説明

熱収縮性ポリエステル系フィルム

【課題】優れた熱収縮特性を持つ熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供する。
【解決手段】熱収縮性ポリエステル系フィルムは、初期伸度10%未満での主収縮方向に垂直な方向の強度が3.5〜6.5kg/mmであり、主収縮方向に垂直な方向の破断伸度が50〜700%であり、厚さ均一度(ΔR)が4以下であり、主収縮方向に垂直な方向の収縮率が5%以下であるので、ロール工程などでの破断発生を防止することができ、工程安全性及び生産性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた熱収縮特性を持つ熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性フィルムは、瓶やカンなどの各種の容器、及びパイプ、棒などの長い品物の被覆用、結束用または外装用に利用されるもので、各種の包装材またはラベル用に使用され、主にポリエステルで構成される。
【0003】
熱収縮性フィルムは、加熱によって収縮する性質を利用して、例えばPET容器、ポリエチレン容器、ガラス容器などの各種容器を対象として収縮(集積)包装、収縮ラベル、キャップシールなどの目的で使用されている。
【0004】
ラベルなどを製造するためには、通常、原料重合体を連続的に溶融して押し出すことで未延伸フィルムを製造する。その後、延伸して熱収縮性フィルムロールを得る。このロールからフィルムを解きながら所望の幅でスリットして更にロール状に巻く。次に、各種の製品名などの文字情報や図案を印刷する。印刷の終了後には、溶剤接着などの手段でフィルムの左右端を互いに重畳し接合することでチューブを製造する(チュービング工程)。このとき、スリット工程と印刷工程は手順が逆の場合もある。得られたチューブは更にロール状に巻かれた後、後工程で解いてチューブを適当な長さに裁断すると、通常のラベルになり、このラベルの一方の開口部を接合することで、袋を製造することができる。
【0005】
このように得られたラベルや袋などを容器に被せ、スチームを噴き出して熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)、または熱風を噴き出して熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を、ベルトコンベヤーなどに載せて通過させることでラベルや袋などを熱収縮させることにより、容器に密着させて最終製品、つまりラベル化容器を得ることができる。
【0006】
ところで、スリット工程と印刷工程、印刷後に再び巻く工程、またはラベルや袋の製造のために再び解く過程など諸般の工程は一定張力を伴い、特にロール状に巻かれたフィルムやチューブなどを解く工程中には張力が間欠的に集中して引かれることになる。
【0007】
この際、熱収縮フィルムに破断がたびたび起こり、このような破断はフィルム製造メーカーはもちろんのこと、このフィルムの後工程企業、一例として印刷社や最終の容器製造社などでも発生して製品不良を引き起こし、生産性を阻害する。
【0008】
一方、印刷工程中には印刷バラ付きがたびたび発生し、製品不良を引き起こし、最終製品の外観を阻害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、フィルムの製造工程、印刷工程、スリット工程及び容器製作工程のいずれかにおいて、一定張力を伴う工程中に発生する破断に対して安定した熱収縮性フィルムを提供する。
【0010】
また、本発明は、フィルムの製造工程、印刷工程、スリット工程及び容器製作工程のいずれかにおいて、一定張力を伴う工程中に発生する破断に対して安定でありながらも印刷均一性を確保した熱収縮性フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、初期伸度10%未満での主収縮方向に垂直な方向の強度が3.5〜6.5kg/mmであり;主収縮方向に垂直な方向の破断伸度が50〜700%であり;厚さ均一度(ΔR)が4以下であり;主収縮方向に垂直な方向の収縮率が5%以下である。
【0012】
