説明

熱収縮性多層フィルム及び熱収縮性ラベル

【課題】 加熱収縮させることによって容器に装着でき、かつ、容器の変形を抑えることが可能な低収縮応力の熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供する。
【解決手段】 ポリエステル系樹脂からなる表裏層と、ポリスチレン系樹脂からなる中間層とが、接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルムであって、80℃の温水中に30秒間浸漬させた場合の最大収縮応力が0.3〜1.0N/10mmであり、かつ、80℃の温水中に10秒間浸漬させた場合の主収縮方向における熱収縮率が20%以上である熱収縮性多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱収縮させることによって容器に装着でき、かつ、容器の変形を抑えることが可能な低収縮応力の熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストア等で販売されている弁当や麺類等の容器の多くには、熱収縮性樹脂フィルムからなるベースフィルムに印刷等を施した熱収縮性ラベルが装着されている。このような熱収縮性ラベルは、内容物の表示のほか、意匠性を高める役割等を有する。従来、このような熱収縮性ラベルとしては、ポリエステル系樹脂からなるものや、ポリスチレン系樹脂からなるものが用いられていた。
しかしながら、ポリエステル系樹脂からなる熱収縮性ラベルは、耐熱性や内容物に対する耐久性に優れるものの、収縮応力が極めて高いため、装着後に容器が変形してしまうという問題を抱えていた。特に、弁当や麺類等の容器は、肉厚が薄く外部からの力によって簡単に変形してしまうため、このような問題が顕著であった。
また、ポリスチレン系樹脂からなる熱収縮性ラベルは、弁当や麺類を電子レンジで加熱する場合、耐熱性が低いために、ラベルに穴が開いたり、大きく変形したりすることがあった。また、弁当や麺類の中身によっては、その内容物、例えば、油等によって膨潤したり、溶融したりするおそれもあった。
【0003】
このような弁当や麺類等の容器に用いられる熱収縮性ラベルとしては、例えば、特許文献1に、ポリ乳酸系重合体を主成分とするシュリンクラベルが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載されているように単にポリ乳酸系重合体を主成分とするのみでは、所望の性能が得られなかった。
このような現状から、加熱収縮させることによって容器に装着でき、かつ、容器の変形を抑えることが可能な低収縮応力の熱収縮性ラベルが求められていた。
【特許文献1】特開2008−30840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑み、加熱収縮させることによって容器に装着でき、かつ、容器の変形を抑えることが可能な低収縮応力の熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリエステル系樹脂からなる表裏層と、ポリスチレン系樹脂からなる中間層とが、接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルムであって、80℃の温水中に30秒間浸漬させた場合の最大収縮応力が0.3〜1.0N/10mmであり、かつ、80℃の温水中に10秒間浸漬させた場合の主収縮方向における熱収縮率が20%以上である熱収縮性多層フィルムである。
以下に本発明を詳述する。
【0006】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、ポリエステル系樹脂からなる表裏層と、ポリスチレン系樹脂からなる中間層とが、接着層を介して積層されたものである。
【0007】
本発明では、上記表裏層は、ポリエステル系樹脂からなる。
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸とジオールとを縮重合させることにより得られるものが挙げられる。
【0008】
上記ジカルボン酸としては特に限定されず、例えば、o−フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等が挙げられる。
上記ジオールとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類等が挙げられる。
【0009】
上記ポリエステル系樹脂としては、なかでも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、かつ、ジオール成分としてエチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含有するものが好ましい。このようなポリエステル系樹脂を用いることにより、高い耐低温性と耐熱性を付与することができる。耐低温性及び耐熱性をより高めたい場合には、エチレングリコールに由来する成分の含有量が60〜80モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分の含有量が10〜40モル%であるものを用いることが好ましい。このようなポリエステル系樹脂は、更に、ジエチレングリコールに由来する成分を0〜20モル%含有していてもよい。
【0010】
上記表裏層に含まれるポリエステル系樹脂としては、上述した組成を有するポリエステル系樹脂を単独で用いてもよく、上述した組成を有する2種以上のポリエステル系樹脂を併用してもよい。また、上記ポリエステル系樹脂は、表面層と裏面層とで異なる組成のものとしてもよいが、フィルムのカール等によるトラブルを抑制するため、同一の組成とすることが好ましい。
【0011】
上記中間層を構成するポリスチレン系樹脂としては特に限定されないが、例えば、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体、又は、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂等が挙げられる。
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体を用いると、低温雰囲気下での伸度低下の少ない熱収縮性多層フィルムとなる。
また、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂を用いると、低温収縮性に優れた熱収縮性多層フィルムとなる。
