説明

熱可塑性エラストマー組成物およびその製造方法、並びにそれを用いた成形体

【課題】従来の熱可塑性エラストマーよりも高い強度を有する、熱可塑性エラストマー組成物およびその成形体を提供することを目的としている。
【解決手段】 本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、オレフィン系ゴム(D)を含むオレフィン系ゴム成分(A)5〜95重量部及びオレフィン系樹脂(B)95〜5重量部((A)+(B)=100重量部)に架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを作用させて得られ、かつ、下記式(1)で表される計算値が1.0以上であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物(C)である;


(式(1)中、TBは熱可塑性エラストマー組成物(C)の引張強度(単位 MPa)であり、EBは引張伸び(単位 %)であり、CSは圧縮永久ひずみ(単位 %)であり、CRは圧縮クリープ回復(単位 %)であり、かつ、HSは硬度Aである。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物およびその製造方法に関する。また、上記の組成物を用いて得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、軽量でリサイクルが容易であることから、省エネルギー、省資源タイプのエラストマーとして、特に加硫ゴムの代替として自動車部品、工業機械部品、電気・電子部品、建材等に広く使用されている。しかし、従来のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、一般に加硫ゴムに比べてゴム弾性および引張強度が劣るという欠点があり、その改良が強く求められていた。
【0003】
このような加硫ゴム代替のオレフィン系熱可塑性エラストマーとして、従来、架橋度を高くしたいわゆる完全架橋型のオレフィン系熱可塑性エラストマー(例えば、特許文献1)が提案されていたが、これらは部分架橋型に比べてゴム弾性には優れているものの、成形性あるいは成形外観に問題があり使用される用途が限られていた。
【0004】
また国際公開96/07681号パンフレット(特許文献2)には、エチレン・スチレン・エチリデンノルボルネン共重合体とポリプロピレンとからなる熱可塑性架橋体が記載されているが、この熱可塑性架橋体は、ゴム弾性、引張強度、低温特性および表面強度のバランスが必ずしも充分ではなかった。
【特許文献1】特公昭55−18448号公報
【特許文献2】国際公開96/07681号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の熱可塑性エラストマーよりも高い強度を有する、熱可塑性エラストマー組成物およびその製造方法、並びに該組成物よりなる成形体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]〜[24]により提供される。
[1] オレフィン系ゴム(D)を含むオレフィン系ゴム成分(A)5〜95重量部及びオレフィン系樹脂(B)95〜5重量部((A)+(B)=100重量部)に架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを作用させて得られ、かつ、
下記式(1)で表される計算値が1.0以上であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物(C);
【0007】
【数1】

【0008】
(式(1)中、TBは熱可塑性エラストマー組成物(C)の引張強度(単位 MPa)であり、EBは引張伸び(単位 %)であり、CSは圧縮永久ひずみ(単位 %)であり、CRは圧縮クリープ回復(単位 %)であり、かつ、HSは硬度Aである。)。
[2] 前記式(1)で表される計算値が1.0〜20であることを特徴とする前記[1
]に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[3] オレフィン系ゴム(D)がエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[エチレン/α−オレフィン(モル比)=90/10〜51/49]であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[4] オレフィン系樹脂(B)が、炭素数3〜20のα−オレフィンの含有量が50〜100モル%の単独重合体または共重合体であることを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[5] オレフィン系ゴム成分(A)が、オレフィン系ゴム(D)100重量部及び軟化剤(J−1)0〜150重量部からなることを特徴とする前記[1]〜[4]に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[6] オレフィン系ゴム成分(A)及びオレフィン系樹脂(B)が、該オレフィン系ゴム成分(A)とオレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対し、架橋剤(E)0.5〜3.0重量部及び架橋助剤(F)0.1〜3.0重量部を用いて、部分的あるいは完全に架橋されていることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[7] 架橋剤(E)が有機過酸化物であることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[8] オレフィン系ゴム成分(A)とオレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対し、軟化剤(J−2)が0.1〜300重量部含まれることを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[9] オレフィン系ゴム成分(A)をオレフィン系樹脂(B)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
[10] オレフィン系ゴム(D)と軟化剤(J−1)とを予め混練したオレフィン系ゴム成分(A)をオレフィン系樹脂(B)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、前記[5]〜[7]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
[11] オレフィン系ゴム(D)と軟化剤(J−1)とを予め混練したオレフィン系ゴム成分(A)を、オレフィン系樹脂(B)及び軟化剤(J−2)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、前記[8]に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
