説明

熱可塑性エラストマ樹脂組成物

【課題】低粘度で、優れた機械的性質および溶融時の流動性を有する熱可塑性エラストマ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)55〜99重量%と、ジカルボン酸成分とジアルコール成分をランダムに共重合させたポリエステルランダム共重合体(B)1〜45重量%とからなることを特徴とする熱可塑性エラストマ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマ樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、柔軟で、引張破断強度、耐屈曲疲労性等の機械的性質に優れるばかりか、射出成形、押出成形等の成形性が良好で、流動性にも優れる熱可塑性エラストマ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールのような脂肪族ポリエーテル単位またはポリラクトンのような脂肪族ポリエステル単位をソフトセグメントとするポリエステルブロック共重合体は、柔軟でゴム的性質を有し、機械的物性が高く、高温特性、低温特性、耐油性、および耐薬品性等の多くの特性が優れる成形用材料であり、これらの物性バランスが良いことから、その用途を、シート、フィルム、繊維等の産業資材や自動車および電気・電子部品に拡大してきた。
【0003】
しかしながら、このようなポリエステルブロック共重合体の特長を保持したまま、より高い柔軟性を与えることを試みた場合、その柔軟性には限界があり、その用途展開に制限を受けていた。
【0004】
ポリエステルブロック共重合体の柔軟性を改善する従来の試みとしては、水添SBSブロックコポリマー等の熱可塑性弾性体とポリエステル系熱可塑性エラストマからなる組成物(例えば、特許文献1参照)、およびスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加誘導体とゴム用軟化剤とポリエステル系エラストマとからなる組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0005】
一方、ポリエステルブロック共重合体に可塑剤を配合した組成物(例えば、特許文献3、4参照)、ポリエステルブロック共重合体に変性された水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体と可塑剤を配合した組成物およびポリエステルブロック共重合体に水添スチレン−イソプレンブロック共重合体と可塑剤を配合した組成物(例えば、特許文献5参照)、および熱可塑性ポリエステルエラストマーに水添ジエン系共重合体と可塑剤を配合した組成物(例えば、特許文献6参照)もすでに提案されている。
【0006】
上記した従来の提案によれば、確かに従来のポリエステルブロック共重合体に比べて柔軟な樹脂組成物を得ることができるが、これらの技術をもってしても柔軟化できる範囲には限界があり、より柔軟なものを得ようとすると、耐熱性や機械的性質が大きく低下するため、実際の製品として使用する際に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−100045号公報
【特許文献2】特開平1−193352号公報
【特許文献3】特開平2−043251号公報
【特許文献4】特開平3−109458号公報
【特許文献5】特開平8−277359号公報
【特許文献6】特開平4−323250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、低粘度で、溶融時の流動性に優れ、優れた機械的性質を有する熱可塑性エラストマ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかるに、かかる事情に鑑み、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)と、ジカルボン酸成分とジアルコール成分をランダムに共重合させたポリエステルランダム共重合体(B)とを組み合わせることによって、低粘度で、優れた機械的性質および溶融時の流動性を有する熱可塑性エラストマ樹脂組成が得られることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)55〜99重量%と、ジカルボン酸成分とジアルコール成分をランダムに共重合させたポリエステルランダム共重合体(B)1〜45重量%とからなることを特徴とする熱可塑性エラストマ樹脂組成物、
[2]ポリエステルブロック共重合体(A)における高融点結晶性重合体セグメント(a)が、ポリブチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするものであることを特徴とする前記[1]記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物、
[3]ポリエステルブロック共重合体(A)における低融点重合体セグメント(b)が、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール単位を主たる構成成分とするものであることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物、
[4]ポリエステルブロック共重合体(A)成分における低融点重合体セグメント(b)の共重合量が10〜90重量%であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物、
[5]ポリエステルブロック共重合体(A)の配合量が60〜95重量%であり、ポリエステルランダム共重合体(B)の配合量が5〜40重量%であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物、および
[6]ポリエステルランダム共重合体(B)が、非晶性もしくは低結晶性であることを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下に説明するとおり、機械的性質(引張破断強度、引張破断伸度および耐熱老化性等)に優れたポリエステルエラストマーの特徴を保持し、かつ、成形時の流動性にも優れた熱可塑性エラストマ樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物は、主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)55〜99重量%と、ジカルボン酸成分とジアルコール成分をランダムに共重合させたポリエステルランダム共重合体(B)1〜45重量%とからなることを特徴とする。
【0013】
