説明

熱収縮性筒状ラベル

【課題】種々の異種積層フィルムから構成される熱収縮性筒状ラベルにおいて、熱収縮過程での層間剥離を高度に防止できる熱収縮性筒状ラベルを提供することである。
【解決手段】熱収縮性筒状ラベル10は、樹脂組成が互いに異なった異種材フィルムからなる表面層13a、中心層14、表面層13bを含む熱収縮性の異種積層フィルム11と、異種積層フィルム11の一方の側端が外側、他方の側端が内側となるように側縁部同士を重ね合わせて筒状体とし、重ね合わされた重畳部を接合して形成されるセンターシール部12と、センターシール部12で筒状体の外側に位置する異種積層フィルム11の一方の重畳部にレーザー光を照射することで形成される第1貫通孔15と、当該レーザー光の照射により第1貫通孔15の周縁の表面層13aが溶融して形成される溶着部17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性筒状ラベルに関し、より詳しくは、熱収縮性の異種積層フィルムから構成される熱収縮性筒状ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性ラベルは、プラスチック製ボトル等に充填された各種飲料製品やトイレタリー製品のラベルとして広く使用されている。熱収縮性ラベルの分野においては、熱収縮性フィルムに、様々な異なる特性を付与する目的で、樹脂組成が異なる異種材フィルムを積層した異種積層フィルムが用いられている。
【0003】
熱収縮性ラベルは、異種積層フィルム等の熱収縮性フィルムの一方の側端が外側、他方の側端が内側となるように側縁部同士を重ね合わせて筒状体としてから容器に熱収縮装着されることが多く、筒形状を維持するために当該側縁部同士を接合(シール)する接合部(以下、センターシール部とする)が形成される。一般的に、センターシール部は、熱収縮性フィルムの側縁部に溶剤を塗布して溶着する方法で形成される。
【0004】
筒状体とされた熱収縮性ラベル(熱収縮性筒状ラベル)は、装着時の加熱処理により筒状体の周方向に熱収縮し、容器の形状に追従して装着される。この熱収縮過程では、センターシール部にも大きな収縮応力が作用する。そして、ラベルを構成する熱収縮性フィルムとして異種積層フィルムを用いた場合には、各層の熱収縮速度の違いに起因して、センターシール部で層間剥離が発生し易いという問題がある。そこで、センターシール部での層間剥離を防止するために、層間に設けられる接着剤を改良して各層の接着強度を高める等の方法が検討されている。また、特許文献1に開示されるように、異種積層フィルムの樹脂組成を改良する方法も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009‐178887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、接着剤を改良する方法では、他の特性に影響を与えることなく層間剥離を十分に防止することは困難である。例えば、耐熱性の高い樹脂を含む接着剤を使用すると、樹脂が硬くなるため、ラベルの折り目が白化するという問題を生じる。一方、柔軟性の高い樹脂を含む接着剤を使用すると、センターシール部を形成する際の溶剤や印刷層を形成する際の残留溶剤等により接着剤が可塑化され易く、層間剥離を防止することができない。また、異種積層フィルムの樹脂組成を改良する方法では、樹脂組成が大幅に限定されるという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、種々の異種積層フィルムから構成される熱収縮性筒状ラベルにおいて、熱収縮過程での層間剥離を高度に防止することが可能な熱収縮性筒状ラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る熱収縮性筒状ラベルは、樹脂組成が互いに異なった異種材フィルムからなる第1層および第2層を含む熱収縮性の異種積層フィルムと、異種積層フィルムの一方の側端が外側、他方の側端が内側となるように重ね合わせて筒状体とし、重ね合わされた重畳部を接合して形成される接合部と、を備える熱収縮性筒状ラベルにおいて、筒状体の外側に位置する異種積層フィルムの一方の重畳部にレーザー光を照射することで形成される貫通孔又は凹部と、当該レーザー光の照射により貫通孔又は凹部の周縁の第1層が溶融して流動し、一方の重畳部の第1層が一方の側端から筒状体の周方向に突出すると共に、他方の重畳部に隣接する領域の第1層と溶着して形成される溶着部と、を備えることを特徴とする。
