いる場合、共重合量として0.0002〜0.2モル%を含有することも好ましい。かかる範囲でビニルシラン化合物を共重合成分として有することにより、共押出成形を行う際の、基材樹脂と変性EVOH(C)との溶融粘性の整合性が改善され、均質な熱収縮フィルムの製造が可能となる場合がある。特に、溶融粘度の高い熱可塑性樹脂(T)を用いる場合、均質な熱収縮フィルムを得ることが容易となる。ここで、ビニルシラン系化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等が挙げられる。中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
【0023】
EVOH(A)のエチレン含量は5〜55モル%である。本発明の樹脂組成物(G)が良好な延伸性、柔軟性および耐屈曲性を得る観点からは、EVOH(A)のエチレン含量の下限はより好適には10モル%以上、さらに好適には20モル%以上、特に好適には25モル%以上である。また、エチレン含量の上限は好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下である。エチレン含量が大きすぎる場合はガスバリア性が十分でなくなる場合がある。
【0024】
EVOH(A)のビニルエステル成分のケン化度は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。ケン化度が90%未満では、ガスバリア性、特に高湿時のバリア性が低下する虞があるだけではなく、熱安定性が不十分となり成形物にゲル・ブツが発生しやすくなる虞がある。
【0025】
なお、EVOH(A)のエチレン含有量及びケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0026】
さらに、EVOH(A)として、本発明の目的を阻害しない範囲内で、ホウ素化合物をブレンドしたEVOHを用いることもできる。ここでホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸(以下、単にホウ酸と表示する場合がある)が好ましい。
【0027】
EVOH(A)として、ホウ素化合物をブレンドしたEVOH(A)を用いる場合、ホウ素化合物の含有量は好ましくはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。この範囲内でホウ素化合物をブレンドすることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOH(A)を得ることができる。20ppm未満ではそのような効果が小さく、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
【0028】
また、EVOH(A)として、リン酸化合物を配合したEVOH(A)を用いてもよい。これにより樹脂の品質(着色等)を安定させることができる場合がある。本発明に用いられるリン酸化合物としては特に限定されず、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩としては第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩のいずれの形で含まれていても良いが、第一リン酸塩が好ましい。そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。これらの中でもリン酸二水素ナトリウム及びリン酸二水素カリウムが好ましい。リン酸化合物を配合したEVOH(A)を用いる場合の、リン酸化合物の含有量は、好適にはリン酸根換算で200ppm以下であり、より好適には5〜100ppmであり、最適には5〜50ppmである。
【0029】
ただし、後述のように周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒(D)の存在下にEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させる場合には、リン酸塩が触媒を失活させるのでできるだけ少ないことが好ましい。その場合のEVOH(A)のリン酸化合物の含有量は、好適にはリン酸根換算で200ppm以下であり、より好適には100ppm以下であり、最適には50ppm以下である。
【0030】
また、後述する通り、変性EVOH(C)は、好適にはEVOH(A)と分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)との反応を、押出機内で行わせることによって得られるが、その際に、EVOHは加熱条件下に晒される。この時に、EVOH(A)が過剰にアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含有していると、得られる変性EVOH(C)に着色が生じる虞がある。また、変性EVOH(C)の粘度低下等の問題が生じ、成形性が低下する虞がある。また、後述のように触媒(D)を使用する場合には、触媒(D)を失活させるため、それらの添加量はできるだけ少ないことが好ましい。
【0031】
上記の問題を回避するためには、EVOH(A)が含有するアルカリ金属塩が金属元素換算値で50ppm以下であることが好ましい。より好ましい実施態様では、EVOH(A)が含有するアルカリ金属塩が金属元素換算値で30ppm以下であり、さらに好ましくは20ppm以下である。また、同様な観点から、EVOH(A)が含有するアルカリ土類金属塩が金属元素換算値で20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがさらに好ましく、EVOH(A)にアルカリ土類金属塩が実質的に含まれていないことが最も好ましい。
【0032】
また、本発明の目的を阻害しない範囲内であれば、EVOH(A)として、熱安定剤、酸化防止剤を配合したものを用いることもできる。
【0033】
本発明に用いられるEVOH(A)の固有粘度は0.06L/g以上であることが好ましい。EVOH(A)の固有粘度はより好ましくは0.07〜0.2L/gの範囲内であり、さらに好ましくは0.075〜0.15L/gであり、特に好ましくは0.080〜0.12L/gである。EVOH(A)の固有粘度が0.06L/g未満の場合、耐衝撃性及び機械的強度が低下するおそれがある。また、EVOH(A)の固有粘度が0.2L/gを越える場合、変性EVOH(C)を含む成形物においてゲル・ブツが発生しやすくなる虞があるとともに、成形温度における溶融粘度が高すぎて成形が困難になる虞がある。
【0034】
本発明に用いられるEVOH(A)の好適なメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)は0.1〜30g/10分であり、より好適には0.3〜25g/10分、更に好適には0.5〜20g/10分である。但し、融点が190℃付近あるいは190℃を超えるものは2160g荷重下、融点以上の複数の温度で測定し、片対数グラフで絶対温度の逆数を横軸、MFRの対数を縦軸にプロットし、190℃に外挿した値で表す。MFRの異なる2種以上のEVOHを混合して用いることもできる。
【0035】
本発明に用いられる分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)は、一価のエポキシ化合物であることが必須である。すなわち、分子内にエポキシ基を一つだけ有するエポキシ化合物でなければならない。二価又はそれ以上の、多価のエポキシ化合物を用いた場合は、本発明の効果を奏することができない。ただし、一価エポキシ化合物の製造工程において、ごく微量に多価エポキシ化合物が含まれることがある。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ごく微量の多価エポキシ化合物が含まれる一価のエポキシ化合物を、本発明における分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)として使用することも可能である。
【0036】
本発明に用いられる分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)は特に限定されない。具体的には、下記式(III)〜(IX)で示される化合物が、好適に用いられる。
【0037】
【化3】

【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
【化9】

【0044】
(式中、R5、R6、R7、R8及びR9は、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(アルキル基又はアルケニル基など)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基など)、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基(フェニル基など)を表す。また、i、j、k、l及びmは、1〜8の整数を表す。)
【0045】
上記式(III)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、エポキシエタン(エチレンオキサイド)、エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、3−メチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、2,3−エポキシペンタン、3−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−2,3−エポキシペンタン、3−エチル−1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、2,3−エポキシヘキサン、3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、3−エチル−1,2−エポキシヘキサン、3−プロピル−1,2−エポキシヘキサン、4−エチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−2,3−エポキシヘキサン、4−エチル−2,3−エポキシヘキサン、2−メチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−1,2−エポキシへプタン、5−メチル−1,2−エポキシへプタン、6−メチル−1,2−エポキシへプタン、3−エチル−1,2−エポキシへプタン、3−プロピル−1,2−エポキシへプタン、3−ブチル−1,2−エポキシへプタン、4−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−プロピル−1,2−エポキシへプタン、5−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−2,3−エポキシへプタン、4−エチル−2,3−エポキシへプタン、4−プロピル−2,3−エポキシへプタン、2−メチル−3,4−エポキシへプタン、5−メチル−3,4−エポキシへプタン、5−エチル−3,4−エポキシへプタン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシへプタン、2−メチル−5−エチル−3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシヘプタン、2,3−エポキシヘプタン、3,4−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、2,3