説明

熱収縮性多層フィルム及び熱収縮性ラベル

【課題】 遮光性が高く内容物の品質を保持することができ、適度な機械的性質を有するとともに、熱収縮性に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供する。
【解決手段】 ポリエステル系樹脂を含有する表面層、ポリスチレン系樹脂及び二酸化チタンを含有する中間層、及び、ポリエステル系樹脂を含有する裏面層をこの順に有する熱収縮性多層フィルムであって、前記ポリスチレン系樹脂の総重量に対して、前記二酸化チタンを15〜50重量%含有する熱収縮性多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
遮光性が高く内容物の品質を保持することができ、適度な機械的性質を有するとともに、熱収縮性に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の液状の商品は、紙箱、金属缶、ペットボトル等のプラスチックボトル、ガラス瓶等の容器に充填されて販売されるのが一般的である。これらのなかで、紙箱や金属缶は、一度開封した後、再封するための手段を有していないため、内容量の多い飲料等では、キャップという再封手段を有するプラスチックボトルやガラス瓶が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、このようなプラスチックボトルやガラス瓶は、紙箱や金属缶と比較して遮光性に欠けるため、例えば、清酒、ビール、緑茶等のように光によって変質や変色が起こりやすい飲料の容器として用いる場合には、着色することで遮光性を付与したプラスチックボトルやガラス瓶が使用されているが、このような着色容器は、リサイクルの際に再生が困難となる場合が多かった。
これに対して、無色透明なプラスチックボトルやガラス瓶のほぼ全面に、遮光性のある熱収縮性ラベル(以下、単にラベルともいう)を装着させることで、容器に遮光性を付与することが行われている。例えば、特許文献1には、隠蔽性、熱収縮性及びクッション性を兼ね備えたフィルムとして、相溶性に欠けるポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂との混合物からなる未延伸フィルムを延伸することによって得られる収縮フィルムが開示されている。また、特許文献2には、軽量でクッション性に優れるとともに、優れた熱収縮性を有するラベルとして、相溶性に欠けるポリエステル系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合物からなる未延伸フィルムを延伸することによって得られる熱収縮性ポリエステル系フィルムが開示されている。
【0004】
これに対して、適度な伸びにくさ、硬さ(腰の強さ)及び引き裂き強さを有しつつ、優れた遮光性を有するフィルムとして、特許文献3には、白色微粒子を含有する層を有し、かつ、空洞を実質的に含まない熱収縮性ラベル用白色フィルムが開示されている。また、特許文献4には、所定量の二酸化チタンを含有し、かつ、空洞を実質的に含まない熱収縮性ラベル用白色フィルムが開示されている。
【0005】
しかしながら、遮光性の向上を目的として、白色微粒子や二酸化チタンをフィルム中に含有させた場合、フィルムの熱収縮性が低下し、容器に装着させる際に、装着性が悪化したり、装着後にシワ、収縮ムラ等の不具合が発生したりするという問題点があった。また、押出成形等を用いてフィルムを成形する際に、白色微粒子や二酸化チタンに起因するカスがダイス等に付着し、成形不良や生産性の低下を招くこともあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−193822号公報
【特許文献2】特開平5−111960号公報
【特許文献3】特開2002−278460号公報
【特許文献4】特開2002−285020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、遮光性が高く内容物の品質を保持することができ、適度な機械的性質を有するとともに、熱収縮性に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリエステル系樹脂を含有する表面層、ポリスチレン系樹脂及び二酸化チタンを含有する中間層、及び、ポリエステル系樹脂を含有する裏面層をこの順に有する熱収縮性多層フィルムであって、前記ポリスチレン系樹脂の総重量に対して、前記二酸化チタンを15〜50重量%含有する熱収縮性多層フィルムである。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、表面層及び裏面層に挟まれた中間層のみに二酸化チタンを含有させ、かつ、中間層中のポリスチレン系樹脂に対する二酸化チタンの含有量を所定の範囲内とすることで、成形時の不良や、ブロッキング等の不具合が発生することを防止し、優れた遮光性を有しつつ、生産性、取扱性を有する熱収縮性多層フィルムとなることを見出した。また、二酸化チタンを含有させた場合でも、高い熱収縮性を実現することができ、その結果、高い生産性、遮光性を有しつつ、熱収縮性に優れる熱収縮性多層フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、ポリエステル系樹脂を含有する表面層、ポリスチレン系樹脂及び二酸化チタンを含有する中間層、及び、ポリエステル系樹脂を含有する裏面層をこの順に有するものである。なお、本明細書において、表面層とは、熱収縮性ラベルとした場合に外面側となる層のことをいい、裏面層とは、熱収縮性ラベルとした場合に内面側となる層のことをいう。
【0011】
本発明の熱収縮性多層フィルムでは、上記表面層及び裏面層を有することで、フィルム成形時に二酸化チタンに起因するカスがダイス等に付着し、成形不良や生産性の低下が発生することを防止できる。また、表面光沢度が向上し、その上に印刷された印刷面の美麗性が増す。更に、二酸化チタンが欠落して、遮光性が低下することを防止することができる。
【0012】
本発明において、上記表面層及び裏面層は、ポリエステル系樹脂を含有する。
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸とジオールとを縮重合させることにより得られるものが挙げられる。
【0013】
上記ジカルボン酸としては特に限定されず、例えば、o−フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等が挙げられる。上記ジオールとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール類等が挙げられる。
【0014】
上記ポリエステル系樹脂としては、なかでも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、かつ、ジオール成分としてエチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含有するものが好ましい。このようなポリエステル系樹脂を用いることにより、高い耐低温性と耐熱性を付与することができる。耐低温性及び耐熱性をより高めたい場合には、エチレングリコールに由来する成分の含有量が60〜80モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分の含有量が10〜40モル%であるものを用いることが好ましい。このようなポリエステル系樹脂は、更に、ジエチレングリコールに由来する成分を0〜20モル%含有していてもよい。
【0015】
上記表面層及び裏面層に含まれるポリエステル系樹脂としては、上述した組成を有するポリエステル系樹脂を単独で用いてもよく、上述した組成を有する2種以上のポリエステル系樹脂を併用してもよい。また、上記ポリエステル系樹脂は、表面層及び裏面層とで異なる組成のものとしてもよいが、フィルムのカール等によるトラブルを抑制するため、同一の組成とすることが好ましい。
【0016】
