説明

熱可塑性エラストマー組成物

【課題】 外観と機械的強度に優れている熱可塑性エラストマー組成物の提供。
【解決手段】(A)架橋性ゴム状重合体と(B)重合型オレフィン系熱可塑性エラストマーとからなる架橋された熱可塑性エラストマー組成物であり、架橋は架橋剤によって行われることが好ましく、必要に応じて、プロピレン系樹脂等の(C)オレフィン系樹脂及び(E)成分である軟化剤、ポリオルガノシロキサンおよび結晶性向上剤から選ばれる少なくとも1種を含有する熱可塑性エラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。更に詳しくは、卓越した外観と機械的強度とを有する熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジカル架橋性エラストマーとPP等のラジカル架橋性のない樹脂とをラジカル開始剤の存在下、押出機中で溶融混練させながら架橋する、いわゆる動的架橋による熱可塑性エラストマー組成物は、既に公知の技術であり、自動車部品等の用途に広く使用されている。
このような熱可塑性エラストマー組成物として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)により製造されたオレフィン系エラストマー(下記特許文献1、2を参照。)を用いる動的架橋技術が知られているが、外観及び機械的強度が充分でなく、必ずしも市場では満足されていない。
【0003】
一方、重合型ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを用いたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いたフィルム等の成形体(特許文献3〜5を参照。)が知られている。
上記組成物は機械的強度、外観及び機械的強度が必ずしも充分でないために、産業界では実用的使用に耐える熱可塑性エラストマー組成物が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−120127号公報
【特許文献2】特開平9−137001号公報
【特許文献3】特開2004−2825号公報
【特許文献4】特開2003−313330号公報
【特許文献5】特開2003−257893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち優れた外観及び機械的強度を有する熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、優れた外観及び機械的強度に優れた熱可塑性エラストマー組成物を鋭意検討した結果、特定のポリマーの組み合わせにより、驚くべきことに外観と機械的強度とを飛躍的に向上させることができることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は次に記載する通りのものである。
[1] (A)架橋性ゴム状重合体と(B)重合型オレフィン系熱可塑性エラストマーとからなり、かつ架橋されていることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
[2] 更に(C)オレフィン系樹脂を含有することを特徴とする[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[3] 前記(A)架橋性ゴム状重合体がエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有する、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム(A−1)、または主鎖および側鎖に二重結合を有する単独重合体及び/または共重合体からなる不飽和ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加共重合体ゴム(A−2)から選ばれる一種以上の架橋性ゴム状重合体であることを特徴とする[1]または[2]に記載の熱可塑性エラストマー。
[4] 前記(C)オレフィン系樹脂が、プロピレン系樹脂であることを特徴とする[2]または[3]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[5] (D)架橋剤により架橋して得られたものであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[6] 更に(E)成分である軟化剤、ポリオルガノシロキサンおよび結晶性向上剤から選ばれる少なくとも1種の剤を含有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、外観および機械的強度に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に関して具体的に説明する。
本発明の組成物は、(A)架橋性ゴム状重合体と(B)重合型オレフィン系熱可塑性エラストマーからなる。
ここで、(A)と(B)が、熱可塑性を維持しつつ、架橋することが重要である。上記成分が架橋することにより、優れた機械的特性、特にゴム特性、耐久性が向上する。そして、(B)が(A)に対して相容化剤として作用するために、(A)の架橋粒子が均一に分散することにより、外観と機械的強度が著しく向上することを本発明者は見出し、本発明を完成したものである。
【0009】
以下に本発明の熱可塑性エラストマー組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
(A)成分
本発明において、(A)架橋性ゴム状重合体は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃以下であることが好ましく、このようなゴム状重合体は、例えば、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム及び該ジエン系ゴムを水素添加した飽和重合体ゴム(水素添加共重合体ゴム)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−オクテン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体ゴム(EPDM)等のエチレン・α−オレフィン共重合体等の架橋ゴムまたは非架橋ゴム、並びに上記ゴム成分を含有する熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0010】