−エポキシオクタン、3,4−エポキシオクタン、4,5−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、2,3−エポキシノナン、3,4−エポキシノナン、4,5−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、2,3−エポキシデカン、3,4−エポキシデカン、4,5−エポキシデカン、5,6−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、2,3−エポキシウンデカン、3,4−エポキシウンデカン、4,5−エポキシウンデカン、5,6−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、2,3−エポキシドデカン、3,4−エポキシドデカン、4,5−エポキシドデカン、5,6−エポキシドデカン、6,7−エポキシドデカン、エポキシエチルベンゼン、1−フェニル−1,2−エポキシプロパン、3−フェニル−1,2−エポキシプロパン、1−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシブタン、4−フェニル−1,2−エポキシブタン、1−フェニル−1,2−エポキシペンタン、3−フェニル−1,2−エポキシペンタン、4−フェニル−1,2−エポキシペンタン、5−フェニル−1,2−エポキシペンタン、1−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、3−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、4−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、5−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、6−フェニル−1,2−エポキシヘキサン等が挙げられる。
【0046】
上記式(IV)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−3−ペンチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ヘキシルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ヘプチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−オクチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−フェノキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ベンジルオキシプロパン、1,2−エポキシ−4−メトキシブタン、1,2−エポキシ−4−エトキシブタン、1,2−エポキシ−4−プロポキシブタン、1,2−エポキシ−4−ブトキシブタン、1,2−エポキシ−4−ペンチルオキシブタン、1,2−エポキシ−4−ヘキシルオキシブタン、1,2−エポキシ−4−ヘプチルオキシブタン、1,2−エポキシ−4−フェノキシブタン、1,2−エポキシ−4−ベンジルオキシブタン、1,2−エポキシ−5−メトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−エトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−プロポキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ブトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ペンチルオキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ヘキシルオキシペンタン、1,2−エポキシ−5−フェノキシペンタン、1,2−エポキシ−6−メトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−エトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−プロポキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−ブトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−ヘプチルオキシヘキサン、1,2−エポキシ−7−メトキシへプタン、1,2−エポキシ−7−エトキシへプタン、1,2−エポキシ−7−プロポキシへプタン、1,2−エポキシ−7−ブチルオキシへプタン、1,2−エポキシ−8−メトキシへプタン、1,2−エポキシ−8−エトキシへプタン、1,2−エポキシ−8−ブトキシへプタン、グリシドール、3,4−エポキシ−1−ブタノール、4,5−エポキシ−1−ペンタノール、5,6−エポキシ−1−ヘキサノール、6,7−エポキシ−1−へプタノール、7,8−エポキシ−1−オクタノール、8,9−エポキシ−1−ノナノール、9,10−エポキシ−1−デカノール、10,11−エポキシ−1−ウンデカノール等が挙げられる。
【0047】
上記式(V)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、プロパンジオールモノグリシジルエーテル、ブタンジオールモノグリシジルエーテル、へプタンジオールモノグリシジルエーテル、ヘキサンジオールモノグリシジルエーテル、へプタンジオールモノグリシジルエーテル、オクタンジオールモノグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0048】
上記式(VI)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、3−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−プロペン、4−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ブテン、5−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ペンテン、6−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ヘキセン、7−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ヘプテン、8−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−オクテン等が挙げられる。
【0049】
上記式(VII)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、3,4−エポキシ−2−ブタノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−2−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ペンタノール、1,2−エポキシ−3−ペンタノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘキサノール、4,5−エポキシ−3−ヘキサノール、1,2−エポキシ−3−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−エチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジエチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−4−エチル−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5−メチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5,5−ジメチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−ヘプタノール、4,5−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−4−ヘプタノール、1,2−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−オクタノール、3,4−エポキシ−2−オクタノール、4,5−エポキシ−3−オクタノール、5,6−エポキシ−4−オクタノール、2,3−エポキシ−4−オクタノール、1,2−エポキシ−3−オクタノール、2,3−エポキシ−1−ノナノール、3,4−エポキシ−2−ノナノール、4,5−エポキシ−3−ノナノール、5,6−エポキシ−4−ノナノール、3,4−エポキシ−5−ノナノール、2,3−エポキシ−4−ノナノール、1,2−エポキシ−3−ノナノール、2,3−エポキシ−1−デカノール、3,4−エポキシ−2−デカノール、4,5−エポキシ−3−デカノール、5,6−エポキシ−4−デカノール、6,7−エポキシ−5−デカノール、3,4−エポキシ−5−デカノール、2,3−エポキシ−4−デカノール、1,2−エポキシ−3−デカノール等が挙げられる。
【0050】
上記式(VIII)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1,2−エポキシシクロノナン、1,2−エポキシシクロデカン、1,2−エポキシシクロウンデカン、1,2−エポキシシクロドデカン等が挙げられる。
【0051】
上記式(IX)で表される分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、3,4−エポキシシクロペンテン、3,4−エポキシシクロヘキセン、3,4−エポキシシクロヘプテン、3,4−エポキシシクロオクテン、3,4−エポキシシクロノネン、1,2−エポキシシクロデセン、1,2−エポキシシクロウンデセン、1,2−エポキシシクロドデセン等が挙げられる。
【0052】
本発明に用いられる分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としては、炭素数が2〜8のエポキシ化合物が特に好ましい。化合物の取り扱いの容易さ、及びEVOH(A)との反応性の観点からは、一価エポキシ化合物(B)の炭素数は好適には2〜6であり、より好適には2〜4である。また、一価エポキシ化合物(B)が、上記式(III)又は(IV)で表される化合物であることが好ましい。EVOH(A)との反応性、及び得られる変性EVOH(C)のバリア性の観点からは、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エポキシプロパン、エポキシエタン及びグリシドールが特に好ましく、なかでもエポキシプロパン及びグリシドールが好ましい。食品包装用途、飲料包装用途、医薬品包装用途などの、衛生性を要求される用途では、エポキシ化合物(B)として1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エポキシプロパン及びエポキシエタンを用いることが好ましく、特にエポキシプロパンを用いることが好ましい。
【0053】
上記EVOH(A)と上記一価エポキシ化合物(B)とを反応させることにより変性EVOH(C)が得られる。このときの、EVOH(A)及び一価エポキシ化合物(B)の好適な混合比は、(A)100重量部に対して(B)1〜50重量部であり、さらに好適には(A)100重量部に対して(B)2〜40重量部であり、特に好適には(A)100重量部に対して(B)5〜35重量部である。