なお、貫通孔又は凹部は、重畳部の端、つまり一方の側端にレーザー光を照射することで形成されることが好ましい。
当該構成によれば、貫通孔又は凹部の周縁(周囲)の第1層、即ち接合部で筒状体の外側に位置する一方の重畳部の第1層と、筒状体の内側に位置する他方の重畳部に隣接する領域の第1層とが溶着して溶着部が形成されるので、熱収縮過程で大きな収縮応力が接合部に作用しても、第1層と第2層との層間剥離を防止することができる。
【0009】
また、本発明に係る熱収縮性筒状ラベルにおいて、貫通孔又は凹部は、所定間隔で列状に複数形成されて切断補助線を構成することが好ましい。
当該構成によれば、切断補助線の形成と同時に溶着部を形成することができ、良好な生産性を実現することができる。さらに、切断補助線が接合部に形成されることによって、文字やデザインの表示面積を拡大することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る熱収縮性筒状ラベルによれば、溶着部によって、熱収縮過程での層間剥離を高度に防止することができる。また、切断補助線を形成すると同時に溶着部を形成すれば、生産効率が向上すると共に、切断補助線が接合部に形成されるので、文字やデザインを表示できる面積を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態である熱収縮性筒状ラベルの斜視図である。
【図2】図1において、センターシール部およびその近傍の拡大図である。
【図3】図2のA‐A線断面図である。
【図4】本発明の実施形態である熱収縮性筒状ラベルの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を用いて、本発明に係る熱収縮性筒状ラベルの実施形態について以下説明する。
【0013】
なお、以下の実施形態では、孔縁に溶着部17が形成される貫通孔を第1貫通孔15として、複数の第1貫通孔15から構成される第1切断補助線16および複数の第2貫通孔19から構成される第2切断補助線20の2条の切断補助線を備えるものとして説明するが、切断補助線は第1切断補助線16のみであってもよく、孔縁に溶着部17が形成される貫通孔を切断補助線として利用しない構成であってもよい。
【0014】
また、本明細書では、熱収縮性筒状ラベル10の径方向に直交する方向を上下方向又は縦方向とし、上下方向の端を上端・下端とする。異種積層フィルム11についても、熱収縮性筒状ラベル10の上下方向の端に対応する部分を異種積層フィルム11の上端・下端、上下方向に直交する方向の端を側端として説明する。なお、これらの方向を示す用語は、熱収縮性筒状ラベル10の構成を説明するために用いるものであって、熱収縮性筒状ラベル10の構成要素と、方向との関係を限定するものではない。
【0015】
また、本明細書では、筒形状にされた異種積層フィルム11であって、センターシール部12や第1切断補助線16が形成されていないものについては、筒状体と称して説明することがある。また、周方向や内外など筒形状に関する方向・位置等を用いて説明する場合には、熱収縮性筒状ラベル10についても筒状体と称して説明することがある。
【0016】
図1に示すように、熱収縮性筒状ラベル10は、熱収縮性の異種積層フィルム11と、センターシール部12と、を備える筒状体である。異種積層フィルム11は、その一方の側端が外側、他方の側端が内側となるように側縁部同士を重ね合わせて筒状体とし、重ね合わされた重畳部を接合してセンターシール部12を形成することによって、その筒形状が維持される。本明細書において、「側縁部」の用語は、単に異種積層フィルム11の側端付近の部分(領域)を意味するものとして使用する。そして、「重畳部」は、異種積層フィルム11の各側縁部に含まる部分であって、各側縁部において、センターシール部12が形成されたときに、互いに重なっている部分である。
なお、図1では、熱収縮処理される前の熱収縮性筒状ラベル10であり、重畳領域全体がセンターシール部12である形態を例示している。熱収縮性筒状ラベル10は、その内径よりも小さな直径を有する図示しない容器に被嵌されてから熱収縮処理されることで、容器の形状に追従して装着される。
【0017】
また、熱収縮性筒状ラベル10は、異種積層フィルム11の一方の重畳部にレーザー光を照射することで形成される第1貫通孔15と、複数の第1貫通孔15が列状に並んで構成される第1切断補助線16と、当該レーザー光の照射により第1貫通孔15の縁に形成される溶着部17と、第1切断補助線16の列に沿ってその両側に連続又は断続して延在する第1堤状厚肉部18(図3参照)と、を備える。