また(A)の100℃で測定したムーニー粘度(ML)(ISO 289−1985(E)準拠)は、20〜150が好ましく、更に好ましくは50〜120である。
本発明において(A)架橋性ゴム状重合体の中で好ましい重合体の一つはエチレン・α−オレフィン共重合体であり、エチレンおよび炭素数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体が更に好ましい。α−オレフィンとして、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等が挙げられる。中でもプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1が好ましく、特に好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンであり、とりわけプロピレン、ブテン−1、オクテン−1が最も好ましい。
【0011】
また、(A)架橋性ゴム状重合体は必要に応じて、不飽和結合を有する単量体を含有することができ、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、1,4−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体等の環状ジエン化合物、及びアセチレン類が好ましく用いられる。とりわけエチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)が最も好ましい。
【0012】
本発明において(A)成分の好ましい重合体の一つであるエチレン・α−オレフィン共重合体(以下、(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体という。)は、公知のメタロセン系触媒を用いて製造することが好ましい。
一般にはメタロセン系触媒は、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒からなり、重合触媒として高活性であるだけでなく、チーグラー系触媒と比較して、得られる重合体の分子量分布が狭く、共重合体中のコモノマーである炭素数3〜20のα−オレフィンの分布が均一である。
【0013】
本発明において(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、α−オレフィンの共重合比率が1〜60重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは20〜45重量%である。α−オレフィンの共重合比率は組成物の硬度、引張強度等の観点から60重量%以下が好ましく、一方、柔軟性、機械的強度の観点から1重量%以上が好ましい。
【0014】
(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、0.8〜0.9g/cmの範囲にあることが好ましい。この範囲の密度を有するエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、柔軟性に優れ、硬度の低い熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
【0015】
本発明において用いられる(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、長鎖分岐を有していることが望ましい。長鎖分岐が存在することで、機械的強度を落とさずに、共重合されているα−オレフィンの比率(重量%)に比して、密度をより小さくすることが可能となり、低密度、低硬度、高強度のエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。長鎖分岐を有するエチレン・α−オレフィン共重合体については、米国特許明細書第5278272号明細書等に記載されている。
【0016】
また、(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、示差走査熱量測定法(DSC法)で室温以上に融点ピークを有することが望ましい。融点ピークを有するとき、融点以下の温度範囲では形態が安定しており、取扱い性に優れ、ベタツキも少ない。
また、本発明において用いられる(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトインデックスは、0.01〜100g/10分(190℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられ、更に好ましくは0.2〜10g/10分である。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の架橋性の観点から100g/10分以下が好ましく、また、流動性、加工性の観点から0.01g/10分以上が好ましい。
【0017】
本発明において、(A)のもう一つの好ましい重合体である上記水素添加共重合体ゴムは、少なくとも一種の共役ジエン系単量体の単独重合体ゴム、または共役ジエン系単量体と芳香族ビニル単量体とからなる共重合体ゴムであって、ランダム共重合体の全二重結合の水素添加率が50%以上である水素添加共重合体ゴムが好ましく、とりわけ主鎖および側鎖に二重結合を有する重合体及び/または共重合体からなる不飽和重合体ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加共重合体ゴムであることが好ましい。
【0018】
上記水素添加共重合体ゴムにおいて、必要に応じて、例えば、オレフィン系、メタクリル酸エステル系、アクリル酸エステル系、不飽和ニトリル系、塩化ビニル系単量体等の共役ジエンと共重合可能な単量体(以下、共重合可能な単量体という。)を共重合することができる。
【0019】