【0054】
EVOH(A)と分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)とを反応させることにより、変性EVOH(C)を製造する方法は特に限定されないが、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを溶液で反応させる製造法、及びEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを押出機内で反応させる製造法などが好適な方法として挙げられる。
【0055】
溶液反応による製造法では、EVOH(A)の溶液に酸触媒あるいはアルカリ触媒存在下で一価エポキシ化合物(B)を反応させることによって変性EVOH(C)が得られる。また、EVOH(A)及び一価エポキシ化合物(B)を反応溶媒に溶解させ、加熱処理を行うことによっても変性EVOH(C)を製造することができる。反応溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のEVOH(A)の良溶媒である極性非プロトン性溶媒が好ましい。
【0056】
反応触媒としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸及び3フッ化ホウ素等の酸触媒や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキサイド等のアルカリ触媒が挙げられる。これらの内、酸触媒を用いることが好ましい。触媒量としては、EVOH(A)100重量部に対し、0.0001〜10重量部程度が適当である。反応温度としては室温から150℃の範囲が適当である。
【0057】
EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを押出機内で反応させる製造法では、使用する押出機としては特に制限はないが、一軸押出機、二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を使用し、180℃〜300℃程度の温度でEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させることが好ましい。後述のように、押出機内で反応させる際に触媒(D)を存在させる場合には、低めの溶融温度とすることが好ましいが、触媒(D)を使用しない場合の好適な温度は200℃〜300℃程度である。
【0058】
二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を用いた場合、スクリュー構成の変更により、反応部の圧力を高めることが容易であり、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応を効率的に行えるようになる。一軸押出機では2台以上の押出機を連結し、その間の樹脂流路にバルブを配置することにより、反応部の圧力を高めることが可能である。また同様に二軸押出機又は二軸以上の多軸押出機を2台以上連結して製造してもよい。
【0059】
押出機内で反応させる製造法と、溶液反応による製造法を比較した場合、溶液反応の場合は、EVOH(A)を溶解させる溶媒が必要であり、反応終了後に該溶媒を反応系から回収・除去する必要があり、工程が煩雑なものとなる。また、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応性を高めるためには、反応系を加熱及び/又は加圧条件下に維持することが好ましいが、溶液反応の場合と比較して、押出機内での反応ではかかる反応系の加熱及び/又は加圧条件の維持が容易であり、その観点からも押出機内での反応のメリットは大きい。
【0060】
さらに、溶液反応によってEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応を行った場合、反応の制御が必ずしも容易ではなく、過剰に反応が進行してしまうおそれがある。すなわち、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応の結果、上述の構造単位(I)を有する変性EVOH(C)が得られるが、前記構造単位(I)に含まれる水酸基に、さらに一価エポキシ化合物(B)が反応することにより、本発明で特定する構造単位とは異なるものが得られるおそれがあった。具体的には、一価エポキシ化合物(B)がエチレンオキサイドである場合、上述した過剰な反応の進行により、下記に示す構造単位(II)を含有するEVOHが生じることになる。
【0061】
【化10】

【0062】
(式中、nは1以上の自然数を表す。)
【0063】
本発明者らが検討を行った結果、本発明で特定する構造単位(I)とは異なる、上記に示した構造単位(II)を含有する割合が多くなることにより、得られる変性EVOH(C)のガスバリア性が低下することが明らかになった。さらに、押出機内でEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応を行った場合は、このような副反応の発生を効果的に抑制可能であることを見出した。かかる観点からも、押出機内でEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応を行うことにより、変性EVOH(C)を製造する方法が好ましい。
【0064】
また、本発明で用いられる分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)は、必ずしも沸点の高いものばかりではないため、溶液反応による製造法では、反応系を加熱した場合、系外に一価エポキシ化合物(B)が揮散する虞がある。しかしながら、押出機内でEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させることにより、一価エポキシ化合物(B)の系外への揮散を抑制することが可能である。特に、押出機内に一価エポキシ化合物(B)を添加する際に、加圧下で圧入することにより、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応性を高め、かつ一価エポキシ化合物(B)の系外への揮散を顕著に抑制することが可能である。
【0065】
押出機内での反応の際の、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)の混合方法は特に限定されず、押出機にフィードする前のEVOH(A)に一価エポキシ化合物(B)をスプレー等を行う方法や、押出機にEVOH(A)をフィードし、押出機内で一価エポキシ化合物(B)と接触させる方法などが好適なものとして例示される。この中でも、一価エポキシ化合物(B)の系外への揮散を抑制できる観点から、押出機にEVOH(A)をフィードした後、押出機内で一価エポキシ化合物(B)と接触させる方法が好ましい。また、押出機内への一価エポキシ化合物(B)の添加位置も任意であるが、EVOH(A)とエポキシ化合物(B)との反応性の観点からは、溶融したEVOH(A)に対して一価エポキシ化合物(B)を添加することが好ましい。
【0066】
本発明者が推奨する、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との、押出機内での反応による製造法は、(1)EVOH(A)の溶融工程、(2)一価エポキシ化合物(B)の添加工程及び(3)ベント等による、未反応の一価エポキシ化合物(B)の除去工程、からなる。反応を円滑に行う観点からは、系内から水分及び酸素を除去することが好適である。このため、押出機内へ一価エポキシ化合物(B)を添加するより前に、ベント等を用いて水分及び酸素を除去してもよい。
【0067】
また、前述の通り、一価エポキシ化合物(B)の添加工程においては、一価エポキシ化合物(B)を加圧下で圧入することが好ましい。この際に、この圧力が不十分な場合、反応率が下がり、吐出量が変動する等の問題が発生する。必要な圧力は一価エポキシ化合物(B)の沸点や押出温度によって大きく異なるが、通常0.5〜30MPaの範囲が好ましく、1〜20MPaの範囲がより好ましい。
【0068】
本発明の製造方法では、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒(D)の存在下に押出機中で溶融混練することが好適である。周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒(D)を存在させることによって、より低い温度で溶融混練しても効率良くEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させることができる。すなわち、比較的低温での溶融混練によっても、変性量の大きい変性EVOH(C)を容易に得ることができる。EVOHは高温での溶融安定性が必ずしも良好な樹脂ではないことから、このように低温で溶融混練できることは、樹脂の劣化を防止できる点から好ましい。触媒(D)を使用せずにEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを反応させた場合には、得られる変性EVOH(C)のMFRが原料のEVOH(A)のMFRよりも低下する傾向があるが、触媒(D)を使用した場合には、MFRはほとんど変化しない。
【0069】
本発明で使用される触媒(D)は、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含むものである。触媒(D)に使用される金属イオンとして最も重要なことは適度のルイス酸性を有することであり、この点から周期律表第3〜12族に属する金属のイオンが使用される。これらの中でも、周期律表第3族又は第12族に属する金属のイオンが適度なルイス酸性を有していて好適であり、亜鉛、イットリウム及びガドリニウムのイオンがより好適なものとして挙げられる。なかでも、亜鉛のイオンを含む触媒(D)が、触媒活性が極めて高く、かつ得られる変性EVOH(C)の熱安定性が優れていて、最適である。
【0070】
周期律表第3〜12族に属する金属のイオンの添加量はEVOH(A)の重量に対する金属イオンのモル数で0.1〜20μmol/gであることが好適である。多すぎる場合には、溶融混練中にEVOHがゲル化するおそれがあり、より好適には10μmol/g以下である。一方、少なすぎる場合には、触媒(D)の添加効果が十分に奏されないおそれがあり、より好適には0.5μmol/g以上である。なお、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンの好適な添加量は、使用する金属の種類や後述のアニオンの種類によっても変動するので、それらの点も考慮した上で、適宜調整されるべきものである。
【0071】
周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを含む触媒(D)のアニオン種は特に限定されるものではないが、その共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを含むことが好ましい。共役酸が強酸であるアニオンは、通常求核性が低いので一価エポキシ化合物(B)と反応しにくく、求核反応によってアニオン種が消費されて、触媒活性が失われることを防止できるからである。また、そのようなアニオンを対イオンに有することで、触媒(D)のルイス酸性が向上して触媒活性が向上するからである。
【0072】