上記表面層及び裏面層に含まれるポリエステル系樹脂のガラス転移温度の好ましい下限は64℃、好ましい上限は90℃である。上記ガラス転移温度が64℃未満であると、低温で収縮を開始してしまうことがある。また、自然収縮率が大きくなり、経時での収縮率低下が大きくなることがある。上記ガラス転移温度が90℃を超えると、収縮開始温度が高くなることがある。なお、上記ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)で測定することができる。
【0017】
上記表面層及び裏面層に含まれるポリエステル系樹脂の数平均分子量の好ましい下限は80000、好ましい上限は200000である。数平均分子量を上記範囲内とすることで、物性の安定した熱収縮性多層フィルムを得ることができる。本明細書において、数平均分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものをいう。
【0018】
上記表面層及び裏面層は、アンチブロッキング剤を含有することが好ましい。上記アンチブロッキング剤を含有することで、上記表面層及び裏面層の表面に均一でかつ微細な突起を形成することができる。
【0019】
上記アンチブロッキング剤としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等の有機系微粒子が挙げられる。なかでも、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等の有機系微粒子が好ましい。また、上記有機系微粒子は、架橋されたものであってもよく、非架橋のものであってもよい。このような有機系微粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記有機系微粒子のうち、市販品としては、例えば、ガンツパール(ガンツ化成社製)、アートパール(根上工業社製)等が挙げられる。
【0021】
上記有機系微粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は5μmである。上記平均粒子径が0.5μm未満であると、滑性やブロッキング性の改善効果が低下することがあり、5μmを超えると、印刷加工時にインク飛び等の不具合が発生することがある。上記平均粒子径のより好ましい下限は1μm、より好ましい上限は4μmである。なお、本発明では、平均粒子径の異なる有機系微粒子を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
上記有機系微粒子の含有量の好ましい下限は、上記ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.02重量部、好ましい上限は0.15重量部である。上記有機系微粒子の含有量が0.02重量部未満であると、滑性やブロッキング性の改善効果が低下することがあり、0.15重量部を超えると、得られる熱収縮性多層フィルムの透明性が低下することがある。上記有機系微粒子の含有量のより好ましい下限は0.04重量部、より好ましい上限は0.12重量部である。更に好ましい下限は0.05重量部である。
なお、本発明の熱収縮性多層フィルムをラベルとして使用する場合、印刷面と容器と接する面とでは、要求される表面の粗さが違う場合があるため、本発明の効果を損なわない範囲で、表面層と裏面層の有機系微粒子の含有量を異なるものとしてもよい。
【0023】
上記中間層は、ポリスチレン系樹脂及び二酸化チタンを含有する。
上記ポリスチレン系樹脂としては、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体、芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、又は、これらの混合樹脂が好ましい。
【0024】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体は、低温収縮性に優れることから、得られる熱収縮性多層フィルムは、被覆時に皺等が発生することがなく、容易に被覆することができる。
【0025】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体としては特に限定されず、芳香族ビニル炭化水素としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が、共役ジエンとしては1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、特に低温収縮性に優れることから、スチレンーブタジエン共重合体(SBS樹脂)が好ましい。また、よりフィッシュアイの少ないフィルムを作製するためには、共役ジエンとして2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)を用いたスチレン−イソプレン共重合体(SIS樹脂)や、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体(SIBS)等を用いることが好ましい。
【0026】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体として、SBS樹脂、SIS樹脂又はSIBS樹脂を用いる場合には、1種の樹脂を単独で用いてもよく、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、複数で用いる場合にはドライブレンドしてもよく、ある特定の組成にて押出機を用いて練り上げペレタイズしたコンパウンド樹脂を用いてもよい。
【0027】
上記SBS樹脂、SIS樹脂又はSIBS樹脂を単独又は複数で用いる場合には、スチレン含有量が65〜90重量%、共役ジエン含有量が10〜35重量%の組成とすることが好ましい。このような組成とすることで、特に低温収縮性に優れるものとなる。
一方、スチレン含有量が90重量%を超えるか、共役ジエン含有量が10重量%未満であると、熱収縮性多層フィルムにテンションをかけたときに切れ易くなったり、印刷等の加工時に思いもよらず破断したりすることがある。スチレン含有量が65重量%未満か、共役ジエン含有量が35重量%を超えると、成形加工時にゲル等の異物が発生しやすくなったり、熱収縮性多層フィルムの腰が弱くなったりして、取り扱い性が悪化することがある。
【0028】
上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体は、寸法安定性に優れることから、得られる熱収縮性多層フィルムは、常温環境下での収縮が殆どないものとすることができる。
【0029】
上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては特に限定されず、例えば、上記芳香族ビニル炭化水素としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられ、上記不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体として、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体を用いる場合、スチレン含有量が60〜90重量%、アクリル酸ブチル含有量が10〜40重量%であるものを用いることが好ましい。このような組成の芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体を用いることで、耐低温性に優れる熱収縮性多層フィルムを得ることができる。
【0031】
上記中間層として、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂を用いる場合、混合樹脂中の上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体の配合量の好ましい下限は20重量%、好ましい上限は100重量%である。上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体の配合量が20重量%未満であると低温での伸度が低くなり、低温環境下で誤って落下等させた場合に熱収縮性多層フィルムが破れてしまうことがある。上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体の配合量のより好ましい下限は30重量%である。
【0032】
