説明

熱可塑性エラストマー組成物およびその成形体

【課題】光沢感と耐傷付き性を有する熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)及び(B)を特定割合で含有する熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A)は以下の(a1)〜(a3)の条件を満足するプロピレン系共重合体である。
(a1)プロピレンと炭素数2〜8の他のα−オレフィンとの共重合体である。
(a2)共重合体中に占める室温でキシレンに可溶な部分の割合が10〜60重量%である。
(a3)室温でキシレンに可溶な部分中のプロピレン以外のα−オレフィンの含有量が5〜30重量%である。
成分(B)は一般式:A(B−A)n及び/又は(A−B)nで表されるブロック共重合体またはその水素添加物である。但し、一般式中、Aはモノビニル置換芳香族炭化水素の重合体ブロックを、Bは共役ジエン重合体ブロックを、nは1〜5の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物およびその成形体に関し、詳しくは、意匠性、特に光沢感と耐傷付き性をと兼ね備えた熱可塑性エラストマー組成物およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車窓枠などの自動車外装モールディングは、耐傷付き性、耐候性および耐熱性と共に、意匠性、特に金属に似た高い光沢感が要求される。
【0003】
従来、上記の様なモールディングの材質としては、主に軟質塩化ビニル樹脂が使用されていたが、近年、軽量化などの問題から、オレフィン系樹脂材料への転換要求が高まっている。
【0004】
しかしながら、オレフィン系樹脂材料、特に、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーを始めとする軟質材料は、軟質塩化ビニル樹脂に比べて傷付き易く、しかも、表面光沢を上げると傷が一層目立つといった欠点がある。
【0005】
そこで、押出成形の場合は、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂、高結晶ポリプロピレン樹脂組成物などの高硬度の樹脂組成物を意匠面に使用することが提案されている(例えば特許文献1及び2)。
【0006】
しかしながら、射出成形で成形される部材は、意匠面だけ被覆することは困難であり、基材そのもので光沢を出さなければならない。基材はある程度の柔軟性が必要であるため、光沢と耐傷付き性の両立は極めて困難である。
【0007】
【特許文献1】実用新案第2597587号公報
【特許文献1】特開平11−208273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、光沢感と耐傷付き性を有する熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定のプロピレン系共重合体と特定のブロック共重合体を配合した熱可塑性エラストマーを使用することにより上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の要旨は、次の成分(A)及び(B)を含有し、両成分に対する成分(A)の割合が30〜70重量%であり、成分(B)の割合が30〜70重量%(但し、両成分の合計量は100重量%)であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に存する。
【0011】
成分(A)は以下の(a1)〜(a3)の条件を満足するプロピレン系共重合体である。
(a1)プロピレンと炭素数2〜8の他のα−オレフィンとの共重合体である。
(a2)共重合体中に占める室温でキシレンに可溶な部分の割合が10〜60重量%である。
(a3)室温でキシレンに可溶な部分中のプロピレン以外のα−オレフィンの含有量が5〜30重量%である。
【0012】
成分(B)は一般式:A(B−A)n及び/又は(A−B)nで表されるブロック共重合体またはその水素添加物である。但し、一般式中、Aはモノビニル置換芳香族炭化水素の重合体ブロックを、Bは共役ジエン重合体ブロックを、nは1〜5の整数を表す。
【0013】
そして、本発明の第2の要旨は、上記の熱可塑性エラストマー組成物の射出成形によって得られることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物成形体に存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高光沢で且つ柔軟性および耐傷付き性に優れた熱可塑性エラストマー組成物、特に射出成形による自動車用モールディング用途に好適に使用される熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必須成分として特定の成分(A)及び(B)を含有する。
【0016】
本発明で使用される成分(A)は以下の(a1)〜(a3)の条件を満足するプロピレン系重合体である。
【0017】
(a1)プロピレンと炭素数2〜8の他のα−オレフィンとの共重合体である。
(a2)共重合体中に占める室温でキシレンに可溶な部分の割合が10〜60重量%である。
(a3)室温でキシレンに可溶な部分中のプロピレン以外のα−オレフィンの含有量が5〜30重量%である。
【0018】
上記(a1)における他のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられ、特にエチレンが好ましい。
【0019】
上記(a2)における室温でキシレンに可溶な部分の割合(以下「CXS」と記す)は、好ましくは20〜50重量%であり、上記(a3)におけるα−オレフィンの含有量(以下「αT」と記す)は、好ましくは10〜20重量%である。
【0020】
