説明

熱収縮性多層フィルム及び熱収縮性ラベル

【課題】耐折目白化性及びミシン目適性に優れるとともに、高い低温収縮性を有する熱収縮性多層フィルムを提供する。また、本発明は、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルを提供する。
【解決手段】ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系共重合体を含有する中間層とが、ポリエステル系樹脂を60〜85重量%、ポリスチレン系共重合体を15〜40重量%含有する接着層を介して積層されてなり、かつ、主収縮方向の引張破断伸度が30%以上である熱収縮性多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐折目白化性及びミシン目適性に優れるとともに、高い低温収縮性を有する熱収縮性多層フィルムに関する。また、本発明は、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットボトル、金属罐等の容器の多くには、熱収縮性樹脂からなるベースフィルムに印刷等を施した熱収縮性ラベルが装着されている。
熱収縮性ラベルに用いられる熱収縮性樹脂フィルムとしては、低温収縮性に優れることからポリスチレン系共重合体フィルムが多用されている。しかしながら、ポリスチレン系共重合体フィルムは耐熱性が不充分であることから、例えば、コンビニエンスストア等にあるホットウォーマー内でペットボトルが倒れると、熱収縮性ラベルが収縮して歪んでしまったり破れてしまったりすることがある。また、ポリスチレン系共重合体フィルムは耐溶剤性が不充分であることから、油分を含む品物の容器に用いられる場合に、油分が付着することによって熱収縮性ラベルが収縮したり溶解したりすることもある。
【0003】
そこで、ポリスチレン系共重合体フィルムに代えて、耐熱性及び耐溶剤性に優れたポリエステル系樹脂フィルムを用いる試みもなされている。しかしながら、ポリエステル系樹脂フィルムは低温収縮性が悪く急激に収縮することから、熱収縮性ラベルを容器に装着する際には皺が発生しやすい。また、熱収縮性ラベルには、容器をリサイクルするために使用後の容器から容易に熱収縮性ラベルを引き剥がせるようにミシン目が設けられていることが多いが、ポリエステル系樹脂フィルムはミシン目におけるカット性が悪く、熱収縮性ラベルを容器から容易に引き剥がすことができないことがある。更に、ポリエステル系樹脂フィルムは収縮応力が大きいことから、ホット飲料用ラベルに用いられる場合に、販売時の加熱によって熱収縮性ラベルが容器を締めつけ、内容物の入れ目線が上昇して容器からの漏出等が生じることがある。
【0004】
これらの問題を解決するために、本願出願人らは、ポリエステル系樹脂を含む外面層と、ポリスチレン系共重合体を含む中間層とが、変性ポリエステル系エラストマーを含む接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルムを発明し、特許文献1に開示している。
特許文献1に記載の熱収縮性多層フィルムは、ポリスチレン系共重合体を含む中間層が、ポリエステル系樹脂を含む外面層で覆われた構造を有することから、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性及び外観に優れる。更に、特許文献1に記載の熱収縮性多層フィルムは、外面層と中間層との間に接着層を有することから、容器の熱収縮性ラベルとして用いられる場合、装着の際に層間剥離が発生することがなく、印刷工程後の層間強度の低下を防止することができる。
【0005】
しかしながら、このような接着層を介して積層されてなる熱収縮性多層フィルムを用いた場合、ラベルにする時の溶剤シール工程において、条件によってはフィルムが強く折られた際に折り目部で白化が生じ、ペットボトル等の容器に装着した後に、この白化した箇所が消えることなく目立つことによって外観が損なわれるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2には、ポリスチレン系樹脂からなる発泡シートの片面に、ポリスチレン系樹脂とポリエステル系樹脂との混合物からなる接着層を介して、芳香族ポリエステル系樹脂のフィルムが積層された積層発泡体が開示されている。
しかしながら、このような発泡体を用いた場合は、収縮性を付与するための延伸工程を行うとフィルム破れが発生し、生産性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−62640号公報
【特許文献2】特開2001−30439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐折目白化性及びミシン目適性に優れるとともに、高い低温収縮性を有する熱収縮性多層フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系共重合体を含有する中間層とが、ポリエステル系樹脂を60〜85重量%、ポリスチレン系共重合体を15〜40重量%含有する接着層を介して積層されてなり、かつ、主収縮方向の引張破断伸度が30%以上である熱収縮性多層フィルムである。
以下、本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系共重合体を含有する中間層とが接着層を介して積層された熱収縮性多層フィルムにおいて、ポリエステル系樹脂とポリスチレン系共重合体との混合比が所定の範囲内である混合樹脂を接着層に用いることで、耐折目白化性及びミシン目適性に優れるとともに、高い低温収縮性を有する熱収縮性多層フィルムが好適に用いられることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、表裏層と中間層とを有する。