【0012】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体としては特に限定されず、例えば、芳香族ビニル炭化水素としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が、共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、特に低温収縮性やミシン目におけるカット性に優れることから、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS樹脂)が好適である。また、よりフィッシュアイの少ないフィルムを作製するためには、共役ジエンとして2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)を用いたスチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS樹脂)や、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SIBS樹脂)等を用いることが好ましい。
【0013】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体として、SBS樹脂、SIS樹脂又はSIBS樹脂を用いる場合には、1種の樹脂を単独で用いてもよく、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。複数で用いる場合にはドライブレンドしてもよく、ある特定の組成にて押出機を用いて練り上げペレタイズしたコンパウンド樹脂を用いてもよい。
このような樹脂を単独又は複数で用いて、スチレン含有量が65〜90重量%、共役ジエン含有量が10〜35重量%の組成とすることが好ましい。このような組成の樹脂は、特に低温収縮性やミシン目におけるカット性に優れる。一方、共役ジエン含有量が10重量%未満であると、フィルムにテンションをかけたときに切れ易くなり、印刷等のコンバーティングやラベルとして使用するときにフィルムが思いもよらず破断することがある。共役ジエン含有量が35重量%を超えると、成形加工時にゲル等の異物が発生しやすくなることがある。
【0014】
上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては特に限定されず、例えば、芳香族ビニル炭化水素としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が、不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体として、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体を用いる場合、スチレン含有量が60〜90重量%、アクリル酸ブチル含有量が10〜40重量%であるものを用いることが好ましい。このような組成の芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体を用いることで、耐低温性やミシン目カット性に優れる熱収縮性ラベルを得ることができる。
【0016】
上記中間層として、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂を用いる場合、混合樹脂中の上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体の配合量の好ましい下限は20重量%、好ましい上限は100重量%である。20重量%未満であると低温伸度が低くなり、冷蔵保存時に誤って落下した時に熱収縮性ラベルが破れてしまうことがある。
【0017】
本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、上記中間層は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。このように、紫外線吸収剤を含有することで、紫外線カット性を付与することができ、特に日光や蛍光灯から発せられる紫外線(波長380nm以下)のカット性に優れるため、容器の内容物の劣化を防止して、保管性を高めることができる。
【0018】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−n−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤;p−tert−ブチルフェニルサリシレート等のサリシレート系紫外線吸収剤;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
なかでも、紫外線吸収性と耐熱性とのバランスに優れることから、2−(2’−ヒドロキシ−5’−n−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが好ましい。
【0019】
上記紫外線吸収剤の含有量は、中間層を構成する材料100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。1重量部未満であると、紫外線カット性が不充分となり、容器のシュリンクラベルとして使用した場合に、内容物の劣化を防止できないことがあり、10重量部を超えると、熱収縮性多層フィルムの機械的強度が低下し、印刷等のコンバーティングやシュリンクラベルとして使用する場合に、破断等が発生することがある。上記紫外線吸収剤の含有量のより好ましい下限は2重量部、より好ましい上限は8重量部である。
【0020】
上記接着層を構成する樹脂としては、一般的に市販されているものであれば特に限定されず用いることができる。なかでも、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、又は、これらの変性物等を用いることが好ましい。
【0021】
上記スチレン系エラストマーは、ハードセグメントとしてのポリスチレンと、ソフトセグメントとしてポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンとポリイソプレンとの共重合体とからなるものや、これらの水素添加物のことである。なお、上記水素添加物は、ポリブタジエンやポリイソプレンの一部が水素添加されたものであってもよく、全てが水素添加されたものであってもよい。
【0022】
上記スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、「タフテック」、「タフプレン」(何れも旭化成ケミカルズ社製)、「クレイトン」(クレイトンポリマージャパン社製)、「ダイナロン」(JSR社製)、「セプトン」(クラレ社製)等が挙げられる。
