説明

熱収縮性積層フィルム、該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル及び容器

【課題】 フィルムの収縮仕上がり性、透明性、自然収縮に優れ、かつフィルムの層間剥離が抑制された熱収縮性積層フィルム、及び該フィルムからなる熱収縮性ラベルが装着されたプラスチック製容器の提供。
【解決手段】 中間層と該中間層の両面に積層された表裏層の少なくとも3層からなる熱収縮性積層フィルムにおいて、前記中間層を、芳香族系炭化水素50質量%以上を含有する芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体(A)と、該共重合体(A)100質量部に対し、芳香族系炭化水素50質量%未満を含有する芳香族系炭化水素と炭素数5以下の共役ジエン系炭化水素との共重合体(B)又はその水素添加誘導体(B’)1〜30質量部との混合物を主成分として形成し、前記表裏層をポリエステル系樹脂で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性積層フィルム、該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル及び容器に関する。より詳しくは、本発明は、耐破断性、腰強さ(常温での剛性)、収縮仕上がり性、及び再生添加時の透明性に優れ、自然収縮が少なく、かつフィルムの層間剥離が抑制された、収縮包装、収縮結束包装、収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルム、該フィルムを用いた成形品、熱収縮性ラベル及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ジュース等の清涼飲料、ビール等のアルコール飲料等は、瓶、ペットボトル等の容器に充填された状態で販売されている。その際、他商品との差異化や商品の視認性を向上させ商品価値を高める目的で、容器の外側に印刷を施した熱収縮性ラベルを装着していることが多い。この熱収縮性ラベルの素材としては、通常、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリスチレン等が用いられている。
【0003】
ポリ塩化ビニル系(以下「PVC系」という)熱収縮性フィルムは、収縮仕上がり性と自然収縮性が良好(すなわち自然収縮率が小さい)であり、従来、熱収縮性ラベルとして広く用いられてきた。しかしながら、使用後の焼却時に塩化水素、ダイオキシン等の有害ガスの発生原因となり得るため、近年の環境保全の観点からPVC系に代替する材料を使用した熱収縮性フィルムの開発が行われている。
【0004】
一方、今後、需要の増大が見込まれるペットボトルのラベル用途等では、比較的短時間かつ低温において高度な収縮仕上がり外観が得られ、小さな自然収縮率を有する熱収縮性フィルムが要求されている。その理由としては、最近のペットボトルに装着されるシュリンクフィルムのラベリング工程における低温化のニーズが挙げられる。すなわち、現在、蒸気シュリンカーを用いて熱収縮フィルムをシュリンクさせてラベリングする方法が主流となっているが、無菌充填や内容物の温度上昇による品質低下を回避するためには、シュリンク工程はできるだけ低温で行うことが望ましい。このような理由から、現在のシュリンクフィルム業界では、ラベリング時に蒸気シュリンカー内でできるだけ低温で収縮を開始し、かつ蒸気シュリンカー通過後に優れた収縮仕上がり特性が得られる熱収縮性フィルムの開発が行われている。
【0005】
上記の用途に対し、室温において剛性であり、低温収縮性を有し、かつ自然収縮性が非常に良好なポリエステル系熱収縮性フィルムが主として使用されている。しかしながら、ポリエステル系熱収縮フィルムは、PVC系熱収縮性フィルムと比較すると加熱収縮時に収縮斑やしわが発生しやすいという問題があった。
【0006】
一方、前記PVC系及びポリエステル系熱収縮フィルムの問題点を克服すべく、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS)を主たる材料とするポリスチレン系熱収縮性フィルムも提案され使用されている。このポリスチレン系熱収縮性フィルムは、PVC系及びポリエステル系熱収縮性フィルムと比べて収縮仕上がり性が良好であるという長所を有している反面、腰が弱い、自然収縮性が劣る等といった問題があった。そのため、これらの問題点を解決し得るスチレン系熱収縮性フィルムの開発が行われている。
【0007】
上記問題を解決する手段として、ポリスチレン系樹脂からなる中間層の両側に、ジオール残基として1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有するポリエステル系樹脂からなる表裏層が積層されてなるベースフィルムを備えたシュリンクラベルが報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、このシュリンクラベルは、中間層と表裏層の層間接着性が不十分であり、二次加工の際、印刷時に層間剥離が生じやすいという問題があった。
【0008】
また、層間接着を改良した技術として、内層にビニル芳香族系炭化水素と共役ジエン誘導体とのブロック共重合体、両外層に共重合ポリエステル系、接着層にエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体などを用いたフィルムが報告されている(特許文献2参照)。しかし、このフィルムは、内層のビニル芳香族系炭化水素と共役ジエン誘導体と接着層のエチレン−酢酸ビニル共重合体との相溶性が劣るため、フィルムの耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂を添加(以下、「再生添加」と称する)した際に、フィルム全体の透明性が低下しやすいという問題点があった。
【特許文献1】特開2002−351332号公報
【特許文献2】特公平5−33896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、フィルムの表裏層と中間層との層間剥離が抑制され、耐破断性、腰強さ(常温での剛性)、収縮仕上がり性、自然収縮性に優れ、かつ、再生添加した場合にフィルム全体の透明性を良好に維持できる、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを提供することにある。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した前記フィルムを用いた成形品及び容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、積層フィルムを形成する表裏層と中間層、さらには接着層の各組成を鋭意検討した結果、上記従来技術の課題を解決し得るフィルムを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の目的は、以下の熱収縮性積層フィルムにより達成される。
(1)中間層と該中間層の両面に積層された表裏層の少なくとも3層からなる熱収縮性積層フィルムであって、前記中間層は、芳香族系炭化水素50質量%以上を含有する、芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体(以下「共重合体A」ともいう)と、該共重合体A100質量部に対し、芳香族系炭化水素50質量%未満を含有する、芳香族系炭化水素と炭素数5以下の共役ジエン系炭化水素との共重合体(以下「共重合体B」ともいう)又はその水素添加誘導体(以下「共重合体B’」ともいう)1〜30質量部との混合樹脂を主成分とし、前記表裏層は、ポリエステル系樹脂からなることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
(2)前記中間層が該中間層を構成する樹脂100質量部に対し、前記表裏面層を構成する樹脂1質量部以上100質量部以下を含む上記(1)に記載の熱収縮性積層フィルム。
(3)前記ポリエステル系樹脂が、ジカルボン酸残基及びジオール残基からなり、前記ジカルボン酸残基及び前記ジオール残基の少なくとも一方が2種以上の残基で構成され、前記2種以上の残基のうち最多残基を除いた残基の合計の含有率が前記ジカルボン酸残基の総量(100モル%)と前記ジオール残基の総量(100モル%)との合計(200モル%)に対して10〜50モル%である上記(1)又は(2)に記載の熱収縮性積層フィルム。
(4)前記中間層の芳香族系炭化水素がスチレン系炭化水素である上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
(5)前記中間層の芳香族系炭化水素がスチレン系炭化水素であり、かつ前記炭素数5以下の共役ジエン系炭化水素がブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、及びこれらの水素添加誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
(6)前記中間層と前記表裏層との間に少なくとも1層の接着層をさらに有する上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
(7)前記中間層が該中間層を構成する樹脂100質量部に対し、前記接着層を構成する樹脂1質量部以上30質量部以下を含む上記(6)に記載の熱収縮性積層フィルム。
(8)前記接着層が、軟質スチレン系樹脂、変性スチレン系樹脂、及び前記表裏層と前記中間層で用いられる複合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種又はそれらの混合物で構成される上記(6)又は(7)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
