説明

熱収縮性多層フィルム及び熱収縮性ラベル

【課題】容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合、装着の際に層間剥離が発生することがなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供する。
【解決手段】スルホン基を有するポリエステル系樹脂からなる表裏層2,2と、ポリスチレン系樹脂からなる中間層1とが、変性スチレン系エラストマー及び/又は変性ポリエステル系エラストマーからなる接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合、装着の際に層間剥離が発生することがなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットボトルや金属罐等の容器の多くには、熱収縮性樹脂フィルムからなるベースフィルムに印刷等を施した熱収縮性ラベルが装着されている。
このような熱収縮性樹脂フィルムとしては、低温収縮性に優れることからポリスチレン系樹脂からなるものが主流である。しかし、ポリスチレン系樹脂フィルムは、耐熱性が不充分であることから、例えば、コンビニエンスストア等にあるホットウォーマー内で加熱時にペットボトルが倒れたときに収縮してラベルが歪んでしまったり破れてしまったりすることがあるという問題があった。また、ポリスチレン系樹脂フィルムは耐溶剤性が不充分であることから、油分を含む品物の包装に用いた場合に、油分が付着することによって収縮したり溶解したりすることがあるという問題もあった。
【0003】
一方、ポリスチレン系樹脂フィルムに代えて、耐熱性や耐溶剤性に優れたポリエステル系フィルムを熱収縮性ラベルとして用いる試みもなされている。しかしながら、ポリエステル系フィルムは、低温収縮性が悪く、急激に収縮するため容器に装着した際に皺が発生しやすいという問題がある。また、熱収縮性ラベルには、容器をリサイクルするために使用後の容器から容易に熱収縮性ラベルを引き剥がせるように引き剥がしのためのミシン目が設けられていることが多いが、ポリエステル系フィルムは、ミシン目におけるカット性が悪く、容易には熱収縮性ラベルを容器から引き剥がすことができないことがあるという問題があった。更に、ポリエステル系フィルムは収縮応力が大きいことから、ホット飲料用ラベルとして使用する場合に、販売時の加熱によってラベルが容器を締めつけることで、内容物の入れ目線が上昇し、容器から漏出等したりするという問題があった。
【0004】
これに対して、特許文献1には、ポリスチレン系樹脂からなる中間層に、オレフィン系樹脂からなる接着層を介してポリエステル系樹脂からなる外面層(表裏層)が積層されてなる硬質多層収縮性フィルムが開示されている。また、特許文献2には、ポリスチレン系樹脂からなる中間層の両側に、特定のモノマーからなるポリエステル系樹脂からなる外面層が積層されたものであって、中間層と外面層とが接着層を介さずに積層されてなるベースフィルムを備えた熱収縮性ラベルが開示されている。更に、特許文献3には、ポリエステル系樹脂からなる表面層、スチレン系樹脂からなる中間層及び接着性樹脂からなる接着層を有する積層フィルムが開示されている。これらの多層フィルムからなる熱収縮性ラベルは、ポリスチレン系樹脂からなる中間層によって低温収縮性とミシン目におけるカット性に優れ、しかも、該中間層がポリエステル系樹脂からなる外面層に覆われているため、耐溶剤性、耐熱性にも優れている。
【0005】
しかしながら、これらの熱収縮性ラベルを実際に容器に装着すると、特許文献1に記載された硬質多層収縮性フィルムでは、装着時に中間層と外面層とが剥離してしまったりすることがあり、特許文献2に記載された熱収縮性ラベルでは、装着後に製品の輸送中にフィルム同士が擦れた場合や、人間の爪や物体で引掻かれた場合に中間層と外面層との間で剥離が生じたりすることがあるという問題があった。
従って、容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合に、装着時において外面層と中間層との剥離が生じることなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れる熱収縮性多層フィルムが求められていた。
【特許文献1】特開昭61−41543号公報
【特許文献2】特開2002−351332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合、装着の際に層間剥離が発生することがなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スルホン基を有するポリエステル系樹脂からなる表裏層と、ポリスチレン系樹脂からなる中間層とが、変性スチレン系エラストマー及び/又は変性ポリエステル系エラストマーからなる接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルムである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ポリスチレン系樹脂からなる中間層に、接着層を介してポリエステル系樹脂からなる表裏層が積層された熱収縮性多層フィルムにおいて、上記中間層と表裏層とを、変性スチレン系エラストマー及び/又は変性ポリエステル系エラストマーからなる接着層を介して接着することにより、層間剥離が生じることがなく安定して装着でき、ミシン目カット性、外観に優れる熱収縮性多層フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、スルホン基を有するポリエステル系樹脂(以下、単にスルホン基含有ポリエステル系樹脂ともいう)からなる表裏層と、ポリスチレン系樹脂からなる中間層とが、変性スチレン系エラストマー及び/又は変性ポリエステル系エラストマーからなる接着層を介して積層されたものである。
【0010】
本発明では、上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂は、スルホン基を有する。上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂は、スルホン基を有するポリエステル系樹脂を単独で用いたものでもよく、また、スルホン基を有するポリエステル系樹脂とスルホン基を有しないポリエステル系樹脂との混合物であってもよい。
上記スルホン基を有することで、後述する接着層と組み合わせて使用した場合に、装着時において表裏層と中間層との剥離が生じることなく、優れた接着性を実現することができる。
なお、上記スルホン基としては、酸形態のほか、塩形態の場合も含む。上記塩形態としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、第三級アミン塩等が挙げられる。