[12] オレフィン系ゴム成分(A)を、オレフィン系樹脂(B)及び軟化剤(J−2)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、前記[8]に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
[13] オレフィン系ゴム成分(A)が、オレフィン系ゴム(D)60〜95重量部、無機系及び/又は有機系のフィラー(H)5〜40重量部((D)+(H)=100重量部)並びに軟化剤(J−1)0−150重量部からなることを特徴とする前記[1]〜[4]に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[14] オレフィン系ゴム成分(A)及びオレフィン系樹脂(B)が、該オレフィン系ゴム成分(A)とオレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対し、架橋剤(E)0.01〜3.0重量部及び架橋助剤(F)0.01〜3.0重量部を用いて部分的あるいは完全に架橋されていることを特徴とする前記[13]に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[15] オレフィン系ゴム成分(A)が、オレフィン系ゴム(D)85〜95重量部、並びに無機系及び/又は有機系のフィラー(H)5〜15重量部(但し(D)と(H)の合計量は100重量部)からなることを特徴とする前記[13]または[14]に記載の
熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[16] フィラー(H)がカーボンブラックであることを特徴とする前記[13]〜[15]に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[17] 架橋剤(E)が有機過酸化物であることを特徴とする前記[13]〜[16]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[18] オレフィン系ゴム成分(A)とオレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対し、軟化剤(J−2)が0.1〜300重量部含まれることを特徴とする前記[13]〜[17]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
[19] オレフィン系ゴム(D)と無機系及び/又は有機系のフィラー(H)とを予め混練したオレフィン系ゴム成分(A)を、オレフィン系樹脂(B)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、前記[13]〜[17]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
[20] オレフィン系ゴム(D)と無機系及び/又は有機系のフィラー(H)と軟化剤(J−1)とを予め混練したオレフィン系ゴム成分(A)を、オレフィン系樹脂(B)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し部分的に動的架橋して、前記[13]〜[17]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
[21] オレフィン系ゴム(D)と無機系及び/又は有機系のフィラー(H)と軟化剤(J−1)とを予め混練したオレフィン系ゴム成分(A)を、オレフィン系樹脂(B)及び軟化剤(J−2)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、前記[18]に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
[22] オレフィン系ゴム(D)と無機系及び/又は有機系のフィラー(H)とを予め混練したオレフィン系ゴム成分(A)を、オレフィン系樹脂(B)及び軟化剤(J−2)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、前記[18]に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
[23] 前記[1]〜[8]、[13]〜[18]の中のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)で製造された成形体。
[24] 発泡体であることを特徴とする前記[23]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物は、その構成成分であるオレフィン系ゴム成分(A)の架橋度を高めていることにより、または、オレフィン系ゴム成分(A)をフィラーにより補強していることにより、引張強度および変形回復性に優れることから、シール性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明にかかる熱可塑性エラストマー組成物およびその製造方法について具体的に説明する。
本発明にかかる熱可塑性エラストマー組成物(C)は、オレフィン系ゴム成分(A)およびオレフィン系樹脂(B)からなる組成物である。本熱可塑性エラストマー組成物(C)において、オレフィン系ゴム成分(A)は柔軟性を付与するソフトセグメント(軟質相)を構成し、オレフィン系樹脂(B)は擬似架橋構造を提供するハードセグメント(硬質相)を構成する。そして、エラストマー組成物において、前記ソフトセグメントからなる相(以下、島相という。)が前記ハードセグメントからなる相(以下、海相という。)の中に分散する構造を有している。
【0011】
まず、これらの各成分について説明する。
[オレフィン系ゴム成分(A)]
本発明で用いられるオレフィン系ゴム成分(A)は、オレフィン系ゴム(D)からなる組成物であり、無機系及び/又は有機系のフィラー(H)を含むことができる。また、本発明で用いられるオレフィン系ゴム成分(A)は、軟化剤(J−1)を含むこともできる。
【0012】
以下に、このオレフィン系ゴム成分(A)を構成する各成分について説明する。
<オレフィン系ゴム(D)>
本発明において、オレフィン系ゴム(D)は、前記オレフィン系ゴム成分(A)を構成する主要成分である。
【0013】
本発明において用いられるオレフィン系ゴム(D)として、公知の各種オレフィン系ゴムを用いることができるが、その中で、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重
合体ゴムを用いることが好ましい。ここで、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン
共重合体ゴムは、エチレンと炭素原子数が3〜20のα-オレフィンと非共役ポリエンと
からなる無定形ランダムな弾性共重合体であって、ペルオキシドと混合し、加熱下で混練することによって、架橋して流動性が低下するか、あるいは流動しなくなるオレフィン系共重合体ゴムをいう。
【0014】
このようなオレフィン系共重合体ゴムとしては、具体的には、エチレン・α-オレフィ