なお、本明細書中、表裏層とは、表面層と裏面層との両方を意味する。従って、本発明の熱収縮性多層フィルムは、中間層が表面層と裏面層とに挟まれた構造を有する。
【0012】
上記表裏層は、ポリエステル系樹脂を含有する。
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸とジオールとを縮重合させることにより得られるものが挙げられる。
【0013】
上記ジカルボン酸としては特に限定されず、例えば、o−フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0014】
上記ジオールとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類等が挙げられる。
【0015】
上記ポリエステル系樹脂としては、なかでも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、かつ、ジオール成分としてエチレングリコール及び/又は1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含有するものが好ましい。このようなポリエステル系樹脂を用いることにより、高い耐低温性と耐熱性を付与することができる。耐低温性及び耐熱性をより高めたい場合には、エチレングリコールに由来する成分の含有量が60〜80モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分の含有量が10〜40モル%であるものを用いることが好ましい。このようなポリエステル系樹脂は、更に、ジエチレングリコールに由来する成分を0〜30モル%、好ましくは1〜25モル%、より好ましくは2〜20モル%含有していてもよい。ジエチレングリコールを含有することにより、主収縮方向の引張破断伸度が高まり、優れたミシン目適性を付与し、熱収縮性ラベルを容器から剥がす時に層間剥離し、ラベルの内面側の表裏層のみが残ってしまうことを防止する。ジエチレングリコールが30モル%を超えると、低温収縮性が高くなり過ぎ、容器に熱収縮性ラベルを被せたときにシワが入りやすくなる。
【0016】
上記表裏層に含まれるポリエステル系樹脂としては、上述した組成を有するポリエステル系樹脂を単独で用いてもよく、上述した組成を有する2種以上のポリエステル系樹脂を併用してもよい。また、上記ポリエステル系樹脂は、表面層と裏面層とで異なる組成のものとしてもよいが、フィルムのカール等によるトラブルを抑制するため、同一の組成とすることが好ましい。
【0017】
上記ポリエステル系樹脂のビカット軟化温度の好ましい下限は55℃、好ましい上限は95℃である。上記ビカット軟化温度が55℃未満であると、低温収縮性が高くなり過ぎ、容器に熱収縮性ラベルを被せたときにシワが入りやすくなる。上記ビカット軟化温度が95℃を超えると、低温収縮性が低下する。より好ましい下限は60℃、より好ましい上限は90℃である。なお、上記ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で測定することができる。
【0018】
上記中間層は、ポリスチレン系共重合体を含有する。
上記ポリスチレン系共重合体として、例えば、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン等が挙げられる。上記ポリスチレン系共重合体を用いることで、得られる熱収縮性多層フィルムは低温から収縮を開始することができ、また、高収縮性を有する。
【0019】
本明細書中、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体とは、芳香族ビニル炭化水素に由来する成分と、共役ジエンに由来する成分とを含有する共重合体をいう。
上記芳香族ビニル炭化水素は特に限定されず、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記共役ジエンは特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0020】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体は、特に熱収縮性に優れることから、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS樹脂)を含有することが好ましい。また、上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体は、よりフィッシュアイの少ない熱収縮性多層フィルムを作製するためには、上記共役ジエンとして2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)を用いたスチレン−イソプレン共重合体(SIS樹脂)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体(SIBS)等を含有することが好ましい。
なお、上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体は、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちのいずれか1つを単独で含有してもよく、複数を組み合わせて含有してもよい。また、SBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂のうちの複数を用いる場合には、各樹脂をドライブレンドしてもよく、各樹脂を特定の組成にて押出機を用いて練り上げペレタイズしたコンパウンド樹脂を用いてもよい。
