説明

熱収縮性ポリエステル系フィルムおよび熱収縮性ラベル

【課題】PETボトル再生原料を多量に用いても、優れた特性を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供する。
【解決手段】ペットボトル再生原料を40質量%以上含有する単層構成の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、このフィルムから10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を98℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が50%以上75%以下、面配向度AOが0.055以上であって、前記フィルムを構成するポリエステルは、全てのユニット中、エチレンテレフタレートユニットを最も多く含み、フィルムの極限粘度[η]が0.55dl/g以上0.63dl/g以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトルのリサイクルに役立つポリエステル系樹脂を主成分とした収縮性フィルムに関するものであり、具体的には輸送包装、集合包装などや、特に、製品包装などの修飾ラベル(以後、ラベルとも記載する)に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性フィルムは、延伸加工された高分子フィルムが加熱されると収縮する性質を利用するもので、その利用形態としては、複数の貨物をパレットやスキッドなどに積載し、一つの大型貨物に単一化させる集合包装などがある。また、必要に応じて印刷し、ラベル、袋などの形態に加工した後、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトル、ポリエチレンボトル、ガラスボトルなどの各種容器に装着し、蒸気や熱風を吹付けて加熱する収縮トンネルを通過させて容器に密着させる製品包装がある。
【0003】
ポリ塩化ビニル(PVC)系フィルムは熱収縮性フィルムに適用されるフィルムの一つで、収縮後の仕上がり性に優れるなどの特徴を有し、過去に多く使用されてきた。しかし、耐熱性が低く、焼却時に塩化水素ガス、ダイオキシンなどの原因となるなどの問題を抱えている。また、近年、広く使われているPET容器などのラベルとして用いると、PETボトルをリサイクルする際に、ラベルとPETボトルを分離しなければならないという問題もある。
【0004】
ポリスチレン(Ps)系フィルムも熱収縮性フィルムに適用されるフィルムの一つであり、収縮後の仕上がり性に優れた素材であるが、PVC系フィルムと同様に耐熱性が低く、高温で焼却する必要がある上に、焼却時に多量の黒煙と異臭が発生するという問題がある。また、耐溶剤性に劣るため、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない。
【0005】
ポリエステル(Es)系フィルムは、上記のPVC系フィルムやPs系フィルムに認められる問題のない熱収縮性フィルムとして使用量が増加している。また、リサイクルの観点から着色したPETボトルの使用が制限されるに伴い、PETボトル側面の大部分を熱収縮性フィルムによるラベルで覆う対応が計られることもあり、Es系フィルムに対する期待は大きい。さらに、Es系フィルムは、PETボトルの使用量が増加するに従い、その使用済みのPETボトル(R−PET)を再利用できる可能性を有している。
【0006】
そこで、回収PETボトルからの再生原料(以下PETボトル再生原料と称す)から熱収縮性ポリエステル系ラベルを製造することが考えられた。ラベルのコストが減り、PETボトルのリサイクルも達成でき、PETボトルやフィルムラベルの生産から廃棄にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷を低減して環境保全にも貢献することができるからである。しかし、PETボトル再生原料は、様々なPETが無作為に混合されたものであり、PETの繰り返し使用によって分子量等が低下しているため、PETボトル再生原料を例えば40質量%程度以上使用すると、得られるフィルムの機械的強度や耐熱性等が低いものとなってしまう。
【0007】
また、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、PETにネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの副次成分を共重合成分として導入することにより、PETの結晶性を低下させ、必要な高い熱収縮率を発現させると共に、1,3−ジオキソラン等に対する溶剤接着性を発現させて溶剤接着によりフィルムをチューブ状に加工している。
【0008】
前述したようにPETボトル再生原料の使用は環境負荷への低減の観点から非常に有意義であり、熱収縮性ポリエステル系ラベルに多量に添加して使用することによりエコマーク等にも対応できるが、PET原料を多量に添加するとフィルムの溶剤接着性を損なうので添加量を増やすことができない問題があり、PETボトル再生原料のみならずPET原料そのものを40質量%程度以上使用した熱収縮性ポリエステル系フィルムは従来にはなかった。フィルムを多層化して特定の層のみにPETボトル再生原料を使用する技術があるが、生産に多層化設備を必要とし、PETボトル再生原料の添加量には限界があった(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−205906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明においては、PETボトルリサイクル原料を40質量%以上用いても、優れた機械的強度と溶剤接着性を有する単層の熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し得た本発明は、ペットボトル再生原料を40質量%以上含有する単層構成の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、