【0023】
上記スチレン系エラストマーの変性物としては、例えば、カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基等の官能基によって変性された変性スチレン系エラストマーが挙げられる。
上記変性スチレン系エラストマーにおける上記カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基等の官能基の含有量の好ましい下限は0.05重量%、好ましい上限は5.0重量%である。0.05重量%未満であると、特に表裏層との接着性が不充分となることがあり、5.0重量%を超えると、上記官能基を付加する際に樹脂が熱劣化し、ゲル等の異物が発生しやすくなることがある。より好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は3.0重量%である。
【0024】
上記ポリエステル系エラストマーは、飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましく、特に、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましい。ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントである芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントであるポリアルキレンエーテルグリコールや脂肪族ポリエステルとからなるブロック共重合体が好ましい。更に、ソフトセグメントとしてポリアルキレンエーテルグリコールを有するポリエステルポリエーテルブロック共重合体がより好ましい。
【0025】
上記ポリエステルポリエーテルブロック共重合体としては、(i)炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環族ジオールと、(ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルと、(iii)ポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させたものが好ましい。
【0026】
上記炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環族ジオールとしては、例えば、ポリエステルの原料、特にポリエステル系エラストマーの原料として一般に用いられるものを用いることができる。具体的には例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中では、1,4−ブタンジオール又はエチレングリコールが好ましく、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。これらのジオールは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記芳香族ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系エラストマーの原料として一般的に用いられているものを用いることができる。具体的には例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。これらの芳香族ジカルボン酸は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとしては、上記芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が挙げられる。なかでも、ジメチルテレフタレート及び2,6−ジメチルナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
【0029】
上記脂肪族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸等が好ましく、そのアルキルエステルとしては、ジメチルエステルやジエチルエステル等が好ましい。また、上記の成分以外に3官能のアルコールやトリカルボン酸又はそのエステルを少量共重合させてもよく、更に、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルを共重合成分として用いてもよい。
【0030】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び/又は1,3−プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。
【0031】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量の好ましい下限は400、好ましい上限は6000である。400以上とすることで、共重合体のブロック性が高くなり、6000以下とすることで、系内での相分離が起こり難く、ポリマー物性が発現しやすくなる。より好ましい下限は500、より好ましい上限は4000、更に好ましい下限は600、更に好ましい上限は3000である。なお、本明細書において、数平均分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものをいう。また、上記GPCのキャリブレーションは、例えば、POLYTETRAHYDROFURANキャリブレーションキット(英国POLYMER LABORATORIES社製)を使用することにより行うことができる。
【0032】
上記ポリエステル系エラストマーには、天然ゴム、合成ゴム(例えば、ポリイソプレンゴム)等のゴム成分及びプロセスオイル等の軟化剤を共存させてもよい。上記軟化剤を共存させることで、ゴム成分の可塑化促進や得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させることができる。上記軟化剤は、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系のいずれであってもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲において、該樹脂成分及びゴム成分に上記以外の樹脂やゴム、フィラー、添加剤等他の成分を添加してもよい。
【0033】