【0021】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体がSBS樹脂、SIS樹脂及びSIBS樹脂を単独又は複数で含有する場合には、特に熱収縮性に優れた熱収縮性多層フィルムが得られることから、上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体100重量%に占めるスチレン含有量が65〜90重量%、共役ジエン含有量が10〜35重量%であることが好ましい。上記スチレン含有量が90重量%を超えるか、上記共役ジエン含有量が10重量%未満であると、得られる熱収縮性多層フィルムにテンションをかけたときに切れ易くなったり、印刷等の加工時に思いもよらず破断したりすることがある。上記スチレン含有量が65重量%未満であるか、上記共役ジエン含有量が35重量%を超えると、成形加工時にゲル等の異物が発生しやすくなったり、得られる熱収縮性多層フィルムの腰が弱くなったりして、取り扱い性が悪化することがある。
【0022】
本明細書中、芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体とは、芳香族ビニル炭化水素に由来する成分と、脂肪族不飽和カルボン酸エステルに由来する成分とを含有する共重合体をいう。
上記芳香族ビニル炭化水素は特に限定されず、上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体において例示した芳香族ビニル炭化水素と同様の芳香族ビニル炭化水素を用いることができる。
上記脂肪族不飽和カルボン酸エステルは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートとの両方を示す。
【0023】
上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体として、スチレン−ブチルアクリレート共重合体を用いる場合には、上記スチレン−ブチルアクリレート共重合体100重量%に占めるスチレン含有量が60〜90重量%、ブチルアクリレート含有量が10〜40重量%であることが好ましい。このような組成の芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体を用いることで、熱収縮性に優れた熱収縮性多層フィルムを得ることができる。
【0024】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂は特に限定されないが、上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体20〜80重量%と、上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体20〜80重量%との混合樹脂であることが好ましい。
【0025】
上記ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンとは、スチレン、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキルの3元共重合体からなる連続相と、共役ジエンを主体とするゴム成分からなる分散相とで構成されるものを基本とするものである。連続相を形成するメタクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が、アクリル酸アルキルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0026】
連続相を形成する共重合体中のスチレンの割合は20〜80重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましい。メタクリル酸アルキルの割合は10〜50重量%が好ましく、15〜40重量%がより好ましい。アクリル酸アルキルの割合は1〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。また、分散相を形成する共役ジエンを主体とするゴム成分はポリブタジエン、或いはスチレン含有量が5〜30重量%のスチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。
【0027】
上記分散相における共役ジエンを主体とするゴム成分の粒子径は0.1〜1.2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.3〜0.8μmである。分散相の粒子径が0.1μmを下回ると耐衝撃性が不充分となることがあり、1.2μmを上回ると中間層の透明性が低下することがある。
【0028】
スチレン、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキルの3元共重合体からなる連続相の割合は70〜95重量%、共役ジエンを主体とするゴム成分からなる分散相の割合は5〜20重量%が好ましい。分散相の割合が5重量%を下回ると耐衝撃性が不充分となることがあり、20重量%を上回ると中間層の透明性が低下することがある。
【0029】
上記ポリスチレン系共重合体のビカット軟化温度の好ましい下限は60℃、好ましい上限は85℃である。60℃未満であると、低温収縮性が高くなり過ぎ、容器に熱収縮性ラベルを被せたときにシワが入りやすくなる。85℃を超えると、低温収縮性が低下し、容器に熱収縮性ラベルを被せたときに未収縮部分が発生しやすくなる。より好ましい下限は65℃、より好ましい上限は80℃である。なお、上記ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で測定することができる。
【0030】
また、上記中間層に用いられるポリスチレン系共重合体として、スチレン系エラストマー、又は、これらの変性物を更に加えた場合、主収縮方向の引張破断伸度が高まり、ミシン目適性が向上し、熱収縮性ラベルを容器から剥がす時に層間剥離し、ラベルの内面側の表裏層のみが残ってしまうことを防止する。