このフィルムから10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を98℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が50%以上75%以下、面配向度AOが0.055以上であって、前記フィルムを構成するポリエステルは、全てのユニット中、エチレンテレフタレートユニットを最も多く含み、フィルムの極限粘度[η]が0.55dl/g以上0.63dl/g以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
【0011】
フィルムから10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を98℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が0〜8%、試料を70℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が5〜30%、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が−5〜5%であることが好ましい。
【0012】
また、フィルムを、30℃、相対湿度85%の雰囲気下で2週間保管した後の主収縮方向と直交する方向における引張り試験で、全試験片数に対する破断伸度5%未満の試料片の発生率(破断率P)が10%以下であることも本発明の好適な実施態様である。
【0013】
さらに、フィルムを構成するポリエステルが、多価アルコール成分100モル%中、ネオペンチルグリコールを40〜60モル%共重合した共重合ポリエステルを30質量%以上60質量%以下含有することが好ましい。なお、上記の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いた熱収縮性ラベルも本発明に包含される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、一定量以上のPETボトル再生原料を用いているにもかかわらず、良好な熱収縮特性や耐破れ性を示す。熱収縮性ラベルのコスト削減に役立ち、しかもPETボトルのリサイクル技術としても有用である。よって、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムおよび熱収縮性ラベルは、PETボトル等のラベルを始めとする各種被覆ラベル等に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、PETボトル再生原料を40質量%以上含有する単層構成の熱収縮性ポリエステル系フィルムである。PETボトル再生原料は、溶融粘度、分子量、分子量分布、モノマー組成、結晶化度、重合触媒等の添加剤の有無等が相違する様々なPETが無作為に混合されたものであり、これらの物性が再生原料のロット毎に広くばらついている。従来は、このような再生原料を用いて単層構造の熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造しても、安定した均一の製品を得ることはできず、また、40質量%以上のPETボトル再生原料を使用したフィルムでは、熱収縮性ラベルとして必要十分な機械的強度や熱収縮性、溶剤接着強度が得られなかった。
【0016】
しかし、本発明では、熱収縮性ポリエステル系フィルムを単層構成として、フィルムの極限粘度[η]と面配向度AOを所定範囲内に制御すれば、熱収縮性フィルムとして必要な機械的強度、熱収縮特性、フィルムの溶剤接着性等を確保することができることを新たに見出した。以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、98℃の温水中における主収縮方向の熱収縮率が50%以上75%以下でなければならない。この熱収縮率が50%に満たないものは、ラベルとしてボトル等の容器に被覆収縮させたときに容器に密着せず、外観不良が発生するからである。より好ましい主収縮方向の熱収縮率は、55%以上、さらに好ましくは60%以上である。反対に、98℃における主収縮方向の温湯収縮率が75%を上回ると、ラベルとして用いる場合に、熱収縮時に歪みが生じ易くなったり、いわゆる“飛び上がり”が発生してしまうので好ましくない。また、98℃における主収縮方向の温湯熱収縮率は、73%以下であると好ましく、70%以下であるとより好ましい。
【0018】
上記の「主収縮方向の熱収縮率」とは、試料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味であり、主(最大)収縮方向は、正方形状試料の縦方向または横方向の長さで決められる。98℃での温水中における主収縮方向の熱収縮率は、98±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、直ちに25±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸漬した後の、フィルムの縦および横方向の長さを測定し、最も多く収縮した方向の収縮前の長さ(10cm)と収縮後の長さから、下式により求める。