本発明の前記実施形態による熱収縮性ポリエステル系フィルムは、95℃温水中での主収縮方向の収縮率が40%以上であり、主収縮方向の破断伸度が60〜120%であることができる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸のようなジカルボン酸を1種以上含むジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなジオールを1種以上含むジオール成分から収得されるコポリエステルの中で選択される1種以上のコポリエステル;またはホモポリエステルとコポリエステルの混合物を含むことができる。
【0014】
前記コポリエステルは、テレフタル酸単位を80モル%以上含むジカルボン酸単位、及びエチレングリコール単位を60モル%以上含むジオール単位を含むことができる。
【0015】
前記コポリエステルは、ガラス転移温度が67〜77℃、固有粘度が0.60〜0.75dl/gであることができる。
【0016】
前記ホモポリエステルはポリブチレンテレフタレートまたはポリトリエチレンテレフタレートであってもよい。
【0017】
前記ポリブチレンテレフタレートは、ポリエステル樹脂の総量の7〜15重量%で使用されることができる。
【0018】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ポリエステルを押し出し、機械方向に工程上自然に発生する自然延伸比に0.1〜5%程度を加えた延伸比で機械方向に延伸する工程を経た後、幅方向に延伸する工程によって製造されることができる。
【0019】
本発明の他の実施形態によれば、ポリエステルの押出及び延伸によって熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法は:ポリエステルを、200〜350℃で、ポリマーせん断速度(Shear Rate)が100〜500sec−1とになるように調整して押し出す工程;機械方向に工程上自然に発生する自然延伸比に0.1〜5%程度を加えた延伸比で機械方向に延伸する工程;及び幅方向に延伸する工程;を含み、前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、初期伸度10%未満での主収縮方向に垂直な方向の強度が3.5〜6.5kg/mm、主収縮方向に垂直な方向の破断伸度が50〜700%、厚さ均一度(ΔR)が4以下、主収縮方向に垂直な方向の収縮率が5%以下である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、フィルム製造工程、印刷工程、スリット工程、ラベルや袋の加工のための工程などの収縮性フィルムの製造及び活用工程において、一定張力を伴うロール工程での破断発生が防止されるので、製品の信頼性を高めることができ、工程安全性及び生産性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
収縮フィルムは、低温一軸延伸によって極大の一軸配向を成し、更に熱処理による残留応力の解消を防止して、一軸配向された分子鎖がその残留応力を有し、最終収縮工程でその残留応力によって収縮するという原理で製造される。この観点から、最終収縮工程で収縮が主に起こるフィルム方向、つまり主収縮方向、一例として幅方向の収縮率は、熱収縮性フィルムにおいて主要な開発の趨勢であり、これに関連した多数の研究が行われてきた。
【0023】
しかし、本発明者らは、実質的にフィルムの製造工程、印刷工程、スリット工程、チューブを巻く工程、及び再び解く工程などで発生する破断は、主収縮方向収縮率によらず、むしろ主収縮方向に垂直な方向、一例として機械方向の強度、破断伸度、厚さ均一度(ΔR)によることを見つけた。
【0024】
したがって、本発明の一実施形態によれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムは、初期伸度10%未満での主収縮方向に垂直な方向の強度が3.5〜6.5kg/mm、主収縮方向に垂直な方向の破断伸度が50〜700%であり、厚さ均一度(ΔR)が4以下であり、主収縮方向に垂直な方向の収縮率が5%以下である熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
【0025】
熱収縮性ポリエステル系フィルムの初期伸度10%未満での主収縮方向に垂直な方向の強度が3.5kg/mm未満であるか、破断伸度が50%未満であるか、あるいは厚さ均一度(ΔR)が4を超える場合は、フィルムを製造する工程のうち、印刷のためにロール状のフィルムを解く工程、スリット工程、チュービングされたフィルムを巻く工程及びこれをラベルまたは袋に製造するために再び解く工程の間にフィルムの破断が発生し得る。