【0011】
上記スルホン基含有ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールとを縮重合させることにより得ることができるものである。特に本発明では、例えば、ジカルボン酸及び/又はジオールに、スルホン基含有ジカルボン酸及び/又はスルホン基含有ジオールを配合して縮重合させることにより上記スルホン基含有ポリエステル系樹脂が得られる。
【0012】
上記ジカルボン酸としては特に限定されず、例えば、o−フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等が挙げられる。
上記ジオールとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類等が挙げられる。
【0013】
上記スルホン基含有ジカルボン酸としては、例えば、5−スルホイソフタル酸、2−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、3−スルホフタル酸、5−スルホイソフタル酸ジアルキル、2−スルホイソフタル酸ジアルキル、4−スルホイソフタル酸ジアルキル、3−スルホイソフタル酸ジアルキル及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
上記スルホン基含有ジオールとしては、例えば、1,3−ジヒドロキシブタンスルホン酸、1,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸等が挙げられる。
【0014】
上記スルホン基を有しないポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、具体的には、エチレングリコールに由来する成分の含有量が60〜80モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分の含有量が10〜40モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を0〜20モル%含有するもの等が例示できる。
【0015】
上記表裏層を構成するポリエステル系樹脂の全ジカルボン酸及び/又はジオールに由来する成分に対するスルホン基含有ジカルボン酸及び/又はスルホン基含有ジオールに由来する成分の含有量の好ましい下限は0.5モル%、好ましい上限は10モル%である。上記スルホン基含有ジカルボン酸及び/又はスルホン基含有ジオールに由来する成分がこの範囲内であると、フィルム製造時にトラブルを起こすこともなく、スルホン基を含有する効果が充分に発揮されるため好ましい。
【0016】
上記中間層を構成するポリスチレン系樹脂としては特に限定されないが、例えば、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体、又は、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂等が挙げられる。
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体を用いると、低温雰囲気下での伸度低下の少ない熱収縮性多層フィルムとなる。
また、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂を用いると、低温収縮性に優れた熱収縮性多層フィルムとなる。
【0017】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体としては特に限定されず、例えば、芳香族ビニル炭化水素としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が、共役ジエンとしては1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、特に低温収縮性やミシン目におけるカット性に優れることから、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS樹脂)が好適である。また、よりフィッシュアイの少ないフィルムを作製するためには、共役ジエンとして2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)を用いたスチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS樹脂)や、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SIBS樹脂)等を用いることが好ましい。
【0018】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体として、SBS樹脂、SIS樹脂又はSIBS樹脂を用いる場合には、1種の樹脂を単独で用いてもよく、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。複数で用いる場合にはドライブレンドしてもよく、ある特定の組成にて押出機を用いて練り上げペレタイズしたコンパウンド樹脂を用いてもよい。
このような樹脂を単独又は複数で用いて、スチレン含有量が65〜90重量%、共役ジエン含有量が10〜35重量%の組成とすることが好ましい。このような組成の樹脂は、特に低温収縮性やミシン目におけるカット性に優れる。一方、共役ジエン含有量が10重量%未満であると、フィルムにテンションをかけたときに切れ易くなり、印刷等のコンバーティングやラベルとして使用するときにフィルムが思いもよらず破断することがある。共役ジエン含有量が35重量%を超えると、成形加工時にゲル等の異物が発生しやすくなることがある。
【0019】
上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては特に限定されず、例えば、芳香族ビニル炭化水素としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が、不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体として、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体を用いる場合、スチレン含有量が60〜90重量%、アクリル酸ブチル含有量が10〜40重量%であるものを用いることが好ましい。このような組成の芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体を用いることで、耐低温性やミシン目カット性に優れる熱収縮性ラベルを得ることができる。