上記中間層に用いられるポリスチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)の好ましい下限は2g/10分、好ましい上限は15g/10分である。上記MFRが2g/10分未満であると、添加する二酸化チタンの分散性が悪化し、ムラが生じることがあり、10g/10分を超えると、厚みが不均一となることがある。上記MFRのより好ましい下限は4g/10分、より好ましい上限は9g/10分である。なお、上記MFRは、温度200℃、荷重49.03Nの条件で測定するものである。
【0033】
上記ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度の好ましい下限は70℃、好ましい上限は90℃である。上記ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度が70℃未満であると、低温で収縮を開始したり、自然収縮率が大きくなったりすることがある。また、経時での収縮率低下が大きくなる。上記ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度が90℃を超えると、収縮開始温度が高くなる。
【0034】
上記ビカット軟化温度は、スチレン成分とブタジエン成分の比率によって調整される。なお、両者の比率が同じであっても、ランダム(又はテーパー)共重合体の構造をとるか、ブロック共重合体の構造をとるか、又は、これらの混合構造をとるかによってビカット軟化温度は異なる。一般に、両者の比率が同じ場合、ブロック共重合体よりもランダム(又はテーパー)共重合体の方がビカット軟化温度は低くなる傾向にある。また、ブロック共重合体とランダム(又はテーパー)共重合体の両方の構造を有する場合には、ランダム(又はテーパー)共重合体の比率が大きければ、ビカット軟化温度は低くなり、ランダム(又はテーパー)共重合体の比率が小さければビカット軟化温度は高くなる。
なお、上記ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で、樹脂から試験片を採取した後、試験片に置いた針状圧子に10Nの荷重を加えながら、120℃/hの速度で昇温させ、針状圧子が1mm進入したときの温度を確認することにより、測定することができる。
【0035】
上記ポリスチレン系樹脂の数平均分子量の好ましい下限は50000、好ましい上限は200000である。数平均分子量を上記範囲内とすることで、物性の安定した熱収縮性多層フィルムを得ることができる。本明細書において、数平均分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものをいう。
【0036】
上記中間層は二酸化チタンを含有する。上記二酸化チタンは、アナタアーゼ型、ルチル型、ブルカイト型の3種の結晶形態があるが、本発明では、遮光性、耐侯性、耐熱性、鮮明性等の観点から、ルチル型の酸化チタンを用いることが好ましい。
また、上記二酸化チタンの平均粒子径の好ましい下限は150nm、好ましい上限は400nmである。
【0037】
本発明の熱収縮性多層フィルムにおける二酸化チタンの含有量の下限は、上記ポリスチレン系樹脂の総重量に対して15重量%、上限は50重量%である。
上記二酸化チタンの含有量が15重量%未満であると、得られる熱収縮性多層フィルムの遮光性が低下し、50重量%を超えると、得られる熱収縮性多層フィルムの熱収縮性が低下し、また引張破壊伸度が低下する。上記二酸化チタンの含有量の好ましい下限は18重量%、好ましい上限は40重量%である。
【0038】
上記表面層、中間層及び裏面層には、本発明の本質を損なわない範囲内で、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、紫外線防止剤、光安定剤、消光剤、増核剤、難燃化剤、石油樹脂、低密度ポリエチレン等の公知の添加剤を添加してもよい。
【0039】
本発明の熱収縮性多層フィルムの具体的構成としては、表面層(A)、中間層(B)及び裏面層(C)が、(A)/(B)/(C)のように積層された3層構造である。また、表面層(A)と中間層(B)との間、及び/又は、中間層(B)と裏面層(C)との間に、接着層(E)を介在させてもよい。このような場合の具体的構成としては、例えば、(A)/(E)/(B)/(C)又は(A)/(B)/(E)/(C)の4層構造や、(A)/(E)/(B)/(E)/(C)の5層構造が挙げられる。
【0040】
上記接着層に含まれる接着性樹脂としては、一般的に市販されているものであれば特に限定されず用いることができる。より好ましくは、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、又は、これらの変性物等を接着性樹脂として用いるのがよい。
【0041】
上記スチレン系エラストマーは、ハードセグメントとしてのポリスチレンと、ソフトセグメントとしてポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンとポリイソプレンとの共重合体とからなるものや、これらの水素添加物のことである。なお、上記水素添加物は、ポリブタジエンやポリイソプレンの一部が水素添加されたものであってもよく、全てが水素添加されたものであってもよい。
【0042】
上記スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、「タフテック」、「タフプレン」(何れも旭化成ケミカルズ社製)、「クレイトン」(クレイトンポリマージャパン社製)、「ダイナロン」(JSR社製)、「セプトン」(クラレ社製)等が挙げられる。
【0043】
上記スチレン系エラストマーの変性物としては、例えば、カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基等の官能基によって変性されたものが挙げられる。
上記スチレン系エラストマーの変性物における上記カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基等の官能基の含有量の好ましい下限は0.05重量%、好ましい上限は5.0重量%である。上記含有量が0.05重量%未満であると、特に表面層及び裏面層との接着性が不充分となることがあり、5.0重量%を超えると、上記官能基を付加する際に樹脂が熱劣化し、ゲル等の異物が発生しやすくなることがある。上記含有量のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は3.0重量%である。
【0044】
上記ポリエステル系エラストマーは、飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましく、特に、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーであることが好ましい。ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントである芳香族ポリエステルと、ソフトセグメントであるポリアルキレンエーテルグリコールや脂肪族ポリエステルとからなるブロック共重合体が好ましい。更に、ソフトセグメントとしてポリアルキレンエーテルグリコールを有するポリエステルポリエーテルブロック共重合体がより好ましい。
【0045】
上記ポリエステルポリエーテルブロック共重合体としては、(i)炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環族ジオールと、(ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルと、(iii)ポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応により得られたオリゴマーを重縮合させたものが好ましい。
【0046】