【0026】
したがって、初期伸度10%未満での主収縮方向に垂直な方向の強度が3.5kg/mm以上であることが破断発生防止の面で有利であり、スリッティングの際またはラベルや袋などの製造のためのチューブのカッティング工程を考慮すれば、初期伸度10%未満での機械方向強度が3.5〜6.5kg/mmであることがより有利である。
【0027】
また、主収縮方向に垂直な方向の破断伸度が50%未満の場合、工程中にフィルムに加わる張力を吸収できずに工程中にフィルムの破断を引き起こし、破断伸度が700%以上の場合、小さい張力変化にも易しくフィルムの長さ変形が起こり、結果として形態変形による印刷不良及び垂れ現象によって加工性が落ちるため、機械方向の破断伸度は50〜700%が有利である。
【0028】
一方、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、破断発生がなくて工程的に安定であるとともに印刷の際に均一な印刷のために厚さ均一度(ΔR)が4以下であることが有利である。ここで、厚さ均一度(ΔR)は厚さ測定機(Ono Sokki社製、GS551)を利用して測定することができ、厚さ均一度(ΔR)が4を超える場合、フィルムロールを解く過程中に均一な印刷を行うことが難しい。これは、破断発生防止及び工程安全性の確保に必要な要素であると考えられる。
【0029】
このような特性を満足するとともに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは95℃温水中での主収縮方向の収縮率が40%以上であることが収縮性フィルムとして適切である。形状において過度な収縮を要しない場合には50%程度の収縮率、形状屈曲を持つので高収縮が要求される場合には75%以上の収縮率を持つことができる。
【0030】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、収縮過程中の収縮応力による印刷ラベルの変形防止のために、外部応力に対する長さ変形を最小化する観点で、モジュラスが重要であり、これを代表する一変数として主収縮方向の破断伸度が60〜120%であることができる。
【0031】
前記のようなフィルム特性を満足する本発明の熱収縮性ポリエステルフィルムは、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などのような公知のジカルボン酸を1種以上含むジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのような公知のジオールを1種以上含むジオール成分から得られるコポリエステルより選択された少なくとも1種のコポリエステル;またはホモポリエステルとコポリエステルの混合物から得られる。
【0032】
ここで、コポリエステルは、テレフタル酸単位がジカルボン酸単位の80モル%以上を構成し、エチレングリコール以外の単位がジオール単位の14〜24モル%を構成するコポリエステルであることができる。
【0033】
本発明において、前記コポリエステル自体は、一般に行われているポリエステルの製造法によって製造することができる。例えば、ジカルボン酸に対してジオールを直接反応させる直接エステル化法、ジカルボン酸のジメチルエステルにジオールを作用させるエステル交換法などを挙げることができる。
【0034】
本発明の実施形態によれば、コポリエステルのガラス転移温度は67〜77℃、固有粘度は0.60〜0.75dl/gが好ましい。この際、ガラス転移温度は重合体製造に使用された単量体の組成によって調節され、固有粘度は重合度によって変わる。本発明においては、このような調節によってガラス転移温度と固有粘度が前記範囲内にあるコポリエステルを使用することができる。
【0035】
このようなコポリエステルは単独または組み合わせて使用可能であり、その他にホモポリエステルと混合して使用することができる。組み合わせて使用する場合、その含量はポリエステル樹脂全体の85〜93重量%であってよい。
【0036】
一方、2種以上のポリエステル、つまりポリエステル樹脂の混合物の場合には、ポリエステル樹脂混合物の総ジカルボン酸単位の80モル%以上がテレフタル酸であり、ポリエステル混合物の総ジオール単位の60モル%以上がエチレングリコール単位であるものを使用することができる。
【0037】