ン・非共役ジエン共重合体ゴム[エチレン/α-オレフィン(モル比)=約90/10〜
50/50]などが挙げられる。本発明においては、オレフィン系ゴム(D)としてエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム[エチレン/α-オレフィン(モル比)=90/10〜51/49]を用いることが好ましい。
【0015】
上記非共役ジエンとしては、具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン等の非共役ジエンなどが挙げられる。これらのうちでは、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合体ゴムが好ましく、特にエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム、中でもエチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体ゴムが特に好ましい。
【0016】
また、非共役ジエン以外の非共役ポリエンとしては、具体的には、6,10-ジメチル-1,5,9-ウンデカトリエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、6,9-ジメチル-1,5,8-デカトリエン、6,8,9-トリメチル-1,5,8-デカトリエン、6-エチル-10-メチル-1,5,9-ウンデカトリエン、4-エチリデン-1,6-オクタジエン、7-メチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、7-
メチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、7-エチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、4-エチリデン-1,6-デカジエン、7-メチル-4-エチリデン-1,6-デカジエン、7-メチル-6-プロピル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-1,7-ノナジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン等の非共役トリエンなどが挙げられる。
【0017】
本発明で用いられるオレフィン系ゴム(D)のムーニー粘度[ML1+4(100℃)]
は、10〜250、特に30〜200の範囲内にあることが好ましい。
また、このオレフィン系ゴム(D)のヨウ素価は、25以下であることが好ましい。オレフィン系ゴム(D)のヨウ素価がこのような範囲にあると、部分的にバランスよく架橋された熱可塑性エラストマー組成物(C)が得られる。
【0018】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、上記エチレン・α-オレフィン
・非共役ポリエン共重合体ゴムと、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体
ゴム以外のゴムとを組合せて用いることもできる。このようなエチレン・α-オレフィン
・非共役ポリエン共重合体ゴム以外のゴムとしては、たとえばスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム(NR)等のジエン系ゴム、シリコンゴムなどが挙げられる。
【0019】
<フィラー(H)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(C)においては、その強度を向上させる目的で、無機系および/または有機系のフィラーを使用することができる。このようなフィラーとして、従来公知の充填剤、具体的には、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、ケイソウ土、シリカ、アルミナ、グラファイト、ガラス繊維、フッ素系樹脂、ガラスフィラー、マイカなどが挙げられる。本発明においては、カーボンブラックを使用することが、特に好ましい。なお、本発明においては、フィラー(H)として、前記フィラーを、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明においては、前記オレフィン系ゴム(D)と該フィラー(H)との合計重量100重量部中に、フィラー(H)は5〜40重量部、より好ましくは5〜15重量部の割合で用いることができる。なお、2種以上のフィラーが組み合わせて用いられる場合には、フィラーの合計量として上記の割合で用いることができる。
【0021】
<軟化剤(J−1及びJ−2)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(C)は、軟化剤を含むことができる。本発明においては、軟化剤は、オレフィン系ゴム成分(A)を構成する成分として用いられる軟化剤(J−1)としての態様と、その他、該オレフィン系ゴム成分(A)及び後述のオレフィン系樹脂(B)とともに用いられる軟化剤(J−2)としての態様との2つの態様にて用いることができる。本発明で用いられる軟化剤としては、前記(J−1)及び(J−2)のいずれの軟化剤についても、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系物質;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール類;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油;トール油、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその金属塩;石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤;その他マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコールなどが挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる軟化剤は、前記(J−1)として、オレフィン系ゴム(D)100重量部に対し、0〜150重量部の割合でオレフィン系ゴム成分(A)に含むことができる。ただし、熱可塑性エラストマー組成物(C)においてフィラー(H)が用いられる場合には、オレフィン系ゴム(D)と前記フィラー(H)との合計100重量部に対し、0〜150重量部、好ましくは30〜150重量部の割合でオレフィン系ゴム成分(A)に含むことができる。また、熱可塑性エラストマー組成物(C)においてフィラー(H)が用いられるか否かにかかわわらず、前記(J−2)として、オレフィン系ゴム成分(A)とオレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対し、0.1〜300重量部、好ましくは30〜300重量部の割合で用いることができる。上記のような割合で軟化剤を用いると、成形品の耐熱性、引張特性等の物性を低下させることなく、熱可塑性エラストマー組成物の流動性を十分に改善することができる。なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(C)においては、軟化剤として(J−1)としての態様のみにて用いることも、(J−2)としての態様のみにて用いることもできるが、(J−1)としての態様と(J−
