説明

熱収縮性ポリエステル系フィルム、熱収縮性チューブとその製造方法、およびラベルとそれを装着した容器

【課題】被覆用あるいは結束用等の包装材料分野において特に好適な熱収縮特性を発揮し、かつ、軽量で意匠性、印刷性、装着性、接着部の強度、後処理性(収縮仕上がり性など)に富んだ熱収縮性ポリエステル系フィルム、熱収縮性チューブ及びラベルを提供すること。
【解決手段】内部に空洞を有する層Aの少なくとも片面に層Aよりも空洞の少ない層Bが設けられてなる熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、内部に酸化チタンを含有し、白色度が70以上であり、溶剤で接着可能なことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被覆用あるいは結束用等の包装材料分野において特に好適な熱収縮特性を発揮し、かつ、軽量で美観に優れ、印刷性、装着性、接着部の強度、後処理性(収縮仕上がり性など)に富んだ熱収縮性ポリエステル系フィルム、チューブおよびラベルを提供する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性プラスチックフィルムを素材として形成されるチューブ状体は、例えば容器、瓶(プラスチックボトルを含む)、缶棒状物(パイプ、棒、木材、各種棒状体)等(以下容器類と略す)の被覆用或は結束用として用いられる。特に、これ等のキャップ、肩部、胴部等の一部又は全面を被覆し、標示、保護、結束、商品価値向上等を目的として用いられる他、箱、瓶、板、棒、ノート等のような集積包装或はスキンパックのように被包装物に密着させて包装する分野等において広く使用されており、収縮性及び収縮応力を利用した用途展開が期待される。従来上記用途にはポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、塩酸ゴム等の熱収縮性フィルムを用い、これをチューブ状体にしてから前記容器類にかぶせたり、集積包装して熱収縮させていた。
【0003】
しかしこれらのフィルムは耐熱性が乏しく、ボイル処理やレトルト処理をすると溶融又は破裂してフィルム状体を維持することができないという欠点がある。更に印刷の必要な用途ではインクの転移不良による印刷ピンホール(フィルム内の添加剤やポリマーのゲル状物によるフイッシュアイに基づく微少凹凸)の発生が見られたり、仮にうまく印刷できたとしてもその後にフィルムが収縮(常温収縮)を起こして印刷ピッチに寸法変化をきたすという問題もあった。
【0004】
一方、ポリエステル系の熱収縮性フィルムは上記した欠点を大巾に改良した特性を有しており最近大いに注目されている。しかしながらポリエステル系の熱収縮性フィルムは上記したポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンあるいは塩酸ゴム等の熱収縮性フィルムにくらべ熱収縮速度が大きいという問題がある。熱収縮速度が大きいとフィルムの収縮斑が発生し商品価値を大巾に低下させる。たとえば瓶用のシュリンクラベルとして用いた場合は収縮速度が大きすぎると収縮率が最も高くなる肩部に収縮斑が集中し、かつ内部からの空気の逃げがスムーズに進行せずシール部に気泡をかみこむ等の問題が発生する。このような収縮斑が発生すると印刷の濃度斑につながり製品の美感を著しく低下させるので解決する必要がある。
【0005】
また、このような熱収縮性ポリエステルフィルムはPETボトルのラベル用として使用されている。PETボトルはリサイクルする場合に、これらラベルと分別する必要がある。ボトルとラベルを分別する方法の一つとして、両者を混合したまま粉砕し、それを水中にて攪拌することにより分別する方法がある。この方法を採用する場合にボトルの主原料であるPETは比重が約1.4なので、ラベル用の樹脂はそれ以下にする必要がある。その方法としてはラベル用のポリエステル樹脂そのものを下げることは困難である。そのためフィルム内部に空洞を多数含有させ見かけ密度を下げる方法が考えられ、例えば以下の特許文献1及び2などが挙げられる。しかし、これらのフィルムは以下の問題があった。
(1)空洞を設けることにより表面の荒れが大きくなり、印刷したラベルの外観が不良となり美観が損なわれる。
(2)白色度が不足、または全光線透過率が高すぎたため、内容物が透けて見えたり、表印刷したラベルの外観が不良となり美観が損なわれる。
(3)両面の粗さのバランスが悪く、美観と装着性が両立されていない。
(4)収縮後の見かけ比重が高く、ボトルとの比重差による分別回収が困難である。
(5)溶剤や膨潤剤による接着ができなかったため、接合部の外観不良や作業性の悪さがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−33063号公報
【特許文献2】特開平5−111960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来技術の実情にかんがみ、本発明は被覆用あるいは結束用等の包装材料分野において特に好適な熱収縮特性を発揮し、かつ、軽量で意匠性、印刷性、装着性、接着部の強度、後処理性(収縮仕上がり性など)に富んだ熱収縮性ポリエステル系フィルム、チューブ及びラベルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内部に空洞を有する層Aの少なくとも片面に層Aよりも空洞の少ない層Bが設けられてなる熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、内部に酸化チタンを含有し、白色度が70以上であり、溶剤で接着可能なことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムを特徴とする。
