説明

熱可塑性エラストマー組成物および医療用ゴム用品

【課題】本発明は、圧縮永久歪、特に加圧したまま冷却された場合の圧縮永久歪が小さい成形品を与える動的架橋を行った熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、動的架橋されたブチル系ゴムと、熱可塑性樹脂を含有し、熱可塑樹脂の含有量が8質量%以下である熱可塑性エラストマー組成物に関する。ブチル系ゴムが、ハロゲン含有ブチルゴムであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清浄性に優れた熱可塑性エラストマー組成物、および該組成物を使用して得られた医療用ゴム用品に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用ゴム用品には高い清浄性が要求されており、具体的には日本薬局方の輸液用ゴム栓試験法に規定されているように、純水にて溶出を行い、たとえば亜鉛などの各種成分が規定量以上検出されないことなどが規定されている。一般の架橋ゴムでは添加した架橋剤による架橋反応を利用して成型されるが、架橋促進剤などの架橋助剤やその分解物、またポリマーの分解物などが溶出物試験にて検出されるという問題がある。そのため、特に亜鉛を含む架橋ゴムの医療用ゴム用品への適用は大きく制限されている。
【0003】
一方、熱可塑性エラストマー(TPE)は、化学架橋が必要ないために、架橋ゴムのように架橋剤、架橋促進剤や架橋助剤を含有しておらず、これらに由来する溶出物の溶出を避けることができる。また、熱可塑性エラストマーでは、熱可塑性樹脂と同様の成形方法を用いることができ、架橋ゴムに必要な架橋後の成形物の仕上げ工程(例えば、バリ取り、打ち抜きなど)が熱可塑性エラストマーでは存在しないため、成形時に衛生的であると同時に経済的な利点を有している。
【0004】
しかしながら、熱可塑性エラストマーは化学的な架橋点を持たないため、高温での圧縮永久ひずみは化学的に架橋された架橋ゴムと比較して著しく高く、耐熱性に劣るという問題がある。特に、医療用ゴム用品においては、高圧蒸気滅菌などの滅菌処理が多用されているため、圧縮永久ひずみが大きく高圧蒸気滅菌工程で型崩れを起こしやすい熱可塑性エラストマーを、医療用ゴム用品の材料として使用することが制限されている。
【0005】
化学的な架橋点を有する動的架橋を行った熱可塑性エラストマー(TPV)は、上記のような化学的な架橋点を持たない熱可塑性エラストマーと比較して高温での圧縮永久ひずみは小さく、耐熱性は優れている。たとえば、トリアジン化合物による動的架矯を行ったTPVが提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、例えば注射器のガスケット部に、動的架橋を行った熱可塑性エラストマーを使用すると、高圧蒸気などで滅菌処理された場合に、筒状体内壁面に密着し圧縮歪を受けたまま高温になるため、ガスケットが壁面を押す圧力が緩和しやすく、壁面を押す力が低下するという問題がある。さらに、滅菌後の冷却によりガスケットが収縮し、壁面を押す力が低下してシール性が悪化するため、液漏れなどの不具合が発生しやすくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−102615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、圧縮永久歪、特に加圧したまま冷却された場合の圧縮永久歪が小さい成形品を与える熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、動的架橋されたブチル系ゴムと、熱可塑性樹脂を含有し、熱可塑樹脂の含有量が8質量%以下である熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0010】
動的架橋されたブチル系ゴムが、ハロゲン含有ブチルゴムであることが好ましい。
【0011】
動的架橋されたブチル系ゴムが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部のトリアジン誘導体で動的架橋されたものであることが好ましい。
【0012】
熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0013】
さらに、軟化剤をゴム成分100質量部に対して0〜100質量部含有することが好ましい。
【0014】
軟化剤がパラファインオイルまたは液状ポリブテンであることが好ましい。
【0015】
本発明は、前記熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られた医療用ゴム用品、特に注射器用ガスケットに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物では、動的架橋されたブチル系ゴムと熱可塑性樹脂を含有し、熱可塑樹脂の含有量を8質量%以下と極限まで低減しているため、圧縮永久歪、特に加圧したまま冷却された場合の圧縮永久歪が小さい成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、動的架橋されたブチル系ゴムと、熱可塑性樹脂を含有し、熱可塑樹脂の含有量が8質量%以下であることを特徴とする。
【0018】
熱可塑性樹脂の配合量は、動的架橋を行った熱可塑性エラストマー(TPV)組成物100質量%中8質量%以下であるが、好ましくは6質量%以下である。熱可塑性樹脂の配合量が、8質量%を超えると、圧縮永久歪(例えば、25%圧縮したまま120℃で22時間熱処理し、室温で3時間放置した後の歪)が大きくなる傾向にあり、注射器の活栓に用いた場合、応力緩和の低下により液漏れが発生する恐れがある。配合量の下限はとくに限定されないが、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましい。3質量%未満となると、成形時の流動性が悪化するため製品の成形が困難となる傾向がある。
【0019】
