説明

熱収縮性フィルム

【課題】搬送時のたるみ、そりが少なく、所望の文字、模様等の形成が行なえる熱収縮性フィルムを得ること。
【解決手段】熱収縮性フィルム10の熱収縮方向MDのガーレー剛性が、0.85mN以上であるので、インクジェット式プリンター1で搬送される際に、搬送方向TDにたわみにくく、搬送方向TDに対してたるみが生じにくい。したがって、搬送速度にむらが発生しにくく、所望の文字、模様等の形成ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置で搬送され、液体噴射装置に搭載された液体噴射ヘッドから噴射される液体を受ける液体受容層を備えた熱収縮性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品の包装用資材としての熱収縮性フィルムが知られている。熱収縮性フィルムとしては、熱収縮性基材上に液体受容層が形成されたものが知られ、例えば、液体としてのインク滴を、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンターに搭載された液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式ヘッドによって液体受容層であるインク受容層に打ち込み、色彩を組み合わせた文字、模様等を形成する。熱収縮性フィルムは、熱を加えることにより収縮して物品に密着し、物品の形状とともに外観を構成する。ここで、物品の形状を生かし、重量の増加を抑えるためには、薄い熱収縮性基材が好ましく、60μm以下の厚さの熱収縮性基材が用いられる。
また、インクジェット式プリンターは、コンピューター等からの指令により、形成する文字、模様および色彩等の変更が、スクリーン印刷等と比較して容易に行なえ、サンプル作成、校正刷り、少量の物品の生産等に適している。
液体受容層を備えた熱収縮性フィルムとして、熱収縮性能を有する20〜150μm程度の樹脂フィルムに、液体受容層としての受容剤層が設けられたシュリンクフィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−178352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、60μm以下の厚さの熱収縮性基材を用いた熱収縮性フィルムは、剛性が低いため、搬送時に搬送方向に対してたるみが生じたり、液体受容層の収縮によるそりが生じたりする。
たるみによって、搬送速度にむらが発生し、所望の文字、模様等の形成が困難になる。また、そりが生じると、フィルム詰まりや、液体噴射ヘッドと熱収縮性フィルムとが接触したり、液体噴射ヘッドと熱収縮性フィルムとの間隔がばらついたりして、所望の文字、模様等の形成が困難になる。
さらに、熱収縮性フィルムは、輸送、保管時に自然収縮が生じ、寸法の変化やしわが発生し、所望の文字、模様等の形成が困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る熱収縮性フィルムは、熱収縮方向に巻かれたロールで、液体噴射装置で前記熱収縮方向に搬送され、前記液体噴射装置に搭載された液体噴射ヘッドから噴射される液体を受ける液体受容層を備えた熱収縮性フィルムであって、前記液体受容層が形成された厚みが10μm以上、60μm以下のポリエチレンテレフタレートを含む熱収縮性基材を備え、前記熱収縮性フィルムを6枚重ねた場合の前記熱収縮方向のガーレー剛性が0.85mN以上であることを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、熱収縮性フィルムの熱収縮方向のガーレー剛性が、0.85mN以上であるので、液体噴射装置で熱収縮方向に搬送される際に、搬送方向にたわみにくく、搬送方向に対してたるみが生じにくい。したがって、搬送速度にむらが発生しにくく、所望の文字、模様等の形成ができる。
また、ポリエチレンテレフタレートを含む熱収縮性基材の厚みが10μm以上なので、取り扱い時に大きく変形することが少なく取り扱い易く、60μm以下なので、物品の包装用資材として目立ちすぎることがなく物品の形状を生かせる。
また、液体噴射装置で熱収縮性フィルムをロールから引き出して搬送する際に、熱収縮方向に引き出されるので、熱収縮方向に搬送が行なわれ、搬送方向にたわみにくく、搬送方向に対してたるみが生じにくい。したがって、搬送速度にむらが発生しにくく、所望の文字、模様等の形成ができる。
さらに、熱収縮性フィルムをロールから引き出して搬送する際に、熱収縮方向に力が加わる。熱収縮性フィルムは、熱収縮方向と直交する方向に力が加わった場合と比較して、熱収縮方向に力が加わった場合の方が裂けにくいので、熱収縮方向が搬送方向に直交しているフィルムと比較してフィルムが裂けにくい。
【0008】