「CXS」が10重量%未満の場合は柔軟性に劣ることとなり、一方、60重量%を超える場合は耐傷付き性が劣ることとなる。また、「αT」が5重量%未満の場合は柔軟性が劣ることとなり、一方、30重量%を超える場合は耐傷付き性に劣ることとなる。
【0021】
また、上記のプロピレン系共重合体は、その融点ピーク温度が155℃以上であることが好ましく、160℃以上がより好ましい。融点ピーク温度が155℃未満の場合は、樹脂基体から低分子量成分のブリードアウトが生じ易い傾向となる。
【0022】
上記のプロピレン系共重合体の製造方法は、特に限定されず、例えば、特開2001−226435号公報、特開2001−172454号公報などに記載の方法を採用することが出来るが、その好ましい製造方法は、少なくとも二段以上の重合工程を含み、一段目でプロピレン単独重合体を得た後、二段目以降でプロピレンと炭素数2〜8の他のα−オレフィンとの共重合体を得る製造方法であり、以下にその内容について詳述する。
【0023】
上記の逐次重合に使用する触媒は、特に限定されないが、有機アルミニウム化合物と、チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子および電子供与性化合物を必須とする固体成分とから成る触媒が好ましい。斯かる触媒は既に公知である。
【0024】
上記の有機アルミニウム化合物としては、一般式RAlX(3−m)(式中、Rは炭素数1〜12の炭化水素残基、Xはハロゲン原子を示し、mは1〜3の数である。)で表される化合物、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等のアルキルアルミニウムセスキハライド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のアルキルアルミニウムジハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられる。
【0025】
上記の固体成分において、チタン原子の供給源となるチタン化合物としては、一般式Ti(OR(4−n)(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素残基、Xはハロゲン原子を示し、nは0〜4の数である。)で表される化合物が挙げられ、特に、四塩化チタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタンが好ましい。
【0026】
上記の固体成分において、マグネシウム原子の供給源となるマグネシウム化合物としては、例えば、ジアルキルマグネシウム、マグネシウムジハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド等が挙げられ、特にマグネシウムジハライドが好ましい。
【0027】
上記の固体成分において、ハロゲン原子としては、弗素、塩素、臭素、沃素が挙げられ、特に塩素が好ましく、これらは、通常、前記のチタン化合物またはマグネシウム化合物から供給されるが、アルミニウムのハロゲン化物、珪素のハロゲン化物、タングステンのハロゲン化物などの他のハロゲン供給源から供給されてもよい。
【0028】
上記の固体成分において、電子供与性化合物としては、代表的には含酸素化合物と含窒素化合物である。そして、含酸素化合物としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸または無機酸およびその誘導体などが挙げられ、含窒素化合物としては、アンモニア、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類などが挙げられる。これらの中では、無機酸エステル、有機酸エステル、有機酸ハライドが好ましく、珪酸エステル、フタル酸エステル、酢酸セロソルブエステル、フタル酸ハライドが更に好ましく、一般式R(3−p)Si(ORで表される有機珪素化合物が特に好ましい。
【0029】
上記の一般式中、Rは炭素数3〜20(好ましくは4〜10)の分岐状脂肪族炭化水素残基、または、炭素数5〜20(好ましくは6〜10)の環状脂肪族炭化水素残基を示し、Rは炭素数1〜20(好ましくは1〜10)の分岐または直鎖状脂肪族炭化水素残基を示し、Rは炭素数1〜10(好ましくは1〜4)の脂肪族炭化水素残基を示し、pは1〜3の数である。
【0030】
上記の一般式で表される有機珪素化合物の好適な具体例としては、t−ブチル−メチル−ジメトキシシラン、t−ブチル−メチル−ジエトキシシラン、シクロヘキシル−メチル−ジメトキシシラン、シクロヘキシル−メチル−ジエトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
前記の逐次重合においては、第一段階で、プロピレン又はプロピレンと炭素数2〜8の他のα−オレフィンを供給し、前記触媒の存在下、温度50〜150℃(好ましくは50〜100℃)、プロピレン分圧0.5〜4.5MPa(好ましくは1.0〜3.5MPa)の条件で重合してプロピレン単独重合体を得、引き続き、第二段階で、プロピレンとエチレン、または、プロピレンとエチレンと炭素数4〜8のα−オレフィンを供給し、前記触媒の存在下、温度50〜150℃(好ましくは50〜100℃)、プロピレン及びエチレンの分圧各0.3〜4.5MPa(好ましくは0.5〜3.5MPa)の条件で重合して、プロピレン−エチレン共重合体、または、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体を得る。
【0032】
なお、重合方式は、回分式、連続式、半回分式の何れによってもよい。第一段階の重合は気相または液相中で実施することが出来る。また、第二段階の重合は、気相または液相中、好ましくは気相中で実施する。各段階の滞留時間は、各々通常0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間である。