共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンとしては、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン;過塩素酸イオン;テトラフルオロボレートイオン(BF-)、ヘキサフルオロホスフェートイオン(PF-)、ヘキサフルオロアルシネートイオン(AsF-)、ヘキサフルオロアンチモネートイオン等の4個以上のフッ素原子を持つアニオン;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等のテトラフェニルボレート誘導体イオン;テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、ビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト(III)イオン、ビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄(III)イオン等のカルボラン誘導体イオンなどが例示される。
【0073】
上記例示したアニオン種のうち、ヘキサフルオロホスフェートやテトラフルオロボレート等のアニオン種を含む触媒(D)を使用した場合には、アニオン種そのものは熱的に安定で求核性も非常に低いものの、当該アニオン種がEVOH中の水酸基と反応してフッ化水素が発生し、樹脂の熱安定性に悪影響を与えるおそれがある。また、コバルトのカルボラン誘導体イオン等はEVOHと反応することがなく、アニオン種自体も熱的に安定ではあるが、非常に高価である。
【0074】
EVOHと反応することがなく、アニオン種自体も熱的に安定であり、かつ価格も適切なものであることから、触媒(D)のアニオン種としてはスルホン酸イオンが好ましい。好適なスルホン酸イオンとしては、メタンスルホン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオンが例示され、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが最適である。
【0075】
触媒(D)のカチオン種として亜鉛イオンを、アニオン種としてトリフルオロメタンスルホン酸イオンをそれぞれ使用した場合の、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)との反応の推定メカニズムを下記式(X)に示す。
【0076】
【化11】

【0077】
すなわち、EVOHの水酸基と金属アルコキシドの形で結合した亜鉛イオンに一価エポキシ化合物(B)のエポキシ基の酸素原子が配位し、6員環遷移状態を経て、エポキシ基が開環すると推定している。ここで、遷移状態における亜鉛イオンの対イオンであるトリフルオロメタンスルホン酸イオンの共役酸が強酸であることによって、亜鉛イオンのルイス酸性が大きくなり、触媒活性が向上する。一方、対イオンとして存在するトリフルオロメタンスルホン酸イオン自体は、EVOHの水酸基あるいは一価エポキシ化合物(B)のエポキシ基と反応することがなく、それ自体熱的に安定であるから、副反応を生じることなく円滑に開環反応が進行する。
【0078】
上述のように、本発明で使用される触媒(D)はその共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを含むものであることが好適であるが、触媒(D)中の全てのアニオン種が同一のアニオン種である必要はない。むしろ、その共役酸が弱酸であるアニオンを同時に含有するものであることが好ましい。前記式(X)で示されたような反応メカニズムであれば、EVOHが触媒(D)と反応して金属アルコキシドを形成する際にアニオンの一つが共役酸として系内に遊離する。これが強酸であった場合には、一価エポキシ化合物(B)と反応するおそれがあるとともに、EVOHの溶融安定性にも悪影響を及ぼす虞がある。
【0079】
共役酸が弱酸であるアニオンの例としては、アルキルアニオン、アリールアニオン、アルコキシド、アリールオキシアニオン、カルボキシレート並びにアセチルアセトナート及びその誘導体が例示される。なかでもアルコキシド、カルボキシレート並びにアセチルアセトナート及びその誘導体が好適に使用される。
【0080】
触媒(D)中の金属イオンのモル数に対する、共役酸が硫酸と同等以上の強酸であるアニオンのモル数は、0.2〜1.5倍であることが好ましい。上記モル比が0.2倍未満である場合には触媒活性が不十分となるおそれがあり、より好適には0.3倍以上であり、さらに好適には0.4倍以上である。一方、上記モル比が1.5倍を超えるとEVOHがゲル化するおそれがあり、より好適には1.2倍以下である。前記モル比は最適には1倍である。なお、原料のEVOH(A)が酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩を含む場合には、それと中和されて消費される分だけ、共役酸が硫酸と同等以上の強酸であるアニオンのモル数を増やしておくことができる。
【0081】
触媒(D)の調製方法は特に限定されるものではないが、好適な方法として、周期律表第3〜12族に属する金属の化合物を溶媒に溶解又は分散させ、得られた溶液又は懸濁液に、共役酸が硫酸と同等以上の強酸(スルホン酸等)を添加する方法が挙げられる。原料として用いる周期律表第3〜12族に属する金属の化合物としては、アルキル金属、アリール金属、金属アルコキシド、金属アリールオキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセトナート等が挙げられる。ここで、周期律表第3〜12族に属する金属の化合物の溶液又は懸濁液に、強酸を加える際には、少量ずつ添加することが好ましい。こうして得られた触媒(D)を含有する溶液は押出機に直接導入することができる。
【0082】
周期律表第3〜12族に属する金属の化合物を溶解又は分散させる溶媒としては有機溶媒、特にエーテル系溶媒が好ましい。押出機内の温度でも反応しにくく、金属化合物の溶解性も良好だからである。エーテル系溶媒の例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が例示される。使用される溶媒としては、金属化合物の溶解性に優れ、沸点が比較的低くて押出機のベントでほぼ完全に除去可能なものが好ましい。その点においてジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン及びテトラヒドロフランが特に好ましい。
【0083】
また、上述の触媒(D)の調整方法において、添加する強酸の代わりに強酸のエステル(スルホン酸エステル等)を用いても良い。強酸のエステルは、通常強酸そのものより反応性が低いために、常温では金属化合物と反応しないことがあるが、200℃前後に保った高温の押出機内に投入することにより、押出機内において活性を有する触媒(D)を生成することができる。
【0084】
触媒(D)の調製方法としては、以下に説明する別法も採用可能である。まず、水溶性の周期律表第3〜12族に属する金属の化合物と、共役酸が硫酸と同等以上の強酸(スルホン酸等)とを、水溶液中で混合して触媒水溶液を調製する。なおこのとき、当該水溶液が適量のアルコールを含んでいても構わない。得られた触媒水溶液をEVOH(A)と接触させた後、乾燥することによって触媒(D)が配合されたEVOH(A)を得ることができる。具体的には、EVOH(A)ペレット、特に多孔質の含水ペレットを前記触媒水溶液に浸漬する方法が好適なものとして挙げられる。この場合には、このようにして得られた乾燥ペレットを押出機に導入することができる。
【0085】
触媒(D)を使用する場合には、押出機内の温度は180〜250℃とすることが好ましい。この場合、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)を反応させる際に触媒(D)が存在するために、比較的低温で溶融混練しても、効率良くEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)の反応を進行させることができる。温度が250℃を超える場合にはEVOHが劣化するおそれがあり、より好適には240℃以下である。一方、温度が180℃未満の場合にはEVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)の反応が十分に進行しないおそれがあり、より好適には190℃以上である。
【0086】
EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)を反応させる際に触媒(D)を存在させる方法は特に限定されない。好適な方法として、触媒(D)の溶液を調製し、その溶液を押出機内に添加する方法が挙げられる。触媒(D)の溶液の調製方法は前述したとおりである。この方法によれば、後述の別法に比べて生産性が高く、触媒(D)を安定的に供給できるために製品の品質を安定化することもできる。触媒(D)の溶液を押出機に導入する位置は特に限定されないが、EVOH(A)が完全に溶融している場所で添加することが、均一に配合できて好ましい。特に、一価エポキシ化合物(B)を添加する場所と同じ場所又はその近傍で添加することが好ましい。触媒(D)と一価エポキシ化合物(B)をほぼ同時に配合することにより、ルイス酸である触媒(D)の影響によるEVOH(A)の劣化を最小限に抑制することができるとともに、十分な反応時間を確保できるからである。したがって、触媒(D)の溶液と一価エポキシ化合物(B)とを混合した液を予め作成しておいて、それを一箇所から押出機中に添加することが最適である。
【0087】
溶融混練時に触媒(D)を存在させる別の方法として、EVOH(A)の含水ペレットを触媒(D)の溶液に浸漬した後、乾燥させる方法が挙げられる。この方法については、触媒(D)の調製方法の別法として前述したとおりである。この場合には、得られた乾燥ペレットがホッパーから押出機内に導入されることになる。但し、高価な触媒が廃液として処理されることになりコストアップに繋がりやすい点が問題である。また更に別の方法としては、乾燥後のペレットに、液体状態の触媒を含浸させるか、固体状態の触媒を混合するかした後、必要に応じて乾燥させる方法が挙げられる。この方法においては、工程数が増えることからコストアップに繋がりやすい点が問題であるとともに、触媒を均一に配合することも必ずしも容易ではない。また、上記いずれの別法においても、一価エポキシ化合物(B)が存在せず、ルイス酸である触媒(D)のみが存在する状態で溶融混練される際に、EVOH(A)が劣化するおそれがある。
【0088】
上述のように、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを、触媒(D)の存在下に押出機中で溶融混練することが好適であるが、その後で触媒失活剤(E)を添加して更に溶融混練することがより好ましい。触媒(D)を失活させなかった場合には、得られる変性EVOH(C)の熱安定性が悪くなるおそれがあり、用途によっては使用に問題をきたす可能性がある。
【0089】
使用される触媒失活剤(E)は、触媒(D)のルイス酸としての働きを低下させるものであればよく、その種類は特に限定されない。好適にはアルカリ金属塩が使用される。その共役酸が硫酸と同等以上の強酸である1価のアニオンを含む触媒(D)を失活させるには、当該アニオンの共役酸よりも弱い酸のアニオンのアルカリ金属塩を使用することが必要である。こうすることによって、触媒(D)を構成する周期律表第3〜12族に属する金属のイオンの対イオンが弱い酸のアニオンに交換され、結果として触媒(D)のルイス酸性が低下するからである。触媒失活剤(E)に使用されるアルカリ金属塩のカチオン種は特に限定されず、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩が好適なものとして例示される。またアニオン種も特に限定されず、カルボン酸塩、リン酸塩及びホスホン酸塩が好適なものとして例示される。