[適用例2]上記適用例に記載の熱収縮性フィルムは、前記熱収縮性基材の前記熱収縮方向の最大熱収縮率が、20%以上、55%以下であるのが好ましい。
本適用例では、熱収縮方向の最大熱収縮率が20%以上であるので、熱収縮性フィルムを加熱、収縮させて物品に密着させることができ、55%以下であるので、輸送、保管時の自然収縮が少ない。なお、最大熱収縮率とは、十分な温度と湿度条件の下で可能な限り収縮させた場合における、加熱前の熱収縮フィルの大きさに対する加熱後の熱収縮性フィルムの大きさから求めた収縮率のことである。
【0009】
[適用例3]上記適用例に記載の熱収縮性フィルムは、前記液体受容層はポリウレタン樹脂またはアクリル樹脂のうち少なくとも一方からなる骨格を含んでいるのが好ましい。
本適用例では、ポリウレタン樹脂またはアクリル樹脂のうち少なくとも一方を液体受容層が含んで、骨格を形成しているので、液体の溶媒や周辺水分の出入りによる液体受容層の膨張、収縮が少なく、熱収縮性フィルムにそりが発生しにくい。したがって、熱収縮性フィルムが液体噴射ヘッドに接触しにくい。
【0010】
[適用例4]上記適用例に記載の熱収縮性フィルムは、一辺が200mmの正方形の面を有するシート状の試験片を用いて、前記熱収縮性基材の前記正方形の面を平面に向けて置き、温度27℃湿度65%の環境下で24時間放置後、温度18℃湿度35%の環境下に移して5分間放置した後の前記試験片の四隅の高さの平均値であるそり量が、0mm以上、50mm以下であるのが好ましい。
本適用例では、そり量が0mm以上、50mm以下であるので、フィルム詰まりや、液体を噴射する液体噴射ヘッドと熱収縮性フィルムとの接触が低減し、液体噴射ヘッドと熱収縮性フィルムとの間隔のばらつきが少なくなり、所望の文字、模様等の形成ができる。
そり量が50mmより大きいと、熱収縮性フィルムを吸引して平らにしようとしても、そる力が大きく平らにすることが難しい。
ここで、正方形とは、試験片作成時の作成精度により正方形からずれた形状も含むものである。
【0011】
[適用例5]上記適用例に記載の熱収縮性フィルムは、前記液体受容層の厚みが10μm以上、50μm以下であるのが好ましい。
本適用例では、液体受容層の厚みを10μm以上とすることで、液体受容層としての液体を吸収する機能を確保しつつ、50μm以下とすることで、熱収縮性基材への追従性を確保できるので、収縮への阻害が抑えられ、液体受容層と熱収縮性基材との剥離も抑えられる。また、液体受容層形成時の乾燥にかかる時間が抑えられ、液体受容層形成に使用する材料の量も抑えられるのでコストが抑えられる。
さらに、液体受容層の厚みを50μm以下とすることで、液体受容層の透明度が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】インクジェット式プリンターの全体斜視図。
【図2】インクジェット式プリンターの概略断面図。
【図3】熱収縮性フィルムの断面図。
【図4】ロールの引き出し方向である搬送方向TDにおけるガーレー剛性を示す図。
【図5】ロールの引き出し方向と直交する方向CDにおけるガーレー剛性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
以下、本発明の実施形態にかかる熱収縮性フィルム10について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度は実際とは異なっている。
液体噴射装置としてのインクジェット式プリンター1は、熱収縮性フィルム10を搬送しながら、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)等のインクを噴射して、熱収縮性フィルム10に、文字、模様等を形成する装置である。インクジェット方式としては、例えば、圧電方式、サーマルジェット方式等を用いることができる。
【0014】
図1に、インクジェット式プリンター1の全体斜視図を示した。図には、インクジェット式プリンター1の設置面をX−Y面として、熱収縮性フィルム10の搬送方向TDをX−Y平面に投影した方向をX方向、X方向に直交する方向をY方向、X−Y平面に直交する方向をZ方向として示した。X−Y面が水平面であれば、Z方向は鉛直方向である。
図2には、インクジェット式プリンター1をX−Z平面で切断した概略断面図を示した。
【0015】
図1および図2において、インクジェット式プリンター1は、装置本体2と、装置本体2を下方から支持する支持台3とを備えている。
装置本体2には、熱収縮性フィルム10を支持するプラテン4が熱収縮性フィルム10の搬送方向TDに沿って配設されている。熱収縮性フィルム10は、巻かれてロールとなっており、図示しない搬送機構によりロールから引き出されて、プラテン4の上を従動ローラー8によって搬送方向TDに沿って搬送される。
【0016】