上記フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カオリン、クレー、ケイソウ土、珪酸カルシウム、雲母、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス球、硫化モリブデン、グラファイト、シラスバルーン等を挙られる。また、添加剤としては、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、核剤、滑剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤等が挙げられる。
【0034】
上記耐熱安定剤としては、例えば、フェノール系、リン系、硫黄系等の公知のものを使用することができる。上記耐候安定剤としてはヒンダードアミン系、トリアゾール系等の公知のものを使用することができる。上記着色剤としてはカーボンブラック、チタンホワイト、亜鉛華、べんがら、アゾ化合物、ニトロソ化合物、フタロシアニン化合物等が挙げられる。また、帯電防止剤、難燃剤、核剤、滑剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤等についてもいずれも公知のものが使用可能である。
【0035】
上記ポリエステル系エラストマーの市販品としては、「プリマロイ」(三菱化学社製)、「ペルプレン」(東洋紡績社製)、「ハイトレル」(東レ・デュポン社製)等が挙げられる。
【0036】
上記ポリエステル系エラストマーとして、ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールとからなるポリエステルポリエーテルブロック共重合体を用いる場合、ポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量は、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が90重量%である。5重量%以上であると、柔軟性及び耐衝撃性に優れるものとなり、90重量%以下であると、硬度及び機械強度に優れるものとなる。より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は80重量%であり、更に好ましい下限は55重量%である。なお、ポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量は核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を用い、水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。
【0037】
上記ポリエステル系エラストマーの変性物(以下、変性ポリエステル系エラストマーともいう)とは、上記ポリエステル系エラストマーを変性剤を用いて変性させたものである。上記変性ポリエステル系エラストマーを得るための変性反応は、例えば、ポリエステル系エラストマーに変性剤としてのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸を反応させることによって行われる。変性反応に際してはラジカル発生剤を使用するのが好ましい。変性反応においては、ポリエステル系エラストマーにα,β−エチレン性不飽和カルボン酸やその誘導体が付加するグラフト反応が主として起こるが、分解反応も起こる。その結果、変性ポリエステル系エラストマーは、分子量が低下して溶融粘度が低くなる。また、変性反応においては、通常、他の反応として、エステル交換反応等も起こるものと考えられ、得られる反応物は、一般的には、未反応原料等を含む組成物となるが、この場合、得られる反応物中の変性ポリエステル系エラストマーの含有率の好ましい下限は10重量%、より好ましい下限は30重量%であり、変性ポリエステル系エラストマーの含有率が100重量%であることが更に好ましい。
【0038】
上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸;コハク酸2−オクテン−1−イル無水物、コハク酸2−ドデセン−1−イル無水物、コハク酸2−オクタデセン−1−イル無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。これらのなかでは、反応性が高いことから、酸無水物が好ましい。上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、変性すべきポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する共重合体や変性条件に応じて適宜選択することができ、また、2種以上を併用してもよい。なお、上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は有機溶剤等に溶解して使用することもできる。
【0039】
上記ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機の過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物、ジクミル等の炭素ラジカル発生剤等が挙げられる。上記ラジカル発生剤は、変性反応に使用するポリエステル系エラストマーの種類、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の種類及び変性条件に応じて適宜選択することができ、また、2種以上を併用してもよい。更に、ラジカル発生剤は有機溶剤等に溶解して使用することもできる。
【0040】
上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の配合量の好ましい下限は、ポリエステル系エラストマー100重量部に対して0.01重量部、好ましい上限は30.0重量部である。0.01重量部以上とすることで、変性反応を充分に行うことができ、30.0重量部以下とすることで、経済的に有利なものとなる。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は5.0重量部、更に好ましい下限は0.10重量部、更に好ましい上限は1.0重量部である。
【0041】
上記ラジカル発生剤の配合量の好ましい下限は、ポリエステル系エラストマー100重量部に対して0.001重量部、好ましい上限は3.00重量部である。0.001重量部以上とすることで、変性反応が起きやすくなり、3.00重量部以下とすることで、変性時の低分子量化(粘度低下)による材料強度の低下が起こりにくくなる。より好ましい下限は0.005重量部、より好ましい上限は0.50重量部、更に好ましい下限は0.010重量部、更に好ましい上限は0.20重量部であり、特に好ましい上限は0.10重量部である。