【0009】
あるいは、前記の熱収縮性ポリエステル系フィルムを溶剤で接着した熱収縮性チューブを特徴とする。
【0010】
あるいは、前記の熱収縮性チューブを熱収縮させたラベルを特徴とする。
【0011】
あるいは、前記の熱収縮性チューブを熱収縮させたラベルを装着した容器を特徴とする。
【0012】
この場合において、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムの層B表面の中心線平均粗さ(Ra1)が0.5μm以下、全光線透過率が30%以下で、95℃の熱風中での熱収縮率がフィルム長手方向および幅方向の少なくともいずれか一方において30%以上であることが好適である。
【0013】
また、この場合において前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、30%以上熱収縮する方向の直角方向の熱収縮率が10%以下であることが好適である。
【0014】
さらにまた、この場合において、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムの層Aにポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂を含有し、少なくとも1軸に配向することにより内部に微細な空洞を含有することが好適である。
【0015】
さらにまた、この場合において、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは内部に酸化チタンを1重量%以上含有することが好適である。
【0016】
さらにまた、この場合において、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムの層A表面の中心線平均粗さ(Ra2)がRa1より0.05μm以上大きいこと好適である。
【0017】
さらにまた、この場合において、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムの見かけ比重が1.0未満であることが好適である。
【0018】
さらにまた、この場合において、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムの10%以上熱収縮させたあとの見かけ比重が1.0未満であることが好適である。
【0019】
さらにまた、この場合において、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムが、ポリエステルの成分として少なくともネオペンチルグリコールかつ/またはシクロヘキサンジメタノールを含むことが好適である。
【0020】
さらにまた、この場合において、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みが100μm以下であることが好適である。
【0021】
さらにまた、この場合において、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムのいずれか一方の面あるいは両面に印刷が施されていることが好適である。
【0022】
さらにまた、この場合において、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムを溶剤で接着させて得られる熱収縮性チューブが好適である。
【0023】
さらにまた、この場合において、前記熱収縮性チューブを得るに際し、チューブにおける接合面の少なくとも片面に溶解度パラメータが8.0〜13.8の範囲内にある溶剤または膨潤剤、または1,3ジオキソランあるいは1,3ジオキソランと相溶する有機溶剤との混合液塗布し、乾燥する前に70℃以下の温度で接合することが好ましい。
【0024】
さらにまた、この場合において、前記熱収縮性チューブを熱収縮させて容器に装着したラベルが好適である。
【0025】
さらにまた、この場合において、前記ラベルを装着した容器が好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明フィルムは特定方向に対する安定した熱収縮性が発揮され被覆包装や結束包装において美麗でかつ強固な包装状態を与えることができ、広範囲な分野において優れた利用価値を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に用いられるポリエステルは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、シユウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフエニルエーテルジカルボン酸等、公知のジカルボン酸の一種もしくは二種以上からなり、又、ジオール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメレチングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等公知のジオール成分の一種又は二種以上からなるいかなるポリエステル又はその共重合ポリエステルであつても良いが、主として酸成分として、テレフタル酸やイソフタル酸が、グリコール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールかつ/またはネオペンチルグリコールからなるポリエステル及びこれらの共重合体が価格、収縮特性の点から好適である。