実施形態では、プラテン4は、熱収縮性フィルム10のロール側から順に、X−Y平面に対して傾斜した第1プラテン41、第2プラテン42および第3プラテン43から構成されている。第1プラテン41、第2プラテン42、第3プラテン43は、連続して設けられ、熱収縮性フィルム10のロールから遠ざかるにつれ、X−Y平面に対する角度が大きくなっている。
プラテン4は、XY面またはYZ面と平行に設けられていてもよいし、プラテン4は、熱収縮性フィルム10をプラテン4に密着させるための吸引装置を備えていてもよい。プラテン4のX−Y平面に対する角度が大きく、傾斜が急になるほど、熱収縮性フィルム10とプラテン4とが離れ易くなり、吸引装置が必要となる。
【0017】
熱収縮性フィルム10を挟んで、プラテン4と対向する位置であって、装置本体2の搬送方向TDと直交する主走査方向であるY方向には、棒状のガイドレール5が設けられている。このガイドレール5には、キャリッジ6が支持されている。キャリッジ6は、図示しない駆動機構によりガイドレール5に沿って、装置本体2の主走査方向であるY方向に往復駆動自在に移動する。
【0018】
キャリッジ6は、熱収縮性フィルム10と対向する液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式ヘッド7を搭載している。また、キャリッジ6にはインクジェット式ヘッド7にインクを供給するための図示しないインクカートリッジが装着されている。
【0019】
熱収縮性フィルム10は、プラテン4に沿って搬送方向TDに搬送され、主走査方向に移動するインクジェット式ヘッド7から吐出されるインクによって、文字、模様等が形成され、排紙ローラー9によって排紙される。
【0020】
図3に、熱収縮性フィルム10の断面図を示した。
図3において、熱収縮性フィルム10は、熱収縮性基材11と液体受容層としてのインク受容層12とを備えている。
熱収縮性基材11は、シート長方向を熱収縮方向MDとする基材である。ここで、熱収縮方向MDの最大熱収縮率は、20%以上、55%以下が好ましい。
熱収縮性フィルム10は、熱収縮方向MDに巻かれたロールであり、熱収縮性フィルム10の搬送方向TDと熱収縮方向MDとは同じ方向になっている(図1参照)。熱収縮性フィルム10は、ポリエチレンテレフタレートを含む。
また、熱収縮性基材11の厚みは、10μm以上、60μm以下が好ましい。
【0021】
インク受容層12は、インクを受けて定着させる。インク受容層12は、ポリウレタン樹脂またはアクリル樹脂のうち少なくとも一方からなる骨格を含んでいる。
また、インク受容層12の厚みは、10μm以上、50μm以下が好ましい。
【0022】
図1において、熱収縮性フィルム10は、インク受容層12をインクジェット式ヘッド7に対向する向きにして熱収縮方向MDに搬送され、インクジェット式ヘッド7から吐出されたインクを受ける。
【0023】
以下、実施例および比較例によって実施形態にかかる熱収縮性フィルム10を詳しく説明する。
(実施例)
熱収縮性基材11として、低収縮タイプの厚さ45μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(シーアイ化成株式会社製のボンセット(登録商標)PTRN47B)を用いた。熱収縮性基材11は、搬送方向TD(ロールの引き出し方向)方向に収縮する。
搬送方向TD方向に収縮する、低収縮タイプの厚さ45μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのロールの製造方法としては、非熱収縮性ポリエチレンテレフタレートフィルムのロールからフィルムを引き出しながら熱をかけて引き出し方向に延伸し、急冷して再びロールに巻き取る方法がある。
インク受容層12は、DIC株式会社製パテラコール(登録商標)EG−4Xを熱収縮性基材11上に塗布した後、乾燥して形成した。乾燥後の厚さは20μmであった。
実施例における熱収縮性フィルム10は、最大収縮率は50.5%であった(100℃の湯に30秒間浸漬)。また、例えば、温度80℃湿度50%で加熱した場合、加熱前の熱収縮性フィルム10の大きさに対する加熱後の熱収縮性フィルム10の大きさから求めた熱収縮率は33%であった。以下、熱収縮率は、温度80℃湿度50%で加熱した場合の加熱前の熱収縮性フィルム10の大きさに対する加熱後の熱収縮性フィルム10の大きさから求めた収縮率である。
(比較例1)
実施例における熱収縮性基材11のみのフィルムを比較例1とした。最大熱収縮率は50.5%(100℃の湯に30秒間浸漬)、熱収縮率は33%であった。
(比較例2)
三菱樹脂株式会社製シュリンクフィルム(型番:LX−18s)、搬送方向TD(ロールの引き出し方向)と直交する方向CDに熱収縮するフィルムで最大熱収縮率は76%(100℃の湯に10秒間浸漬)、熱収縮率は52%である。インク受容層12は形成されていない。
(比較例3)