その一例として、本発明においては、ホモポリエステルとしてポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、このようなポリブチレンテレフタレート樹脂とコポリエステルとのと組み合わせを使用してフィルムを製造することができる。この際、ポリブチレンテレフタレート樹脂の含量は全体ポリエステル樹脂の7〜15重量%であってよい。
【0038】
通常、収縮性フィルムの商業的使用の際には収縮性フィルムを溶剤で溶解して接合する接着方式を採択する。この際、ポリブチレン含量が過剰に低いと、溶剤接着力が低く商業的使用が難しいことがある。一方、その含量が過剰に高いと、幅方向(主収縮方向)に対する収縮率が低くなり得、主収縮方向に垂直な方向(機械方向)の機械的物性(強伸度)の低下が発生し得る。
【0039】
ホモポリエステルとして、ポリブチレンテレフタレートに代わって、あるいはポリブチレンテレフタレートと組み合わせてポリトリエチレンテレフタレートを使用することもできる。
【0040】
また、フィルムの製造において、スライド性を改善するために、二酸化珪素、二酸化チタン、シリカ粉末、炭酸カルシウムなどの滑剤を添加してもよく、必要に応じて帯電防止剤、老化防止剤、紫外線防止剤、染料のような種々の添加剤を添加することもできる。
【0041】
前記特性を有する本発明のポリエステル熱収縮フィルムは、下記のような製造工程によって製造できる。
【0042】
ポリエステルフィルムを製造するための材料を通常の乾燥器で乾燥させた後、200〜350℃で押し出す。前記押出しのために、T−ダイ押出法またはチューブラー押出法などの公知のいずれの方法も使用することができる。押出しの際、ポリマーの流れ性を調節すればフィルムの厚さが均一になる。このような点を考慮し、ダイから押出しの際、ポリマーのせん断速度(Shear Rate)を100〜500sec−1となるように調整してポリマーの流れ性を均一に調節することが好ましい。
【0043】
押出しの際、せん断速度が100sec−1未満の場合には、ポリマーの混用性が落ちるため、ダイからポリマーの吐出しの際に流れ性がなだらかでなく、ダイ膨張(Die−Swelling)現象によって厚さ均一性が低下し、せん断速度が500sec−1を超える場合には、吐き出されるポリマーの張力低下によって流動が発生し、厚さ均一性が低下する。
【0044】
押出し生成物を、例えば静電荷接触法のような方法で急速冷却させて未延伸フィルムを得る。
【0045】
通常、このような未延伸フィルムを自然延伸比によって機械方向で延伸区間を通過させるが、フィルムの機械方向、つまり主収縮方向に垂直な方向の物性改善のためには、このような自然延伸比に0.1〜5%程度を加えた延伸比で延伸を行うことができる。さらなる機械方向への延伸は、機械方向への高分子鎖のエンタングルメント(Chain Entanglement)を強化させ、結果としてフィルムの機械方向物性を向上し得る。
【0046】
このように所定比率で機械方向に延伸されたフィルムを幅方向に延伸させる。この際、延伸温度は(ポリエステルのガラス転移温度(Tg)−10℃)〜(ポリエステルのガラス転移温度(Tg)+30℃)の温度であり、ポリエステルのガラス転移温度に近い低温延伸を行うこともできる。
【0047】
前記延伸温度が過剰に低いと、延伸ができなくて破断が起こるか不均一延伸になり得、過剰に高いと、収縮率が低下し得るので、延伸温度は(ポリエステルのガラス転移温度(Tg)−10℃)〜(ポリエステルのガラス転移温度(Tg)+30℃)の範囲内で設定することができる。
【0048】
また、収縮フィルムの延伸比が低い場合、収縮率が低下し得る一方、延伸比が過剰に高いと、破断が起こるか、物性の向上を期待しにくく、延伸比増加の意味がないので、延伸比は、元の長さの約3.0倍〜約5.0倍の範囲内で設定することができる。
【0049】
延伸には通常の装置が使用され、ロール延伸、テンター延伸、チューブラー延伸などの公知の方法を適用することができる。
【0050】
前記の延伸工程を経た後、熱処理を行うか、あるいはガラス転移温度(Tg)+30℃以下の温度で約20秒以内の熱処理を行う。
【0051】
このように得られた本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、溶融ピーク(Melting Peak)温度(Tm)が190〜210℃であるとき、固有粘度が0.60〜0.72dl/gであるものが、前記のようなフィルム特性を満足し得る。
【0052】
特に、原料樹脂として前記ガラス転移温度と固有粘度を満足するコポリエステル樹脂を使用して得たフィルムの溶融ピーク温度と固有粘度がこのような範囲を満たすことができる。