【0028】
共重合ポリエステルとしては、ジカルボン酸成分及び/又はグリコール成分の一部を他のジカルボン酸又はグリコール成分に置換することにより得られるものが使用することができるが、当然の事ながら、他の成分、例えば、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸のごときオキシカルボン酸、安息香酸、ベンゾイル安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールのごとき一官能性化合物、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロール、トリメチレンプロパンのごとき、多官能性化合物も、生成物が実質的に線状の高分子を保持し得る範囲内で使用することが出来る。ポリエチレンテレフタレート成分が70モル%未満であると、フィルムにした場合、強度及び耐溶剤性が劣る為、好ましくない。
【0029】
又、フィルムの易滑性を向上させるために、有機滑剤、無機の滑剤等の微粒子を含有せしめることも好ましい。又、必要に応じて安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤等の添加剤を含有するものであつても良い。滑り性を付与する微粒子としては、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、テレフタル酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、フツ化リチウム等の公知の不活性外部粒子、ポリエステル樹脂の溶融製膜に際して不溶な高融点有機化合物、架橋ポリマー及びポリエステル合成時に使用する金属化合物触媒、たとえばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などによてポリエステル製造時に、ポリマー内部に形成される内部粒子であることができる。
【0030】
フィルム中に含まれる該微粒子は0.005〜0.9重量%、平均粒径としては0.001〜3.5μmである。本発明のポリエステルの極限粘度は好ましくは0.50以上、更に好ましくは0.60以上、特に好ましくは0.65以上である。ポリエステルの極限粘度が0.50未満であると結晶性が高くなり、十分な収縮率が得られなくなり、好ましくない。
【0031】
本発明において、適度な白色度を得るためには、例えば、内部に微細な空洞を含有させることが好ましい。例えば発泡材などを混合して押出してもよいが、好ましい方法としてはポリエステル中に非相溶な熱可塑性樹脂を混合し少なくとも1軸方向に延伸することにより、空洞を得ることである。本発明に用いられるポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂は任意であり、ポリエステルに非相溶性のものであれば特に制限されるものではない。具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などがあげられる。特に空洞の形成性からポリスチレン系樹脂あるいはポリメチルペンテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0032】
ポリスチレン系樹脂とは、ポリスチレン構造を基本構成要素として含む熱可塑性樹脂を指し、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン等のホモポリマーの外、その他の成分をグラフトあるいはブロック共重合した改質樹脂、例えば耐衝撃性ポリスチレン樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂等、更にはこれらのポリスチレン系樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂例えばポリフェニレンエーテルとの混合物を含む。
【0033】
また、ポリメチルペンテン系樹脂とは、80モル%以上、好ましくは90モル%以上が4−メチルペンテン−1から誘導される単位を有するポリマーであり、他の成分としてはエチレン単位、プロピレン単位、ブテン−1単位、3−メチルブテン−1等からの誘導単位が例示される。かかるポリメチルペンテンのメルトフローレートは200g/10分以下であることが好ましく、更に好ましくは30g/10分以下である。これは、メルトフローレートが200g/10分を超える場合には、フィルムの軽量化効果を得にくくなるからである。
【0034】