(9)70℃温水に10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率と80℃温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率との差が40%以下である上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
(10)JIS K7127に準拠して測定されたフィルムの主収縮方向と直交する方向の0℃における破断伸度が200%以上である上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
(11)JIS K7105に準拠して測定されたヘーズ値が10%以下である上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
(12)23℃50%RHの環境下で引張速度200mm/分で剥離したときのシール強度が3N/15mm幅以上である上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【0013】
また、本発明のもう一つの目的は、以下の成形品、熱収縮性ラベル及び該成形品及び熱収縮性ラベルを装着した容器により達成される。
(13)上記(1)〜(12)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品。
(12)上記(1)〜(12)のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
(13)上記(11)に記載の成形品又は上記(12)に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフィルムは、中間層に共重合体Aと所定量の共重合体B又は共重合体B’を含むため、本発明によれば、中間層と表裏層との層間剥離を抑制でき、腰強さがあり、耐破断性、収縮仕上がり性、及び自然収縮性に優れ、さらに再生添加時にフィルム全体の透明性を良好に維持できる、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを提供することができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、腰強さがあり、優れた耐破断性、収縮仕上がり性、自然収縮性、透明性を有する成形品及び熱収縮性ラベルを提供することができる。さらに、本発明によれば、装着物の形状にかかわらず所望の位置に密着固定させることができ、皺、アバタの発生、収縮不十分等の異常がなく、透明で綺麗な外観を呈した前記成形品又は熱収縮性ラベルを装着した容器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、発明の熱収縮性積層フィルム、成形品、ラベル及び該フィルム、成形品及びラベルを装着した容器について詳細に説明する。
【0017】
なお、本明細書において「主成分とする」とは、各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で他の成分を含むことを許容する趣旨である。この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、各層の構成成分全体の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上を占める成分である。また、「主収縮方向」とは、フィルムの縦方向(長手方向)とフィルムの横方向(幅方向)のうち熱収縮率の大きい方向を意味し、例えば、ボトルに装着する場合にはその外周方向に相当する方向を意味し、「直交方向」とは主収縮方向と直交する方向を意味する。
【0018】
[熱収縮性積層フィルム]
本発明の熱収縮性積層フィルム(以下「本発明のフィルム」ともいう。)の第一の態様は、芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体からなる中間層と、該中間層の両面に形成されたポリエステル系樹脂からなる表裏層により構成される少なくとも3層を有する。
【0019】
<中間層>
本発明のフィルムにおいて中間層は、共重合体Aと、共重合体B又は共重合体B’との混合樹脂を主成分としてなる。
【0020】
共重合体A及びBは、いずれも芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体である。共重合体A及びBは、芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体、芳香族系炭化水素の含有率が異なる2種以上の共重合体からなる混合物、前記共重合体と芳香族系炭化水素又は共役ジエン系炭化水素と共重合可能なモノマーとの共重合体、又はこれらの混合物であることができ、中でも芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体であることが好ましい。
【0021】
共重合体A及びBを構成する芳香族系炭化水素は、主としてスチレン系炭化水素、ビニルナフタレン系炭化水素、及びビニルアントラセン系炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む化合物であり、特にスチレン系炭化水素が好適に用いられる。
【0022】
上記スチレン系炭化水素の具体例としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(p−、m−又はo−メチルスチレン)、ポリ(2,4−、2,5−、3,4−又は3,5−ジメチルスチレン)、ポリ(p−t−ブチルスチレン)等のポリアルキルスチレン;ポリ(o−、m−又はp− クロロスチレン)、ポリ(o−、m−又はp−ブロモスチレン)、ポリ(o−、m−又はp−フルオロスチレン)、ポリ(o−メチル−p−フルオロスチレン)等のポリハロゲン化スチレン;ポリ(o−、m−又はp−クロロメチルスチレン)等のポリハロゲン化置換アルキルスチレン;ポリ(p−、m−又はo−メトキシスチレン)、ポリ(o−、m−又はp−エトキシスチレン)等のポリアルコキシスチレン;ポリ(o−、m−、又はp−カルボキシメチルスチレン)等のポリカルボキシアルキルスチレン;ポリ(p−ビニルベンジルプロピルエーテル)等のポリアルキルエーテルスチレン;ポリ(p−トリメチルシリルスチレン)等のポリアルキルシリルスチレン;さらにはポリビニルベンジルジメトキシホスファイド等が挙げられる。スチレン系炭化水素は、これらを単独で又は2種以上で構成されていてもよい。
【0023】
共重合体Aを構成する共役ジエン系炭化水素は、共役結合を有する炭化水素であれば特に制限はなく、例えば、ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1, 3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1, 3−ヘキサジエン等の鎖状又は環状共役ジエンが挙げられる。共役ジエン系炭化水素は、これらの単独又は2種以上で構成されていてもよい。一方、共重合体Bを構成する炭素数5以下の共役ジエン系炭化水素としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンが挙げられ、これらを単独又は2種以上で構成されていてもよい。
【0024】
上記スチレン系炭化水素と共重合可能なモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。中でもスチレンとブチル(メタ)アクリレートとの共重合体が好ましく、特に共重合体中のスチレン含有率が70質量%以上90質量%以下の範囲であり、Tg(損失弾性率E’’のピーク温度)が50℃以上90℃以下、メルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)が2g/10分以上15g/10分以下のものが好適に用いられる。なお、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを示す。
【0025】
上記共役ジエン系炭化水素と共重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリロニトリルなどのビニル系化合物が挙げられる。
【0026】
共重合体A及びBにおける芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合の形態は特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体のいずれの態様であってもよいが、ピュア構造、ランダム構造、及びテーパー構造を含むブロック共重合体が好ましい。
【0027】
本発明で好ましく用いられる共重合体Aの一つは、芳香族系炭化水素がスチレンであり、かつ共役ジエン系炭化水素がブタジエンである、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)である。また、本発明で好ましく用いられる共重合体B又は共重合体B’の一つは、芳香族系炭化水素がスチレンであり、炭素数5以下の共役ジエン系炭化水素がイソプレンである、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)又はその水素添加誘導体であるSEPSである。イソプレンのように共役ジエン系炭化水素部分にビニル基などの分岐構造が存在し、さらに二重結合が存在共役ジエン系炭化水素を用いた場合には、後述する表裏層のポリエステル系樹脂と親和性が働き、層間剥離強度を向上できるため好ましい。また、イソプレンの水素添加誘導体のように飽和炭化水素基の分岐構造を有する水素添加誘導体を用いた場合には、押出工程などで加熱されたときに、ジエン部分同士が架橋反応を起こすことが少なく、生産時にゲルの発生を抑制できるため好ましい。水素添加の有無及び水素添加率は、目的とする効果によって調節することが望ましい。
【0028】