【0042】
上記変性ポリエステル系エラストマーを得るための変性反応としては、溶融混練反応法、溶液反応法、懸濁分散反応等の公知の反応方法を使用することができるが、通常は安価であることから溶融混練反応法が好ましい。
【0043】
上記溶融混練反応法による方法では、上述した各成分を所定の配合比にて均一に混合した後、溶融混練を行う。各成分の混合には、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を使用することができ、溶融混練には、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸等の多軸混練押出機等を使用することができる。
【0044】
上記溶融混練を行う場合の混練温度の好ましい下限は100℃、好ましい上限は300℃である。上記範囲内とすることで、樹脂の熱劣化を防止することができる。より好ましい下限は120℃、より好ましい上限は280℃、更に好ましい下限は150℃、更に好ましい上限は250℃である。
【0045】
上記変性ポリエステル系エラストマーの変性率(グラフト量)の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は10.0重量%である。0.01重量%以上であることで、ポリエステルとの親和性が高くなり、10.0重量%以下であることで、変性時の分子劣化による強度低下を小さくすることができる。より好ましい下限は0.03重量%、より好ましい上限は7.0重量%であり、更に好ましい下限は0.05重量%、更に好ましい上限は5.0重量%である。
【0046】
上記変性ポリエステル系エラストマーの変性率(グラフト量)は、H−NMR測定により得られるスペクトルから、下記の式(1)に従って求めることができる。なお、上記H−NMR測定に使用する機器としては、例えば、「GSX−400」(日本電子社製)等を用いることができる。
【0047】
グラフト量(重量%)=100×[(C÷3×98)/{(A×148÷4)+(B×72÷4)+(C÷3×98)}] (1)
式(1)中、Aは7.8〜8.4ppmにおける積分値、Bは1.2〜2.2ppmにおける積分値、Cは2.4〜2.9ppmにおける積分値を表す。
【0048】
上記変性反応によって得られる変性ポリエステル系エラストマーを含有する反応物のJIS−D硬度の好ましい下限は10、好ましい上限は80である。10以上とすることで、機械的強度が向上し、80以下とすることで、柔軟性及び耐衝撃性が向上する。より好ましい下限は15、より好ましい上限は70、更に好ましい下限は20、更に好ましい上限は60である。なお、上記JIS−D硬度は、JIS K 6253に準拠して方法でデュロメータ タイプDを用いることにより測定することができる。
【0049】
本発明の熱収縮性多層フィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を添加してもよい。特に、熱安定剤や酸化防止剤を添加することでゲルの発生を抑制することができる。
【0050】
フィルム全体の厚さが30μmである場合、上記中間層の厚さの好ましい下限は18μm、好ましい上限は25μmである。18μm未満であると、収縮応力を効果的に抑えることができないことがあり、25μmを超えると、充分な耐熱性が得られないことがある。より好ましい下限は20μm、より好ましい上限は25μmである。
上記表裏層の厚さの好ましい下限は2μm、好ましい上限は5μmである。2μm未満であると、充分な耐油性や耐熱性が得られないことがあり、5μmを超えると、収縮応力を効果的に抑えることができないことがある。より好ましい下限は2.5μm、より好ましい上限は4.5μmである。
上記接着層の厚さの好ましい下限は0.3μm、好ましい上限は1.5μmである。0.3μm未満であると、充分な接着強度が得られないことがあり、1.5μmを超えると、熱収縮特性が悪化することがある。より好ましい下限は0.5μm、より好ましい上限は1.0μmである。
【0051】
本発明の熱収縮性多層フィルム全体の厚さの好ましい下限は20μm、好ましい上限は45μmである。熱収縮性多層フィルム全体の厚さを上記範囲内とすることで、経済性に優れるとともに、取り扱いやすいものとなる。各層の厚さは、表裏層の厚さを2〜7.5μmとして、中間層及び接着層の厚さを増減させることにより、フィルム全体の厚さを20〜45μmとすることが好ましい。
【0052】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、80℃の温水中に30秒間浸漬させた場合の最大収縮応力の下限が0.3N/10mm、上限が1.0N/10mmである。上記最大収縮応力が0.3N/10mm未満であると、容器への装着が不充分となり、上記最大収縮応力が1.0N/10mmを超えると、容器が変形してしまう。上記最大収縮応力の好ましい下限は0.4N/10mm、好ましい上限は0.9N/10mmである。
なお、上記最大収縮応力は、本発明の熱収縮性多層フィルムを80℃の温水に30秒間浸漬させ、収縮応力を測定する場合における収縮応力の最大値のことをいう。
【0053】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、80℃の温水中に10秒間浸漬させた場合の主収縮方向(たて方向又はよこ方向のうち、より大きく収縮する方向)における熱収縮率の下限が20%である。上記熱収縮率が20%未満であると、加熱収縮させても、熱収縮性多層フィルムを容器に充分に装着することができない。好ましい上限は60%である。
なお、上記熱収縮率は、熱収縮性多層フィルムをたて100mm×よこ100mmの大きさに切り取り、80℃の温水槽に10秒間浸漬した後、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%で表した値のことである。また、たて方向とはフィルムの流れ方向、よこ方向とは幅方向を表す。
【0054】
また、本発明の熱収縮性多層フィルムは、70℃の温水中に10秒間浸漬させた場合の主収縮方向(たて方向又はよこ方向のうち、より大きく収縮する方向)における熱収縮率の好ましい下限が3%、好ましい上限が30%である。