【0053】
通常フィルムの溶融ピーク温度は原料樹脂の特性及び樹脂のガラス転移温度に関連した延伸条件などによるが、フィルムの固有粘度は押出し条件などによって原料樹脂の固有粘度とは違う値を有することができ、前記のような熱収縮特性を考慮して押出し条件などを調節することでフィルムの固有粘度を前記範囲内で調節することができる。
【0054】
具体的には、フィルムの固有粘度が低くなると、相対的に短い分子鎖が存在する確率が高くなり、加工工程の際にフィルムに引張力が加わったとき、このような短い分子鎖は長い分子鎖に比べて分子間エンタングルメント(Chain Entanglement)が少ないため、分子鎖間のスリップ(Slip)が比較的に起こりやすく、結果として機械的物性の低下を引き起こし得る。
【0055】
したがって、前記のような収縮フィルムの特性を満足するためには、フィルムの固有粘度が少なくとも0.5dl/g以上でなければならない。
【0056】
一方、フィルムの固有粘度が高いことはフィルムの機械的物性に良い影響を及ぼすが、フィルムの固有粘度を高めるためには相応に原料組成の固有粘度が高くなければならず、工程上の問題を引き起こし得る。固有粘度は、このような点を考慮して、所定の程度まで高めることができる。
【実施例】
【0057】
本発明は、以下の実施例によって更に明確に理解可能であるが、以下の実施例は例示の目的で提示するもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0058】
本発明で使用される評価項目は下記の通りである。
【0059】
(1)固有粘度(IV)
フェノールとテトラクロロエタンの50/50混合溶媒20mlに試験片200mgを入れ、混合物を約110℃で1時間に亘り加熱した後、30℃で測定した。
【0060】
(2)ガラス転移温度(Tg)及び溶融ピーク温度(Tm)
The Perkin−Elmer Corp.の製品であるDSC−7を利用して、20℃/分の速度で試験片を加熱する方法で測定した。
【0061】
(3)熱収縮率
フィルムを20cm×20cmの正方形に裁断し、95℃±0.5℃の温水中に無荷重状態で10秒間熱収縮させた後、フィルムの機械方向(MD;主収縮方向に垂直な方向)、幅方向(TD;主収縮方向)の数値を測定し、下記の式1によって熱収縮率を求めた。
<式1>
熱収縮率=[(収縮前長さ−収縮後長さ)/収縮前長さ]×100
【0062】
(4)初期伸度10%未満での主収縮方向に垂直な方向の強度
フィルムを幅15mm(フィルム幅方向;TD方向、主収縮方向)にし、試料長(Gauge Length)を50mm(主収縮方向に垂直な方向)にし、引張速度(Cross head−up speed)を500mm/minにし、万能引張試験機(Tensile Test Machine、Instron社製)を利用して、フィルムの機械方向(MD;Machine Direction、主収縮方向に垂直な方向)に対する引張特性を測定した。
【0063】
測定結果から、初期伸度10%未満の範囲での最大引張強度を求め、フィルムの初期機械強度である初期伸度10%未満の主収縮方向に垂直な方向の強度を求めた。
【0064】
(5)フィルムの破断伸度
フィルムを幅15mm(フィルム幅方向;TD方向、主収縮方向)にし、試料長(Gauge Length)を50mm(主収縮方向に垂直な方向)にし、引張速度(Cross head−up speed)を500mm/minにし、万能引張試験機(Tensile Test Machine、Instron社製)を利用してフィルムの引張特性を測定した。
【0065】
フィルムが破断するまでの伸度を測定し、主収縮方向に垂直な方向の破断伸度を求めた。
【0066】
主収縮方向の破断伸度は、試料長を主収縮方向にし、幅を主収縮方向に垂直な方向にして、前記と同様の方法で求めた。
【0067】
(6)フィルムの厚さ均一度
フィルムを一定幅で切るスリッティング工程に先立ち、延伸された広幅の巻取ロール(Jumbo RollまたはWinder Mill Roll)から全幅を持つフィルムを採取し、3枚を連続して重ね、全体フィルム幅の中で両辺部10cmを除いて左側から右側方向に3.5cm間隔で全幅に対して接触式厚さ測定機(GS551、Ono Sokki社製)で厚さを測定した後、下記の式2によって厚さ均一度(ΔR)を求めた。
<式2>
厚さ均一度(ΔR)=(最大厚さ値−最小厚さ値)/3
【0068】