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0019】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、PETボトル再生原料を40質量%以上含有するものである。PETボトル再生原料の使用は、環境への負荷の低減の観点から非常に有意義であり、熱収縮性ポリエステル系フィルムに多量に添加して使用することにより、エコマーク等にも対応できる。PETボトル再生原料の添加量は、好ましくは42質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。熱収縮性フィルムとして必要な機械的強度、熱収縮特性、フィルムの溶剤接着性等を確保する観点から、PETボトル再生原料の添加量は、好ましくは55質量%以下、より好ましくは53質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0020】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分から形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとして有する。フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性等を考慮すれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムの構成ユニット100モル%中、エチレンテレフタレートユニットが50モル%以上となるように選択することが好ましい。従って、多価カルボン酸成分100モル%中、テレフタル酸成分(テレフタル酸またはそのエステルからなる成分)を50モル%以上、多価アルコール成分100モル%中、エチレングリコール成分を50モル%以上、とする。エチレンテレフタレートユニットは、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。
【0021】
エステルユニットにおいて多価アルコール成分を形成するための多価アルコール類としては、上記エチレングリコールの他に、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、等も併用可能である。
【0022】
また、多価カルボン酸成分を形成するための多価カルボン酸類としては、上述のテレフタル酸およびそのエステルの他に、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸等が利用可能である。芳香族ジカルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。またこれらの芳香族ジカルボン酸やテレフタル酸のエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステル等の誘導体が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸等や、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。さらに、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多価カルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0023】
この他、多価アルコール類、多価カルボン酸類ではないが、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン類も一部使用してもよい。ラクトン類は、開環して両端にエステル結合を有するユニットとなるものであり、1つのラクトン類由来のユニットが、カルボン酸成分であり、かつ、アルコール成分であると考えることができる。よって、ラクトン類を用いる場合、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量や、他の多価アルコール成分の量は、多価アルコール成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%として計算する。また、各多価カルボン酸成分の量を計算する際も、多価カルボン酸成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%とする。
【0024】
エチレンテレフタレートユニット以外のユニットを構成する好ましい成分としては、エチレンテレフタレートユニットによる高結晶性を低下させて、低温熱収縮性や溶剤接着性を確保することのできるものが好ましい。このような結晶性低下成分としては、多価カルボン酸成分では、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸が、多価アルコール成分では、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオールが好ましいものとして挙げられる。
【0025】
このうちネオペンチルグリコールの使用が最も好ましい。本発明のフィルムを構成するポリエステルは、多価アルコール成分100モル%中、ネオペンチルグリコールを40〜60モル%共重合した共重合ポリエステルを30質量%以上60質量%以下含有することが好ましい。ネオペンチルグリコールの併用によって、多量のPETボトル再生原料を用いても、フィルムの熱収縮特性、耐破れ性および溶剤接着性を、バランス良く向上させることができる。