なお、熱収縮性筒状ラベル10は、重畳部の近傍に形成される複数の第2貫通孔19と、当該第2貫通孔19が列状に並んで構成される第2切断補助線20と、を備える。そして、第2貫通孔19が第1貫通孔15と同様にレーザー光の照射により形成された場合には、第1堤状厚肉部18と同様に、第2切断補助線20の列に沿って第2堤状厚肉部21(図3参照)が形成される。
【0018】
異種積層フィルム11は、樹脂組成が互いに異なった異種材フィルムからなる第1層である表面層13および第2層である中心層14を含む熱収縮性フィルムである。第1層とは、異種積層フィルム11の筒状体において、外側(以下、表側とも称する)に位置するフィルム層であり、第2層とは、内側(以下、裏側とも称する)に位置するフィルム層を意味する。さらに、異種積層フィルム11では、第3層として中心層14の裏側に第1層と同じ表面層13が積層されている。なお、中心層14の表側の表面層13を表面層13a、中心層14の裏側の表面層13を表面層13bとして説明する(後述の接着剤層22についても同様)。
【0019】
また、異種積層フィルム11は、表面層13aと中心層14との層間および中心層14と表面層13bとの層間に、それぞれ接着剤層22(接着剤層22a,b)を備える(図3参照)。即ち、異種積層フィルム11は、表面層13(13a)/接着剤層22(22a)/中心層14/接着剤層22(22b)/表面層13(13b)から構成される3種5層の構造を有する。
【0020】
また、異種積層フィルム11には、通常、少なくとも表面層13aの表側又は表面層13bの裏側に印刷層が設けられる。印刷層は、例えば、商品名やイラスト、使用上の注意等を表示するための層であって、好ましくは表面層13bの裏側に印刷インキを塗布することで形成される。印刷層の形成には、所望の顔料や染料、アクリル樹脂やウレタン樹脂等のバインダ樹脂、有機溶剤、及び各種添加剤(例えば、可塑剤、滑剤、ワックス、帯電防止剤)等を含む溶剤型インキ、或いは所望の顔料や染料、アクリル樹脂など光重合性樹脂、光重合開始剤、及び上記各種添加剤等を含む紫外線硬化型インキなどが印刷インキとして用いられる。そして、この印刷インキを用いて、表面層13bの裏側等に、グラビア印刷、フレキソ印刷、及び凸版輪転印刷等を行なうことで印刷層を形成することができる。なお、印刷層の厚みは、0.1〜10μmである。
【0021】
異種積層フィルム11には、印刷層の他にも、保護層や帯電防止層等を設けてもよく、さらに、不織布、紙等の層を設けてもよい。特に、印刷層が表面層13aの表側に形成される場合には、印刷層を保護する保護層を設けることが好ましい。
【0022】
表面層13および中心層14には、種々の樹脂組成からなるフィルムを使用でき、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系、ポリスチレン系(PS)、並びにポリ乳酸(PLA)、ポリアミド、およびポリ塩化ビニル等の樹脂、又はこれらの樹脂を2種以上混合した混合物を含むフィルム等から選択されるフィルムを適用することができる。なお、表面層13および中心層14の樹脂組成は特に限定されない。
【0023】
表面層13には、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分とを含むポリエステル系樹脂から構成されるフィルムを用いることができる。ポリエステル系樹脂としては、好ましくは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールを含むポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂が挙げられる。
【0024】
中心層14には、例えば、ポリスチレン系樹脂から構成されるフィルムを用いることができる。ポリスチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体やスチレン‐共役ジエンの共重合体(例えば、スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン‐イソプレン‐スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン‐ブタジエン‐イソプレン‐スチレンブロック共重合体(SBIS)、SBSの水素添加物であるスチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレンブロック共重合体(SEBS)等)が挙げられる。