上記炭素原子数2〜12の脂肪族及び/又は脂環族ジオールとしては、例えば、ポリエステルの原料、特にポリエステル系エラストマーの原料として一般に用いられるものを用いることができる。具体的には例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中では、1,4−ブタンジオール又はエチレングリコールが好ましく、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。これらのジオールは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記芳香族ジカルボン酸としては、ポリエステルの原料、特にポリエステル系エラストマーの原料として一般的に用いられているものを用いることができる。具体的には例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中では、テレフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、特にテレフタル酸が好ましい。これらの芳香族ジカルボン酸は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとしては、上記芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルやジエチルエステル等が挙げられる。なかでも、ジメチルテレフタレート及び2,6−ジメチルナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
【0049】
上記脂肪族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸等が好ましく、そのアルキルエステルとしては、ジメチルエステルやジエチルエステル等が好ましい。また、上記の成分以外に3官能のアルコールやトリカルボン酸又はそのエステルを少量共重合させてもよく、更に、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステルを共重合成分として用いてもよい。
【0050】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び/又は1,3−プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。
【0051】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量の好ましい下限は400、好ましい上限は6000である。上記数平均分子量を400以上とすることで、共重合体のブロック性が高くなり、6000以下とすることで、系内での相分離が起こり難く、ポリマー物性が発現しやすくなる。上記数平均分子量のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000、更に好ましい下限は600、更に好ましい上限は3000である。なお、本明細書において、数平均分子量とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたものをいう。また、上記GPCのキャリブレーションは、例えば、POLYTETRAHYDROFURANキャリブレーションキット(英国POLYMER LABORATORIES社製)を使用することにより行うことができる。
【0052】
上記ポリエステル系エラストマーには、天然ゴム、合成ゴム(例えば、ポリイソプレンゴム)等のゴム成分及びプロセスオイル等の軟化剤を共存させてもよい。上記軟化剤を共存させることで、ゴム成分の可塑化促進や得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性を向上させることができる。上記軟化剤は、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系のいずれであってもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲において、該樹脂成分及びゴム成分に上記以外の樹脂やゴム、フィラー、添加剤等他の成分を添加してもよい。
【0053】
上記フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カオリン、クレー、ケイソウ土、珪酸カルシウム、雲母、アスベスト、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス球、硫化モリブデン、グラファイト、シラスバルーン等を挙られる。また、添加剤としては、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、核剤、滑剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤等が挙げられる。
【0054】
上記耐熱安定剤としては、例えば、フェノール系、リン系、硫黄系等の公知のものを使用することができる。上記耐候安定剤としてはヒンダードアミン系、トリアゾール系等の公知のものを使用することができる。上記着色剤としてはカーボンブラック、チタンホワイト、亜鉛華、べんがら、アゾ化合物、ニトロソ化合物、フタロシアニン化合物等が挙げられる。また、帯電防止剤、難燃剤、核剤、滑剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤等についてもいずれも公知のものが使用可能である。
【0055】
上記ポリエステル系エラストマーの市販品としては、「プリマロイ」(三菱化学社製)、「ペルプレン」(東洋紡績社製)、「ハイトレル」(東レ・デュポン社製)等が挙げられる。
【0056】
上記ポリエステル系エラストマーとして、ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールとからなるポリエステルポリエーテルブロック共重合体を用いる場合、ポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量は、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が90重量%である。上記ポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量が5重量%以上であると、柔軟性に優れるものとなり、90重量%以下であると、硬度及び機械強度に優れるものとなる。上記ポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量のより好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は80重量%であり、更に好ましい下限は55重量%である。なお、ポリアルキレンエーテルグリコール成分の含有量は核磁気共鳴スペクトル法(NMR)を用い、水素原子の化学シフトとその含有量に基づいて算出することができる。
【0057】
上記ポリエステル系エラストマーの変性物(以下、変性ポリエステル系エラストマーともいう)とは、上記ポリエステル系エラストマーを変性剤を用いて変性させたものである。上記変性ポリエステル系エラストマーを得るための変性反応は、例えば、ポリエステル系エラストマーに変性剤としてのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸を反応させることによって行われる。変性反応に際してはラジカル発生剤を使用するのが好ましい。変性反応においては、ポリエステル系エラストマーにα,β−エチレン性不飽和カルボン酸やその誘導体が付加するグラフト反応が主として起こるが、分解反応も起こる。その結果、変性ポリエステル系エラストマーは、分子量が低下して溶融粘度が低くなる。また、変性反応においては、通常、他の反応として、エステル交換反応等も起こるものと考えられ、得られる反応物は、一般的には、未反応原料等を含む組成物となるが、この場合、得られる反応物中の変性ポリエステル系エラストマーの含有率の好ましい下限は10重量%、より好ましい下限は30重量%であり、変性ポリエステル系エラストマーの含有率が100重量%であることが更に好ましい。
【0058】