【0026】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、面配向度AOが0.055以上であることが必要である。面配向度AOを0.055以上とすることで、PETボトル再生原料を多量に添加し、かつ極限粘度が低い本願発明のフィルムに必要な機械的強度を確保できる。面配向度AOは0.056以上が好ましく、0.057以上がより好ましい。また、面配向度が高くなりすぎると、収縮仕上がり性が悪化傾向となるのであまり好ましくない。面配向度AOは0.062以下であることが好ましく、0.061以下がより好ましい。さらに好ましくは0.060以下である。面配向度は、JIS K7142「プラスチックの屈折率測定方法」(A法)に準拠して、フィルムから得られる厚さ方向の屈折率Nz、主収縮方向の屈折率Nx、それと直交する方向の屈折率Nyより、次式から得られる値を採用した。
AO=(Nx+Ny)/2−Nz
【0027】
なお、接触液にはヨウ化メチレンを用い、23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気下で測定した。
【0028】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルムの極限粘度[η]が0.55dl/g以上0.63dl/g以下であることが必要である。PETボトル再生原料のように、PETを高い配合量で添加した熱収縮性ポリエステル系フィルムは、PETの結晶性により溶剤接着性が阻害され、充分な溶剤接着強度を確保できなかったが、フィルムの極限粘度を上記範囲内の比較的低い値とすることで、PETボトル再生原料を高い配合量で添加した場合においても必要な溶剤接着強度が発現することが見出されたからである。フィルムの極限粘度[η]は0.56dl/g以上が好ましく、0.57dl/g以上がより好ましい。フィルムの極限粘度[η]は0.62dl/g以下が好ましく、0.61dl/g以下がより好ましい。極限粘度[η]は、JIS K 7367−5「プラスチック−毛細管形粘度計を用いたポリマー希釈溶液の粘度の求め方−」などより得られる溶液粘度であり、基本的には高分子の分子量に相当するものである。本発明では、下記の測定条件で、溶液の質量濃度cに対する相対粘度[ηsp]の関係から質量濃度c=0としたときの値を極限粘度[η]とした。
溶媒:フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン=60/40(質量比)
管:ウベローデ粘度管
温度:30±0.1℃
【0029】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、98±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、直ちに25±0.5℃の水中に無荷重状態で10秒間浸漬したときの収縮前後の長さから、前記した式により算出したフィルムの主収縮方向と直交する方向(以下、単に直交方向という)の熱収縮率(すなわち、98℃の温湯熱収縮率)が、0%以上8%以下であることが好ましい。
【0030】
98℃における直交方向の温湯熱収縮率が0%未満であると(すなわち、収縮率が負の値であると)、ボトルのラベルとして使用する際に良好な収縮外観を得ることができないので好ましくなく、反対に、98℃における直交方向の温湯熱収縮率が8%を上回ると、ラベルとして用いる場合に熱収縮時に収縮に歪みが生じ易くなるので好ましくない。なお、98℃における直交方向の温湯熱収縮率は、1%以上がより好ましく、2%以上がさらに好ましく、3%以上が特に好ましい。また、98℃における直交方向の温湯熱収縮率は、7%以下がより好ましく、6%以下がさらに好ましい。
【0031】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、70±0.5℃の温水中に10秒間浸漬して引上げ、次いで25±0.5℃の水中に10秒間浸漬して引上げたときの主収縮方向の熱収縮率が5〜30%であることが好ましい。70℃におけるフィルムの主収縮方向の熱収縮率を前記範囲内とすることで、ボトルのラベルとして使用する際により良好な収縮外観を得ることができる。70℃におけるフィルムの主収縮方向の熱収縮率は6%以上が好ましく、7%以上がより好ましい。また、29%以下が好ましく、28%以下ががより好ましい。
【0032】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記と同条件で測定したときの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が−5〜5%であることが好ましい。70℃における直交方向の熱収縮率を前記範囲内とすることで、ボトルのラベルとして使用する際により良好な収縮外観を得ることができる。70℃における直交方向収縮率は、−4%以上がより好ましく、−3%以上がさらに好ましい。また、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