【0021】
上記中間層として、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂を用いる場合、混合樹脂中の上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体の配合量の好ましい下限は20重量%、好ましい上限は100重量%である。20重量%未満であると低温伸度が低くなり、冷蔵保存時に誤って落下した時に熱収縮性ラベルが破れてしまうことがある。
【0022】
本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、上記中間層は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。このように、紫外線吸収剤を含有することで、紫外線カット性を付与することができ、特に日光や蛍光灯から発せられる紫外線(波長380nm以下)のカット性に優れるため、容器の内容物の劣化を防止して、保管性を高めることができる。
【0023】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−n−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤;p−tert−ブチルフェニルサリシレート等のサリシレート系紫外線吸収剤;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
なかでも、紫外線吸収性と耐熱性とのバランスに優れることから、2−(2’−ヒドロキシ−5’−n−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが好ましい。
【0024】
上記紫外線吸収剤の含有量は、中間層を構成する材料100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。1重量部未満であると、紫外線カット性が不充分となり、容器のシュリンクラベルとして使用した場合に、内容物の劣化を防止できないことがあり、10重量部を超えると、熱収縮性多層フィルムの機械的強度が低下し、印刷等のコンバーティングやシュリンクラベルとして使用する場合に、破断等が発生することがある。上記紫外線吸収剤の含有量のより好ましい下限は2重量部、より好ましい上限は8重量部である。
【0025】
上記接着層は、変性スチレン系エラストマー及び/又は変性ポリエステル系エラストマーからなる。
上記接着層を構成する変性スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマーをカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基等の官能基によって変性したものが挙げられる。
【0026】
上記スチレン系エラストマーは、ハードセグメントとしてのポリスチレンと、ソフトセグメントとしてポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンとポリイソプレンとの共重合体とからなるものや、これらの水素添加物のことである。なお、上記水素添加物は、ポリブタジエンやポリイソプレンの一部が水素添加されたものであってもよく、全てが水素添加されたものであってもよい。
【0027】
上記スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、「タフテック」、「タフプレン」(何れも旭化成ケミカルズ社製)、「クレイトン」(クレイトンポリマージャパン社製)、「ダイナロン」(JSR社製)、「セプトン」(クラレ社製)等が挙げられる。
【0028】
上記変性スチレン系エラストマーにおける上記カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基等の官能基の含有量の好ましい下限は0.05重量%、好ましい上限は5.0重量%である。0.05重量%未満であると、特に表裏層との接着性が不充分となることがあり、5.0重量%を超えると、上記官能基を付加する際に樹脂が熱劣化し、ゲル等の異物が発生しやすくなることがある。より好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は3.0重量%である。
【0029】
上記接着層を構成する変性ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系エラストマーをカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基等の官能基によって変性したものが挙げられる。
【0030】
上記ポリエステル系エラストマーは、飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましく、特に、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましい。ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントである芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントであるポリアルキレンエーテルグリコールや脂肪族ポリエステルとからなるブロック共重合体が好ましい。更に、ソフトセグメントとしてポリアルキレンエーテルグリコールを有するポリエステルポリエーテルブロック共重合体がより好ましい。
【0031】
上記ポリエステルポリエーテルブロック共重合体としては、(i)炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環族ジオールと、(ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルと、(iii)ポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させたものが好ましい。
【0032】