共重合体A中の芳香族系炭化水素の含有率は50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。また芳香族系炭化水素の含有率の上限は95質量%、好ましくは90質量%、さらに好ましくは85質量%である。芳香族系炭化水素の含有率が50質量%以上であれば、室温前後の温度においてフィルムの弾性率が保持され、良好な腰の強さが得られ、また前記含有率の上限を95質量%とすることにより、耐衝撃性の向上が期待できる。
【0029】
また、共重合体B又は共重合体B’中の芳香族系炭化水素含有率は50質量%未満、好ましくは40質量%未満、さらに好ましくは30質量%未満である。また芳香族系炭化水素の含有率の下限値は10質量%以上、好ましくは13質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。芳香族系炭化水素の含有率が50質量%未満であれば、柔軟性が低下することなく耐衝撃性が発揮し、さらにフィルムに応力が加わった場合に、表裏層と中間層の間に生じる応力への緩衝作用が働くため、層間剥離を抑え接着性の改良に効果を発揮する。また下限値を10質量%以上とすることによって、芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とからなり、芳香族系炭化水素含有率が50質量%以上の共重合体(A)との相溶性が低下せず、混合物としたときに白濁を生じることがない。
【0030】
上記共重合体A及びBのそれぞれの重量(質量)平均分子量(Mw)の下限値は100,000以上、好ましくは150,000以上であり、上限値が500,000以下、好ましくは400,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。上記共重合体の重量(質量)平均分子量(Mw)が100,000以上であれば、フィルムの劣化が生じるような欠点もなく好ましい。さらに、上記共重合体の分子量が500,000以下であれば、流動特性を調整する必要なく、押出性が低下するなどの欠点もないため好ましい。
【0031】
上記共重合体A及びBのそれぞれのメルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃ 、荷重49N)の下限値は2g/10分以上、好ましくは3g/10分以上である。また、MFRの上限値は15g/10分以下、好ましくは10g/10分以下、さらに好ましくは8g/10分以下である。MFRが2g/10分以上であれば、押出成型時に適度な流動粘度が得られ、生産性を維持又は向上できる。また、MFRが15g/10分以下であれば、適度な樹脂の凝集力が得られるため、良好なフィルム強伸度が得られ、フィルムを脆化し難くすることができる。
【0032】
前記中間層に含まれる共重合体Aと共重合体B又は共重合体B’との混合量は、共重合体A100質量部に対し、共重合体B及び/又は共重合体B’が30質量部以下、好ましくは25質量部、さらに好ましくは20質量部以下である。また、共重合体B及び/又は共重合体B’の混合量の下限値は1質量部以上、好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上である。共重合体Aに対する共重合体B及び/又は共重合体B’の混合量が30質量部以下とすることにより、腰の強さ(常温での弾性率)が維持され、自然収縮性も小さく、また共重合体B及び/又は共重合体B’が1質量部以上含まれることにより、耐破断性、接着性も改良に効果を発揮する。
なお、ここで記載されている「共重合体B及び/又は共重合体B’」とは、共重合体B又は共重合体B’を単独で用いる場合のみならず、共重合体B又は共重合体B’を任意の割合で混合して用いる場合を意味する。
【0033】
本発明における中間層は、表裏層や後述する接着層の主成分を構成する樹脂を含むこともできる。中間層に表裏層及び/又は接着層の主成分を構成する樹脂を含ませることができれば、例えばフィルムの耳などのトリミングロス等から発生するリサイクルフィルムを再利用することができ、製造コストを削減することができる。
【0034】
中間層が表裏層を構成する樹脂を含む場合、中間層を構成する樹脂100質量部に対し、表裏層を構成する樹脂を1質量部以上100質量部以下、好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下とすることが望ましい。表裏層を構成する樹脂組成物が100質量部以下であれば、フィルムの機械的強度を低下させることなく、再生添加時の透明性を維持することができる。
【0035】
また、中間層が後述する接着層を構成する樹脂を含む場合、中間層を構成する樹脂100質量部に対し、接着層を構成する樹脂を1質量部以上30質量部以下、好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下とすることが望ましい。接着層を構成する樹脂が30質量部以下であれば、フィルムの腰の強さを維持できるとともに、自然収縮率も小さく抑えられ、また1質量部以上であれば、耐破断性と接着性の改善に寄与することができる。
【0036】
<表裏層>
本発明のフィルムの表裏層は、多価カルボン酸残基と多価アルコール残基とを含む少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とするポリエステル系樹脂で構成される。
【0037】
表裏層で用いられる多価カルボン酸残基としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、4,4−スチルベンジカルボン酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−Naスルホイソフタル酸、エチレン−ビス−p−安息香酸等の芳香族ジカルボン酸残基、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0038】
また、表裏層で用いられる多価アルコール残基としては、例えば、ジエチレングリコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、トランス−テトラメチル−1, 3−シクロブタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、p−キシレンジオール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)などの残基から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0039】
上記多価カルボン酸残基と多価アルコール残基とにより構成される熱可塑性ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンイソフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を全多価アルコール成分中に含有する非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。中でも、多価カルボン酸残基がテレフタル酸残基であり、多価アルコール残基がエチレングリコール残基及び1,4−シクロヘキサンジメタノール残基である非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を好適に用いることができる。
【0040】
ここで、前記非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれる1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の含有量は、全ジオール残基中に10モル%以上、好ましくは20モル%以上で含まれ、さらに上限が50モル%、好ましくは40モル%である。1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の含有量が10モル%以上であれば、結晶化による印刷適性の低下や経時的な脆化を抑えることができ、また50モル%以下であれば、押出溶融時に適度な粘度を維持できると共に、良好な製膜性を得ることができる。なお、1,4−シクロヘキサンジメタノールには、シス型とトランス型の2種類の異性体が存在するがいずれであってもよい。
【0041】
本発明において、より好ましくはジカルボン酸残基とジオール残基の少なくとも一方が、2種以上の残基からなる混合物である。本明細書では、前記2種以上の残基において、質量(モル%)が最多のものを第1残基とし、該第1残基よりも少量のものを第2残基以下の残基(すなわち、第2残基、第3残基・・・)とする。ジカルボン酸残基とジオール残基とをこのような混合物系にすることにより、得られるポリエステル系樹脂の結晶性を低くできるため、表裏層として用いた場合、表裏層の結晶化の進行を抑えることができるため好ましい。
【0042】
好ましいジオール残基混合物としては、例えば、第1残基として前記エチレングリコール残基、第2残基として1,4−ブタンジオール残基、ネオペンチルグリコール残基、ジエチレングリコール残基、ポリテトラメチレングリコール残基及び1,4−シクロヘキサンジメタノール残基からなる群から選ばれる少なくとも1種、好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を用いたものが挙げられる。
【0043】
また、好ましいジカルボン酸残基混合物としては、例えば、第1残基としてテレフタル酸残基、第2残基としてイソフタル酸残基、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基、コハク酸残基及びアジピン酸残基からなる群より選ばれる少なくとも一種、好ましくはイソフタル酸残基を用いたものが挙げられる。
【0044】