上記共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1、3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1、3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等を挙げることができ、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが最も好ましい。
また、前記芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。上記芳香族単量体は一種または二種以上併用することができる。芳香族ビニル単量体含有量は、0〜80重量%が好ましく、更に好ましくは0〜50重量%、最も好ましくは0〜30重量%である。
【0020】
(A)としての水素添加共重合体ゴムにおいて、水素添加前の共役ジエン単量体部分のビニル結合は、分子内に均一に存在していても、分子鎖に沿って増減あるいは減少してもよいし、また、ビニル結合含有量の異なった、複数個のブロックを含んでいてもよい。そして、芳香族ビニル単量体および/または共重合可能な単量体を含む場合は、共役ジエン単量体と芳香族ビニル単量体および/または共重合可能な単量体とはランダムに結合することが好ましいが、ブロック状の芳香族ビニル単量体および/またはブロック状の共重合可能な単量体を含んでもよい。ブロック状の芳香族ビニル重合体の含有率は、全芳香族ビニル単量体中の20重量%以下が好ましく、更に好ましくは10重量%以下である。
【0021】
上記水素添加共重合体ゴム中の全オレフィン性二重結合は、50%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加され、そして主鎖の残存二重結合が5%以下、側鎖の残存二重結合が5%以下である。このような水素添加共重合体ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のジエン系ゴムを部分的または完全に水素添加したゴム状重合体を挙げることができ、特に水素添加ブタジエン系または水素添加イソプレン系ゴムが好ましい。
【0022】
このような水素添加共重合体ゴムは、上述のジエン系ゴムを公知の水素添加方法で部分水素添加することにより得られる。例えば、F.L.Ramp,etal,J.Amer.Chem.Soc.,83,4672(1961)記載のトリイソブチルボラン触媒を用いて水素添加する方法、Hung Yu Chen,J.Polym.Sci.Polym.Letter Ed.,15,271(1977)記載のトルエンスルフォニルヒドラジドを用いて水素添加する方法、あるいは特公昭42−8704号公報に記載の有機コバルトー有機アルミニュウム系触媒あるいは有機ニッケルー有機アルミニュウム系触媒を用いて水素添加する方法等を挙げることができる。
【0023】
ここで、特に好ましい水素添加の方法は、低温、低圧の温和な条件下で水素添加が可能な触媒を用いる特開昭59−133203号、特開昭60−220147号の各公報あるいは不活性有機溶媒中にて、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム化合物と、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子またはセシウム原子を有する炭化水素化合物とからなる触媒の存在下に水素と接触させる特開昭62−207303号公報に示される方法である。
【0024】
また、水素添加共重合体ゴムの25℃における5重量%スチレン溶液粘度(5%SV)は、20〜300センチポイズ(cps)の範囲にあることが好ましい。特に好ましい範囲は25〜150cpsである。
そして、水素添加共重合体ゴムは結晶性を有することが好ましく、その結晶性の指標である吸熱ピーク熱量の制御は、テトラヒドロフラン等の極性化合物の添加または重合温度の制御により行う。吸熱ピーク熱量の低下は、ゴム状重合体製造時に極性化合物を増量するか、または重合温度を低下させて、1,2−ビニル結合を増大させることにより達成される。
【0025】
本発明にて用いられる(A)架橋性ゴム状重合体は、複数の種類のものを混合して用いても良い。そのような場合には、加工性の更なる向上を図ることが可能となる。
本発明において、(A)架橋性ゴム状重合体中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合が30重量%以下であることが好ましく、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは15重量%以下、極めて好ましくは10重量%以下である。上記割合が30重量%以下の場合には架橋性が著しく高まり、機械的強度、外観、感触、耐磨耗性及び耐油性が向上する。
【0026】
本発明において(A)架橋性ゴム状重合体中に占めるポリスチレン換算分子量が15万以下の該重合体の割合を制御する方法としては、分子量が15万以下の部分が30重量%以下になるように全体の分子量を高める方法、または分子量15万以下の部分を抽出等の操作で除去する方法、あるいは重合触媒等により選択的に分子量15万以下が生成しない重合方法等が挙げられる。
【0027】
(B)成分
本発明において(B)重合型オレフィン系熱可塑性エラストマーは、オレフィン系ゴムの分散相とオレフィン系樹脂の連続相からなる重合法によって製造された熱可塑性エラストマーである。これは通常は多段重合法により製造される。
【0028】
本発明において、多段重合法とは、重合が1回で終了するのではなく、2段階以上の多段重合を行うことにより、複数の種類のポリマーを連続して製造することができる重合法を意味し、機械的な手法を用いて異種類のポリマーからなる混合樹脂を得るところの通常のポリマーブレンド法とは異なる手法である。
【0029】