2)としての態様との両方の態様にて用いることもできる。
【0023】
[オレフィン系樹脂(B)]
本発明で用いられるオレフィン系樹脂(B)としては、炭素原子数が3〜20のα-オ
レフィンの含有量が50〜100モル%である単独重合体あるいは共重合体であることが好ましく、さらに、共重合性不飽和結合を有しない樹脂であることがより好ましい。このような樹脂の中で特に好ましい樹脂としては、後述の架橋剤(E)と混合し加熱下で混練することによって、熱分解して分子量を減じ、樹脂の流動性が増加する、オレフィン系のプラスチックが挙げられる。このようなオレフィン系のプラスチックの具体的な例としては、以下のような単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0024】
(1)プロピレン単独重合体
(2)プロピレンと10モル%以下の他のα-オレフィンとのランダム共重合体
(3)プロピレンと30モル%以下の他のα-オレフィンとのブロック共重合体
(4)1-ブテン単独重合体
(5)1-ブテンと10モル%以下の他のα-オレフィンとのランダム共重合体
(6)4-メチル-1-ペンテン単独重合体
(7)4-メチル-1-ペンテンと20モル%以下の他のα-オレフィンとのランダム共重合体
上記のα-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メ
チル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられる。上記のオレフィン系のプ
ラスチックの中でも、プロピレン単独重合体と、プロピレン含量が50モル%以上のプロピレン・α-オレフィン共重合体が好ましく、中でも、アイソタクチックポリプロピレン
、プロピレン・α-オレフィン共重合体、たとえばプロピレン・エチレン共重合体、プロ
ピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体などが特に好ましい。
【0025】
本発明のオレフィン系樹脂(B)として共重合体が用いられる場合には、上記α-オレ
フィンのほかスチレン、ビニルベンゼン等、非共役ポリエンでない成分を含むことができる。また、該共重合体がエチリデンノルボルネン等の非共役ポリエンを含む場合には、オレフィン系樹脂(B)が擬似架橋構造を提供するハードセグメント(硬質相)としての機能を損なわないよう、オレフィン系ゴム成分(A)等に加える前に予め水素添加することが好ましい。
【0026】
本発明で用いられるオレフィン系樹脂(B)のメルトフローレート(ASTM D−1
238−65T,230℃、2.16kg荷重)は、0.5〜80g/10分、特に0.6〜60g/10分の範囲にあることが好ましい。
【0027】
本発明においては、オレフィン系樹脂(B)は、組成物の流動性の向上、および耐熱性を向上させる役割をもつ。上記オレフィン系樹脂(B)は、オレフィン系ゴム成分(A)と該オレフィン系樹脂(B)との合計100重量部中に、好ましくは5〜95重量部の割合、さらに好ましくは5〜50重量部の割合で用いられる。オレフィン系樹脂(B)が上記割合で用いられると、柔軟性に優れた成形品を提供し得る、流動性が良好な組成物が得られる。
【0028】
[架橋剤(E)]
本発明で用いられる架橋剤(E)としては、有機過酸化物、イオウ、イオウ化合物、フェノール樹脂等のフェノール系加硫剤などが挙げられる。これらの中では、有機過酸化物が好ましい。
【0029】
本発明で用いられる有機過酸化物の具体例としては、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-
ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、1,3-ビス(tert-ブチルペル
オキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert- ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert- ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
【0030】
これらの中では、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチ
ルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオ
キシ)バレレートが好ましく、中でも、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル
)ベンゼンが最も好ましい。
【0031】
本発明における熱可塑性エラストマー組成物(C)において、架橋剤(E)は、オレフィン系ゴム成分(A)の架橋度を高める目的から、前記オレフィン系ゴム成分(A)と前記オレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、好ましくは0.5〜3.0重量部、より好ましくは0.7〜3.0重量部、さらに好ましくは1.0〜3.0重量部の割合で用いられる。ただし、本発明における熱可塑性エラストマー組成物(C)において前記フィラー(H)を使用する場合には、フィラー(H)により該熱可塑性エラストマー組成物(C)の強度が向上することから、架橋剤(E)を、前記オレフィン系ゴム成分(A)と前記オレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、0.01〜3.0重量部用いることができるが、該熱可塑性エラストマー組成物(C)の強度を一層向上させる観点からは、0.1〜3.0重量部の割合で用いることが好ましい。
【0032】
[架橋助剤(F)]
本発明においては、上記架橋剤(E)による架橋処理に際し、架橋助剤(F)を用いる。この架橋助剤(F)として、具体的には、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾ
イルキノンジオキシム、N-メチル-N,4-ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェ
ニルグアニジン、ビスマレイミド、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤;あるいは、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー;ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0033】