【0031】
上記スチレン系エラストマーは特に限定されず、例えば、ハードセグメントとしてのポリスチレンと、ソフトセグメントとしてのポリブタジエン、ポリイソプレン又はポリブタジエンとポリイソプレンとの共重合体とからなるスチレン系エラストマー、及び、その水素添加物等が挙げられる。なお、上記水素添加物は、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の一部が水素添加されていてもよく、全てが水素添加されていてもよい。
【0032】
上記スチレン系エラストマーの変性物は特に限定されず、例えば、カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基等の官能基によるスチレン系エラストマーの変性物が挙げられる。
上記スチレン系エラストマーの変性物における上記カルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基及び水酸基等の官能基の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が0.05重量%、好ましい上限が5.0重量%である。上記官能基の含有量が0.05重量%未満であると、得られる接着層は、特に上記表裏層に対する接着性が不充分となることがある。上記官能基の含有量が5.0重量%を超えると、上記官能基を付加する際にスチレン系エラストマーが熱劣化し、ゲル等の異物が発生しやすくなることがある。上記官能基の含有量のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は3.0重量%である。
【0033】
上記スチレン系エラストマー、又は、これらの変性物の市販品として、例えば、タフテック、タフプレン(以上、いずれも旭化成ケミカルズ社製)、クレイトン(クレイトンポリマージャパン社製)、ダイナロン、JSR TR、JSR SIS(JSR社製)、セプトン(クラレ社製)等が挙げられる。
【0034】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、上記表裏層と上記中間層とが、ポリエステル系樹脂を60〜85重量%、ポリスチレン系共重合体を15〜40重量%含有する接着層を介して積層されてなるものである。
このような接着層を用いることで、耐折目白化性及びミシン目適性に優れるとともに、高い低温収縮性を有する熱収縮性多層フィルムとすることができる。
【0035】
上記接着層に用いられるポリエステル系樹脂としては、上述した表裏層に用いられるポリエステル系樹脂と同様のものを使用してもよく、別のものを使用してもよい。
上記接着層に用いられるポリエステル系樹脂としては、特に、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含有し、かつ、ジオール成分としてエチレングリコール及び/又は1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含有するものが好ましい。このようなポリエステル系樹脂は、更に、ジエチレングリコールに由来する成分を0〜30モル%、好ましくは1〜25モル%、より好ましくは2〜20モル%含有しても良い。
【0036】
上記接着層に用いるポリエステル系樹脂のビカット軟化温度の好ましい下限は50℃、好ましい上限は95℃である。上記ビカット軟化温度が50℃未満であると、熱収縮性ラベルを装着する時に加熱された時に層間剥離が生じやすくなる。上記ビカット軟化温度が95℃を超えると、層間強度の低下が生じる。より好ましい下限は55℃、更に好ましい下限は60℃、より好ましい上限は90℃である。
なお、上記ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で測定することができる。
【0037】
上記接着層において、上記ポリエステル系樹脂の含有量は下限が60重量%、上限が85重量%である。
上記ポリエステル系樹脂の含有量が60重量%未満であると、ミシン目適性が悪化し、熱収縮性ラベルを容器から剥がす時に層間剥離し、ラベルの内面側の表裏層のみが残ってしまう。また、ラベル装着後にセンターシールの重ね合わせ部分を引っ掻くと層間剥離が容易に発生しやすくなる。上記ポリエステル系樹脂の含有量が85重量%を超えると、層間強度が低下するのに加え、ミシン目適性が悪化し、熱収縮性ラベルを容器から剥がす時に層間剥離し、ラベルの内面側の表裏層のみが残ってしまうことがある。また、ラベル装着後にセンターシールの重ね合わせ部分を引っ掻くと層間剥離が容易に発生しやすくなる。
上記ポリエステル系樹脂との含有量の好ましい下限が65重量%、好ましい上限が80重量%である。
【0038】
上記接着層に用いられるポリスチレン系共重合体としては、上述した中間層に用いられるポリスチレン系共重合体と同様のものを使用してもよく、別のものを使用してもよい。
上記接着層に用いられるポリスチレン系共重合体としては、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン等が挙げられる。この中でもスチレン−共役ジエン共重合体が好ましく、スチレン−ブタジエン共重合体を用いることがより好ましい。
また、スチレン系エラストマー、又は、これらの変性物を用いることが好ましい。
【0039】
上記接着層に用いるポリスチレン系共重合体がスチレン−共役ジエン共重合体である場合、上記スチレン−共役ジエン共重合体100重量%に占めるスチレン含有量が55〜90重量%、共役ジエン含有量が10〜45重量%であることが好ましい。上記スチレン含有量が90重量%を超えるか、上記共役ジエン含有量が10重量%未満であると、層間強度が低下するのに加え、ミシン目適性が悪化し、熱収縮性ラベルを容器から剥がす時に層間剥離し、ラベルの内面側の表裏層のみが残ってしまうことがある。また、ラベル装着後にセンターシールの重ね合わせ部分を引っ掻くと層間剥離が容易に発生しやすくなる。上記スチレン含有量が55重量%未満であるか、上記共役ジエン含有量が45重量%を超えると、ミシン目適性が悪化し、熱収縮性ラベルを容器から剥がす時に層間剥離し、ラベルの内面側の表裏層のみが残ってしまうことがある。また、ラベル装着後にセンターシールの重ね合わせ部分を引っ掻くと層間剥離が容易に発生しやすくなる。