また、中心層14には、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂を主成分として構成されるフィルムを用いることができる。ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンを構成モノマーに含む重合体であればよく、プロピレンの単独重合体であってもよいし、α−オレフィン等の共重合成分を含む共重合体(プロピレン−α−オレフィン共重合体)であってもよい。好ましくは、メタロセン触媒により重合して得られたポリプロピレン(メタロセン触媒系ポリプロピレン)、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である。また、これらのポリプロピレン系樹脂は、単独で叉は2種以上混合して使用できる。
【0025】
接着剤層22には、例えば、加熱溶融して押出し可能な所謂ホットメルト型接着剤を用いることが好ましい。ホットメルト型接着剤としては、表面層13と中心層14との接着強度を向上させるものであれば特に限定されず、エチレン‐酢酸ビニル共重合体やエチレン‐(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のベース樹脂に、エラストマー(合成ゴム系、オレフィン系、ウレタン系など)、粘着付与剤(石油系、テルペン系、ロジン系など)、及び各種添加剤(例えば、ポリエチレン系ワックス、アミド系滑剤)等を配合したものが挙げられる。
【0026】
異種積層フィルム11は、優れた熱収縮特性を発現するために、少なくとも一方向に延伸された一軸延伸フィルムであることが好ましい。異種積層フィルム11は、その幅方向、即ち筒状体の周方向に対応する方向に熱収縮することが好ましいが、筒状体の上下方向にも熱収縮する二軸延伸フィルムであってもよい。異種積層フィルム11の熱収縮率としては、筒状体の周方向に対して、20〜80%(90℃の温水に10秒間浸漬)であることが好ましく、30〜80%であることが特に好ましい。
【0027】
異種積層フィルム11の厚みとしては、特に限定されないが、10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは15〜80μm、特に好ましくは20〜50μmである。各層の厚みの比率は、例えば、表面層13a:中心層14:表面層13b=1:3:1〜1:8:1である。なお、接着剤層22は、通常、表面層13よりも薄い厚みに設定される。
【0028】
センターシール部12は、熱収縮性筒状ラベル10の筒形状を維持するための接合部であって、異種積層フィルム11の重畳部を溶剤や接着剤で接合(シール)して形成される。一般的に、センターシール部12は、テトラヒドロフラン(THF)等の異種積層フィルム11を溶かすことができる有機溶剤を用いて形成される。具体的には、異種積層フィルム11の一方の重畳部の裏側に上下方向に沿って溶剤を塗布してから、当該溶剤塗布部を他方の重畳部の表側に重ね合わせて溶着することで形成される。
【0029】
第1貫通孔15は、センターシール部12で筒状体の外側に位置する異種積層フィルム11の一方の重畳部にレーザー光を照射することで形成される貫通孔である。具体的には、レーザー光の照射により筒状体の外側に位置する第1貫通孔15の周縁部の表面層13aが溶融したときに、溶融した表面層13aが一端23から突出して溶着部17を形成可能な位置に第1貫通孔15が形成される。ここで、一端23とは、センターシール部12で筒状体の外側に位置する異種積層フィルム11の側端を意味する(センターシール部12で筒状体の内側に位置する異種積層フィルム11の側端を他端24として図示する)。
第1貫通孔15の大きさ等によっても異なるが、例えば、一端23から2mm程度の範囲内、好ましくは1mm程度の範囲内に第1貫通孔15が形成される。図1に例示する形態では、詳しくは後述するように、一端23上に第1貫通孔15の中心が位置し、異種積層フィルム11の一方の重畳部と、他方の重畳部とを貫通して第1貫通孔15が形成されている。
【0030】
また、第1貫通孔15は、筒状体の上端から下端まで上下方向に沿って所定間隔で列状に複数形成されている。各第1貫通孔15の形状や大きさ、形成間隔等は、レーザー光の照射条件、後述する長尺状の異種積層フィルム11の移送速度等を調整することで任意に設定することができる。使用されるレーザー装置としては、炭酸ガスレーザー、アルゴンレーザー、YAGレーザー等のパルスレーザー装置が好適である。