このような架橋助剤を用いることにより、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。これらの架橋助剤のなかでは、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ビスマレイミドが好ましい。これらは、取扱いが容易であり、被架橋処理物の主成分であるオレフィン系ゴム成分(A)と、オレフィン系樹脂(B)との相溶性が良好であり、かつ、有機過酸化物を可溶化する作用を有し、有機過酸化物の分散剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性とのバランスのとれたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0034】
本発明において、架橋助剤(F)は、前記オレフィン系ゴム成分(A)と前記オレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、0.1〜3.0重量部の割合で用いることが好ましい。ただし、本発明における熱可塑性エラストマー組成物(C)において、前
記フィラー(H)を使用する場合には、当該架橋助剤(F)を、前記オレフィン系ゴム成分(A)と前記オレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対して、0.01〜3.0重量部用いることが好ましい。架橋助剤の配合量が上記範囲にあると、得られる熱可塑性エラストマー組成物(C)は、架橋助剤がエラストマー中に未反応のモノマーとして残存することがないため、加工成形の際に熱履歴による物性の変化が生じることがなく、しかも、流動性に優れている。
【0035】
[その他の成分]
さらに、本発明で用いられる熱可塑性エラストマー組成物(C)には、上記各成分のほか、必要に応じて、従来公知の耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、帯電防止剤、充填剤、着色剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0036】
[熱可塑性エラストマー組成物(C)のゴム特性値]
本発明にかかる熱可塑性エラストマー組成物(C)は、下記式(1)で表される計算値(以下、「ゴム特性値」と称する。)が1.0以上である;
【0037】
【数2】

【0038】
(式(1)中、TBは熱可塑性エラストマー組成物(C)の引張強度(単位 MPa)であり、EBは引張伸び(単位 %)であり、CSは圧縮永久ひずみ(単位 %)であり、CRは圧縮クリープ回復(単位 %)であり、かつ、HSは硬度Aである。)。
【0039】
本発明においては、熱可塑性エラストマー組成物(C)に求められるゴム特性を明確かつ適切に評価するためには、適当なゴム特性値を定義し、そのゴム特性値に基づきゴム特性を判断する必要がある。このゴム特性値を定義するにあたっては、必要な物性パラメータを各種物性値から適切に選択し、かつ、選択された物性パラメータからゴム特性値を算出するための適切な計算式を、物性パラメータ間の相関性を考慮しつつ設定する必要がある。
【0040】
本発明においては、エラストマーのシール性能を向上させるために熱可塑性エラストマー組成物(C)が必要とする要素として、次の3つがある。すなわち、
(i)大変形時の変形が少なくなるために、大変形時の応力が高いこと、
(ii)形状を戻す性能があること、および、
(iii)一定の圧力をかけた後、変形回復すること
の3つの要素を具備する必要がある。したがって、これらの要素に対して、
(i)の指標として、引張強度÷引張伸び(TB/EB)を、
(ii)の指標として、圧縮永久歪の逆数(1/CS)を、
(iii)の指標として、圧縮クリープ回復の逆数(1/CR)を
それぞれ設定することが妥当であると推測される。
【0041】
本発明において、ゴム特性値を算出する計算式を考案するにあたっては、これらの指標を適切に組み合わせる必要がある。その際、(i)、(ii)および(iii)に示される指標相互間の相関性は低いが、これらの値は、硬度(HS)に依存する点を考慮する必要がある。
【0042】
そこで、この硬度(HS)に依存しない物性パラメータとして、本発明者らは、上記(1)に示す計算式を考案したのである。すなわち、この計算式により、本発明にかかる熱
可塑性エラストマー組成物(C)の引張強度および変形回復性についての判断指標とすることができるのである。
【0043】
ここで、本発明にかかる熱可塑性エラストマー組成物(C)においては、上記式(1)
により算出されるゴム特性値の値が1.0以上であるが、適切なシール性能を有する熱可塑性エラストマー組成物(C)を得る観点からは、1〜20を示すことが好ましく、特に、1〜10を示すことがさらに好ましい。
【0044】
[熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法]
本発明にかかる熱可塑性エラストマー組成物(C)は、オレフィン系ゴム成分(A)とオレフィン系樹脂(B)とを混練し、架橋剤(E)および架橋助剤(F)により架橋することにより得られる。ここで、前記オレフィン系ゴム成分(A)は、オレフィン系ゴム(D)から得られるが、オレフィン系ゴム(D)とフィラー(H)とを予め混練させて得ることもできる。本発明においては、かかる熱可塑性エラストマー組成物(C)は、前記オレフィン系ゴム成分(A)とオレフィン系樹脂(B)とを混練し、架橋剤(E)および架橋助剤(F)により部分的あるいは完全に動的架橋することにより得ることが好ましい。また、オレフィン系ゴム(A)には、あらかじめ軟化剤(J−1)が予め混練されていても良い。また、「動的架橋」とは、架橋剤の存在下に溶融状態で混練することで架橋反応をせしめることをいう。
【0045】
混練は、解放型のミキシングロール、非解放型のバンバリーミキサー、ニーダー、一軸または二軸押出機、連続ミキサーなどの混練装置により行なうが、非開放型の混練装置により行なうことが好ましい。また、架橋剤(E)等を添加後に行なう混練は、使用する有機ペルオキシドの半減期が1分未満となる温度で行なうのが望ましいことから、その混練温度は、通常150〜280℃、好ましくは、170〜240℃であり、また、混練時間は、1〜20分間、好ましくは1〜5分間である。この混練にあたり、酸化防止剤を添加することがさらに好ましい。混練の際に加えられる剪断力は、通常、剪断速度で10〜104 sec-1、好ましくは102 〜104 sec-1の範囲内で決定される。
【0046】
本発明の熱可塑性エラストマー(C)を製造する際に軟化剤を使用する場合、架橋剤(E)等との混練に先立ち、軟化剤(J−1)として予めオレフィン系ゴム(D)等とともに混練することもできる。また、本発明においては、軟化剤を軟化剤(J−2)として、架橋剤(E)等とともに混練、及び/もしくは、動的架橋後混練することもできる。加えて、軟化剤(J−1)として予めオレフィン系ゴム(D)等とともに予め混練した後、さらに、軟化剤(J−2)として、架橋剤(E)等とともに混練、及び/もしくは、動的架橋後混練することもできる。本発明においては、軟化剤(J)を、架橋剤(E)等との混練に先立ち(J−1)として予めオレフィン系ゴム(D)等とともに混練するとともに、架橋剤(E)等との混練時、および動的架橋後の混練の際にも(J−2)として使用することが好ましい。