【0055】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法としては、例えば、ポリエステル系樹脂からなる表裏層と、ポリスチレン系樹脂からなる中間層とが、接着層を介して積層されてなる多層フィルムを作製する工程1、上記多層フィルムを延伸する工程2を有する熱収縮性多層フィルムの製造方法であって、工程2において、下記式(2)に示すFが0.44〜0.50となるように延伸を行う方法を用いることができる。
【0056】
【数1】

【0057】
式(2)中、tは予熱ゾーン処理時間、Tは予熱ゾーン温度、tは延伸ゾーン処理時間、Tは延伸ゾーン温度、tは固定ゾーン処理時間、Tは固定ゾーン温度、Tgは熱収縮性多層フィルムの計算ガラス転移温度、Lは熱収縮性多層フィルムの総厚みを表す。
【0058】
上記工程1の具体的な方法としては特に限定されず、例えば、共押出法により各層を同時に成形する方法によって、多層フィルムを作製する方法が好適である。例えば、Tダイによる共押出では、積層の方法として、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。具体的には例えば、表裏層を構成する樹脂としてスルホン基を有するポリエステル系樹脂、中間層を構成する樹脂としてポリスチレン系樹脂、接着層を構成する樹脂として変性スチレン系エラストマー及び/又は変性ポリエステル系エラストマーをそれぞれ押出機に投入し、多層ダイスにより、シート状に押し出す方法等が挙げられる。
【0059】
上記工程2では、上記式(2)に示すFが0.44〜0.50となるように上記多層フィルムの延伸を行う。Fが0.44未満であると、熱収縮性ラベルに用いた場合、装着の際の熱収縮性が悪化することがあり、Fが0.50を超えると、得られる熱収縮性ラベルの収縮応力が高くなりすぎ、容器等に装着する際に、容器を破損してしまうことがある。
【0060】
本明細書において、「計算ガラス転移温度」とは、表裏層及び中間層を構成する樹脂のガラス転移温度に[(各層の厚み)/(表裏層の厚み+中間層の厚み)]]を掛けたものの合計である。例えば、熱収縮性多層フィルムが総厚み25μmで、表面層(6μm)/接着層(0.5μm)/中間層(12μm)/接着層(0.5μm)/裏面層(6μm)の5層構成からなり、表裏層を構成する樹脂のガラス転移温度が60℃、中間層を構成する樹脂のガラス転移温度が70℃である場合、計算ガラス転移温度は65℃となる。
【0061】
上記工程2では、上記工程1で得られた多層フィルムを予熱ゾーン、延伸ゾーン及び固定ゾーンを有する延伸機内に通過させて上記多層フィルムを延伸する。このとき、上記式(2)で表されるFを0.44〜0.50の範囲内とする。
【0062】
上記工程2の延伸方法について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の熱収縮性多層フィルムの製造に用いることができるテンター延伸機の一例を概略的に示す上面図である。図1に示すテンター延伸機は、引き出しロール21と、巻き取りロール22と、予熱ゾーンA、延伸ゾーンB及び固定ゾーンCを有する恒温室10と、フィルムを搬送するための把持手段が走行するレール11とからなる。
把持手段は、引き出しロール21から繰り出された多層フィルムの両端を把持し、予熱ゾーンA、延伸ゾーンB及び固定ゾーンCを有する恒温室内に導き、巻き取りロール22の手前でフィルムを開放する。把持手段から開放されたフィルムは巻き取りロール22によって巻き取られる。
【0063】
多層フィルム1は、予熱ゾーンA、延伸ゾーンB及び固定ゾーンCを有する恒温室内を通過している間に、把持手段からの張力によって、所望の延伸倍率で延伸される。
上記予熱ゾーンAは、多層フィルムの走行方向に直角な方向のフィルム幅を実質的に変えずに多層フィルムを温めながら搬送するゾーンである。
上記延伸ゾーンBは、多層フィルムの走行方向に直角な方向のフィルム幅を大きくさせながら多層フィルムを搬送するゾーンである。
上記固定ゾーンCは、多層フィルムの走行方向に直角な方向のフィルム幅を実質的に変えずに多層フィルムを冷ましながら搬送するゾーンである。
上記予熱ゾーンA、延伸ゾーンB及び固定ゾーンCは、それぞれ独立に温度を設定でき、それぞれのゾーンでは温度が一定に保たれている。また、上記予熱ゾーンA、延伸ゾーンB及び固定ゾーンCにおける処理時間、長さについても適宜設定することができる。
【0064】
上記工程2における延伸温度はフィルムを構成している樹脂の軟化温度や熱収縮性多層フィルムに要求される収縮特性によって変更する必要があるが、延伸温度の好ましい下限は75℃、好ましい上限は120℃、より好ましい下限は80℃、より好ましい上限は115℃である。
また、上記工程2における延伸倍率についてもフィルムを構成している樹脂の軟化温度や熱収縮性多層フィルムに要求される収縮特性によって変更する必要があるが、延伸倍率の好ましい下限は3.5倍、好ましい上限は7.0倍である。
なお、上記延伸は1軸延伸であってもよく、2軸延伸であってもよい。
【0065】
本発明の熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとして使用することにより、熱収縮性ラベルを得ることができる。このような熱収縮性ラベルもまた本発明の1つである。
本発明の熱収縮性ラベルは、上記熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとして、必要に応じて、印刷層等の他の層を積層してもよい。また、印刷層以外に他の層を積層してもよく、例えば、表裏層の表面に、損傷防止等のため、アクリル系樹脂等からなるオーバーコート層を積層してもよい。
【0066】
容器に熱収縮性ラベルを装着する方法としては、通常、溶剤を用いて熱収縮性フィルムの端部間を接着してチューブ状に加工(センターシール加工)し熱収縮性ラベルとした後、容器を覆った状態で加熱して収縮させる方法が採用されている。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、加熱収縮させることによって容器に装着でき、かつ、容器の変形を抑えることが可能な低収縮応力の熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
表面層及び裏面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度80℃)を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR5.6g/10分、ガラス転移温度69℃)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン含量30重量%、無水マレイン酸付加量0.5重量%、MFR4.0g/10分)を用いた。