東洋紡績株式会社製シュリンクフィルム(型番:S7042)、搬送方向TD(ロールの引き出し方向)と直交する方向CDに熱収縮するフィルムで最大熱収縮率は60%(100℃の湯に10秒間浸漬)、熱収縮率は41%である。インク受容層12は形成されていない。
比較例2および比較例3のフィルムは、熱収縮方向である方向CDと直交する方向に搬送される。
【0024】
図4は、ロールの引き出し方向である搬送方向TD(実施例および比較例1での熱収縮方向MD)におけるガーレー剛性を示す図である。
図5は、ロールの引き出し方向と直交する方向CD(比較例2および比較例3での熱収縮方向CD)におけるガーレー剛性を示す図である。
【0025】
ガーレー剛性は、フィルムを6枚重ねて、熊谷理機工業株式会社製(Gurley Stiffmess Tester、型番K−105245)を用いて測定した。
測定環境は、温度26℃湿度50%で行なった。また、サンプルサイズは、一辺が2.54cmの正方形の面を有するシート状の短冊で、評価分銅25g、分銅軸距離10.16cmであった。
【0026】
搬送不良の評価は、インクジェット式プリンター1としてセイコーエプソン株式会社製MAXART(登録商標)PX−W8000を用いて行なった。PX−W8000は、プラテンに吸引装置を備えている。
フィルムにたるみが生じることなく搬送できた場合を○、フィルムにたるみが生じ、搬送速度にむらが発生して所望の文字、模様等の形成が困難になる場合を×として搬送不良とした。表1に実施例および各比較例の評価結果を示した。
【0027】
【表1】

【0028】
(環境変化試験)
熱収縮性フィルム10を一辺が200mmの正方形の面を有するシート状にカットして試験片とした。
試験片の熱収縮性基材11の正方形の面を平面に向けて置き、温度27℃湿度65%の環境下で24時間放置後、温度18℃湿度35%の環境下に移して5分間放置した後の試験片の四隅の高さの平均値をそり量とした。
【0029】
環境変化試験は、実施例、比較例4および比較例5によって行なった。
(比較例4)
実施例のインク受容層12をDIC株式会社製パテラコール(登録商標)EG−4Xの代わりに、変性ポリビニルアルコールをカチオン化したものを使用して作成したものを比較例4とした。
(比較例5)
実施例のインク受容層12を備えた有限会社ピクア製シュリンクフィルムIJクリア T目を比較例5とした。
【0030】
(結果)
実施例の反り量は、0mmであったのに対し、比較例4および比較例5ではフィルムが丸まってしまい、反り量の測定が不可能であった。
また、ロールのサンプルでセイコーエプソン株式会社製MAXART(登録商標)PX−W8000を用いて印刷を行なった。
実施例では、フィルム詰まりや、インクジェット式ヘッド7と熱収縮性フィルム10とが接触したり、インクジェット式ヘッド7と熱収縮性フィルム10との間隔がばらついたりすることはなかった。
一方、比較例4および比較例5では、フィルム詰まりや、インクジェット式ヘッド7と熱収縮性フィルム10とが接触したり、インクジェット式ヘッド7と熱収縮性フィルム10との間隔がばらついたりして、所望の文字、模様等の形成が困難であった。
【0031】
以上述べたように、実施形態に係る熱収縮性フィルム10によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)熱収縮性フィルム10の熱収縮方向MDのガーレー剛性が、0.85mN以上であるので、インクジェット式プリンター1で搬送される際に、搬送方向TDにたわみにくく、搬送方向TDに対してたるみが生じにくい。したがって、搬送速度にむらが発生しにくく、所望の文字、模様等の形成ができる。
また、ポリエチレンテレフタレートを含む熱収縮性基材11の厚みが10μm以上なので、取り扱い時に大きく変形することが少なく取り扱い易く、60μm以下なので、物品の包装用資材として目立ちすぎることがなく物品の形状を生かすことができる。
また、インクジェット式プリンター1で熱収縮性フィルム10をロールから引き出して搬送する際に、熱収縮方向MDに引き出されるので、熱収縮方向MDに搬送が行なわれ、搬送方向TDにたわみにくく、搬送方向TDに対してたるみが生じにくい。したがって、搬送速度にむらが発生しにくく、所望の文字、模様等の形成ができる。
さらに、熱収縮性フィルム10をロールから引き出して搬送する際に、搬送方向TDに力が加わる。熱収縮性フィルム10は、熱収縮方向と直交する方向に力が加わった場合と比較して、熱収縮方向に力が加わった場合の方が裂けにくいので、熱収縮方向が搬送方向に直交しているフィルムと比較してフィルムを裂けにくくできる。
【0032】
(2)熱収縮方向MDの最大熱収縮率が20%以上であるので、熱収縮性フィルム10を加熱、収縮させて物品に密着させることができ、55%以下であるので、輸送、保管時の自然収縮も少なくできる。
【0033】