【0031】
第1切断補助線16は、所定間隔で列状に複数形成された第1貫通孔15から構成され、熱収縮性筒状ラベル10を切断して容器から剥離除去する際に使用される所謂ミシン目線である。第1切断補助線16には、熱収縮性筒状ラベル10の製造・流通過程で切断されることなく、熱収縮性筒状ラベル10を剥離除去する際には容易に切断される機能が要求され、例えば、第1貫通孔15の形状や大きさ、個数、形成間隔等を調整することで当該機能を発現する。
【0032】
溶着部17は、センターシール部12において、筒状体の外側に位置する異種積層フィルム11の一方の重畳部の表面層13aと、筒状体の内側に位置する他方の重畳部に隣接する領域の表面層13aとが溶着して形成される接合部である。具体的には、第1貫通孔15を形成する際のレーザー光の照射により、一方の重畳部の表面層13aが溶融して流動し、異種積層フィルム11の一端23から筒状体の周方向に突出して、他方の重畳部に隣接する領域の表面層13aと溶着することで、溶着部17が形成される。また、第1切断補助線16、即ち第1貫通孔15が筒状体の上端から下端まで所定間隔で形成されることから、溶着部17も筒状体の上端から下端まで所定間隔で形成される。
【0033】
第1堤状厚肉部18(図3参照)は、レーザー光の照射の熱影響により形成される第1切断補助線16近傍の局所的な熱収縮応力および表面張力の作用により生じるものと考えられ、熱収縮性筒状ラベル10の切取りにおけるフィルムの横裂けが防止されることにより、フィルムのより良好な切れ性をもたらす。
【0034】
ここで、図2および図3を用いて、センターシール部12およびその近傍の構成、特に第1貫通孔15および溶着部17の構成をさらに説明する。
【0035】
なお、図2は、図1のセンターシール部12およびその近傍の拡大図、図3は、図2のA‐A線断面図である。図3に示すように、ここで例示する異種積層フィルム11は、表面層13aと中心層14との層間および中心層14と表面層13bとの層間に、それぞれ接着剤層22(接着剤層22a,b)を備えているが、接着剤層22a,bを含まない異種積層フィルムを用いることもできる。
【0036】
図2および図3に示すように、第1貫通孔15は、センターシール部12で筒状体の外側に位置する異種積層フィルム11の一端23を中心として形成されている。即ち、異種積層フィルム11の一端23上にレーザー光スポットの中心を位置させるようにして第1貫通孔15が形成される。第1貫通孔15は、筒状体の周方向に長径を有する楕円形状であって、一端23上に長径Lの中点が位置しており、センターシール部12で筒状体の外側に位置する異種積層フィルム11の一方の重畳部と、センターシール部12で筒状体の内側に位置する異種積層フィルム11の他方の重畳部とを貫通して形成されている。そして、第1貫通孔15の孔縁には、一端23から筒状体の周方向に突出した溶着部17が形成されている。
【0037】
溶着部17は、第1貫通孔15を形成する際のレーザー光の照射により、第1貫通孔15の孔縁に形成され、異種積層フィルム11の一端23から筒状体の周方向に突出した形状を有している。この突出形状は、レーザー光の照射により、センターシール部12で筒状体の外側に位置する異種積層フィルム11の一方の重畳部、つまり一端23側の重畳部の表面層13aが溶融して一端23から筒状体の周方向に流動することで形成される。即ち、レーザー光の照射により、センターシール部12で筒状体の内側に位置する他方の重畳部、つまり他端24側の重畳部及び当該重畳部に隣接する領域の表面層13aも溶融して、一端23から流動してきた一端23側の重畳部の表面層13aと溶着することで、一端23から筒状体の周方向に突出した溶着部17が形成される。
なお、他端24側の重畳部に隣接する領域とは、他端24側の異種積層フィルム11において、その重畳部に隣接する領域(部分)を意味し、レーザー光の照射で一端23側の重畳部の表面層13aが溶融して一端23から流動してくる領域であると共に、第1貫通孔15の右半分が形成される領域である。
【0038】
また、溶着部17は、筒状体の上下方向に沿って所定間隔で複数形成されている。溶着部17が形成される間隔は、第1貫通孔15の形成位置に対応する。第1貫通孔15は、第1切断補助線16としての機能を満たすように形成されるため、溶着部17は、通常、所定間隔で複数形成されるが、連続的に形成されていてもよい。例えば、第1貫通孔15の形成間隔を小さくすると、溶着部17の間隔も小さくなって、隣接する溶着部17同士を連結して筒状体の上下方向に連続した溶着部17を形成することもできる。