【0033】
また、得られるプロピレン系共重合体の粉体粒子にベタツキ等の問題が生じる際は、粉体粒子に流動性を付与する目的で、第一段階での重合後、第二段階での重合開始前または重合途中に、活性水素含有化合物を添加することが好ましい。活性水素含有化合物としては、例えば、水、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、カルボン酸類、酸アミド類、アンモニア、アミン類などが挙げられ、その使用量は、通常、触媒の固体成分中のチタン原子に対して100〜1000倍モル、触媒の有機アルミニウム化合物に対して2〜5倍モルの範囲である。
【0034】
本発明で使用される成分(B)は一般式:A−(B−A)nおよび/または(A−B)nで表されるブロック共重合体(ビニル置換芳香族炭化水素・共役ジエン共重合体)又はその水素添加物である。但し、一般式中、Aはモノビニル置換芳香族炭化水素の重合体ブロックを、Bは共役ジエン重合体ブロックを、nは1〜5の整数を表す。
【0035】
重合体ブロックAを構成する単量体のビニル置換芳香族炭化水素は、スチレン又はその誘導体の重合体である。スチレンの誘導体としては、具体的には、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等が挙げられる。特に、ブロック(A)を構成する重合体成分としては、スチレンの重合体、α−メチルスチレンの重合体またはスチレンとα−メチルスチレンの共重合体が好ましい。また、重合体ブロックBにおける共役ジエン単量体としてはブタジエン、イソプレン又は両者の混合物が好ましい。
【0036】
上記のブロック共重合体の製造方法としては、特に制限されず、例えば、特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒などを使用して不活性溶媒中でブロック重合させて得ることが出来る。
【0037】
また、ブロック共重合体の水素添加処理は、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭60−79005号公報などに記載された方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加される。この水素添加では、重合体ブロックB中のオレフィン型二重結合の少なくとも50重量%、好ましくは80重量%以上が水素添加され、重合体ブロックA中の芳香族不飽和結合の25重量%以下が水素添加される。この様な水素添加されたブロック共重合体は、例えば、シェル・ケミカル社より「KRATON−G」、クラレ社より「セプトン」、旭化成社より「タフテック」、「SOE−SS」という商品名で市販されている。
【0038】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、耐傷付き性向上の目的で滑剤を配合することが出来る。滑剤としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン類、ステアロアマイド、オキシステアロアマイド、オレイルアマイド、エルシルアマイド、ラウリルアマイド、パルミチルアマイド、ベヘンアマイド等の高級脂肪酸のモノアマイド型、メチロールアマイド、エチロールアマイド等の変性モノアマイド、ステアリルオレイルアマイド、N−ステアリルエルクアマイド等の複合型アマイド、メチレンビスステアロアマイド、エチレンビスステアロアマイド等のビスアマイド型の高級脂肪酸アマイド等の脂肪酸アマイド類の他、オレフィン系樹脂に一般的に添加されるポリエチレンワックス類が挙げられる。これらは組み合わせて使用することも可能である。滑剤の割合は、樹脂に対する割合として、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
【0039】
更に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、上記の各成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲で各種目的に応じ他の任意の配合成分を配合することが出来る。斯かる配合成分としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤などの各種添加物、無機質充填材などが挙げられる。屋外での使用を考慮すると、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤の添加が特に好ましい。上記の配合剤の割合は、樹脂に対する割合として、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
【0040】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の調製には、例えば、単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、プラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機が使用される。
【0041】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、表面外観、柔軟性、耐候性、耐熱性、耐温水性、耐傷付き性に優れるため、屋内外で使用される樹脂成形品、特にウインドウモールディング、ルーフモールディング、グラスランチャンネル等の自動車外装部品に適する。実用的観点から、硬度は55〜90(好ましくは60〜80)、表面光沢は5%以上(好ましくは10〜30)、耐傷付き性(表面粗さRa)は1.0μm以下(好ましくは0.6μm以下)が要求される。なお、これらの物性値の測定方法は以下の実施例において記載した通りである。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した材料は次の通りである。