【0040】
上記接着層に用いるポリスチレン系共重合体のビカット軟化温度の好ましい下限は60℃、好ましい上限は85℃である。60℃未満であると、ラベル装着後にセンターシールの重ね合わせ部分を引っ掻くと層間剥離が容易に発生しやすくなる。85℃を超えると、層間強度が低下する。より好ましい下限は65℃、より好ましい上限は80℃である。なお、上記ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で測定することができる。
なお、接着層に用いるポリスチレン系共重合体のビカット軟化温度が中間層のポリスチレン系共重合体より高い時、ラベル装着後にセンターシールの重ね合わせ部分を引っ掻いた時の層間剥離がより発生しにくくなる。接着層に用いるポリスチレン系共重合体のビカット軟化温度が中間層のポリスチレン系共重合体より低い時、より高い層間強度が得られる。
【0041】
上記接着層において、上記ポリエステル系樹脂の含有量は下限が60重量%、上限が85重量%、上記ポリスチレン系共重合体の含有量は下限が15重量%、上限が40重量%である。
上記ポリエステル系樹脂の含有量が60重量%未満、上記ポリスチレン系共重合体の含有量が40重量%を超えると、ミシン目適性が悪化し、熱収縮性ラベルを容器から剥がす時に層間剥離し、ラベルの内面側の表裏層のみが残ってしまうことがある。また、ラベル装着後にセンターシールの重ね合わせ部分を引っ掻くと層間剥離が容易に発生しやすくなる。上記ポリエステル系樹脂の含有量が85重量%を超え、上記ポリスチレン系共重合体の含有量が15重量%未満であると、層間強度が低下するのに加え、ミシン目適性が悪化し、熱収縮性ラベルを容器から剥がす時に層間剥離し、ラベルの内面側の表裏層のみが残ってしまうことがある。また、ラベル装着後にセンターシールの重ね合わせ部分を引っ掻くと層間剥離が容易に発生しやすくなる。
上記ポリエステル系樹脂との含有量の好ましい下限が65重量%、好ましい上限が80重量%、上記ポリスチレン系共重合体との含有量の好ましい下限が20重量%、好ましい上限が35重量%である。
【0042】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0043】
本発明の熱収縮性多層フィルム全体の厚さは、好ましい下限が15μm、好ましい上限が100μmであり、より好ましい下限が20μm、より好ましい上限が80μmであり、更に好ましい下限が25μm、更に好ましい上限が70μmである。熱収縮性多層フィルム全体の厚さが上記範囲内であると、優れた熱収縮性、印刷又はセンターシール等の優れたコンバーティング性、優れた装着性が得られる。
【0044】
本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、上記表裏層の厚さは、熱収縮性多層フィルム全体の厚みに対する好ましい下限が5%、好ましい上限が25%である。また、本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、上記中間層の厚さは、熱収縮性多層フィルム全体の厚みに対する好ましい下限が50%、好ましい上限が90%である。
上記表裏層及び上記中間層の厚さを上記範囲内とすることで、耐折目白化性及びミシン目適性を有し、高い低温収縮性を有する熱収縮性多層フィルムが得られる。
【0045】
本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、上記接着層の厚さは、好ましい下限が0.5μm、好ましい上限が3.0μmである。上記接着層の厚さが0.5μm未満であると、接着層は充分な接着性が得られないことがある。上記接着層の厚さが3.0μmを超えると、得られる熱収縮性多層フィルムの熱収縮特性、光学特性が悪化することがある。上記接着層の厚さのより好ましい下限は0.7μm、好ましい上限は2.0μmである。
なお、本発明の熱収縮性多層フィルムが上記接着層を有する場合には、該接着層の厚さ分を差し引いて上記表裏層及び上記中間層を形成することにより、熱収縮性多層フィルム全体の厚さを調整することができる。
【0046】
また、例えば、本発明の熱収縮性多層フィルムが表面層(A)/接着層(E)/中間層(B)/接着層(E)/裏面層(C)の5層構造であり、熱収縮性多層フィルム全体の厚さが40μmである場合、上記表面層(A)の厚さは、2.0〜10.0μmであることが好ましく、3.0〜8.0μmであることがより好ましい。また、上記接着層(E)の厚さは、0.5〜3.0μmであることが好ましく、0.7〜2.0μmであることがより好ましい。また、上記中間層(B)の厚さは、19.0〜35.0μmであることが好ましく、20〜32.6μmであることがより好ましい。また、上記裏面層(C)の厚さは、2.0〜10.0μmであることが好ましく、3.0〜8.0μmであることがより好ましい。
【0047】
本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、主収縮方向における収縮率は70℃10秒間において15〜50%、好ましくは20〜45%、より好ましくは25〜40%、更に好ましくは30〜40%、80℃10秒間において50〜70%、好ましくは55〜67%、より好ましくは58〜65%、更に好ましくは60〜65%、沸騰水10秒間において、65〜85%、好ましくは70〜83%、より好ましくは75〜80%である。このような収縮率であることによって優れたミシン目適性を付与することができる。