【0039】
また、第1堤状厚肉部18は、第1貫通孔15の周縁に形成されており、堤状に盛り上った形状を有している。なお、図3では、表面層13aのみが盛り上って示されているが、実際には、表面層13aおよび中心層14の両方が溶融混和して第1堤状厚肉部18が形成されている。第1堤状厚肉部18は、例えば、第1貫通孔15の形成間隔を小さくすることで、溶着部17と同様に、筒状体の上下方向に連続した形態となる。
なお、第2貫通孔19の周縁には、第1堤状厚肉部18と同様の第2堤状厚肉部21が形成されている。
【0040】
ここで、上記構成を備える熱収縮性筒状ラベル10の製造方法を例示する。
【0041】
まず初めに、異種積層フィルム11の製造方法を説明する。
異種積層フィルム11は、例えば、共押出しにより作製される。共押出しによる3種5層の異種積層フィルム11の製造方法は、表面層13、中心層14、および接着剤層22を構成する樹脂をそれぞれ別の押出機に投入し、各押出機から溶融した樹脂をTダイに供給して平滑な薄膜状に広げ、薄膜状の溶融樹脂をダイスリットから冷却されたキャスティングドラム上に押出して冷却固化し積層フィルム化する方法である。積層方式としては、例えば、Tダイの直前にフィードブロックを設置して各溶融樹脂を層流状態でTダイに供給するフィードブロック法、多層のマニホールドを用いるマルチマニホールド法のいずれを適用してもよい。
【0042】
共押出しで作製された長尺状の未延伸異種積層フィルムは、少なくとも一方向に加熱延伸される。延伸としては、長尺状フィルムの幅方向及び長手方向(上下方向)の2軸延伸であってもよいし、幅方向又は長手方向の1軸延伸であってもよいが、好ましくは幅方向の1軸延伸である。なお、延伸方式としては、ロール方式、テンター方式等を使用することができる。一般的には、長尺状の未延伸積層フィルムを長手方向に連続搬送しながら、ロール等で幅方向に加熱延伸することで延伸された長尺状の異種積層フィルム11を作製する。
【0043】
延伸温度としては、異種積層フィルム11を構成する樹脂の種類等によっても異なるが、一般的には70〜100℃、好ましくは90〜100℃の温度範囲である。また、延伸倍率は、主延伸方向(好ましくは長尺状フィルムの幅方向)に対して、2〜6倍程度であることが好ましく、主延伸方向と直交する方向の収縮、膨張を抑えるために、当該方向にも1.01〜2倍程度の倍率で延伸することもできる。
【0044】
得られた長尺状の異種積層フィルム11は、印刷機に供給されて、例えば、表面層13bの裏側に印刷層が形成される。そして、長尺状の異種積層フィルム11の一方の側端が外側、他方の側端が内側となるように側縁部同士を重ね合わせて筒状体とし、重ねあわされた側縁部(つまり重畳部)同士をシールしてセンターシール部12を形成する。具体的には、幅方向に延伸された長尺状の異種積層フィルム11に印刷層を形成した後、所定幅(1つのラベルの幅)にスリットして、長尺状の異種積層フィルム11の幅方向が周方向となるように、一方の重畳部の裏側に上下方向に沿ってTHF等の有機溶剤を塗布してから、当該溶剤塗布部を他方の重畳部の表側に重ね合わせて溶着することで、センターシール部12および長尺状の異種積層フィルム11の筒状体を形成する。
【0045】
得られた長尺状の異種積層フィルム11の筒状体は、その長手方向に連続移送され、異種積層フィルム11の一端23上にレーザー光スポットの中心が位置するようにレーザー光が照射されて、第1貫通孔15が形成される。上記のように、レーザー光の照射条件、異種積層フィルム11の移送速度を調整すれば、第1貫通孔15の形状等を変更することができる。そして、第1貫通孔15を形成する際のレーザー光の照射により、第1貫通孔15の周縁の表面層13aが溶融して流動し、溶着部17が形成される。即ち、第1貫通孔15が形成されると同時に、溶着部17が形成される。また、別のレーザー装置によって、センターシール部12の近傍に第2貫通孔19および第2切断補助線20が形成される。
【0046】
最後に、第1貫通孔15および溶着部17等が形成された長尺状の異種積層フィルム11の筒状体、即ち長尺状の熱収縮性筒状ラベル10を個々のラベルの長さにカットすることで、個々の容器に装着可能な熱収縮性筒状ラベル10を得ることができる。
【0047】