動的架橋を行った熱可塑性エラストマー(TPV)組成物中のゴム成分としては、薬液などのバリア性が高いという点でブチル系ゴムを使用する。ブチル系ゴムの中でも、動的架橋時の加硫速度が速いという理由から、ハロゲン含有ブチルゴムが好ましい。ハロゲン含有ブチルゴムとしては、ブロモブチルゴム、クロロブチルゴム、イソブチレンとp−メチルスチレンとの共重合体の臭素化物(商品名EXXPRO)などがある。なかでも、生産工程での取り扱いが容易な点から、クロロブチルゴムが好ましい。
【0020】
動的架橋を行った熱可塑性エラストマー(TPV)組成物中の熱可塑性樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用できる。例えば、オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)もしくはポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ナイロン等が挙げられる。なかでも、ブチル系ゴムとの相溶性が高いという点で、オレフィン系樹脂が好ましい。
【0021】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンエチルアクリレート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、エチレン−メタクリル酸樹脂、アイオノマー樹脂または塩素化ポリエチレン、ポリスチレン(PS)等が挙げられる。なかでも、ポリプロピレンまたはポリエチレンが好ましく、ポリプロピレンより好ましい。ポリプロピレンはポリエチレンに比べて流動性が良いことから加工性に優れ、加えて融点がポリエチレンに比べて高く、熱可塑性エラストマー組成物の高温での圧縮永久歪を低減する効果が高い。
【0022】
動的架橋を行った熱可塑性エラストマー組成物中のゴム成分の架橋剤としては、トリアジン誘導体が好ましい。トリアジン誘導体としては、例えば一般式(1):
【化1】

[式中、Rは、−SH、−OR、−SR、−NHRまたは−NR(R、R、R、RおよびRは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基またはシクロアルキル基を示す。RおよびRは、同一であっても異なっていてもよい。)である。MおよびMは、H、Na、Li、K、1/2Mg、1/2Ba、1/2Ca、脂肪族1級アミン、2級アミンもしくは3級アミン、第4級アンモニウム塩またはホスホニウム塩である。MおよびMは、同一または異なってもよい。]
で表される化合物が挙げられる。
【0023】
一般式(1)において、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、1,1−ジメチルプロピル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、またはドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−プタジエニル基、または2−ペンテニル基等の炭素数1〜12のアルケニル基が挙げられる。アリール基としては、単環式または縮合多環式芳香族炭化水素基が挙げられ、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基またはアセナフチレニル基等の炭素数6〜14のアリール基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、2,2−ジフェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、2−ビフェニリルメチル基、3−ビフェニリルメチル基または4−ビフェニリルメチル基等の炭素数7〜19のアラルキル基が挙げられる。アルキルアリール基としては、例えばトリル基、キシル基またはオクチルフェニル基等の炭素数7〜19のアルキルアリール基が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基またはシクロノニル基等の炭素数3〜9のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0024】
一般式(1)で表されるトリアジン誘導体の具体例としては、例えば2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−メチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−(n−ブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−オクチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−プロピルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジアリルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジメチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジ(iso−ブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジプロピルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジ(2−エチルヘキシル)アミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジオレイルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ラウリルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンもしくは2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、またはこれらのナトリウム塩もしくはジナトリウム塩が挙げられる。
【0025】
なかでも、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−ジアルキルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンが好ましく、入手の容易さから2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンが特に好ましい。