【0048】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、層間強度が40g/cm以上であることが好ましい。上記層間強度が40g/cm未満であると、熱収縮性ラベルを容器から剥がす時に層間剥離し、ラベルの内面側の表裏層のみが残ってしまうことがある。また、ラベル装着後にセンターシールの重ね合わせ部分を引っ掻くと層間剥離が容易に発生しやすくなる。
好ましい下限は50g/cm以上である。
なお、上記層間強度は、例えば、測定サンプルについて、層間を180度方向に剥離させたときの層間強度を剥離試験機を用いて測定することができる。
【0049】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、主収縮方向の引張破断伸度が30%以上であることが好ましい。上記引張破断伸度が30%未満であると、熱収縮性ラベルを容器から剥がす時に層間剥離し、ラベルの内面側の表裏層のみが残ってしまうことがある。また、ラベル装着後にセンターシールの重ね合わせ部分を引っ掻くと層間剥離が容易に発生しやすくなる。
好ましい下限は35%、更に好ましい下限は40%である。
なお、上記引張破断伸度は、JIS−K6732に基づき、例えば、ストログラフVE1D(東洋精機社製)を使用し、サンプル幅10mm、標線間長さ40mm、引張速度200mm/分で測定することができる。
【0050】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法は特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好ましい。上記共押出法がTダイによる共押出である場合、積層の方法は、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法として、具体的には、例えば、上記表裏層を構成する原料、上記中間層を構成する原料、及び、上記接着層を構成する原料をそれぞれ押出機に投入し、多層ダイスによりシート状に押し出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸する方法が挙げられる。
上記延伸の方法としては、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法又はこれらの組み合わせを用いることができる。延伸温度はフィルムを構成している樹脂の軟化温度や熱収縮性多層フィルムに要求される収縮特性によって変更する必要があるが、延伸温度の好ましい下限は65℃、好ましい上限は120℃、より好ましい下限は70℃、より好ましい上限は115℃である。主収縮方向の延伸倍率は、フィルム構成成分、延伸手段、延伸温度に応じて3倍以上、好ましくは4倍以上であって、7倍以下、好ましくは6倍以下である。
このような延伸温度、延伸倍率であることによって優れた厚み精度、ミシン目適性を付与することができる。
【0051】
本発明の熱収縮性多層フィルムの用途は特に限定されないが、本発明の熱収縮性多層フィルムは耐磨耗性に優れることから、例えば、ペットボトル、金属罐等の容器に装着される熱収縮性ラベルのベースフィルムとして好適に用いられる。
本発明の熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルもまた本発明の1つである。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、耐折目白化性及びミシン目適性に優れるとともに、高い低温収縮性を有する熱収縮性多層フィルムを提供することができる。また、本発明は、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】層間強度評価におけるフィルムの剥離状態を示す模式図である。
【図2】層間強度評価におけるフィルムの剥離状態を示す模式図である。
【図3】折目白化評価における折目白化が観察できない場合の一例を示す写真である。
【図4】折目白化評価における折目白化が観察できる場合の一例を示す写真である。
【図5】引掻き試験の操作方法を示す模式図である。
【図6】ミシン目適性評価の操作方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定さない。
【0055】
以下に実施例及び比較例で用いた各材料を示す。
【0056】
(ポリエステル系樹脂)
表1に示す組成のポリエステル系樹脂(ポリエステル:PEs−1〜PEs−4)を用いた。
また、各ポリエステル系樹脂のビカット軟化温度(℃)を表1に示した。
なお、ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で行い、各ポリスチレン系共重合体から試験片を採取した後、試験片に置いた針状圧子に10Nの荷重を加えながら120℃/hの速度で昇温し、針状圧子が1mm進入したときの温度を確認することにより測定した。
【0057】
(ポリスチレン系共重合体)
表1に示す組成のポリスチレン系共重合体(スチレン−ブタジエン共重合体:SBS−1〜SBS−6)を用いた。
各ポリスチレン系共重合体のビカット軟化温度(℃)及びMFR(g/10分)を表1に示した。
なお、ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で行い、各ポリスチレン系共重合体から試験片を採取した後、試験片に置いた針状圧子に10Nの荷重を加えながら120℃/hの速度で昇温し、針状圧子が1mm進入したときの温度を確認することにより測定した。
また、MFRは、ISO1133に準拠した方法で行い、各ポリスチレン系共重合体を200℃にて溶融し5kg荷重条件下での10分換算での樹脂の吐出量を計測することにより測定した。