【0090】
触媒失活剤(E)として、例えば酢酸ナトリウムやリン酸一水素二カリウムのような塩を使用しても熱安定性はかなり改善されるが、用途によっては未だ不十分である場合がある。この原因は、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンにルイス酸としての働きがある程度残存しているため、変性EVOH(C)の分解及びゲル化に対して触媒として働くためであると考えられる。この点をさらに改善する方法として、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンに強く配位するキレート化剤を添加することが好ましい。このようなキレート化剤は当該金属のイオンに強く配位できる結果、そのルイス酸性をほぼ完全に失わせることができ、熱安定性に優れた変性EVOH(C)を与えることができる。また、当該キレート化剤がアルカリ金属塩であることによって、前述のように触媒(D)に含まれるアニオンの共役酸である強酸を中和することもできる。
【0091】
触媒失活剤(E)として使用されるキレート化剤として、好適なものとしては、オキシカルボン酸塩、アミノカルボン酸塩、アミノホスホン酸塩などが挙げられる。具体的には、オキシカルボン酸塩としては、クエン酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、リンゴ酸二ナトリウム等が例示される。アミノカルボン酸塩としては、ニトリロ三酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三カリウム、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン二酢酸一ナトリウム、N−(ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸一ナトリウム等が例示される。アミノホスホン酸塩としては、ニトリロトリスメチレンホスホン酸六ナトリウム、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)八ナトリウム等が例示される。なかでもポリアミノポリカルボン酸が好適であり、性能やコストの面からエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩が最適である。エチレンジアミン四酢酸三ナトリウムを使用した場合の推定反応メカニズムを下記式(XI)に示す。
【0092】
【化12】

【0093】
触媒失活剤(E)の添加量は特に限定されず、触媒(D)に含まれる金属イオンの種類や、キレート剤の配位座の数等により適宜調整されるが、触媒(D)に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤(E)のモル数の比(E/D)が0.2〜10となるようにすることが好適である。比(E/D)が0.2未満の場合には、触媒(D)が十分に失活されないおそれがあり、より好適には0.5以上、さらに好適には1以上である。一方、比(E/D)が10を超える場合には、得られる変性EVOH(C)が着色するおそれがあるとともに、製造コストが上昇するおそれがあり、より好適には5以下であり、さらに好適には3以下である。
【0094】
触媒失活剤(E)を押出機へ導入する方法は特に限定されないが、均一に分散させるためには、溶融状態の変性EVOH(C)に対して、触媒失活剤(E)の溶液として導入することが好ましい。触媒失活剤(E)の溶解性や、周辺環境への影響などを考慮すれば、水溶液として添加することが好ましい。
【0095】
触媒失活剤(E)の押出機への添加位置は、EVOH(A)と一価エポキシ化合物(B)とを、触媒(D)の存在下に溶融混練した後であればよい。しかしながら、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と一価エポキシ化合物(B)とを、触媒(D)の存在下に溶融混練し、未反応の一価エポキシ化合物(B)を除去した後に触媒失活剤(E)を添加することが好ましい。前述のように、触媒失活剤(E)を水溶液として添加する場合には、未反応の一価エポキシ化合物(B)を除去する前に触媒失活剤(E)を添加したのでは、ベント等で除去して回収使用する一価エポキシ化合物(B)の中に水が混入することになり、分離操作に手間がかかるからである。なお、触媒失活剤(E)の水溶液を添加した後で、ベント等によって水分を除去することも好ましい。
【0096】
本発明の製造方法において、触媒失活剤(E)を使用する場合の好適な製造プロセスとしては、
(1)EVOH(A)の溶融工程;
(2)一価エポキシ化合物(B)と触媒(D)の混合物の添加工程;
(3)未反応の一価エポキシ化合物(B)の除去工程;
(4)触媒失活剤(E)水溶液の添加工程;
(5)水分の減圧除去工程;
の各工程からなるものが例示される。
【0097】
変性EVOH(C)は、周期律表第3〜12族に属する金属のイオンを0.1〜20μmol/g含有することが好ましい。かかる金属のイオンは、前述の製造方法において触媒(D)を使用した際の触媒残渣として含有され得るものであり、その好適な金属のイオンの種類については、前述の触媒(D)の説明のところで述べたとおりである。より好適には0.5μmol/g以上である。また、より好適には10μmol/g以下である。
【0098】
また、変性EVOH(C)は、スルホン酸イオンを含有することが好適である。かかるスルホン酸イオンは、前述の製造方法において触媒(D)を使用した際の触媒残渣として含有され得るものであり、その好適なスルホン酸イオンの種類については、前述の触媒(D)の説明のところで述べたとおりである。スルホン酸イオンの含有量は0.1〜20μmol/gであることが好適である。より好適には0.5μmol/g以上である。また、より好適には10μmol/g以下である。
【0099】
さらに、変性EVOH(C)中のアルカリ金属イオンの含有量がスルホン酸イオンの含有量の1〜50倍(モル比)であることが好適である。アルカリ金属イオンは、前述の製造方法において触媒失活剤(E)を使用した際の残渣として含有され得るとともに、原料のEVOH(A)に由来して含有され得るものである。当該アルカリ金属イオンの含有量がスルホン酸イオンの含有量の1倍未満である場合には、製造工程において、触媒(D)の失活が十分に行われておらず、変性EVOH(C)の熱安定性に問題を生じる場合があり、より好適には2倍以上である。一方、アルカリ金属イオンの含有量がスルホン酸イオンの含有量の50倍を超える場合には、変性EVOH(C)が着色するおそれがあり、好適には30倍以下である。
【0100】
変性EVOH(C)には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、カルボン酸及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を、EVOH(A)とエポキシ化合物(B)との反応によって変性EVOH(C)が得られた後に添加することもできる。一般に、接着性の改善や着色の抑制など、EVOHの各種物性を改善するために、EVOHには必要に応じてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、カルボン酸及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種が添加されることが多い。しかしながら、上記に示した各種化合物の添加は、前述の通り、押出機によるEVOH(A)とエポキシ化合物(B)との反応の際に、着色や粘度低下等の原因となるおそれがある。このため、EVOH(A)とエポキシ化合物(B)との反応後に、残存するエポキシ化合物(B)をベントで除去した後、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、カルボン酸及びリン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を、得られた変性EVOH(C)に添加することが好ましい。この添加方法を採用することにより、着色や粘度低下等の問題を生じることなく、変性EVOH(C)が得られる。
【0101】
変性EVOH(C)は、エチレン単位と、ビニルアルコール単位と、構造単位(I)とを有する。例えば、上記のようにEVOH(A)をエポキシ化合物(B)と反応させた場合、元のEVOH(A)のエチレン単位はそのまま変性EVOH(C)のエチレン単位に、ビニルアルコール単位の一部が構造単位(I)に、残る部分はビニルアルコール単位となる。
【0102】
変性EVOH(C)中の構造単位(I)の割合は、0.5モル%以上であり、好ましくは1モル%以上であり、さらに好ましくは2モル%以上である。また構造単位(I)の割合は40モル%以下であり、好ましくは35モル%以下であり、より好ましくは25モル%以下である。ここでいう構造単位(I)の割合とは、構造単位(I)、エチレン単位及びビニルアルコール単位の合計モル数に対する構造単位(I)のモル数の割合である。
【0103】
変性EVOH(C)中の構造単位(I)の割合が0.5モル%より小さい場合、これと構造単位(I)を含まないEVOH(F)とを含む、本発明の熱収縮フィルムを構成する樹脂組成物(G)の延伸性が十分に得られない。また、構造単位(I)の割合が40モル%より大きい場合には、ガスバリア性が十分でなくなる場合がある。
【0104】
本発明の熱収縮フィルムにおいて、変性EVOH(C)を含む層を構成する樹脂組成物(G)は、変性EVOH(C)とともに上記式(I)であらわされる構造単位を有しないエチレン−ビニルアルコール共重合体(F)(以下、EVOH(F)と略記することがある)をも含む。
【0105】
EVOH(F)のエチレン含量は5〜55モル%、好ましくは10〜50モル%、より好ましくは20〜45モル%である。エチレン含量が小さすぎる場合、耐水性、耐熱安定性が不足する場合がある。一方、エチレン含量が大きすぎる場合はガスバリア性が十分でなくなる場合がある。
【0106】
EVOH(F)のビニルエステル成分のケン化度は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。ケン化度が90%未満では、ガスバリア性、特に高湿時のバリア性が低下する虞があるだけではなく、熱安定性が不十分となり成形物にゲル・ブツが発生しやすくなる虞がある。
【0107】
本発明のEVOH(F)のメルトフローレート(MFR)(190℃、2160g荷重下)については特に限定はされないが、好ましくは0.1〜30g/10分であり、好ましくは0.3〜25g/10分、より好ましくは0.5g〜20g/10分である。該メルトフローレートが該範囲よりも小さい場合には、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難になる傾向にあり、また該範囲よりも大きい場合には、外観性やガスバリア性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0108】
さらに、EVOH(F)として、本発明の目的を阻害しない範囲内で、ホウ素化合物をブレンドしたEVOHを用いることもできる。ここで、ホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、などが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂等が挙げられる。これらの化合物のうちでもオルトホウ酸(以下、ホウ酸と例示する場合がある)が好ましい。