前記第2残基以下のジカルボン酸残基及びジオール残基の総量に対する含有率の下限値は、前記ジカルボン酸残基の総量(100モル%)と前記ジオール残基の総量(100モル%)との合計(200モル%)に対して、10モル%以上、好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上である。また、前記含有率の上限値は50モル%以下、好ましくは45モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下である。前記2残基以下の残基の含有量が10モル%以上であれば、得られるポリエステルの結晶化度を低く抑えることができる。一方、前記2残基以下の残基の含有率が50モル%以下であれば、第1残基の長所を活かすことができる。
【0045】
例えば、ジカルボン酸残基がテレフタル酸残基、ジオール残基の第1残基がエチレングリコール残基、第2残基が1,4−シクロヘキサンジメタノール残基である場合、第2残基である1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の含有量は、ジカルボン酸残基であるテレフタル酸残基の総量(100モル%)と、エチレングリコール残基及び1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の総量(100モル%)の合計(200モル%)に対して10モル%以上、好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上であり、上限が50モル%以下、好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下である。この範囲でジオール残基としてエチレングリコール残基及び1,4−シクロヘキサンジメタノール残基を用いることにより、得られるポリエステルの結晶性がほとんどなくなり、かつ耐破断性も向上できる。
【0046】
表裏層で用いられるポリエステル系樹脂の重量(質量)平均分子量の下限値は30,000以上、好ましくは35,000以上である。また、上限値は80,000以下、好ましくは75,000以下、さらに好ましくは70,000以下である。重量(質量)平均分子量が30,000以上であれば、適度な樹脂凝集力が得られ、フィルムの強伸度が不足したり、脆化したりすることを抑えることができる。一方、重量(質量)平均分子量が80,000以下であれば、溶融粘度を下げることができ、製造、生産性向上の観点からは好ましい。
【0047】
表裏層で用いられるポリエステル系樹脂の極限粘度(IV)の下限値は0.5dl/g以上、好ましくは0.6dl/g以上、さらに好ましくは0.7dl/g以上である。また、上限値は1.5dl/g以下、好ましく1.2dl/g以下、さらに好ましくは1.0dl/g以下である。極限粘度(IV)が0.5dl/g以上であれば、フィルム強度特性の低下を抑えることができる。一方、極限粘度(IV)が1.5dl/g以下であれば、延伸張力の増大に伴う破断等を防止できる。
【0048】
上記ポリエステル系樹脂の市販品としては、例えば、「PETG copolyester6763」(イーストマンケミカル社製)、「SKYGREEN PETG」(SKケミカル社製)などが挙げられる。
【0049】
また、本発明のフィルムの表裏層においては、ポリブチレンテレフタレートやポリエーテルを共重合したポリブチレンテレフタレート等に代表される結晶性ポリエステル系樹脂を混合することも有用である。先に述べたように熱収縮性フィルムを使用する場合は、通常、印刷及び溶剤を用いた製袋工程が伴うため、印刷適性及び溶剤シール性を向上させるために構成材料自体の結晶性を下げることが必要となる。しかし、構成材料の樹脂を完全に非晶性としてしまうと、熱収縮性フィルムとして十分に要求特性を満足させることが困難となる。したがって、用途によっては適度な結晶性を付与させることが好ましい場合もある。
【0050】
また、非晶性ポリエステル系樹脂のみからなる熱収縮性フィルムは、その粘弾性特性に応じて急激な収縮カーブの立ち上がりと、非常に高い収縮応力を有している。一方、結晶性ポリエステル系樹脂を混合し、適度な結晶性を付与すると、高温時における熱収縮率が低減し、その結果、熱収縮カーブ曲線が緩やかになるため、フィルムの収縮仕上がり性の向上を期待できる。
【0051】
さらに、結晶性ポリエステル系樹脂を混合して結晶性を付与することにより、延伸後のフィルムの厚み精度を向上させることができる。延伸加工の初期段階において、加熱されるフィルムを部分的に見た場合、不均一な温度分布を示すことがある。この場合、高温部分から延伸が開始される。使用する樹脂が非晶性ポリエステル系樹脂の場合、延伸されて薄くなった部分がより延伸され、フィルム全体が不均一な延伸となる。しかし、結晶性ポリエステル系樹脂を混合して結晶性を付与した場合、初期に延伸された部分は薄くなるが、配向結晶化により延伸応力が大きくなるため、非延伸部分が延伸され易くなる。その結果、フィルム全体で均一に延伸することができ、厚み精度を向上できる。
【0052】
上記結晶性ポリエステル系樹脂を表裏層に混合する場合、表裏層を構成するポリエステル系樹脂の総量に対して1質量部以上、好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上とし、かつ33質量部以下、好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは18質量部以下として含有させることができる。結晶性ポリエステル系樹脂の含有量が1質量部以上であれば、フィルムに適度な結晶性を付与でき、かつフィルムの収縮が緩やかになるため、良好な収縮仕上がり性が期待できる。また結晶性ポリエステル系樹脂の含有率が33質量部以下であれば、フィルムの腰の強さと収縮特性を維持でき、また印刷適性と溶剤シール性を阻害することなく、熱収縮フィルムとして好適に使用できる。
【0053】
また、表裏層で用いられるポリエステル系樹脂は、上記ポリエステル系樹脂の他に、ハードセグメントとして高融点・高結晶性の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントとして非晶性ポリエステルや非晶性ポリエーテルなどで構成されている熱可塑性ポリエステル系エラストマー(市販品としては、例えば「プリマロイ」(三菱化学社製)、「ペルプレン」(東洋紡績社製)など)も適宜含有させてもよい。また、これらは単独、又は2種以上を上記ポリエステル系樹脂に含有させてもよい。
【0054】
<接着層>
本発明のフィルムの第2態様は、前記中間層と前記表裏層の間に接着性の向上を目的とした接着層を有している態様である。
【0055】
接着層を構成する材料は、再生添加後にフィルム全体の透明性を維持する観点から、軟質スチレン系樹脂、変性スチレン系樹脂、及び表裏層と中間層で用いられる複合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種又はそれらの混合物を用いることが好ましい。
【0056】
軟質スチレン系樹脂は、スチレン成分を10質量%以上、好ましくは15質量%以上、かつ50質量%以下、好ましくは30質量%以下と、エラストマー成分とからなる樹脂である。エラストマー成分として好適に用いられる樹脂としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどの共役ジエン系炭化水素が挙げられ、より具体的にはスチレンとブタジエンとの共重合体(SBS)エラストマー、スチレンとイソプレンとの共重合体(SIS)エラストマー等が挙げられる。軟質スチレン系樹脂の具体例としてはたとえば「ハイブラー」(クラレ)等が市販され、好適に使用できる。
【0057】
また、前記軟質スチレン系樹脂としては、SBSエラストマーやSISエラストマーに水素を添加した樹脂(SEBS、SEPS)を用いることもできる。水素を添加したエラストマーの具体的な商品としては、例えば「タフテックHシリーズ」(旭化成ケミカルズ)等が好適に用いられる。
【0058】
接着層に用いる軟質スチレン系樹脂として、中間層に用いる共重合体B又は共重合体B’を好適に用いることもできる。中間層で用いられる樹脂と同一の樹脂を接着層で用いることにより、接着層と中間層との相溶性がさらに高まり、層関接着強度(層間剥離強度)をより向上させることができるため好ましい。また、同一の樹脂を用いることで、再生添加時のフィルムの白濁化も抑制できるため好ましい。
【0059】
変性スチレン系樹脂としては、エラストマー成分が多く含まれる変性スチレン系エラストマーが好適に用いられ、中でもSEBS及びSEPSの変性体が好ましく用いられる。具体的には、無水マレイン酸変性SEBS、無水マレイン酸変性SEPS、エポキシ変性SEBS、エポキシ変性SEPSなどが挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも1種が用いられる。変性スチレン系樹脂の具体的な商品としては、水添スチレン系熱可塑性エラストマーに反応性の高い官能基で変性したポリマー「タフテックM1943」(旭化成ケミカルズ)や「極性基変性ダイナロン」(JSR)やエポキシ化熱可塑性エラストマー「エポフレンド」(ダイセル化学)等が挙げられる。
【0060】
接着層は、表裏層であるポリエステル系樹脂と、中間層である芳香族系炭化水素及び共役ジエン系炭化水素との共重合体との混合樹脂も好適に用いることができる。
【0061】
接着層の好ましいスチレン含有率は、接着層を構成する共重合体又はその水素添加誘導体中10質量%以上、好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。またスチレン含有量の上限は50質量%、好ましくは40質量%、さらに好ましくは30質量%である。スチレン含有率が50質量%以下であれば、接着層の柔軟性が低下させることなく、さらにフィルムに応力が加わった場合に、表裏層と中間層の間に生じる応力への緩衝作用が働くため、層間剥離を抑えることができる。
【0062】