(3)ポリウレタン樹脂またはアクリル樹脂のうち少なくとも一方をインク受容層12が含んで、骨格を形成しているので、インクの溶媒や周辺水分の出入りによるインク受容層12の膨張、収縮が少なく、熱収縮性フィルム10にそりが発生しにくい。したがって、熱収縮性フィルム10をインクジェット式ヘッド7に接触しにくくできる。
【0034】
(4)そり量が0mm以上、50mm以下であるので、フィルム詰まりや、インクを噴射するインクジェット式ヘッド7と熱収縮性フィルム10との接触を低減でき、インクジェット式ヘッド7と熱収縮性フィルム10との間隔のばらつきを少なくでき、所望の文字、模様等の形成ができる。
そり量が50mmより大きいと、熱収縮性フィルム10を吸引して平らにしようとしても、そる力が大きく平らにすることが難しい。
【0035】
(5)インク受容層12の厚みを10μm以上とすることで、インク受容層12としてのインクを吸収する機能を確保しつつ、50μm以下とすることで、熱収縮性基材11への追従性を確保できるので、収縮への阻害が抑えられ、インク受容層12と熱収縮性基材11との剥離も抑えられる。また、インク受容層12形成時の乾燥にかかる時間を抑えることができ、インク受容層12形成に使用する材料の量も抑えられるのでコストを抑えることができる。
さらに、インク受容層12の厚みを50μm以下とすることで、インク受容層12の透明度を確保できる。
【0036】
(6)熱収縮性フィルム10の熱収縮率が50%以下であるので、30℃で長期保管を行なっても自然収縮率が1%未満であり、保管、輸送等による熱収縮性フィルム10のしわ等の発生が抑えられる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。
例えば、熱収縮性フィルム10は、熱収縮性基材11とインク受容層12との間にプライマー層や接着層を備えていてもよい。プライマー層や接着層は、熱収縮性基材11とインク受容層12との密着性を向上させる。
また、熱収縮性基材11とインク受容層12との密着性向上のために、熱収縮性基材11にコロナ放電等の表面改質処理を行なってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…インクジェット式プリンター、2…装置本体、3…支持台、4…プラテン、5…ガイドレール、6…キャリッジ、7…インクジェット式ヘッド、8…従動ローラー、9…排紙ローラー、10…熱収縮性フィルム、11…熱収縮性基材、12…インク受容層、41…第1プラテン、42…第2プラテン、43…第3プラテン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮方向に巻かれたロールで、液体噴射装置で前記熱収縮方向に搬送され、前記液体噴射装置に搭載された液体噴射ヘッドから噴射される液体を受ける液体受容層を備えた熱収縮性フィルムであって、
前記液体受容層が形成された厚みが10μm以上、60μm以下のポリエチレンテレフタレートを含む熱収縮性基材を備え、
前記熱収縮性フィルムを6枚重ねた場合の前記熱収縮方向のガーレー剛性が0.85mN以上である
ことを特徴とする熱収縮性フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の熱収縮性フィルムにおいて、
前記熱収縮性基材の前記熱収縮方向の最大熱収縮率が、
20%以上、55%以下である
ことを特徴とする熱収縮性フィルム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱収縮性フィルムにおいて、
前記液体受容層はポリウレタン樹脂またはアクリル樹脂のうち少なくとも一方からなる骨格を含んでいる
ことを特徴とする熱収縮性フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の熱収縮性フィルムにおいて、
一辺が200mmの正方形の面を有するシート状の試験片を用いて、
前記熱収縮性基材の前記正方形の面を平面に向けて置き、
温度27℃湿度65%の環境下で24時間放置後、
温度18℃湿度35%の環境下に移して5分間放置した後の前記試験片の四隅の高さの平均値であるそり量が、0mm以上、50mm以下である
ことを特徴とする熱収縮性フィルム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の熱収縮性フィルムにおいて、
前記液体受容層の厚みが10μm以上、50μm以下である
ことを特徴とする熱収縮性フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−49200(P2013−49200A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188622(P2011−188622)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】