説明

熱可塑性フィルム

本発明は、自動車の内部パネル用の熱可塑性フィルムに関する。前記熱可塑性フィルムは、仕上層と、背面に窪み又は材料の弱い箇所が設けられている下側の発泡層とを含む。上記仕上層がその窪みの領域で少なくとも35%の残留厚さを有し、かつ上記発泡層がその緻密な仕上層の密度の15〜50%の間の密度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元構造をもつ表面を備えた外側の緻密な仕上層と、下側の発泡層とからなる、特に自動車の内部パネル用の熱可塑性フィルムに関し、前記フィルムは、造形加工段階において構成材形状に一致し、こうしてその構成材形状を受け入れる支持体に貼り付けられ、そのフィルムの裏の下側に、支持体の方を向いてその裏側に設けられた窪み又は材料の弱い箇所、すなわち厚さの薄い部分が設けられている。
【背景技術】
【0002】
自動車の内部パネル用の熱可塑性成形物、成形フィルム、または成形外板は広く知られており、例えば、車両における内部パネル用に、すなわちダッシュボード、ドアインサート、サンバイザなどのカバーとして使用されている。このような成形物は、一般にはその表側に、種々様々な異なる形状および構成の三次元構造をもつ型押表面、具体的にはパターン効果またはしぼ効果を有する多層の発泡の十分でないポリマーフィルムからなる。
【0003】
これら成形物または成形フィルムは、型押または押紋表面を施される高密度の比較的硬い上層、具体的には仕上または化粧層と、下面に積層/接着され、魅力的な感触、すなわちそのカバーの快い「柔らかさ」を与える下層としてのより低密度の発泡層とからなる。この硬質層はまた、「緻密フィルム」としても知られる。
【0004】
これら成形物/成形フィルムの上層および下層の両方は、数層の異なる材料または異なる配合の材料、すなわち、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、TPO(ポリオレフィン)などのポリマー、あるいはこのような材料または類似の材料の組合せの数層からなることができる。
【0005】
従来技術は、このような成形外板の生産のための様々な方法、例えば「エンドレス」フィルムウェブを生産するための圧延法、あるいは鋳型から直接個々の成形外板を生産する方法を開示している。
【0006】
しかしながら、型押工程によって、すなわち、例えばエンボスロールを用いて熱可塑性フィルムに表面構造を与えるロール法も必要とされている。
【0007】
続いてダッシュボード支持材に、またはサイドドアインサート用の、例えば繊維強化パルプから製造される組立支持部品に、このような成形物またはこのような成形フィルムを貼り付ける場合、それら既知の方法には、熱成形だけでなく、一連のさらに進んだ成形方法、例えばフィルムを鋳型または上記支持材に押し付け、それらの構成材形状を受け入れる加圧法がある。
【0008】
この目的のために特許文献1は、化粧フィルム、例えば上側フィルムを有する多層成形物として構成されるダッシュボード用の化粧フィルムを開示している。この上側フィルムは、少なくとも部分的に架橋させた、例えばポリオレフィンを基材とする高分子材料を含み、且つ、特定のゲル含量および一定密度を有する発泡した下部フィルムを備える。後続の熱成形工程を実行する際に必要なしぼ安定性のために、この化粧フィルムを電子ビームで処理し、フィルムまたは成形物を一層架橋させ、したがって必要な安定性を与える。したがってこのようなフィルム、すなわちこのような成形物は、すでに上記で詳述したように複数枚の層の複合体からなり、その結果として上部フィルムは比較的高度に架橋し、その発泡した下部フィルムもまた完全な安定形態を有する。今日の自動車において標準として存在するエアバッグのトリガーと組み合わせた支持材のカバーとしてのこのようなフィルムの使用は当然、例えばダッシュボード全体を覆うフィルム、ひいてはまたそのトリガー機構/エアバッグが、継ぎ目に沿って弱化して裂開する場合にのみ可能である。この弱化は、例えばレーザービーム処理によって達成され、その場合、レーザービームはフィルムの厚みの一部を焼くか、または切断する。レーザービームによって生じる背面の材料の弱い箇所もまた、いつかは材料の弛緩の結果として外側に目立つようになるのが欠点である。
【0009】
品質イメージの向上に向けた強い傾向が自動車の内装部門で見られるので、目に見える表面領域でのこのようなむらは、ますます受け入れられなくなりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1538175A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって本発明の目的は、品質を損なわずに低水準の材料消費で生産可能で、特に造形作業、例えば熱成形に適し、かつ高品質の表面イメージをもち、エアバッグトリガーの領域において大規模な追加の加工なしに使用することができる熱可塑性プラスチックフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、主請求項の特徴によって達成される。更なる有利な構成は、従属請求項中で開示される。また、このようなフィルムを備えた内部パネル部品も開示される。