また、接着層に共役ジエン部分のビニル結合を主とした二重結合が存在する場合には、表裏層のポリエステル系樹脂と親和性が働くため、層間接着強度(層間剥離強度)を向上させることができるため好ましい。
【0063】
接着層で用いられるスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体の水素添加誘導体は、スチレンと共役ジエン系炭化水素とのランダム共重合体の水素添加誘導体を好ましく用いることができる。スチレンと共役ジエン系炭化水素とのランダム共重合体の水素添加誘導体の詳細な内容及びその製造方法については、特開平2−158643号、特開平2−305814号及び特開平3−72512号の各公報に開示されている。
【0064】
本発明のフィルムは、表裏層、中間層、接着層へ上述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、成形加工性、生産性及び熱収縮性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で、フィルムの耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を適宜添加できる。
【0065】
本発明のフィルムは、さらに耐熱性を付与するための層(以下「耐熱層」という。)を表裏層上に形成することができる。耐熱層を構成する原料としては、例えば各種の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、従来は帯電防止剤や静電気防止剤として用いること、及び所定の樹脂と共に混合してフィルム表面にコート層を形成することにより帯電防止又は静電気防止の効果を付与し得ることについては、従来知られていた。しかし、界面活性剤が耐熱性を付与できることについてはこれまで知られていない。本発明者は、界面活性剤につき鋭意検討した結果、界面活性剤(特にカチオン系界面活性剤又は両性界面活性剤)を表面層(S層)上に積層させることにより、フィルムの耐熱性が向上することを見出した。このような耐熱層を表面層(S層)上に形成することにより、例えば、加温販売用のPETボトルを加温器で加熱した際に、PETボトルに装着されたフィルムが加熱板に融着すること、並びにPETボトルに装着されたフィルム同士が融着するのを有効に防止できる。
【0066】
上記界面活性剤は、特に限定されず、種々の界面活性剤を用いることができる。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸アミン塩、アルキルホスフェート型、アルキルサルフェート型、アルキルアリルサルフェート型等の低分子系のもののほか、ポリアルキレンサルフェート及びその共重合体のような高分子系のものも例示できる。また、カチオン系界面活性剤としては、アルキルアミンサルフェート型、第四級アンモニウム塩型、第四級アンモニウム樹脂型、ピリジウム塩、モルホリン誘導体等を例示できる。また、非イオン系界面活性剤としては、ソルビタン型、エーテル型、アミン型、アミド型、エタノールアミド型、脂肪酸グリセリンエステル、アルキルポリエチレンイミン等を例示できる。また両性イオン系界面活性剤としては、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン誘導体、N−アルキル、β−アラニン型等を例示できる。
【0067】
上記耐熱層は、上記界面活性剤を溶媒に溶解させた状態の塗布液を塗布することにより形成できる。媒体としては、水や水と水溶性有機溶剤との混合溶剤を用いるのができる。前記水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、1,2‐プロピレンアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール類又はその誘導体、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン類、その他、水溶性エーテル類、水溶性エステル類等が好ましいものとして挙げられる。
【0068】
表裏層への塗布方法としては、例えば、スプレーコート法、エアーナイフコート法、リバーコート法、キスコート法、グラビヤコート法、リバースロールコート法、ダイコート法、マイヤーバー法、ロールブラッシュ法、バーコート法、リバースキスコート法、オフセットグラビアコート法、ドクターブレード法、カーテンコート法、ディッピング法等を単独又は組み合わせて適用することができる。塗布液の塗布量は、特に限定されることはないが、所望の耐熱効果を得るには例えば、固形分として0.0005g/m2以上0.5g/m2以下、好ましくは0.001g/m2以上0.1g/m2以下の範囲であることが好ましい。
【0069】
<フィルムの層構成>
本発明の熱収縮性フィルムは、中間層と、該中間層の両面に積層された表裏層から構成される少なくとも3層構成のものであれば、層構成は特に限定されるものではない。ここで、「中間層の両面に積層された表裏層」とは、中間層に隣接して表裏層が積層される場合(第一の態様)のみならず、中間層と表裏層の間に第3の層(例えば、第二の態様)を有する場合も含まれる。また、中間層は表裏層と同様の層を含んでいても構わない。
【0070】
本発明において、フィルムの積層構成は、表裏層/中間層/表裏層からなる3層構成であり、より好ましい層構成は表裏層/接着層/中間層/接着層/表裏層からなる5層構成である。この層構成を採用することにより、本発明の目的であるフィルムの腰(常温での剛性)、収縮仕上がり性、再生添加時の透明性、自然収縮に優れ、かつフィルムの層間剥離が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムを生産性、経済性よく得ることができる。
【0071】
次に、本発明の好適な実施形態の例である表裏層と中間層とからなる表裏層/中間層/接着層の3層構成のフィルム、及び表裏層/接着層/中間層/接着層/表裏層からなる5層構成のフィルムについて説明する。
【0072】
各層の厚み比は、上述した作用効果を考慮して設定すればよく、特に限定されるものではない。表裏層のフィルム全体の厚みに対する厚み比は10%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%であり、前記厚み比の上限は50%以下、好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下である。また中間層のフィルム全体の厚みに対する厚み比は、20%以上、好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上であり、上限は80%以下、好ましくは75%以下、さらに好ましくは70%以下である。
【0073】
中間層と表裏層との間に接着層を有する場合、接着層はその機能から、0.5μm以上、好ましくは0.75μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、上限は6μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0074】
表裏層上に耐熱層を配設する場合、耐熱層は0.0006g/m2以上、好ましくは0.0015g/m2以上、さらに好ましくは0.0045g/m2以上となるように塗布する。所望の耐熱性が得られれば必要以上に塗布する必要はなく、コストと照らし合わせて塗布量と厚みの最大値を設定することができる。
【0075】
各層の厚み比が上記範囲内であれば、フィルムの腰強さ(常温での剛性)、耐破断性、収縮仕上がり性、再生添加時の透明性、自然収縮に優れ、かつフィルムの層間剥離が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や収縮ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムがバランスよく得ることができる。
【0076】
本発明のフィルムの総厚みは特に限定されるものではないが、透明性、収縮加工性、原料コスト等の観点からは薄い方が好ましい。具体的には延伸後のフィルムの総厚みが80μm以下であり、好ましくは70μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下であり、最も好ましくは40μm以下である。また、フィルムの総厚みの下限は特に限定されないが、フィルムのハンドリング性を考慮すると、20μm以上であることが好ましい。
【0077】
<物理的・機械的特性>
本発明のフィルムは、腰強さ(常温での剛性)の点から、フィルム主収縮方向と直交する方向の引張弾性率が1200MPa以上であることが重要であり、より好ましくは1300MPa以上、さらに好ましくは1400MPa以上である。また、通常使用される熱収縮性フィルムの引張弾性率の上限値は、3000MPa程度であり、好ましくは2900 MPa程度であり、さらに好ましは2800MPa程度である。フィルムの主収縮方向と直交する方向の引張弾性率が1200MPa以上あれば、フィルム全体としての腰(常温での剛性)を高くすることができ、特にフィルムの厚みを薄くした場合においても、ペットボトルなどの容器に製袋したフィルムをラベリングマシン等で被せる際に、斜めに被ったり、フィルムの腰折れなどで歩留まりが低下したりしやすいなどの問題点が発生し難く、好ましい。上記引張弾性率は、JISK7127に準じて、23℃の条件で測定することができる。
【0078】
また、フィルムの主収縮方向の引張弾性率はフィルムの腰強さが出れば特に制限はないが、1500MPa以上、好ましくは2000MPa以上、さらに好ましくは2500MPa以上であり、上限は6000MPa以下、好ましくは4500MPa以下、さらに好ましくは3500MPa以下であることが好ましい。フィルムの主収縮方向の引張弾性率を上記範囲にすることにより、双方向においてフィルムの腰の強さを高めることができるため好ましい。