【0043】
(1)プロピレン系共重合体:
特開2001−226435号公報の実施例2の方法に準じて製造したプロピレン−エチレン共重合体(共重合体中のエチレン含有量:11重量%、室温でキシレンに可溶な部分の割合:35重量%、室温でキシレンに可溶な部分中のエチレン含有量:18重量%、共重合体の融点ピーク温度:164℃)。
【0044】
(2)ポリプロピレン樹脂:
日本ポリプロ社製「ノバテックPP BC1」(ブロックPP,曲げ弾性率:1350MPa,MFR(230℃、21.18N):15)
【0045】
(3)ブロック共重合体(1):
クラレ社製「セプトン4055」(水添スチレン系ゴム)
【0046】
(4)ブロック共重合体(2):
旭化成社製「SOE−SS L605」(水添スチレン系ゴム)
【0047】
(5)EPDM:
JSR社製「EP504EC」(エチレン含量70重量%、エチリデンノルボルネン含量5.5重量%、油展量100重量%、ASTM D−927−57Tに準拠して測定したムーニー粘度(ML1+4 100℃)400)
【0048】
(6)鉱物油系軟化剤:
出光興産社製パラフィンオイル「PW−90」
【0049】
(7)2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(架橋剤):
化薬アクゾ社製「カヤヘキサンAD」
【0050】
(8)トリアリルイソシアヌレート(架橋助剤):
日本化成社製「TAIC」
【0051】
(9)オレイルアマイド:
ライオンアクゾ社製「ARMO−CP」
【0052】
(10)カーボンブラック(CB)マスターバッチ:
大日本インキ化学工業社製「F30940MM」(ポリエチレン:カーボンブラック=60:40重量比)
【0053】
(11)オレフィン系エラストマー(1):
三菱化学社製「サーモラン3755B」
【0054】
(12)オレフィン系エラストマー(2):
三井化学社製「ミラストマー7030B」
【0055】
(13)オレフィン系エラストマー(3):
AESジャパン社製「サントプレーン121−55W241」
【0056】
実施例1:
表1に示す比率で各成分を配合し、30mm同方向2軸押出機を使用し、樹脂温度220℃にて溶融混練を行ってペレット化し、更に、75t射出成形機を使用し、シリンダ設定温度を4ゾーン夫々180℃、210℃、220℃、210℃に設定し、縦80mm、横120mm、厚み2mmの試験片を射出成形した。
【0057】
上記の試験片で、硬度(JIS K6253に準拠)、表面光沢(JIS Z8741に準拠)を測定し、更に、耐傷付き性の評価として、HEIDONスクラッチテスターを使用し、垂直荷重200gの条件により、市販のナイロンブラシで試験片表面に直線上に100回傷を付け、その中心平均粗さRa(JIS B0701準拠)を東京精密社製表面粗さ計で測定した。夫々の結果を表1にまとめて示す。
【0058】
表1の結果から明らかな様に、本発明に従い、樹脂成分として特定の2成分(すなわち特定のプロピレン系共重合体とブロック共重合体)を配合することにより、従来では得られなかった、光沢感と柔軟性と耐傷付き性のバランスが取れた熱可塑性エラストマー組成物を得ることが出来る。これに対し、比較例1に示す様にプロピレン系共重合体単独では柔軟性に欠け、比較例2〜4に示す様にオレフィン系エラストマー単独では表面光沢および耐傷付き性に欠ける。また、比較例5に示す様にプロピレン系共重合体を他の成分と共に使用する場合でも他の成分がEPDMの場合は表面光沢および耐傷付き性に欠け、比較例6に示す様にブロック共重合体を他の成分と共に使用する場合でも他の成分がポリプロピレン樹脂の場合は表面光沢に欠ける。
【0059】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B)を含有し、両成分に対する成分(A)の割合が30〜70重量%であり、成分(B)の割合が30〜70重量%(但し、両成分の合計量は100重量%)であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A)は以下の(a1)〜(a3)の条件を満足するプロピレン系共重合体である。
(a1)プロピレンと炭素数2〜8の他のα−オレフィンとの共重合体である。
(a2)共重合体中に占める室温でキシレンに可溶な部分の割合が10〜60重量%である。
(a3)室温でキシレンに可溶な部分中のプロピレン以外のα−オレフィンの含有量が5〜30重量%である。
成分(B)は一般式:A(B−A)n及び/又は(A−B)nで表されるブロック共重合体またはその水素添加物である。但し、一般式中、Aはモノビニル置換芳香族炭化水素の重合体ブロックを、Bは共役ジエン重合体ブロックを、nは1〜5の整数を表す。
【請求項2】
プロピレン系共重合体の融点ピーク温度が155℃以上である請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
プロピレン系共重合体が、少なくとも二段以上の重合工程を含み、一段目でプロピレン単独重合体を得た後、二段目以降でプロピレンとエチレンとを必須成分とする、プロピレンと、炭素数2〜8の他のα−オレフィンとの共重合体を得る製造方法により得られたものである請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物が更に成分(C)として鉱物油系軟化剤を成分(A)と(B)の合計100重量%に対して5〜150重量%含有する請求項1〜3の何れかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の熱可塑性エラストマー組成物の射出成形によって得られることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物成形体。