【0109】
EVOH(A)として、ホウ素化合物をブレンドしたEVOH(A)を用いる場合、ホウ素化合物の含有量は好ましくはホウ素元素換算で20〜2000ppm、より好ましくは50〜1000ppmである。この範囲内でホウ素化合物をブレンドすることで加熱溶融時のトルク変動が抑制されたEVOH(A)を得ることができる。20ppm未満ではそのような効果が小さく、2000ppmを超えるとゲル化しやすく、成形性不良となる場合がある。
【0110】
また、EVOH(A)として、リン酸化合物を配合したEVOH(A)を用いてもよい。これにより樹脂の品質(着色等)を安定させることができる場合がある。本発明に用いられるリン酸化合物としては特に限定されず、リン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸塩としては第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩のいずれの形で含まれていても良いが、第一リン酸塩が好ましい。そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。これらの中でもリン酸二水素ナトリウム及びリン酸二水素カリウムが好ましい。リン酸化合物を配合したEVOH(A)を用いる場合の、リン酸化合物の含有量は、好適にはリン酸根換算で200ppm以下であり、より好適には5〜100ppmであり、最適には5〜50ppmである。
【0111】
変性EVOH(C)とEVOH(F)のそれぞれのエチレン含有量の組み合わせは、目的に対応して調整される。
【0112】
本発明における樹脂組成物(G)は、変性EVOH(C)とEVOH(F)との合計に対して変性EVOH(C)を5〜50重量%含む。変性EVOH(C)の含有率が5%未満の場合高い収縮率を得ることが困難になる。一方、変性EVOH(C)の含有率が50重量%を超える場合、ガスバリア性が不良となる傾向がある。
【0113】
樹脂組成物(G)中には必要に応じて他の樹脂や後述の添加剤を含んでよいが、ガスバリア性を確保する観点からは、樹脂組成物(G)は、主として変性EVOH(C)とEVOH(F)からなることが望ましい。具体的には変性EVOH(C)とEVOH(F)の合計重量が、樹脂組成物(G)全体の重量に対し80重量%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、実質的に樹脂組成物(G)が変性EVOH(C)とEVOH(F)とのみから成っていても良い。
【0114】
ここで、本発明の効果を奏するためには、樹脂組成物(G)が変性EVOH(C)と、構造単位(I)を含まないEVOH(F)とを適切な割合で含むことが重要である。例えば、平均の変性度が等しくても、変性EVOH(C)単体に比べて、変性EVOH(C)とEVOH(F)とを上記の比率で含む混合物の方がガスバリア性、収縮率において優れる。
【0115】
また、本発明における樹脂組成物(G)は、上記の比率で構造単位(I)を含む変性EVOH(C)と構造単位(I)を含まないEVOH(F)を含む場合、通常EVOH(F)のマトリクス中に変性EVOH(C)が分散している、いわゆる海島構造を有する。
【0116】
上記のように、変性EVOH(C)とEVOH(F)とを含む樹脂組成物(G)が、特に単独の変性EVOH(C)と比較しても優れた収縮率とガスバリア性を両立させうる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推定される。即ち、単独の変性EVOH(C)の場合は延伸性に優れるが、延伸した際に残留応力(歪)が発生しにくいのに対し、樹脂組成物(G)においては、島成分である変性EVOH(C)が延伸性を改善する一方で、高延伸すると海成分のEVOH(F)に残留応力が発生するため、高い熱収縮率を得られるものと推定される。加えて、ガスバリア性の良好なEVOH(F)がマトリクスを形成するため、同一エチレン含量の変性されていないEVOHに比べ若干ガスバリア性が低い変性EVOH(C)が樹脂組成物(G)のガスバリア性に与える影響が少ないためと考えられる。
【0117】
また、本発明の樹脂組成物(G)中の変性EVOH(C)とEVOH(F)の平均の構造単位(I)含有率は0.1モル%以上が好ましく、0.2モル%以上がより好ましく、0.5モル%以上がさらに好ましい。一方、平均の構造単位(I)含有率は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましく、3モル%以下がさらに好ましい。平均の構造単位(I)含有率が低すぎる場合充分な収縮率が得られない場合があり、高すぎる場合にはガスバリア性が十分でなくなる場合がある。なお、ここでいう平均の構造単位(I)含有率とは、変性EVOH(C)に含まれる構造単位(I)のモル数の、変性EVOH(C)とEVOH(F)に含まれる構造単位(I)、ビニルアルコール単位およびエチレン単位の合計モル数に対するモル分率である。
【0118】
本発明において樹脂組成物(G)を含む層には、必要に応じて各種の添加物を配合することができる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラーあるいは他の高分子化合物を挙げることができ、上記本発明における樹脂組成物(G)に本発明の効果を損なわない範囲でブレンドすることができる。添加剤の具体的な例としては次のような物が挙げられる。
【0119】
酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチル−ハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等。
紫外線吸収剤:エチレン−2−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等。
可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等。
帯電防止剤:ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、カーボワックス等。
滑剤:エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等。
着色剤:カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等。
充填剤:グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウム等。
【0120】
また、樹脂組成物(G)には、溶融安定性等を改善するために、本発明の作用効果が阻害されない程度に、ハイドロタルサイト化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)の一種又は二種以上を樹脂組成物に対し本発明の作用効果が阻害されない程度(0.001〜1重量%)添加することもできる。
【0121】
本発明の熱収縮フィルムは、変性EVOH(C)を含む樹脂組成物(G)からなる層が単層でもよいが、通常はさらにその他の熱可塑性樹脂(T)からなる層を有する多層フィルムである。
【0122】
その他の熱可塑性樹脂(T)として、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン(ブロック及びランダム)共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどの広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリスチレン、塩素化ポリプロピレン、芳香族または脂肪族ポリケトン、更にこれらを還元して得られるポリアルコール類、更には他のEVOH等が挙げられる。
【0123】
これらの熱可塑性樹脂の中で、ヒートシール性及び収縮性の観点からはエチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ポリエチレン等が、また突刺強度や耐ピンホール性等の機械強度の観点からはポリアミド系樹脂が好ましく用いられる。
【0124】
このような層を含む多層体の構成に特に制限はないが、変性EVOH(C)を含む樹脂組成物(G)からなる層(以下、単に変性EVOH(C)層と記すことがある)をC、その他の熱可塑性樹脂層をTとしたとき、T/C、T/C/Tなどの構成を採用することができる。また、それぞれの層の間には接着層が存在していても良い。
【0125】
かかる接着層を構成する接着性樹脂としては、種々のものを使用することができ、積層させる樹脂の種類によって一概には言えないが、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(上述の広義のポリオレフィン系樹脂)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性ポリオレフィン系重合体を挙げることができ、具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロック及びランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
【0126】
熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いた場合の構成例として、ポリエチレン/接着層/変性EVOH(C)層/接着層/ポリエチレン、ポリプロピレン/接着層/変性EVOH(C)層/接着層/ポリプロピレン、アイオノマー/接着層/変性EVOH(C)層/接着層/アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体/接着層/変性EVOH(C)層/接着層/エチレン−酢酸ビニル共重合体等が好適なものとして挙げられる。
【0127】
熱可塑性樹脂としてポリアミド系樹脂を用いる場合、ポリアミド系樹脂層と変性EVOH(C)層とが隣接する構成が好ましく用いられる。この場合、ポリアミド系樹脂層と変性EVOH(C)層との間には接着層を含むことを妨げないが、接着層を含まない構成が好ましい。このような構成をとることで優れたガスバリア性と耐突き刺し強度が得られ、さらに変性EVOH(C)層に代えて汎用のバリア性樹脂を用いた場合に比べ、収縮後にも優れた透明性が得られる。
【0128】
このようにポリアミド系樹脂層と変性EVOH(C)層が隣接する場合の構成として、ポリアミド系樹脂層をNとすると、N/C/T、T/N/C/N/T、N/N/C/N/Tなどの構成が例示できる。例えば、ポリアミド/変性EVOH(C)を含む層/接着層/エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン/接着層/ポリアミド/変性EVOH(C)層/ポリアミド/接着層/ポリエチレン、ポリアミド/接着層/ポリアミド/変性EVOH(C)層/ポリアミド/接着層/ポリエチレン等が好適なものとして挙げられる。
【0129】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。以下、実施例にて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。EVOH(A)、変性EVOH(C)、EVOH(F)、及び樹脂組成物に関する分析は以下の方法に従って行った。
【0130】
(1)EVOH(A)及びEVOH(F)のエチレン含有量及びケン化度
重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒としたH−NMR(核磁気共鳴)測定(日本電子社製「JNM−GX−500型」を使用)により得られたスペクトルから算出した。