【0079】
本発明のフィルムは、80℃温水中10秒浸積したときの熱収縮率が少なくとも一方向において30%以上であることが重要である。これは、ペットボトルの収縮ラベル用途等の比較的短時間(数秒〜十数秒程度)での収縮加工工程への適応性を判断する指標となる。例えばペットボトルの収縮ラベル用途に適用される熱収縮性フィルムに要求される必要収縮率はその形状によって様々であるが一般に20%から70%程度である。
【0080】
また、現在ペットボトルのラベル装着用途に工業的に最も多く用いられている収縮加工機としては、収縮加工を行う加熱媒体として水蒸気を用いる蒸気シュリンカーと一般に呼ばれているものである。さらに熱収縮性フィルムは被覆対象物への熱の影響などの点からできるだけ低い温度で十分熱収縮することが必要である。このような工業生産性も考慮して、上記条件における熱収縮率が30%以上のフィルムであれば、収縮加工時間内に十分に被覆対象物に密着することができるため好ましい。これらのことから、80℃温水中10秒浸積したときの熱収縮率は、少なくとも一方向、通常主収縮方向に30%以上、好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上であり、上限は70%以下、好ましくは65%以下、さらに好ましくは60%以下であることが望ましい。
【0081】
また、本発明のフィルムが熱収縮性ラベルとして用いられる場合、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率は、80℃温水中で10秒間加熱したときは10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が10%以下のフィルムであれば、収縮後の主収縮方向と直交する方向の寸法自体が短くなったり、収縮後の印刷柄や文字の歪み等が生じやすかったり、角型ボトルの場合においては縦ひけ等のトラブルが発生し難く、好ましい。
【0082】
本発明のフィルムは、70℃温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率が5%以上、好ましくは7%以上、さらに好ましくは10%以上であり、上限は30%以下、好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下であることが望ましい。70℃におけるフィルム主収縮方向の熱収縮率を5%以上とすることにより、蒸気シュリンカーでボトル装着を行う際に、局部的に発生し得る収縮ムラを抑え、結果的にシワ、アバタ等の形成を抑えることができる。また、熱収縮率の上限を25%以下とすることにより、低温における極端な収縮を抑えることができ、例えば、夏場などの高温環境下においても自然収縮を小さく維持することができる。
また、70℃温水中で10秒間加熱したときのフィルムの主収縮方向と直交する方向の熱収縮率は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
【0083】
本発明のフィルムは、70℃温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率と80℃温水中で10秒間加熱したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率との差が40%以下、好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下であることが望ましい。70℃と80℃における熱収縮率差を40%以下とすることにより、蒸気シュリンカーでボトル装着を行う際に、蒸気の温度ムラ等に起因する収縮ムラを抑え、結果的にシワ、アバタ等の形成を抑えることができる。
【0084】
本発明のフィルムの自然収縮率はできるだけ小さいほうが望ましいが、一般的に熱収縮性フィルムの自然収縮率は、例えば、30℃で30日保存後の自然収縮率が3.0%以下、好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下であることが望ましい。上記条件下における自然収縮率が3.0%であれば作製したフィルムを長期保存する場合であっても容器等に安定して装着することができ、実用上問題を生じにくい。
【0085】
本発明のフィルムの透明性は、例えば、厚み50μmのフィルムをJIS K7105に準拠して測定した場合、ヘーズ値は10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。ヘーズ値が10%以下であれば、フィルムの透明性が得られ、ディスプレー効果を奏することができる。
【0086】
また、本発明のフィルムは、中間層が表裏層及び/又は接着層を構成する樹脂を含有する場合であっても、厚み50μmのフィルムをJIS K7105に準拠して測定した場合におけるヘーズ値が10%以下、好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下であることが好ましい。再生添加後のヘーズ値が10%以下であれば、再生フィルムにおける良好な透明性を維持することができる。
【0087】
本発明のフィルムの耐破断性は、引張破断伸度により評価され、0℃環境下の引張破断試験において、特にラベル用途ではフィルムの引き取り(流れ)方向(MD)で伸び率が100%以上、好ましくは200%以上、さらに好ましくは300%以上である。0℃環境下での引張破断伸度が100%以上であれば、印刷・製袋などの工程時にフィルムが破断するなどの不具合を生じにくくなり、好ましい。また、印刷・製袋などの工程のスピードアップにともなってフィルムに対してかかる張力が増加するような際にも、引張破断伸度が200%以上あれば破断しづらく、さらに好ましい。
【0088】
本発明のフィルムのシール強度は、後述する実施例で記載された測定方法(23℃50%RH環境下で、T型剥離法にてTD方向に試験速度200mm/分で剥離する方法)を用いて3N/15mm幅以上、好ましくは5N/15mm幅以上、より好ましくは7N/15mm幅以上であり、かつ15N/15mm幅以下、12N/15mm幅以下である。本発明のフィルムは、シール強度が少なくとも3N/15mm幅であるため、使用時にシール部分が剥がれてしまう等のトラブルが生じることもない。また、本発明のフィルムを熱収縮させた後における層間剥離強度も良好であり、熱収縮前の前記層間剥離強度と同等の強度を維持することができる。
【0089】
<フィルムの製造方法>
本発明のフィルムは、公知の方法によって製造することができる。フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という点から平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、複数の押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから共押出し、チルドロールで冷却固化し、縦方向にロール延伸をし、横方向にテンター延伸をし、アニールし、冷却し、(印刷が施される場合にはその面にコロナ放電処理をして、) 巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。また、チューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も適用できる。
【0090】
延伸倍率はオーバーラップ用等、二方向に収縮させる用途では、縦方向が2倍以上10倍以下、横方向が2倍以上10倍以下、好ましくは縦方向が3倍以上6倍以下、横方向が3倍以上6倍以下程度である。一方、熱収縮性ラベル用等、主として一方向に収縮させる用途では、主収縮方向に相当する方向が2倍以上10倍以下、好ましくは4倍以上8倍以下、それと直交する方向が1倍以上2倍以下(1倍とは延伸していな場合を指す)、好ましくは1.1倍以上1.5倍以下の、実質的には一軸延伸の範疇にある倍率比を選定することが望ましい。上記範囲内の延伸倍率で延伸した二軸延伸フィルムは、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率が大きくなりすぎることはなく、例えば、収縮ラベルとして用いる場合、容器に装着するとき容器の高さ方向にもフィルムが熱収縮する、いわゆる縦引け現象を抑えることができるため好ましい。
【0091】
延伸温度は、用いる樹脂組成物のガラス転移温度や熱収縮性フィルムに要求される特性によって変える必要があるが、概ね60℃以上130℃以下、好ましくは70℃以上110℃以下の範囲で制御される。
【0092】
次いで、上記延伸温度及び倍率で延伸したフィルムは、必要に応じて、自然収縮率の低減や熱収縮特性の改良等を目的として、50℃以上100℃以下程度の温度で熱処理や弛緩処理を行った後、分子配向が緩和しない時間内に速やかに冷却され、熱収縮性フィルムとなる。
【0093】
また本発明のフィルムは、必要に応じてコロナ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面処理や表面加工、さらには、各種溶剤やヒートシールによる製袋加工やミシン目加工などを施すことができる。
【0094】
本発明のフィルムは、被包装物によってフラット状から円筒状等に加工して包装に供される。ペットボトル等の円筒状の容器で印刷を要するものの場合、まずロールに巻き取られた広幅のフラットフィルムの一面に必要な画像を印刷し、そしてこれを必要な幅にカットしつつ印刷面が内側になるように折り畳んでセンターシール(シール部の形状はいわゆる封筒貼り)して円筒状とすれば良い。センターシール方法としては、有機溶剤による接着方法、ヒートシールによる方法、接着剤による方法、インパルスシーラーによる方法が考えられる。この中でも、生産性、見栄えの観点から有機溶剤による接着方法が好適に使用される。
【0095】
[成形品、熱収縮性ラベル及び容器]