また、本発明におけるポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン等のホモポリマーの外、その他の成分をグラフトあるいはブロック共重合した改質樹脂も含まれる。
【0035】
前記ポリエステルと非相溶な樹脂を混合してなる重合体混合物の調製にあたっては、たとえば、各樹脂のチップを混合し押出機内で溶融混練した後押出してもよいし、予め混練機によって両樹脂を混練したものを更に押出機より溶融押出ししてもよい。また、ポリエステルの重合工程においてポリスチレン系樹脂を添加し、攪拌分散して得たチップを溶融押出してもかまわない。
【0036】
本発明におけるフィルムは内部に多数の空洞を含有する層Aの少なくとも片面に層Aよりも空洞の少ない層Bを設けることが好ましい。この構成にするためには異なる原料をA、Bそれぞれ異なる押出機に投入、溶融し、T−ダイの前またはダイ内にて溶融状態で貼り合わせ、冷却ロールに密着固化させた後、後に述べる方法で延伸することが好ましい。このとき、原料として層Bの非相溶な樹脂は層Aよりも少ないことが好ましい。こうすることにより層Bの空洞が少なく、また表面の荒れが少なくなり、印刷の美観を損なわないフィルムとなる。また、フィルム中に空洞が多数存在しない部分が存在するため、フィルムの腰が弱くならず装着性に優れるフィルムとなる。
【0037】
本発明のフィルムは100℃における長手方向および幅方向の少なくとも一方向における熱収縮率が30%以上であることが好ましい。30%未満であると異形被包装物の表面に添えて熱収縮させたときに各部に必要な収縮を達成することが難しい。上限については90%が妥当である。そのため上述した冷却シートを、例えば、下記の方法で延伸するのが好ましい。
【0038】
前述の重合体組成物を用いて押出法やカレンダー法等任意の方法で得たフィルムは主収縮方向に3.0倍から7.0倍、好ましくは4.4倍から6.2倍に延伸し、該方向と直角方向に1.0倍から2.0倍以下、好ましくは1.1倍から1.8倍延伸される。しかしながら2.0倍を超えて延伸すると、主収縮方向と直角方向の熱収縮も大きくなり過ぎ、仕上がりが波打ち状となる。この波打ちを抑えるには、熱収縮率を10%以下、好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下とすることが推奨される。延伸手段についても特段の制限はなく、ロール延伸、長間隙延伸、テンター延伸等の方法が適用され、又形状面においてもフラット状、チューブ状等の如何は問わない。なお主収縮方向への延伸は高い熱収縮率を得るために行われるものであり、主収縮方向と直角方向への延伸は最初の一方向に延伸されたフィルムの耐衝撃性や引裂き抵抗性の悪さを解決するのに極めて有効である。なお主収縮方向とその直角方向の延伸順序はどちらが先でも構わない。
【0039】
又延伸は逐次2軸延伸、同時2軸延伸、1軸延伸或はこれらの組合せ等で行われる。又本発明フィルムに対しては例えば縦1軸、横1軸、縦横2軸等の延伸を行うが、特に2軸延伸では縦横方向の延伸は、どちらか一方を先に行う逐次2軸延伸が有効であり、その順序はどちらが先でもよい。尚同時2軸延伸法を行うときはその延伸順序が縦横同時、縦先行、横先行のどちらでもよい。又これら延伸におけるヒートセットは目的に応じて実施されるが、夏季高温下の寸法変化を防止する為には30〜150℃の加熱ゾーンを、約1秒から30秒間通すことが推奨される。又かかる処理の前後どちらか一方又は両方で最高70%迄の伸張をかけてもよい。特に主方向に伸張し、非収縮方向(主収縮方向に対して直角方向)には緩和させるのが良く、該直角方向への伸張は行わない方が良い。
【0040】
本発明の好適特性を発揮させる為には、上記延伸倍率だけでなく、重合体組成物が有する平均ガラス転移点(Tg)以上の温度、例えばTg+80℃程度の下で予熱、延伸することも有効な手段として挙げられる。特に主方向延伸(主収縮方向)における上記処理温度は該方向と直角方向の熱収縮率を抑制し、且つ前記の如く80±25℃の温度範囲に、その最小値を持ってくる上で極めて重要である。更に延伸後、伸張或は緊張状態に保ってフィルムにストレスをかけながら冷却するか或は更に引続いて冷却することにより、前後収縮特性はより良好且つ安定したものである。
【0041】
本発明において、100℃の熱風中での熱収縮率がフィルム長手方向および幅方向の少なくともいずれか一方において30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上であることが好ましい。30%未満では、ボトルのラベルなど異形被包装物の表面に添えて熱収縮させたときに各部に必要な収縮を達成することが難しい。
【0042】
本発明において、主収縮方向とは直角方向の熱収縮率が好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。10%を超えると、異形被包装物に装着したもの外観が不良となる。
【0043】
本発明において、フィルムの見かけ比重は好ましくは1.1以下、より好ましくは1.0未満、さらに好ましくは0.95以下である。1.1を超えるとボトル用樹脂を混合した場合にボトル樹脂との比重による分別が、1.0を超えると両者を混合したまま粉砕し、それを水中にて攪拌することにより分別が困難である。特に熱収縮させたあとのフィルムの比重が1.0以下であることが好ましい。この場合、収縮させる量により比重は変化するが、瓶やボトルのラベルとして使用したものでも、完全に収縮させたものでもよい。