(7)フィルムの破断発生率
幅520mm、長さ2000mのフィルムを利用して8色印刷を行った後、これを幅173.3mmにスリッティングし、2000mずつ巻取し、溶剤を接着させることで、幅148mmのラベル1000mずつ、計6000mを製造した。ラベルを製造する過程中に発生した破断回数を確認し、下記の式3によって破断発生率を求めた。
<式3>
破断発生率(回/1000m)=破断発生回数/6000m
【0069】
(8)フィルムの印刷均一性
収縮フィルムに図案を印刷し、溶剤を利用して端部を接着させて製造したラベルを容器に被せ、スチーム型収縮トンネルを通過させて製造した最終製品(ラベル化容器)において、不良印刷状態による欠陥の個数を算出し、印刷均一性を評価した。
【0070】
この際、スチームトンネルの長さは1.5mであり、内部に通過する容器のラベルを収縮させるように1.2m長さのスチーム噴射管を上下二つずつ左右に設置し、圧力0.2barでスチームを噴射した。スチームトンネルは、トンネル入口部の温度及び出口部の温度がそれぞれ調節されるように温度コントローラー及び加熱器が付着されており、入口温度は77℃、出口温度は86℃に設定し、トンネル内でラベルが被せられた容器の滞留時間を5秒にしてラベルを収縮させることで、最終製品(ラベル化容器)での外観不良及び印刷不良発生の個数を決定し、印刷均一性を測定した。
【0071】
評価試料1000個に対する正常製品の割合を印刷均一性と定義し、次の式4によってこれを求めた。
<式4>
印刷均一性=[(1000−不良発生個数)/100]×100(%)
【0072】
<実施例1>
2塩基酸成分として、テレフタル酸100モル%、グリコールエチレングリコール100モル%及びネオペンチルグリコール24モル%を使用し、触媒として3酸化アンチモン0.05モル(酸性分対比)を使用して、直接エステル化法によって重縮合させた。このようにして得られた重合物に、平均粒径2.7μmの二酸化珪素粉末500ppmを含有させ、従来法で乾燥させることで、固有粘度0.70dl/g、ガラス転移温度74℃のコポリエステルを製造した。
【0073】
一方、テレフタル酸100モル%、1,4−ブタンジオール100モル%を使用し、触媒としてはテトラブチルチタネート0.015重量部を投入して、ポリブチレンテレフタレート樹脂を得た(固有粘度0.97dl/g、ガラス転移温度30℃)。
【0074】
前記のコポリエステル90wt%とポリブチレンテレフタレート10wt%を混合して265℃の押出機で押し出した後、吐出量、及びポリマーが吐き出されるダイの幅及びリップギャップ(Lip−Gap)を調節することで、吐き出されるポリマーのせん断速度が420sec−1となるように調整してポリマーを吐き出した後、急速冷却によって固形化させることで未延伸フィルムを得た。
【0075】
前記未延伸フィルムを機械的方向への自然発生延伸比が3.4%である延伸ロールに通す過程において、(自然延伸比+0.6)%の延伸比で機械方向に延伸させた。
【0076】
その後、テンターに入れて75℃で幅に比べて4.0倍延伸させた後、80℃の熱処理区間を通過させることでフィルムを製造した。得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムであり、フィルムの物性値を表1に示した。
【0077】
<実施例2>
前記実施例1と同様の方法で得た未延伸フィルムを使用した。
【0078】
前記未延伸フィルムを機械的方向への自然発延伸比が3.4%である延伸ロールを経る過程において(自然延伸比+4.5)%延伸比で機械方向に延伸させたことを除き、前記実施例1と同様の方法で熱収縮性フィルムを製造した。
【0079】
得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムであり、フィルムの物性値を表1に示した。
【0080】
<実施例3>
前記実施例1と同様の方法で得たポリエステルブレンド物を使用した。
【0081】
得られたポリエステルブレンド物を押し出すにあたり、ダイから吐き出されるポリマーのせん断速度が140sec−1となるように、吐出量、ダイ幅及びリップギャップ(Lip Gap)を調整することで、吐き出されるポリマーの流れ性を調節した。
【0082】
その後、前記実施例1と同様の方法で熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造した。
【0083】