本発明のフィルムは、フィルムの低温収縮性、収縮仕上がり性、透明性、自然収縮等に優れているため、その用途が特に制限されるものではないが、必要に応じて印刷層、蒸着層その他機能層を形成することにより、ボトル(ブローボトル)、トレー、弁当箱、総菜容器、乳製品容器等の様々な成形品として用いることができる。特に本発明のフィルムを食品容器(例えば清涼飲料水用又は食品用のPETボトル、ガラス瓶、好ましくはPETボトル)用熱収縮性ラベルとして用いる場合、複雑な形状(例えば、中心がくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱など)であっても該形状に密着可能であり、シワやアバタ等のない美麗なラベルが装着された容器が得られる。本発明の成形品及び容器は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
【0096】
本発明のフィルムは、優れた低温収縮性、収縮仕上がり性を有するため、高温に加熱すると変形を生じるようなプラスチック成形品の熱収縮性ラベル素材のほか、熱膨張率や吸水性等が本発明の熱収縮性フィルムとは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いた包装体(容器)の熱収縮性ラベル素材として好適に利用できる。
【0097】
本発明のフィルムが利用できるプラスチック包装体を構成する材質としては、上記の樹脂の他、ポリスチレン、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。これらのプラスチック包装体は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
【実施例】
【0098】
以下に本発明について実施例を用いて説明する。
なお、実施例に示す測定値及び評価は次のように行った。実施例では、積層フィルムの引き取り(流れ)方向を「縦」方向、その直角方向を「横」方向と記載する。
【0099】
(1)熱収縮率
フィルムを縦10mm、横100mmの大きさに切り取り、70℃及び80℃の温水バスに10秒間それぞれ浸漬し、収縮量を測定した。熱収縮率は、縦方向及び横方向について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
また、80℃温水中で測定した熱収縮率と、70℃温水中で測定した収縮率の差も%値で表示した。
【0100】
(2)自然収縮率
縦10mm、横1000mmの大きさにフィルムを切り取り、30℃の雰囲気の恒温槽に30日間放置し、主収縮方向について、収縮前の原寸に対する収縮量を測定し、その比率を%値で表示した。
【0101】
(3)引張破断伸度
JIS K7127に準じて、温度0℃、試験速度200mm/分の条件でフィルムの主収縮方向と直交する方向(縦方向)について測定し、以下の数値で評価した。
(◎):引張伸度が300%以上
(○):引張伸度が200%以上300%未満
(×):引張伸度が200%未満
【0102】
(4)シール強度
フィルムの横方向の両端より10mmの位置で、THF90質量%、n−ヘキサン10 質量%からなる混合溶剤を用いて接着し、筒状ラベルを製造した。シール部分を円周と直角方向に5mm幅に切り取り、それを恒温槽付引張試験機((株)インテスコ製「201X」)を使用し、剥離試験を行った。表裏層と中間層とのシール強度を以下の数値で評価した。
(◎):シール強度が5N/15mm幅以上
(○):シール強度が3N/15mm幅以上5N/15mm幅未満
(×):シール強度が3N/15mm幅未満
【0103】
(5)引張弾性率
JIS K7127に準じて、温度23℃の条件でフィルムの主収縮方向と直交する方向(縦方向)について測定した。また、下記の基準で評価した結果も併記した。
(◎):引張弾性率が1300MPa以上
(○):引張弾性率が1200MPa以上1300MPa未満
(×):引張弾性率が1200MPa未満
【0104】
(6)収縮仕上がり性
10mm間隔の格子目を印刷したフィルムを縦100mm×横298mmの大きさに切り取り、横方向の両端を10mm重ねて溶剤等で接着し、円筒状フィルムを作製した。
この円筒状フィルムを、容量1.5Lの円筒型ペットボトルに装着し、蒸気加熱方式の長さ3.2m(3ゾーン)の収縮トンネル中を回転させずに、約4秒間で通過させた。各ゾーンでのトンネル内雰囲気温度は、蒸気量を蒸気バルブで調整し、70〜85℃の範囲とした。フィルム被覆後は下記基準で評価した。
(◎):収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みが全く生じない
(○):収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みがごく僅かに生じる
(×):収縮は十分だがシワ、アバタ、格子目の歪みが顕著に生じる
【0105】
(7)ヘーズ値
JIS K7105に準拠してフィルム厚み50μmでフィルムのヘーズ値を測定し、%値で表示した。
【0106】
(8)リターン後のフィルムのヘーズ値
得られたフィルムを粉砕器を用いて粉砕し、再生ペレット化した後、フィルム100質量部に対して40質量部に相当する量を中間層(M層)にリターンして、各実施例と同様、再生添加フィルムを得た。得られた厚み50μmのフィルムを用いて、JIS K7105に準拠してヘーズ値を測定した。また、下記の基準で評価した結果も併記した。
(◎):ヘーズ値が7%未満
(○):ヘーズ値が7%以上10%未満
(×):ヘーズ値が10%以上
【0107】
[実施例1]
表1に示すように、ポリエステル系樹脂として、イーストマンケミカル社製copolyester6763(以下「PETGと略称する」)を表裏層とし、芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素の共重合体Aとして、SBS(スチレン/ブタジエン=90/10、貯蔵弾性率E’=2.5×109Pa、損失弾性率E”ピーク温度=54℃、ビカット軟化点=76℃、以下「SBS−A1」と略称する。)45質量%とSBS(スチレン/ブタジエン=71/29、貯蔵弾性率E’=2.1×108Pa、損失弾性率E”ピーク温度=−46℃及び84℃、ビカット軟化点=69℃、以下「SBS−A2」と略称する。)55質量%との混合樹脂組成物100質量部に対し、芳香族系炭化水素と炭素数5以下の共役ジエン系炭化水素の共重合体BとしてSIS(JSRクレイトンポリマー社製クレイトンD1124、スチレン含有量30%)(以下「SBS−B」と略称する)を20質量部とし、酸化防止剤(住友化学社製、商品名:スミライザーGS)0.3質量部を添加した樹脂組成物を中間層として、それぞれ別個の三菱重工業株式会社製単軸押出機に投入し、設定温度230℃で溶融混合後、各層の厚みが表裏層/中間層/表裏層=45μm/160μm/45μmとなるよう2種3層ダイスより共押出し、50℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて幅300mm、厚さ250μmの未延伸積層シートを得た。次いで、京都機械株式会社製フィルムテンターにて、予熱温度110℃、延伸温度94℃で横一軸方向に5.0倍延伸した後、冷風で急冷して、厚さ50μmの熱収縮性積層フィルムを得た。また、得られた熱収縮フィルムを粉砕器にて粉砕して再生ペレット化した後、フィルム100質量部に対して40質量部に相当する量を中間層に再生添加して、上記と同様にして再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。再生添加を行った後の中間層の樹脂組成は、中間層を構成するスチレン系樹脂組成物100質量部に対し、表裏層を構成する樹脂組成物が25質量部であった。
評価項目の全てが◎であったフィルムを(◎)、○が含まれるフィルムを(○)、1つでも×があったフィルムを(×)として総合評価した。評価した結果を表2に示す。
【0108】
[実施例2]
表1に示すように、接着層としてSBS−Bを用い、各層の厚みが表裏層/接着層/中間層/接着層/表裏層=40μm/ 10μm/150μm/10μm/40μmとなるよう3種5層ダイスより共押出して未延伸積層シートを調製した以外は、実施例1と同様の方法により熱収縮性積層フィルムを得たまた、実施例1と同様にして再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。再生添加を行った後の中間層の樹脂組成は、中間層を構成するスチレン系樹脂組成物100質量部に対し、表裏層を構成する樹脂が25質量部、接着層を構成する樹脂が4質量部であった。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
【0109】
[実施例3]
表1に示すように、中間層で用いたSBS−Bの含有率を5質量%に変更した以外は、実施例2と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。また上記と同様にして再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。再生添加を行った後の中間層の樹脂組成は、中間層を構成するスチレン系樹脂組成物100質量部に対し、表裏層を構成する樹脂が24質量部、接着層を構成する樹脂が4質量部であった。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
【0110】
[実施例4]
表1に示すように、中間層で用いたSBS−BをSEPS(クラレ社製セプトン2007、スチレン含有量30%)(以下「SEPS」と略称する)に変更し、接着層に用いたSBS−Bを酸変性SEBS(旭化成ケミカルズ社製タフテックM1913、スチレン含有量30%、以下「SEBS−A」と略称する。)に変更した以外は、実施例3と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。また、上記と同様にして再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。再生添加を行った後の中間層の樹脂組成は、中間層を構成する樹脂100質量部に対し、表裏層を構成する樹脂が24質量部、接着層を構成する樹脂が4質量部であった。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