【0033】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、フィルムを、30℃、相対湿度85%の雰囲気下で2週間保管した後の主収縮方向と直交する方向における引張り試験で、全試験片数に対する破断伸度5%未満の試料片の発生率(破断率P)が10%以下であることが好ましい。この破断率Pとは、上記条件で保管した後、複数のフィルム試験片について、主収縮方向に直交する方向についての引張試験を、試験片長さ200mm、チャック間距離20mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張り速度200mm/分の条件下で行ったときに、破断伸度5%未満の試験片数が、全試験片数の内のどれだけあるかという比率(百分率)のことである。この破断率Pが10%を超えると、フィルムを長期保管後に加工した場合に、フィルムの耐破れ性の低下により、破断等のトラブルや不良が発生するおそれがある。破断率Pは、5%以下がより好ましく、0%が最も好ましい。
【0034】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは単層構成である。複層構成のフィルムよりも安価に製造することができる。フィルムの厚みは、25μm以上60μm以下であれば特に限定されないが、例えば、ラベル用途に用いる場合には、全体の厚みを30μm以上50μm以下とすることが推奨される。
【0035】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを構成するポリエステルは常法により溶融重合することによって製造できるが、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコールとをエステル交換反応させたのちに重縮合する、いわゆるエステル交換法等が挙げられ、任意の製造法を適用することができる。また、その他の重合方法によって得られるポリエステルであってもよい。重合触媒としては、慣用の種々の触媒が使用でき、例えばチタン系触媒(チタニウムテトラブトキシド等)、アンチモン系触媒(三酸化アンチモン等)、ゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニウム等)、コバルト系触媒(酢酸コバルト等)等が挙げられる。
【0036】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、PETボトル再生原料と、ポリエステル1種または2種以上とを、押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを所定の方法により延伸することによって得ることができる。PETボトル再生原料としては、公知の方法で洗浄、粉砕された後、チップ状に加工されたものを用いるのが好ましい。
【0037】
原料樹脂を溶融押し出しする際には、チップ状のPETボトル再生原料とそれ以外のポリエステル原料を用意し、これらをホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融し、フィルム状に押し出す方法を採用することができる。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0038】
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム(キャスティングロール)上にキャストして急冷固化することにより、実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。なお、回転ドラム上にキャストして急冷固化させる場合には、上記押出機と回転ドラムとの間に電極を配設し、電極と回転ドラムとの間に電圧を印加し、静電気的にフィルムを回転ドラムに密着させる方法を採用すると、フィルムの厚み斑が低減されるので好ましい。
【0039】
未延伸フィルムを形成した後は、延伸処理を行う。延伸処理は、上記回転ドラム等による冷却後、連続して行っても良いし、冷却後、一旦ロール状に巻き取り、その後に行うことも可能である。なお、未延伸フィルムをフィルムの横(幅)方向に延伸し、主収縮方向をフィルムの横(幅)方向とすることが、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの生産効率面から最も実用的であるので、以下においては、主として、主収縮方向を横方向とする場合の延伸方法について説明する。なお、主収縮方向をフィルムの縦(長手)方向とする場合も、下記方法における延伸方向を90゜変更すること等により、主収縮方向をフィルム横方向とする場合の延伸操作に準じて延伸することができる。
【0040】
横方向の延伸は、Tg−20℃〜Tg+40℃の範囲内の所定温度で、2.3〜7.3倍、好ましくは2.5〜6.0倍に延伸する。その後、50℃〜110℃の範囲内の所定温度で、0〜15%の伸張あるいは0〜15%の緩和をさせながら熱処理し、必要に応じて40℃〜100℃の範囲内の所定温度で再度熱処理をするのが好ましい。なお、横延伸後のフィルムの厚み斑を低減させるには、横延伸工程に先立って予備加熱工程を行うことが好ましく、この予備加熱工程では、熱伝達係数が0.00544J/cm2・sec・℃(0.0013カロリー/cm2・sec・℃)以下となるように、フィルム表面温度がTg+0℃〜Tg+60℃の範囲内のある温度になるまで低風速で加熱を行うことが好ましい。
【0041】