【0044】
本発明のフィルムは、一方の面の中心線平均粗さ0.5μm以下、より好ましくは0.2μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。0.5μmを超えると、印刷をした場合の美観が不良になる。また一方の面の反対面の中心線平均粗さは一方の面のそれより、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm大きいことが必要である。一方の面と反対面の中心線平均粗さの差が0.05μm未満では、印刷を施す反対面の滑りが不良になるため収縮時にボトルとフィルムの滑りが不良になり、ラベルを装着したときの美観が不良となる。
【0045】
以上の特性を満足するために本発明のフィルムは単一の層からなるものでもよいが、好ましくは層構成はA/BあるいはB/A/Cである。層A層Bの厚み比は好ましくはA/B=2/1以上、より好ましくは4/1以上、さらに好ましくは6/1以上である。1/1未満では、印刷性の美観と比重を下げることの両立が困難である。
【0046】
層Cを設ける場合は、空洞の含有量は任意であるが、収縮時のボトルとフィルムの滑りを制御するための粒子を添加することが可能である。本発明のフィルムはクッション率が10%以上、好ましくは20%以上である。クッション率が低いと、瓶やボトルの破損防止効果が低下する。
【0047】
本発明においては、全光線透過率は30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。30%以上では内容物が透けて見えたり、印刷物が見えにくかったりと外観に劣る。本発明においては、白色度は60以上、好ましくは75以上、より好ましくは80以上である。60未満では内容物が透けて見えたり、印刷物が見えにくかったりで外観に劣る。フィルム厚みは100μm以下が好ましい。これ以上では、収縮ムラがおきやすくなる。
【0048】
本発明で得られたフィルムは、チューブ状にしてフィルム端部の接合によって製造する。それに当たっては、13ジオキソランまた又は13ジオキソランと相溶する有機溶剤との混合液または溶解度パラメータが8.0〜13.8の範囲内にある溶剤または膨潤剤を塗布し、乾燥する前に70℃以下の温度で接合してチューブ状体を得ることで接着することが必要である。溶解度パラメータは例えば溶剤ハンドブック(日本接着協会編、日刊工業新聞社刊)などに記されているものがあげられる。チューブにおける接合部は可能な限り細い接合幅のものから50mm以上に及ぶ広幅のものであってもよく、勿論容器類の大きさに応じて適宜定められるものであるが、通常の種類では1〜5mm幅が標準である。又接合部は一本の線状に接合されたものでもよいが、2本以上に渡って複数の線状接合が形成されたものでも良い。これらの接合部はフィルム基材にほとんど損傷を与えないものであるから、ポリエステル系重合体の特性をそのまま保持しており、耐衝撃性や耐破瓶性等の保護特性を有するに止まらず熱収縮による配向度の低下、又その後の熱処理による白化現象や脆化現象を見ることもなく良好である。
【0049】
このチューブを使用した装着物としては、容器、瓶(プラスチックボトルを含む)、缶棒状物(パイプ、棒、木材、各種棒状体)があるが、好ましくはポリエチレンテレフタレートを主体とするボトルに装着することにより、回収が容易となり、ポリエチレンテレフタレートボトルの再利用の際にボトル原料に微量混合されてしまっても、着色しにくいので有効である。
【実施例】
【0050】
以下本発明を実施例で示すことにより詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの例に何ら制約されない。本発明で用いた測定法を以下に示す。
【0051】
1.熱収縮率
サンプル標線間を200mmにとり、フィルムを幅15mmに切断して95℃の熱風を用いて1分間加熱し、標線間長さを測定して求めた。
【0052】
2.中心線平均粗
JIS−B0601−1994に準じ、サーフコム300A型表面粗さ計(東京精密製)を用い触針径2μm、触針圧30mg、測定圧30mg、カットオフ0.8mgで中心線平均粗さを測定した。
【0053】
3.白色度白色度
JIS−L1015−1981−B法により、日本電色工業(株)Z−1001DPを用いて行った
【0054】
4.全光線透過率
日本電色工業(株)製 NDH−1001DPにて全光線透過率を求めた。
【0055】
5.フィルムの見かけ比重
1.の条件で熱収縮前後のフィルムを10×10mmに切り取り、水、エタノールおよび塩化カリウムまたは臭化カリウムを適宜組み合わせて、密度0.75g/cm3から1.4g/cm3の液を作成し、それらの中に切り取ったフィルムを入れ、バランスしたところをそのフィルムの比重とした。
【0056】
6.チューブの接合性
メチルエチルケトン(溶解度パラメータ、9.3):Aおよび1,3ジオキソランとテトラヒドロフランを9:1の重量比で混合した混合液:Bを塗布し、直ちに(乾燥しない間に)フィルムを重ね合わせチューブ状体に加工した。加工速度は50m/分であった。接合部がきれいなら○、外観不良なら×とした。
【0057】
7.収縮仕上がり性