多段重合法によって得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、反応器中で(1)ハードセグメントと、(2)ソフトセグメントとが二段階以上で多段重合されてなる共重合体である。(1)ハードセグメントとしては、プロピレン単独重合体ブロックや、あるいはプロピレンとα−オレフィンとの共重合体ブロックが代表的であり、例えばプロピレン/エチレン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/エチレン/1−ブテン等の二元または三元共重合体ブロックが挙げられる。また(2)ソフトセグメントとしては、エチレン単独重合体ブロック、およびエチレンとα−オレフィンとの共重合体ブロックが代表的であり、例えばエチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ブテン等の二元または三元共重合体ブロックが挙げられる。
【0030】
(C)成分
本発明において、必要に応じて添加することができる(C)オレフィン系樹脂は、エチレン系またはプロピレン系樹脂等の炭素数2〜20であるエチレン及び/またはα−オレフィンの単独もしくは二種以上を含有する共重合樹脂であり、特にプロピレン系樹脂が好ましい。
本発明で最も好適に使用されるプロピレン系樹脂を具体的に示すと、ホモのアイソタクチックポリプロピレン、プロピレンとエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等の他のα−オレフィンとのアイソタクチック共重合樹脂(ブロック、ランダムを含む。)等が挙げられる。
【0031】
本発明において、(C)成分の中でも、(C−1)架橋型オレフィン系樹脂であるエチレンとプロピレンとのランダム共重合樹脂等のプロピレン系ランダム共重合樹脂単独または、(C−1)と(C−2)分解型オレフィン系樹脂であるプロピレン系ブロック共重合体樹脂またはホモポリプロピレン系樹脂との組み合わせが好ましい。このような架橋型オレフィン系樹脂と分解型オレフィン系樹脂の二種のオレフィン系樹脂を組み合わせることにより、外観と機械的強度が更に向上する。
【0032】
(C−1)として、例えばエチレンとプロピレンのランダム共重合樹脂を挙げることができ、エチレン成分がポリマー主鎖中に存在する場合は、それが架橋反応の架橋点となり、架橋型オレフィン系樹脂の特性を示す。
【0033】
(C−2)はα−オレフィンが主成分であり、ポリマー主鎖中にエチレン単位を含まないことが好ましい。但し、プロピレン系ブロック共重合樹脂のようにエチレン−αオレフィン共重合体が分散相として存在する場合は、分解型オレフィン系樹脂の特性を示す。
(C)は複数個の(C−1)、(C−2)成分の組み合わせでも良い。
【0034】
(C−1)の中で最も好ましいプロピレンを主体としたα−オレフィンとのランダム共重合樹脂は、高圧法、スラリー法、気相法、塊状法、溶液法等で製造することができ、重合触媒としてはZiegler-Natta触媒、シングルサイト触媒、メタロセン触媒が好ましい。特に狭い組成分布、分子量分布が要求される場合には、メタロセン触媒を用いたランダム共重合法が好ましい。
【0035】
ランダム共重合樹脂の具体的製造法は、欧州特許第969043号明細書または米国特許第5198401号明細書に開示されており、液状プロピレンを攪拌機付き反応器に導入した後に、触媒をノズルから気相または液相に添加する。次いで、エチレンガスまたはα−オレフィンを反応器の気相または液相に導入し、反応温度、反応圧力をプロピレンが還流する条件に制御する。重合速度は触媒濃度、反応温度で制御し、共重合組成はエチレンまたはα−オレフィンの添加量により制御する。
【0036】
また、本発明において好適に用いられるオレフィン系樹脂のメルトインデックスは、0.1〜100g/10分(230℃、2.16kg荷重(0.212Pa))の範囲のものが好ましく用いられる。熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性、機械的強度の観点から100g/10分以下であることが好ましく、また、流動性、成形加工性の観点から0.1g/10分以上が好ましい。
【0037】
本発明において、(A)、(B)及び(C)からなる組成物100重量部中の各成分は、(A)が1〜99重量部が好ましく、更に好ましくは10〜80重量部、最も好ましくは20〜70重量部であり、(B)が1〜99重量部が好ましく、更に好ましくは1〜50重量部、最も好ましくは1〜30重量部であり、(C)が0〜98重量部が好ましく、更に好ましくは9〜80重量部、最も好ましくは9〜70重量部である。上記範囲内では、外観と機械的強度のバランスが向上する。
【0038】
(D)成分
本発明の組成物は、(D)架橋剤で架橋されることが好ましい。
(D)架橋剤は、(D−1)架橋開始剤を必須成分とし、必要に応じて(D−2)多官能単量体、(D−3)単官能単量体を含有する。上記(D)架橋剤は、(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対し0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜3重量部の量で用いられる。上記範囲内では架橋のレベルが高まり、組成物の外観と機械的強度のバランスが向上する。
【0039】
ここで、(D−1)架橋開始剤は、有機過酸化物、有機アゾ化合物等のラジカル開始剤等が挙げられ、その具体的な例として、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドおよびm−トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、およびクミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類;ならびに、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドおよび1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類を挙げることができる。
【0040】
これらの化合物の中では、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンおよび2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
【0041】