得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムであり、フィルムの物性値を表1に示した。
【0084】
<実施例4>
前記実施例1と同様の方法で得た未延伸フィルムを使用した。前記未延伸フィルムを機械的方向への自然発延伸比が3.4%である延伸ロールを通過させる過程において(自然延伸比+0.6)%の延伸比で機械方向に延伸させた後、テンターに入れ、75℃で幅の5.0倍に延伸させた後(延伸時間13.0秒、延伸区間長さ9m、延伸速度41.4m/min)、テンター内の熱処理区間でさらなる加熱なしにフィルムを通過させた。得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムであり、フィルムの物性値を表1に示した。
【0085】
<実施例5>
2塩基酸成分としてテレフタル酸100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール104モル%及びネオペンチルグリコール20モル%を使用し、触媒として3酸化アンチモン0.05モル(酸成分対比)を使用して直接エステル化法によって重縮合させた。このように得られた重合物に平均粒径2.7μmの二酸化珪素粉末500ppmを含有させ、従来方法で乾燥させることで、固有粘度が0.64dl/g、ガラス転移温度が76℃のコポリエステルを製造した。
【0086】
一方、テレフタル酸100モル%、1,4−ブタンジオール100モル%を使用し、触媒としてはテトラブチルチタネート0.015重量部を投入してポリブチレンテレフタレート樹脂を得た(固有粘度0.97dl/g、ガラス転移温度30℃)。
【0087】
前記コポリエステル90wt%とポリブチレンテレフタレート10wt%をブレンドし、265℃の押出機から押し出した後、吐出量、及びポリマーが吐き出されるダイの幅及びリップギャップ(Lip−Gap)を調節して、吐き出されるポリマーのせん断速度が420sec−1となるように調整してポリマーを吐き出した後、急速冷却で固形化させて未延伸フィルムを収得した。
【0088】
このように得られた未延伸フィルムを前記実施例1と同様の方法で後工程によって熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造した。
【0089】
得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムであり、フィルムの物性値を表1に示した。
【0090】
<比較例1>
前記実施例1と同様の方法で熱収縮フィルムを製造したが、ただ吐出量とポリマーが吐き出されるダイの幅及びリップギャップ(Lip−Gap)を調節して、吐き出されるポリマーのせん断速度が550sec−1となるように調整してポリマーを吐き出した後、急速冷却で固形化させて未延伸フィルムを得た。
【0091】
前記未延伸フィルムをすぐにテンターに入れ、前記実施例1の延伸及び熱処理工程によってフィルムを製造した。得られたフィルムの物性値は表1に示した。
【0092】
<比較例2>
前記実施例1と同様の方法で熱収縮フィルムを製造し、吐出量とポリマーが吐き出されるダイの幅及びリップギャップ(Lip−Gap)を調節して、吐き出されるポリマーのせん断速度が96sec−1となるように調整してポリマーを吐き出した後、急速冷却で固形化させて未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムを収得した後、機械方向に(自然延伸比+6.5)%で延伸した後、テンター内で幅方向延伸工程を行った。
【0093】
<比較例3>
前記実施例1と同様の方法で熱収縮フィルムを製造し、未延伸フィルムを得た後、機械方向に(自然延伸比+0.05)%で延伸した後、テンターで幅方向延伸工程を行った。
【0094】
【表1】

【0095】
表1に示されるように、初期伸度10%未満での主収縮方向に垂直な方向の強度が3.5〜6.5kg/mm、主収縮方向に垂直な方向の破断伸度が50〜700%、厚さ均一度(ΔR)が4以下、主収縮方向に垂直な方向の収縮率が5%以下のフィルムでは、破断がほとんど発生しないが、前記特性の一つでも前記範囲から外れた場合には、破断発生がかなり多く、印刷工程中の破断発生によって加工収率が落ちるので、ラベル製造の際に生産性が落ちることが分かる。また、最終容器化工程において収縮不均一によって印刷均一性が減り、最終製品の生産収率が低下し得ることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期伸度10%未満での主収縮方向に垂直な方向の強度が3.5〜6.5kg/mmであり、