【0131】
(2)EVOH(A)の固有粘度
試料とする乾燥EVOH(A)からなる乾燥ペレット0.20gを精秤し、これを含水フェノール(水/フェノール=15/85:重量比)40mlに60℃にて3〜4時間加熱溶解させ、温度30℃にて、オストワルド型粘度計にて測定し(t0=90秒)、下式により固有粘度[η]を求めた。
[η]=(2×(ηsp−lnηrel))1/2/C (L/g)
ηsp= t/ t0−1 (specific viscosity)
ηrel= t/ t0 (relative viscosity)
C ;EVOH濃度(g/L)
t0:ブランク(含水フェノール)が粘度計を通過する時間
t:サンプルを溶解させた含水フェノール溶液が粘度計を通過する時間
【0132】
(3)EVOH(A)及びEVOH(F)中の酢酸の含有量の定量
試料とするEVOHの乾燥ペレット20gをイオン交換水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。抽出液をフェノールフタレインを指示薬として、1/50規定のNaOHで中和滴定し、酢酸の含有量を定量した。
【0133】
(4)EVOH(A)、変性EVOH(C)及びEVOH(F)中のNaイオン、Kイオン、Mgイオン及びCaイオンの定量
試料とするEVOH又は変性EVOH(C)の乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、Na、K、Mg、Caイオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−C25を使用し、溶離液は5.0mMの酒石酸と1.0mMの2,6−ピリジンジカルボン酸を含む水溶液とした。なお、定量に際してはそれぞれ塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液及び塩化カルシウム水溶液で作成した検量線を用いた。
【0134】
(5)EVOH(A)、変性EVOH(C)及びEVOH(F)中のリン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンの定量
試料とするEVOH又は変性EVOH(C)の乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をイオンクロマトグラフィーを用いて定量分析し、リン酸イオン及びトリフルオロメタンスルホン酸イオンの量を定量した。カラムは、(株)横河電機製のICS−A23を使用し、溶離液は2.5mMの炭酸ナトリウムと1.0mMの炭酸水素ナトリウムを含む水溶液とした。なお、定量に際してはリン酸二水素ナトリウム水溶液及びトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム水溶液で作成した検量線を用いた。
【0135】
(6)変性EVOH(C)中の亜鉛イオン及びイットリウムイオンの定量
試料とする変性EVOH(C)乾燥ペレット10gを0.01規定の塩酸水溶液50mlに投入し、95℃で6時間撹拌した。撹拌後の水溶液をICP発光分析により分析した。装置はパーキンエルマー社のOptima4300DVを用いた。測定波長は亜鉛イオンの測定においては206.20nmを、イットリウムイオンの測定においては360.07nmをそれぞれ用いた。なお、定量に際しては市販の亜鉛標準液及びイットリウム標準液をそれぞれ使用して作成した検量線を用いた。
【0136】
(7)EVOH(A)、変性EVOH(C)及びEVOH(F)の融点
EVOH及び変性EVOH(C)の融点は、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計(DSC)RDC220/SSC5200H型を用い、JIS K7121に基づいて測定した。但し、温度の校正にはインジウムと鉛を用いた。
【0137】
(8)EVOH(A)、変性EVOH(C)、EVOH(F)、及び樹脂組成物のメルトフローレート(MFR):
メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)を用いて測定した。具体的には、測定する樹脂{EVOH(A)、変性EVOH(C)、EVOH(F)、あるいは樹脂組成物}のチップを、内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填し、190℃で溶融した後(実施例10は210℃で溶融)、溶融した樹脂に対して、重さ2160g、直径9.48mmのプランジャーによって均等に荷重をかけ、シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより押出された樹脂の流出速度(g/10分)を測定し、これをメルトフローレート(MFR)とした。
【0138】
[合成例1]
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.8%、固有粘度0.096L/g、MFR=5g/10分(190℃、2160g荷重下)のEVOH{酢酸含有量53ppm、ナトリウム含有量1ppm(金属元素換算)、カリウム含有量8ppm(金属元素換算)、リン酸化合物含有量20ppm(リン酸根換算値)}のペレット5kgをポリエチレン製袋に入れた。そして、酢酸亜鉛二水和物27.44g(0.125mol)及びトリフルオロメタンスルホン酸15g(0.1mol)を水500gに溶解させて水溶液を調製し、前記水溶液を袋の中のEVOHに添加した。以上のようにして触媒溶液が添加されたEVOHを、時々、振り混ぜながら袋の口を閉じた状態で90℃で5時間加熱し、EVOHに触媒溶液を含浸させた。得られたEVOHを、90℃で真空乾燥することにより、亜鉛イオンを含む触媒(D)を含有するEVOHを得た。
【0139】
EVOH(A)として、エチレン含有量32モル%、ケン化度99.8%、MFR=5g/10分(190℃、2160g荷重下)のEVOH{酢酸含有量53ppm、ナトリウム含有量1ppm(金属元素換算)、カリウム含有量8ppm(金属元素換算)、リン酸化合物含有量20ppm(リン酸根換算値)}のEVOH90重量部に、前記亜鉛イオンを含む触媒(D)を含有するEVOH10重量部をドライブレンドしたものを用いた。また、分子量500以下の一価エポキシ化合物(B)としてエポキシプロパンを用いた。
【0140】
東芝機械社製TEM−35BS押出機(37mmφ、L/D=52.5)を使用し、図5に示すようにスクリュー構成及びベント及び圧入口を設置した。バレルC1を水冷し、バレルC2〜C3を200℃、C4〜C15を220℃に設定し、スクリュー回転数200rpmで運転した。C1の樹脂フィード口から、ドライブレンドされた混合物からなり触媒(D)を含有する上記EVOH(A)を11kg/hrの割合でフィードし、ベント1を内圧60mmHgに減圧し、C8の圧入口1からエポキシプロパンを2.5kg/hrの割合でフィードした(フィード時の圧力:3.5MPa)。ベント2を内圧200mmHgに減圧し、未反応のエポキシプロパンを除去し、C13の圧入口2から0.14kg/hrの割合でエチレンジアミン4酢酸3ナトリウム3水和物8.2重量%水溶液を添加した。
【0141】
上記溶融混練操作における、一価エポキシ化合物(B)の混合割合は、EVOH(A)100重量部に対して22.7重量部であった。EVOH(A)の重量に対する金属イオンのモル数で2.5μmol/gの触媒(D)が添加された。触媒(D)に含まれる金属イオンのモル数に対する触媒失活剤(E)のモル数の比(E/D)は1であった。
【0142】
ベント3を内圧20mmHgに減圧し、水分を除去して、変性EVOH(C)を得た。前記変性EVOH(C)のMFRは5g/10分(190℃、2160g荷重下)であり、融点は133℃であった。また、亜鉛イオン含有量は150ppm(2.3μmol/g)であり、アルカリ金属塩含有量は金属元素換算で168ppm(7.1μmol/g)[ナトリウム:160ppm(6.9μmol/g)、カリウム:8ppm(0.2μmol/g)]であり、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量は270ppm(1.8μmol/g)であった。アルカリ金属イオンの含有量は、トリフルオロメタンスルホン酸イオンの含有量の3.9倍(モル比)であった。
【0143】
こうして得られた、エポキシプロパンで変性された変性EVOH(C)の化学構造については、以下の手順に従って変性EVOH(C)をトリフルオロアセチル化した後にNMR測定を行うことによって求めた。
【0144】
上記作製した変性EVOH(C)を粒子径0.2mm以下に粉砕した後、この粉末1gを100mlナスフラスコに入れ、塩化メチレン20g及び無水トリフルオロ酢酸10gを添加し、室温で攪拌した。攪拌開始から1時間後、前記変性EVOH(C)は完全に溶解した。前記変性EVOH(C)が完全に溶解してからさらに1時間攪拌した後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。得られたトリフルオロアセチル化された変性EVOH(C)を2g/Lの濃度で重クロロホルムと無水トリフルオロ酢酸の混合溶媒(重クロロホルム/無水トリフルオロ酢酸=2/1(重量比))に溶解し、テトラメチルシランを内部標準として500MHzH−NMRを測定した。
【0145】
エポキシプロパン変性された変性EVOH(C)中の化学構造について、以下の各構造単位の含有量を求めた。
w:エチレン含有量(モル%)
x:未変性のビニルアルコール単位の含有量(モル%)
y:下記式(XVI)で表される構造単位(モル%)
z:下記式(XVII)で表される構造単位(モル%)
【0146】
【化13】

【0147】
【化14】

【0148】
上記w〜zの間で、下記式(1)〜(4)で示される関係が成り立つ。
4w+2x+5y+5z=A (1)
3y+2z=B (2)
2z=C (3)
x+y=D (4)
ただし、上記式(1)〜(4)中、A〜Dは、それぞれ変性EVOH(C)の
H−NMR測定における下記範囲のシグナルの積分値である。
A:δ1.1〜2.5ppmのシグナルの積分値
B:δ3.1〜4ppmのシグナルの積分値
C:δ4.1〜4.6ppmのシグナルの積分値
D:δ4.8〜5.6ppmのシグナルの積分値
【0149】
上記式(1)〜(4)から、変性EVOH(C)のエチレン含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)のエチレン含有量(モル%)
={w/(w+x+y+z)}×100
={(2A−2B−3C−4D)/(2A−2B+C+4D)}×100
同様に、変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量が以下のように求められる。
変性EVOH(C)の構造単位(I)の含有量(モル%)
={(y+z)/(w+x+y+z)}×100
={(8B+4C)/(6A−6B+3C+12D)}×100
【0150】
こうして得られた変性EVOH(C)のエチレン含有量は32モル%であり、構造単位(I)の含有量は8モル%であった。
【実施例1】
【0151】
合成例1で得られたエチレン含量32モルの変性EVOH(C)(変性度8モル%)20重量部とエチレン含量32モルの未変性EVOH(F)80重量部をドライブレンド後二軸押出機にて溶融混練、ペレット化した。得られたペレット用いて、40φ押出機(PLABOR GT−40−A)とTダイからなる製膜機を用いて、下記押出し条件で製膜し、厚み100μmの単層フィルム(延伸原反)を作成した。得られた原反を用いて、東洋精機製パンタグラフ式二軸延伸装置にて80℃で30秒間予熱後、延伸倍率4×4倍で同時二軸延伸を行い、延伸フィルムを得た。