上記(D−1)は、(D)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%以下が好ましい。
【0042】
本発明において、(D)架橋剤に必要に応じて含まれる(D−2)多官能単量体は、官能基としてラジカル重合性の官能基が好ましく、とりわけビニル基が好ましい。官能基の数は2以上であるが、(D−3)との組み合わせで特に3個以上の官能基を有する場合には有効である。具体例としては、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、P−キノンジオキシム、P,P’−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等が好ましく用いられる。特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。これらの多官能単量体は複数のものを併用して用いてもよい。
【0043】
上記(D−2)は、(D)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%以下が好ましい。
【0044】
本発明において用いられる前記(D−3)は、架橋反応速度を制御するために加えるビニル系単量体であり、ラジカル重合性のビニル系単量体が好ましく、芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体等のエステル系単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体等の不飽和カルボン酸単量体、無水マレイン酸単量体等の不飽和カルボン酸無水物、N−置換マレイミド単量体等を挙げることができる。
上記(D−3)は、(D)成分中で好ましくは1〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%の量が用いられる。架橋性の観点から1重量%以上が好ましく、機械的強度の観点から80重量%が好ましい。
【0045】
本発明において、最も好ましい(D)架橋剤の組み合わせは、架橋開始剤として、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンまたは2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3と、多官能単量体として、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)との組み合わせであり、該組合せの場合、機械的強度、後述の(E)が存在するときの(E)の保持性が優れている。
【0046】
(E)成分
(E)成分は、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系などの炭化水素からなるプロセスオイルが好ましい。とりわけ、パラフィン系炭化水素主体またはゴムとの相容性の観点からナフテン系炭化水素主体のプロセスオイルが好ましい。熱・光安定性の観点から、プロセスオイル中の芳香族系炭化水素の含有量については、ASTM D2140−97規定の炭素数比率で10%以下であることが好ましく、更に好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下である。
これらの(E)成分は組成物の硬度、柔軟性の調整用に、(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して、5〜500重量部、好ましくは10〜150重量部用いる。上記範囲内では柔軟性と耐ブリード性のバランスが優れる。
【0047】
(F)成分
本発明において(C)成分以外の熱可塑性樹脂(F)を配合することができる。(F)は、(A)、(B)、(C)と分散し得るものであればとくに制限はない。たとえば、ポリスチレン系、ポリフェニレンエーテル系、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリレート系等の単独もしくは二種以上を混合したものを使用することができる。
【0048】
本発明において、(A)、(B)、(C)からなる組成物100重量部に対して、(F)は、1〜99重量部が好ましく、更に好ましくは10〜90重量部、最も好ましくは20〜80重量部である。
本発明において、耐磨耗性が要求される場合は、必要に応じて、JIS−K2410規定の25℃における動粘度が5000センチストークス(5×10−3/sec)以上であるポリオルガノシロキサンを添加することができる。
上記ポリオルガノシロキサンは、粘調な水飴状からガム状の様態であり、アルキル、ビニル及び/またはアリール基置換シロキサン単位を含むポリマーであれば特に制約されない。その中でもポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
【0049】
本発明に用いられるポリオルガノシロキサンの動粘度(25℃)は、5000CS(5×10−3/sec)以上であり、更に好ましくは、1万CS(1×10−2/sec)以上1000万CS(10m/sec)未満、最も好ましくは5万CS(0.05m/sec)以上200万CS(2m/sec)未満である。
本発明において、ポリオルガノシロキサンの添加量は、(A)、(B)、(C)との合計100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜10重量部、最も好ましくは0.5〜5重量部である。
【0050】
本発明の組成物の中でも、高温の圧縮永久歪または機械的強度等の高温ゴム特性が要求される場合は、該組成物中の(C)の結晶性を制御することが必要であり、以下で定義する(C)の示差走査熱量測定法(DSC法)での結晶化温度が、110〜150℃の範囲にあり、かつ(C)の結晶化熱量が30〜200J/gの範囲にあることが好ましい。
組成物中での(C)の結晶化温度、結晶化熱量は示差走査熱量測定法(DSC法)により測定した。具体的には、島津製作所(株)製、熱分析装置DSC50を用いて、5mg試料を窒素気流下、室温から30℃/分で昇温し、230℃に到達した後に、直ちに5℃/分で50℃まで降温し、この段階で検出された結晶化ピークから、本願では結晶化温度及び結晶化熱量を求めた。