上記炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環族ジオールとしては、例えば、ポリエステルの原料、特にポリエステル系エラストマーの原料として一般に用いられるものを用いることができる。具体的には例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中では、1,4−ブタンジオール又はエチレングリコールが好ましく、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。これらのジオールは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記芳香族ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系エラストマーの原料として一般的に用いられているものを用いることができる。具体的には例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。これらの芳香族ジカルボン酸は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとしては、上記芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が挙げられる。なかでも、ジメチルテレフタレート及び2,6−ジメチルナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
【0035】
上記脂肪族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸等が好ましく、そのアルキルエステルとしては、ジメチルエステルやジエチルエステル等が好ましい。また、上記の成分以外に3官能のアルコールやトリカルボン酸又はそのエステルを少量共重合させてもよく、更に、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルを共重合成分として用いてもよい。
【0036】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び/又は1,3−プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。
【0037】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量の好ましい下限は400、好ましい上限は6000である。400以上とすることで、共重合体のブロック性が高くなり、6000以下とすることで、系内での相分離が起こり難く、ポリマー物性が発現しやすくなる。より好ましい下限は500、より好ましい上限は4000、更に好ましい下限は600、更に好ましい上限は3000である。なお、本明細書において、数平均分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものをいう。また、上記GPCのキャリブレーションは、例えば、POLYTETRAHYDROFURANキャリブレーションキット(英国POLYMER LABORATORIES社製)を使用することにより行うことができる。
【0038】
上記ポリエステル系エラストマーには、天然ゴム、合成ゴム(例えば、ポリイソプレンゴム)等のゴム成分及びプロセスオイル等の軟化剤を共存させてもよい。上記軟化剤を共存させることで、ゴム成分の可塑化促進や得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させることができる。上記軟化剤は、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系のいずれであってもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲において、該樹脂成分及びゴム成分に上記以外の樹脂やゴム、フィラー、添加剤等他の成分を添加してもよい。
【0039】
上記フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カオリン、クレー、ケイソウ土、珪酸カルシウム、雲母、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス球、硫化モリブデン、グラファイト、シラスバルーン等を挙られる。また、添加剤としては、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、核剤、滑剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤等が挙げられる。
【0040】
上記耐熱安定剤としては、例えば、フェノール系、リン系、硫黄系等の公知のものを使用することができる。上記耐候安定剤としてはヒンダードアミン系、トリアゾール系等の公知のものを使用することができる。上記着色剤としてはカーボンブラック、チタンホワイト、亜鉛華、べんがら、アゾ化合物、ニトロソ化合物、フタロシアニン化合物等が挙げられる。また、帯電防止剤、難燃剤、核剤、滑剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤等についてもいずれも公知のものが使用可能である。
【0041】
上記ポリエステル系エラストマーの市販品としては、「プリマロイ」(三菱化学社製)、「ペルプレン」(東洋紡績社製)、「ハイトレル」(東レ・デュポン社製)等が挙げられる。
【0042】
上記ポリエステル系エラストマーとして、ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールとからなるポリエステルポリエーテルブロック共重合体を用いる場合、ポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量は、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が90重量%である。5重量%以上であると、柔軟性及び耐衝撃性に優れるものとなり、90重量%以下であると、硬度及び機械強度に優れるものとなる。より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は80重量%であり、更に好ましい下限は55重量%である。なお、ポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量は核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を用い、水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。
【0043】
上記変性ポリエステル系エラストマーを得るための変性反応は、例えば、ポリエステル系エラストマーに変性剤としてのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸を反応させることによって行われる。変性反応に際してはラジカル発生剤を使用するのが好ましい。変性反応においては、ポリエステル系エラストマーにα,β−エチレン性不飽和カルボン酸やその誘導体が付加するグラフト反応が主として起こるが、分解反応も起こる。その結果、変性ポリエステル系エラストマーは、分子量が低下して溶融粘度が低くなる。また、変性反応においては、通常、他の反応として、エステル交換反応等も起こるものと考えられ、得られる反応物は、一般的には、未反応原料等を含む組成物となるが、この場合、得られる反応物中の変性ポリエステル系エラストマーの含有率の好ましい下限は10重量%、より好ましい下限は30重量%であり、変性ポリエステル系エラストマーの含有率が100重量%であることが更に好ましい。