【0058】
(ポリスチレン系樹脂)
表1に示す組成のポリスチレン系樹脂(PS−1)を用いた。
各ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度(℃)及びMFR(g/10分)を表1に示した。
なお、ビカット軟化温度は、JIS K 7206(1999)に準拠した方法で行い、各ポリスチレン系樹脂から試験片を採取した後、試験片に置いた針状圧子に10Nの荷重を加えながら120℃/hの速度で昇温し、針状圧子が1mm進入したときの温度を確認することにより測定した。
また、MFRは、ISO1133に準拠した方法で行い、各ポリスチレン系樹脂を200℃にて溶融し5kg荷重条件下での10分換算での樹脂の吐出量を計測することにより測定した。
【0059】
(熱可塑性エラストマー)
表1に示す熱可塑性エラストマー(ポリエステル系エラストマー、三菱化学社製、プリマロイA1600N:TPE−1)、熱可塑性エラストマー(水添スチレン系熱可塑性エラストマー、旭化成ケミカルズ社製、タフテックM1911:TPE−2)、熱可塑性エラストマー(スチレン系エラストマー、旭化成ケミカルズ社製、タフプレン126:TPE−3)、熱可塑性エラストマー(水添スチレン系エラストマー、旭化成ケミカルズ社製、H1041:TPE−4)及び熱可塑性エラストマー(水添スチレン系エラストマー、旭化成ケミカルズ社製、H1043:TPE−5)を用いた。
【0060】
(実施例1)
表裏層を構成する樹脂としてPEs−1を、中間層を構成する樹脂としてSBS−1を、接着層を構成する樹脂としてPEs−1及びSBS−4を用いた。なお、添加量は表2に示す通りとした。
これらの樹脂をバレル温度が160〜250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスから5層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、予熱ゾーン105℃、延伸ゾーン90℃、熱固定ゾーン85℃のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にて延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、主収縮方向がTD、主収縮方向と直交する方向がMDとなる熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが50μmであり、表裏層(6μm)/接着層(1μm)/中間層(36μm)/接着層(1μm)/表裏層(6μm)の5層構造であった。
【0061】
(実施例2〜18)
表2に示す樹脂及び製造条件に変更する以外は実施例1と同様にして、5層構造の熱収縮性多層フィルムを得た。
【0062】
(比較例1〜8)
表3に示す樹脂を用いる及び製造条件以外は実施例1と同様にして、5層構造の熱収縮性多層フィルムを得た。
【0063】
(評価)
実施例及び比較例で得られた熱収縮性多層フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表2及び表3に示した。
【0064】
(1)引張破断伸度
得られた熱収縮性多層フィルムをMD方向10mm×TD方向100mmの短冊状にカットし、TD方向の中央付近に標線間40mmとなるように線を引いて測定サンプルとした。
この測定サンプルについて、JIS−K6732に基づき引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフVE1D)を用いてTD方向の引張(破断)伸度を測定した。
チャック間距離は標線と同じ40mmとし、標線の部分をチャックで挟み、速度200mm/minでサンプルが破断するところまで引っ張った。
試験前のチャック間距離と破断したときのチャック間距離とから、引張破断伸度を求めた。なお、試験回数は10回とし、その平均値を求めた。
【0065】
(2)層間強度(密着性)
熱収縮性多層フィルムを長さ100mm×幅10mmのサイズにカットし、図1に示すようにフィルム端部の一部分を層間剥離した後、サンプルの長さ方向に引張速度200mm/minで、図2に示すように180度方向に剥離させたときの強度を剥離試験機(Peeling TESTER HEIDON−17、新東科学社製)を用いて測定した。
なお、MDとTD両方向に対し試験回数を10回行い、そのMDとTD両方向の平均値を求めた。
【0066】
(3)折目白化評価
得られた熱収縮性多層フィルム(フィルム幅:500mm)をグラビア印刷法により、ファインスター黒(東洋インキ社製)を用いて印刷を行った後、ファインスター白(東洋インキ製)を用いて印刷し、黒色と白色の2色裏面印刷の施された熱収縮性多層フィルムを得た。
印刷版としては、版深度30μm、線数175線のダイレクトレーザー製版により作製した版を用いた。
【0067】
グラビア印刷を行った後、得られた熱収縮性多層フィルムの黒色印刷部分からMD方向100mm×TD方向200mmの長方形にカットし、カットサンプルをMD方向と平行にゴムローラーを2kg荷重で2回押しつけることで折りスジを付け、カットサンプルを展開し、更にゴムローラーを2kg荷重で1回押しつけることで折りスジを戻す。その後、TD方向の収縮率が規制できるような冶具を用いて、フィルムを75℃の温水に7秒間浸漬させTD方向に5%収縮させた。その際の折りスジの外観を以下の基準で評価した。
外観の評価は、サンプルの斜め45°の角度から蛍光灯の光を照射し、蛍光灯と反対斜め45°の角度の位置から10人が目視にて行った。
なお、折目白化が観察できない場合の一例を図3に、折目白化が観察できる場合の一例を図4に示す。
【0068】
○:10人中全員が折目白化を観察できない。
×:10人中1人以上が折目白化を観察できる。