これらの樹脂をバレル温度が160〜250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスから5層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、延伸倍率1.5倍でMD方向へロール延伸し、引き続き予熱ゾーン112℃(通過時間5.3秒)、延伸ゾーン100℃(通過時間7.8秒)、固定ゾーン102℃(通過時間5.3秒)のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にてTD方向へ延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、総厚みが30μmであり、表面層(3.2μm)/接着層(0.7μm)/中間層(22.2μm)/接着層(0.7μm)/裏面層(3.2μm)の5層構成からなる熱収縮性多層フィルムを得た。
【0070】
(実施例2)
表面層及び裏面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度80℃)を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR5.6g/10分、ガラス転移温度69℃)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系エラストマー(三菱化学社製、プリマロイA1600N、融点160℃、MFR5.0g/10分)を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
【0071】
(実施例3)
表面層及び裏面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度80℃)を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%、MFR5.6g/10分、ガラス転移温度69℃)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、変性ポリエステル系エラストマー(三菱化学社製、プリマロイAP IF3003、融点180℃、MFR8.0g/10分)を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
【0072】
(実施例4)
表面層及び裏面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度80℃)を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%、MFR5.6g/10分、ガラス転移温度69℃)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン含量30重量%、無水マレイン酸付加量0.5重量%、MFR4.0g/10分)を用いた。
これらの樹脂をバレル温度が160〜250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスから3層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、延伸倍率1.5倍でMD方向へロール延伸、引き続き予熱ゾーン112℃(通過時間5.3秒)、延伸ゾーン103℃(通過時間7.8秒)、固定ゾーン102℃(通過時間5.3秒)のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にてTD方向へ延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、総厚みが30μmであり、表面層(3.2μm)/接着層(0.7μm)/中間層(22.2μm)/接着層(0.7μm)/裏面層(3.2μm)の5層構成からなる熱収縮性多層フィルムを得た。
【0073】
(実施例5)
表面層及び裏面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度80℃)を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%、MFR5.6g/10分、ガラス転移温度69℃)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン含量30重量%、無水マレイン酸付加量0.5重量%、MFR4.0g/10分)を用いた。
これらの樹脂をバレル温度が160〜250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスから3層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、延伸倍率1.5倍でMD方向へロール延伸、引き続き予熱ゾーン112℃(通過時間5.3秒)、延伸ゾーン100℃(通過時間7.8秒)、固定ゾーン102℃(通過時間5.3秒)のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にてTD方向へ延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、総厚みが30μmであり、表面層(4.8μm)/接着層(0.7μm)/中間層(19.0μm)/接着層(0.7μm)/裏面層(4.8μm)の5層構成からなる熱収縮性多層フィルムを得た。
【0074】
(実施例6)
表面層及び裏面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度80℃)を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR5.6g/10分、ガラス転移温度69℃)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン含量30重量%、無水マレイン酸付加量0.5重量%、MFR4.0g/10分)を用いた。