本発明に用いるポリエステルブロック共重合体(A)の高融点結晶性重合体セグメント(a)は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されないが、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールから形成されるポリエステルが好ましく、テレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートがより好ましい。さらに、この他に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−タ−フェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオーターフェニル等の芳香族ジオール等から誘導されるポリエステル、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルを含んでいてもよい。
【0014】
本発明に用いるポリエステルブロック共重合体(A)の低融点重合体セグメント(b)は、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントであれば本発明の効果を阻害しない限り特に限定されない。前記脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。前記脂肪族ポリエスエテルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルのうち、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性からポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が好ましい。また、これらの低融点重合体セグメントの数平均分子量としては共重合された状態において600以上4000以下程度であることが好ましい。本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)における低融点重合体セグメント(b)の共重合量としては、特に限定されないが、10〜90重量%程度が好ましく、30〜85重量%程度がより好ましく、50〜80重量%程度が特に好ましい。低融点重合体セグメント(b)の共重合量が10重量%未満であると、柔軟性、屈曲疲労性が悪くなる。一方、低融点重合体セグメント(b)の共重合量が90重量%を越えると、機械的物性、高温特性、耐油性、耐薬品性が十分に発現しない。
【0015】
本発明に用いるポリエステルブロック共重合体(A)としては、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、東レ・デュポン社製「ハイトレル」(登録商標)、東洋紡績社製「ペルプレン」(登録商標)、三菱化学社製「プリマロイ」(登録商標)、日本合成化学工業社製「ポリエスター」(登録商標)等が挙げられる。具体的には、ハイトレルG3548L、3046、4057、4047、4767、5557、6347、7247、2571、2751、5557M、6347M、7247M、4275BK、7247R09、7237F等(以上、東レ・デュポン社製)、ペルプレン40H、P40B、P30B、P40BU、P40U、P48U、P55U、P55B、P90BD、P80C、S1002、S2002、S3002、S6002、S9002等(以上、東洋紡績社製)、プリマロイA1500N、A1600N、A1700N、A1800N、A1900N、A1606C、A1706C、A1602N、A1704N、A1610N、A1710N、B1902N、B1900N、B1903N、B1910N、B1920N、B1922N、B1932N、B1942N、B1600N、B1700N、B1800N、B1921N等(以上、三菱化学社製)、ポリエスターSP−154、SP−160、SP−176、SP−165、SP−170、SP−185、WR−901、WR−905、WR−960、TP−220、TP−217、TP−290、TP−249、LP−033、LP−011、LP−035、LP−050、TP−235、TP−293、TP−219(以上、日本合成化学工業社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明に用いるポリエステルブロック共重合体(A)は公知の方法で製造することができ、いずれの方法をとってもよい。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール、および低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下にエステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、あるいはジカルボン酸と過剰量のグリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下にエステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、高融点結晶性セグメントと低融点重合体セグメントを鎖連結剤でつなぐ方法等が挙げられ、ポリ(ε−カプロラクトン)を低融点重合体セグメントに用いる場合は、高融点結晶性セグメントにε−カプロラクトンモノマを付加反応させる方法等が挙げられる。
【0017】
本発明に用いるポリエステルランダム共重合体(B)は、ジカルボン酸成分とジアルコール成分をランダムに共重合させたポリエステルランダム共重合体であれば本発明の効果を阻害しない限り特に限定されないが、非晶性もしくは低結晶性のものが好ましい。非晶性もしくは低結晶性であることは、例えばティー・エイ・インスツルメント・ジャパン製DSC Q100で測定する融点測定において、30℃から240℃まで10℃/分で昇温させ240℃で3分保持した後、10℃/分で30℃まで冷却し、その後直ちに再度240℃まで10℃/分で昇温させた時に発現する融点ピークの熱量が1J/g未満であることを意味する。また、本発明に用いるポリエステルランダム共重合体(B)は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、流動点が70〜200℃程度の共重合ポリエステルであるものが好ましく、100〜170℃程度のものがより好ましい。流動点とは、ASTM D569−82に従って測定することにより得られる温度であり、非晶性熱可塑性樹脂等の流動開始温度を表すひとつの指標とすることができる。
【0018】