【0026】
なお、本発明において、トリアジン誘導体としては1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
トリアジン誘導体はゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部の割合で配合することが好ましい。下限は0.5質量部がより好ましく、上限は8質量部がより好ましく、5質量部が更に好ましい。トリアジン誘導体の配合量が0.1質量部未満では、ゴム成分の架橋が不十分となるため粘着性が発現したり、耐摩耗性等が劣る傾向にある。一方、トリアジン誘導体の配合量が10質量部を超えると、架橋剤の残渣により溶出物試験へ悪影響を与える可能性が大きくなる傾向がある。
【0028】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、適度な柔軟性と弾性を与えるために、軟化剤や可塑剤を配合することができる。
【0029】
軟化剤としては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油や、炭化水素系オリゴマーからなる合成油が挙げられる。合成油としては、例えばα−オレフィンとのオリゴマー、ブテンのオリゴマー、エチレンとα−オレフィンとの非晶質オリゴマーが好ましい。軟化剤としては、薬液への汚染が少ないという点で、パラファインオイル、液状ポリブテンが好ましい。
【0030】
可塑剤としては、フタレート系、アジペート系、セパケート系、ホスフェート系、ポリエーテル系、ポリエステル系等の可塑剤が挙げられる。より具体的には、例えばジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルセパケート(DOS)、ジオクチルアジペート(DOA)等が挙げられる。なかでも、プチル系ゴムとの相容性に優れている点で、ブテンのオリゴマーが好ましい。
【0031】
軟化剤や可塑剤の配合量はゴム成分100質量部に対して100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましい。軟化剤の配合量が100質量部を超えると、組成物の表面から軟化剤がブリードアウトしたり、または軟化剤が架橋阻害を起こしてゴム成分が十分に架橋されず物性が低下してしまう傾向がある。一方、軟化剤の配合量の下限は特に限定されないが、2質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。2質量部未満となると、軟化剤を添加した効果、すなわち動的架橋時におけるゴム成分の分散性が低下する傾向がある。
【0032】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、架橋反応を適切に行うために、公知の架橋助剤を用いてもよい。架橋助剤としては金属酸化物が挙げられるが、清浄性の観点からマグネシウムまたはカルシウムの酸化物が好ましい。前記架橋助剤の配合量は、ゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、本発明においては必要に応じてゴム成分100質量部に対して0〜10質量部の範囲から選択することができる。
【0033】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、ゴム成分の動的架橋時に発生するハロゲン系ガスの残留を防止するために、受酸剤を配合してもよい。受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、マグネシウムまたはカルシウムの炭酸塩、ハイドロタルサイト類または酸化マグネシウムが好ましい。受酸剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜8質量部がより好ましい。
【0034】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、機械的強度を改善するために、必要に応じて充填剤等を配合することができる。充填剤としては、例えばシリカ、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、二塩基性亜リン酸塩(DLP)、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナ等の粉体を挙げることができる。充填剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して30質量部以下が好ましい。充填剤の比率が30質量部を超えると、柔軟性が低下するとともに、清浄性も低下する傾向がある。下限は5質量部が好ましく、上限は20質量部がより好ましい。
【0035】
動的架橋を行った熱可塑性エラストマー(TPV)は、ゴム成分と、トリアジン誘導体と、熱可塑性樹脂とを含む混合物を押出機または混練機に投入し、剪断力を加えてゴム成分と熱可塑性樹脂を混合しながら、トリアジン誘導体がゴム成分を架橋しうる温度に調整してゴム成分を動的に架橋することで製造することができる。また、ゴム成分にトリアジン誘導体をロールで練り込んで複合体とした後、熱可塑性樹脂と混合し、上述の方法で、動的架橋を行うこともできる。これらは一例であり、ゴム成分を動的に架橋できれば、これらの方法に限定されるものではない。
【0036】
熱可塑性樹脂の流出開始温度は、180℃以下が好ましく、175℃以下がより好ましい。流出開始温度が180℃を超えると、動的架橋を行った熱可塑性エラストマー(TPV)の成型性が悪化する傾向にある。
【0037】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ゴム成分が動的架橋され化学的な架橋点を持ち、熱可塑性を示す熱可塑性樹脂の含有率が8質量%以下と少ないため、高温の圧縮永久ひずみが小さく、耐熱性に優れている。これにより本発明の医療用ゴム用品に対して高圧蒸気滅菌を行っても型崩れを起こしにくく、極めて実用的である。
【0038】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、架橋剤としてトリアジン誘導体を用いることにより架橋助剤である亜鉛化合物を配合しなくても十分な架橋を得ることができ、清浄性の観点から優れる。