この横延伸工程においては、フィルム表面温度の変動を小さくすることのできる設備を使用することが好ましい。すなわち、延伸工程には、延伸前の予備加熱工程、延伸工程、延伸後の熱処理工程、緩和処理、再延伸処理工程等があるが、特に、予備加熱工程、延伸工程および延伸後の熱処理工程において、任意ポイントにおいて測定されるフィルムの表面温度の変動幅が、平均温度±1℃以内であることが好ましく、平均温度±0.5℃以内であればさらに好ましい。フィルムの表面温度の変動幅が小さいと、フィルム全長に亘って同一温度で延伸や熱処理されることになって、熱収縮挙動やその他の物性が均一化するためである。上記のフィルム表面温度の変動を小さくできる設備としては、例えば、フィルムを加熱する熱風の風速を制御するためにインバーターを取り付け、風速の変動を抑制できる設備や、熱源に500kPa以下(5kgf/cm以下)の低圧蒸気を使用した熱風の温度変動を抑制できる設備等が挙げられる。
【0042】
また、フィルムの延伸の方法としては、テンターでの横1軸延伸ばかりでなく、縦方向に1.0倍〜4.0倍、好ましくは1.1倍〜2.0倍の延伸を施してもよい。このように2軸延伸を行う場合は、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれでもよく、必要に応じて、再延伸を行ってもよい。また、逐次2軸延伸においては、延伸の順序として、縦横、横縦、縦横縦、横縦横等のいずれの方式でもよい。これらの縦延伸工程あるいは2軸延伸工程を採用する場合においても、横延伸と同様に、予備加熱工程、延伸工程等において、フィルム表面温度の変動をできるだけ小さくすることが好ましい。なお、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るためのより好ましい製造方法については後述する。
【0043】
上記熱収縮性ポリエステル系フィルムを熱収縮性ラベルとするには、例えば、収縮前の熱収縮性フィルムを、温度・湿度を制御した環境内に所定時間保管した後に取り出し、公知のチューブ成形装置を用いて、フィルムの片面の片端縁から少し内側に接着用溶剤を所定幅で塗布し、直ちにフィルムを丸めて端部を重ね合わせて接着し、チューブに加工し、そのチューブを所定長さに裁断して本発明の熱収縮性ラベルとする方法等を好適に採用することができる。
【0044】
ラベルを形成する際のフィルムの接着は、フィルムの一部を溶融させる溶融接着法を採用することも可能であるが、ラベルの熱収縮特性の変動等を抑制する観点からは、溶剤を用いて接着する方法を採用することが好ましい。使用可能な溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;フェノール等のフェノール類;テトラヒドロフラン等のフラン類;1,3−ジオキソラン等のオキソラン類;等の有機溶剤を挙げることができるが、それらの中でも、安全性の高い1,3−ジオキソランやテトラヒドロフランを用いるのが望ましい。熱収縮性ラベルは、PETボトル等の容器に装着した後、公知の熱収縮手段(熱風トンネルやスチームトンネル等)で熱収縮させて、被覆させることができる。
【0045】
次に、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい製造方法について説明する。本願発明者らが研究開発を行った結果、PET系樹脂から熱収縮性フィルムを製造する際に、PETボトル再生原料を大量に加えると、溶剤接着性、収縮仕上がり性の悪化や、破断率Pの増加(機械的強度の悪化)等の好ましくない現象が発生することが明らかとなった。これらの問題の解決を鋭意検討した結果、PETボトル再生原料を大量に加えた熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいても、フィルムの極限粘度を低くコントロールすることで溶剤接着性を発現させ、また、同時にフィルムの面配向度AOをコントロールすることで破断率Pの増加(機械的強度の悪化)を低減し、必要な熱収縮率を確保して良好な収縮仕上がり性が得られることがわかった。以下、本発明の熱収縮性ポリエステルフィルムを効率良く製造するための製膜方法について説明する。
【0046】
本発明の熱収縮性ポリエステルフィルムを得るためには、製造時に以下の(1)〜(4)の手段を講じることが必要である。かかる手段を講じることにより、溶剤接着性を発現させ、また、破断率Pの増加(機械的強度の悪化)を低減し、必要な熱収縮率を確保し良好な収縮仕上がり性を得ることが可能となる。
【0047】
(1)原料処方
本発明のフィルムを構成するポリエステルは、PETボトル再生原料を40質量%以上と、ネオペンチルグリコール成分を多価アルコール成分100モル%に対して40〜60モル%共重合した共重合ポリエステルを30質量%以上60質量%以下含有することが好ましい。ネオペンチルグリコールを高い共重合比率で共重合したポリエステルを上記範囲内の量で使用することにより、PETボトル再生原料を40質量%以上という高い配合比率で添加しても、熱収縮率等の必要な熱収縮特性等を確保することができる。
【0048】
(2)原料チップ中の水分率の調整
本発明のフィルムを得るためには、押出機のホッパに供給する前のポリエステル系樹脂チップの水分率を10ppm以上50ppm以下に調整する必要がある。チップの水分率が50ppmを超えると、得られたフィルムの機械強度が劣るものとなる等の不具合が生じるので好ましくなく、反対に、チップの水分率が10ppmを下回ると、製造時に延伸しにくくなるので好ましくない。
【0049】
(3)押出機のスクリューの冷却
本発明のフィルムを得るためには、押出機のスクリューを冷却する必要がある。そのように押出機のスクリューを冷却しない場合には、非晶質ポリエステルチップがスクリューフィード部に粘着し、正常に押出しできなくなる等の不具合が生じるので好ましくない。
【0050】