これらの樹脂をバレル温度が160〜250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスから3層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、延伸倍率1.5倍でMD方向へロール延伸、引き続き予熱ゾーン111℃(通過時間5.3秒)、延伸ゾーン99℃(通過時間7.8秒)、固定ゾーン99℃(通過時間5.3秒)のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にてTD方向へ延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、総厚みが30μmであり、表面層(3.2μm)/接着層(0.7μm)/中間層(22.2μm)/接着層(0.7μm)/裏面層(3.2μm)の5層構成からなる熱収縮性多層フィルムを得た。
【0075】
(比較例1)
表面層及び裏面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度80℃)を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR5.6g/10分、ガラス転移温度69℃)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン含量30重量%、無水マレイン酸付加量0.5重量%、MFR4.0g/10分)を用いた。
これらの樹脂をバレル温度が160〜250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスから3層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、延伸倍率1.5倍でMD方向へロール延伸、引き続き予熱ゾーン110℃(通過時間5.3秒)、延伸ゾーン97℃(通過時間7.8秒)、固定ゾーン95℃(通過時間5.3秒)のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にてTD方向へ延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、総厚みが30μmであり、表面層(3.2μm)/接着層(0.7μm)/中間層(22.2μm)/接着層(0.7μm)/裏面層(3.2μm)の5層構成からなる熱収縮性多層フィルムを得た。
【0076】
(比較例2)
表面層及び裏面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度80℃)を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR5.6g/10分、ガラス転移温度69℃)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン含量30重量%、無水マレイン酸付加量0.5重量%、MFR4.0g/10分)を用いた。
これらの樹脂をバレル温度が160〜250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスから3層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、延伸倍率1.5倍でMD方向へロール延伸、引き続き予熱ゾーン115℃(通過時間5.3秒)、延伸ゾーン103℃(通過時間7.8秒)、固定ゾーン102℃(通過時間5.3秒)のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にてTD方向へ延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、総厚みが30μmであり、表面層(3.2μm)/接着層(0.7μm)/中間層(22.2μm)/接着層(0.7μm)/裏面層(3.2μm)の5層構成からなる熱収縮性多層フィルムを得た。
【0077】
(評価)
実施例及び比較例で得られた熱収縮性多層フィルムについて以下の方法で評価した。結果を表1に示す。なお、表1には、各実施例及び比較例における予熱ゾーン処理時間、予熱ゾーン温度、延伸ゾーン処理時間、延伸ゾーン温度、固定ゾーン処理時間、固定ゾーン温度、熱収縮性多層フィルムの計算ガラス転移温度、熱収縮性多層フィルムの総厚みを記載した。
【0078】
(1)熱収縮率
得られた熱収縮性多層フィルムを、100mm×100mmの大きさにサンプルをカットし、80℃の温水に10秒間浸漬させた後、熱収縮性多層フィルムを取り出し、加熱処理前の寸法に対する加熱後の寸法の比率を算出した。なお、収縮率はn=3としてその平均値を用いた。また、平均値よりも2%以上離れた値はカウントしないこととした。
【0079】
(2)収縮応力
得られた熱収縮性多層フィルムを、TD方向(主収縮方向)が長辺となるように、200mm×10mmの大きさにカットし測定試料とした。この測定試料をチャック間距離が100mmとなるように、一方を固定し、他方を荷重測定するためのロードセルにつなげて、セットした(ロードセルからの出力信号はレコーダーによって記録される)。
その後、測定試料をチャックごと80℃に調整された温水に30秒間浸漬させ、測定試料が収縮する際の収縮応力を測定した。なお、30秒間での最大値を測定値とした。
【0080】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、加熱収縮させることによって容器に装着でき、かつ、容器の変形を抑えることが可能な低収縮応力の熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する際に用いることができるテンター延伸機の一例を概略的に示す上面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂からなる表裏層と、ポリスチレン系樹脂からなる中間層とが、接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルムであって、
80℃の温水中に30秒間浸漬させた場合の最大収縮応力が0.3〜1.0N/10mmであり、かつ、
80℃の温水中に10秒間浸漬させた場合の主収縮方向における熱収縮率が20%以上である
ことを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
請求項1記載の熱収縮性多層フィルムを用いてなることを特徴とする熱収縮性ラベル。

【図1】
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【公開番号】特開2009−292057(P2009−292057A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148302(P2008−148302)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】