【0039】
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂と同様の成形方法を用いることができるため成形性に優れている。さらに、架橋後の成形物の仕上げ工程(例えば、バリ取り、打ち抜きなど)を必ずしも必要としないため、成形時に衛生的であると同時に経済的な利点を得やすい。
【0040】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、特に医療用ゴム用品として好適に使用することができる。医療用ゴム用品としては、たとえば、バイアル用医療用ゴム栓、注射器用ガスケット(シリンジ用ガスケット、プレフィルドシリンジ用ガスケット)、医療器用シーリング部材などが挙げられる。
【実施例】
【0041】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0042】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
クロロブチルゴム:エクソンモービル社製のブチル1066
ブロモブチルゴム:エクソンモービル社製のブチル2255
オイル1:出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイルPW380(パラフィンオイル)
オイル2:JX日鉱日石エネルギー株式会社製の日石ポリブテンHV−300(重量平均分子量:1400)
フィラー:タルク(日本ミストロン社製のミストロンベーパー)
トリアジン誘導体:2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン(三協化成(株)製のジスネットDB)
受酸剤:酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製のキョーワマグ150)
ポリプロピレン1:日本ポリケミカル社製のBC6(流出温度181℃)
ポリプロピレン2:日本ポリケミカル社製のBC05B(流出温度170℃)
【0043】
実施例1〜9および比較例1〜2
表1の配合量に従って、材料1の各成分を80℃のロールにて4分間練り込みトリアジン誘導体を含有するマスターバッチ(MB)とした後、押出し機にて180℃で押出し、ペレットにした。
ペレット1(材料1)と材料2をタンブラーにて混合した後、2軸押出機(アイペック製「HTM38」)にて180〜200℃に加熱しながら回転数200rpmで混練して動的架橋を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレット(ペレット2)を作製した。
【0044】
得られたペレット2を50t射出成形機(住友重機械工業(株)製)にて190〜220℃にて射出成形し、試験用の試験片を製造した。
【0045】
以下の方法によって、実施例および比較例の各組成物を評価した。その評価結果を表1に示す。
【0046】
[成形性]
射出成型装置で圧縮永久歪用のΦ29、高さ12.5mmの円柱状試験片を成型した際の外観形状を目視で評価した。
○:外観状問題ないレベル
△:外観に歪みが見られるが試験上問題のないレベル
×:外観に流動性不足による充填不足や変形のため試験用途に不適当
【0047】
[シール性]
注射器に、射出成型したガスケットを装着し、注射器ごと120℃で2時間熱処理した後のガスケットのシール性を評価した。
○:液漏れがなく使用上問題ない
×:液漏れが発生し使用不可
【0048】
[圧縮永久歪]
JIS K6262に準拠して行った。具体的には直径29mm、厚さ12.5mmの円柱状の試験片をジグを用いて25%圧縮したまま120℃で22時間熱処理した。室温で3時間放冷した後、ジグから試験片を取り出して圧力を開放した。圧力の開放後30分後に試験片厚さを測定し、JIS K6262に記載の方法で圧縮永久歪を算出した。
【0049】
【表1】

【0050】
ポリプロピレンの含有量が10.2質量%と低い熱可塑性エラストマー組成物では(比較例1)、圧縮永久歪が高く、耐熱性に劣るとともに、シール性も劣っている。オイルを20質量部配合して、ポリプロピレンの含有量を9.9質量%に低減させた熱可塑性エラストマー組成物では(比較例2)、圧縮永久歪を改善できず、シール性にも劣っている。
【0051】
一方、ポリプロピレンの含有量を8質量%以下に低減させた実施例のゴム組成物では、圧縮永久歪も低く、成形性、シール性に優れていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的架橋されたブチル系ゴムと、熱可塑性樹脂を含有し、熱可塑樹脂の含有量が8質量%以下である熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
動的架橋されたブチル系ゴムが、ハロゲン含有ブチルゴムである請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
動的架橋されたブチル系ゴムが、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部のトリアジン誘導体で動的架橋されたものである請求項1または2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
さらに、軟化剤をゴム成分100質量部に対して0〜100質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
軟化剤がパラファインオイルまたは液状ポリブテンである請求項5に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られた医療用ゴム用品。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られた注射器用ガスケット。


【公開番号】特開2013−112703(P2013−112703A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257874(P2011−257874)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】