前記ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。これらのジカルボン酸のうち、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、アジピン酸、セバシン酸が好ましく、テレフタル酸およびイソフタル酸の混合物が特に好ましく、該混合物の混合比は特に限定されない。前記ジアルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ペンタエリストリール、またはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらのジアルコールのうち、1,4−ブタンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0019】
ポリエステルランダム共重合体(B)は公知の方法で製造することができ、いずれの方法をとってもよい。例えば、ジカルボン酸成分とジアルコール成分とを縮合重合等により重合して製造することができる。
【0020】
ポリエステルランダム共重合体(B)としては、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されず、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、東レ・ファインケミカル社製「ケミット」(登録商標)、東洋紡社製「バイロン」(登録商標)、ユニチカ社製「エリーテル」(登録商標)等が挙げられ、具体的には、ケミットR1159、R−228、R−248、R−283、Q−1500、R−273、R−50、R−98、R−99、R−92、K−1294、K−1089(以上、東レ・ファインケミカル社製)、バイロン200、220、240、103、300、500(以上、東洋紡社製)、エリーテルUE3220、UE3221、UE3230、UE3231、UE3400、UE350(以上、ユニチカ社製)等が挙げられ、これらの市販品のうち、耐屈曲疲労性改善の点から、ケミットK1089、R−50、R−99、R−92が特に好ましい。
【0021】
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物におけるポリエステルブロック共重合体(A)とポリエステルランダム共重合体(B)の組み合わせの好適な例としては、特に限定されないが、高融点結晶性重合体セグメント(a)がポリブチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするものであって、低融点重合体セグメント(b)がポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペートおよびポリエチレンアジペートからなる群から選ばれる1以上であるポリエステルブロック共重合体(A)と、非晶性もしくは低結晶性のポリエステルランダム共重合体(B)との組み合わせが挙げられる。
【0022】
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物におけるポリエステルブロック共重合体(A)の配合量およびポリエステルランダム共重合体(B)の配合量は、用途に応じて適宜選択されるため、特に限定されないが、ポリエステルブロック共重合体(A)の配合量としては、通常約55〜99重量%であり、約60〜95重量%が好ましく、約70〜95重量%がより好ましい。熱可塑性エラストマ樹脂組成物におけるポリエステルランダム共重合体(B)の配合量としては、特に限定されないが、通常約1〜45重量%であり、約5〜40重量%が好ましく、約5〜30重量%がより好ましい。ポリエステルランダム共重合体(B)の配合量が約1重量%以下では流動性が改善されず、約45重量%以上では耐熱老化性等の機械的性質が大きく低下するという問題が生じる。
【0023】
また、本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物には、本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物の性能を損なわない範囲で、公知のヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系、芳香族アミン系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系等の耐光剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物等の増粘剤、染料や顔料等の着色剤、酸化チタン、カーボンブラック等の紫外線遮断剤、ガラス繊維、カーボンファイバー、チタン酸カリウムファイバー等の補強剤、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、ガラスビーズ等の充填剤、液状ポリイソブテン、液状ポリブテン、液状(水添)ポリイソプレン、液状(水添)ポリブタジエン、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、エポキシ可塑剤、リン酸エステル類、フタル酸エステル類、脂肪族2塩基酸エステル類またはグリコールエステル類等の可塑剤、タルク等の核剤、粘着付与剤、難燃剤、発泡剤、蛍光剤、架橋剤、界面活性剤等を任意に含有させてもよく、除いていてもよい。
【0024】
本発明の組成物の製造方法は、例えばポリエステルブロック共重合体(A)、ポリエステルランダム共重合体(B)と必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、230℃以上において、バンバリミキサー、ロール、および1軸または2軸押出機で、均一に溶融混練する方法等が好ましく用いられる。本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形、ガスアシスト成形等の現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法によって成形することができ、特に制限されるものではない。
【0025】
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物の引張破断強度および引張破断伸度はJIS K7113の方法に準拠して測定した値を意味し、引張試験機、例えば、INSTRON5565(商品名、インストロンジャパンカンパニイリミテッド社製)を用いて容易に測定できる。
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物の硬度はJIS K7215 デュロメーターD硬さに従って測定した値を意味し、例えば、ASKER CL−150(商品名、高分子計器社製)を用いて容易に測定できる。また、本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物としては、特に限定されないが、硬度が27D以上75D以下であるものが好ましく、30D以上55D以下であるものがより好ましい。
【0026】