以上のように、上記構成を備える熱収縮性筒状ラベル10は、筒状体の外側に位置する表面層13aと、筒状体の内側に位置する他方の重畳部に隣接する領域の表面層13aとが互いに溶融して形成される溶着部17を備えるので、熱収縮過程での表面層13aと中心層14との層間剥離を高度に防止することができる。この溶着部17は、同種の樹脂同士で形成される接合部であるから、熱収縮過程で収縮応力が作用しても破断することなく、筒状体の外側に位置する表面層13aを、筒状体の内側に位置する他方の重畳部に隣接する領域の表面層13aに強く固定することができる。
【0048】
また、孔縁に溶着部17が形成される第1貫通孔15は、筒状体の上下方向に沿って所定間隔で複数形成され、第1切断補助線16として利用することができる。ゆえに、第1切断補助線16は、センターシール部12に形成されるので、文字やデザインを表示できる面積を拡大することができる。
【0049】
なお、溶着部17は、第1貫通孔15に対応して、筒状体の上下方向に沿って所定間隔で複数形成されるため、筒状体の上端から下端にわたって熱収縮過程での表面層13aと中心層14との層間剥離を高度に防止することができる。溶着部17が所定間隔で形成される場合には、各溶着部17の間隙に溶着部17が形成されない部分が存在し層間剥離が発生し易い部分が残るが、その部分で層間剥離が発生したとしても両側の溶着部17により層間剥離の拡大を防止することができる。
【0050】
ここで、上記実施形態の変形例を例示する。
なお、以下では、上記実施形態との相違点について説明し、同様の構成要素については、同一の用語又は符号を用いて重複する説明を省略する。
【0051】
上記では、レーザー光の照射により第1切断補助線16を構成する第1貫通孔15が形成され、それと同時に溶着部17が形成される構成を例示したが、図4に示すように、レーザー光の照射により切断補助線として利用されない凹部31(網目で表示する部分)が形成される構成であってもよい。
図4に例示する形態では、異種積層フィルム11の一端23から僅かに離れた部分に、上下方向に沿って細長い楕円形状の凹部31が形成されている。そして、凹部31の縁には、第1貫通孔15の場合と同様に、一端23から筒状体の周方向に突出した溶着部32が形成される。なお、凹部31の形状としては、特に限定されず、略円形や略四角形とすることができ、筒状体の上下方向に沿った凹部31として上下方向に連続する溶着部32を形成してもよい。
【0052】
また、上記では、レーザー装置によって、センターシール部12の近傍に第2貫通孔19および第2切断補助線20が形成される構成を例示したが、第2貫通孔は、ミシン目状の切り刃を有するトムソン刃や針等により形成されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 熱収縮性筒状ラベル、11 異種積層フィルム、12 センターシール部、13 表面層、14 中心層、15 第1貫通孔、16 第1切断補助線、17 溶着部、18 第1堤状厚肉部、19 第2貫通孔、20 第2切断補助線、21 第2堤状厚肉部、22 接着剤層、23 一端、24 他端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成が互いに異なった異種材フィルムからなる第1層および第2層を含む熱収縮性の異種積層フィルムと、
異種積層フィルムの一方の側端が外側、他方の側端が内側となるように重ね合わせて筒状体とし、重ね合わされた重畳部を接合して形成される接合部と、
を備える熱収縮性筒状ラベルにおいて、
筒状体の外側に位置する異種積層フィルムの一方の重畳部にレーザー光を照射することで形成される貫通孔又は凹部と、
当該レーザー光の照射により貫通孔又は凹部の周縁の第1層が溶融して流動し、一方の重畳部の第1層が一方の側端から筒状体の周方向に突出すると共に、他方の重畳部に隣接する領域の第1層と溶着して形成される溶着部と、
を備えることを特徴とする熱収縮性筒状ラベル。
【請求項2】
請求項1に記載の熱収縮性筒状ラベルにおいて、
貫通孔又は凹部は、所定間隔で列状に複数形成されて切断補助線を構成することを特徴とする熱収縮性筒状ラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−73447(P2012−73447A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218388(P2010−218388)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)