【0069】
(4)引掻き試験
得られた熱収縮性多層フィルムをTD方向の幅239mmにスリットし、1,4−ジオキソラン100重量部に対して、シクロヘキサンが40重量部を混合した溶剤を用いてMD方向と平行になるように幅3mmの溶剤シールし、TD方向の幅が114mmとなるように扁平に折り畳み、筒状の熱収縮性ラベルとした。次いで、この筒状の熱収縮性ラベルをMD方向の幅160mmでカットし、一辺約60mm四角型の500mlのPETボトル容器にフジアステック社製「SH−5000」のスチームトンネルを用い、設定温度80−85−95℃、トンネル通過時間8秒で熱収縮させ容器に被覆させることで、図5に示す熱収縮性ラベルを被覆した容器を得た。
その後、熱収縮性ラベルのフィルム外側エッジ11の上端部15から、溶剤シールで重なった部分12のフィルム外側エッジ11に力が加わるように、熱収縮性ラベルの上端14から45度の角度で爪を用いて10回引掻いた際のシール部剥離や外観不良回数について以下の基準で評価した。
【0070】
◎:10回の試行中全てにおいてシール部剥離、外観不良の不具合が観察できない。
○:10回試行中1〜2回剥離、外観不良が観察できる。
△:10回試行中3〜4回剥離、外観不良が観察できる。
×:10回試行中5回以上剥離、外観不良が観察できる。
【0071】
(5)ミシン目適性評価
予めカット部0.5mm、非カット部3.0mmの連続性を有するミシン目を、溶剤シール部を中心に13mmの幅でMD方向と平行に2本入れた以外は、「(4)引掻き試験」と同様の方法で熱収縮性ラベルを作製し、PETボトル容器に装着した。
次いで、容器に被覆させた熱収縮性ラベルの2本のミシン目を、熱収縮性ラベルの上端24から10mmの位置までカットすることで、図6に示す熱収縮性ラベルの上端から10mmがミシン目からカットされた、熱収縮性ラベルを被覆した容器を得た。その後、既にカットされたミシン目部分27の下端25を起点として、溶剤シールで重なった部分22のフィルム外側エッジ21に力が加わるようにミシン目29に対して斜め45度の方向に力を入れてミシン目29を引き裂いた際の層間剥離発生回数について以下の基準で評価した。
【0072】
◎:10回試行中全てにおいてシール部からの層間剥離が発生しない
○:10回試行中1〜2回シール部からの層間剥離が発生する。
△:10回試行中3〜4回シール部からの層間剥離が発生する。
×:10回試行中5回以上シール部からの層間剥離が発生する。
【0073】
(6)熱収縮率
得られた熱収縮性多層フィルムを、MD方向100mm×TD方向100mmの大きさにサンプルをカットし、70℃の温水に10秒間浸漬させた後、熱収縮性多層フィルムを取り出し、すぐに水道水に10秒間浸漬させた。この熱収縮性多層フィルムのTDの1辺の長さLをそれぞれ測定して、次式に従いTDの熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(100−L)/100}×100
なお、収縮率はn=3としてその平均値を用いた。測定は、温水を80℃及び沸騰水についても行った。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、耐折目白化性及びミシン目適性に優れるとともに、高い低温収縮性を有する熱収縮性多層フィルムを提供することができる。また、本発明は、該熱収縮性多層フィルムを用いてなる熱収縮性ラベルを提供することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 中間層
2 表裏層
11、21 フィルム外側エッジ
12、22 溶剤シールで重なった部分
14、24 熱収縮性ラベルの上端
15 フィルム外側エッジ11の上端部
27 カットされたミシン目部分
29 ミシン目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を含有する表裏層と、ポリスチレン系共重合体を含有する中間層とが、ポリエステル系樹脂を60〜85重量%、ポリスチレン系共重合体を15〜40重量%含有する接着層を介して積層されてなり、かつ、
主収縮方向の引張破断伸度が30%以上である
ことを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
接着層に含まれるポリエステル系樹脂は、ビカット軟化温度が50〜95℃であることを特徴とする請求項1記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項3】
接着層に含まれるポリスチレン系共重合体は、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体であり、かつ、共役ジエンの含有量が10〜45重量%であることを特徴とする請求項1記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項4】
表裏層に含まれるポリエステル系樹脂は、ビカット軟化温度が55〜95℃であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項5】
中間層に含まれるポリスチレン系共重合体は、ビカット軟化温度が60〜85℃であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の熱収縮性多層フィルムを用いてなることを特徴とする熱収縮性ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−131169(P2012−131169A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286440(P2010−286440)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】