【0013】
窪み又は材料の弱い箇所の領域の緻密な仕上層は、窪みがなく弱化していない仕上層の厚さの少なくとも35%の残留厚さを有する。しかしながら、好ましくは、またそのしぼ構造およびしぼ深さによっては、0.25mmの最小厚さ、より好ましくは0.35mmの厚さが観察されるべきである。同時に、発泡層は、その層の厚さの2分の1のところで、すなわち発泡層の中心において緻密な仕上層の密度の15〜50%の間の密度を有するように構成される。
【0014】
窪み又は材料の弱化は、エアバッグの発生器が始動するときフィルムが何の問題もなく裂け、エアバッグの膨張を可能にするような、レーザー切断/レーザー位置決定が言及する範囲内で達成することができる。この場合、意外なことに本発明のフィルムの構成、具体的には発泡層の密度の構成は、発泡層が熱の作用によりレーザー切断/レーザー位置決定の間に確定される切断幅の範囲を越えて崩壊するのを防ぐことが分かる。
【0015】
したがって、このような各層の制御された構成は、全体的にみて、すぐれた品質イメージを有し、材料中の目に見える継ぎ目の弛緩のない一様な構造安定性の、かつ均一に柔軟なフィルムを生じさせ、その構造および材料強度レベルのためにエアバッグトリガーの領域で使用するのに特に適している。
【0016】
或る有利な発展形態においては、この窪みがなく弱化していない仕上層は、すでに述べたように0.4〜0.8mmの厚さを有し、窪み又は材料の弱い箇所の領域で0.25mmの残留厚さを有する。これは、まず造形法/熱成形法にとって十分な構造強度へのフィルムの、特にすぐれた適合を生じさせる。適切なしぼ構成の場合、材料の弱い箇所の領域の最小厚さは0.35mmが好ましい。
【0017】
更なる有利な発展形態においては、この発泡層は、その発泡層の層厚の2分の1のところで測定された、その緻密な仕上層の密度の25〜50%の間の密度を有する。こうして構成される発泡層の密度は、レーザーによって生じる材料中の洞が狭く残るように、材料中の均衡のとれた十分な熱移動を確実にする。
【0018】
更なる有利な発展形態においては、この仕上層は、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、部分結晶性ポリマー、非晶質ポリマーの群からの1種または複数種の材料からなる。これらの材料は、自動車の内装に応用するのに特に適しており、現時点での通常の生産方法を用いて容易に加工することができる。
【0019】
更なる有利な発展形態においては、この発泡層はポリオレフィン発泡体からなり、メルトフローインデックス(MFI/2.16kg、190℃)が2g/10分未満であるポリエチレン成分を有し、この場合、発泡層はポリプロピレン成分を含んでもよい。このような構成はフィルムの加工および生産を容易にし、材料の可撓性と熱成形に必要な構造強度との間のバランスのとれた比率を生じさせる。
【0020】
更なる有利な発展形態においては、この発泡層は、弱化していない発泡層の全厚の25%の窪み深さのところで250kPa以下の圧縮応力を有する。これはまた、生産する際の、また車両に使用する際の使用特性のバランスを保つのに役立つ。同じことはまた、その発泡層が180kPa以下、好ましくは125kPa以下の圧縮応力を有する更なる有利な発展形態にも当てはまる。
【0021】
最初に記載した目的はまた、本発明に従って構成される熱可塑性フィルムを備えた自動車用の内部パネル部品、好ましくはダッシュボードによる例外的な方式で達成され、その場合、このフィルムは、その裏側に設けられた窪み又は材料の弱い箇所がエアバッグカバーの裂開継ぎ目を形成するような適切な支持材上に構成され、取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】エアバッグの発生器の領域における乗用車のダッシュボードのパネル用の、仕上層および発泡層からなる多層熱可塑性フィルムの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を、実施形態に関して詳細に例示することにする。
【0024】
図1は、エアバッグの発生器の領域における乗用車のダッシュボードのパネル用の、仕上層1および発泡層2からなる多層熱可塑性フィルム3の構造を示す。多層熱可塑性フィルム3は、その外側の仕上層上に型押三次元構造4、すなわちロールエンボッシングにより外面に型押されたしぼを設けられる。
【0025】