PETボトル(500ml)に印刷を施した熱収縮フィルムを6.の方法で装着し95℃の熱風(風速10m/秒)の熱収縮トンネルを通し、仕上がり性を目視にて判定した。なお、仕上がり性のランクについては5段階評価をし、5:仕上がり性最良4:仕上がり性良3:収縮ムラ少し有り(2ヶ所以内)2:収縮ムラ有り(3〜6ケ所)1:収縮ムラ多い(6ケ所以上)として、4以上を合格レベルとした
【0058】
8.収縮ムラ、印刷ムラ
フィルム上にグラビア印刷をし、7.の方法で収縮させて印刷ムラをみた。良好なら○、不良なら×とした。
【0059】
(実施例1)
層Aの原料として、固有粘度0.75dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂35重量%と下記ポリエステルIを45重量%と結晶性ポリプロピレン樹脂(FO−50F (株)グランドポリマー製)10重量%および二酸化チタン(TA-300 富士チタン製)10重量%とし層Bの原料として固有粘度0.75dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂40重量%と下記ポリエステルIIを60重量%をそれぞれ別々の2軸スクリュー押出機に投入し、混合、溶融したものをフィードブロックで接合したものをT−ダイスより285℃で溶融押出しし、静電気的に冷却回転ロールに密着固化し、厚さ180μm(B/A=15/165μm)の未延伸フィルムを得た。該フィルムをロール延伸機で縦方向に110℃で1.2倍延伸し、次いでテンター延伸機で横方向に70℃で5.0倍延伸し、次いで70℃で約1%横方向に伸張下で冷却させ、厚さ40μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0060】
このフィルムを層B側にグラビア印刷し、1,3ジオキソランとテトラヒドロフランを9:1の重量比で混合した混合液を塗布し、直ちに(乾燥しない間に)フィルムを重ね合わせチューブ状体に加工した。加工速度は50m/分であった。さらにそれをPETボトル(500ml)に装着し95℃の熱風(風速10m/秒)の熱収縮トンネルを通し、ラベル装着ポリエチレンテレフタレートボトルとした。外観に優れるものとなった。
【0061】
ポリエステルI:テレフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=100//60/40(モル比)
ポリエステルII:テレフタル酸//エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール=100/60/40(モル比)
【0062】
(実施例2)
層Aの原料として、固有粘度0.75dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂30重量%と下に示すポリエステルIを40重量%と結晶性ポリプロピレン樹脂(FO−50F (株)グランドポリマー製)20重量%および二酸化チタン(TA-300 富士チタン製)10重量%とし層Bの原料として固有粘度0.75dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂40重量%と下に示すポリエステルIIを60重量%をそれぞれ別々の2軸スクリュー押出機に投入し、混合、溶融したものをフィードブロックで接合したものをT−ダイスより285℃で溶融押出しし、静電気的に冷却回転ロールに密着固化し、厚さ180μm(=15/165μm)の未延伸フィルムを得た。該フィルムをロール延伸機で縦方向に110℃で1.2倍延伸し、次いでテンター延伸機で横方向に70℃で5.0倍延伸し、次いで70℃で約1%横方向に伸張下で冷却させ、厚さ40μmの熱収縮性フィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。
【0063】
このフィルムを層B側にグラビア印刷し、1,3ジオキソランとテトラヒドロフランを9:1の重量比で混合した混合液を塗布し、直ちに(乾燥しない間に)フィルムを重ね合わせチューブ状体に加工した。加工速度は50m/分であった。さらにそれをPETボトル(500ml)に装着し95℃の熱風(風速10m/秒)の熱収縮トンネルを通し、ラベル装着ポリエチレンテレフタレートボトルとした。外観に優れるものとなった。
【0064】
(比較例1)
実施例1において結晶性ポリプロピレン樹脂(FO−50F (株)グランドポリマー製)90重量%および二酸化チタン(TA-300 富士チタン製)10重量%を原料とする層Aのみとした以外は全く同様の方法において熱収縮フィルムを得ようとしたが、不満足なものであった。
【0065】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0066】
以上実施例で示した通り本発明フィルムは特定方向に対する安定した熱収縮性が発揮され被覆包装や結束包装において美麗でかつ強固な包装状態を与えることができ、広範囲な分野において優れた利用価値を発揮することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞を有する層Aの少なくとも片面に層Aよりも空洞の少ない層Bが設けられてなる熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、内部に酸化チタンを含有し、白色度が70以上であり、溶剤で接着可能なことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを溶剤で接着したことを特徴とする熱収縮性チューブ。