【0047】
[熱可塑性エラストマー組成物(C)で製造される成形体]
本発明に係る熱可塑性エラストマーは、従来公知の成形方法、たとえば押出成形、プレス成形、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形等の各種の成形方法を採用することができる。これらの成形方法により、成形体を製造することができる。成形品としては、自動車部品、工業機械部品、電気電子部品、土木建築部品、医療部品などの用途に供され、柔軟性、機械的強度、形状回復性、反撥弾性などが要求されるものがあげられる。
【0048】
また、本発明に係る熱可塑性エラストマーは、公知の発泡方法を用いて発泡体とすることもできる。
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のメルトフローレート(MFR)、実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体の硬度(HS)、引張強度(TB)、引張伸び(EB)、圧縮永久歪み(CS)、圧縮クリープ回復値(CCR)、ゴム特性値(RI)の測定・算出は、次の方法に従って行なった。なお、この圧縮クリープ回復値(CCR)は、上記数式(1)においては圧縮クリープ回復(CR)に相当する値である。
(1)メルトフローレート(MFR)
熱可塑性エラストマー組成物のメルトフローレートは、ASTM D1238に準拠して230℃、50N、100N 荷重で測定した。
(2)硬度(HS)
硬度(HS)は、JIS K6253に準拠して、ショアーA硬度を測定した。測定は、プレス成形機によりシートを作製し、A型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。
(3)引張強度(TB)および伸び(EB)
JIS K6251に準拠して、引張試験を下記の条件で行い、破断時の引張強度(TB:単位 MPa)と引張伸び(EB:単位 %)を測定した。試験は、プレス成形機によりシートを作製し、JIS3号試験片を打ち抜き引張速度500mm/分の条件で行った。
(4)圧縮永久ひずみ(CS)
縦型射出成形機にて直径29.0mm、厚さ12.7mmの円柱状の成形品を製造し、JIS K6262に準拠して、スペーサーにより25%圧縮、23℃×24時間、70℃×24時間熱処理を行い、処理後23℃恒温室で30分放置した後、厚さを測定し、圧縮永久ひずみ(CS:単位 %)を計算した。
(5)圧縮クリープ回復値(CCR)
縦型射出成形機にて直径29.0mm、厚さ12.7mmの円柱状の成形品を製造し、ISO 8013:2006に準拠して、1MPaの荷重で、23℃×24時間、80℃×24時間熱処理により圧縮クリープ試験を行い、圧縮クリープ試験後 23℃恒温室で30分放置した後の厚さ(d1)を測定し、圧縮クリープ測定前の厚さ(d0:今回は成形品の厚さ 12.7mm)と、(2)式を用いることにより、圧縮クリープ回復値(CCR:単位 %)を計算した。
【0049】
(CCR/%) = [(d0)−(d1)]÷(d0)×100 ・・・(2)
(6)ゴム特性値(RI)
ゴム特性が優れる特性値として、引張伸びに対する引張強度が高く、かつ、圧縮永久ひずみ、圧縮クリープ回復が共に低い ゴム特性値(RI0)を、(3)式に従い設定したが、この値は硬度に依存する。そこで、硬度に依存しない特性値を(4)式に従い(RI)として設定した。この値が高いほど、ゴム特性が優れる。
【0050】
【数3】

【0051】
【数4】

【0052】
[実施例1]
オレフィン系ゴム(D−1)として油展エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2- ノルボルネン共重合体ゴム[エチレン含量:78モル%、プロピレン含量:22モル%、ヨウ素価:13、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))74]80重量部に対して、フィラー
(H−1)としてカーボンブラック[旭カーボン(株)製、 旭#55]を20重量部、軟化剤(J−1)としてパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名 PW−90)を30重量部配合してバンバリーミキサーにより80〜170℃の温度で約3〜10分間混練した後、ペレタイザを用いてオレフィン系ゴム成分(A−1)を作製した。
【0053】
得られたオレフィン系ゴム成分(A−1)85重量部と
オレフィン系樹脂(B−1)として、ポリプロピレン樹脂 [プライムポリマー(株)製 J−700GP、ポリプロピレン単独重合体、MFR=8.0g/10分 230℃、2.16kgf]15重量部、
酸化防止剤として[旭電化工業(株)製、商品名 アデカスタブAO−60]0.01重量部と、
架橋剤(E−1)として有機過酸化物[日本油脂(株)製、商品名 パーブチルP]0.7重量部と、架橋助剤(F−1)として エチレングリコールジメタクリレート[三新化学工業(株)製、商品名 サンエステル EG] 0.2重量部とをヘンシェルミキサーで充分混合し、押出機[品番 TEM−50、東芝機械(株)製、L/D=35、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3以降 220℃、ダイス温度:220℃、スクリュー回転数:300rpm、押出量:20kg/h]にて、軟化剤(J−2)としてのプロセスオイル[出光興産(株)製、商品名 PW−90] 35重量部をシリンダーに注入しながら造粒を行い、熱可塑性エラストマー組成物(C)のペレットを得た。その結果を第1表に示す。
【0054】
[実施例2〜4]
フィラー(H−2)(H−3)(H−4)として、それぞれカーボンブラック旭カーボン(株)製 旭#60、#80、#70を用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を第1表に示す。
【0055】
[実施例5〜7]
オレフィン系ゴム(D−1)と、フィラー(H−1)の重量部数をそれぞれ、(E−1):(F−1)=95:5、70:30、60:40とした以外、実施例1と同様に行った。その結果を第1表に示す。
【0056】
[実施例8〜10]
架橋助剤(F−2)(F−3)(F−4)として、トリアリルイソシアヌレート[日本化成(株)製、タイク]、ジビニルベンゼン[三共化成(株)製、ジビニルベンゼン]、ビスマレイミド[大和化成工業(株)製、BMI−4000]を用いた以外は実施例1と同様に行った。その結果を第1表に示す。
【0057】
[実施例11〜13]
架橋助剤(F−1)の配合量として、0.1重量部、1.0重量部、2.0重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。その結果を第1表に示す。
【0058】
[実施例14]
オレフィン系ゴム(D−2)として油展エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノル
ボルネン共重合体ゴム[エチレン含量:60モル%、プロピレン含量:40モル%、ヨウ素価:13、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))60]を用いた以外は、実施例1と
同様に行った。その結果を第2表に示す。
【0059】
[実施例15〜17]
オレフィン系樹脂(B−2)(B−3)(B−4)として、それぞれプロピレンエチレンラ
ンダム共重合体 [プライムポリマー(株)製 J−721GR、MFR=11g/10分 230℃、2.16kgf]、プロピレンエチレンブロック共重合体 [プライムポリマー
(株)製 J−750HP、MFR=14g/10分 230℃、2.16kgf]、ポ
リブテン−1樹脂[ブテン−1単独重合体、MFR=1.8g/10分 230℃、2.
16kgf]を用いた以外は、実施例1と同様に行った。その結果を第2表に示す。
【0060】
[実施例18〜19]
架橋剤(E−2)(E−3)として他の有機過酸化物[日本油脂(株)製、商品名 パーヘキシン25B、パーヘキサ25B]を用いた以外は、実施例1と同様に行った。その結果を第2表に示す。
【0061】
[実施例20〜22]
架橋剤(E−1)の配合量として、0.09重量部、1.9重量部、2.5重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。その結果を第2表に示す。
【0062】
[実施例23]
実施例22において、フィラー(H−1)を用いなかった以外は、実施例22と同様に行った。その結果を第2表に示す。
【0063】
[実施例24〜26]
シリンダーに注入する軟化剤(J−2) プロセスオイル量を0重量部、50重量部、100重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。その結果を第2表に示す。
【0064】
[実施例27〜30]
オレフィン系ゴム成分(A−1)とオレフィン系樹脂(B−1)の重量部数をそれぞれ
、(A−1):(B−1)=50:50、60:40、70:30、90:10とした以外は、実施例1と同様に行った。その結果を第3表に示す。
【0065】
[実施例31〜34]
オレフィン系ゴム成分(A−1)とオレフィン系樹脂(B−1)の重量部数をそれぞれ
、(A−1):(B−1)=50:50、60:40,70:30、90:10とした以外は、実施例23と同様に行った。その結果を第3表に示す。
【0066】
[実施例35〜37]
実施例1のオレフィン系ゴム成分(A−1)につき、軟化剤(J−1)の量として、30重量部に代えてそれぞれ0,75,140重量部を添加したことを除き、実施例1と同様に行った。その結果を第3表に示す。
【0067】
[比較例1]
実施例1において、フィラー(H)を用いず、架橋剤(E−1)を0.04重量部、架橋助剤(F−1)を0.04重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。その結果を第4表に示す。
【0068】
[比較例2]
実施例1において、フィラー(H)を用いず、架橋剤(E−1)を0.4重量部、架橋助剤(F−1)を0.05重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。その結果を第4表に示す。
【0069】
[比較例3]
実施例1において、架橋剤(E)、架橋助剤(F)を用いなかった以外は、実施例1と同様に行った。その結果を第4表に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
上記表1〜4に示された実施例および比較例を参照すると、フィラーを添加したゴム組成物を使用する場合には、少量の架橋剤および架橋助剤を使用することにより、高いゴム特性値(RI)を有する熱可塑性エラストマー組成物を得ることができた。特に、架橋剤を大量に使用した実施例(実施例21および22)においては、さらにゴム特性値(RI)の向上が見られた。一方、架橋剤および架橋助剤を使用しない場合(比較例3)においては、ゴム特性値(RI)が1を大きく下回った。
【0075】
また、フィラーを添加しないゴム組成物を使用する場合にも、架橋剤を大量に使用するとともに一定量の架橋助剤を併用したときには、ゴム特性値(RI)の向上が見られた(実施例23および実施例31〜34)。一方、少量の架橋剤およびごく少量の架橋助剤を使用した場合(比較例1および2)には、ゴム特性値(RI)が低下した。
【0076】
以上のように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、比較例に用いたエラストマー組成物と比較して、架橋剤を多く使用し、または、架橋剤を使用するとともにフィラーを含むことから、引張伸びあたりの引張強度と変形回復性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る熱可塑性エラストマー及びこのエラストマーからなる成形体は、自動車部品、工業機械部品、電気電子部品、土木建築部品、医療部品などの用途に供され、柔軟性、機械的強度、形状回復性、反撥弾性などが要求される分野において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系ゴム(D)を含むオレフィン系ゴム成分(A)5〜95重量部及びオレフィン系樹脂(B)95〜5重量部((A)+(B)=100重量部)に、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを作用させて得られ、かつ、
下記式(1)で表される計算値が1.0以上であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物(C);
【数1】

(式(1)中、TBは熱可塑性エラストマー組成物(C)の引張強度(単位 MPa)であり、EBは引張伸び(単位 %)であり、CSは圧縮永久ひずみ(単位 %)であり、CRは圧縮クリープ回復(単位 %)であり、かつ、HSは硬度Aである。)。
【請求項2】
前記式(1)で表される計算値が1.0〜20であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項3】
オレフィン系ゴム(D)がエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴム[エチレン/α−オレフィン(モル比)=90/10〜51/49]であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項4】
オレフィン系樹脂(B)が、炭素数3〜20のα−オレフィンの含有量が50〜100モル%の単独重合体または共重合体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項5】
オレフィン系ゴム成分(A)が、オレフィン系ゴム(D)100重量部及び軟化剤(J−1)0〜150重量部からなることを特徴とする請求項1〜4に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項6】