上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸;コハク酸2−オクテン−1−イル無水物、コハク酸2−ドデセン−1−イル無水物、コハク酸2−オクタデセン−1−イル無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、ブロモマレイン酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水物、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、endo−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。これらのなかでは、反応性が高いことから、酸無水物が好ましい。上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、変性すべきポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する共重合体や変性条件に応じて適宜選択することができ、また、2種以上を併用してもよい。なお、上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は有機溶剤等に溶解して使用することもできる。
【0059】
上記ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルオキシ)ヘキサン、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化カリウム、過酸化水素等の有機及び無機の過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)ジハライド、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物、ジクミル等の炭素ラジカル発生剤等が挙げられる。上記ラジカル発生剤は、変性反応に使用するポリエステル系エラストマーの種類、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の種類及び変性条件に応じて適宜選択することができ、また、2種以上を併用してもよい。更に、ラジカル発生剤は有機溶剤等に溶解して使用することもできる。
【0060】
上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の配合量の好ましい下限は、ポリエステル系エラストマー100重量部に対して0.01重量部、好ましい上限は30.0重量部である。上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の配合量を0.01重量部以上とすることで、変性反応を充分に行うことができ、30.0重量部以下とすることで、経済的に有利なものとなる。上記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の配合量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は5.0重量部、更に好ましい下限は0.10重量部、更に好ましい上限は1.0重量部である。
【0061】
上記ラジカル発生剤の配合量の好ましい下限は、ポリエステル系エラストマー100重量部に対して0.001重量部、好ましい上限は3.00重量部である。上記ラジカル発生剤の配合量を0.001重量部以上とすることで、変性反応が起きやすくなり、3.00重量部以下とすることで、変性時の低分子量化(粘度低下)による材料強度の低下が起こりにくくなる。上記ラジカル発生剤の配合量のより好ましい下限は0.005重量部、より好ましい上限は0.50重量部、更に好ましい下限は0.010重量部、更に好ましい上限は0.20重量部であり、特に好ましい上限は0.10重量部である。
【0062】
上記変性ポリエステル系エラストマーを得るための変性反応としては、溶融混練反応法、溶液反応法、懸濁分散反応等の公知の反応方法を使用することができるが、通常は安価であることから溶融混練反応法が好ましい。
【0063】
上記溶融混練反応法による方法では、上述した各成分を所定の配合比にて均一に混合した後、溶融混練を行う。各成分の混合には、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を使用することができ、溶融混練には、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸等の多軸混練押出機等を使用することができる。
【0064】
上記溶融混練を行う場合の混練温度の好ましい下限は100℃、好ましい上限は300℃である。上記範囲内とすることで、樹脂の熱劣化を防止することができる。上記混練温度のより好ましい下限は120℃、より好ましい上限は280℃、更に好ましい下限は150℃、更に好ましい上限は250℃である。
【0065】
上記変性ポリエステル系エラストマーの変性率(グラフト量)の好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は10.0重量%である。上記グラフト量が0.01重量%以上であることで、ポリエステルとの親和性が高くなり、10.0重量%以下であることで、変性時の分子劣化による強度低下を小さくすることができる。上記グラフト量のより好ましい下限は0.03重量%、より好ましい上限は7.0重量%であり、更に好ましい下限は0.05重量%、更に好ましい上限は5.0重量%である。
【0066】
上記変性ポリエステル系エラストマーの変性率(グラフト量)は、H−NMR測定により得られるスペクトルから、下記の式(1)に従って求めることができる。なお、上記H−NMR測定に使用する機器としては、例えば、「GSX−400」(日本電子社製)等を用いることができる。
【0067】
グラフト量(重量%)=100×[(C÷3×98)/{(A×148÷4)+(B×72÷4)+(C÷3×98)}] (1)
式(1)中、Aは7.8〜8.4ppmにおける積分値、Bは1.2〜2.2ppmにおける積分値、Cは2.4〜2.9ppmにおける積分値を表す。
【0068】
上記変性反応によって得られる変性ポリエステル系エラストマーを含有する反応物のJIS−D硬度の好ましい下限は10、好ましい上限は80である。上記JIS−D硬度を10以上とすることで、機械的強度が向上し、80以下とすることで、柔軟性及び耐衝撃性が向上する。上記JIS−D硬度のより好ましい下限は15、より好ましい上限は70、更に好ましい下限は20、更に好ましい上限は60である。なお、上記JIS−D硬度は、JIS K 6253に準拠して方法でデュロメータ タイプDを用いることにより測定することができる。
【0069】
本発明の熱収縮性多層フィルム全体の厚さの好ましい下限は20μm、好ましい上限は100μmである。また、本発明の熱収縮性多層フィルム全体の厚さのより好ましい下限は25μm、より好ましい上限は80μmであり、更に好ましい下限は30μm、更に好ましい上限は70μmである。上記範囲内であると、優れた熱収縮性、優れた印刷やセンターシール等のコンバーティング性、優れた装着性が得られる。
【0070】
また、中間層の厚さの好ましい下限は熱収縮性多層フィルム全体の厚みの50%、好ましい上限は90%である。また、表面層の厚さの好ましい下限は熱収縮性多層フィルム全体の厚みの5%、好ましい上限は25%である。また、裏面層の厚さの好ましい下限は熱収縮性多層フィルム全体の厚みの5%、好ましい上限は25%である。各層の厚さを上記範囲内とすることで耐熱性、耐衝撃性、耐磨耗性を有し、再資源化が容易であるとともに、保管時の収縮が少ない熱収縮性多層フィルムとすることができる。また、接着層の厚さは0.5〜3.0μmであることが好ましい。上記接着層の厚さが0.5μm未満であると、充分な接着性が得られないことがあり、3.0μmを超えると、熱収縮特性、光学特性が悪化することがある。上記接着層の厚さのより好ましい下限は0.7μm、好ましい上限は2.0μmである。なお、接着層を形成する場合は、接着層の厚さ分を、中間層又は表面層の厚さから差し引くことによって、熱収縮性多層フィルム全体の厚さを調整することができる。
【0071】
上記表面層(A)、中間層(B)、裏面層(C)及び接着層(E)の各層の厚さは、例えば、熱熱収縮性多層フィルムが(A)/(B)/(C)の3層構造であり、総厚さが40μmである場合、中間層(B)の厚さは20.0〜36.0μmであることが好ましく、25.0〜35.0μmであることがより好ましい。また、表面層(A)の厚さは、2.0〜10.0μmであることが好ましく、3.0〜8.0μmであることがより好ましい。裏面層(C)の厚さは、2.0〜10.0μmであることが好ましく、3.0〜8.0μmであることがより好ましい。