【0044】
上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸;コハク酸2−オクテン−1−イル無水物、コハク酸2−ドデセン−1−イル無水物、コハク酸2−オクタデセン−1−イル無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。これらのなかでは、反応性が高いことから、酸無水物が好ましい。上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、変性すべきポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する共重合体や変性条件に応じて適宜選択することができ、また、2種以上を併用してもよい。なお、上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は有機溶剤等に溶解して使用することもできる。
【0045】
上記ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機の過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物、ジクミル等の炭素ラジカル発生剤等が挙げられる。上記ラジカル発生剤は、変性反応に使用するポリエステル系エラストマーの種類、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の種類及び変性条件に応じて適宜選択することができ、また、2種以上を併用してもよい。更に、ラジカル発生剤は有機溶剤等に溶解して使用することもできる。
【0046】
上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の配合量の好ましい下限は、ポリエステル系エラストマー100重量部に対して0.01重量部、好ましい上限は30.0重量部である。0.01重量部以上とすることで、変性反応を充分に行うことができ、30.0重量部以下とすることで、経済的に有利なものとなる。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は5.0重量部、更に好ましい下限は0.10重量部、更に好ましい上限は1.0重量部である。
【0047】
上記ラジカル発生剤の配合量の好ましい下限は、ポリエステル系エラストマー100重量部に対して0.001重量部、好ましい上限は3.00重量部である。0.001重量部以上とすることで、変性反応が起きやすくなり、3.00重量部以下とすることで、変性時の低分子量化(粘度低下)による材料強度の低下が起こりにくくなる。より好ましい下限は0.005重量部、より好ましい上限は0.50重量部、更に好ましい下限は0.010重量部、更に好ましい上限は0.20重量部であり、特に好ましい上限は0.10重量部である。
【0048】
上記変性ポリエステル系エラストマーを得るための変性反応としては、溶融混練反応法、溶液反応法、懸濁分散反応等の公知の反応方法を使用することができるが、通常は安価であることから溶融混練反応法が好ましい。
【0049】
上記溶融混練反応法による方法では、上述した各成分を所定の配合比にて均一に混合した後、溶融混練を行う。各成分の混合には、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を使用することができ、溶融混練には、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸等の多軸混練押出機等を使用することができる。
【0050】
上記溶融混練を行う場合の混練温度の好ましい下限は100℃、好ましい上限は300℃である。上記範囲内とすることで、樹脂の熱劣化を防止することができる。より好ましい下限は120℃、より好ましい上限は280℃、更に好ましい下限は150℃、更に好ましい上限は250℃である。
【0051】
上記変性ポリエステル系エラストマーの変性率(グラフト量)の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は10.0重量%である。0.01重量%以上であることで、ポリエステルとの親和性が高くなり、10.0重量%以下であることで、変性時の分子劣化による強度低下を小さくすることができる。より好ましい下限は0.03重量%、より好ましい上限は7.0重量%であり、更に好ましい下限は0.05重量%、更に好ましい上限は5.0重量%である。
【0052】
上記変性ポリエステル系エラストマーの変性率(グラフト量)は、H−NMR測定により得られるスペクトルから、下記の式(1)に従って求めることができる。なお、上記H−NMR測定に使用する機器としては、例えば、「GSX−400」(日本電子社製)等を用いることができる。
【0053】
グラフト量(重量%)=100×[(C÷3×98)/{(A×148÷4)+(B×72÷4)+(C÷3×98)}] (1)
式(1)中、Aは7.8〜8.4ppmにおける積分値、Bは1.2〜2.2ppmにおける積分値、Cは2.4〜2.9ppmにおける積分値を表す。
【0054】
上記変性反応によって得られる変性ポリエステル系エラストマーを含有する反応物のJIS−D硬度の好ましい下限は10、好ましい上限は80である。10以上とすることで、機械的強度が向上し、80以下とすることで、柔軟性及び耐衝撃性が向上する。より好ましい下限は15、より好ましい上限は70、更に好ましい下限は20、更に好ましい上限は60である。なお、上記JIS−D硬度は、JIS K 6253に準拠して方法でデュロメータ タイプDを用いることにより測定することができる。
【0055】
本発明の熱収縮性多層フィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を添加してもよい。特に、熱安定剤や酸化防止剤を添加することでゲルの発生を抑制することができる。
【0056】
フィルム全体の厚さが45μmである場合、上記中間層の厚さの好ましい下限は22μm、好ましい上限は37μmである。22μm未満であると、充分なミシン目におけるカット性が得られないことがあり、37μmを超えると、充分な耐熱性が得られないことがある。より好ましい下限は26μm、より好ましい上限は36μmである。