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物の溶融粘度指数(MFR)は、ASTM D1238に従って測定した値を意味し、MELT INDEXER F−B01(商品名、東洋精機製作所社製)を用いて容易に測定できるが、ポリエステルブロック共重合体(A)の種類によって融点が異なるため、測定温度は適宜設定する必要があり、目安としてポリエステルブロック共重合体(A)の融点+20〜40℃の範囲で設定する。本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物のMFRとしては、10〜100g/10分が好ましい。MFRが10g/10分未満では、流動性が低く、成形性が不十分となり、100g/10分を超えると機械的性質が劣るものとなりやすいためである。
【実施例】
【0027】
以下に実施例によって本発明の効果を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中に示される物性は、下記する測定方法により測定したものである。
【0028】
[実施例1〜12]および[比較例1〜4]
下記のポリエステルブロック共重合体(A)およびポリエステルランダム共重合体(B)を表1、2に示す配合割合(wt%)でV−ブレンダーを用いて混合し、直径45mmで3条ネジタイプのスクリューを有する2軸押出機を用いて230℃で溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを80℃で5時間乾燥後、ポリエステルブロック共重合体(A−1)を使用したサンプルは200℃に、ポリエステルブロック共重合体(A−2)を使用したサンプルは240℃に設定したインラインスクリュー型射出成形機を用いて、50℃の金型温度(金型キャビティ表面)において、JIS2号ダンベル試験片と、縦120mm×横70mm×厚み2mmの角板成形品を射出成形し、熱可塑性エラストマ樹脂組成物を得た。下記の各特性を調べた結果を表1、2に示す。
【0029】
ポリエステルブロック共重合体(A)
A−1:東レ・デュポン社製 ハイトレル4057(融点163℃)
A−2:東レ・デュポン社製 ハイトレル5557(融点208℃)
ポリエステルランダム共重合体(B)
B−1:東レ・ファインケミカル社製 ケミットK−1089(非晶性)
B−2:東レ・ファインケミカル社製 ケミットR−283(結晶性)
B−3:東レ・ファインケミカル社製 ケミットR−50(低結晶性)
【0030】
[硬度(デュロメーターD)]
JIS K7215 デュロメーターD硬さに従って測定した。
[機械的特性]
JIS K7113に従って、引張破断強度と引張破断伸度を測定した。
[耐屈曲疲労性]
射出成形により得た縦120mm×横70mm×厚み2mmの角板から、縦75mm×横20mm×厚み2mmの短冊を切り出し、(株)東洋精機製作所製ディマチャ屈曲疲労試験機を用いて80℃の雰囲気下にて、チャック間距離25mmから5mmの間でストロークさせて短冊が破断するまでの屈曲回数を測定した。
[耐熱老化性]
ポリエステルブロック共重合体(A−1)を使用したサンプルは120℃、ポリエステルブロック共重合体(A−2)を使用したサンプルは140℃の温度条件で500時間ギヤオーブンにて熱処理を施し、その後サンプルを、JIS K7113にしたがって引張破断伸度を測定し、各々処理を施していない引張破断伸度に対する保持率を算出した。保持率が50%より低いと耐熱老化性に劣ることになる。
[溶融粘度指数(MFR)]
ASTM D1238に従い、ポリエステルブロック共重合体A−1を使用した熱可塑性エラストマ樹脂組成物は200℃で、A−2を使用した熱可塑性エラストマ樹脂組成物は230℃の温度で、荷重2160gで下記実施例および比較例の熱可塑性エラストマ樹脂組成物について測定した。
【0031】
【表1】

【表2】

【0032】
以上の結果より、実施例1〜12に示した本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物は、本発明のポリエステルランダム共重合体(B)を配合しない比較例1、3およびポリエステルランダム共重合体(B)を50wt%配合した比較例2、4に比べ、ポリエステルブロック共重合体(A)の各機械的特性を大きく劣化させないまま、MFRを大きくすることができ、顕著に流動性を改善することができた。一方、比較例2、4のポリエステルランダム共重合体(B)を50wt%配合した熱可塑性エラストマ樹脂組成物では、耐熱老化性が劣り保持率が50%以下となった。上記実施例において、特に、非晶性もしくは低結晶性のポリエステルランダム共重合体(B)を使用した実施例1〜3、6〜9および12では、流動性を向上させたにもかかわらず、耐屈曲疲労性も改善することができた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物は、引張破断強度、耐屈曲疲労性等の機械的性質に優れ、かつ、溶融時の流動性も優れるため、射出成形等により成形が容易であり、本発明の熱可塑性エラストマ樹脂組成物を自動車、電子・電気機器、精密機器、一般消費財用途の各種成形品等に利用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)55〜99重量%と、ジカルボン酸成分とジアルコール成分をランダムに共重合させたポリエステルランダム共重合体(B)1〜45重量%とからなることを特徴とする熱可塑性エラストマ樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステルブロック共重合体(A)における高融点結晶性重合体セグメント(a)が、ポリブチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするものであることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエステルブロック共重合体(A)における低融点重合体セグメント(b)が、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール単位を主たる構成成分とするものであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物。
【請求項4】
ポリエステルブロック共重合体(A)成分における低融点重合体セグメント(b)の共重合量が10〜90重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物。
【請求項5】
ポリエステルブロック共重合体(A)の配合量が60〜95重量%であり、ポリエステルランダム共重合体(B)の配合量が5〜40重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物。
【請求項6】
ポリエステルランダム共重合体(B)が、非晶性もしくは低結晶性であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマ樹脂組成物。