【0072】
また、本発明の熱収縮性多層フィルムが(A)/(E)/(B)/(E)/(C)の5層構成であり、総厚さが40μmである場合、中間層(B)の厚さは19.0〜35.0μmであることが好ましく、20〜32.6μmであることがより好ましい。また、表面層(A)の厚さは、2.0〜10.0μmであることが好ましく、3.0〜8.0μmであることがより好ましい。裏面層(C)の厚さは、2.0〜10.0μmであることが好ましく、3.0〜8.0μmであることがより好ましい。接着層(E)の厚さは0.5〜3.0μmであることが好ましく、0.7〜2.0μmであることがより好ましい。
【0073】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、表面層と裏面層との厚さが等しい対称構成であってもよく、非対称構成であってもよいが、フィルムのカール等の不具合を防止する観点から、対称構成の方が好ましい。
【0074】
本発明の熱収縮性多層フィルムの熱収縮特性については、70℃の温水中に10秒間浸した場合の収縮率の好ましい下限は10%、好ましい上限は45%である。上記収縮率が10%未満であると、装着時に多くの熱量が必要となるため、容器の変形を招くことがあり、45%を超えると、加熱によって急激に収縮するため、シワ等が生じやすくなる。上記収縮率のより好ましい下限は13%、より好ましい上限は40%である。
なお、上記70℃の温水中に10秒間浸した場合の収縮率とは、熱収縮性多層フィルムを、100mm×100mmの大きさにサンプルをカットし、70℃の温水中に10秒間浸した後の、加熱処理前の寸法に対する加熱後の寸法の変化率を%で表した値のことであり、主収縮方向(収縮率の大きい方向)の値のことである。
【0075】
また、本発明の熱収縮性多層フィルムの80℃の温水中に10秒間浸した場合の収縮率の好ましい下限は40%、好ましい上限は65%である。上記収縮率が40%未満であると、装着時に多くの熱量が必要となるため、容器の変形を招くことがあり、65%を超えると、加熱によって急激に収縮するため、シワ等が生じやすくなる。上記収縮率のより好ましい下限は45%、より好ましい上限は60%である。
なお、上記80℃の温水中に10秒間浸した場合の収縮率とは、熱収縮性多層フィルムを、100mm×100mmの大きさにサンプルをカットし、80℃の温水中に10秒間浸した後の、加熱処理前の寸法に対する加熱後の寸法の変化率を%で表した値のことであり、主収縮方向(収縮率の大きい方向)の値のことである。
【0076】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、全光線透過率の好ましい上限が45%である。上記全光線透過率が45%を超えると、遮光性が不充分であることから、内容物に変質や変色が起こる可能性が高くなる。上記全光線透過率のより好ましい上限は40%である。
【0077】
本発明の熱収縮性多層フィルムの主収縮方向の自然収縮率は、40℃7日間放置したとき、好ましい上限は3%である。上記自然収縮率が3%を超えると、本発明の熱収縮性多層フィルムを保管する際に、寸法変化を起こしやすくなり、印刷加工時にトラブルとなる場合がある。上記自然収縮率のより好ましい上限は2%である。
【0078】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法としては特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好適である。例えば、Tダイによる共押出では、積層の方法として、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。具体的には例えば、表面層及び裏面層を構成する原料、中間層を構成する原料、必要に応じて接着層を構成する原料をそれぞれ押出機に投入し、多層ダイスにより、シート状に押し出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸する方法を用いることができる。
上記二酸化チタンの添加方法としては、特に限定されないが、上記ポリスチレン系樹脂に二酸化チタンを添加することでマスターバッチとして、該マスターバッチとポリスチレン系樹脂とを中間層を構成する原料として添加する方法が、生産性に優れることから好ましい。
【0079】
本発明の熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとして使用することにより、熱収縮性ラベルを得ることができる。このような熱収縮性ラベルもまた本発明の1つである。
本発明の熱収縮性ラベルは、上記熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとして、必要に応じて、印刷層等の他の層を積層してもよい。
【0080】
容器に熱収縮性ラベルを装着する方法としては、通常、溶剤を用いて熱収縮性多層フィルムの端部間を接着してチューブ状に加工(センターシール加工)し熱収縮性ラベルとした後、容器を覆った状態で加熱して収縮させる方法が採用されている。
【発明の効果】
【0081】
本発明によれば、遮光性が高く内容物の品質を保持することができ、適度な機械的性質を有するとともに、熱収縮性に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例において下記の原料を用いた。
・PET−1:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100モル%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を70モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を30モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度85℃)
・PET−2:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100モル%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を70モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を20モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を10モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度74℃)
・PET−3:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100モル%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を65モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を15モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を20モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度69℃)
・PET−4:ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100モル%を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を72モル%、ジエチレングリコールに由来する成分を8モル%、2ーメチル、2―ブチルプロパンジオールに由来する成分を20モル%含有するポリエステル系樹脂(ガラス転移温度64℃)
・SBS−1:スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR=6.2g/10分、ビカット軟化温度72℃)