上記表裏層の厚さの好ましい下限は3μm、好ましい上限は10μmである。3μm未満であると、充分な耐油性や耐熱性が得られないことがあり、10μmを超えると、充分なミシン目におけるカット性が得られないことがある。より好ましい下限は4μm、より好ましい上限は8μmである。
上記接着層の厚さの好ましい下限は0.7μm、好ましい上限は1.5μmである。0.7μm未満であると、充分な接着強度が得られないことがあり、1.5μmを超えると、熱収縮特性が悪化することがある。より好ましい下限は0.8μm、より好ましい上限は1.3μmである。
【0057】
本発明の熱収縮性多層フィルム全体の厚さの好ましい下限は30μm、好ましい上限は60μmである。熱収縮性多層フィルム全体の厚さを上記範囲内とすることで、経済性に優れるとともに、取り扱いやすいものとなる。各層の厚さは、表裏層の厚さを3〜10μmとして、中間層及び接着層の厚さを増減させることにより、フィルム全体の厚さを30〜60μmとすることが好ましい。
【0058】
本発明の熱収縮性多層フィルムの熱収縮特性については、主収縮方向(たて又はよこ方向のうち、より大きく収縮する方向)の70℃の温水中での10秒間の熱収縮率が10〜50%であり、80℃の温水中での10秒間の熱収縮率が25〜80%であることが好ましい。なお、上記熱収縮率とは、熱収縮性多層フィルムをたて100mm×よこ100mmの大きさに切り取り、70℃又は80℃の温水槽に10秒間浸漬した後、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%で表した値のことである。また、たて方向とはフィルムの流れ方向、よこ方向とは幅方向を表す。
【0059】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法としては特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好適である。例えば、Tダイによる共押出では、積層の方法として、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。具体的には例えば、表裏層を構成する樹脂としてスルホン基を有するポリエステル系樹脂、中間層を構成する樹脂としてポリスチレン系樹脂、接着層を構成する樹脂として変性スチレン系エラストマー及び/又は変性ポリエステル系エラストマーをそれぞれ押出機に投入し、多層ダイスにより、シート状に押し出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸する方法を用いることができる。延伸温度はフィルムを構成している樹脂の軟化温度や熱収縮性多層フィルムに要求される収縮特性によって変更する必要があるが、延伸温度の好ましい下限は75℃、好ましい上限は120℃、より好ましい下限は80℃、より好ましい上限は115℃である。
【0060】
本発明の熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとして使用することにより、熱収縮性ラベルを得ることができる。このような熱収縮性ラベルもまた本発明の1つである。
本発明の熱収縮性ラベルは、上記熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとして、必要に応じて、印刷層等の他の層を積層してもよい。
【0061】
容器に熱収縮性ラベルを装着する方法としては、通常、溶剤を用いて熱収縮性フィルムの端部間を接着してチューブ状に加工(センターシール加工)し熱収縮性ラベルとした後、容器を覆った状態で加熱して収縮させる方法が採用されている。
【0062】
図1に、本発明の熱収縮性ラベルを用いた場合の、一連の装着工程におけるセンターシール部付近の状態を示す模式図を、図2に、従来の多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを用いた場合の、一連の装着工程におけるセンターシール部付近の状態を示す模式図を示した。
本発明者らが、従来の多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを用いた場合の装着不良の状況を詳細に調査したところ、特許文献2に記載された熱収縮性ラベルでは、図2(a)に示したように、センターシール後、熱収縮させた後に、熱収縮後に製品の輸送中にフィルム同士が擦れた場合や、人間の爪や物体で引掻かれた場合に中間層1と表裏層2との間で剥離が生じることが判った(なお、比較のために図2(a)においては、フィルムの端部において剥離した図となっているが、実際にはフィルムの端部のみならず、中央部分等においても剥離は生じ得る)。また、特許文献1に記載された熱収縮性フィルムからなる熱収縮性ラベルでは、図2(b)に示したように、センターシール後、熱収縮させたときに、センターシール側の表裏層2と接着層3’との間で剥離が生じることが判った。
【0063】
特許文献2に記載された熱収縮性ラベルでは、中間層1と表裏層2とは接着層を介さずに直接積層されている。特許文献2においては、特定のモノマーからなるポリエステル系樹脂を含む表裏層を用いることにより、中間層1と表裏層2との親和性を高めて接着強度を高めたとしているが、実際には、層間の接着強度は高くはなく、中間層1と表裏層2との層間で剥離してしまったものと考えられる。
一方、特許文献1に記載された熱収縮性フィルムでは、中間層1と表裏層2とをオレフィン系樹脂からなる接着層3’を介して積層していることから、層間の接着強度は高いはずである。センターシール方式では、溶剤を用いて熱収縮性フィルムの端部間を接着する。このとき、溶剤としては表裏層に用いたポリエステル系樹脂を溶解させるものを用い、表裏層の一部を溶解して貼り合わせる。特許文献1において接着層として用いたオレフィン系樹脂は、ポリエステル系樹脂を溶解させる溶剤に対しては極めて耐溶剤性が高く、ほとんど溶解したり膨潤したりすることがない。そのため、センターシール時に表裏層の一部が溶解しても、溶剤は熱収縮性ラベルの内部にまでは浸透することがなく、溶解した表裏層とその内側の接着層との接着力が低下し、熱収縮時に応力がかかったときには、表裏層1と接着層3’との間で剥離してしまったものと考えられる。
【0064】
これに対して、本発明の熱収縮性ラベルでは、図1に示したように、センターシール後、熱収縮させたときでも層間剥離は生じなかった。
本発明の熱収縮性ラベルでは、中間層1とスルホン基含有ポリエステル系樹脂からなる表裏層2とを変性スチレン系エラストマー及び/又は変性ポリエステル系エラストマーからなる接着層3を介して積層していることから、層間の接着強度は極めて高い。従って、各層間の接着力は向上することから、層間剥離が起こらないものと考えられる。