【0051】
ここで、結晶化温度はピークトップ温度(℃)であり、結晶化ピーク熱量(J/g)は、ベースラインに対して変化した熱量変化を示す曲線に囲まれたピーク面積から算出した。上記曲線はブロードな曲線または鋭利な曲線のいずれをも含む。また、ピークトップ温度とは、ベースラインと平行に直線を引き、熱量変化を示す曲線との接線との交点を言う。
【0052】
本発明において、結晶性の制御方法については、結晶性の高いオレフィン系樹脂を用いて本願組成物を製造する方法、または結晶性の低いオレフィン系樹脂に対して結晶性向上剤を添加して本願組成物を製造する方法等があり、制御方法は制限されない。
上記結晶性向上剤は、リン酸エステル塩系、ソルビトール系、カルボン酸塩系で分類される結晶核剤、または無機フィラーが代表的である。
【0053】
上記結晶核剤の具体例として、リン酸2、2’ーメチレンビス(4,6ージーtーブチルフェニル)ナトリウム、ビス(pーメチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(pーエチルベンジリデン)ソルビトール等を挙げることができる。 また上記無機フィラーの具体例として、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等の単体または、それらの複合体(合金)、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、ゼオライト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズの水和物等の無機金属化合物の水和物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、ムーカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、クレー、マイカ、タルク等を挙げることができ、中でも板状フィラーが好ましく、タルク、マイカ、カオリンが特に好ましい。
【0054】
上記結晶性向上剤の量は、(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して、0.01〜200重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜150重量部、最も好ましくは0.1〜100重量部、極めて好ましくは0.1〜50重量部である。
【0055】
また、本発明の組成物には、その特徴を損ねない程度にその他の無機フィラー、可塑剤、有機・無機顔料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、シリコンオイル、アンチブロッキング剤、発泡剤、帯電防止剤、抗菌剤を含有することが可能である。
本発明の組成物の製造には、通常の樹脂組成物、ゴム組成物の製造に用いられるバンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機、等の一般的な方法を採用することが可能である。とりわけ効率的に動的架橋を達成するためには2軸押出機が好ましく用いられる。2軸押出機は、(A)、(B)、(C)とを均一かつ微細に分散させ、さらに他の成分を添加させて、架橋反応を生じせしめ、本発明の組成物を連続的に製造するのに、より適している。
【0056】
本発明の組成物は、好適な具体例として、次のような加工工程を経由して製造することができる。すなわち、(A)、(B)、(C)とをよく混合し、押出機のホッパーに投入する。(D)を、(A)、(B)、(C)とともに当初から添加してもよいし、押出機の途中から添加してもよい。またオイルを押出機の途中から添加してもよいし、当初と途中とに分けて添加してもよい。(A)、(B)、(C)の一部を押出機の途中から添加してもよい。押出機内で加熱溶融し混練される際に、前記(A)と(D)とが架橋反応し、さらに(E)軟化剤を添加して溶融混練することにより架橋反応と混練分散とを充分させたのち押出機から取り出すことにより、本発明の組成物のペレットを得ることができる。
【0057】
また特に好ましい溶融押出法としては、原料添加部を基点としてダイ方向に長さLを有し、かつL/Dが5から100(但しDはバレル直径)である二軸押出機を用いる場合である。二軸押出機は、その先端部からの距離を異にするメインフィ−ド部とサイドフィ−ド部の複数箇所の供給用部を有し、複数の上記供給用部の間及び上記先端部と上記先端部から近い距離の供給用部との間にニ−ディング部分を有し、上記ニ−ディング部分の長さが、それぞれ3D〜10Dであることが好ましい。
【0058】
また本発明において用いられる製造装置の一つの二軸押出機は、二軸同方向回転押出機でも、二軸異方向回転押出機でもよい。また、スクリュ−の噛み合わせについては、非噛み合わせ型、部分噛み合わせ型、完全噛み合わせ型があり、いづれの型でもよい。低いせん断力をかけて低温で均一な樹脂を得る場合には、異方向回転・部分噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。やや大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。さらに大きい混練を要する場合には、同方向回転・完全噛み合わせ型スクリュ−が好ましい。
【0059】
本発明の組成物の最も好ましい製造法は、(A)、(B)、(C)とを溶融混合後、(D)により架橋する方法である。
こうして得られた熱可塑性エラストマー組成物は任意の成形方法で各種成型品の製造が可能である。射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、発泡成形等が好ましく用いられる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、これら実施例および比較例において、各種物性の評価に用いた試験法は以下の通りである。
【0061】
(1)引張破断強度[MPa]
Tダイ押出シートから、JIS K6251に準じ、23℃にて評価した。
(2)外観
シート肌から以下の基準で外観評価を行った。
◎ 極めて良好
○ 良好