・SBS−2:スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン85重量%、ブタジエン15重量%:MFR=5.6g/10分、ビカット軟化温度82℃)
・SBS−3:スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン80重量%、ブタジエン20重量%:MFR=7.2g/10分、ビカット軟化温度89℃)
・SBS−4:スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:MFR=8.5g/10分、ビカット軟化温度74℃)
・SBS−5:スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン77重量%、ブタジエン23重量%:MFR=5.9g/10分、ビカット軟化温度76℃)
・SBS−6:スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン80重量%、ブタジエン20重量%:MFR=7.5g/10分、ビカット軟化温度76℃)
・AD−1:ポリエステル系エラストマー(三菱化学社製、プリマロイA 1600N、融点160℃、MFR5.0g/10分)
・AD−2:変性ポリエステル系エラストマー(三菱化学社製、プリマロイAP IF203、融点180℃、MFR30.0g/10分)
・AD−3:無水マレイン酸変性スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(スチレン含量30重量%、無水マレイン酸付加量0.5重量%、MFR4.0g/10分)
【0083】
(実施例1)
表面層及び裏面層を構成する成分として、PET−1を100重量部と、有機系微粒子としてメチルメタクリレート−スチレン共重合体(平均粒子径:3.3μm)1重量部を、バレル温度が160〜190℃の表面層形成用一軸押出機及び裏面層形成用一軸押出機のそれぞれに投入した。同時に、中間層を構成する成分として、SBS−1を68重量%と、SBS−1をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ32重量%を中間層形成用一軸押出機に投入し、190℃の多層ダイスから、表面層/中間層/裏面層の3層構造のシート状に押出し、25℃の引き取りロールにて冷却固化した。その後、得られたシートを85℃に調整された加熱ロールを有する縦延伸機にて約1.3倍に縦延伸し、次いで、予熱ゾーン110℃、延伸ゾーン90℃のテンター延伸機にて約5.5倍に横延伸し、70℃でアニーリングした後、巻き取り機で巻き取ることにより、白色でロール状の熱収縮性多層フィルム(SBS−1の総重量に対する二酸化チタン含量:19重量%)を得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが30μmであり、表面層(2.7μm)/中間層(24.6μm)/裏面層(2.7μm)であった。
なお、ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で行い、樹脂から試験片を採取した後、試験片に置いた針状圧子に10Nの荷重を加えながら、120℃/hの速度で昇温させ、針状圧子が1mm進入したときの温度を確認することにより、測定した。
【0084】
(実施例2)
中間層を構成する成分として、SBS−1を59重量%、SBS−1をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ41重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:25重量%)を得た。
【0085】
(実施例3)
中間層を構成する成分として、SBS−1を38重量%、SBS−1をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ62重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:37重量%)を得た。
【0086】
(実施例4)
中間層を構成する成分として、SBS−1を18重量部、SBS−1をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ82重量部を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:49重量%)を得た。
【0087】
(実施例5)
中間層を構成する成分として、SBS−2を68重量%、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ32重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:25重量%)を得た。
【0088】
(実施例6)
中間層を構成する成分として、SBS−2を18重量%、SBS−2をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ82重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:49重量%)を得た。
【0089】
(実施例7)
中間層を構成する成分として、SBS−3を68重量%、SBS−3をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ32重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:25重量%)を得た。
【0090】
(実施例8)
中間層を構成する成分として、SBS−3を18重量%、SBS−3をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ82重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:49重量%)を得た。
【0091】
(実施例9)
中間層を構成する成分として、SBS−4を59重量%、SBS−4をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ41重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:25重量%)を得た。
【0092】
(実施例10)
中間層を構成する成分として、SBS−5を59重量%、SBS−5をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ41重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:25重量%)を得た。
【0093】
(実施例11)
中間層を構成する成分として、SBS−6を59重量%、SBS−6をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ41重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:25重量%)を得た。
【0094】
(実施例12)
表面層及び裏面層を構成する成分として、PET−2を用いた以外は実施例2と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:25重量%)を得た。
【0095】
(実施例13)
表面層及び裏面層を構成する成分として、PET−3を用いた以外は実施例2と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:25重量%)を得た。
【0096】
(実施例14)
表面層及び裏面層を構成する成分として、PET−4を用いた以外は実施例2と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:25重量%)を得た。
【0097】
(実施例15)