【請求項3】
請求項2に記載の熱収縮性チューブを熱収縮させたラベル。
【請求項4】
請求項2に記載の熱収縮性チューブを熱収縮させラベルを装着した容器。
【請求項5】
請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの層B表面の中心線平均粗さ(Ra1)が0.5μm以下、全光線透過率が30%以下で、95℃の熱風中での熱収縮率がフィルム長手方向および幅方向の少なくともいずれか一方において30%以上であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、30%以上熱収縮する方向の直角方向の熱収縮率が10%以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項7】
請求項1、5、6のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、層Aにポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂を含有し、少なくとも1軸に配向することにより内部に微細な空洞を含有することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項8】
請求項1、5〜7のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、内部に酸化チタンを1重量%以上含有することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項9】
請求項1、5〜8のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、層A表面の中心線平均粗さ(Ra2)がRa1より0.05μm以上大きいことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項10】
請求項1、5〜9のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、見かけ比重が1.0未満であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項11】
請求項1、5〜10のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、10%以上熱収縮させたあとの見かけ比重が1.0未満であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項12】
請求項1、5〜11のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、ポリエステルの成分として少なくともネオペンチルグリコール及び/又はシクロヘキサンジメタノールが含まれることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項13】
請求項1、5〜12のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、フィルム厚みが100μm以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項14】
請求項1、5〜13のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、いずれか一方の面あるいは両面に印刷が施されていることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項15】
請求項5〜14のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを溶剤で接着させて得られることを特徴とする熱収縮性チューブ。
【請求項16】
請求項2または15に記載の熱収縮性チューブを得るに際し、チューブにおける接合面の少なくとも片面に溶解度パラメータが8.0〜13.8の範囲内にある溶剤または膨潤剤、または1,3ジオキソランあるいは1,3ジオキソランと相溶する有機溶剤との混合液塗布し、乾燥する前に70℃以下の温度で接合してチューブ状体を得ることを特徴とする熱収縮性チューブの製造方法。
【請求項17】
請求項15の熱収縮性チューブを熱収縮させて容器に装着したことを特徴とするラベル。
【請求項18】
請求項17に記載のラベルを装着した容器。

【公開番号】特開2009−173041(P2009−173041A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102567(P2009−102567)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【分割の表示】特願2000−228889(P2000−228889)の分割
【原出願日】平成12年7月28日(2000.7.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】