オレフィン系ゴム成分(A)及びオレフィン系樹脂(B)が、該オレフィン系ゴム成分(A)とオレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対し、架橋剤(E)0.5〜3.0重量部及び架橋助剤(F)0.1〜3.0重量部を用いて、部分的あるいは完全に架橋されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項7】
架橋剤(E)が有機過酸化物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載
の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項8】
オレフィン系ゴム成分(A)とオレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対し、軟化剤(J−2)が0.1〜300重量部含まれることを特徴とする請求項1〜7のいず
れかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項9】
オレフィン系ゴム成分(A)をオレフィン系樹脂(B)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性
エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
【請求項10】
オレフィン系ゴム(D)と軟化剤(J−1)とを予め混練したオレフィン系ゴム成分(A)をオレフィン系樹脂(B)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添
加し動的架橋して、請求項5〜7のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
【請求項11】
オレフィン系ゴム(D)と軟化剤(J−1)とを予め混練したオレフィン系ゴム成分(A)を、オレフィン系樹脂(B)及び軟化剤(J−2)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、請求項8に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
【請求項12】
オレフィン系ゴム成分(A)を、オレフィン系樹脂(B)及び軟化剤(J−2)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、請求項8に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
【請求項13】
オレフィン系ゴム成分(A)が、オレフィン系ゴム(D)60〜95重量部、無機系及び/又は有機系のフィラー(H)5〜40重量部((D)+(H)=100重量部)並びに軟化剤(J−1)0−150重量部からなることを特徴とする請求項1〜4に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項14】
オレフィン系ゴム成分(A)及びオレフィン系樹脂(B)が、該オレフィン系ゴム成分(A)とオレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対し、架橋剤(E)0.01〜3.0重量部及び架橋助剤(F)0.01〜3.0重量部を用いて、部分的あるいは完全に架橋されていることを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項15】
オレフィン系ゴム成分(A)が、オレフィン系ゴム(D)85〜95重量部、並びに無機系及び/又は有機系のフィラー(H)5〜15重量部(但し(D)と(H)の合計量は100重量部)からなることを特徴とする請求項13または14に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項16】
フィラー(H)がカーボンブラックであることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項17】
架橋剤(E)が有機過酸化物であることを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項18】
オレフィン系ゴム成分(A)とオレフィン系樹脂(B)との合計100重量部に対し、軟化剤(J−2)が0.1〜300重量部含まれることを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)。
【請求項19】
オレフィン系ゴム(D)と無機系及び/又は有機系のフィラー(H)とを予め混練したオレフィン系ゴム成分(A)を、オレフィン系樹脂(B)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、請求項13〜17のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
【請求項20】
オレフィン系ゴム(D)と無機系及び/又は有機系のフィラー(H)と軟化剤(J−1)とを予め混練したオレフィン系ゴム成分(A)を、オレフィン系樹脂(B)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、請求項13〜17のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
【請求項21】
オレフィン系ゴム(D)と無機系及び/又は有機系のフィラー(H)と軟化剤(J−1)とを予め混練したオレフィン系ゴム成分(A)を、オレフィン系樹脂(B)及び軟化剤(J−2)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、請求項18に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
【請求項22】
オレフィン系ゴム(D)と無機系及び/又は有機系のフィラー(H)とを予め混練したオレフィン系ゴム成分(A)を、オレフィン系樹脂(B)及び軟化剤(J−2)と混練し、次いで、架橋剤(E)と架橋助剤(F)とを添加し動的架橋して、請求項18に記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)を得ることを特徴とする、熱可塑性エラストマー組成物(C)の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜8、13〜18の中のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物(C)で製造された成形体。
【請求項24】
発泡体であることを特徴とする請求項23に記載の成形体。

【公開番号】特開2009−73894(P2009−73894A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242484(P2007−242484)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】