【0111】
[実施例5]
表1に示すように、中間層で用いたSBS−BをSEBS(旭化成ケミカルズ社製タフテックH1041、スチレン含有量30%、以下「SES−B」と略称する。)に変更し、接着層で用いたSBS−BをSEBS(旭化成ケミカルズ社製タフテックH1051、スチレン含有量42%)(以下「SEBS−C」と略称する)に変更した以外は、実施例3と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。また上記と同様にして再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。再生添加を行った後の中間層の樹脂組成は、中間層を構成する樹脂100質量部に対し、表裏層を構成する樹脂が24質量部、接着層を構成する樹脂が4質量部であった。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
【0112】
[比較例1]
表1に示すように、中間層にSBS−Bを含有せず、接着層を有さず、かつ未延伸積層シートでの各層の厚みが表裏層/中間層/表裏層=45μm/160μm/45μmと変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。また上記と同様にして再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。再生添加を行った後の中間層の樹脂組成は、中間層を構成するスチレン系樹脂組成物100質量部に対し、表裏層を構成する樹脂組成物が24質量部であった。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
【0113】
[比較例2]
表1に示すように、接着層で用いたSBS−Bをエチレン−アクリル酸共重合体(日本ポリエチ社製ノバテックAT210K、アクリル酸含有率7質量%)「EAA」と略称する)に変更した以外は、実施例2と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。また上記と同様にして再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。再生添加を行った後の中間層の樹脂組成は、中間層を構成するスチレン系樹脂組成物100質量部に対し、表裏層を構成する樹脂が25質量部、接着層を構成する樹脂が4質量部であった。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。
【0114】
[比較例3]
表1に示すように、中間層に用いたSBS−Bの含有率を40質量%に変更した以外は、実施例2と同様に熱収縮性積層フィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表2に示す。上記と同様にして再生添加後の熱収縮性積層フィルムを得た。再生添加を行った後の中間層の樹脂組成は、中間層を構成するスチレン系樹脂組成物100質量部に対し、表裏層を構成する樹脂組成物が25質量部、接着層を構成する樹脂が4質量部であった。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
表1より本発明で規定する範囲内の層により構成された実施例1乃至5のフィルムは、腰強さ(積層フィルムの引張弾性率)、層間剥離強度、リターン後の透明性が比較例1〜3よりも優れ、また収縮仕上がり性も比較例1〜3と同等以上であった。
これに対し、中間層にSBS−Bを有さず、かつ接着層を有しない場合(比較例1)には充分なシール強度が得られず、試験の途中で層間剥離が起こった。また、接着層を構成する樹脂としてエチレン−アクリル酸共重合体を用いた場合(比較例2)には、リターン後のヘーズ値が低下した。また、中間層に用いたSBS−Bの質量%が本発明で規定する量よりも多い場合(比較例3)には、積層フィルム全体の引張弾性率が低下し、得られたフィルムは充分な腰強さが得られなかった。
これより、本発明のフィルムは、腰強さ(常温での剛性)、再生添加時の透明性、収縮仕上がり性、自然収縮性に優れ、かつフィルムの層間剥離が抑制された、収縮包装、収縮結束包装や熱収縮性ラベル等の用途に適した熱収縮性積層フィルムであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明のフィルムは、優れた耐破断性、剛性、収縮仕上がり性及びシール強度を有するため、熱収縮性を必要とする成形品、特にシュリンクラベル等に好適に利用することができる。また、製造工程において中間層にリターン可能であるためコスト的にも非常に有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層と該中間層の両面に積層された表裏層の少なくとも3層からなる熱収縮性積層フィルムであって、
前記中間層は、芳香族系炭化水素50質量%以上を含有する、芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体(A)と、該共重合体(A)100質量部に対し、芳香族系炭化水素50質量%未満を含有する、芳香族系炭化水素と炭素数5以下の共役ジエン系炭化水素との共重合体(B)又はその水素添加誘導体(B’)1〜30質量部との混合樹脂を主成分とし、
前記表裏層は、ポリエステル系樹脂からなることを特徴とする熱収縮性積層フィルム。
【請求項2】
前記中間層が該中間層を構成する樹脂100質量部に対し、前記表裏面層を構成する樹脂1質量部以上100質量部以下を含む請求項1に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステル系樹脂が、ジカルボン酸残基及びジオール残基からなり、前記ジカルボン酸残基及び前記ジオール残基の少なくとも一方が2種以上の残基で構成され、前記2種以上の残基のうち最多残基を除いた残基の合計の含有率が前記ジカルボン酸残基の総量(100モル%)と前記ジオール残基の総量(100モル%)との合計(200モル%)に対して10モル%以上50モル%以下である請求項1又は2に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項4】
前記中間層の芳香族系炭化水素がスチレン系炭化水素である請求項1乃至3のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項5】
前記中間層の芳香族系炭化水素がスチレン系炭化水素であり、かつ前記炭素数5以下の共役ジエン系炭化水素がブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2−メチル−1, 3−ブタジエン、及びこれらの水素添加誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項6】
前記中間層と前記表裏層との間に少なくとも1層の接着層をさらに有する請求項1乃至5のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項7】
前記中間層が該中間層を構成する樹脂100質量部に対し、前記接着層を構成する樹脂1質量部以上30質量部以下を含む請求項6に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項8】
前記接着層が、軟質スチレン系樹脂、変性スチレン系樹脂、及び前記表裏層と前記中間層で用いられる樹脂の混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種で構成される請求項6又は7に記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項9】
70℃温水に10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率と、80℃温水に10秒間浸漬したときのフィルム主収縮方向の熱収縮率との差が40%以下である請求項1乃至8のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項10】
JIS K7127に準拠して測定されたフィルム主収縮方向と直交する方向の0℃における引張破断伸度が200%以上である請求項1乃至9のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項11】
JIS K7105に準拠して測定されたヘーズ値が10%以下である請求項1乃至10のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項12】
23℃50%RHの環境下で引張速度200mm/分で剥離したときのシール強度が3N/15mm幅以上である請求項1乃至11のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた成形品。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれかに記載の熱収縮性積層フィルムを基材として用いた熱収縮性ラベル。
【請求項15】
請求項13に記載の成形品又は請求項14に記載の熱収縮性ラベルを装着した容器。

【公開番号】特開2006−159903(P2006−159903A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326760(P2005−326760)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】