【発明の効果】
【0065】
本発明によれば、容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合、装着の際に層間剥離が発生することがなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
表裏層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を70モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を20モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を10モル%含有するポリエステル系樹脂(ポリエステル系樹脂(I))を85重量%と、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を95モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸に由来する成分を5モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を含有するポリエステル系樹脂(スルホン基含有ポリエステル系樹脂(I))を15重量%用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン−ブタジエン共重合体(I))(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、無水マレイン酸で変性されたスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(旭化成ケミカルズ社製、タフテックM1913)を用いた。
これらの樹脂を表1に示す組成で、バレル温度が160〜280℃の押出機に投入し、260℃の多層ダイスからシート状に押し出し、25℃の引き取りロールにて冷却固化した後、縦延伸機内で80℃の低速ロールと85℃の高速ロール間で1.2倍に縦延伸し、引き続いてテンター延伸機で予熱ゾーン110℃、延伸ゾーン95℃、熱固定ゾーン80℃で5倍に延伸し、延伸されたフィルムをワインダーで巻き取ることにより、熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(7μm)/接着層(1μm)/中間層(24μm)/接着層(1μm)/裏層(7μm)であった。
【0068】
(実施例2)
表裏層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を95モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸に由来する成分を5モル%、ジオール成分として、エチレングリコールに由来する成分を77モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を8モル%、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールに由来する成分を15モル%含有するポリエステル系樹脂(スルホン基含有ポリエステル系樹脂(II))を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン−ブタジエン共重合体(II))(スチレン77重量%、ブタジエン23重量%:ビカット軟化点74℃、MFR7.0g/10分)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、無水マレイン酸で変性されたスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(旭化成ケミカルズ社製、タフテックM1913)を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
【0069】
(実施例3)
表裏層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂(ポリエステル系樹脂(II))を75重量%と、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を95モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸に由来する成分を5モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を含有するポリエステル系樹脂(スルホン基含有ポリエステル系樹脂(I))を25重量%用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン−ブタジエン共重合体(II))(スチレン77重量%、ブタジエン23重量%:ビカット軟化点74℃、MFR7.0g/10分)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールを65重量部含有するポリエステル系エラストマー80重量部と水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(クレイトン社製、G1641H)20重量部との混合物に対し、無水マレイン酸0.5重量部及びナイパーBMTK40(日油社製)0.15重量部を温度230℃で反応させることにより得られた変性ポリエステル系エラストマーを用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
【0070】
(参考例)
表裏層を構成する成分として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を70モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を20モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を10モル%含有するポリエステル系樹脂(ポリエステル系樹脂(I))を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン−ブタジエン共重合体(I))(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、無水マレイン酸で変性されたスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(旭化成ケミカルズ社製、タフテックM1913)を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
【0071】
(比較例1)