(押出条件)
形式: 単軸押出機
L/D: 24
口径: 40mmφ
スクリュー: 一条フルフライトタイプ
スクリュー回転数: 40rpm
ダイス: 550mmコートハンガーダイ
リップ間隙: 0.3mm
シリンダー、ダイ温度設定:C1/C2/C3/ダイ=170/170/210/210/220(℃)
【0152】
得られた延伸フィルムにつき、酸素透過速度、収縮率を測定した。また、得られたフィルムの外観から樹脂組成物の熱安定性を評価した。結果を表1に示す。なお、酸素透過速度、収縮率、熱安定性の測定・評価方法に関しては後述する。
【実施例2】
【0153】
エチレン含量32モルの変性EVOH(C)(変性度8モル%)とエチレン含量32モルのEVOH(F)の重量比を30:70(重量比)とした以外は実施例1と同様に延伸フィルムを作成し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0154】
[比較例1]
変性EVOH(C)と未変性のEVOH(F)とからなるペレットに代えて、エチレン含量32モルの変性EVOH(C)(変性度8モル%)ペレットを用いた点以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを作成し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0155】
[比較例2]
変性EVOH(C)と未変性のEVOH(F)とからなるペレットに代えて、エチレン含量32モルの未変性EVOH(F)のペレットを用いた点以外は実施例1と同様にして単層フィルムを作成した。得られた単層フィルムを実施例1と同様に延伸を試みたが、破断してしまい延伸フィルムは得られなかった。このため延伸フィルムの熱収縮性、酸素透過性は測定できなかった。
【0156】
[比較例3]
変性EVOH(C)と未変性のEVOH(F)とからなるペレットに代えて、エチレン含量32モルの変性EVOH(C)(変性度1.6モル%)のペレットを用いた点以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0157】
[比較例4]
変性EVOH(C)と未変性のEVOH(F)とからなるペレットに代えて、エチレン含量32モルの変性EVOH(C)(変性度2.4モル%)のペレットを用いた点以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0158】
【表1】

【0159】
表1に示されるように、変性EVOH(C)に未変性EVOH(F)を特定の割合内で配合した実施例1、2では酸素透過速度及び収縮率、熱安定性が変性EVOH(C)のみの比較例1、3、4よりも良好となる。また、延伸性が未変性EVOH(F)のみの比較例2よりも良好となり、優れた物性を有する熱収縮性フィルムを得ることができる。
【実施例3】
【0160】
合成例1で得られたエチレン含量32モルの変性EVOH(C)(変性度8モル%)20重量部と、エチレン含量32モルの未変性EVOH(F)80重量部をドライブレンド後二軸押出機にて溶融混練、ペレット化した。得られたペレットを用いて、下記3種5層共押出装置を用いて、下記共押出成形条件で多層シート(アイオノマー樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物/接着性樹脂層/アイオノマー樹脂層)を作成した。シートの構成は両外層のアイオノマー樹脂(三井デュポンポリケミカル製「ハイミラン1652」)層が各100μm、また接着性樹脂(三井化学製「アドマーNF500」)層が各50μm、さらに樹脂組成物層が50μmである。得られた多層シートを用いて、パンタグラフ式二軸延伸機にて80℃で30秒間予熱後に延伸倍率4×4倍で同時二軸延伸を行い、多層延伸フィルムを得た。得られた多層延伸フィルムの酸素透過速度、収縮率、透明性、熱安定性等を後述の方法で評価した結果を表2に示す。
【0161】
(共押出成形条件)
層構成:アイオノマー樹脂/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/アイオノマー樹脂層(厚み100/50/50/50/100:単位はμm)
各樹脂の押出温度:C1/C2/C3/ダイ=170/170/220/220℃
各樹脂の押出機、Tダイ仕様:
アイオノマー樹脂:32φ押出機 GT−32−A型(株式会社プラスチック工学研究所製)
接着性樹脂:25φ押出機 P25−18−AC型(大阪精機工作株式会社製)
変性EVOH:20φ押出機 ラボ機ME型CO−EXT(株式会社東洋精機製)
Tダイ:300mm幅3種5層用(株式会社プラスチック工学研究所製)
冷却ロールの温度:50℃
引取速度:4m/分
【実施例4】
【0162】
変性EVOH(C)(変性度8モル%)とエチレン含量32モルの未変性EVOH(F)との重量比を30:70(重量比)とした以外は実施例3と同様に多層延伸フィルムを作成、評価した。評価結果は表2に示す。
【0163】
[比較例5]
変性EVOH(C)(変性度8モル%)20重量部と、未変性EVOH(F)80重量部からなるペレットに代えて、エチレン含量32モルの変性EVOH(C)(変性度8モル%)ペレットを用いた以外は実施例3と同様に多層延伸フィルムを作成、評価した。評価結果は表2に示す。
【0164】
[比較例6]
変性EVOH(C)(変性度8モル%)20重量部と、未変性EVOH(F)80重量部からなるペレットに代えて、エチレン含量32モルの未変性EVOH(F)ペレットを用いた以外は実施例3と同様に多層フィルムを作成した。得られた多層フィルムを実施例3と同様に延伸を試みたが、破断してしまい延伸フィルムは得られなかった。このため延伸フィルムの熱収縮性、酸素透過性、及び収縮後のヘイズは測定できなかった。
【0165】
[比較例7]
市販のPVDC系熱収縮フィルム(旭化成製バリアロン−S)の酸素透過速度、収縮性、ヘイズを評価した。なお、上記PVDC系熱収縮フィルムの層構成は以下のとおりである。
層構成:ポリエチレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体/ポリ塩化ビニリデン/エチレン−酢酸ビニル共重合体/ポリエチレン(厚み7/18/9/25/13:単位はμm)
なお、収縮率およびヘイズは、90℃10秒間熱水に浸漬して収縮させた際の収縮率及び収縮後のヘイズを測定した。
【0166】
[比較例8]
比較例7と同様のPVDC系熱収縮フィルム(旭化成製バリアロン−S)を用いて評価した。なお、80℃10秒間熱水に浸漬して収縮させ、収縮率及びヘイズを測定した。
【0167】
【表2】

【0168】
表2に示したとおり、変性EVOH(C)とEVOH(F)を特定の割合内で配合する事によって高いガスバリア性と延伸性の両立が可能となり、また高い収縮率及び優れた熱安定性を有する熱収縮性フィルムを得ることができる。さらに、市販のPVDC系フィルムに比べて、収縮率を等しくした場合、収縮後のヘイズ値が低く透明性に優れており、内容物の美麗感を引き立てることが可能となる。
【0169】
なお、実施例における各測定、評価は以下の方法に従って行った。
【0170】
[酸素バリア性の測定]
上記作成した延伸フィルムを、20℃65%RHで1週間調湿した。前記の調湿済みのフィルムサンプルを2枚使用して、モダンコントロール社製MOCON−OXTRAN2/20型を用いて、20℃−65%RHの条件下でJIS K7126(等圧法)に記載の方法に準じて測定し、その平均値を求めた。表中の値は、バリア層の厚みを20μに換算した値である。
【0171】
[延伸性評価]
判定: 基準
A :延伸ムラ、偏肉が認められず、外観良好である。
B :延伸ムラ、偏肉が若干認められるものの、使用可能
C :フィルムに破れが生じた。
【0172】
[収縮率の測定]
上記作成した延伸フィルムを10cm×10cmにカットし、ASTM−D2732に準じて90℃の熱水に10秒浸漬させ、面積収縮率(%)を下記のように算出した。
面積収縮率(%)={(S−s)/S}×100
S:シュリンク前のフィルムの面積
s:シュリンク後のフィルムの面積
【0173】
[熱安定性評価]
1時間製膜後のフィルム(延伸前)のゲル状ブツ(肉眼で確認できる約100μm以上のもの)を数え、1.0m当りに換算した。ブツの個数により以下のように判定した。
判定: 基準
A :20個未満
B :20〜40個
C :40〜60個
【0174】
[ヘイズ(透明性)の測定]
上記作成した延伸フィルムを所定の温度の熱水で10秒間収縮させた後、ヘイズをJIS−K7105に準じて測定した。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明によれば、熱収縮性、ガスバリア性、製造時の熱安定性に優れた熱収縮性フィルム、収縮後の透明性に優れた多層熱収縮性フィルムが提供され、食品特に食肉用、医薬品、工業薬品、薬品、農薬、電子部品、機械部品などの包装材料として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造単位(I)を0.5〜40モル%含有するエチレン含量5〜55モル%の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)と、構造単位(I)を含有しないエチレン含量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(F)とを含み、該変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)と該エチレン−ビニルアルコール共重合体(F)との合計量に対する該変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)量が5〜50重量%である樹脂組成物(G)からなる層を有する熱収縮性フィルム。
【化1】


{式中、R、R、R、及びRは水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基または炭素数6〜10の芳香属炭化水素基を表す。R、R、R、及びRは同じ基でも良いし、異なっていても良い。またRとRとは結合していてもよい。またR、R、R、及びRは水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基又はハロゲン原子を有していてもよい}
【請求項2】
上記構造単位(I)において、式中R及びRが水素原子であり、R及びRの一方が水素原子であり、他方が、メチル基、エチル基及びヒドロキシメチル基からなる群より選ばれる少なくともひとつである請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
【請求項3】
上記樹脂組成物(G)からなる層と、上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(C)以外の熱可塑性樹脂(T)からなる層とを有する請求項1または2に記載の多層熱収縮性フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性フィルムからなる食肉用シュリンクバッグ

【公開番号】特開2008−56736(P2008−56736A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232220(P2006−232220)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】