△ 良好であるが、ややざらつく
× 全体的にざらつく。光沢無し
【0062】
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いた。
(A)架橋性ゴム状重合体
<エチレン・α−オレフィン共重合体>
(a)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−1)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造した。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。([TPE−1]と表記する。)
(b)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン(ENB)共重合体(TPE−2)
通常のチーグラー触媒を用いた方法により製造した。共重合体のエチレン/プロピレン/ENBの組成比は、72/24/4(重量比)であり、ムーニー粘度は105である。([TPE−2]と表記する。)
(c)エチレンとオクテン−1との共重合体(TPE−3)
特開平3−163088号公報に記載のメタロセン触媒を用いた方法により製造した。共重合体のエチレン/オクテン−1の組成比は、72/28(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。([TPE−3]と表記する。)
【0063】
<水素添加共役ジエン系ゴム>
(a)水素添加ブタジエン重合体
国際公開第01/48079号パンフレットに記載の方法に基づき、ブタジエン重合体を水素添加することにより製造した。ムーニー粘度は100である。([H−BR]と表記する。)
(b)水素添加スチレン・ブタジエン共重合体
国際公開第01/48079号パンフレットに記載の方法に基づき、スチレン・ブタジエン共重合体を水素添加することにより製造した。前駆体の共重合体のスチレン/ブタジエンの組成比は、70/30(重量比)であり、ムーニー粘度は100である。([H−SBR]と表記する。)
【0064】
(B)重合型オレフィン系熱可塑性エラストマー
特開平4−224809号公報に記載の多段重合法によりエチレンープロピレン共重合体を製造した。メルトフローレート(JIS K 6758)は0.7g/10分、曲げ弾性率(JIS K 6758)は280MPaである。([R−TPO]と表記する。)
【0065】
(C)オレフィン系樹脂
(1)ポリプロピレン
アイソタクチックホモポリプロピレン([PP]と表記する)、曲げ弾性率:1800MPa
【0066】
(D)架橋剤
1)架橋開始剤(D−1)
2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製 商品名パーヘキサ25B)([POX]と表記する)
2)多官能単量体(D−2)
トリアリルイソシアヌレート(TAIC)(日本化成(株)製) ([TAIC]と表記する。)
(E)軟化剤
パラフィン系オイル(出光石油化学(株)製 商品名PW−90) ([MO]と表記する)
【0067】
[実施例1〜8および比較例1〜3]
押出機として、バレル中央部に注入口を有した2軸押出機(40mmφ、L/D=47)を用いた。スクリューとしては注入口の前後に混練部を有した2条スクリューを用いた。
表1に記載の組成の混合物を、まずMO以外の成分を2軸押出機に導入し、引き続き、押出機の中央部にある注入口よりMOをポンプにより注入し、160℃で溶融押出を行った。
このようにして得られた組成物から200℃にてTダイ押出成形により2mm厚のシートを作成し、評価した。その結果を表1に示した。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、自動車用部品、自動車用内装材、エアバッグカバー、機械部品、電気部品、ケーブル、ホース、ベルト、玩具、雑貨、日用品、建材、シート、フィルム等を始めとする用途に幅広く使用可能であり、産業界に果たす役割は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)架橋性ゴム状重合体と(B)重合型オレフィン系熱可塑性エラストマーとからなり、かつ架橋されていることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
更に(C)オレフィン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記(A)架橋性ゴム状重合体がエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを含有する、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム(A−1)、または主鎖および側鎖に二重結合を有する単独重合体及び/または共重合体からなる不飽和ゴムの全オレフィン性二重結合の50%以上が水素添加された水素添加共重合体ゴム(A−2)から選ばれる一種以上の架橋性ゴム状重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー。
【請求項4】
前記(C)オレフィン系樹脂が、プロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項2または3に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
(D)架橋剤により架橋して得られたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
更に(E)成分である軟化剤、ポリオルガノシロキサンおよび結晶性向上剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。

【公開番号】特開2006−56962(P2006−56962A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239114(P2004−239114)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】