(4)押出機の予熱部分およびコンプレッションゾーンの温度の調整
本発明のフィルムを得るためには、押出機の予熱部分の温度を200℃以上270℃以下に調整し、押出機のコンプレッションゾーンの温度を290℃以上310℃以下に調整する必要がある。押出機の予熱部分の温度を200℃以上270℃以下にしないと、ポリエステルチップの滑りによる喰い込み不良やスクリューへの粘着等によって正常な押出しができなくなる等の事態が生ずるので好ましくない。また、押出機のコンプレッションゾーンの温度を290℃以上310℃以下とすることで、未溶融樹脂の吐出や押出機内で熱劣化が進行する等の不具合を防止し、フィルムの極限粘度を所定範囲内に制御しやすくなる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0052】
(1)極限粘度
下記の測定条件で、溶液の質量濃度cに対する相対粘度[ηsp]の関係から質量濃度c=0としたときの値を極限粘度[η]とした。
溶媒:フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン=60/40(質量比)
管:ウベローデ粘度管
温度:30±0.1℃
【0053】
(2)面配向度AO
面配向度は、JIS K7142「プラスチックの屈折率測定方法」(A法)に準拠して、フィルムから得られる厚さ方向の屈折率Nz、主収縮方向の屈折率Nx、それと直交する方向の屈折率Nyより、次式から得られる値を採用した。
AO=(Nx+Ny)/2−Nz
【0054】
なお、接触液にはヨウ化メチレンを用い、23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気下で測定した。
【0055】
(3)熱収縮率
フイルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、98±0.5℃、または70±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、直ちに25±0.5℃の水中に10秒浸漬し、その後、試料の縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である。最も収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0056】
(4)破断率P
30℃、相対湿度85%の雰囲気下で所定日数保管した後の熱収縮性ポリエステル系フィルムから、複数の試験片を切り出し、最大収縮方向に直交する方向についての引張試験を、JIS K7127に準じ、試験片長さ200mm、チャック間距離20mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張り速度200mm/分の条件下で行った。伸度5%未満で破断した試験片数を数え、全試験片(10個以上)に対する百分率(%)を求め、破断率P(%)とした。
【0057】
(5)透明性
JIS K7105に準拠し、積分球式光線透過率測定装置で得た拡散透過率Tdと全光線透過率Tiの比をヘーズHとし、次の基準で評価した。◎:ヘーズが5%未満(透明性が非常に高い)、○:ヘーズが5%以上10%未満(透明性が高い)、△:ヘーズが10%以上20%未満(透明性が低い)、×:ヘーズが20%以上(透明性が非常に低い)。
【0058】
(6)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子をマジックインキで書き込んだ熱収縮性フィルム(縦118mm×横250mm)をヒートシール接着で筒状にし、これを容量350mlのPETボトル(全高160mm、首廻りφ25mm、胴周囲長58mm)に装着した後、スチームによる加熱機構を有した収縮トンネル(90℃〜95℃)を15〜20秒で通過させて、フィルムを密着させる。上記の工程で得られた30枚のフィルムに対して、シワやずれ、格子のひずみなどの異常を目視で判断し、仕上がり性に関する下記の評価を行った。
◎:異常なし
○:異常が1〜2ヶ所認められるが、1枚のみ
△:異常が1〜2ヶ所認められ、2枚以上
×:異常が3ヶ所以上認められる。
【0059】
(7)溶剤接着性
フィルムに1,3−ジオキソランを綿棒で塗布(幅約5mm、塗布量約5g/m2)して、2枚のフィルムを貼り合わせる。JIS K6854−3に準拠して、15mm幅(主延伸方向)の試料を用いて、23℃、引張速度200mm/分の条件で、T型剥離試験を行い、次の基準で評価した。
○:2.5N/15mm以上(実用に充分耐える)
△:1.5N/15mm以上、2.5N/15mm未満(実用に耐える)
×:1.5N/15mm未満(実用に耐えられない)。
【0060】
調製例1
<ポリエステル系樹脂A(PET:ポリエチレンテレフタレート)>
テレフタル酸(TPA)、エチレングリコール(EG)をエステル化反応釜に仕込み、圧力0.25MPa、温度220〜240℃の条件下で120分間エステル化反応を行った後、反応釜内を常圧にして、重合触媒であるチタニウムテトラブトキシドを加えて、撹拌しながら反応系内を徐々に減圧し、75分間で0.5hPaとすると共に、温度を280℃に昇温して、280℃で溶融粘度が所定の値となるまで撹拌を続けて重合反応を行い、その後、水中に吐出して冷却し、ポリエステル系樹脂Aを得た。
【0061】
調製例2
<ポリエステル系樹脂B・C(PET:ポリエチレンテレフタレート)>
使用済みPETボトルを洗浄後に粉砕し、275〜280℃に設定した押出し機から水中に吐出して冷却し、ポリエステル系樹脂を得た。このポリエステル系樹脂で極限粘度[η]の高い部分のものを樹脂B、極限粘度[η]の低い部分のものを樹脂Cとした。