フィルム3は、仕上フィルム1中へ発泡層2を貫通して達する窪み又は材料の弱い箇所5を有する。この窪み又は材料の弱い箇所の領域における仕上層は、そこでは窪みがなく弱化していない仕上層1の厚さ6の60%の残留厚さを有する。発泡層2は、その層の2分の1のところで、すなわち発泡層の中心7で測定された、緻密な仕上層1の密度の35%の密度を有する。
【0026】
窪みがなく弱化していない仕上層の厚さ6は0.6mmである。
【符号の説明】
【0027】
(本明細書の一部)
1 熱可塑性フィルム
2 発泡層
3 熱可塑性フィルム
4 三次元構造をもつ表面
5 窪み
6 仕上層の厚さ
7 発泡層の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元構造をもつ表面を備えた外側の緻密な仕上層とその下側の発泡層とからなる、特に自動車の内部パネル用の熱可塑性フィルム(3)であって、前記フィルムが、造形加工段階においてその構成材形状に一致し、こうしてその構成材形状を受け入れる支持体に貼り付けられ、前記フィルムが、その裏の下側にその支持体の方を向いてその裏側に設けられた窪み又は材料の弱い箇所を設けた、熱可塑性フィルムにおいて、
前記窪み又は材料の弱い箇所の領域の仕上層(1)が、窪みがなく弱化していない前記仕上層(1)の厚さ(6)の少なくとも35%の残留厚さを有すること、及び前記発泡層(2)が、前記発泡層(2)の層厚の2分の1(7)のところで測定された、前記緻密な仕上層の密度の15〜50%の間の密度を有すること、を特徴とする熱可塑性フィルム。
【請求項2】
前記窪みがなく弱化していない仕上層(1)が、0.4〜0.8mmの厚さ(6)を有し、かつ前記窪み又は材料の弱い箇所の領域において少なくとも0.25mmの残留厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性フィルム。
【請求項3】
前記窪みがなく弱化していない仕上層(1)が、前記窪み又は材料の弱い箇所の領域において少なくとも0.35mmの残留厚さを有することを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性フィルム。
【請求項4】
前記発泡層(2)が、前記発泡層の層厚の2分の1(7)のところで測定された、前記緻密な仕上層の密度の25〜50%の間の密度を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルム。
【請求項5】
前記仕上層が、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、部分結晶性ポリマー、非晶質ポリマーの群からの1種または複数種の材料からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルム。
【請求項6】
前記発泡層が、ポリオレフィン発泡体からなり、かつメルトフローインデックス(MFI/2.16kg、190℃)が2g/10分未満であるポリエチレン成分を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルム。
【請求項7】
前記発泡層が、ポリプロピレン成分を含むことを特徴とする、請求項6に記載の熱可塑性フィルム。
【請求項8】
前記発泡層が、前記弱化していない発泡層の全厚の25%の窪み深さのところで250kPa以下の圧縮応力を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルム。
【請求項9】
前記発泡層が、180kPa以下、好ましくは125kPa以下の圧縮応力を有することを特徴とする、請求項8に記載の熱可塑性フィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性フィルムを備えた自動車用の内部パネル部品、好ましくはダッシュボードであって、前記フィルムの裏側に設けられたフィルムの窪み又は材料の弱い箇所がエアバッグカバーの裂開継ぎ目を形成する、自動車用の内部パネル部品。

【図1】
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【公表番号】特表2010−515598(P2010−515598A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545118(P2009−545118)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062044
【国際公開番号】WO2008/083871
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(599004139)ベネツケ−カリコ・アーゲー (15)
【氏名又は名称原語表記】Benecke−Kaliko AG
【Fターム(参考)】