主収縮方向に垂直な方向の破断伸度が50〜700%であり、
厚さ均一度(ΔR)が4以下であり、
主収縮方向に垂直な方向の収縮率が5%以下である熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
95℃温水中での主収縮方向の収縮率が40%以上であり、主収縮方向の破断伸度が60〜120%である請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
溶融ピーク温度が190〜210℃であり、固有粘度が0.60〜0.72dl/gである請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
熱収縮性ポリエステル系フィルムは、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸のようなジカルボン酸を1種以上含むジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなジオールを1種以上含むジオール成分とから得られるコポリエステルより選択される1種以上のコポリエステル、またはホモポリエステルとコポリエステルとの混合物を含む請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
コポリエステルは、テレフタル酸単位を80モル%以上含むジカルボン酸単位、及びエチレングリコール単位を60モル%以上含むジオール単位を含む請求項4に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項6】
コポリエステルは、ガラス転移温度が67〜77℃、固有粘度が0.60〜0.75dl/gである請求項4に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項7】
ホモポリエステルは、ポリブチレンテレフタレートまたはポリトリエチレンテレフタレートである請求項4に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項8】
ポリブチレンテレフタレートは、ポリエステル樹脂の総量の7〜15重量%で使用される請求項7に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項9】
ポリエステルを押し出し、機械方向に工程上自然に発生する自然延伸比に0.1〜5%程度を加えた延伸比で機械方向に延伸する工程を経た後、幅方向に延伸する工程によって製造される請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項10】
ポリエステルの押し出し及び延伸によって熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法であって、
ポリエステルを、200〜350℃で、ポリマーせん断速度が100〜500sec−1となるように調整して押し出す工程と、
機械方向に工程上自然に発生する自然延伸比に0.1〜5%程度を加えた延伸比で機械方向に延伸する工程と、
幅方向に延伸する工程とを含み、
初期伸度10%未満での主収縮方向に垂直な方向の強度が3.5〜6.5kg/mm、主収縮方向に垂直な方向の破断伸度が50〜700%、厚さ均一度(ΔR)が4以下、主収縮方向に垂直な方向の収縮率が5%以下である熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項11】
幅方向に延伸する工程は、(ポリエステルのガラス転移温度−10℃)〜(ポリエステルのガラス転移温度+30℃)の温度範囲で行われる請求項10に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。

【公表番号】特表2011−507990(P2011−507990A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537864(P2010−537864)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007336
【国際公開番号】WO2009/075533
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】