【0062】
調製例3
<ポリエステル系樹脂D(PBT:ポリブチレンテレフタレート)>
テレフタル酸ジメチル(DMT)と、1,4−ブタンジオール(BD)をエステル化反応釜に仕込み、常圧、170〜210℃で180分間、エステル交換反応を行った以外は、調製例1と同様にして、ポリエステル系樹脂Dを得た。
【0063】
調製例4
<ポリエステル系樹脂E1〜E4>
テレフタル酸(TPA)、エチレングリコール(EG)、ネオペンチルグリコール(NPG)をそれぞれ表1に記載の所定のmol比になるようにエステル化反応釜に仕込み、調製例1と同様にして、ポリエステル系樹脂E1〜E4を得た。なお、上記の各樹脂を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例1〜9、比較例1〜4
充分に乾燥(水分率50ppm以下)したポリエステル系樹脂A、B、C、D、E1〜E4を表2に示した配合で均一に混合した。これを二軸押出し機(池貝製PCM45)を用いて、表2のように押出温度と滞留時間を変更して混練押出し、極限粘度の異なる厚さ180μmの未延伸フィルムを成形し、この未延伸フィルムを一軸延伸装置内で約10秒間の予熱ゾーン(約90℃)で予熱し、延伸ゾーン(約70℃)で延伸速度1,500%/分で実倍率約4.0倍に延伸した後、約10秒間の固定ゾーン(約80℃)で熱処理を施すことで、所定の極限粘度[η]および面配向度AOの厚さ40μmの熱収縮性フィルムを得た。なお、得られた試料に関する物性などを表2、表3に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
実施例1〜4は、本発明で規定する極限粘度[η]と面配向度AOを有するため、破断率P、透明性、収縮仕上がり性、接着性がいずれも良好であるのに対して、比較例1〜3は、極限粘度[η]と面配向度AOの少なくとも一方が本発明の規定範囲から外れているため、特に、破断率Pが高くなっている。
【0069】
すなわち、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、本発明で規定する極限粘度[η]と面配向度AOを有しているため、適切な収縮特性を示し、優れた耐破断性、透明性、収縮仕上がり性を有し、また、溶剤接着性にも優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムおよびラベルは、PETボトル再生原料を40質量%以上含むにもかかわらず、優れた耐破れ性を有し、透明性、収縮仕上がり性、溶剤接着性に対して均衡のとれたものである。従って、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムおよび熱収縮性ラベルは、PETボトル等のラベルを始めとする各種被覆ラベル等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットボトル再生原料を40質量%以上含有する単層構成の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、
このフィルムから10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を98℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が50%以上75%以下、面配向度AOが0.055以上であって、前記フィルムを構成するポリエステルは、全てのユニット中、エチレンテレフタレートユニットを最も多く含み、フィルムの極限粘度[η]が0.55dl/g以上0.63dl/g以下であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
フィルムから10cm×10cmの正方形状に切り出した試料を98℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が0〜8%、試料を70℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの主収縮方向の熱収縮率が5〜30%、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が−5〜5%である請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
フィルムを、30℃、相対湿度85%の雰囲気下で2週間保管した後の主収縮方向と直交する方向における引張り試験で、全試験片数に対する破断伸度5%未満の試料片の発生率(破断率P)が10%以下である請求項1または2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
フィルムを構成するポリエステルが、多価アルコール成分100モル%中、ネオペンチルグリコールを40〜60モル%共重合した共重合ポリエステルを30質量%以上60質量%以下含有する請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いたことを特徴とする熱収縮性ラベル。

【公開番号】特開2009−161625(P2009−161625A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340958(P2007−340958)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】