表面層及び裏面層を構成する成分として、PET−1を100重量部と、有機系微粒子としてメチルメタクリレート−スチレン共重合体(平均粒子径:3.3μm)1重量部を、バレル温度が160〜190℃の表面層形成用一軸押出機及び裏面層形成用一軸押出機のそれぞれに投入した。同時に、中間層を構成する成分として、SBS−1を59重量%と、SBS−1をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ41重量%を中間層形成用一軸押出機に投入した。接着層を構成する成分として、AD−1を100重量%接着層形成用一軸押出機に投入し、190℃の多層ダイスから、表面層/接着層/中間層/接着層/裏面層の5層構造のシート状に押出し、25℃の引き取りロールにて冷却固化した。その後、得られたシートを85℃に調整された加熱ロールを有する縦延伸機にて約1.3倍に縦延伸し、次いで、予熱ゾーン110℃、延伸ゾーン90℃のテンター延伸機にて約5.5倍に横延伸し、70℃でアニーリングした後、巻き取り機で巻き取ることにより、白色でロール状の熱収縮性多層フィルム(SBS−1の総重量に対する二酸化チタン含量:19重量%)を得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが30μmであり、表面層(2.3μm)/接着層(0.8μm)/中間層(23.8μm)/接着層(0.8μm)/裏面層(2.3μm)であった。
【0098】
(実施例16)
接着層を構成する成分として、AD−2を用いた以外は実施例15と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:25重量%)を得た。
【0099】
(実施例17)
接着層を構成する成分として、AD−3を用いた以外は実施例15と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:25重量%)を得た。
【0100】
(比較例1)
中間層を構成する成分として、SBS−1を89重量%、SBS−1をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ11重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:7重量%)を得た。
【0101】
(比較例2)
中間層を構成する成分として、SBS−1を79重量%、SBS−1をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ21重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:13重量%)を得た。
【0102】
(比較例3)
中間層を構成する成分として、SBS−1をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ100重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:60重量%)を得た。
【0103】
(比較例4)
中間層を構成する成分として、SBS−5を79重量%、SBS−5をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ21重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:13重量%)を得た。
【0104】
(比較例5)
中間層を構成する成分として、SBS−5をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ100重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:60重量%)を得た。
【0105】
(比較例6)
中間層を構成する成分として、SBS−6を68重量%、SBS−6をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ32重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:19重量%)を得た。
【0106】
(比較例7)
中間層を構成する成分として、SBS−6をベース樹脂として二酸化チタンを60重量%含有する白色マスターバッチ100重量%を用いた。
これらの樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルム(二酸化チタン含量:60重量%)を得た。
【0107】
(評価)
(1)全光線透過率測定
得られた熱収縮性多層フィルムについて、紫外可視分光光度計(V−670、日本分光社製)を用い、全光線透過率を測定した。
なお、全光線透過率が40%以下であれば、充分な遮光性を有するものと考えられる。
【0108】
(2)熱収縮率
得られた熱収縮性多層フィルムを、100mm×100mmの大きさにサンプルをカットし、70℃の温水に10秒間浸漬させた後、熱収縮性多層フィルムを取り出し、加熱処理前の寸法に対する加熱後の寸法の比率を算出した。なお、収縮率はn=3としてその平均値を用いた。また、平均値よりも2%以上離れた値はカウントしないこととした。測定は、温水を80℃に設定した場合についても行った。
【0109】
(3)自然収縮率
(2)熱収縮率で得られた測定サンプルを40℃で7日間放置した後、放置前の寸法に対する放置後の寸法の比率を算出した。
【0110】
(4)引張破断伸度測定
得られた熱収縮性多層フィルムを幅10mm×長さ100mm(長さ方向は、熱収縮性多層フィルムのMD方向と同じ)の短冊状にカットし、長さ方向の中央付近に標線間40mmとなるように線を引いて測定サンプルとした。
この測定サンプルについて、引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフVE1D)を用いて引張破断伸度を測定した。
チャック間距離は標線と同じ40mmとし、標線の部分をチャックで挟み、速度200mm/minでサンプルが破断するところまで引っ張った。
試験前のチャック間距離と破断したときのチャック間距離とから、引張破断伸度を求めた。なお、試験回数は10回とし、その平均値を求めた。
引張破断伸度が200%未満のものは、急激なテンション変化に耐えられず破断することから、好ましくない。なお、試験においてサンプルが切れたものの数を表1に示した。
【0111】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、遮光性が高く内容物の品質を保持することができ、適度な機械的性質を有するとともに、熱収縮性に優れる熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を含有する表面層、ポリスチレン系樹脂及び二酸化チタンを含有する中間層、及び、ポリエステル系樹脂を含有する裏面層をこの順に有する熱収縮性多層フィルムであって、前記ポリスチレン系樹脂の総重量に対して、前記二酸化チタンを15〜50重量%含有することを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
ポリスチレン系樹脂は、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体、芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、又は、これらの混合樹脂であることを特徴とする請求項1記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項3】
表面層と中間層との間、及び/又は、中間層と裏面層との間に接着層を有することを特徴とする請求項1又は2記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項4】
接着層は、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、又は、これらの変性物を含有することを特徴とする請求項3記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の熱収縮性多層フィルムを用いてなることを特徴とする熱収縮性ラベル。


【公開番号】特開2010−284941(P2010−284941A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142128(P2009−142128)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】