表裏層を構成する成分として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂(ポリエステル系樹脂(II))を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン−ブタジエン共重合体(II))(スチレン77重量%、ブタジエン23重量%:ビカット軟化点74℃、MFR7.0g/10分)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体水素添加物(旭化成ケミカルズ社製、H1041)を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
【0072】
(比較例2)
表裏層を構成する成分として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を70モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を20モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を10モル%含有するポリエステル系樹脂(ポリエステル系樹脂(I))を50重量%と、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を95モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸に由来する成分を5モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を含有するポリエステル系樹脂(スルホン基含有ポリエステル系樹脂(I))を50重量%用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン−ブタジエン共重合体(I))(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体水素添加物(旭化成ケミカルズ社製、H1041)を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
【0073】
(比較例3)
表裏層を構成する成分として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂(ポリエステル系樹脂(II))を50重量%と、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を95モル%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸に由来する成分を5モル%、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を含有するポリエステル系樹脂(スルホン基含有ポリエステル系樹脂(I))を50重量%用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン−ブタジエン共重合体(I))(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが40μmであり、表層(7μm)/中間層(26μm)/裏層(7μm)であった。
【0074】
(評価)
(1)装着性・外観
得られた熱収縮性ラベルを、直径約65mmの丸(多角)型の500mlのPETボトルに被せ、フジアステック社製「SH−5000」のスチームトンネルを用い、設定温度80−85−95℃、トンネル通過時間8秒で収縮させ、装着させた。なお、各熱収縮性ラベルには、予めミシン目を入れた。
各々100個についてペットボトルへの装着を行った後、更に、爪を用いて引掻いた後、センターシール部を中心に熱収縮性ラベル全体の装着状態を目視にて観察し、以下の基準により装着性・外観を評価した。
〇:層間剥離や、皺が全く認められなかった。
×:1個でも、層間剥離や、皺が認められた。
【0075】
(2)ミシン目におけるカット性
得られた熱収縮性ラベルを装着したペットボトル(層間剥離や皺がなく装着できたもの)30個について、手にてミシン目から破いて熱収縮性ラベルを取り外した。このときの状態を観察して、以下の基準により耐熱性を評価した。
〇:容易のミシン目が破れて熱収縮性ラベルを取り外すことができた。
×:手ではかたくて取り外しにくいものがあった。
【0076】
(3)層間強度(密着性)
熱収縮性多層フィルムを長さ100mm×幅10mmのサイズにカットし、図3に示すようにフィルム端部の一部分を層間剥離した後、引張速度200mm/minで、図4に示すように180度方向に剥離させたときの強度を剥離試験機(Peeling TESTER HEIDON−17、新東科学社製)を用いて測定した。
【0077】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合、装着の際に層間剥離が発生することがなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の熱収縮性ラベルを用いた場合の、一連の装着工程におけるセンターシール部付近の状態を示す模式図である。
【図2】従来の多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを用いた場合の、一連の装着工程におけるセンターシール部付近の状態を示す模式図である。
【図3】層間強度評価におけるフィルムの剥離状態を示す模式図である。
【図4】層間強度評価におけるフィルムの剥離状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0080】
1 中間層
2 外面層
3、3’ 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン基を有するポリエステル系樹脂からなる表裏層と、ポリスチレン系樹脂からなる中間層とが、変性スチレン系エラストマー及び/又は変性ポリエステル系エラストマーからなる接着層を介して積層されてなることを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
請求項1記載の熱収縮性多層フィルムを用いてなることを特徴とする熱収縮性ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−241457(P2009−241457A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91707(P2008−91707)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】